説明

上皮細胞ムチンMUC−1から誘導されるワクチン

天然MUC-1に対する相同性が低下した新規MUC-1 DNA構築物を提供する。そのようなMUC-1構築物を含む医薬組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MUC-1を発現する腫瘍の治療および予防のための核酸ワクチン接種プロトコルにおいて有用な新規核酸構築物に関する。具体的には、この核酸はDNAであり、このDNA構築物は必要に応じて全ての完全な反復を含まないMUC-1誘導体をコードする遺伝子を含む。より具体的には、この核酸を、野生型Muc-1との相同性を最小化するように改変する。本発明はさらに、前記構築物を含む医薬組成物、特に、粒子を介する送達に適合させた医薬組成物、それらの製造方法、および医学におけるそれらの使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
上皮細胞ムチンMUC-1(エピシアリンまたは多型性上皮ムチン、PEMとしても知られる)は、多くの上皮細胞上で発現される高分子量の糖タンパク質である。このタンパク質は、細胞質尾部、膜貫通ドメインならびに高い比率のプロリン、セリンおよびトレオニン残基を含む20アミノ酸モチーフの可変数のタンデムリピート(本明細書においてはVNTRモノマーと呼び、VNTRエピトープ、またはVNTRリピートとしても知られる)からなる。反復の数は、MUC-1遺伝子座の遺伝的多型性に応じて様々であり、最も頻繁には、30〜100の範囲内にある(Swallowら、1987, Nature 328:82-84)。正常な管上皮においては、MUC-1タンパク質は、管内腔に露出した、細胞の先端表面上にのみ認められる(Grahamら、1996, Cancer Immunol Immunother 42:71-80; Barratt-Boyesら、1996, Cancer Immunol Immunother 43:142-151)。MUC-1分子の最も顕著な特徴の1つは、その広範囲のO結合グリコシル化である。各MUC-1 VNTRモノマー内には、利用可能な5個のO結合グリコシル化部位が存在する。
【0003】
VNTRは、典型的なまたは完全なリピート、および、20アミノ酸に渡って2〜3個の差異を含む、完全なリピート配列に対して少数の変異を有する不完全な(規定外の)リピートとして特徴付けることができる。以下は完全なリピートの配列である。
【0004】

【0005】
下線を付したアミノ酸を、示されたアミノ酸残基に置換することができる。完全なリピートは、規定のアミノ酸置換(すなわち、位置3でのDからE、位置4でのTからS、および位置14でのPからT、AまたはQへの置換)を除いて、同一のリピート配列である。完全なリピートは、それらが単一のMUC1分子内で複数回現れるという事実によって特徴付けられる。
【0006】
不完全なリピートは、上記の共通配列に対し様々なアミノ酸置換を有し、アミノ酸レベルで55〜90%の同一性を示す。4個の不完全なリピートを以下に示し、置換に下線を付す:
APDTRPAPGSTAPPAHGVTS ‐ 完全なリピート
APATEPASGSAATWGQDVTS ‐ 不完全なリピート1
VPVTRPALGSTTPPAHDVTS ‐ 不完全なリピート2
APDNKPAPGSTAPPAHGVTS ‐ 不完全なリピート3
APDNRPALGSTAPPVHNVTS ‐ 不完全なリピート4
【0007】
野生型Muc-1中の不完全なリピートは完全なリピートの領域にフランキングする。それぞれの異なる不完全なリピートは、一般的にはMUC1配列中に1回のみ現れ、完全なリピート配列からの2〜9個のアミノ酸置換(55〜90%のアミノ酸同一性に等しい)を示す。
【0008】
これらの上皮細胞の新生物性形質転換により生じる悪性腫瘍においては、いくつかの変化がMUC-1の発現に影響する。このタンパク質の極性化された発現は失われ、形質転換細胞の全表面に広がって認められる。MUC-1の総量も、しばしば10倍以上増加する(Strous & Dekker, 1992, Crit Rev Biochem Mol Biol 27:57-92)。最も顕著には、O結合型糖鎖の量および質が顕著に変化する。より少数のセリンおよびトレオニン残基がグリコシル化される。認められるこれらの糖鎖は異常に短くなり、腫瘍関連糖鎖抗原STnを生成する(Lloydら、1996, J Biol Chem, 271:33325-33334)。これらのグリコシル化の変化の結果として、糖鎖によりすでに選別されたMUC-1のペプチド鎖上の種々のエピトープがアクセス可能になる。この方法でアクセス可能になる1つのエピトープは、それぞれ20アミノ酸のVNTR完全モノマー中に存在する配列APDTR(Ala 8 〜 Arg 12)により形成される(Burchellら、1989, Int J Cancer 44:691-696)。
【0009】
MUC-1におけるこれらの変化は、腫瘍上で発現されるMUC-1の形態に対して免疫系を活性化することができるワクチンが、上皮細胞腫瘍、および、実際にMUC-1が認められる他の細胞型、例えば、T細胞リンパ球に対して有効であることを意味することは明らかである。異常なタンパク質を発現する細胞を殺傷するために免疫系により用いられる主要なエフェクター機構の1つは、細胞傷害性Tリンパ球免疫応答(CTL)であり、この応答、ならびに抗体応答が腫瘍を治療するためのワクチンにおいて望ましい。良好なワクチンは免疫応答の全ての機能を活性化するであろう。しかしながら、テラトープ(Theratope)またはBLP25 (Biomira Inc, Edmonton, Canada)などの現行の糖鎖およびペプチドワクチンは、免疫応答の1つの機能(それぞれ体液性応答および細胞性応答)を優先的に活性化するので、よりバランスの取れた応答を生成させるために、より良いワクチン設計が望まれる。
【0010】
核酸ワクチンは、それらが大量に製造するのが容易であるという点で、従来のタンパク質ワクチン接種よりも優れたいくつかの利点を提供する。少ない用量でさえ、これらは強力な免疫応答を誘導することが報告されており、細胞傷害性Tリンパ球の免疫応答ならびに抗体応答を誘導することができる。
【0011】
しかしながら、全長MUC-1は、反復性の高い配列であるため取り扱いが非常に困難である。というのも、反復性の高い配列は非常に組換えを受けやすく、そのような組換え事象が顕著な開発困難性を引き起こすためである。さらに、VNTR領域のGCに富む性質により、配列決定も困難になる。さらに、規制上の理由で、DNA構築物を完全に特徴付けする必要がある。そのような高い頻度で反復する構造を有する分子を配列決定することは問題が多い。野生型MUC-1中にいくつのリピート単位が存在するかは正確には不明であると仮定する場合、全長MUC-1を正確に特徴付けすることは不可能であり、このことによって、これは規制当局の認可を受けられなくなる。
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
本発明は、MUC-1を発現する腫瘍を認識することができる免疫応答をin vivoで生じさせることができるMUC-1誘導体をコードする核酸配列であって、該核酸が、非反復領域が少なくとも0.6のRSCUを有し、かつ図9に示されるMUC-1 VNTRヌクレオチド配列と比較して、野生型MUC-1 DNAに関して対応する非反復領域に渡って85%未満の同一性レベルを有するように改変された、前記核酸配列を提供する。
【0013】
一実施形態においては、前記核酸はいかなるリピート単位(完全および不完全の両方)も含まない上記のMUC-1誘導体をコードする。
【0014】
別の実施形態においては、前記核酸配列は完全なリピートのみを含まない。さらに別の実施形態においては、前記核酸構築物は1〜15個の完全なリピート、好ましくは7個の完全なリピートを含む。完全なリピートは野生型MUC-1から改変されたものでも改変されていないものでもよい。
【0015】
より好ましい実施形態における不完全なリピートの領域は、少なくとも0.65のRSCU(相対同義コドン使用(コドン指数CIとしても知られる))を有し、不完全なリピートの領域に対して80%未満の同一性を有する。
【0016】
そのような構築物は、驚くべきことに、MUC-1を発現する腫瘍細胞を認識する細胞性応答と抗体応答の両方を生じさせることができる。
【0017】
この構築物は、グリコシル化が低減した突然変異体などの改変されたリピート(VNTR単位)をも含むことができる。組み込むことができる外来T細胞エピトープとしては、細菌タンパク質および毒素から、ならびにウイルス起源から誘導されたものなどの、Tヘルパーエピトープ、例えば、ジフテリア菌(Diphtheria)もしくは破傷風菌(Tetanus)由来のTヘルパーエピトープ、例えば、P2およびP30、またはHep Bコア抗原由来のエピトープが挙げられる。これらを、本発明のMUC-1構築物内またはそのいずれかの末端に組み込むことができる。
【0018】
さらに別の実施形態においては、本発明は、本発明のMUC-1構築物のNまたはC末端に異種タンパク質を有する融合タンパク質をコードする核酸を意図する。そのような融合パートナーは、Tヘルパーエピトープを提供するか、またはリコール応答を惹起することができる。
【0019】
これらの例としては、破傷風菌(Tetanus)、ジフテリア菌(Diphtheria)、結核菌(Tuberculosis)または肝炎のタンパク質、例えば破傷風もしくはジフテリア毒素、特に、P2および/もしくはP30エピトープを含む破傷風毒素の断片が挙げられる。結核菌(Mycobacterium tuberculosis)ペプチドの例は、Mtb32aのアミノ酸192〜323に対応するRa12である(Skeikyら、Infection and Immunity (1999) 67: 3998-4007)。B型肝炎コア抗原はさらに別の実施形態の例である。
【0020】
他の好ましい免疫学的融合パートナーとしては、プロテインD、典型的にはN末端の1/3(例えば、N末端1〜109);ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)由来のLYTAまたはその一部(好ましくは、C末端部分)(Biotechnology 10: 795-798, 1992)が挙げられる。
【0021】
本発明のさらなる態様においては、前記核酸配列はプラスミド形態のDNA配列である。好ましくは、該プラスミドはスーパーコイル化されたものである。そのようなヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質は新規であり、本発明の一態様を形成する。
【0022】
本発明のさらなる態様においては、本明細書に記載された核酸配列またはタンパク質と製薬上許容し得る賦形剤、希釈剤もしくは担体とを含む医薬組成物が提供される。
【0023】
好ましくは、この担体は金ビーズであり、医薬組成物は粒子を介する薬剤送達による送達を受けやすい。
【0024】
さらに別の実施形態においては、本発明は、医学における使用のための医薬組成物および核酸構築物を提供する。特に、MUC-1を発現する腫瘍の治療または予防において使用するための医薬の製造において、本発明の核酸構築物を提供する。
【0025】
本発明はさらに、安全で有効な量の本明細書に記載の組成物または核酸の投与による、MUC-1を発現する腫瘍、特に、乳癌、肺癌、前立腺癌(特に非小細胞肺癌)、胃癌および他のGI(胃腸管)癌に罹患しているか、もしくはこれに罹りやすい患者の治療方法を提供する。
【0026】
さらに別の実施形態においては、本発明は、本発明の核酸構築物またはタンパク質と、製薬上許容し得る賦形剤、希釈剤または担体とを混合することによる、本明細書に記載の医薬組成物の製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
発明の詳細な説明
野生型MUC-1分子は、シグナル配列、リーダー配列、不完全もしくは規定外のVNTR、完全なVNTR領域、さらなる規定外のVNTR、非VNTR細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含む。
【0028】
非VNTR領域が少なくとも0.6のRSCUを有し、対応する野生型領域に対して85%未満の同一性を有するようにコドン改変された構築物が提供される。そのような構築物は、相同組換えの可能性が低下しているため、増強された発現を有し、免疫原性であり、MUC-1を発現する腫瘍細胞を認識する細胞性応答と抗体応答の両方を生じさせることができて、有利である。
【0029】
より好ましくは、コドンが改変されたその領域は、少なくとも0.65のRSCUを有し、対応する野生型領域に対して80%未満の同一性を有する。ポリヌクレオチド配列を比較する場合、2つの配列中のヌクレオチドの配列が、以下に記載のように最大に一致するようにアラインさせた時に同じである場合、その2つの配列は「同一」であると言う。
【0030】
2つの配列間の比較は、典型的には、比較ウィンドウで配列を比較して、配列類似性の局所領域を同定し比較することにより実施される。本明細書で用いる「比較ウィンドウ」は、少なくとも約20個の連続した位置、通常は30個から約75個、40個から約50個の断片を指し、2つの配列を最適にアラインさせた後、配列を、同一の数の連続した位置の参照配列と比較することができる。
【0031】
かくして、本発明においては、コドン改変配列の非反復領域および比較のための配列の非反復領域の最適なアラインメントは、SmithおよびWaterman(1981) Add. APL. Math 2:482の局所同一性アルゴリズムにより、NeedlemanおよびWunsch(1970) J. Mol. Biol. 48:443の同一性アラインメントアルゴリズムにより、PearsonおよびLipman(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 2444の類似性方法のための検索により、これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group (GCG), 575 Science Dr., Madison, WIにおけるGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、およびTFASTA)のコンピューター化した実施により、または検査により行うことができる。
【0032】
配列同一性%および配列類似性%を決定するのに好適であるアルゴリズムの1つの好ましい例は、Altschulら(1977) Nucl. Acids Res. 25:3389-3402およびAltschulら(1990) J. Mol. Biol. 215:403-410にそれぞれ記載されたBLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムである。BLASTおよびBLAST 2.0を、例えば、本明細書に記載のパラメーターと共に使用して、本発明のポリヌクレオチドについて配列同一性%を決定することができる。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)を通して公共的に入手可能である。
【0033】
DNAコードは4文字(A、T、CおよびG)があり、これらを用いて、アミノ酸を表す3文字の「コドン」を表記し、そのタンパク質は生物の遺伝子中でコードされる。DNA分子に沿ったコドンの直鎖配列が、これらの遺伝子によりコードされるタンパク質中のアミノ酸の直鎖配列に翻訳される。このコードは高度に縮重しており、61個のコドンが20種の天然アミノ酸をコードし、3個のコドンが「終止」シグナルを表す。かくして、ほとんどのアミノ酸は2個以上のコドンによりコードされ、実際、いくつかのものは4個以上の異なるコドンによりコードされる。
【0034】
2個以上のコドンが所与のアミノ酸をコードするのに利用可能である場合、生物のコドン使用パターンは高度に非ランダムであることが観察されてきた。異なる種はそのコドン選択において異なる偏りを示し、さらに、コドンの使用は高レベルおよび低レベルで発現される遺伝子間で単一の種内において顕著に異なることもありうる。この偏りはウイルス、植物、細菌および哺乳動物細胞において異なり、いくつかの種は他のものよりランダムなコドン選択からより強い偏りを示す。例えば、ヒトおよび他の哺乳動物は特定の細菌またはウイルスよりも偏りが小さい。これらの理由のため、大腸菌(E.coli)中で発現される哺乳動物遺伝子または哺乳動物細胞中で発現されるウイルス遺伝子は効率的な発現のためには不適切なコドン分布を有する確率が高い。発現を起こさせる宿主中で稀に観察されるコドンのクラスターの異種DNA配列中の存在により、その宿主中での異種発現レベルが低いことを予測できると考えられる。
【0035】
結果として、特定の原核生物宿主(例えば、大腸菌もしくは酵母)または真核生物宿主によって好まれるコドンを、同じタンパク質をコードするが、野生型配列とは異なるように改変することができる。コドン改変のプロセスは、手作業もしくはコンピューターソフトウェアにより作成した、天然配列のコドンのうちのいくつかまたは全てが改変された任意の配列を含んでもよい。いくつかの方法が公表されている(Nakamuraら、Nucleic Acids Research 1996, 24: 214-215; WO 98/34640)。本発明に従う1つの好ましい方法は、Syngene法、Calcgene法の変法(R. S. HaleおよびG Thompson, Protein Expression and Purification Vol. 12 pp.185-188 (1998))である。
【0036】
コドン改変のこのプロセスは、以下の利点のうちのいくつかまたは全てを有してもよい:1) 稀に、もしくはたまに使用されるコドンをより頻繁に使用されるコドンと置換することにより、遺伝子産物の発現を改善すること、2) 下流クローニングを容易にするために制限酵素部位を除去もしくは含有させること、および3) DNAベクター中の挿入配列とゲノム配列との間の相同組換えの可能性を低下させること、および4) ヒトにおける免疫応答を改善すること。本発明の配列は、有利なことに組換え可能性が低下しているが、野生型配列と少なくとも同じレベルで発現する。コドン改変された配列を作製するためのSynGeneプログラムにより用いられるアルゴリズムの性質により、類似した機能を果たす極めて多数の異なるコドン改変配列を作製することが可能である。簡単に述べると、このコドンを統計学的方法を用いて割り当てて、β-アクチンなどの高度に発現されるヒト遺伝子中に天然に認められるものにより近いコドン頻度を有する合成遺伝子を得る。
【0037】
本発明のポリヌクレオチドにおいては、コドン使用パターンを、MUC-1の典型例から、標的生物中で高度に発現される遺伝子、例えば、ヒトβ-アクチンのコドンの偏りにより近似するように変更する。「コドン使用係数」は、所与のポリヌクレオチド配列のコドンパターンが標的種のものとどれほど類似しているかを示す尺度である。コドン頻度は、多くの種の高度に発現される遺伝子に関する文献から得ることができる(例えば、Nakamuraら、Nucleic Acids Research 1996, 24; 214-215)。61個のコドンのそれぞれについてのコドン頻度(選択されたクラスの遺伝子の1000コドンあたりの出現数として表される)を、20個の天然アミノ酸の各々について、各アミノ酸について最も高頻度に使用されるコドンについての値を1に設定し、共通性の低いコドンの頻度を0〜1になるように設定するようにして、正規化する。かくして、61個のコドンの各々に、標的種の高度に発現される遺伝子について1以下の値を割り当てる。特定のポリヌクレオチドについてコドン使用係数を算出するために、その種の高度に発現される遺伝子と比較して、特定のポリヌクレオチドの各コドンについてスケール化された値に注目し、これらの値全ての幾何学平均を取る(これらの値の自然対数の総和を、コドンの総数で割り、その対数を取ることによる)。この係数は0〜1の値を有し、係数が高くなるほど、ポリヌクレオチド中のより多くのコドンが高頻度に使用されるコドンである。ポリヌクレオチド配列が1のコドン使用係数を有する場合、コドンは全て標的種の高度に発現される遺伝子について「最も高頻度の」コドンである。
【0038】
本発明に従えば、ポリヌクレオチドのコドン使用パターンは特定のアミノ酸に用いられるコドンの10%未満であるコドンを排除するのが好ましい。相対同義コドン使用(RSCU)値は、観察されたコドン数を、そのアミノ酸の全コドンが平等な頻度で用いられた場合に期待される数で割ったものである。本発明のポリヌクレオチドは、標的生物の高度に発現される遺伝子中で0.2未満のRSCU値を有するコドンを排除するのが好ましい。本発明のポリヌクレオチドは、一般的には0.6、好ましくは0.65、最も好ましくは0.7を超える、高度に発現されるヒト遺伝子に対するコドン使用係数を有する。ヒトに関するコドン使用表をGenbankに見出すこともできる。
【0039】
比較として、高度に発現されるβ-アクチン遺伝子は0.747のRSCUを有する。
【0040】
ヒトのコドン使用表を以下に説明する:



【0041】
非VNTR細胞外ドメインはVNTRの5’側の約80アミノ酸および3’側VNTRの190〜200アミノ酸である。本発明の全構築物は、この領域に由来する少なくとも1個のエピトープを含む。エピトープは典型的には少なくとも7個のアミノ酸配列から形成される。従って、本発明の構築物は、非VNTR細胞外ドメインに由来する少なくとも1個のエピトープを含む。好ましくは非VNTRドメインの実質的に全て、またはより好ましくは全てが含まれる。構築物は配列FLSFHISNL、NSSLEDPSTDYYQELQRDISE、またはNLTISDVSVにより構成されるエピトープを含むのが特に好ましい。より好ましくは2個、好ましくは3個全てのエピトープ配列が該構築物中に含まれる。
【0042】
好ましい実施形態においては、前記構築物はN末端リーダー配列を含む。シグナル配列、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを、個々に全て必要に応じて存在させるか、または欠失させる。存在させる場合、これらの領域全部を改変するのが好ましい。
【0043】
本発明に従う好ましい構築物は、以下の通りである:
1) コドン改変されトランケートされたMUC-1 (すなわち、完全なリピートを含まない完全長MUC-1)
2) コドン改変されトランケートされたMUC-1Δss (1と同様であるが、シグナル配列も含まない)
3) コドン改変されトランケートされたMUC-1ΔTMΔCYT (1と同様であるが、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含まない)
4) コドン改変されトランケートされたMUC-1ΔssΔTMΔCYT (3と同様であるが、シグナル配列も含まない)。
【0044】
また好ましいのは、上記の1〜4の等価な構築物であるが、不完全なMUC-1リピート単位を含まないものである。そのような構築物を全破壊MUC-1と呼ぶ。一実施形態においては、1つ以上の不完全なVNTR単位を突然変異させて、グリコシル化部位を変更することにより、グリコシル化の可能性を低下させる。突然変異は好ましくは置換であるが、挿入または欠失であってもよい。典型的には、少なくとも1個のトレオニンまたはセリンを、バリン、イソロイシン、アラニンまたはアスパラギンで置換する。かくして、少なくとも1個、好ましくは2または3個以上を上記のアミノ酸で置換するのが好ましい。
【0045】
他の好ましい構築物は、上記の等価物であるが、1〜15個、好ましくは2〜8個、最も好ましくは7個のVNTR(完全)リピート単位を含むものである。
【0046】
さらなる実施形態においては、リーダー配列と細胞外ドメインの結合部に制限部位を含む全破壊MUC-1核酸を提供する。典型的には、この制限部位はNheI部位である。これをクローニング部位として用いて、例えば、グリコシル化突然変異体(すなわち、O-グリコシル化部位を除去するように突然変異されたVNTR領域)などの他のペプチドをコードする配列、または破傷風(Tetanus)毒素由来のP2もしくはP30などのTヘルパーエピトープをコードする異種配列、または野生型VNTR単位を挿入することができる。
【0047】
本発明のさらなる態様に従って、本発明によるポリヌクレオチド配列を含み、この発現を指令することができる発現ベクターが提供される。このベクターは、細菌、昆虫または哺乳動物細胞、特にヒト細胞中で異種DNAの発現を駆動するのに好適である。
【0048】
本発明のさらなる態様に従って、本発明によるポリヌクレオチド配列を含む宿主細胞、または本発明による発現ベクターが提供される。宿主細胞は、細菌、例えば、大腸菌、哺乳動物、例えば、ヒトであってもよく、または昆虫細胞であってもよい。本発明によるベクターを含む哺乳動物細胞は、in vitroでトランスフェクトされた培養細胞、または哺乳動物への該ベクターの投与によりin vivoでトランスフェクトされたものであってもよい。
【0049】
本発明はさらに、本発明によるポリヌクレオチド配列を含む医薬組成物を提供する。好ましくは、前記組成物はDNAベクターを含む。好ましい実施形態においては、該組成物は、本明細書に記載のMUC-1アミノ酸配列をコードする本発明のポリヌクレオチド配列をコードするベクターを含むDNAでコーティングされた、複数の粒子、好ましくは金粒子を含む。別の実施形態においては、前記組成物は製薬上許容し得る賦形剤および本発明によるDNAベクターを含む。
【0050】
前記組成物は、アジュバントを含んでもよく、あるいはアジュバントもしくは免疫賦活剤と共に、またはそれと連続的に投与してもよい。
【0051】
かくして、本発明のベクターを免疫賦活剤と共に用いるのも本発明の実施形態である。好ましくは、免疫賦活剤を本発明の核酸ベクターと同時に投与し、好ましい実施形態においては一緒に製剤化する。そのような免疫賦活剤としては(このリストは網羅的なものではなく、他の薬剤を排除するものではない)、イミキモッド[S-26308, R-837], (Harrisonら、「イミキモッドのみ、または糖タンパク質ワクチンと組み合わせたイミキモッドを用いる再発性HSV疾患の軽減(Reduction of recurrent HSV disease using imiquimod alone or combined with a glycoprotein vaccine)」 Vaccine 19: 1820-1826, (2001))、およびレシキモッド[S-28463, R-848] (Vasilakosら、「免疫応答改変剤R-848のアジュバント活性:CpG ODNとの比較(Adjuvant activities of immune response modifier R-848: Comparison with CpG ODN)」 Cellular immunology 204: 64-74 (2000))などの合成イミダゾキノリン;ツカレソール(Rhodes, J.ら、「共刺激シッフ塩基形成薬剤による免疫系の治療的増強作用(Therapeutic potentiation of the immune system by costimulatory Schiff-base-forming drugs)」 Nature 377: 71-75 (1995))などの、抗原提示細胞およびT細胞表面上で構成的に発現されるカルボニルおよびアミンのシッフ塩基;タンパク質もしくはペプチドとしてのサイトカイン、ケモカインおよび共刺激分子(これはインターフェロン、特にインターフェロンα、GM-CSF、IL-1α、IL-1β、TGF-αおよびTGF‐β、インターフェロンγ、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18およびIL-21などのTh1誘導因子、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10およびIL-13などのTh2誘導因子などの前炎症性サイトカイン、ならびにMCP-1、MIP-1α、MIP-1β、RANTES、TCA-3、CD80、CD86およびCD40Lなどの他のケモカインおよび共刺激遺伝子を含む);CTLA-4およびL-セレクチンなどの他の免疫刺激標的化リガンド;Fasなどのアポトーシス刺激タンパク質およびペプチド、(49);バクスフェクチン(Reyesら、「バクスフェクチンは抗原特異的抗体力価を増強し、プラスミドDNA免疫化に対するTh1型免疫応答を維持する(Vaxfectin enhances antigen specific antibody titres and maintains Th1 type immune responses to plasmid DNA immunization)」 Vaccine 19: 3778-3786)、スクアレン、α-トコフェロール、ポリソルベート80、DOPCおよびコレステロールなどの合成脂質に基づくアジュバント、エンドトキシン、[LPS]、(Beutler, B.,「エンドトキシン、トール様受容体4、および自然免疫の輸入リム(Endotoxin, Toll-like receptor 4, and the afferent limb of innate immunity)」 Current Opinion in Microbiology 3: 23-30 (2000)); CpGオリゴ-およびジ-ヌクレオチド(Sato, Y.ら、「効率的な皮内遺伝子免疫化に必要な免疫賦活性DNA配列(Immunostimulatory DNA sequences necessary for effective intradermal gene immunization)」 Science 273 (5273): 352-354 (1996)、Hemmi, H.ら、「トール様受容体は細菌DNAを認識する(A Toll-like receptor recognizes bacterial DNA)」 Nature 408: 740-745, (2000))ならびに合成マイコバクテリアリポタンパク質、マイコバクテリアタンパク質p19、ペプチドグリカン、テイコイン酸およびリピドAなどの、Th1誘導性サイトカインを産生するトール受容体の引き金を引く他の可能性のあるリガンドが挙げられる。コレラ毒素、大腸菌毒素およびその突然変異トキソイドなどの他の細菌性免疫賦活タンパク質を用いることもできる。
【0052】
主にTh1型応答を惹起するための特定の好ましいアジュバントとしては、例えば、モノホスホリルリピドA、好ましくは3-デ-O-アシル化モノホスホリルリピドAが挙げられる。MPL(登録商標)アジュバントがCorixa Corporation (Seattle, WA;例えば、米国特許第4,436,727号; 4,877,611号; 4,866,034号および4,912,094号を参照)から入手可能である。CpG含有オリゴヌクレオチド(CpGジヌクレオチドはメチル化されていない)も主にTh1応答を誘導する。そのようなオリゴヌクレオチドはよく知られており、例えば、WO 96/02555、WO 99/33488および米国特許第6,008,200号および5,856,462号に記載されている。免疫賦活性DNA配列も、例えば、Satoら、Science 273:352, 1996により記載されている。別の好ましいアジュバントとしては、Quil Aなどのサポニン、またはQS21およびQS7(Aquila Biopharmaceutical Inc., Framingham, MA)などのその誘導体;エスチン;デジトニン;もしくはギプソフィラ(Gypsophila)もしくはキノア(Chenopodium quinoa)のサポニンが挙げられる。
【0053】
また、MUC-1を発現する腫瘍または転移の治療または予防における、本発明によるポリヌクレオチド、または本発明によるベクターの使用も提供される。
【0054】
本発明はまた、有効量の本発明によるポリヌクレオチド、ベクターまたは医薬組成物を投与することを含む、MUC-1を発現する腫瘍、転移などのそれに関連する任意の症状もしくは疾患を治療または予防する方法も提供する。医薬組成物の投与は、例えば、「初回免疫−追加免疫」治療的ワクチン接種計画において、1つ以上の個別用量の形態を取ってもよい。特定の事例では、「初回の」ワクチン接種は、好ましくは、プラスミド由来ベクター中に組み込まれた、本発明によるポリヌクレオチドの粒子を介するDNA送達によるものであり、「追加免疫」は、同じポリヌクレオチド配列を含む組換えウイルスベクターの投与、またはアジュバント中のそのタンパク質を用いる追加免疫によるものであってよい。逆に、初回免疫がウイルスベクターまたはタンパク質製剤、典型的にはアジュバント中で製剤化されたタンパク質を用いるものであり、追加免疫が本発明のDNAワクチンでありうる。
【0055】
上記で考察したように、本発明は、本発明のヌクレオチド配列を含む発現ベクターを含む。そのような発現ベクターは、分子生物学の分野で日常的な手法で構築され、タンパク質を発現させるために、例えば、プラスミドDNAならびに好適なイニシエーター、プロモーター、エンハンサーおよび他のエレメント、例えば、必要であり、正確な方向に配置されたポリアデニル化シグナルの使用を含みうる。他の好適なベクターは当業者には明らかであろう。この点に関してさらに例を挙げるなら、本発明者らはSambrookら、Molecular Cloning: a Laboratory Manual.第2版、CSH Laboratory Press.(1989)を参照している。
【0056】
またはベクター中での本発明における使用のために、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、宿主細胞によるコード配列の発現を提供することができる制御配列に機能し得る形で連結されるが、すなわち、このベクターは発現ベクターである。用語「機能し得る形で連結され」とは、記載の構成要素がその意図される様式で機能することを許容する関係にある並置を指す。コード配列に「機能し得る形で連結された」プロモーターなどの調節配列を、コード配列の発現が調節配列と適合する条件下で達成されるような方法で配置する。
【0057】
ベクターは、複製起点、必要に応じてポリヌクレオチドの発現のためのプロモーターおよび必要に応じて該プロモーターの調節因子を備えた、例えば、プラスミド、人工染色体(例えば、BAC、PAC、YAC)、ウイルスまたはファージベクターであってもよい。ベクターは1個以上の選択マーカー遺伝子、細菌プラスミドの場合は例えばアンピシリンもしくはカナマイシン耐性遺伝子、または真菌ベクターについては耐性遺伝子を含んでもよい。ベクターを、例えば、DNAもしくはRNAの製造のためにin vitroで用いるか、または、例えば、該ベクターによりコードされたタンパク質の製造のために、宿主細胞、例えば、哺乳動物宿主細胞をトランスフェクトもしくは形質転換するのに用いることができる。このベクターを、例えば、DNAワクチン接種の方法または遺伝子治療において、in vivoで用いられるように適合させることもできる。
【0058】
プロモーターおよび他の発現調節シグナルを、発現を設計する宿主細胞と適合するように選択することができる。例えば、哺乳動物プロモーターとしては、カドミウムなどの重金属に応答して誘導することができるメタロチオネインプロモーター、およびβ-アクチンプロモーターが挙げられる。SV40ラージT抗原プロモーター、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)極初期(IE)プロモーター、ラウス肉腫ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルスプロモーター、またはHPVプロモーター、特にHPV上流調節領域(URR)などのウイルスプロモーターを用いることもできる。これらのプロモーターは全て記載されており、当業界で容易に入手可能である。
【0059】
好ましいプロモーターエレメントは、イントロンAを含まないが、エクソン1を含むCMV極初期プロモーターである。従って、HCMV IE初期プロモーターの制御下で本発明のポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。
【0060】
好適なウイルスベクターの例としては、単純ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアまたはαウイルスベクターおよびレトロウイルス、例えば、レンチウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスが挙げられる。これらのウイルスを用いる遺伝子導入技術は当業者には公知である。例えば、レトロウイルスベクターを用いて、本発明のポリヌクレオチドを宿主ゲノム中に安定に組み込むことができるが、そのような組換えは好ましくない。反対に、複製欠損アデノウイルスベクターはエピゾームのままであり、従って一過性発現を可能にする。昆虫細胞(例えば、バキュロウイルスベクター)、ヒト細胞または細菌における発現を駆動することができるベクターを用いて、例えば、サブユニットワクチンとしての、または免疫アッセイにおける使用のために、本発明のポリヌクレオチドによりコードされるHIVタンパク質を多量に製造することができる。本発明のポリヌクレオチドは、全長ワクシニア構築物を作製する以前の試みが不成功であったので、ウイルスワクチンにおいて特に有用である。
【0061】
細菌ベクター、例えば、弱毒化サルモネラ菌を用いることもでき、またはリステリア菌を細菌ベクターとして用いることができる。本発明によるポリヌクレオチドは、in vitro、in vivoまたはex vivoで生じ得るコード化タンパク質の発現による製造において有用である。従って、前記ヌクレオチドは、例えば、収率を増加させるために、組換えタンパク質合成に関与させてもよく、または実際、DNAワクチン接種技術において用いられる治療剤そのものとしての使用も見出しうる。本発明のポリヌクレオチドを、in vitroまたはex vivoでコード化タンパク質の製造において用いる場合、例えば、細胞培養物中の細胞を、発現させようとするポリヌクレオチドを含むように改変することができる。そのような細胞としては、一過性の、あるいは好ましくは安定な哺乳動物細胞系が挙げられる。本発明によるポリペプチドをコードするベクターの挿入により改変することができる細胞の特定例としては、哺乳動物のHEK293T、CHO、HeLa、293およびCOS細胞が挙げられる。選択される細胞系は、安定であるだけでなく、ポリペプチドの成熟したグリコシル化および細胞表面発現を可能にするものであるのが好ましい。発現を形質転換された卵母細胞中で達成することができる。ポリペプチドを、トランスジェニック非ヒト動物、好ましくはマウスの細胞中で、本発明のポリヌクレオチドから発現させることができる。本発明のポリヌクレオチドからポリペプチドを発現するトランスジェニック非ヒト動物は本発明の範囲内に含まれる。
【0062】
本発明はさらに、哺乳動物被験体に、有効量のそのようなワクチンまたはワクチン組成物を投与することを含む、該哺乳動物被験体にワクチン接種する方法を提供する。最も好ましくは、DNAワクチン、ワクチン組成物および免疫治療剤における使用のための発現ベクターはプラスミドベクターである。
【0063】
DNAワクチンを、例えば、シリンジもしくは高圧ジェットを用いて投与される液体製剤中の「裸のDNA」の形態、またはリポソームもしくは刺激性トランスフェクション増強剤とともに製剤化したDNAの形態で、または粒子媒介DNA送達(PMDD)により投与することができる。これらの送達系は全て当業界で周知である。ベクターを、例えば、ウイルスベクター送達系を用いて哺乳動物に導入することができる。
【0064】
本発明の組成物を、筋肉内、皮下、腹腔内もしくは静脈内などのいくつかの経路、経鼻などの粘膜経路により送達することができる。
【0065】
好ましい実施形態においては、前記組成物を皮内的に送達する。特に、前記組成物を、例えば、Hayneら、J Biotechnology 44: 37-42 (1996)に記載のものなどの、ベクターをビーズ(例えば、金)上にコーティングした後、高圧下で表皮中に投与することを含む遺伝子銃(特に、粒子ボンバードメント)投与技術を用いて送達する。
【0066】
1つの例においては、気体駆動性粒子加速を、Powderject Pharmaceuticals PLC (Oxford, UK)およびPowderject Vaccines Inc. (Madison, WI)により製造されたものなどの装置を用いて達成することができ、そのいくつかの例が米国特許第5,846,796号; 6,010,478号; 5,865,796号; 5,584,807号;および欧州特許第0500 799号に記載されている。この手法は、ポリヌクレオチドなどの顕微鏡的粒子の乾燥粉末製剤を、携帯型装置で生成されたヘリウムガスジェット内で高速まで加速し、該粒子を目的の標的組織、典型的には皮膚中に推進させる、針を用いない送達手法を提供する。粒子は好ましくは0.4〜4.0μm、より好ましくは0.6〜2.0μm直径の金ビーズであり、DNAコンジュゲートをこれらの上にコーティングした後、「遺伝子銃」中に入れるためにカートリッジまたはカセット中に入れる。
【0067】
関連する実施形態において、本発明の組成物の気体駆動性無針注入にとって有用である他の装置および方法としては、Bioject, Inc.(Portland, OR)により提供されるものが挙げられ、そのいくつかの例が米国特許第4,790,824号; 5,064,413号; 5,312,335号; 5,383,851号; 5,399,163号; 5,520,639号および5,993,412号に記載されている。
【0068】
別の実施形態においては、本発明のヌクレオチドを、その針上にコーティングされたDNAを有するかまたはリザーバーから組成物を送達することができる微小針により、投与することができる。抗原性ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むベクターを、予防的または治療的に有効である量で投与する。投与される量は、一般的には、用量あたり、粒子媒介送達については1ピコグラム〜1ミリグラム、好ましくは1ピコグラム〜10マイクログラムの範囲、およびヌクレオチドの他の経路については10マイクログラム〜1ミリグラムの範囲にある。正確な量は、免疫しようとする患者の体重および投与経路に応じてかなり変化してもよい。
【0069】
抗原性ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む免疫原成分を、1回きりで投与するか、または約1日〜約18ヶ月の間隔で、例えば、1〜7回、好ましくは1〜4回、反復して投与することができる。さらに、疾患の進行をモニターしながら、より長期間、定期的な投与を必要とすることもありうる。例えば、慢性的な癌または他の慢性状態については、18ヶ月よりも長い期間に渡る毎月の投与を必要としうる。いくらかの患者/疾患状態については、患者の生涯に渡る定期的投与が必要になりうることが考えられる。しかしながら、再び、この治療計画は、患者の大きさ、治療/防御しようとする疾患、投与するヌクレオチド配列の量、投与経路、および通常の知識を有する医師にとっては明らかである他の要因に応じて大幅に変化するであろう。患者は、その全体の治療計画の一部として、1種以上の他の抗癌剤の投与を受けてもよい。
【0070】
患者に裸のポリヌクレオチドまたはベクターを導入するための好適な技術としては、好適な運搬体を用いる局所適用も挙げられる。この核酸を、皮膚に局所投与するか、または例えば鼻内、経口、膣内もしくは直腸内投与により粘膜表面に投与することができる。裸のポリヌクレオチドまたはベクターを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの製薬上許容し得る賦形剤と一緒に存在させてもよい。別々に、またはDNA製剤中に含有させた、ブピバカインなどの促進剤の使用により、DNA取込みをさらに容易にすることができる。レシピエントに直接的に核酸を投与する他の方法としては、超音波、電気刺激、エレクトロポレーションおよび米国特許第5,697,901号に記載されたマイクロシーディングが挙げられる。
【0071】
核酸構築物の取込みを、例えば、トランスフェクション剤の使用などのいくつかの公知のトランスフェクション技術により増強することができる。これらの薬剤の例としては、カチオン剤、例えば、リン酸カルシウムおよびDEAE-デキストランならびにリポフェクタント、例えば、リポフェクタムおよびトランスフェクタムが挙げられる。投与しようとする核酸の用量を変更することができる。
【0072】
本発明の核酸配列を、形質転換細胞を用いて投与することもできる。そのような細胞としては、被験体から採取された細胞が挙げられる。本発明の裸のポリヌクレオチドまたはベクターを、in vitroでそのような細胞中に導入した後、形質転換細胞を被験体に戻すことができる。本発明のポリヌクレオチドは、後で、相同組換え事象により、細胞中にすでに存在する核酸中に組み込まれてもよい。必要に応じて、形質転換細胞をin vitroで増殖させ、得られた細胞の1個以上を本発明において用いることができる。公知の外科的または微小外科的技術(例えば、移植、マイクロインジェクションなど)により患者の適当な部位に細胞を提供することができる。
【実施例】
【0073】
1. MUC1コドン改変の導入
手法
MUC1は0.535のRSCU(コドン係数指数(CI)としても知られる)を有するヒト遺伝子であるが、コドン改変はコドン指数および発現をさらに改善するであろう。これは特に、用量が限定されうる臨床上の状況において重要である。第2の利点は、コドン使用の操作はMUC1免疫治療剤とゲノム中のMUC1遺伝子座の間の組換えの可能性を低下させることである。これは、組換えがゲノム中へのプラスミドの組み込みにつながる臨床上の状況において重要である。
【0074】
1.1 配列設計
MUC1の改変のための出発配列を図1に示す。これはプラスミドJNW656に由来するものであり、7個のVNTRリピート単位を含むMUC1発現カセットのコード配列全体を示す。コドン改変の前に、オリゴヌクレオチドからVNTRリピート単位を構築することが以前は困難であったため、VNTRリピートを含まない仮想MUC1配列を作成した(図2)。この配列は0.499のCI値を有する。この戦略は、MUC1の非VNTR配列をコドン最適化した後、コドン改変された配列中に遺伝子工学的に作製された制限酵素部位を用いて、7個のVNTR断片を再挿入するというものであった。
【0075】
Syngeneプログラムを用いて、図2の仮想MUC1配列に基づいて仮想コドン改変配列の選択を得た(図3)。表1は、出発MUC1配列と2個の代表的なコドン改変配列のCI値の比較を示す。
【表1】

【0076】
コドン改変に加えて、全配列を制限酵素クローニング部位についてスクリーニングした。最も高いCI値および好ましい制限酵素部位プロフィールに基づいて、配列2を選択した。クローニングおよび発現を容易にするために、以下の変更を配列に対して行った(図4を参照)。
【0077】
1) 5’および3’クローニング部位を加えた(NheI、XbaI、XhoI、NotIおよびBamHI)。
【0078】
2) Kozak配列(GCCACC)を、開始ATGスタートコドンの5’側に挿入した。
3) 2個の不適当なBlpI部位を、コドン64(AGC→TCC)および209(AGC→TCC)でのサイレント突然変異により除去した。
4) 稀なロイシンコドンを、コドン259での以下の突然変異により除去した(TTG→CTG)。
5) Bpu10I/BbvCI部位を再導入して(図4、囲み領域を参照)、7 x VNTR断片のクローニングを容易にした。
6) BlpI部位を再導入して(図4、囲み領域を参照)、7 x VNTR領域のクローニングを容易にした。
【0079】
この遺伝子操作された配列を図4に示すが、これは0.735のCI値を有する。Syngeneプログラムを用いて、この配列を、20塩基の最小重複を有する52〜60merのオリゴヌクレオチドに断片化した。
【0080】
1.2 オリゴの構築
2段階PCRプロトコルを用いて、最初に重複プライマーを以下の条件を用いて組み立てた。これにより断片の多様な集団が作製される。完全長断片を、5’および3’末端プライマーを用いて回収/増幅させた。得られたPCR断片をアガロースゲルから切り出し、精製し、NheIおよびXhoIで制限処理し、pVAC中にクローニングした。陽性クローンを制限酵素分析により同定し、配列を検証した。検証されたベクターは標識されたJNW749であった。JNW749中のMUC1のコドン改変配列は、オリゴヌクレオチド構築のエラーを生じやすい性質に起因する2個のサイレント突然変異(図5で強調表示されている)を含む。
【0081】
構築反応−PCR条件
反応混合物:
1 x Pfxバッファー
1μl オリゴ・プール
0.5 mM dNTPs
Pfxポリメラーゼ(5U)
1 mM MgSO4
総量=50μl
【0082】
1. 94℃、30秒
2. 40℃、120秒
3. 72℃、10秒
4. 94℃、15秒
5. 40℃、30秒
6. 72℃、20秒+3秒/サイクル
7. 工程4までのサイクルを25回
8. 4℃で保持
【0083】
回収反応−PCR条件
反応混合物:
1 x Pfxバッファー
10μl構築反応混合物
0.625 mM dNTPs
50 pmol 5’末端プライマー
50 pmol 3’末端プライマー
Pfxポリメラーゼ(5U)
1 mM MgSO4
1 x Pfxエンハンサー
総量=50μl
【0084】
1. 94℃、45秒
2. 60℃、30秒
3. 72℃、120秒
4. 工程1までのサイクルを25回
5. 72℃、240秒
6. 4℃で保持
【0085】
1.3 7 x VNTR断片の再導入
JNW749は、7 x VNTR単位を含まないコドン改変MUC1発現カセットを含む。7 x VNTRカセットを、JNW656からBlpI/BbvCIカセットに切り出し、予めBlpIおよびBbvCIで制限処理したJNW749中に連結した。制限酵素分析および配列検証の後、標識されたクローンJNW758をさらなる分析のために選択した。JNW758中のMUC1カセットの配列を図5に示す。JNW758中のMUC1発現カセットの最終的なCI値は0.699であり、これは出発値0.535よりもかなり増加している。
【0086】
1.4 MUC1の発現の比較
ベクターJNW656(天然MUC1)とJNW758(コドン改変MUC1)からのMUC1の発現を、CHO細胞中への一過性トランスフェクションに従って比較した。フローサイトメトリー分析(FACS)を用いると、その表面にMUC1を発現する細胞の割合は、天然カセット(JNW656について13.2%)とコドン改変されたカセット(JNW758について18.1%)の間で非常に類似している。ウェスタンブロットにより分析した場合(図6)、その結果は、コドン改変されたMUC1の発現が天然MUC1と比較した場合に中程度に増強されていることを示唆している。ウェスタンブロット上のMUC1発現を、単位面積当たり密度ツール(Area Density Tool) (Labworks, UVP Ltd, UK)を用いるデンシトメトリー分析により定量した。JNW656からのMUC1発現(天然MUC1)は48527の任意点密度値を与えたが、コドン改変MUC1(JNW758)は94839の値を与えた。このことはコドン改変されたMUC1の発現が天然の7 x VNTR MUC1と比較した場合に約2倍増強されていることを示唆している。
【0087】
1.5 DNA類似性
MUC1の出発配列(JNW656由来)およびコドン改変配列(JNW758由来)のアラインメントClustalVに従うペア距離(加重値)により、コドン改変配列が元のMUC1配列と82.8%類似していることが確認される。ClustalVアラインメントに従う7 x VNTR領域を含まない同じ配列(BbvCI部位とBlpI部位の間)の類似性はさらに75.1%に低下している。
【0088】
1.6 7 x VNTR MUC1およびコドン改変された7 x VNTR MUC1に対する細胞性応答の比較
pVAC(空のベクター)、JNW656(7 x VNTR MUC1)およびJNW758(コドン改変された7 x VNTR MUC1)を用いた免疫化後の細胞性応答を、0日目の一次免疫および21日目の追加免疫後のELISPOTにより評価した。CD8ペプチドSAPDNRPAL(SAP)を用いて、追加免疫後7日目にアッセイを行った。図7は、SAPペプチドおよびIL-2による脾臓細胞の再刺激後のIFNγ産生は、7 x VNTR MUC1またはコドン改変された7 x VNTR MUC1を用いて免疫された群において同等であることを示す。
【0089】
ウェスタンブロットからの結果と合わせれば、これらのデータは、コドン改変された7 x VNTR MUC1は、天然の7 x VNTR MUC1の発現および免疫原性に好都合に匹敵し、ゲノムMUC1配列との組換えの可能性が低下したという点で大きな利点を有することを示唆している。
【0090】
1.7 さらなる方法
一過性トランスフェクションアッセイの実施方法
種々のDNA構築物からのMUC1発現を、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞中へプラスミドを一過性トランスフェクションした後、総細胞タンパク質に対するウェスタンブロット、または細胞膜に発現されたMUC1のフローサイトメトリー分析を行うことにより、分析することができる。一過性トランスフェクションを、製造業者のガイドラインに従ってTransfectam試薬(Promega)を用いて実施することができる。簡単に述べると、24穴組織培養プレートに、1 ml DMEM完全培地(DMEM、10% FCS、2 mM L-グルタミン、ペニシリン100IU/ml、ストレプトマイシン100μg/ml)中、1ウェルあたり5 x 104個のCHO細胞を播種し、37℃で16時間インキュベートする。0.5μg DNAを25μlの0.3 M NaCl(1ウェルに対する十分量)に加え、2μlのTransfectamを25μlのMilli-Qに加える。このDNAおよびTransfectam溶液は緩やかに混合し、室温にて15分間インキュベートすべきである。このインキュベーション工程の間に、細胞をPBS中で1回洗浄し、150μlの無血清培地(DMEM、2 mM L-グルタミン)で覆う。次いで、DNA-Transfectam溶液を滴下しながら細胞に加え、プレートを緩やかに振とうし、37℃にて4〜6時間インキュベートすべきである。次いで、500μlのDMEM完全培地を加え、細胞を37℃にてさらに48〜72時間インキュベートする。
【0091】
1.8 MUC1プラスミドで一過性トランスフェクトされたCHO細胞のフローサイトメトリー分析
一過性トランスフェクションの後、CHO細胞をPBSで1回洗浄し、Versene (1:5000)/0.025%トリプシン溶液で処理して、細胞を懸濁液中に移した。トリプシン処理の後、CHO細胞をペレット化し、FACSバッファー(PBS、4% FCS、0.01%アジ化ナトリウム)中に再懸濁した。一次抗体ATR1を15μg/mlの最終濃度で加え、サンプルを氷上で15分間インキュベートした。対照細胞をATR1の非存在下でFACSバッファーと共にインキュベートした。細胞をFACSバッファー中で3回洗浄し、10μlの二次抗体ヤギ抗マウス免疫グロブリンFITC結合F(ab’)2(Dako, F0479)を含む100μlのFACSバッファー中に再懸濁し、氷上で15分間インキュベートした。二次抗体染色の後、細胞をFACSバッファー中で3回洗浄した。FACS分析を、FACScan(Becton Dickinson)を用いて実施した。1サンプルあたり1000〜10000個の細胞を、FSC(前角光分散)およびSSC(集積光分散)ならびにグリーン(FL1)蛍光(集積蛍光の対数として表される)について同時に測定した。FCSが範囲外である凝集物を除いて、記録を取った。データを、細胞数(Y軸) 対 蛍光強度(X軸)としてプロットしたヒストグラムとして表した。
【0092】
1.9 MUC1プラスミドで一過性トランスフェクトされたCHO細胞のウェスタンブロット分析
一過性トランスフェクトされたCHO細胞をPBSで洗浄し、Versene (1:5000)/0.025%トリプシン溶液で処理して、細胞を懸濁液中に移した。トリプシン処理の後、CHOをペレット化し、50μlのPBS中に再懸濁した。50 mM DTTを含む2 x TRIS-グリシンSDSサンプルバッファー(Invitrogen)を等量加え、溶液を95℃に5分間加熱した。1〜20μlのサンプルを4〜20% TRIS-グリシンゲル1.5 mm(Invitrogen)上にロードし、1 x TRIS-グリシンバッファー(Invitrogen)中、一定電圧(125V)で90分間電気泳動した。予め染色した広範囲マーカー(New England Biolabs, #P7708S)を用いて、サンプルをサイズ表示した。電気泳動の後、サンプルを、Xcell III Blot Module (Invitrogen)、20%メタノールを含む1 x トランスファーバッファー(Invitrogen)および25Vの一定電圧を90分間用いて、メタノール中で予め湿らせたImmobilon-P PVDF膜(Millipore)に転写した。この膜を、3%乾燥スキムミルク(Marvel)を含むTBS-Tween(0.05%のTween20を含むTris緩衝生理食塩水、pH7.4)中、4℃にて一晩ブロックした。一次抗体(ATR1)を1:100に希釈し、室温にて1時間、膜と共にインキュベートした。TBS-Tween中でよく洗浄した後、二次抗体を、3%乾燥スキムミルクを含むTBS-Tween中で1:2000に希釈し、室温にて1時間、膜と共にインキュベートした。よく洗浄した後、膜をSupersignal West Pico Chemiluminescent基質(Pierce)と共に5分間インキュベートした。過剰の液体を除去し、膜を2枚の付着フィルムの間に密封し、Hyperfilm ECLフィルム(AmershamPharmaciaBiotech)に1〜30分間露光させた。
【0093】
実施例2
7VNTR-MUC-1-PADRE-Cおよびコドン改変された7VNTR-MUC-1-PADRE-Cに対する細胞性応答の比較
2.1 コドン最適化されたMUC-1 Padreの構築
PADREヘルパーエピトープに融合されたMUC1発現カセットの構築
PADREヘルパーエピトープ(Immunity(1994) 1(9):751-761)を含む3つのMUC1設計を構築した。PADREはT細胞受容体にアクセス可能な位置にかさ高い/荷電した残基の置換を含むポリアラニン主鎖を含むpan-DR結合エピトープである。最初に短いリンカーをpVAC1に挿入することにより、C末端融合物を作製した。このリンカーを、2つのプライマーPADREFORおよびPADREREVをアニーリングさせることにより作製し、そのリンカーをNheIおよびXhoI部位を介してpVAC1中にクローニングして、ベクターJNW800を作製した。JNW656(7 x VNTR MUC1)およびJNW758(コドン最適化された7 x VNTR MUC1)由来の7 x VNTR MUC1発現カセットを、MUC1カセットをXbaI断片に切り出し、JNW800中、XbaI部位にクローニングすることにより挿入して、以下の2つのベクターを作製した。
7 x VNTR MUC1 C末端PADRE: JNW810
7 x VNTR MUC1(コドン最適化)C末端PADRE: JNW812
【0094】
JNW810およびJNW812由来のMUC1発現カセットおよびPADREエピトープを配列決定した。
【0095】
PADRE配列を、最もC末端に、そしてさらにMUC1のシグナル配列の直後の第2の位置に挿入する第3のベクターを構築した。シグナル配列の下流にN末端PADREエピトープを挿入する理由は、エピトープがMUC1ペプチドの天然の翻訳後プロセシングの一部として切断されるのを回避することであった(MUC1中の切断部位の詳細については、Biochem. Biophys. Res. Comm (2001) 283: 715-720を参照)。このベクターを2段階プロセスで構築した。第1に、N末端およびC末端PADREエピトープの両方を含むMUC1のN末端配列をin silicoで作成した後、それを、重複オリゴ(記載のもの)を用いるPCRにより構築した。このPCR断片を、NheI-XhoI部位を介してpVAC1中に挿入し、配列を検証し、プラスミドJNW802を作製した。コドン最適化された7 x VNTR MUC1のC末端部分を、JNW758からBbcVI-XbaI断片に単離し、JNW802中にクローニングし、かくして2個のPADREエピトープを含む7 x VNTR MUC1発現カセットを再作製した。このベクターは標識された7 x VNTR MUC1(コドン最適化)C/N’PADREまたはJNW814である。
【0096】
2.2 30匹のC57マウスを5つの群(6匹のマウス/群)で評価した
A. PVac 7 VNTR JNW656
B. pVac 7 VNTR PADRE C(コドン最適化) JNW812
C. pVac 7 VNTR PADRE C(野生型) JNW810
D. pVac 7 VNTR PADRE C/N’(コドン最適化) JNW814
E. pVac Empty
【0097】
各動物を、0、12および42日目に、発現プラスミドを用いる粒子媒介免疫化(1μg MUC-1 DNA + 0.5μg IL-2)により免疫し、細胞性免疫応答を28日目および49日目に評価した。
【0098】
結果を図8AおよびBに示す。
【0099】
結論
PVAC 7VNTR、PVAC 7VNTR-PADRE-Cコドン最適化配列、PVAC 7VNTR-PADRE-C wt配列、PVAC 7VNTR-PADRE C/N’コドン最適化配列を用いる免疫化後の細胞性応答を、0日目の初回免疫および21日目および42日目の2回の追加免疫後にELISPOTにより評価した。アッセイを、MUC1 CD8ペプチド(SAP)、MUC1 CD4ペプチド(298/9)およびPADREペプチドを用いて、追加免疫の7日後に行った。結果は、CD4およびCD8の両方のT細胞のMUC1特異的応答が、28日目および49日目にwtマウスにおけるよりもコドン最適化された構築物において類似(またはわずかに良好である)しており、相同組換えを回避するように設計されていることを示している。
【0100】
結論として、MUC1抗原内のコドン最適化配列の含有により、タンパク質発現が改善され、in vivoで用いた場合と同様か、またはわずかに良好な免疫応答を生成し、そしてこれらはヒトの臨床ワクチンにおいて使用するためのより良好な安全性プロフィールを有することが期待される。
【0101】

【0102】

【0103】

【0104】

【0105】

【0106】

【0107】

【0108】

【0109】

【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】MUC1のコドン改変に用いた出発配列。MUC1発現カセット配列は、ベクターJNW656から取得する。開始および終止コドンは太字である。Kozak配列はイタリック体である。制限部位に下線を付している。
【図2】コドン改変前の、7 x VNTRリピート配列を含まないMUC1配列。開始および終止コドンは太字である。制限クローニング部位に下線を付している。7 x VNTR断片の挿入のためのBlpIおよびBbvCI部位に二重下線を付している。
【図3】2つの代表的なMUC1コドン改変配列。
【図4】制限部位(下線)、Kozak配列(イタリック体)、開始および終止コドン(太字)、BbvCI(囲み)およびBlpI(囲み)を含む、遺伝子工学的に作製されたMUC1コドン改変配列。後者の2つの特徴は7 x VNTR断片の再導入にとって必須である。
【図5】JNW758由来の7 x VNTR断片を含むMUC1発現カセットの最終的なコドン改変配列。このカセットは、0.699のコドン係数指数を有する。制限部位を下線、開始および終止コドンを太字、Kozak配列をイタリック体、BbvCIおよびBlpI部位を囲み、2個のサイレント突然変異の位置を二重下線で示す。
【図6】CHO細胞への一過性トランスフェクション後の天然MUC1(JNW656)およびコドン改変されたMUC1(JNW758)の発現の比較。
【図7】pVAC empty(対照)、7 x VNTR MUC1(JNW656)およびコドン改変された7 x VNTR MUC1(JNW758)を用いてPMID免疫した後のIFNγ ELISPOT細胞性応答の比較。SAPはCD8 MUC1エピトープSAPDNRPALである。各バーは個々のマウスを表す。
【図8】PVAC 7 VNTR、PVAC 7 VNTR-PADRE-C(コドン最適化配列)、PVAC 7 VNTR-PADRE-C (野生型配列)、PVAC 7 VNTR-PADRE C/N’(コドン最適化配列)およびPVAC empty(対照)を用いてPMID免疫した後のIL-2 ELISPOT細胞性応答の比較。応答を、SAP(CD8 T細胞MUC1ペプチド)、298/9(CD4 T細胞MUC1ペプチド)およびPADREペプチドを用いて読み取った。分析を28日目(A)および49日目(B)に行った。
【図9】7 x VNTR MUC1(プラスミドJNW656中)のタンパク質配列およびDNA配列。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MUC-1を発現する腫瘍を認識できる免疫応答をin vivoで生じさせることができるMUC-1誘導体をコードする核酸分子であって、少なくとも0.6の非反復領域に関するRSCU値を有し、かつ野生型MUC-1の対応する非反復領域に関して、図9に示されるMUC-1 VNTRヌクレオチド配列と比較して85%未満の同一性レベルを有する、前記核酸分子。
【請求項2】
RSCUが少なくとも0.65である、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
同一性が80%未満である、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項4】
15個未満の完全なリピート単位を有する請求項1に記載のMUC-1誘導体をコードする核酸分子。
【請求項5】
完全なリピートを含まない、請求項4に記載の核酸分子。
【請求項6】
シグナル配列を含まない、請求項1〜6のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項7】
FLSFHISNL、NSSLEDPSTDYYQELQRDISEおよびNLTISDVSVの群からの1個以上の配列をコードする請求項1〜6のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項8】
Tヘルパーエピトープをコードする異種配列をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項9】
DNA分子である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のDNA分子を含むプラスミド。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の核酸または請求項10に記載のプラスミドと製薬上許容し得る賦形剤、希釈剤もしくは担体とを含む医薬組成物。
【請求項12】
担体が微粒子である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
微粒子が金である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
アジュバントをさらに含む、請求項11〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
医学における使用のための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の核酸、請求項10に記載のプラスミド、または請求項11〜14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
MUC-1を発現する腫瘍の治療または予防のための医薬の製造における、請求項1〜9のいずれか1項に記載の核酸の使用。
【請求項17】
安全かつ有効な量の請求項1〜9のいずれか1項に記載の核酸、または請求項10に記載のプラスミドを投与することを含む、腫瘍を治療または予防する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−524352(P2007−524352A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501975(P2006−501975)
【出願日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002007
【国際公開番号】WO2004/076665
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】