説明

上製本

【課題】 本文シートを上製本として製本した後であっても、再度、本文シートを追加して製本できるような上製本を提供することであり、また、上製本の本文シートが変更されても、多数の上製本の中から、目的の上製本が探せるようにすることである。
【解決手段】 断面略コの字形状の長尺なバインド部材と、バインド部材の開口部に挿入される厚地の表・裏カバーシートと、表・裏カバーシート間に挟まれるとともに、バインド部材の内側背部に接着される本文シートと、バインド部材の内側背部及び/又は本文シートの外側背部に塗布される接着剤と、を備え、接着剤は硬化および軟化が繰り返し可能なホットメルト型接着剤である。背表紙には発光体や識別情報を記憶したICチップを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は簡易に製作できる上製本に関するものである。
【背景技術】
【0002】
書籍には、比較的廉価な雑誌や文庫などに見られる並製本や、高価な単行本や児童書などに見られる上製本がある。上製本の場合、表紙が、中味(本文シート)を守るために中味より2〜3ミリ程度大きくなっており、且つ、見返しが設けられている。また、綴じ方は、折り丁を重ね、糸でかがったものを表紙でくるむ糸綴じや、糸などを用いずに背を接着剤で止める無線綴じなどがある。このような上製本に関し、実開平6−46959号公報には、簡易上製本材および簡易製本用素材(見返し用表紙シート)で構成される簡易上製本用素材セットが開示されている。この公報における簡易上製本材は、上製本用表紙素材の内側背部に接着剤層設けるとともに、その表面を剥離紙で覆ったものであり、また、簡易製本用素材は、見返し用表紙シートの内側背部に、ホットメルト樹脂接着剤層を設けている。そして、簡易製本用素材を用いて本文用に突き揃えた用紙の背部にホットメルト樹脂接着剤層が当たる様にした後、その背部にアイロン等を当てて加熱し、ホットメルト樹脂を溶融し、本文を簡易に無線綴じした書籍の形態とし、これを、さらに、簡易上製本材の剥離紙を剥がして、挟み込む様にして接着するだけで、上製本が簡単にできるものである。
しかし、このような方式は、本文シートが事前に決められているような場合の製本方式であり、上製本とした後に、本文シートの補充・取り外しができない。
【特許文献1】実開平6−46959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は本文シートを上製本として製本した後であっても、再度、本文シートの補充・取り外しができるようにすることであり、また、上製本の本文シートが変更されても、多数の上製本の中から、目的の上製本が探せるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明の上製本は、断面略コの字形状の長尺なバインド部材と、該バインド部材の開口部に挿入される厚地の表・裏カバーシートと、該表・裏カバーシート間に挟まれるとともに、前記バインド部材の内側背部に接着される本文シートと、前記バインド部材の内側背部及び/又は前記本文シートの外側背部に塗布される接着剤と、を備え、前記接着剤は、硬化および軟化が繰り返し可能なホットメルト型接着剤であることを特徴とする。また、前記表・裏カバーシート及び/又は前記本文シートは、バインド部材の縁部分に沿って折り曲げ自在に構成されていることを特徴とする。さらに、電波から電力の供給を受けて発光する発光体、及び、識別情報を記憶したICチップを設けていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の上製本は、熱を加えることによって軟化し接着力が弱まるホットメルト型接着剤で、表・裏カバーシートや本文シートをバインド部材に接着させているので、製本後であっても、繰り返し本文シートの枚数を替えることができる。そして、このように製本されたものは、バインダーでファイルされる形式と異なり、製本されていることの見栄えの良さを有する。また、パーツ化された部品を組み合わせて製作できるので、1冊単位の製本ができる。
本実施の形態において、表・裏カバーシートや本文シートがバインド部材の縁部分に沿って折り曲げ自在にした場合には、見開きが容易にできる効果を奏する。また、上製本の本文シートを補充・取り外すことにより、本文シートがどの上製本に挟み込まれているのかが把握し難くなるので、上製本に挟まれる本文シートを上製本に関連させて、検索可能なシステムのなかで、上製本に発光体を設けてこれを発光させて探し出せるようにした場合には、目的の本文シートが容易に捜せる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1および図2は、本発明の上製本10及びその構造を説明する説明図であり、図3は図2のA部分を拡大して説明する説明図である。これら図1ないし図3に示すように、本発明の上製本10は、バインド部材1と、表カバーシート2および裏カバーシート3と、本文シート5とを備える。バインド部材1は、スチールや熱伝導性の良い部材を利用し、断面略コの字形状の長尺な部材として本体1aが形成され、内側背部8を除いてその周囲をバインド紙1aで覆い、接着剤4で貼り付けて形成される。
【0007】
表カバーシート2は、好適にデザインされた薄いシート状の表紙2bで厚紙2aを覆い、厚紙2aが入っていない表紙2bの端部が、バインド部材1の縁部分6の高さより若干高く、製本後に表カバーシート2が折り曲げられるように形成される。同様に、裏カバーシート3も、厚紙を好適にデザインした薄いシートで覆い形成される。
【0008】
以下、上述したバインド部材1および表カバーシート2および裏カバーシート3を利用した上製本の製本手順を説明する。先ず、バインド部材1の内側背部8、及び、バインド部材1の左右の内側縁部分(6、6)に、ホットメルト型接着剤9を塗布する。表カバーシート2および裏カバーシート3は、それぞれ、バインド部材1の左右の内側縁部分(6、6)に当接させ、且つ、本文シート5は、表カバーシート2および裏カバーシート3の間に挟み、バインド部材1の内側背部8に、その外側背部7を当接させる。次に、バインド部材1の外側から均一に熱を加え、ホットメルト型接着剤9を160度程度になるように加熱し軟化させ、常温に戻して硬化させることにより、バインド部材1に表カバーシート2、裏カバーシート3、本文シート5を接着する。因みに、軟化した接着剤9は本文シート5に浸透し、常温に戻すことによって硬化するが、硬化にともなって接着力が発揮される。
【0009】
上製本10の本文シート5を追加する際には、先ず、上製本10の背部を加熱して、ホットメルト型接着剤9を軟化させる。この状態では、接着剤9の接着力が低下しているので、バインド部材1に接着された本文シート5を剥がすことができる。次に、追加される本文シート5を加えた厚みのバインド部材1を用意して、上述した製本の手順に従って製本する。これにより、バインダーにファイルする感覚で本文シート5の追加や取り外しが可能になる。尚、ホットメルト型接着剤9は、常温では固体であり、160℃程度で接着に十分な流動性をもつようになる線状高分子の共重合物である。また、軟化温度の低い接着剤9を用いた場合には、バインド部材1の材質を、例えば、ポリオレフィンやポリ塩化ビニル等なとの合成樹脂とすることもできる。
【0010】
図4は、本文シート5の一例を示したものであり、短冊状の基部5dにシート状の連結部材5bを介して、本体5aが連設されている。そして、この本体5aの表裏面には、再剥離性を有した粘着剤が塗布され、さらに、透明な合成樹脂シート5eで覆われている。これにより、バインド部材1の縁部分6の高さで曲げられるように形成され、写真等が保持できるものとなっている。尚、図中5c部分は、合成樹脂シート5bが貼り付けられている部分であり、透明な合成樹脂シート5eがシート状の連結部材5bに重ねられる部分である。この5c部分には、粘着剤が塗布されてなく、この部分を摘んで、合成樹脂シート5eが剥がせるようになっている。
【0011】
このような本文シート5を利用することにより、アルバムを上製本として製本することや、イベント会場で当日写した写真等を記念冊子とすること、手帳とすることなど、好適に利用できるものとなる。そして、一度製本された後に、同様の本文シート5が追加できるので、アルバム、記念冊子、手帳等を充実させることができる。尚、本文シート5については、表カバーシート2および裏カバーシート3のサイズより小さなものであれば良く、特に、限定されることはない。したがって、コピー用紙、画用紙、和紙、写真印画紙などの紙類を、フリー台紙と共に、挟み込んで綴じることもできる。
【0012】
図5は、本文シート5をバインド部材1の内側背部に直接貼り付けるのではなく、補強紙15を介在させることにより、本文シート5が直接バインド部材1に貼り付けることができない場合であっても、上製本10が作成できることを示したものである。このような実施の形態は、例えば、写真アルバムなどの現像写真を厚紙に貼り込み、写真集として製本するような場合に有効であり、厚みが異なる写真集が製本できる。
【0013】
以上のように、本発明の上製本10は本文シート5の補充・取り外しが可能に構成され、上製本10を製作した後であっても、これを充実させることができるものである。一方、上製本10の本文シートを変更した場合には、目的の本文シート5がどの上製本10に挟み込まれているのかが把握し難くなるので、上製本10に挟まれる本文シート5を上製本10に関連させて検索可能にする。本実施の形態においては、図6に示すように、上製本10の識別情報を記憶したICチップ13、及び、電波から電力の供給を受けて発光するLED12やEL板等の発光体を、該当する上製本10の背表紙に着脱自在に取り付ける。
【0014】
発光体を設けた上製本10は、RFID( Radio Frequency Identification )技術に基づき、管理された上製本10の収納エリア内で利用可能になる。この技術はIDが付与されるとともに書き込み機能が付加されたタグ(図6中、ICチップ13)と、タグと非接触で連結されるリーダ装置(図省略)との組み合わせで構成され、無線を使って固体識別をするツールである。リーダ装置には、タグに書き込まれた識別情報を得るために、読み取り用の無線電波を発信する電波発信手段と、タグからの反射波を受信する受信手段とが設けられている。
【0015】
特定の上製本10を探し出すには、リーダ装置に設けられた検索手段で検索し、上製本10に設けられた識別情報を記憶したICチップを稼動させてLED12を発光させる。即ち、リーダ装置には上製本10に挟み込まれる本文シートの情報および上製本の識別情報が入力されたデータベースから、本文シートの情報をキーワードにして上製本の識別情報が検索される検索手段を備え、さらに、検索手段で検索された上製本の識別情報を無線電波で送信する送信手段を有する。このような検索手段のキーワードは、上製本のタイル名として、書庫内における上製本の所在地を示す棚番号を画面に表示させる方式と組み合わせてもよい。
【0016】
上製本10に設けられるICチップ13やLED12は、リーダ装置から供給される電波を電源として稼動するが、微弱な電力しか得られないことから、別途電池を組み合わせ、LED12の輝度を向上させることもできる。これにより、上製本10の管理書庫内で所望の上製本10が容易に探し出せるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の上製本10を利用することにより、重要書類や写真を収めた保管ブックが製作できる。さらに、このような保管ブックをファイリング部材やボックスと組み合わせることにより、保管ブックボックスとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の上製本の構造を説明する説明図である。
【図2】本発明の上製本を説明する説明図である。
【図3】図2のA部分を拡大して示す説明図である。
【図4】本文シートを示す説明図である。
【図5】他の実施の形態を示す説明図である。
【図6】発光体が設けられていることを示す説明図である。
【符号の説明】
【0019】
1 バインド部材
2 表カバーシート
3 裏カバーシート
4 接着剤
5 本文シート
6 縁部分
7 外側背部
8 内側背部
9 ホットメルト型接着剤
10 上製本
11 背表紙
12 LED
13 ICチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面略コの字形状の長尺なバインド部材と、
該バインド部材の開口部に挿入される厚地の表・裏カバーシートと、
該表・裏カバーシート間に挟まれるとともに、前記バインド部材の内側背部に接着される本文シートと、
前記バインド部材の内側背部及び/又は前記本文シートの外側背部に塗布される接着剤と、を備え、前記接着剤は、硬化および軟化が繰り返し可能なホットメルト型接着剤であることを特徴とする上製本。
【請求項2】
前記表・裏カバーシート及び/又は前記本文シートは、バインド部材の縁部分に沿って折り曲げ自在に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の上製本。
【請求項3】
電波から電力の供給を受けて発光する発光体、及び、識別情報を記憶したICチップを設けていることを特徴とする請求項1または2に記載の上製本。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−203714(P2007−203714A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28755(P2006−28755)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(506042117)有限会社プラスアクト (1)
【Fターム(参考)】