説明

下げ缶に収納する液体の飛散防止対策工具

【課題】既存の安価な下げ缶を利用することができるとともに、下げ缶が傾いてこぼれても周囲への飛散を確実に防止することができ、作業性も改善することができる下げ缶に収納する液体の飛散防止対策工具を提供する。
【解決手段】ロープ2を吊下して昇降するためにその先端部に取り付けられたフック1と、塗料を収納する下げ缶3を吊下するための吊下用フック4を途中に固定したロープ2と、吊下用フック4に吊下した下げ缶3を取り囲む筒状をなし、下げ缶3を出し入れするための開閉可能な扉部6を該扉部6のヒンジ部7及び面テープ8A,8Bとともに前記筒状の側面に設けるとともに、フック1から吊下されるよう上端部が連結アーム9を介してフック1に連結されている飛散防止カバー5と、吊下用フック4に吊下した下げ缶3からこぼれた塗料を貯留するため飛散防止カバー5の下端開口を閉塞するように飛散防止カバー5の下端部に設けた容器部13とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下げ缶に収納する液体の飛散防止対策工具に関し、特に送電線等の鉄塔の塗装工事の際に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
家屋等に隣接した場所に設置している送電線の鉄塔を塗装する際には、塗料の周囲への飛散を防止するため、鉄塔の途中に集束用足場を設け、飛散防止ネットを施設することで周辺への塗料の飛散を最小限に留めるよう対策を行っている。ここで、収束用足場は鉄塔の上部からこの鉄塔を覆うように配設した飛散防止ネットの下部を収束させるために設けたものであり、当該塗装工事の足場としても機能させている。
【0003】
ところが、集束用足場より上方の塗装時には上方のみ飛散防止ネットで囲い作業を行うため、塗料を下げ缶に収納し、集束用足場まで吊上げる際には集束用足場より下方の飛散対策をしていない箇所を塗料を入れた下げ缶と通過させる必要がある。このため、吊り上げ途中の塗料を収納した下げ缶が鉄塔の部材に接触することでこぼれて飛散することがある。
【0004】
かかる事態を防止するため、集束用足場へ塗料を収納した下げ缶を吊上げるまでの間、下げ缶の一つ一つにマスキングテープ等により、塗料のこぼれを防止するよう対策を施している。
【0005】
しかしながら、かかるマスキングテープ方式では、その装着に大変な手間がかかるばかりでなく、集束用足場上でマスキングテープを剥がす際に塗料がこぼれることも多々ある。
【0006】
そこで、鉄塔や鉄構等の高所での塗装作業において、作業者の腰帯などに吊り下げた塗料容器が揺れ動いても中の塗料がこぼれないようにした塗料容器が提案されている(特許文献1参照)。これは、容器本体の上端開口部周縁を密封する着脱可能で、かつ中央部に刷毛を出し入れする穴を設けた蓋を取り付けて、容器内の塗料をこぼれ難くすると共に、塗料の揺動を抑制し、かつ刷毛に含ませた塗料の量を調節するための筒部を、この蓋穴に組み付けた蓋付き塗料容器とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−307536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1には次のような課題が残されている。
(1)新たな塗料用下げ缶を購入する場合には適用できるが、従来より使用している市販の安価な塗料用の下げ缶を用いることができない。
(2)水平以上に傾いた際に完全に塗料のこぼれを防止できないため、抜本的な飛散防止には繋がらない。
(3)塗料の内容量に制限があり、鉄塔の塗装時には多くの内容量を必要とするため度重なる補充が必要となる。
(4)鉄塔塗装では多種多様な特性を持つ塗料を使用するため、細かな清掃が必要となるが、特許文献1に開示する容器は塗料の残存化が生じやすく繰り返し使用が困難となる。
【0009】
本発明は、上記従来技術に鑑み、既存の安価な下げ缶を利用することができるとともに、下げ缶が傾いてこぼれても周囲への飛散を確実に防止することができ、作業性も改善することができるばかりでなく、塗料以外の他の液体を下げ缶に収納して所定の工事に供する場合にも利用することができる下げ缶に収納する液体の飛散防止対策工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、ロープを吊下して昇降するためにその先端部に取り付けられた吊下部材と、液体を収納する下げ缶を吊下するための少なくとも一個の吊下用フックを途中に固定したロープと、前記吊下用フックに吊下した下げ缶を取り囲む筒状をなし、前記下げ缶を出し入れするための開閉可能な扉部を該扉部のヒンジ部及び閉止部材とともに前記筒状の側面に設けるとともに、前記吊下部材又は前記ロープの先端部から吊下されるよう上端部が連結部材を介して前記吊下部材又は前記ロープに連結されている飛散防止カバーと、前記吊下用フックに吊下した下げ缶からこぼれた液体を貯留するため前記飛散防止カバーの下端開口を閉塞するように前記飛散防止カバーの下端部に設けた容器部とを有することを特徴とする下げ缶に収納する液体の飛散防止対策工具にある。
【0011】
本態様によれば、吊下用フックに吊下する下げ缶として既存のものを利用することができる。一方、吊下用フックに吊下した下げ缶が揺れて中の液体が飛散しても筒状の飛散防止カバーの内周面で外部への飛散が防止されるばかりでなく、何らかの原因で下げ缶からこぼれ出ても容器部に集積されるので、外部への流出を未然に防止し得る。
【0012】
この結果、特許文献1に開示するような特殊な下げ缶を用いなくても、またマスキングテープ等を装着する等の飛散防止対策を講じなくても簡易、的確に液体を収納した下げ缶の吊り上げに伴う液体の周囲への飛散を確実に防止することができる。
【0013】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載する下げ缶に収納する液体の飛散防止対策工具において、前記ロープにはその軸方向に亘り複数個所に前記吊下用フックを設ける一方、前記扉部をヒンジ部及び閉止部材とともに前記各吊下用フックの位置にそれぞれ対応させて前記筒状の側面に複数個設け、さらに前記吊下用フックに吊下した下げ缶の下方には各下げ缶に対応させた一個ずつの板状部材であって中心部に前記ロープが貫通する穴を有するとともに中心部に向かって下降するように傾斜して周縁部が前記飛散防止カバーの内周面に固着されている仕切板を設けたことを特徴とする下げ缶に収納する液体の飛散防止対策工具にある。
【0014】
本態様によれば、一度に複数個の下げ缶を吊り上げることができるばかりでなく、各位置の下げ缶に対応して扉部が設けられているので、必要な高さの位置で必要な下げ缶を一個ずつ取り出すことができる。また、下げ缶から液体がこぼれた場合でも仕切板の傾斜により中央部に集められ、穴を介して下方に落下させて確実に最下部の容器部に集めることができる。
【0015】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載する下げ缶に収納する液体の飛散防止対策工具において、前記飛散防止カバーは前記下げ缶を吊下用フックから前記ロープの軸方向に圧縮可能な材料で形成したことを特徴とする下げ缶に収納する液体の飛散防止対策工具にある。
【0016】
本態様によれば、下げ缶をフックから取り外した状態では飛散防止カバーを圧縮してたたむことができるので、空間における使用時の占有体積に対し飛躍的に占有体積を縮小できる。この結果、運搬時の可搬性に優れるものとなる。ちなみに、この場合の飛散防止カバーの材料としては、例えばテント地等の布が好適である。
【0017】
本発明の第4の態様は、第1乃至第3の態様の何れか一つに記載する下げ缶に収納する液体の飛散防止対策工具において、前記容器部の下方から前記容器部の中心部を密閉状態を維持しつつ貫通してロープの軸方向に沿い上方に伸びるロッドを有し、該ロッドの上端部には該ロッドの下端部が連結され該ロッドの下端部には別のロープを挿通し得る環状部が形成されていることを特徴とする下げ缶に収納する液体の飛散防止対策工具にある。
【0018】
本態様によれば、環状部に挿通したロープを引張ることにより容易に当該飛散防止対策工具の所定の姿勢を維持させることができる。すなわち、塗料等の液体が収納された下げ缶を吊下用フックに吊下して上昇させる場合、ロープの軸方向が鉛直方向を向くようその姿勢を容易に制御することができる。
【0019】
本発明の第5の態様は、第1乃至第4の態様の何れか一つに記載する下げ缶に収納する液体の飛散防止対策工具において、前記閉止部材は面テープで形成したことを特徴とする下げ缶に収納する液体の飛散防止対策工具にある。
【0020】
本態様によれば、ワンタッチで簡単に扉部の開閉を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来より使用している市販の下げ缶を使用することができ、その分工事コストの低減を図ることができる。また、下げ缶が水平以上に傾き、塗料等、内部の液体のこぼれが生じた場合であっても最下部に配置した容器部の容量内であれば外部への流出を有効に防止することができる。すなわち、環境に対する負荷を良好に低減することができる。
【0022】
さらに、使用後の清掃は最下部に配置した容器部の簡易清掃のみで済むことから簡便に繰り返し使用が可能となる。
【0023】
例えば、送電線の鉄塔の塗装工事に適用した場合、集束用足場までの吊上げには通いロープを使用して吊上げを行っているが、この通いロープに簡単に設置が可能であるばかりでなく、一度に複数個の塗料等の液体の下げ缶からの飛散防止が可能となり、集束用足場上での受取りも、液体のこぼれなく容易に可能となるという効果を奏する。
【0024】
この結果、作業時間の短縮にも有効に寄与させることができ、この点でも塗装等の工事のコストの低廉化に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係る下げ缶に収納する液体の飛散防止対策工具を概念的に示す説明図である。
【図2】図1の飛散防止対策工具を用いた送電線の鉄塔の塗装工事の第1の態様を概念的に示す説明図である。
【図3】図1の飛散防止対策工具を用いた送電線の鉄塔の塗装工事の第2の態様を概念的に示す図であり、(a)はその全体的な説明図、(b)はその飛散防止対策工具の部分を抽出して示す説明図である。
【図4】図1の飛散防止対策工具を用いた送電線の鉄塔の塗装工事の第3の態様を概念的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。本形態は送電線の鉄塔の塗装に適用するものとして説明する。したがって、高所に吊り上げる下げ缶には塗装用の塗料が収納されている。
【0027】
図1は本発明の実施の形態に係る飛散防止対策工具を概念的に示す説明図である。同図に示すように、本形態の吊下部材であるフック1は、ロープ2を吊下して昇降するためのもので、ロープ2の先端部が固着されている。ロープ2には下げ缶3を吊下するための吊下用フック4がその軸方向(上下方向)に亘り複数個(図では3個)配設されている。
【0028】
飛散防止カバー5は、吊下用フック4に吊下した下げ缶3を取り囲む筒状をなし、フック1に吊下されるようその上端部が連結アーム9を介してフック1に固定してある。本形態においては飛散防止カバー5をフック1に吊下させたが、これに限るものではない。飛散防止カバー5がロープ2に吊下されるようロープ2に連結アーム9が固定されていても良い。
【0029】
また、飛散防止カバー5の筒状の側面には下げ缶3を出し入れするための開閉可能な扉部6が、そのヒンジ部7及び閉止部材である面テープ8A,8B(マジックテープ(登録商標))とともに設けてある。本形態においては、吊下用フック4の数及びそのロープ2における位置に対応させて、扉部6等は吊下用フック4と同数(本形態では3個)が、吊下用フック4の位置に対応させて設けてある。さらに具体的には、扉部6の上端部と下端部のほぼ中間に吊下用フック4に吊下した下げ缶3の中央部が位置するような関係となっている。扉部6を開いた状態で行う下げ缶3の出し入れの便宜のためである。
【0030】
また、面テープ8Aは扉部6の裏面に、面テープ8Bは筒状部の表面に固定してあり、ヒンジ部7を軸として回動する扉部6が閉じた状態で面テープ8Aを面テープ8Bに当接させることにより扉部6の閉状態を維持するようになっている。本形態では扉部6の閉止部材として面テープ8A,8Bを用いたが、これに限るものではない。ただ、面テープ8A,8Bを用いた場合には、ワンタッチで簡単に扉部6の開閉を行うことができる。なお、最下部の扉部6にはその下端中央を切り欠いた切欠部6Aが設けてあり、切欠部6Aを介して飛散防止カバー5内から外部へロープを引き出すことができるようになっているが、この点については後に詳述する。
【0031】
吊下用フック4に吊下した下げ缶3の下方には各下げ缶3に対応させた一個ずつの板状部材であって中心部にロープ2が貫通する穴11を有するとともに中心部に向かって下降するように傾斜し、さらに周縁部が飛散防止カバー5の内周面に固着されている仕切板10が設けてある。本形態における仕切板10には塗料が付着する可能性があるため、仕切板10は塗料に対する耐食性を有する材料であることが肝要である。この点をも考慮すると木製が好適である。また、仕切板10の周縁部から穴11に向かって径方向に亘り切欠部12が形成してある。この切欠部12は必ずしも必要なものではないが、これを形成することにより仕切板10の外周側から切欠部12に沿って穴11までロープ2を案内することができ、仕切板12の穴11にロープ2を通す作業が容易になる。
【0032】
飛散防止カバー5の筒状の下端開口は容器部13で閉塞されている。ここで、容器部13は吊下用フック4に吊下した下げ缶3からこぼれた塗料を貯留して環境への流失を防止する。このため容器部13は塗料に対して耐食性を有する例えばブリキ板で好適に作製することができる。
【0033】
さらに、本形態における容器部13には下方から容器部13の中心部を密閉状態を維持しつつ貫通してロープ2の軸方向に沿い上方に伸びる金属製のロッド14が、例えば溶接により固着されている。ここで、ロッド14にはその上端部にロープ2の下端部が連結される環状部15が、その下端部に別のロープを挿通し得る環状部16がそれぞれ形成されている。
【0034】
かかる本形態の飛散防止対策工具Iは、その使用時に、図1に示すようにフック1にロープ2及び飛散防止カバー5が垂直方向に吊下された状態となる。かかる状態で扉部6を開いて塗料を収納した下げ缶3を吊下用フック4に吊下し、フック1に取り付けた他のロープを上昇させることにより所定の位置まで引き上げる。この際、下げ缶3としては既存のものを利用することができる。
【0035】
ここで、本形態においては、複数個(本形態では3個)を同時に引き上げることができ、しかも個別の下げ缶3を個別の扉部6を介して取り出すことができるので、作業位置が上下方向でばらついていても他の扉部6は閉めたまま、各位置で所定の下げ缶3を選択して個別に取り出すことができる。
【0036】
一方、引き上げ作業中に吊下用フック4に吊下した下げ缶3が揺れて中の塗料が飛散しても飛散防止カバー5の内周面で外部への飛散が防止されるばかりでなく、何らかの原因で下げ缶3からこぼれ出ても容器部13に集積される。特に本形態においては下げ缶3からこぼれた塗料は仕切板10の傾斜により中央部に集められ、穴11を介して下方に落下するので、確実に最下部の容器部13に集積される。かくして塗料の環境への飛散乃至流出を完全に防止することができる。
【0037】
ここで、本形態においては、ロープ2の下端部をロッド14の環状部15に係止するとともに、環状部16にもロープを係止させてこのロープを外部から引張ることにより容易に当該飛散防止対策工具Iの所定の姿勢(ロープ2が垂直方向に沿った姿勢)を維持させることができる。すなわち、塗料が収納された下げ缶3を吊下用フック4に吊下して上昇させる場合、ロープ2の軸方向が鉛直方向を向くよう揺れを防止して所定の姿勢を維持させるべく容易に制御することができる。
【0038】
また、本形態に係る飛散防止対策工具Iの飛散防止カバー5は布で形成したので、下げ缶3を吊下用フック4から取り外した状態では蛇腹状に圧縮してたたむことができる。この結果、空間における使用時の占有体積に対し飛躍的に占有体積を縮小でき、可搬性に優れるものとなる。
【0039】
ここで、上記飛散防止対策工具Iを適用する送電線の鉄塔の塗装工事を例に採り、その工事の態様を説明しておく。
【0040】
図2は飛散防止対策工具Iを用いた送電線の鉄塔の塗装工事の第1の態様を概念的に示す説明図である。同図は鉄塔21の上部の塗装工事の態様を示している。したがって鉄塔21の途中に集束用足場22が設けられており、この収束用足場22よりも上方に飛散防止ネット23が設置されている。かかる状態で飛散防止対策工具Iを集束用足場22に対し昇降させる必要がある。そこで鉄塔21の所定の位置には金車25が設置してあり、本例の場合にはループ式の通いロープ26が金車25に吊下してある。ここで、通いロープ26は飛散防止対策工具Iのフック1を係止した後、飛散防止対策工具Iを迂回して下方に至り、さらにロッド14の環状部16を係止している。したがって、通いロープ26を反時計方向に移動させることで飛散防止対策工具Iを上昇させ、時計方向に移動させることで飛散防止対策工具Iを下降させることができる。このとき通いロープ26の下端を引張ることにより飛散防止対策工具Iの揺れを可及的に抑制することができる。
【0041】
図3は飛散防止対策工具Iを用いた送電線の鉄塔の塗装工事の第2の態様を概念的に示す図であり、(a)はその全体的な説明図、(b)はその飛散防止対策工具の部分を抽出して示す説明図である。本例はループ式の通いロープ27の途中に吊下用フック4を配設してロープ2の機能を通いロープ27の一部に代替させたものである。すなわち、通いロープ27のみで下げ缶3の昇降を行うようになっている。ここで、通いロープ27はフック1に係止させた後、飛散防止カバー5の内部で仕切板10の穴11を貫通し、環状部15及び切欠部6Aを介して外部に至り、さらに環状部16に係止させてある。
【0042】
かくして図2に示す場合と同様に、通いロープ27を反時計方向に移動させることで飛散防止対策工具Iを上昇させ、時計方向に移動させることで飛散防止対策工具Iを下降させることができる。このとき通いロープ27の下端を引張ることにより飛散防止対策工具Iの揺れを可及的に抑制することができる。本態様の場合、フック1から環状部16に至る通いロープ27がほぼ一直線になるので、通いロープ27の下端を引張ることによる飛散防止対策工具Iの揺れはより効果的に抑制することができる。
【0043】
なお、図3中、図2と同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。
【0044】
図4は飛散防止対策工具Iを用いた送電線の鉄塔の塗装工事の第3の態様を概念的に示す説明図である。同図に示すように、本形態では、通いロープ28をループ状とすることなく、単純に通いロープ28の下端部にフック1を係止させて集束用足場22上の作業員29が飛散防止対策工具Iを昇降させている。
【0045】
なお、上記実施の形態において吊下用フック4は複数個(3個)設けたが、これは少なくとも一個あれば良い。ただ、その数が多ければ多いほど一度に昇降させることができる下げ缶3の数が多くなり、当然迅速な工事の遂行が可能となる。また、下げ缶3に収納するものは塗料に限る必要はない。環境に飛散させるのが好ましくない液体であれば工事の種類に応じて適切なものを収納させることができる。例えば清掃工事に使用した汚れた水や灯油等を収納する場合にも好適に適用し得る。
【0046】
さらに、上記実施の形態においては飛散防止カバー5を布で形成したがこれに限るものではない。ただ、布等の折りたたむことが可能な材料で形成した場合には不使用時に蛇腹状に折りたたむことで占有体積を縮小でき、可搬性に優れたものとすることができる。また、仕切板10及びロッド14も、これらを設けることで上述の如き固有の効果は発揮させることができるが、必ずしも必要ではない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は送電線等の鉄塔、橋梁等の塗装工事、清掃等を行う産業分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
I 飛散防止対策工具
1 フック
2 ロープ
3 下げ缶
4 吊下用フック
5 飛散防止カバー
6 扉部
7 ヒンジ部
8A,8B 面テープ
10 仕切板
11 穴
12 切欠部
13 容器部
14 ロッド
15,16 環状部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープを吊下して昇降するためにその先端部に取り付けられた吊下部材と、
液体を収納する下げ缶を吊下するための少なくとも一個の吊下用フックを途中に固定したロープと、
前記吊下用フックに吊下した下げ缶を取り囲む筒状をなし、前記下げ缶を出し入れするための開閉可能な扉部を該扉部のヒンジ部及び閉止部材とともに前記筒状の側面に設けるとともに、前記吊下部材又は前記ロープの先端部から吊下されるよう上端部が連結部材を介して前記吊下部材又は前記ロープに連結されている飛散防止カバーと、
前記吊下用フックに吊下した下げ缶からこぼれた液体を貯留するため前記飛散防止カバーの下端開口を閉塞するように前記飛散防止カバーの下端部に設けた容器部とを有することを特徴とする下げ缶に収納する液体の飛散防止対策工具。
【請求項2】
請求項1に記載する下げ缶に収納する液体の飛散防止対策工具において、
前記ロープにはその軸方向に亘り複数個所に前記吊下用フックを設ける一方、
前記扉部をヒンジ部及び閉止部材とともに前記各吊下用フックの位置にそれぞれ対応させて前記筒状の側面に複数個設け、
さらに前記吊下用フックに吊下した下げ缶の下方には各下げ缶に対応させた一個ずつの板状部材であって中心部に前記ロープが貫通する穴を有するとともに中心部に向かって下降するように傾斜して周縁部が前記飛散防止カバーの内周面に固着されている仕切板を設けたことを特徴とする下げ缶に収納する液体の飛散防止対策工具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する下げ缶に収納する液体の飛散防止対策工具において、
前記飛散防止カバーは前記下げ缶を吊下用フックから前記ロープの軸方向に圧縮可能な材料で形成したことを特徴とする下げ缶に収納する液体の飛散防止対策工具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載する下げ缶に収納する液体の飛散防止対策工具において、
前記容器部の下方から前記容器部の中心部を密閉状態を維持しつつ貫通してロープの軸方向に沿い上方に伸びるロッドを有し、該ロッドの上端部には該ロッドの下端部が連結され該ロッドの下端部には別のロープを挿通し得る環状部が形成されていることを特徴とする下げ缶に収納する液体の飛散防止対策工具。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載する下げ缶に収納する液体の飛散防止対策工具において、
前記閉止部材は面テープで形成したことを特徴とする下げ缶に収納する液体の飛散防止対策工具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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