説明

上肢手指機能回復訓練装置

【課題】拇指の運動の制限がなく、小物を摘む等の拇指特有の細かな指先運動の実現が患側上肢手指に対して行うことができる上肢手指機能回復訓練装置を提供する。
【解決手段】
回復訓練装置の拇指動作支援機構300は、拇指の末節部、該拇指の基節部、及び中手骨部の各部位にそれぞれ装着される第1装着部320、第2装着部322、第3装着部328を有する第1リンク機構を備える。拇指動作支援機構300は第1支持本体310と、第1リンク機構と第1支持本体310にそれぞれ設けられ、各装着部を有するリンクアーム部を駆動することにより前装着部を介して拇指の各関節を可動する第1可動モータ326、第2可動モータ307、第3可動モータ330を備える。拇指動作支援機構300は、第1支持本体310を回転する第4可動モータ94を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上肢手指機能回復訓練装置に関し、特に、正常な運動機能を有する健側の上肢手指の動きに対応させて、運動機能の回復訓練を要する患側の上肢手指を他動的に運動させ、リハビリテーションを行うことが可能な上肢手指機能回復訓練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、三大成人病の一つとして数えられる脳卒中などの脳外科系疾患や、災害や交通事故などの人体に対して激しい衝撃が加わったことによる脊髄損傷などにより、身体(主に手足)の少なくとも一部の運動機能が著しく低下し、若しくは麻痺などによって損なわれることがある。この場合、特に脳卒中などの脳外科系疾患疾患の場合、全身の運動機能の全てが損なわれることはなく、いずれか一方の半身(左半身若しくは右半身)の運動機能が損なわれることが一般的である。なお、正常な運動機能を有する半身側を「健側(健常側)」、一方、運動機能が低下し、機能回復訓練等が必要な親身側を「患側」と呼称することが、医療関係者の間に一般的に定義されとおり、本明細書中においても掛かる定義に基づいて以下の説明を行うものとする。
【0003】
一般に、いずれか一方の半身の運動機能が低下した患者は、身体の運動機能の回復を行うために、種々のリハビリテーション等の機能回復訓練を行うことがある。このとき、リハビリテーションはリハビリテーション専門医或いは理学療法士などの専門的技術を有する医療スタッフの在籍する医療施設で行われることが多い。そして、係る医療スタッフによって各患者の運動機能を回復状況に応じて適切にプランニングされたリハビリテーションプログラム(メニュー)に則して、上述のリハビリテーションが行われている。
【0004】
前述したリハビリテーションの場合、患者は医療スタッフのいる専用の医療施設迄通院する必要がある。このため、1日に何回もリハビリテーションを受けることが難しくなり、この結果、回復の遅れが生じたり若しくは回復できるものもできなくなってしまうことがある。このため、リハビリテーションに関しては、患者が一人で手軽に、一日に何回でも、できれば自宅で行うことができる装置があることが好ましい。
【0005】
ところで、上肢運動すなわち、肩、肘、及び手関節の動作を補助するリハビリテーション機器は、開発例が多くあり、製品化もなされている。一方、手指のリハビリテーション機器は、5本の指を全ての関節を一度に屈曲伸展させるCPM装置しか製品化されていないのが現状である。
【0006】
そこで、出願人は、既に特許文献1の上肢手指リハビリシステムを提案している。このシステムは、脳卒中のように例えば右側半分といったような、左右のどちらか一方の半身に疾患が現れる場合、正常な健側の運動をもとに、患側の訓練運動を教示するように左右対称マスタ−スレーブ型の上肢手指リハビリシステムである。このシステムに使用されている上肢手指機能回復訓練装置に患側の手指を付けることにより健側上肢手指の運動と同じ運動を他動的に患側上肢手指に対して無理なく行わせることができる。
【0007】
なお、特許文献2は、ロボット型ハンドを用いて脳機能障害による手指の運動機能異常を計測し、手指運動軌跡と脳波活動状態をモニタすることによって、身体障害の程度を予測して、回復訓練プログラムの作成等を行うものであるが、上肢手指、特に拇指に取り付けされる動作支援機構の具体的な構成に関しては何ら開示がされていない。
【特許文献1】特開2004−267254号公報
【特許文献2】特開2003−569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の上肢手指機能回復訓練装置では、拇指と拇指以外の他の4本の指にそれぞれ取着される動作支援機構はいずれも同じ構成となっており、拇指の対立運動が考慮されていないため、拇指の運動が制限され、小物を摘む等の拇指特有の細かな指先運動の実現が困難である問題があった。
【0009】
本発明の目的は、拇指の運動の制限がなく、小物を摘む等の拇指特有の細かな指先運動の実現が患側上肢手指に対して行うことができる上肢手指機能回復訓練装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために請求項1の発明は、運動機能の回復訓練を要する患側上肢手指に装着され、前記患側上肢手指を他動的に運動させる上肢手指機能回復訓練装置において、拇指の末節部、基節部、及び中手骨部の各部位にそれぞれ装着される装着部をそれぞれ有する各リンクアーム部を直列連結した第1リンク機構と、前記第1リンク機構を回動自在に支持する第1支持本体と、前記第1リンク機構と前記第1支持本体にそれぞれ設けられ、前記各装着部を有するリンクアーム部を駆動することにより前記各装着部を介して前記拇指の各関節を可動する複数の第1リンク機構用可動モータと、前記第1支持本体を回転する内外転用可動モータとを含む拇指動作支援機構を備え、前記内外転用可動モータを回転することにより前記第1リンク機構が頂点を前記第1支持本体に固定した円錐運動をなし、前記第1支持本体に設けられた第1リンク機構用可動モータを回転することにより前記第1リンク機構が前記円錐運動の頂角を変えることを特徴とする上肢手指機能回復訓練装置を要旨とするものである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1において、前記第1リンク機構の複数の装着部は、前記拇指の末節部に装着される第1装着部と、前記拇指の基節部に装着される第2装着部と、前記拇指の中手骨部に装着される第3装着部とを含み、前記第1リンク機構の複数のリンクアーム部は、先端に前記第1装着部が回動自在に連結されるとともに自身の中間部に設けられた第1曲折部によって曲折自在に形成される第1リンクアーム部と、先端に前記第2装着部と前記第1リンクアーム部の基端が同軸にて回動自在に連結されるとともに自身の中間部に設けられた第2曲折部によって曲折自在に形成される第2リンクアーム部と、先端に前記第2リンクアーム部の基端が回動自在に連結され、前記第3装着部が取付けされた第3リンクアーム部を含み、
前記第1リンク機構の第1〜3リンクアーム部が、前記第1〜3装着部を介して拇指に装着された際、前記第1装着部、前記第1リンクアーム部、前記第2装着部と拇指で囲まれる第1閉ループと、前記第2装着部、前記第2リンクアーム部、前記第3装着部と拇指で囲まれる第2閉ループがとが互いに干渉しない構成にされていることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、上肢手指機能回復訓練装置 前記拇指動作支援機構は、手首が通過可能な空間域を備えるとともに、前記第1支持本体を前記空間域の回りで前記回転として公転させてガイドする第1支持本体ガイド体を備え、前記第1支持本体は、前記内外転用可動モータに回転駆動されることにより前記空間域に前記円錐運動の頂点が位置することを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項において、さらに、拇指以外の指の動作を支援する指動作支援機構を少なくとも1つ有し、前記指動作支援機構は、該指の中節部、及び基節部の各部位にそれぞれ装着される装着部をそれぞれ有する各リンクアーム部を直列連結した第2リンク機構と、前記第2リンク機構を回動自在に支持する第2支持本体と、前記第2リンク機構と前記第2支持本体にそれぞれ設けられ、第2リンク機構の各装着部を有するリンクアーム部を駆動することにより前記各装着部を介して前記指の各関節を可動する複数の第2リンク機構用可動モータを含むことを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、請求項4において、前記第2リンク機構の複数の装着部は、前記指の中節部に装着される第4装着部と、前記指の基節部に装着される第5装着部とを含み、前記第2リンク機構の複数のリンクアーム部は、先端に前記第4装着部が回動自在に連結されるとともに自身の中間部に設けられた第3曲折部によって曲折自在に形成される第4リンクアーム部と、先端に前記第5装着部と前記第4リンクアーム部の基端が同軸にて回動自在に連結されるとともに自身の中間部に設けられた第4曲折部によって曲折自在に形成される第5リンクアーム部を含み、前記第2リンク機構の第4,5リンクアーム部が、前記第4,5装着部を介して指に装着された際、前記第4リンクアーム部と指のPIP関節を含む第3閉ループと、前記第5リンクアーム部と、指のMP関節を含む第4閉ループがとが互いに干渉しない構成にされていることを特徴とする。
【0015】
請求項6の発明は、請求項5において、運動機能の回復訓練を要する患側の前腕に装着する前腕動作支援機構と、手関節動作支援機構とを有し、前記前腕動作支援機構は、前記前腕を通す部位を有するとともに支持台に対して往復回動自在に支持されて、該部位に通される該前腕の回内・回外を支援する前腕支持部と、前記前腕支持部を回動駆動する第1駆動モータと含み、前記手関節動作支援機構は、前記第1リンク機構の第1支持本体と前記第2リンク機構の第2支持本体を支持するとともに、該第1支持本体と第2支持本体を該前腕支持部の回転中心線を含む面に沿って往復移動可能に、前記前腕支持部に対して、往復移動自在に支持された移動部材と、該移動部材を前記往復移動のために駆動する第2駆動モータとを含むことを特徴とする。
【0016】
請求項7の発明は、請求項6において、前記手関節動作支援機構には、前腕の回内・回外時に生ずるトルクの検出を行う第1トルクセンサと、手関節の屈曲・伸展時に生ずるトルクの検出を行う第2トルクセンサが設けられたことを特徴とする。
【0017】
請求項8の発明は、請求項6又は請求項7において、前記前腕支持部は、円弧状に延びるガイド部を有するとともに、前記支持台に対して回転自在に支持されて前記ガイド部が円弧状の軌跡を有するように移動可能な可動ガイド体と、前記可動ガイド体のガイド部にてガイドされて回転自在に支持されるとともに前記前腕を通す部位が断面凹状をなす前腕支持体とにより構成され、前記第1駆動モータと前記可動ガイド体間及び前記第1駆動モータと前記前腕支持体間には、それぞれ前記可動ガイド体と前腕支持体に対して同方向の回転量を付与する第1及び第2駆動力伝達機構が設けられ、前記第2駆動力伝達機構の前記前腕支持体に付与する回転量は、前記第1駆動力伝達機構の前記可動ガイド体に付与する回転量よりも多くしたことを特徴とする。
【0018】
請求項9の発明は、請求項1乃至請求項8のうちいずれか1項において、前記各装着部には、力覚センサが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、内外転用可動モータを回転することにより前記第1リンク機構が頂点を前記支持本体に固定した円錐運動が可能となり、前記支持本体に設けられたリンクアーム用可動モータを回転することにより前記第1リンク機構が前記円錐運動の頂角を変えることができる。この結果、拇指の対立運動の動作支援を行うことができ、拇指の運動の制限がなく、小物を摘む等の拇指特有の細かな指先運動の実現が患側上肢手指に対して行うことができる。
【0020】
又、特許文献1の技術では、第2装着部に相当する部材と第1リンクアームに相当する部材の基端が同軸にて回動自在に連結されていないため、構造が複雑になり、大型化する問題があったが、請求項2の発明によれば、第2装着部と前記第1リンクアーム部の基端が同軸にて連結されている結果、第1閉ループと第2閉ループとが干渉しないため、拇指のIP関節の動作支援を行う可動モータを独立して制御することが実現できる。又、第1リンク機構の簡素化と小型化及び制御の高信頼性を得ることができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、第1支持本体を前記空間域の回りで前記回転として公転させてガイドする第1支持本体ガイド体を備え、前記第1支持本体は、前記内外転用可動モータに回転駆動されることにより前記空間域に前記円錐運動の頂点が位置する。この頂点は、第1支持本体ガイド体内に患側上肢手指の手首が配置されることにより、その手首内部に位置することになる。この結果、円錐運動の頂点が位置することにより、拇指の対立運動の動作支援を拇指に無理な負荷を掛けることなく行うことができ、拇指の運動の制限がなく、小物を摘む等の拇指特有の細かな指先運動の実現が患側上肢手指に対して行うことができる。
【0022】
請求項3の発明によれば、拇指動作支援機構による拇指の対立運動の動作支援とともに、指動作支援機構を有することにより、物を摘む動作を支援することができる。
特許文献1の技術では、第5装着部と前記第4リンクアーム部の基端が同軸にて回動自在に連結されていないため、構造が複雑になり、大型化する問題があったが、請求項4の発明では、第5装着部と前記第4リンクアーム部の基端が同軸にて連結されている結果、第3閉ループに相当するループと第4閉ループに相当する閉ループとは、第3閉ループと第4閉ループとが干渉しないため、指のPIP関節の動作支援を行う可動モータを独立して制御することが実現できる。又、第2リンク機構の簡素化と小型化及び制御の高信頼性を得ることができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、前記前腕動作支援機構により、前腕の回内・回外を支援できるとともに、手関節動作支援機構により、手関節の伸展屈曲運動を支援できる。このとき、前腕の回内又は回外した状態、或いは手関節の屈曲又は伸展した状態で、拇指の対立運動の動作支援を行うことができる。
【0024】
請求項6の発明によれば、第1トルクセンサにより前腕の回内・回外時に生ずるトルクの検出ができるとともに、又、第2トルクセンサにより、手関節の屈曲・伸展時に生ずるトルクの検出ができる。これらのトルクセンサにより、手関節のインピーダンスに応じた動作の補助ができ、さらにこれらのトルクセンサの検出を利用して、過大な補助力を抑制することも可能となる。
【0025】
請求項7の発明によれば、第2駆動力伝達機構の前記前腕支持体に付与する回転量を前記第1駆動力伝達機構の前記可動ガイド体に付与する回転量よりも多くして可動ガイド体を回転移動させることにより、可動ガイド体と同方向に回転する前腕支持体をガイドすることができる。この結果、可動ガイド体を大きくする必要がなく、上肢手指機能回復訓練装置を小型化できる。
【0026】
請求項8の発明によれば、各装着部に設けられた力覚センサにより指関節の運動時に生ずるトルクの検出ができる。これらの力覚センサにより、拇指や或いは指の関節のインピーダンスに応じた動作の補助ができ、さらにこれらのトルクセンサの検出を利用して、過大な補助力を抑制することも可能となる。
【0027】
請求項9の発明によれば、力覚センサが各装着部に設けられていることにより、指関節の運動時に生ずる力の検出ができる。これらの力覚センサにより、拇指や或いは指の関節のインピーダンスに応じた動作の補助ができ、さらにこれらの力覚センサの検出を利用して、過大な補助力を抑制することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した上肢手指リハビリシステムに使用される上肢手指機能回復訓練装置に具体化した第1実施形態を図1〜23を参照して説明する。
【0029】
まず、上肢手指リハビリシステムの概要を図21を参照して説明する。
上肢手指リハビリシステム1は患者CKの正常な運動機能を有する肩から指先までの健側上肢手指6を被覆するように装着され、患者CKの意志により動かされる健側上肢手指6の動きを検出可能な運動検出装置2と、運動機能の回復訓練を要する患側上肢手指5に装着され、患側上肢手指5を他動的に運動させる上肢手指機能回復訓練装置4を備える。以下、上肢手指機能回復訓練装置を単に回復訓練装置という。そして、上肢手指リハビリシステム1は、運動検出装置2及び回復訓練装置4と電気的に接続され、健側上肢手指6の動きに対応させて、患側上肢手指5の動きを制御する制御装置3を有している。
【0030】
なお、図21は本発明の上肢手指リハビリシステム1の概略構成の一例を示したものであり、各構成要素(運動検出装置2、制御装置3、回復訓練装置4)の形状及び構造等を特に限定するものではない。また、図21では、本実施形態の上肢手指リハビリシステム1を適用し、電子楽器Eの鍵盤Kを健側上肢手指6及び患側上肢手指5によってそれぞれ押す(叩く)動作を行わせ、患側上肢手指5の動きに目的若しくは目標を持たせるようにして、運動機能の回復を行わせるものであってもよい。
【0031】
次に図22を参照して、運動検出装置2、制御装置3、及び回復訓練装置4のそれぞれの電気的構成について説明する。運動検出装置2は、装着された健側上肢手指6の肩、肘、手首、及び指などの可動する各々の関節の関節角度を検知する角度検知センサ7を含んで構成される角度検知手段8と、角度検知手段8によって検知された関節角度を信号変換処理し、角度データ9として制御装置3に対して送出する角度データ送出手段10とを有する。
【0032】
なお、運動検出装置2は、例えば、健側上肢手指6の肩から先の部位を被覆することができるような略グローブ形状のもので構成されたものが利用可能である。そして、健側上肢手指6の関節角度を角度検知センサ7によって検知することにより、健側上肢手指6の動きを認識することができる。なお、角度検知センサ7を含む角度検知手段8は、健側上肢手指6の各関節の関節角度を予め設定した単位時間毎(例えば、0.1s間隔など)に検知するものである。角度データ送出手段10は、検知した結果を逐次、制御装置3に対して角度データ9として送出する。これにより、単位時間当たりの関節角度の変位量及び変位方向を認識することが可能となり、健側上肢手指6の連続的な動きを運動検出装置2は捉えることができる。
【0033】
又、制御装置3は運動検出装置2からの角度データ9を受付ける角度データ受付手段11と、該角度データ9に基づいて患側上肢手指5を運動させるための制御データ12を生成する制御データ生成手段13と、該制御データ12を回復訓練装置4に対して送出する制御データ送出手段14を備えている。又、制御装置3は回復訓練装置4から送出される患側上肢手指5に関する患側関節角度等の患側角度データ15を受付ける患側角度データ受付手段16を備える。又、制御装置3は、前記患側角度データ15により健側上肢手指6の各関節角度と対応する患側上肢手指5の各患側関節角度等との間の誤差を検出し、角度補正データ17を生成する角度補正データ生成手段18を備えている。さらに、制御装置3は、前記角度補正データ17及び力覚データ20(後述する)に基づいて制御データ12の補正を行う補正手段19と、回復訓練装置4から送出される患側上肢手指5の運動によって生じる力を示す力覚データ20を受付ける力覚データ受付手段21とを備えている。
【0034】
次に、回復訓練装置4の構成中、主に電気的構成について説明する。回復訓練装置4は、制御装置3から送出された制御データ12を受付ける制御データ受付手段22と、該制御データ12に基づいて患側上肢手指5を他動的に動かして訓練を行う訓練機構部23と、訓練機構部23の作動に基づいて変位する患側関節角度等を検知する患側角度検知手段24を備えている。
【0035】
又、回復訓練装置4は、前記訓練機構部23によって動く患側上肢手指5に生じる力、及びトルクを検知する力及びトルク検出手段25と、検知した患側関節角度等に係る患側角度データ15を、制御装置3に対して送出する患側角度データ送出手段26を備える。さらに、回復訓練装置4は検知した力に係る力覚データ20及びトルクデータを制御装置3に対して送出する力覚データ及びトルクデータ送出手段27を備えている。
【0036】
次に、回復訓練装置4のハード構成を図1〜20を参照して説明する。
回復訓練装置4は、図1に示すように支持台30に設けられた前腕の回内・回外を支援する前腕動作支援機構100と、手関節の屈曲・伸展を支援する手関節動作支援機構200と、拇指の動作を支援する拇指動作支援機構300と、拇指以外の第2〜4指のそれぞれの動作を支援する指動作支援機構400等を備えている。これらの前腕動作支援機構100,手関節動作支援機構200,拇指動作支援機構300,指動作支援機構400等により前記訓練機構部23が構成されている。なお、前腕の回内・回外とは、図23(a)に示すように前腕Hzを前方へ突き出した状態で人体側に回転する動作を回内、その反対側に回転する動作を回外という。又、手関節の屈曲・伸展は、図23(b)に示すように手首Hnを反らせる動きを伸展、手首Hnを伸展と反対側に曲げる場合を屈曲という。
【0037】
(前腕動作支援機構100)
前腕動作支援機構100について説明する。
図1、2に示すように支持台30上面には前腕位置規制部31が設けられている。前腕位置規制部31は支持台30上面に固定された半円弧状をなす下部ホールド部材32と、下部ホールド部材32の両端上部に回動自在にそれぞれ取付されるとともに四半円弧状をなす一対の上部ホールド部材33,34とにより構成されている。上部ホールド部材33,34は、上部に設けられたパッチン錠35が施錠されることにより閉じられた状態で保持可能となっている。そして、上部ホールド部材33,34が閉じられた状態では、図2に示すように下部ホールド部材32、上部ホールド部材33,34の内周面32a,33a,34aにより断面円状の腕保持面が形成され、前腕を差し入れた際に前腕の左右、上下方向の位置規制を行う。以後、前記断面円状の腕保持面の曲率中心を通過する中心線にはOの符号を付す。
【0038】
なお、説明の便宜上、図1に示すように、回復訓練装置4は、前腕位置規制部31に対して腕を差し入れる側を後とし、180°反対側を前とし、回復訓練装置4を後部側から見て右側を右とし、左側を左という。
【0039】
図4、図5に示すように支持台30の前側壁36と中央側壁37の両上部には一対の固定ガイド板38が固定されている。図8に示すように固定ガイド板38の上縁は円弧状に凹設されている。そして、両固定ガイド板38は対向して配置されるとともに対向面の上部には合成樹脂からなる円弧状のガイド部材38aが前記円弧状に凹設された上縁に沿って固定されている。又、図5、図8に示すようにガイド部材38aから若干離間した位置には、互いに離間して配置された複数のガイドローラ38bがガイド部材38aに沿うように取付けされている。
【0040】
前記一対のガイド部材38a間には、図5に示すように可動ガイド体41が介在配置されている。可動ガイド体41は、同図に示すように円弧状をなす一対の側壁42と、両側壁42間を連結するとともに円弧状をなす底壁43とから構成されている。可動ガイド体41は側壁42の外側面に形成された段部にて固定ガイド板38のガイドローラ38bに回動自在に支持されるとともに側壁42の外側面上部がガイド部材38aに対して摺接されている。すなわち、可動ガイド体41は図6、図8に示すように固定ガイド板38のガイドにより、中心線Oを回転中心として往復回動自在に支持されている。
【0041】
なお、図5、図6に示すように可動ガイド体41は、ガイド部材38aとガイドローラ38b間に位置するように側壁42の外側面に形成された円弧状の突条42aにより、固定ガイド板38からの脱落が防止されている。
【0042】
各側壁42は、その外周面にセクタギヤ44が形成されるとともに、互いに対向する内側面にガイド溝45が凹設され、左右の両端に向かって円弧状に延出されている。
又、底壁43の内面にはガイド溝46が凹設されて左右の両端に向かって円弧状に延出されている。ガイド溝45,46は、ガイド部に相当するとともに可動ガイド体41が中心線Oを回動中心として回動した際に、円弧状の軌跡を描く。
【0043】
可動ガイド体41内には、前腕支持体47が配置されている。前腕支持体47は半円筒状に形成されることにより内周面は断面凹状に形成されている。断面凹状の形状は、腕を通すことが可能な凹状であれば形状を限定するものではないが、本実施形態では断面半円状をなす。又、前腕支持体47は下部ホールド部材32と近接してその内周面が下部ホールド部材32の内周面32aと同一高さとなるように設けられている。前腕支持体47の内周面は前腕を通す部位に相当する。そして、前腕支持体47に通された前腕を前腕支持体47に置くことにより支持可能である。
【0044】
図4,図5,及び図8に示すように前腕支持体47の外周にはその周方向に延出された嵌合部材48が固定されている。嵌合部材48は、可動ガイド体41の側壁42間と底壁43により形成される嵌合空間41aに移動自在に嵌入されている。又、図5、図7に示すように嵌合部材48の外周面、及び前後両側面には前記周方向に沿って複数のローラ49が設けられ、該ローラ49は図5に示すようにガイド溝45,46内に転動可能に配置されている。そして、図7に示すように前腕支持体47は可動ガイド体41によりガイドされて、前記中心線Oを回転中心線として回動可能にされている。
【0045】
前腕支持体47の前部外周には、図4,図9,図12に示すように外周部に歯を有するアームギヤ50が固定されている。アームギヤ50の前面には、支持板51が固定されている。支持板51は、図12に示すように前腕支持体47の内周面と合致する凹部51aが形成されている。なお、図12は説明の便宜上、支持板51は略左半分のみ図示されている。
【0046】
前記前腕支持体47により前腕支持部が構成されている。
次に、可動ガイド体41と前腕支持体47を作動する機構について説明する。
図2,図3に示すように支持台30内において、下部には第1駆動モータとしての前腕支援用モータ52が設けられている。又、支持台30内において、中央の下部及び上部には主軸53、及び副軸54が回動自在に支持されている。
【0047】
前腕支援用モータ52の出力軸と主軸53の後端に固定されたプーリ55、56間には、タイミングベルト57が巻回され、支持台30に設けられたテンションプーリ58にて張力が付与されている。又、図2,図4に示すように副軸54の後端に設けられたプーリ59と、主軸53のプーリ56間にはタイミングベルト60が巻回されている。副軸54には、図4,図6に示すように可動ガイド体41の一対のセクタギヤ44にそれぞれ噛合された一対のギヤ61が固定されている。
【0048】
プーリ55,56、59,タイミングベルト57,60,主軸53,副軸54,ギヤ61により、前腕支援用モータ52から可動ガイド体41に駆動力を伝達して可動ガイド体41に対し回転量を付与する前記第1駆動力伝達機構K1が構成されている。
【0049】
又、図1,図8,図12に示すように支持台30の左右両側壁には、一対の回転軸62をそれぞれ回動自在に支持する取付板63がそれぞれ固定されている。図10、図11に示すように回転軸62の前端にはギヤ64が固定され、後端にはプーリ65が固定されている。一対のギヤ64はアームギヤ50に対して噛合可能に配置されている。すなわち、アームギヤ50が前腕支持体47と一体に回動した際に、少なくともいずか一方の64はアームギヤ50に対して噛合されるように配置されている。又、前記プーリ56と同軸となるように主軸53の後端に固定されたプーリ66と、支持台30の側壁に設けられた一対の方向転換プーリ67、及び前記一対のプーリ65間には図9に示すようにタイミングベルト68が巻回されている。
【0050】
プーリ65,66、主軸53、回転軸62、ギヤ64により、第2駆動力伝達機構K2が構成されている。
そして、第2駆動力伝達機構K2が前腕支持体47に付与する回転量(すなわち作動角度)が、第1駆動力伝達機構K1が可動ガイド体41に付与する回転量(すなわち作動角度)よりも多くなるように、プーリ66の径はプーリ56よりも大径にされるとともに、ギヤ61,64、セクタギヤ44,アームギヤ50の歯数の関係が設定されている。本実施形態では、図13(a)〜(f)に示すように可動ガイド体41及び前腕支持体47が回転するように前記プーリ66の径はプーリ56よりも大径にされるとともに、ギヤ61,64、セクタギヤ44,アームギヤ50の歯数の関係が設定される。
【0051】
なお、図13(a)〜(f)は、(可動ガイド体41,前腕支持体47)の作動角が(0°,0°),(15°,36°),(30°,72°),(45°,108°),(60°,144°),(75°,180°)となっていることを図示したものであり、本実施形態では、前方から回復訓練装置4を見た状態で示している。すなわち、本実施形態では、時計回り方向に可動ガイド体41が作動角0〜75°回動する際に、前腕支持体47は作動角0°〜180°回転するとともに、図示はしないが反時計回り方向に同様に可動ガイド体41が作動角0〜75°回動する際に、前腕支持体47は作動角0°〜180°回転する。すなわち、前腕支持体47の作動角の範囲は±180°の範囲とされ、可動ガイド体41の作動角の範囲は±75°の範囲とされている。なお、本実施形態では可動ガイド体41の作動角を±75°の範囲としているが、±90°の範囲であればよい。
【0052】
上記のように前腕支持体47の作動角は左右両手の装着を可能とするように作動角±180°(回復訓練装置4の前方見て時計回り方向を+とする)とし、この動作範囲を確保するために、可動ガイド体41と前腕支持体47とにより二階建て構造にして、それぞれをギヤにより作動するようにしている。又、手の装着時は、前腕支持体47が図13(a)に示す位置に位置することにより上方を開放して手の装着を容易にされている。
【0053】
又、可動ガイド体41(すなわち、セクタギヤ44)の作動角は、このような範囲に設定されることにより、手関節が180°回転(手のひらを天側に向けた状態から地側に向けた状態の回転)した際、前腕支持体47による腕の支持が可能とされている。この結果、手のひらを天側に向けた初期状態から180°回転した手のひらを地側に向ける状態までの追従に装置を対応させることができる。
【0054】
本実施形態では、前腕動作支援機構100は、可動ガイド体41と前腕支持部としての前腕支持体47と、第1駆動モータとしての前腕支援用モータ52、第1駆動力伝達機構K1及び第2駆動力伝達機構K2とにより構成されている。そして、前腕動作支援機構100は上記のように構成されていることにより前腕の回内・回外を支援することが可能となっている。
【0055】
(手関節動作支援機構200)
次に手関節動作支援機構200を図1、図14〜16を参照して説明する。
ここで、まず人間の手関節について説明する。人間の手関節は、図23(b)に示す屈曲・伸展と、図23(c)に示す橈屈・尺屈、及び図23(a)に示す前腕の回内・回外(ひねり)の動きがある。手指のリハビリでは、手関節の屈曲・伸展と前腕の回内・回外(ひねり)の運動の効果が大きい。手関節動作支援機構200は、手関節の屈曲・伸展の動作の補助、すなわち支援のために機能する。又、前記前腕動作支援機構100は、前腕の回内・回外(ひねり)の支援のために機能する。
【0056】
図1、図16に示すように、支持板51の一端部側上部前面には、ブラケット70が図示しないボルトが図12に示すボルト孔51bに螺着されることにより着脱自在に取着されている。なお、本実施形態では、右手前腕を前腕位置規制部31及び前腕支持体47に通すために、支持板51の右端部上部前面にブラケット70が取り付けされている。しかし、図1に示すように支持板51の左端部上部前面にも上下一対のボルト孔51bが設けられているため、該ボルト孔51b及び図示しないボルトを使用して支持板51の左端部上部前面に対してもブラケット70が取付可能である。なお、ブラケット70が図1の取付状態から、支持板51の左端部上部前面に対して取付される場合は、ブラケット70は上下反転した状態で該左端部上部前面に取付される。この場合は、左手に対して使用することができる回復訓練装置4となる。
【0057】
前記ブラケット70には、第2駆動モータとしての手関節モータ71が前腕位置規制部31と前腕支持体47と併設方向に平行に配置されている。又、ブラケット70には両端にベベルギヤ72と平歯車73を有したギヤ軸74が回動自在に支持されている。そして、ベベルギヤ72は、手関節モータ71の出力軸に固定されたベベルギヤ75が噛合されている。
【0058】
ブラケット70の前面には、円弧状(すなわち、C字状)をなす移動部材としてのギヤ体76が図15に示すようにその曲率中心O1を回転中心とするように回転自在に支持されている。すなわち、ギヤ体76は、前腕支持体47の中心線O(回転中心線)を含む面に沿って往復移動可能に、前腕支持体47に対して、往復移動自在に支持されている。又、ギヤ体76は、図15に示すように曲率中心O1を通過するギヤ体76の中心線が前腕支持体47よりも前方に位置するように、かつ、該中心線が可動ガイド体41や前腕支持体47の回転中心となる中心線Oと直交して通過するように配置されている。ギヤ体76はC字状に形成されていることにより、ギヤ体76で囲まれる空間を後述する拇指動作支援機構300の移動ができる許容空間とすることができ、この結果、拇指動作支援機構300との干渉が防止され、拇指動作支援機構300の動きに支障がないようにされている。
【0059】
ギヤ体76の内周面には内歯が形成され、前記平歯車73と噛合されている。そして、手関節モータ71の駆動により、ベベルギヤ75,72、平歯車73を介してギヤ体76が前記曲率中心O1を中心に往復回転される。
【0060】
本実施形態では、手関節動作支援機構200は、前腕支持体47(前腕支持部)に対してブラケット70を介して往復移動自在に設けられた移動部材としてのギヤ体76と、手関節モータ71と、手関節モータ71からギヤ体76に回転トルクを伝達するギヤ列(ベベルギヤ75,72、平歯車73)とから構成されている。
【0061】
なお、本実施形態では、手関節モータ71とギヤ体76間をベベルギヤ75,72、平歯車73からなるギヤ列からとから構成したが、これらのギヤに限定されるものではなく、手関節モータ71とギヤ体76間の配置位置に応じて適宜の種類のギヤにてギヤ列を構成してもよい。
【0062】
手関節動作支援機構200のギヤ体76は、手関節モータ71の駆動により、曲率中心O1を回動中心として回転されて、人間の手関節の動作域をカバーするように屈曲・伸展において、それぞれ0°〜90°の可動域が得られるように設定されている。
【0063】
(指動作支援機構400)
次に、指動作支援機構400を図1、図14、図15、図17及び図18を参照して説明する。
【0064】
前記ギヤ体76の下端には、ブラケット80が固定されている。ブラケット80は、ギヤ体76に固定されるとともに下方へ延出された断面四角形状の支持柱部81と、該支持柱部81の下端から図15に示すように前方へ延出された屈曲部82とからなる。
【0065】
ここで、支持柱部81の左右両面は、前腕の回内・回外時に歪みが生ずる部位である。又、支持柱部81の前後両面は、手関節の屈曲・伸展時に歪みが生ずる部位である。そこで、支持柱部81の左右両面及び前後両面には、図1、図14、図15に示すようにそれぞれトルクセンサTS1,TS2(力及びトルク検出手段25)が貼着されている。トルクセンサTS1は、前腕の回内・回外時に生ずる回内回外転トルクを検出する。又、トルクセンサTS2は、手関節の屈曲・伸展時に生ずる屈曲伸展トルクを検出する。これらの検出したトルクにより、前腕や手関節のインピーダンスに応じた動作の支援ができ、さらにこれらのトルクセンサTS1,TS2の検出を利用して、過大な補助力を抑制することが可能となる。トルクセンサTS1は第1トルクセンサに相当し、トルクセンサTS2は第2トルクセンサに相当する。
【0066】
屈曲部82には上方へ延びる83aを備える取付板83に対し、該長孔83aに挿通されるボルト83bの締付けによりハンドベース84が位置調節自在に固定されている。このようにして使用する人間の手の大きさに応じてハンドベース84の取付位置を調節するために、本実施形態では、長孔83aによる調節部が設けられている。なお、調節部の構成はこの構成に限定されるものではない。ハンドベース84は図14に示すように取付板83に取付けされる取付部84aと、該取付部84aから前腕支持体47の前方に位置するように水平に延出された機構支持板部84bからなる。機構支持板部84b上には、手の第2指〜第5指用の指動作支援機構400が併設されている。
【0067】
第2指〜第5指用の各指動作支援機構400は同一構成であるため、第2指用の指動作支援機構400について説明し、他の指動作支援機構400等についての説明は省略する。
【0068】
指動作支援機構400は、患側上肢手指5の指FのPIP関節、及びMP関節をそれぞれ可動させ、各指Fの運動機能の回復訓練を実施することができるものである。なお、本明細書では、「指」と単にいうときは、第2指〜第5指のことをいい、第1指については拇指という。
【0069】
図1、図15及び図17に示すように、指動作支援機構400の第2支持本体410は四角筒状のケース405と、該ケース405の前部に固定された支持側壁406とからなり、前記機構支持板部84bに固定されている。第2支持本体410は図15に示すように患側上肢手指5の手首から先の部位を支持し、患側上肢手指5を訓練の間、所定の高さに保持することが可能である。
【0070】
指動作支援機構400は、支持側壁406に設けられた揺動連結部412と、揺動連結部412により左右方向に揺動可能な第5リンクアーム部414と、第5リンクアーム部414の一端に連結された第4リンクアーム部416とを有する。第5リンクアーム部414と第4リンクアーム部416は直列に接続されて第2リンク機構を構成し、それぞれがリンクアーム部に相当する。
【0071】
図17に示すように第4リンクアーム部416は中間部としての略中央近傍に位置する第3曲折部418によって曲折自在に形成された一対のリンク、すなわち、前部リンク416aと後部リンク416bとから構成されている。前部リンク416aの先端には、指FのDIP関節及びPIP関節の間に面ファスナー(図示しない)等の周知の固定手段を介して装着される第4装着部420が回動自在に連結されている。
【0072】
第5リンクアーム部414は、図17に示すように、中間部としての略中央近傍に位置する第4曲折部424によって曲折自在に形成された一対のリンク、すなわち、前部リンク414aと後部リンク414bとから構成されている。前部リンク414aの先端は第4リンクアーム部416の後部リンク416bと第5装着部422が軸414cにより同軸で互いに回動自在に連結されている。第5装着部422は指FのPIP関節及びMP関節の間に第4装着部420と同様の固定手段を介して装着される。
【0073】
前部リンク414a内には、第2リンク機構用可動モータとしての第5可動モータ426が装着されている。第5可動モータ426は第4リンクアーム部416の後部リンク416bの後端と、互いに噛合する歯車列(図示しない)からなる第5伝達機構M5を介して作動連結され、第4リンクアーム部416及び第4装着部420を介して指FのPIP関節を可動範囲に沿って可動させる可動力を供給する。第5可動モータ426の駆動により第4リンクアーム部416は、軸414cの回りαに所定の可動範囲で運動する。
【0074】
又、ケース405内には、支持側壁406に支持された第2リンク機構用可動モータとしての第6可動モータ407及び第7可動モータ408が収納されている。
支持側壁406に設けられた揺動連結部412は、一方向に延出されるとともに支持側壁406に対して揺動自在に支持された軸体412aと、軸体412aに対し直交する方向に設けられ、かつ回動自在に支持されるとともに第5リンクアーム部414の後部リンク414bに一体に連結された軸体412bを有する。
【0075】
第6可動モータ407は、軸体412bと自身の出力軸間に設けられた歯車機構(以下、第6伝達機構M6という)、第5リンクアーム部414及び第5装着部422を介して指FのMP関節を可動範囲に沿って可動させる可動力を供給する。そして、第6可動モータ407は、第5リンクアーム部414を軸体412bの回りβで所定の可動範囲で運動させる。
【0076】
第7可動モータ408は、軸体412aと自身の出力軸間に設けられた歯車機構(第7伝達機構M7)、軸体412a、412baを介して第5リンクアーム部414を左右方向(図17の矢印方向)に揺動させ、第4装着部420及び第5装着部422が装着された指Fを、MP関節を回動軸として左右方向に揺動させる。
【0077】
又、第4装着部420内及び第5装着部422内のそれぞれには、指Fの各関節PIP,MPの動きによって生じる力を検知し、力覚データ20として認識する力覚センサ430(すなわち、力及びトルク検出手段25)が内設されている。
【0078】
上記構成により、第2指〜第5指用の指動作支援機構400は、患側上肢手指5を種々の態様に変位させることができる。これにより、患側上肢手指5の指FをPIP関節及びMP関節のそれぞれの関節に沿って他動的に運動させることができる。ここで、指動作支援機構400では、指Fの関節の可動範囲は、指をまっすぐに伸ばした状態にしたときを基準とし、PIP関節の患側関節角度が「0°(伸展状態)〜100°(屈曲状態)」の可動範囲となるように設計されている。又、指動作支援機構400では、MP関節の患側関節角度が「−45°(伸展状態)〜90°(屈曲状態)」の可動範囲でそれぞれ動かすことができるように設計されている。
【0079】
又、指動作支援機構400は、第5リンクアーム部414の一端と揺動連結部412を介して接続され、揺動力を供給可能な第7可動モータ408によって、第4リンクアーム部416及び第5リンクアーム部414を左右方向(図17おける矢印γに相当)に揺動させることができる。したがって、本実施形態において示した回復訓練装置4の指動作支援機構400は、自由度が3に設定されている。
【0080】
(指動作支援機構400における指関節角度θf1、θf2と指動作支援機構関節角度θ1,θ5との関係)
ここで、指動作支援機構400における指関節角度θf1、θf2と指動作支援機構関節角度θ1,θ5との関係について説明する。
【0081】
手指を上記のような指動作支援機構400に装着した場合、第4リンクアーム部416、第5リンクアーム部414、第4装着部420,第5装着部422及び指Fにより、図18に示すように四角形をなす2つの閉ループR1,R2の模式図を描くことができる。閉ループR1は、後部リンク414b、前部リンク414a、辺L1(軸414cとMP関節間の辺)、及び後部リンク414bの軸体412bとMP関節間の辺からなる。又、閉ループR2は、後部リンク416b、前部リンク416a、辺L2(第4装着部420を回動自在に支持する軸とPIP関節間の辺)、PIP関節と軸414c間の辺からなる。閉ループR2は第3閉ループに相当する。又、閉ループR1は第4閉ループに相当する。
【0082】
この模式図において、指関節角度θf1は指Fの基節部(以下、基節部f1という)の水平面からの角度であり、指関節角度θf2は基節部に対する中節部(以下、中節部f2という)の角度である。
【0083】
ここで、四角形をなす閉ループの4つの辺の長さが既知である場合、四角形の内角のうち、1つの角度が分かれば、四角形は一意に決まる。この四角形の形が決まれば、幾何学的に、人間の指関節角度θf1、θf2も自動的に決定することができる。
【0084】
このように閉ループR1と閉ループR2は互いに干渉せず、独立しているため、四角形の形が決まれば、幾何学的に、人間の指関節角度θf1、θf2も自動的に決定することができるのである。
【0085】
なお、図18において、a1は後部リンク414bのリンク長、a2(=a4)は前部リンク414aのリンク長、a3は軸414cから指Fの基節部(PIP関節とMP関節間の部位)までの距離である。又、a5は後部リンク416bのリンク長、a6は前部リンク416aのリンク長、a7は第3曲折部418から中節部f2までの距離である。
【0086】
θ1は後部リンク414bの水平面からの角度、θ2は後部リンク414bに対する前部リンク414aの角度、θ3は前部リンク414aに対する基節部f1に直交する直交線との角度である。θ5は前部リンク414aに対する後部リンク416bの角度、θ6は後部リンク416bに対する前部リンク416aの角度、θ7は前部リンク416aに対する中節部f2に直交する直交線との角度である。
【0087】
又、(x,y)は軸414cの座標、(x’,y’)は第4装着部420を回動自在に支持する軸の座標であり、後部リンク414bが回動軸である軸体412bを原点(0,0)としている。Xは原点からMP関節のx座標における距離、Yは原点からMP関節のy座標における距離であり、いずれも既知である。
【0088】
又、φ1は辺L1と指関節角度θf1とのなす角度、φ2は辺L2と中節部f2がなす角度である。
上記のことから、指関節角度θf1、θf2と指動作支援機構関節角度θ1,θ5には次式(「数1」)が成立する。
【0089】
【数1】

なお、上記数式中では、f1は基節部の長さ、f2は中節部の長さを表す。
【0090】
又、第4リンクアーム部416の後部リンク416bの指動作支援機構関節角度θ5は第5可動モータ426が備える患側角度検知手段24としてのロータリエンコーダの出力値(すなわち、患側角度データ15)として得ることができる。この出力値が制御装置3の患側角度データ受付手段16で受け付けられると、患側角度データ受付手段16では、上記関係式と指動作支援機構関節角度θ5に基づいて指関節角度θf2(患側関節角度)を一義的に算出する。
【0091】
同様に、第5リンクアーム部414の後部リンク414bの指動作支援機構関節角度θ1は第6可動モータ407が備える患側角度検知手段24としてのロータリエンコーダからの出力に基づいて得ることができる。この出力値が制御装置3の患側角度データ受付手段16で受け付けられると、患側角度データ受付手段16では、上記関係式と指動作支援機構関節角度θ1に基づいて指関節角度θf1(患側関節角度)を一義的に算出する。
【0092】
このように得られた指関節角度θf1,θf2は、制御装置3で表示装置等の出力装置に出力すれば次回のリハビリのためのトレーニングにおいて、目標値を決定する際の参考基準値とすることができる。
【0093】
なお、従来技術である特許文献1では、第5装着部422と第4リンクアーム部416に相当するリンクアーム部の基端が同軸にて回動自在に連結されていない。このため、第1リンクアーム部に相当するリンクアーム部と、第2リンクアーム部に相当するリンクアーム部とで形成される2つの閉ループが互いに干渉することになるため、各指の関節角度(本実施形態の患側関節角度に相当)とリンク角度(本実施形態の指動作支援機構関節角度に相当)が複雑な幾何学的関係となる。この結果、特許文献1では制御上のパラーメータの導出が困難な問題があった。又、リンク機構が大型化する問題もあった。
【0094】
(拇指動作支援機構300)
次に、拇指動作支援機構300を図1、図16、図19、及び図20を参照して説明する。
【0095】
図1、図16に示すようにギヤ体76の中央部には、ブラケット90を介して拇指動作支援機構300が取付されている。
拇指動作支援機構300は、ブラケット90に取付けされた第1支持本体310と、第1支持本体310に支持された第3リンクアーム部312と、第3リンクアーム部312の一端に連結された第2リンクアーム部314と、第2リンクアーム部314の一端に連結された第1リンクアーム部316とを有する。このように第1リンクアーム部316、第2リンクアーム部314及び第3リンクアーム部312は直列に接続されて第1リンク機構を構成し、それぞれがリンクアーム部に相当する。
【0096】
図19に示すように第1リンクアーム部316は中間部としての略中央近傍に位置する第1曲折部318によって曲折自在に形成された一対のリンク、すなわち、前部リンク316aと後部リンク316bとから構成されている。
【0097】
前部リンク316aの先端には、拇指の末節部に面ファスナー(図示しない)等の周知の固定手段を介して装着される第1装着部320が回動自在に連結されている。
第2リンクアーム部314は、図19に示すように、中間部としての略中央近傍に位置する第2曲折部324によって曲折自在に形成された一対のリンク、すなわち、前部リンク314aと後部リンク314bとから構成されている。
【0098】
前部リンク314aの先端は第1リンクアーム部316の後部リンク316bと第2装着部322が軸314cにより同軸で互いに回動自在に連結されている。第2装着部322は拇指のIP関節及びMP関節の間に第1装着部320と同様の固定手段を介して装着される。
【0099】
前部リンク314a内には、第1リンク機構用可動モータとしての第1可動モータ326が装着されている。第1可動モータ326は第1リンクアーム部316の後部リンク316bの後端と、互いに噛合する歯車機構(図示しない)からなる第1伝達機構M1を介して作動連結され、第1リンクアーム部316及び第1装着部320を介して拇指のIP関節を可動範囲に沿って可動させる可動力を供給する。第1可動モータ326の駆動により第1リンクアーム部316は、軸314cの回りα1に所定の可動範囲で運動する。
【0100】
第3リンクアーム部312は、図19に示すように互いに連結位置の調節可能に連結された前部リンク312aと、第1支持本体310の支持部310dに対し軸315にて回動自在に支持された後部リンク312bとから構成されている。後部リンク312bは先端に設けられた長孔313を介して前部リンク312aに着脱自在に螺着されたボルト部材313aにより前部リンク312aに対して締め付けされて一体に連結されている。なお、ボルト部材313aに対する後部リンク312bの取付位置の変更は長孔313の長さの範囲で可能である。又、前部リンク312aには第3装着部328が回動自在に連結されている。第3装着部328は拇指のMP関節及びCM関節の間に第1装着部320と同様の固定手段を介して装着される。
【0101】
前部リンク312aの先端は軸312cを介して後部リンク314bの基端に回動自在に連結されている。そして、前部リンク312a内には、第1リンク機構用可動モータとしての第2可動モータ307が装着されている。第2可動モータ307は第2リンクアーム部314の後部リンク314bの後端と、互いに噛合する歯車機構(図示しない)からなる第2伝達機構M2を介して作動連結され、第2リンクアーム部314及び第2装着部322を介して拇指のMP関節を可動範囲に沿って可動させる可動力を供給する。第2可動モータ307の駆動により第2リンクアーム部314は、軸312cの回りβ1に所定の可動範囲で運動する。
【0102】
第1支持本体310は、図16、図19に示すように、後端壁310aと前部側に設けられた支持壁310bと、後端壁310aと支持壁310b間を連結する連結板310cと、連結板310cよりも前方に延出されて前記後部リンク312bを回動自在に支持する支持部310dから構成されている。
【0103】
支持壁310bには第1リンク機構用可動モータとしての第3可動モータ330が装着され、第3可動モータ330の出力軸は支持壁310bに貫通されている。そして、第3可動モータ330は、該出力軸と軸315間に設けられた歯車機構からなる第3伝達機構M3を介して後部リンク312bと作動連結され、第3リンクアーム部312及び第3装着部328を介して拇指のCM関節を可動範囲に沿って可動させる可動力を供給する。図16に示すように第3可動モータ330の駆動により第3リンクアーム部312は、軸315の回りδに所定の可動範囲(以下、頂角ωという)で運動する。本実施形態では、人間の拇指の可動域を満たすように、頂角ωは0〜60°として設定されている。この第3可動モータ330の駆動により、第1リンク機構の後述する円錐運動の頂角ωを変更することが可能である。
【0104】
前記ブラケット90は、前側壁91a、後側壁91b及び両側壁を連結する連結部91cから構成されている。そして、第1支持本体310は、前側壁91a、後側壁91bに対して、それぞれ前記第3可動モータ330の出力軸及び後端壁310aに設けられた軸310eにて回動自在に連結されている。軸310eは第3可動モータ330の出力軸と同軸に配置されている。ブラケット90の連結部91cには内外転用可動モータとしての第4可動モータ94が装着されている。
【0105】
第4可動モータ94は、その出力軸と軸310e間に設けられた歯車機構からなる第4伝達機構M4を介して第1支持本体310と作動連結され、第1支持本体310を介して第1リンク機構を該第1支持本体310に頂点を固定した円錐運動をさせる可動力を供給する。本実施形態では、第4伝達機構M4は軸310eに固定されたセクタギヤ309と、セクタギヤ309に噛合されるとともに、第4可動モータ94の出力軸に設けられた平歯車311から構成されている。第4可動モータ94の駆動により、第1支持本体310は、第3可動モータ330の出力軸及び軸310eの共通軸心の回りεに所定範囲の角度(円錐面作動角という)で自転(すなわち、回転)する(図20参照)。本実施形態では、人間の拇指の可動域を満たすように、円錐面作動角は±60°として設定されている。この可動範囲は、制御により、任意に変更可能である。
【0106】
又、第1装着部320、第2装着部322、及び第3装着部328内のそれぞれには、拇指のIP関節、MP関節、CM関節の動きによって生じる力を検知し、力覚データ20として認識する力覚センサ432(すなわち、力及びトルク検出手段25)が内設されている。
【0107】
上記構成により、拇指動作支援機構300は、患側上肢手指5の拇指を種々の態様に変位させることができる。これにより、患側上肢手指5の拇指を、IP関節、MP関節、及びCM関節のそれぞれの関節に沿って他動的に運動させることができる。又、人間の拇指の運動には、CM関節における内外転と、屈曲・伸展、CM関節の屈曲・伸展、IP関節の屈曲・伸展がある。又、CM関節では内外転と屈曲・伸展の運動と同時に拇指対向のための対立運動が生じる。このように指Fと拇指では仕組みが異なるため、前述の指動作支援機構400では拇指のすべての運動に対応することができない。拇指動作支援機構300では第4可動モータ94と第3可動モータ330を備えることにより、内外転と屈曲・伸展及び対立(旋回)の動きを複合して動作補助(すなわち、動作支援)できるようにしている。
【0108】
(拇指動作支援機構300における指関節角度θf1、θf2と指動作支援機構関節角度θ1,θ5との関係)
ここで、拇指動作支援機構300において、拇指における指関節角度θf1、θf2と指動作支援機構関節角度θ1,θ5との関係について説明する。
【0109】
前述した図18の模式図で説明した閉ループR1,R2は、指動作支援機構400を指Fに装着した場合に形成されたものであったが、拇指動作支援機構300を拇指に装着した場合も同様のことが成立する。
【0110】
すなわち、拇指動作支援機構300の第1リンクアーム部316、第2リンクアーム部314、第1装着部320、及び第2装着部322は、指動作支援機構400の第4リンクアーム部416、後部リンク414b、第4装着部420、及び力覚センサ430と同一構成である。又、拇指動作支援機構300の第1可動モータ326、及び第2可動モータ307は、指動作支援機構400の第5可動モータ426、及び第6可動モータ407と同様に制御される。
【0111】
このため、指動作支援機構400における指関節角度θf1、θf2と指動作支援機構関節角度θ1,θ5との関係で説明した文中、指Fに関する記述を親指に関する記述にして読み替えると共に、指動作支援機構400に関する記述を拇指動作支援機構300に関する記述に読み替えればよい。たとえば、指動作支援機構関節角度θ1,θ5は、指動作支援機構400では、第6可動モータ407及び第5可動モータ426に関するものであったが、拇指動作支援機構300では、第2可動モータ307及び第1可動モータ326に関する記述となる。
【0112】
又、指動作支援機構関節角度θf1、θf2は、拇指動作支援機構300では、指関節角度θf1は拇指のIP関節とMP関節間の部位(以下、拇指の基節部という)の水平面からの角度であり、指関節角度θf2は拇指の基節部に対する末節部の角度となる。
【0113】
そして、拇指動作支援機構300が、拇指に装着された場合の、閉ループR1は、第2閉ループに相当し、閉ループR2は第1閉ループに相当する。
従って、拇指動作支援機構300においても、上記のことから、指関節角度θf1、θf2と指動作支援機構関節角度θ1,θ5には前記式(「数1」)が成立する。
【0114】
このため、第1リンクアーム部316の後部リンク316bの指動作支援機構関節角度θ5は第1可動モータ326が備える患側角度検知手段24としてのロータリエンコーダの出力値(すなわち、患側角度データ15)として得ることができる。この出力値が制御装置3の患側角度データ受付手段16で受け付けられると、患側角度データ受付手段16では、上記関係式と指動作支援機構関節角度θ5に基づいて指関節角度θf2(患側関節角度)を一義的に算出する。
【0115】
同様に、第2リンクアーム部314の後部リンク314bの指動作支援機構関節角度θ1は第2可動モータ307が備える患側角度検知手段24としてのロータリエンコーダからの出力に基づいて得ることができる。この出力値が制御装置3の患側角度データ受付手段16で受け付けられると、患側角度データ受付手段16では、上記関係式と指動作支援機構関節角度θ1に基づいて指関節角度θf1(患側関節角度)を一義的に算出する。
【0116】
なお、拇指動作支援機構300では、指動作支援機構400と異なり、軸体412bに相当する位置には軸312cが位置する。この軸312cの位置は、軸312cと軸315間のリンク長が固定長で既知であり、第3可動モータ330による頂角ωは第3可動モータ330が備える患側角度検知手段24としてのロータリエンコーダから健できるため、制御装置3で容易に酸することができる。
【0117】
このように得られた、拇指動作支援機構300が装着された拇指に関する指関節角度θf1,θf2は、制御装置3で表示装置等の出力装置に出力すれば次回のリハビリのためのトレーニングにおいて、目標値を決定する際の参考基準値とすることができる。
【0118】
さて、上記のように構成された回復訓練装置を備えた上肢手指リハビリシステム1では、まず、前腕位置規制部31、前腕支持体47に対して前腕を通して、装着する。そして、各指動作支援機構400に対して第2指〜第5指を装着する。なお、手を各機構部等に装着するときには、図15に示すように手のひらを天側に向けた状態で手を第2支持本体410上に置き、手関節動作支援機構200の曲率中心O1と手関節の軸が一致するようにする。
【0119】
この後、上肢手指リハビリシステム1の電気的構成が起動される。この上肢手指リハビリシステム1は、健側上肢手指6に装着した運動検出装置2により、健側上肢手指6の各関節角度を患側上肢手指の目標値として提示する。患者は健側上肢手指6を動かすと、その関節変位が角度検知センサ7によって検知され、制御装置3は、関節変位の角度データを受け取ると、該角度データ9に基づいて患側上肢手指5を運動させるための制御データ12を生成する。又、制御装置3は、回復訓練装置4から送出される患側上肢手指5に関する患側関節角度等の患側角度データ15を受付け、該患側角度データ15により健側上肢手指6の各関節角度と対応する患側上肢手指5の各患側関節角度等との間の誤差を検出し、角度補正データ17を生成する。そして、制御装置3は前記角度補正データ17及び回復訓練装置4から入力した力覚データ20に基づいて制御データ12の補正を行う。そして、補正された制御データが制御装置3から回復訓練装置4に出力され、回復訓練装置4ではこの制御データに基づいて各機構部が駆動制御されることにより目標となる患側上肢手指の関節変位が実現される。
【0120】
もし、運動機能の低下により患側上肢手指の関節可動域が健側上肢手指6よりも小さい場合、無理に患側上肢手指の関節を動かそうとする力が働く。その力は、患側の力覚センサ430,432により計測され、検出値として制御装置3側に送出される。補正手段19はその検出値が許容値範囲外であれば、無理な力が患側上肢手指に働かないように制御データを補正する。又、補正手段19では、前記検出値が過剰な力であるとする判定値以上のデータや、トルクセンサTS1,TS2からのトルクがあった場合、補正手段19により、回復訓練装置4の各可動モータ等を停止するための制御データを出力させる。このことにより、拇指、手関節、前腕用の各機構により健側上肢手指の運動を患側上肢手指へ提示するとともに、患側上肢手指で作用する力を計測することにより、安全なリハビリ支援を実現している。
【0121】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に記載する各効果を得ることができる。
(1) 本実施形態の回復訓練装置4は、拇指動作支援機構300を備えるようにした。そして、拇指動作支援機構300は、拇指の末節部、該拇指の基節部、及び中手骨部の各部位にそれぞれ装着される第1装着部320、第2装着部322、第3装着部328を有する第1リンク機構を備えるようにした。又、拇指動作支援機構300は第1支持本体310と、第1リンク機構と第1支持本体310にそれぞれ設けられ、前記各装着部を有するリンクアーム部を駆動することにより前記各装着部を介して拇指の各関節を可動する第1可動モータ326、第2可動モータ307、第3可動モータ330を備えるようにした。さらに、拇指動作支援機構300は、第1支持本体310を回転する第4可動モータ94を備えるようにした。そして、拇指動作支援機構300は、第4可動モータ94を回転することにより第1リンク機構が頂点を第1支持本体310に固定した円錐運動をなし、第1支持本体310に設けられた第3可動モータ330を回転することにより第1リンク機構が円錐運動の頂角を変えるようにした。
【0122】
この結果、第4可動モータ94を回転することにより第1リンク機構が頂点を第1支持本体310に固定した円錐運動が可能となり、第1支持本体310に設けられた第3可動モータ330を回転することにより第1リンク機構が円錐運動の頂角を変えることができる。この結果、拇指の対立運動の動作支援を行うことができる。
【0123】
(2) 本実施形態では、拇指動作支援機構300は、先端に第1装着部320が回動自在に連結されるとともに自身の中間部に設けられた第1曲折部318によって曲折自在に形成される第1リンクアーム部316を有する。又、拇指動作支援機構300は、先端に第2装着部322と第1リンクアーム部316の基端が同軸にて回動自在に連結されるとともに自身の中間部に設けられた第2曲折部324によって曲折自在に形成される第2リンクアーム部314を備える。又、拇指動作支援機構300は、先端に第2リンクアーム部314の基端が回動自在に連結され、第3装着部328が取付けされた第3リンクアーム部312を備える。
【0124】
そして、拇指動作支援機構300は、第1〜3リンクアーム部が、第1〜3装着部を介して拇指に装着された際、第1リンクアーム部316と拇指のIP関節を含む第1閉ループとしての閉ループR2と、第2リンクアーム部314と拇指のMP関節を含む第2閉ループとしての閉ループR1がとが互いに干渉しない構成にされている。すなわち、第2装着部322と第1リンクアーム部316の基端が同軸にて回動自在に連結されている。
【0125】
この結果、閉ループR2と閉ループR1とが干渉しないため、拇指のIP関節の動作支援を行う第1可動モータ326を独立して制御することが実現できる。又、第1リンク機構の簡素化と小型化及び制御の高信頼性を得ることができる。
【0126】
(3) 本実施形態では、指動作支援機構400は、指Fの中節部、及び基節部の各部位にそれぞれ装着される装着部をそれぞれ有する各リンクアーム部を直列連結した第2リンク機構を有するようにした。
【0127】
そして、指動作支援機構400は、第2リンク機構を回動自在に支持する第2支持本体410と、第2リンク機構と第2支持本体410にそれぞれ設けられ、第2リンク機構の各装着部を有するリンクアーム部を駆動することにより各装着部を介して指Fの各関節を可動する第5可動モータ426、第6可動モータ407を含むようにした。
【0128】
この結果、拇指動作支援機構300による拇指の対立運動の動作支援とともに、拇指動作支援機構300を有することにより、物を摘む動作を支援することができる。
(4) 本実施形態では、指動作支援機構400は、先端に第4装着部420が回動自在に連結されるとともに自身の中間部に設けられた第3曲折部418によって曲折自在に形成される第4リンクアーム部416を備えるようにした。又、指動作支援機構400は、先端に第5装着部422と第4リンクアーム部416の基端が同軸にて回動自在に連結されるとともに自身の中間部に設けられた第4曲折部424によって曲折自在に形成される第5リンクアーム部414を備える。
【0129】
そして、指動作支援機構400は第4リンクアーム部416及び第5リンクアーム部414が第4装着部420、第5装着部422を介して指に装着された際、第4リンクアーム部416と指FのPIP関節を含む第3閉ループとしての閉ループR2と、第5リンクアーム部414と指FのMP関節を含む第4閉ループがとが互いに干渉しない。
【0130】
この結果、第5装着部422と第4リンクアーム部416の基端が同軸にて連結されていることにより、第3閉ループに相当する閉ループR2と第4閉ループに相当する閉ループR1とは、第3閉ループと第4閉ループとが干渉しないため、指のPIP関節の動作支援を行う可動モータを独立して制御することが実現できる。又、第2リンク機構の簡素化と小型化及び制御の高信頼性を得ることができる。
【0131】
(5) 本実施形態では、回復訓練装置4は、運動機能の回復訓練を要する患側の前腕に装着する前腕動作支援機構100と、手関節動作支援機構200とを有するようにした。そして、前腕動作支援機構100は、前腕を通す部位を有するとともに支持台30に対して往復回動自在に支持されて、該部位に通される該前腕の回内・回外を支援する前腕支持体47(前腕支持部)と、前腕支持体47を回動駆動する前腕支援用モータ52(第1駆動モータ)と含む。又、手関節動作支援機構200は、第1リンク機構の第1支持本体310と第2リンク機構の第2支持本体410を支持するとともに、第1支持本体310と第2支持本体410を前腕支持体47の中心線O(回転中心線)を含む面に沿って往復移動可能に、前腕支持体47に対して、往復移動自在に支持されたギヤ体76(移動部材)を備える。そして、手関節動作支援機構200は、ギヤ体76(移動部材)を前記往復移動のために駆動する手関節モータ71(第2駆動モータ)と備える。
【0132】
この結果、前腕動作支援機構100により、前腕の回内・回外を支援できるとともに、手関節動作支援機構200により、手関節の伸展屈曲運動を支援できる。このとき、前腕の回内又は回外した状態、或いは手関節の屈曲又は伸展した状態で、拇指の対立運動の動作支援を行うことができる。
【0133】
(6) 又、本実施形態の回復訓練装置4では、手関節動作支援機構200には、前腕の回内・回外時に生ずるトルクの検出を行うTS1(第1トルクセンサ)と、手関節の屈曲・伸展時に生ずるトルクの検出を行うトルクセンサTS2(第2トルクセンサ)が設けられている。
【0134】
この結果、トルクセンサTS1により前腕の回内・回外時に生ずるトルクの検出ができるとともに、又、トルクセンサTS2により、手関節の屈曲・伸展時に生ずるトルクの検出ができる。これらのトルクセンサにより、手関節のインピーダンスに応じた動作の補助ができ、さらにこれらのトルクセンサの検出を利用して、過大な補助力を抑制することも可能となる。
【0135】
(7) 又、本実施形態の回復訓練装置4では、前腕支持体47(前腕支持部)は、円弧状に延びるガイド溝45,46(ガイド部)を有するとともに、支持台30に対して回転自在に支持されてガイド溝45,46(ガイド部)が円弧状の軌跡を有するように移動可能な可動ガイド体41を備える。又、回復訓練装置4は、可動ガイド体41のガイド溝45,46(ガイド部)にてガイドされて回転自在に支持されるとともに前腕を通す部位が断面凹状をなす前腕支持体47とを備える。
【0136】
又、回復訓練装置4は、前腕支援用モータ52(第1駆動モータ)と可動ガイド体41間及び前腕支援用モータ52と前腕支持体47間には、それぞれ可動ガイド体41と前腕支持体47に対して同方向の回転量を付与する第1駆動力伝達機構K1及び第2駆動力伝達機構K2が設けられている。そして、回復訓練装置4は、第2駆動力伝達機構K2の前腕支持体47に付与する回転量は、第1駆動力伝達機構K1の可動ガイド体41に付与する回転量よりも多くしている。
【0137】
この結果、本実施形態によれば、第2駆動力伝達機構K2の前腕支持体47に付与する回転量を第1駆動力伝達機構K1の前記可動ガイド体に付与する回転量よりも多くして可動ガイド体41を回転移動させることにより、可動ガイド体41と同方向に回転する前腕支持体47をガイドすることができる。この結果、可動ガイド体41を大きくする必要がなく、回復訓練装置4を小型化できる。
【0138】
(8) 本実施形態によれば、回復訓練装置4において、前記各装着部には、力覚センサ430,432が設けられている。
この結果、本実施形態では、各装着部に設けられた力覚センサ430,432により指関節の運動時に生ずる力の検出ができる。これらの力覚センサにより、拇指や或いは指の関節のインピーダンスに応じた動作の補助ができ、さらにこれらの力覚センサの検出を利用して、過大な補助力を抑制することも可能となる。
【0139】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図24〜29を参照して説明する。第2実施形態は、拇指動作支援機構300の一部の構成が第1実施形態と異なっているだけであるため、拇指動作支援機構300の構成を中心にして説明する。なお、第1実施形態と同一構成については、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0140】
図24に示すようにギヤ体76の中央部には、前方に延出されたブラケット340を介して拇指動作支援機構300が取付けされている。ブラケット340は、ギヤ体76に固定された第1ブラケット部342と、第1ブラケット部342に対しヒンジ343を介して連結された第2ブラケット部344とからなっている。ヒンジ343により、拇指動作支援機構300は、図24に示すように拇指動作支援機構300が前腕支持体47の中心線O(回転中心線)に沿わせた位置と、図25に示すように中心線Oから離間する位置の間を移動可能である。
【0141】
第2実施形態の拇指動作支援機構300は、ブラケット340に取付けされた第1支持本体ガイド体としてのガイド体350と、ガイド体350に対し取付された第1支持本体352と、第1支持本体352に支持された第1リンク機構370とから構成されている。
【0142】
ガイド体350は、図24、図26、図27に示すように患側上肢手指5が通過可能な空間域を有するように略半円弧状をなし、外周面側が断面コ字状のガイド溝351が形成されている。そして、ブラケット340により、図24、図26に示すように、拇指動作支援機構300が患側上肢手指5に装着可能な位置に位置する場合、ガイド体350の外周面の曲率半径の中心O2が、前記前腕支持体47の中心線Oと平行になるように配置されている。ガイド体350の外周面の曲率半径の中心O2は、図27に示すように患側上肢手指5が通過可能な空間域内に位置する。
【0143】
又、ガイド溝351内には前記第1支持本体352がガイド体350の外周面の回りで往復移動自在に配置されている。
ガイド体350の外周面の両端には、従動プーリ353を支持する軸受354と、内外転用可動モータとしての第3可動モータ355を支持する軸受356とがそれぞれ固定されている。第3可動モータ355の出力軸には、駆動プーリ357が固定されている。
【0144】
そして、図28に示すように駆動プーリ357と従動プーリ353間には、無端状のワイヤ358が巻回されている。第1支持本体352は、図示しない貫通孔を介してワイヤ358が移動自在に貫通されているとともに、該貫通孔を通過するワイヤ358とは反対方向に逆行するワイヤ358の一部が止着されている。この結果、第1支持本体352は第3可動モータ355により駆動されてガイド溝351内を往復移動可能である。
【0145】
本実施形態では、図27に示すように第1支持本体352はガイド体350の外周面の曲率半径の中心O2の回りに所定範囲の角度(円錐面作動角ε1という)で運動する。本実施形態では、人間の拇指の可動域を満たすように、円錐面作動角は±60°として設定されている。この可動範囲は、第3可動モータ355の駆動制御により、任意に変更可能である。 この結果、図27に示すように第1支持本体352の円錐面作動角ε1を持った運動、すなわち、円錐運動によりその頂点は、ガイド体350の外周面の曲率半径の中心O2に位置することになる。又、この頂点は、ガイド体350内の空間域に患側上肢手指5の手首が配置されることにより、その手首内部に位置することになる。
【0146】
このようにしている理由は、円錐運動の頂点が手首内部に位置すると、拇指の対立運動の動作支援を拇指に無理な負荷を掛けることなく行うことができ、拇指の運動の制限がなく、小物を摘む等の拇指特有の細かな指先運動の実現が患側上肢手指に対して行うことができるからである。
【0147】
第1支持本体352には、第1リンク機構370を回動自在に支持する軸体362が設けられている。軸体362の軸心O3は、図27に示すようにガイド体350の外周面の曲率半径の中心O2を通過するように配置されている。
【0148】
図27に示すように軸体362には、後述する第1リンク機構370の一部を構成する連結アーム部364が一体に固定されている。又、図26に示すように第1支持本体352には、軸受部359が設けられ、軸受部359には、第1リンク機構用可動モータとしての第3可動モータ360が設けられている。そして、図24、図26に示すように第3可動モータ360の出力軸に固定されたギヤ360aが軸体362に固定された王冠型のギヤ362aに噛合されている。
【0149】
図24に示すように拇指動作支援機構300の第1リンク機構370は、第1リンクアーム部316、第2リンクアーム部314、第3リンクアーム部380、及び第3リンクアーム部380と第1支持本体352間を連結する連結アーム部364から構成されている。
【0150】
第2実施形態では、第3リンクアーム部380の構成が、第1実施形態の第3リンクアーム部312の構成と異なっている。本実施形態の第3リンクアーム部380は、図24に示すように、中間部としての略中央近傍に位置する第5曲折部382によって曲折自在に形成された一対のリンク、すなわち、前部リンク380aと後部リンク380bとから構成されている。前部リンク380aの先端は、第2リンクアーム部314の後部リンク314bの後端と第3装着部328とが同軸で回動自在に連結されている。
【0151】
又、前記連結アーム部364は、前記第3リンクアーム部380の後部リンク380bの後端と回動自在に連結されたモータ保持体364aと、モータ保持体364aに対して取付けされるとともに前記第1支持本体352に固定されたアーム364bとから構成されている。アーム364bの先端には、前後方向に延びる長孔366が形成されている。そして、長孔366を介してモータ保持体364aに対し着脱自在に螺合されたボルト368によりモータ保持体364aはアーム364bに対して連結されている。なお、長孔366が許容する範囲で、アーム364bに対するモータ保持体364aの取付け位置の調整が可能である。
【0152】
モータ保持体364aには、図29に示すように第2可動モータ307が取付けされている。第2可動モータ307の出力軸にはギヤ307aが設けられ、該ギヤ307aは後部リンク380b後端の軸に取付けされた王冠型のギヤ381と噛合されている。ギヤ307aとギヤ381とにより第2伝達機構M2が構成され、第2可動モータ307は第3リンクアーム部380及び第3装着部328を介して拇指のCM関節を可動範囲に沿って可動させる可動力を供給する。
【0153】
又、そして、第1リンク機構370の第1リンクアーム部316、第2リンクアーム部314、及び第3リンクアーム部380は、図27に示すようにその中心線を通過する仮想平面HMが中心O2を通過するように前記連結アーム部364により配置されている。
【0154】
そして、前記第3可動モータ360の駆動により連結アーム部364(すなわち、第1リンク機構370)は、軸体362の回りに所定の可動範囲(以下、頂角ω1という(図24参照))で運動する。本実施形態では、人間の拇指の可動域を満たすように、頂角ωは0〜60°として設定されている。この第3可動モータ330の駆動により、第1リンク機構370の円錐運動の頂角ω1を変更することが可能である。
【0155】
以上詳述した第2実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1) 本実施形態の回復訓練装置4の拇指動作支援機構300は、手首が通過可能な空間域を備えるとともに、前記第1支持本体を前記空間域の回りで前記回転として公転させてガイドする第1支持本体ガイド体としてのガイド体350を備えている。そして、第1支持本体352は、内外転用可動モータとしての第3可動モータ355に回転駆動されることにより前記空間域に前記円錐運動の頂点が位置するようにした。
【0156】
すなわち、ガイド体350内の空間域に患側上肢手指5の手首が配置された場合、円錐運動の頂点はガイド体350の外周面の曲率半径の中心O2に位置して、その手首内部に位置することになる。この結果、円錐運動の頂点が手首内部に位置すると、拇指の対立運動の動作支援を拇指に無理な負荷を掛けることなく行うことができ、拇指の運動の制限がなく、小物を摘む等の拇指特有の細かな指先運動の実現が患側上肢手指に対して行うことができる。
【0157】
(2) 又、第2実施形態の回復訓練装置4の拇指動作支援機構300は、第1リンク機構370の第1リンクアーム部316、第2リンクアーム部314、及び第3リンクアーム部380は、その中心線を通過する仮想平面HMが中心O2を通過するように前記連結アーム部364により配置した。そして、第3可動モータ360の駆動により連結アーム部364(すなわち、第1リンク機構370)は、軸体362の回りに所定の頂角ω1で運動するようにした。この結果、この第3可動モータ330の駆動により、第1リンク機構370の円錐運動の頂角ω1を変更することができる。
【0158】
(3) 又、第2実施形態の回復訓練装置4では、ヒンジ343により、図24に示すように拇指動作支援機構300が前腕支持体47の中心線O(回転中心線)に沿わせた位置と、図25に示すように中心線Oから離間する位置の間を移動可能とした。
【0159】
この結果、患側上肢手指5を拇指動作支援機構300に装着する際には、一旦、図25に示すようにヒンジ343により、拇指動作支援機構300を中心線Oから離間する位置へ移動させると、ガイド体350等が邪魔になることはない。そして、患側上肢手指5を図25に示すように配置した後、ヒンジ343により、拇指動作支援機構300を中心線Oに拇指動作支援機構300を沿わせるように配置すれば、拇指動作支援機構300を患側上肢手指5に対して装着することができる。
【0160】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 前記実施形態では、4つの指動作支援機構400を使用したが、1〜3個で使用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態の上肢手指機能回復訓練装置の斜視図。
【図2】同じく前腕位置規制部31の説明図。
【図3】同じく前腕支援用モータ52の取付状態示す説明図。
【図4】同じく前腕動作支援機構100の説明図。
【図5】可動ガイド体41の前側壁36,中央側壁37に対する取付構造を示す説明図。
【図6】可動ガイド体41,前腕支持体47、ギヤ61の位置関係を示す説明図。
【図7】前腕支持体47の正面図。
【図8】固定ガイド板38と周辺部材の説明図。
【図9】アームギヤ50と第2駆動力伝達機構K2の位置関係を示す説明図。
【図10】前腕支持体47及び周辺部材の平面図。
【図11】回復訓練装置4の一部省略側面図。
【図12】支持板51とその周辺部材の説明図。
【図13】(a)〜(f)は、可動ガイド体41と前腕支持体47の回転した際の位置関係を示すための説明図。
【図14】指動作支援機構400の配置状態を示す説明図。
【図15】手関節動作支援機構200及び指動作支援機構400の説明図。
【図16】拇指動作支援機構300の説明図。
【図17】指動作支援機構400の概略斜視図。
【図18】2つの閉ループが形成される場合の模式図。
【図19】拇指動作支援機構300の概略斜視図。
【図20】拇指動作支援機構300の円錐面作動角の説明図。
【図21】上肢手指リハビリシステム1の概略図。
【図22】上肢手指リハビリシステム1の電気的構成を示すブロック図。
【図23】(a)は前腕の回内・回外の説明図、(b)は手関節の伸展・屈曲の説明図、(c)は手関節の橈屈・尺屈の説明図。
【図24】第2実施形態の拇指動作支援機構300の説明図。
【図25】同じく拇指動作支援機構300の作用の説明図。
【図26】同じく拇指動作支援機構300の説明図。
【図27】同じく拇指動作支援機構300の円錐面作動角の説明図。
【図28】同じく拇指動作支援機構300の説明図。
【図29】リンクの要部拡大図。
【符号の説明】
【0162】
4…上肢手指機能回復訓練装置、
30…支持台、
41…可動ガイド体、
45,46…ガイド溝(ガイド部)、
47…前腕支持体、
52…前腕支援用モータ(第1駆動モータ)、
71…手関節モータ(第2駆動モータ)、
76…ギヤ体(移動部材)、
94…第4可動モータ(内外転用可動モータ)、
100…前腕動作支援機構、
200…手関節動作支援機構、
300…拇指動作支援機構、
307…第2可動モータ(第1リンク機構用可動モータ)、
326…第1可動モータ(第1リンク機構用可動モータ)、
330…第3可動モータ(第1リンク機構用可動モータ)、
400…指動作支援機構、
407…第6可動モータ(第2リンク機構用可動モータ)、
408…第7可動モータ(第2リンク機構用可動モータ)、
414…第5リンクアーム部、
416…第4リンクアーム部(第5リンクアーム部414とともに第2リンク機構を構成する。)
418…第3曲折部、
420…第4装着部(装着部)、
422…第5装着部(装着部)、
424…第4曲折部
426…第5可動モータ(第2リンク機構用可動モータ)、
410…第2支持本体、
K1…第1駆動力伝達機構、
K2…第2駆動力伝達機構、
R1…閉ループ(第4閉ループ)、
R2…閉ループ(第3閉ループ)、
O…中心線(回転中心線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動機能の回復訓練を要する患側上肢手指に装着され、前記患側上肢手指を他動的に運動させる上肢手指機能回復訓練装置において、
拇指の末節部、該拇指の基節部、及び中手骨部にそれぞれ装着される装着部をそれぞれ有する各リンクアーム部を直列連結した第1リンク機構と、
前記第1リンク機構を回動自在に支持する第1支持本体と、
前記第1リンク機構と前記第1支持本体にそれぞれ設けられ、前記各装着部を有するリンクアーム部を駆動することにより前記各装着部を介して前記拇指の各関節を可動する複数の第1リンク機構用可動モータと、
前記第1支持本体を回転する内外転用可動モータとを含む拇指動作支援機構を備え、
前記内外転用可動モータを回転することにより前記第1リンク機構が頂点を前記第1支持本体に固定した円錐運動をなし、前記第1支持本体に設けられた第1リンク機構用可動モータを回転することにより前記第1リンク機構が前記円錐運動の頂角を変えることを特徴とする上肢手指機能回復訓練装置。
【請求項2】
前記第1リンク機構の複数の装着部は、前記拇指の末節部に装着される第1装着部と、前記拇指の基節部に装着される第2装着部と、前記拇指の中手骨部に装着される第3装着部とを含み、
前記第1リンク機構の複数のリンクアーム部は、
先端に前記第1装着部が回動自在に連結されるとともに自身の中間部に設けられた第1曲折部によって曲折自在に形成される第1リンクアーム部と、
先端に前記第2装着部と前記第1リンクアーム部の基端が同軸にて回動自在に連結されるとともに自身の中間部に設けられた第2曲折部によって曲折自在に形成される第2リンクアーム部と、
先端に前記第2リンクアーム部の基端が回動自在に連結され、前記第3装着部が取付けされた第3リンクアーム部を含み、
前記第1リンク機構の第1〜3リンクアーム部が、前記第1〜3装着部を介して拇指に装着された際、
前記第1リンクアーム部と拇指のIP関節を含む第1閉ループと、
前記第2リンクアーム部と拇指のMP関節を含む第2閉ループがとが互いに干渉しない構成にされていることを特徴とする請求項1に記載の上肢手指機能回復訓練装置。
【請求項3】
前記拇指動作支援機構は、手首が通過可能な空間域を備えるとともに、前記第1支持本体を前記空間域の回りで前記回転として公転させてガイドする第1支持本体ガイド体を備え、
前記第1支持本体は、前記内外転用可動モータに回転駆動されることにより前記空間域に前記円錐運動の頂点が位置することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の上肢手指機能回復訓練装置。
【請求項4】
さらに、拇指以外の指の動作を支援する指動作支援機構を少なくとも1つ有し、
前記指動作支援機構は、
該指の基節部、及び中節部の各部位にそれぞれ装着される装着部をそれぞれ有する各リンクアーム部を直列連結した第2リンク機構と、
前記第2リンク機構を回動自在に支持する第2支持本体と、
前記第2リンク機構と前記第2支持本体にそれぞれ設けられ、第2リンク機構の各装着部を有するリンクアーム部を駆動することにより前記各装着部を介して前記指の各関節を可動する複数の第2リンク機構用可動モータを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の上肢手指機能回復訓練装置。
【請求項5】
前記第2リンク機構の複数の装着部は、前記指の中節部に装着される第4装着部と、前記指の基節部に装着される第5装着部とを含み、
前記第2リンク機構の複数のリンクアーム部は、
先端に前記第4装着部が回動自在に連結されるとともに自身の中間部に設けられた第3曲折部によって曲折自在に形成される第4リンクアーム部と、
先端に前記第5装着部と前記第4リンクアーム部の基端が同軸にて回動自在に連結されるとともに自身の中間部に設けられた第4曲折部によって曲折自在に形成される第5リンクアーム部を含み、
前記第2リンク機構の第4,5リンクアーム部が、前記第4,5装着部を介して指に装着された際、
前記第4リンクアーム部と指のPIP関節を含む第3閉ループと、
前記第5リンクアーム部と指のMP関節を含む第4閉ループがとが互いに干渉しない構成にされていることを特徴とする請求項4に記載の上肢手指機能回復訓練装置。
【請求項6】
運動機能の回復訓練を要する患側の前腕に装着する前腕動作支援機構と、手関節動作支援機構とを有し、
前記前腕動作支援機構は、
前記前腕を通す部位を有するとともに支持台に対して往復回動自在に支持されて、該部位に通される該前腕の回内・回外を支援する前腕支持部と、前記前腕支持部を回動駆動する第1駆動モータと含み、
前記手関節動作支援機構は、
前記第1リンク機構の第1支持本体と前記第2リンク機構の第2支持本体を支持するとともに、該第1支持本体と第2支持本体を該前腕支持部の回転中心線を含む面に沿って往復移動可能に、前記前腕支持部に対して、往復移動自在に支持された移動部材と、
該移動部材を前記往復移動のために駆動する第2駆動モータとを含むことを特徴とする請求項5に記載の上肢手指機能回復訓練装置。
【請求項7】
前記手関節動作支援機構には、前腕の回内・回外時に生ずるトルクの検出を行う第1トルクセンサと、手関節の屈曲・伸展時に生ずるトルクの検出を行う第2トルクセンサが設けられたことを特徴とする請求項6に記載の上肢手指機能回復訓練装置。
【請求項8】
前記前腕支持部は、
円弧状に延びるガイド部を有するとともに、前記支持台に対して回転自在に支持されて前記ガイド部が円弧状の軌跡を有するように移動可能な可動ガイド体と、
前記可動ガイド体のガイド部にてガイドされて回転自在に支持されるとともに前記前腕を通す部位が断面凹状をなす前腕支持体とにより構成され、
前記第1駆動モータと前記可動ガイド体間及び前記第1駆動モータと前記前腕支持体間には、それぞれ前記可動ガイド体と前腕支持体に対して同方向の回転量を付与する第1及び第2駆動力伝達機構が設けられ、
前記第2駆動力伝達機構の前記前腕支持体に付与する回転量は、前記第1駆動力伝達機構の前記可動ガイド体に付与する回転量よりも多くしたことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の上肢手指機能回復訓練装置。
【請求項9】
前記各装着部には、力覚センサが設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のうちいずれか1項に記載の上肢手指機能回復訓練装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate