説明

下剤組成物

【課題】 腹痛などの副作用を実質的にともなわずに便秘を治療するために利用できる下剤組成物を提供する。
【解決手段】 活性成分として、二環式構造/単環式構造の比が少なくとも1:1である、ハロゲン化二環式化合物を含む抗−便秘組成物を提供するハロゲン化二環式化合物は式(I)によって表される。式中、XおよびXは好ましくはともにフッ素原子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト便秘患者における便秘の軽減または予防のため、そしてまた腸の洗浄のために有用な新規な下剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プロスタグランジン類(以下PG類と称する)は、様々な生理活性を有し、ヒトおよび動物の組織および器官に含まれる、脂肪酸のグループの名称である。PG類は本質的に下記式のプロスタン酸骨格を含む:
【化1】

そして、合成生産物の中には、上記の骨格になんらかの修飾を含んでいるものもある。PG類は、構造および五員環の置換基によっていくつかのタイプに分類される。例えば以下のものなどである。
【化2】

さらに、これらは13,14−二重結合を含むPG類、5,6−および13,14−二重結合を含むPG類、そして5,6−、13,14−、および17,18−二重結合を含むPG類に分類される。
【0003】
PG類は以下のように表される。PG類において、α−鎖、ω−鎖および五員環を構成する炭素は、以下の基本骨格にしたがって番号付けされる。
【化3】

【0004】
すなわち、基本骨格において、構成炭素原子は、カルボキシル基の炭素原子がC−1、α−鎖がC−2からC−7を含み、環に向かって番号が増加し、五員環がC−8からC−12を含み、そしてω−鎖がC−13からC−20を含むというように、番号付けられる。α−鎖の炭素がより少ないときはC−2に続く炭素原子番号は相応にシフトし、7より多いときはC−2位の炭素が(C−1位における)カルボキシル基のかわりに置換基を有すると仮定して、化合物の命名がなされる。ω−鎖の炭素原子がより少ないときは、炭素原子はそれに応じて20より少ない番号が付けられ、そして8より多いときには21位とその後の炭素原子は、置換基であるとみなされる。配置については、ことわりのない限り、上記の基本骨格の配置にしたがうものとする。
【0005】
例えば、PGD、PGEおよびPGFは、C−9および/またはC−11位にヒドロキシル基を有する化合物を意味する。本発明において、PG類はC−9および/またはC−11位にヒドロキシル基以外の基を有するものも含み、それらは、9−デヒドロキシ−9−置換、または、11−デヒドロキシ−11−置換化合物と命名される。
【0006】
さらに、PG類は、二環式互変異性体、光学異性体、幾何異性体などのような、異性体を含む。
【0007】
PG類は、例えば、血管拡張、炎症誘導、血小板凝集、子宮筋刺激、腸管筋刺激、抗−潰瘍効果などの、様々な薬理および生理活性を有することが知られている。PGE類またはPGF類は、腸管刺激によって起こる腸管収縮が強い一方、腸貯留(enteropooling)効果が弱いことが判明している。したがって、腸管収縮によっておこる腹痛などの副作用のために、PGE類やPGF類を下剤として用いるのは不可能である。
【0008】
一方、13,14−単結合とC−15を構成するカルボニル基とを有するPG類、および、13,14−二重結合とC−15を構成するカルボニル基とを有するPG類は、ヒトまたは動物の代謝産物中に存在していることが判明している。これらの13,14−ジヒドロ−15−ケト−プロスタグランジン類および15−ケト−プロスタグランジン類(以下15−ケト−PG類と称する)は、対応するPG類の酵素代謝により生体内で天然に生じる代謝産物であると知られている。これらの15−ケト−PG類は、PG類の有する様々な生理活性をほとんど示さず、薬理的および生理的に不活性な代謝産物であると報告されている(Acta Physiologica Scandinavica, 66, p.509- (1966)を参照されたい)。
【0009】
上野らの米国特許第5317032号には、二環式互変異性体の存在を含む、プロスタグランジン下剤について記載されている。しかし、二環式互変異性体の、抗−便秘治療剤および予防剤としての顕著な活性については従来知られていなかった。
【発明の概要】
【0010】
15−ケト−PG類のアナログの薬理活性を評価している際、本発明者らは、対応する二環式化合物、即ち、1または複数のハロゲン原子により置換された二環式互変異性体が、少用量で便秘の緩和に利用できることを見い出した。C−16位において、特にフッ素元素を用いると少用量で便秘の緩和に利用できる。所望の場合はより多用量を用いて強い下剤効果を引き起こすことができるが、本発明の主な目的は、便通を正常な回数(週に3から7回)に回復させることである。
【0011】
本発明の目的は、便秘の治療および腸の洗浄に有用な下剤組成物を、腹痛などの副作用を実質的に起こさずに提供することである。
【0012】
したがって、本発明は、下記式(I)で表される二環式化合物を、便通誘導のために有効な量含む下剤組成物を提供する:
【化4】

[式中VおよびVは炭素または酸素である;
が炭素である場合のWおよびVが炭素である場合のWは以下の、
【化5】

である;
(式中RおよびRは水素であるか、あるいは、これらの1つがOHである;)
およびXは水素、低級アルキルまたはハロゲンであり、これらの少なくとも1つはハロゲンである;
Zは炭素、酸素、硫黄、または窒素である;
は水素またはアルキルである;
Yは非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシル、アリール、または複素環基で置換された、飽和または不飽和C2−10炭化水素鎖である;
Aは−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはその官能性誘導体である;そして、
は非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基、または複素環−オキシ基で置換された直鎖または分枝鎖を形成する飽和または不飽和低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環−オキシ基である;
C−13位とC−14位の間の結合は二重結合または単結合である;そして、
C−15はR、Sまたはその混合物の立体配置を有する]。
【0013】
本発明はまた、下剤組成物の製造のための式(I)の化合物の使用を提供する。
【0014】
本発明はまた、式(I)の化合物を投与することを含む、下剤効果を、それを必要とする患者に提供するための方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
式(I)の二環式ハロゲン化化合物は、非常に良好な下剤効果を提供するにもかかわらず、該化合物は腸管収縮によって引き起こされる腹痛などの副作用を実質的に誘導しないものである。したがって、本発明の組成物は、例えばヘルニアまたは心血管系疾患などを伴う便秘を患う患者において、排便時に力まなくてよいように、あるいは、直腸原性(proctogenic)疾患を患う患者において、慢性または間欠性便秘の治療のためだけでなく、便秘の治療または予防のためにも(そして所望の場合は下痢を誘導するためにも)使用できる。さらに、該組成物は薬物中毒または食中毒において腸管から有害物質を洗い出すために、正常な便通をもたらすためにも使用できる。さらに、本発明の二環式ハロゲン化化合物は、予防、診断、または手術処置の前の腸の調整のために用いられる腸洗浄剤としても使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、式(I)の二環式化合物を、下剤として有効な量含む下剤組成物を提供する。
【0017】
下剤は、以下に示す4つの機構の1つまたは複数の組み合わせによって作用し、それによって便の水分含量が増加し、腸管内容物の移動が促進される。
(i)薬剤の親水性または浸透圧によって腸管内に水と電解質が保持され、それによって腸管内容物の体積が増加し、その結果間接的に内容物がより速く移動する。
(ii)薬剤が腸粘膜に作用して電解質および水の正常な吸収の総量が減少して水分含量が増加し、その結果間接的に腸管内容物がより速く移動する。
(iii)薬剤が腸粘膜に作用して電解質および水の正常な分泌の総量が増加して水分含量が増加し、その結果直接的および/または間接的に腸管内容物がより速く移動する。
(iv)薬剤が第一に腸管運動に作用して移動を速くし、その結果間接的に水および電解質の吸収のための時間が短くなるために水および電解質の正味の吸収が減少する。
【0018】
本発明において行われる腸貯留試験は、主に作用(ii)および/または(iii)を調べる目的で、腸管内容物の体積を測定することによって腸管内水分貯留に対する薬剤の効果を評価するものである。本発明の二環式ハロゲン化化合物は非常に強い腸貯留効果を示し得る。にもかかわらず、作用(iv)の評価の指標の1つである腸管収縮をほとんど引き起こさないか、引き起こすとしてもわずかである。したがって、本発明の式(I)の二環式ハロゲン化化合物は、主に腸粘膜に作用して、直接的または間接的に、腸管壁から血管へ、および/または、血管から腸管への、電解質および水の移動に影響を与え、その結果、腸管を通じての水分吸収の減少および/または水分分泌の増加、腸管内水分貯留の増加、および腸管内容物の移動の促進が起こることによって便秘を緩和すると考えられる。
【0019】
式(I)の定義における「不飽和」の語は、主鎖および/または側鎖の炭素原子間の結合として、少なくとも1つまたはそれ以上の二重結合および/または三重結合を孤立、分離または連続して含むことを意味する。連続する2つの位置間の不飽和結合は若い方の位置番号を表示することにより示し、連続しない2つの位置間の不飽和結合は両方の位置番号を表示して示す。好ましい不飽和結合は、2位における二重結合および5位における二重または三重結合である。
【0020】
「低級」の語は、特にことわりのない限り炭素原子数1〜8を有する基を包含するものである。
【0021】
「ハロゲン」の語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素原子を包含する。特に好ましくはフッ素原子である。
【0022】
「低級アルコキシ」の語は、低級アルキル−O−基(ここで低級アルキルとは、炭素原子数1〜6の直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む)を意味する。
【0023】
「ヒドロキシ(低級)アルキル」の語は、少なくとも1つのヒドロキシ基で置換された上記のような低級アルキルを意味し、例えばヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチルおよび1−メチル−1−ヒドロキシエチルである。
【0024】
「低級アルカノイルオキシ」の語は、式RCO−O−(ここで、RCO−は上記のような低級アルキルが酸化されて生じるアシル基、例えばアセチル)で示される基を意味する。
【0025】
「低級シクロアルキル」の語は、炭素原子3個以上を含む上記のような低級アルキル基が閉環して生ずる環状基であり、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルを含む。
【0026】
「低級シクロアルキルオキシ」の語は、低級シクロアルキルが上述と同意義である低級−シクロアルキル−O−基を意味する。
【0027】
「アリール」の語は、非置換または置換の芳香性炭素環基を包含し、(好ましくは単環式基の)、例えばフェニル、ナフチル、トリル、キシリルが例示される。置換基としては、ハロゲン原子およびハロ(低級)アルキル(ここでハロゲン原子および低級アルキルは前記の意味)が含まれる。
【0028】
「アリールオキシ」の語は、式ArO−(ここで、Arは上記のようなアリール)で示される基を意味する。
【0029】
「複素環基」の語としては、置換されていてもよい炭素原子および、酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選ばれる1種または2種のヘテロ原子を1〜4個、好ましくは1〜3個含む、5〜14員環、好ましくは5〜10員環の、単環式基、および、少なくとも1つの環が上記の単環式基である3環式までからなる縮合複素環基である。複素環基としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、フラザニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、2−ピロリニル基、ピロリジニル基、2−イミダゾリニル基、イミダゾリジニル基、2−ピラゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、インドリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、プリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズイミダゾロニル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基などが例示される。置換基としてはハロゲン、ハロゲン置換低級アルキル基(ここで、ハロゲン原子および低級アルキル基は前記の意味)が例示される。
【0030】
「複素環オキシ基」の語は、式HcO−(ここでHcは上記のような複素環基)で示される基を意味する。
【0031】
本発明において用いられる二環式−16−ハロゲン化合物は塩、または、エステル化したカルボキシル基またはエーテル化した基を有するものを含む。そのような塩は、医薬上許容し得る塩を含み、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、生理的に許容し得るアンモニウム塩(アンモニア塩、メチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロペンチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベンジルアミン塩、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノメチルモノエタノールアミン塩、トロメタミン塩、リジン塩、プロカイン塩、カフェイン塩、アルギニン塩、テトラアルキルアンモニウム塩等)が挙げられる。これらの塩類は、例えば対応する酸および塩基から常套の反応によってまたは塩交換によって製造し得る。
【0032】
エステルおよびエーテルとしては、例えば1または複数の不飽和結合を含んでいてもよい直鎖または分枝鎖アルキルエステルおよびエーテル(メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、2−エチルヘキシル等)、脂環式基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル基等)を含むもの、芳香性基(ベンジル、フェニル基等)を含むもの(ここで芳香性基は1または複数の置換基を含んでいてもよい)、低級アルケニル(エチニル、プロピニル等)、ヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキル(ヒドロキシエチル、ヒドロキシイソプロピル、ポリヒドロキシエチル、ポリヒドロキシイソプロピル、メトキシエチル、エトキシエチル、メトキシイソプロピル等)エステルまたはエーテル、所望により置換されたアリール(フェニル、トシル、t−ブチルフェニル、サリチル、3,4−ジメトキシフェニル、ベンズアミドフェニル等)、アルキルシリル(トリメチルシリル、トリエチルシリル等)、または、テトラヒドロピラニルエステルまたはエーテルが挙げられる。
【0033】
好ましいエステルおよびエーテルは、例えば、直鎖または分枝鎖低級アルキル(メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソプロピル、t−ブチル等)、ベンジル、または、ヒドロキシアルキル(ヒドロキシエチル、ヒドロキシイソプロピル等)が挙げられる。
【0034】
好ましいAは、−COOHまたはその医薬上許容し得る塩またはエステルである。
【0035】
好ましいXおよびXは両方がハロゲン原子、より好ましくはフッ素原子である。
【0036】
好ましいWは=Oである。
好ましいWはRおよびRの両方が水素原子である。
【0037】
好ましいZは酸素原子である。
好ましいYは非置換の6−8の炭素原子を含む飽和または不飽和炭化水素鎖である。
【0038】
好ましいRは非置換の4−8の炭素原子を含む飽和または不飽和炭化水素鎖である。
好ましいRは水素原子である。
【0039】
本発明の組成物は上記の化合物の異性体を含むものであってよい。異性体としては、C−15位にケト基、C−16位にハロゲンを含む単環式互変異性体、光学異性体、幾何異性体などが挙げられる。
【0040】
【化6】

【0041】
上記の、C−11位の酸素原子とC−15位のケト基との間の互変異性は、特に化合物が13,14−単結合とC−16位に2つのフッ素原子を有する場合に重要である。
【0042】
水の不在下では、式(I)によって表される化合物は、二環式化合物の形態で優勢に存在することが見出された。水性媒体中では、例えばC−15位のケトン位との間で水素結合が生じ、それによって二環式環形成が妨げられると考えられている。さらに、C−16位のハロゲン原子は二環式環形成を促進すると考えられている。単環式/二環式構造は、例えば、DO中では1:6、CDOD−DO中では1:10そしてCDCl中では4:96の比で存在している。したがって、本発明の好ましい態様は、二環式/単環式比が少なくとも1:1、好ましくは20:1、あるいはさらに多く実質的にすべてが二環式化合物で、二環式形態が存在する組成物である。二環式化合物が100%である場合も本発明の範囲内である。
【0043】
上記式(I)の二環式−16−ハロゲン化合物は以下に示す一般的方法によって調製できる。
【0044】
イソプロピル−7−[(1S、3S、6S、7R)−3−ヘプチル−3−ヒドロキシ−ビシクロ[4.3.0]ノナン−8−オン−7−イル]へプト−5−エノエートおよび
イソプロピル−7−[(1S、3R、6S、7R)−3−ヘプチル−3−ヒドロキシ−ビシクロ[4.3.0]ノナン−8−オン−7−イル]へプト−5−エノエートの調製
1.イソプロピル(Z)−7−[(1R、2R、3R、5S)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−5−ヒドロキシ−3−(p−トルエンスルホニル)シクロペンチル]へプト−5−エノエート(2)の調製
【化7】

【0045】
ジクロロメタン中のピリジン(0.77g)とイソプロピル(Z)−7−[(1R、2R、3R、5S)−3,5−ジヒドロキシ−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)シクロペンチル]へプト−5−エノエート(1)(4.05g)の混合物に、ジクロロメタン中のトシルクロリド(1.86g)の溶液を0℃で添加し、該温度で2日間攪拌した。反応の間に、トシルクロリド(5.58g)とピリジン(2.31g)のそれぞれを3部に分けて添加した。通常の生成工程後、粗生成物をシリカゲルのクロマトグラフィーにかけ、イソプロピル(Z)−7−[(1R、2R、3R、5S)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−5−ヒドロキシ−3−(p−トルエンスルホキシ)シクロペンチル]へプト−5−エノエート(2)を得た。収量3.45g、64.1%。
【0046】
2.イソプロピル(Z)−7−[(1R,2S)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−5−オキソシクロペント−3−エニル]へプト−5−エノエート(3)の調製
【化8】

イソプロピル(Z)−[(1R、2R、3R、5S)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−5−ヒドロキシ−3−(p−トルエンスルホキシ)シクロペンチル]へプト−5−エノエート(2)(1.72g)をアセトン中、−40℃から−20℃で4時間、Jones試薬で酸化した。通常の生成工程の後、粗生成物をn−ヘキサン/酢酸エチル(3.5/1)を用いたシリカゲルパッドに通した。生成物をさらにシリカゲルのクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=4/1)にかけた。イソプロピル(Z)−7−[(1R,2S)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−5−オキソ−シクロペント−3−エニル]へプト−5−エノエート(3)を得た。収量0.81g。64.6%。
【0047】
3.イソプロピル−7−[(1R,2S,3R)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−3−ヒドロキシメチル−5−オキソシクロペンチル]へプト−5−エノエート(4)の調製
【化9】

イソプロピル(Z)−7−[(1R,2S)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−5−オキソ−シクロペント−3−エニル]へプト−5−エノエート(3)(0.81g)とベンゾフェノンをメタノールに溶解した。アルゴン雰囲気下で、溶液を300−W高圧水銀灯で4時間40分照射した。溶媒の蒸発後、粗生成物をシリカゲルのクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=3/2)にかけ、イソプロピル−7−[(1R,2S,3R)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−3−ヒドロキシメチル−5−オキソシクロペンチル]へプト−5−エノエート(4)を得た。収量0.41g、47%。
【0048】
4.イソプロピル−7−[(1R,2S,3R)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−5−オキソ−3−(p−トルエンスルホキシメチル)シクロペンチル]へプト−5−エノエート(5)の調製
【化10】

イソプロピル−[(1R,2S,3R)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−3−ヒドロキシメチル−5−オキソシクロペンチル]へプト−5−エノエート(4)(0.21g)とピリジン(0.07g)をジクロロメタンに溶解した。この溶液に、トシルクロリド(0.17g)を0℃で添加し、混合物を72時間攪拌した。通常の生成工程の後、粗生成物をシリカゲルのクロマトグラフィーにかけ、イソプロピル−7−[(1R,2S,3R)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−5−オキソ−3−(p−トルエンスルホキシ)メチルシクロペンチル]へプト−5−エノエート(5)を得た。収量0.25g、89%。
【0049】
5.イソプロピル−7−[(1R,2R,3R)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−3−ヨードメチル−5−オキソシクロペンチル]へプト−5−エノエート(6)の調製
【化11】

イソプロピル−7−[(1R,2S,3R)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−5−オキソ−3−(p−トルエンスルホキシ)メチルシクロペンチル]へプト−5−エノエート(5)(0.25g)をアセトンに溶解し、ヨウ化ナトリウム(0.12g)を添加した。混合物を3時間還流した。ヨウ化ナトリウム(0.097g)を混合物に添加し、混合物をさらに80分間還流した。通常の生成工程の後、粗生成物をシリカゲルのクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=5/1)にかけ、イソプロピル−7−[(1R,2R,3R)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−3−ヨードメチル−5−オキソシクロペンチル]へプト−5−エノエート(6)を得た。収量0.16g、68%。
【0050】
6.イソプロピル−7−[(1R,2R,3R)−3−ヨードメチル−5−オキソ−2−(3−オキソデシル)シクロペンチル]へプト−5−エノエート(7)の調製
【化12】

イソプロピル−7−[(1R,2R,3R)−2−(3,3−エチレンジオキシデシル)−3−ヨードメチル−5−オキソシクロペンチル]へプト−5−エノエート(6)(0.16g)を酢酸/水/テトラヒドロフラン(3/1/1)の混合溶媒に溶解した。混合物を室温で20時間、そして50℃で2.5時間攪拌した。溶媒の蒸発後に得た残渣をシリカゲルのクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=1/1)にかけ、イソプロピル−7−[(1R,2R,3R)−3−ヨードメチル−5−オキソ−2−(3−オキソデシル)シクロペンチル]へプト−5−エノエート(7)を得た。収量0.13g、86%。
【0051】
7.イソプロピル−7−[(1S,3S,6S,7R)−3−ヘプチル−3−ヒドロキシ−ビシクロ[4.3.0]ノナン−8−オン−7−イル]へプト−5−エノエート(8a)およびイソプロピル−7−[(1S,3R,6S,7R)−3−ヘプチル−3−ヒドロキシ−ビシクロ[4.3.0]ノナン−8−オン−7−イル]へプト−5−エノエート(8b)の調製
【化13】

イソプロピル−7−[(1R,2R,3R)−3−ヨードメチル−2−(3−オキソデシル)−5−オキソシクロペンチル]へプト−5−エノエート(7)(0.0574g)とジルコノセンジクロリドをテトラヒドロフランに溶解した。混合物をアルゴン流下で超音波処理し、混合物から空気を取り除いた。混合物にテトラヒドロフラン中のヨウ化サマリウム(0.1M、2.1mL)を滴下した。混合物を室温で30分間撹拌し、そして塩酸(0.1M、1mL)を添加した。通常の生成工程後、粗生成物をシリカゲルのクロマトグラフィーにかけた(n−ヘキサン/酢酸エチル=5/1)。2つの二環式生成物として、より極性の大きいもの(8a)と、そのエピマーであってより極性の小さいもの(8b)、そして開始物質(7)が以下のように得られた。
【0052】
イソプロピル−7−[(1S,3S,6S,7R)−3−ヘプチル−3−ヒドロキシ−ビシクロ[4.3.0]ノナン−8−オン−7−イル]へプト−5−エノエート(8a)およびイソプロピル−7−[(1S,3R,6S,7R)−3−ヘプチル−3−ヒドロキシ−ビシクロ[4.3.0]ノナン−8−オン−7−イル]へプト−5−エノエート(8b):収量8(a)5.1mg、収量8(b)7.2mg、開始物質(7)の回収量26.7mg。
【0053】
式(I)で表され、Zが硫黄原子であってWが−OH基である化合物の理論合成を以下に示す。
【化14】

【化15】

n−BuN−F:テトラブチルアンモニウムフルオリド
DBU:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン
DIBAL−H:ジイソブチルアルミニウムヒドリド
DMAP:4−ジメチルアミノピリジン
NaBH:水素化ホウ素ナトリウム
【0054】
式(I)で表され、Zが硫黄原子であってWが−ケト基である化合物の理論合成を以下に示す。
【化16】

【0055】
式(I)で表され、Zが硫黄原子、Wが−ケト基、XおよびXがフッ素原子である化合物の理論合成を以下に示す。
【化17】

【0056】
式(I)で表され、Zが窒素原子である化合物の理論合成を以下に示す。
【化18】

【化19】

【0057】
式(I)で表され、Zが窒素原子である別の化合物の理論合成を以下に示す。
【化20】

【化21】

【0058】
本発明の調製は、それらに限定する意図ではなく、保護、酸化、還元などの好適な手段が使用可能である。
【0059】
本発明において用いられる二環式−16−ハロゲン化合物において、腸貯留活性は、2つのハロゲン原子、特にフッ素原子によってそのC−16位が置換された場合に顕著に増強する。これは五員環の構造および置換基や、二重結合またはその他の置換基の存在とは独立のものである。特に好ましい二環式−16−ハロゲン化合物は、C−9位にケトン基、五員環におけるC−11位にヒドロキシル基を有する単環式化合物から形成される互変異性体である。その他の好ましいグループは、5,6−単結合、5,6−二重結合を含む二環式−16−ハロゲン化合物、または、炭素数が20から22であってRが好ましくは直鎖状の4から6の炭素原子を有するものである。
【0060】
5,6−二重結合を含む単環式/二環式−16−ハロゲン化合物の例を以下に示す。
【化22】

【0061】
本発明の別の態様は、本発明のものと中鎖脂肪酸トリグリセリドとの組成物を包含する。トリグリセリドは、側鎖を有していてもよい、6−14の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪酸である。好ましい脂肪酸は直鎖飽和脂肪酸であって、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、およびミリスチン酸が挙げられる。2またはそれ以上の中鎖脂肪酸トリグリセリドを混合物として使用してもよい。
【0062】
本発明の組成物は、中鎖脂肪酸トリグリセリド中に式(I)の二環式化合物を溶解または混合することによって調製できる。中鎖脂肪酸トリグリセリドの量は制限されない。しかしながら、一般に二環式構造1重量部に対して1−1,000,000重量部の中鎖脂肪酸トリグリセリドを使用するのがよい。好ましくは、5−500,000重量部であって、より好ましくは10−200,000重量部である。
【0063】
本発明において用いられる中鎖脂肪酸トリグリセリドの例には、側鎖を有していてもよい、6−14炭素原子数の飽和または不飽和脂肪酸のトリグリセリドが含まれる。好ましい脂肪酸は、例えば、カプロン酸(C6)、カプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)およびミリスチン酸(C14)などの、直鎖飽和脂肪酸である。2またはそれ以上の中鎖脂肪酸トリグリセリドの混合物を使用してもよい。
【0064】
例えば市販のミグリオール(Miglyol)などのよりいっそう非極性の溶媒を用いて二環式/単環式比を増大させることができる。
【0065】
本発明の態様の調製を例示し、立体障害の潜在効果を説明するために、以下に実施例を示す。
【0066】
実施例
下記の化合物1および2を中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT=カプリル酸トリグリセリドおよびカプリン酸トリグリセリドの85:15の比の混合物)に後記の表に示す量溶解した。
【化23】

【0067】
各溶液を硬化ガラス製の容器中に置き、40℃で保管した。溶液中の化合物1および2の含量の時間経過をHPLC法によって測定した。同時に、上記の容器中に化合物1および2のそれぞれを単独で(溶媒に溶解させないで)置き、40℃で保管し、コントロール研究とした。
【0068】
溶媒の不在下における化合物の含量はHPLC法によって以下のように測定した。
【0069】
保管した化合物1および2、そしてそれぞれ約0.025gの標準化合物1および2を正確に秤量し、内部標準溶液の正確に5mLのアリコットを、それぞれ秤量した化合物に添加した。試験調製物および標準調製物を、アセトニトリル(液体クロマトグラフグレード)をそれぞれ正確に総量10mLとなるように添加して得た。試験調製物と標準調製物のそれぞれ10μLを液体クロマトグラフィーにかけ、一点較正曲線を用いた内部標準法によって化合物の含量を測定した。
【0070】
含量(%)=Q/Q x W x 100/W
:標準調製物中の化合物の量(mg)
:試験調製物中の化合物1および2の量
:内部標準に対する標準調製物中の化合物のピーク面積比
:内部標準に対する試験調製物中の化合物のピーク面積比
測定条件:
検出器:紫外線吸収分光計(波長294nm)
カラム:内径約5mm、長さ約25cmのステンレス管、5μmの液体クロマトグラフ用オクタデシルシリルシリカゲルを充填
カラム温度:35℃付近で安定
移動相:アセトニトリル(液体クロマトグラフグレード)/酢酸ナトリウム水溶液(0.01mol/L)/氷酢酸(800:200:1)の混合溶液
【0071】
(2)溶媒の存在下における化合物の含量はHPLC法によって以下のように測定した。
【0072】
上記の表に表した値に基づいて、36μgの化合物1および2に対応する溶液の量を正確に秤量した。内部標準溶液の正確に1mLを添加し、そして酢酸エチル(液体クロマトグラフグレード)をそれぞれ総量10mLとなるように添加した。溶液のそれぞれ0.1mLを減圧濃縮して乾燥させ、試験調製物を得た。
【0073】
各18mgの標準化合物を正確に秤量し、酢酸エチル(液体クロマトグラフグレード)に混合し、総量を正確にそれぞれ50mLとした。この溶液1.0mLと内部標準溶液10.0mLを正確に測定し、酢酸エチル(液体クロマトグラフグレード)に混合し、総量をそれぞれ100mLとした。溶液のそれぞれ0.1mLを減圧濃縮して乾燥させ、標準調製物を得た。
【0074】
試験調製物と標準調製物に、0.1mLの蛍光標識試薬と0.85mLの蛍光標識触媒とをそれぞれ添加し、混合物を撹拌し、室温で30分以上反応させた。2%酢酸を含有するアセトニトリル(液体クロマトグラフグレード)の0.05mLのアリコットをそれぞれの反応混合物に添加し、撹拌し、30分以上放置して試験溶液と標準溶液を得た。
【0075】
各10μLの試験溶液と標準溶液を液体クロマトグラフィーにかけ、一点較正曲線を用いた内部標準法によってそれぞれの化合物の含量を測定した。
【0076】
含量(%)=Q/Q x W x 100/18
:標準調製物中の化合物の量(mg)
:内部標準に対する標準調製物中の化合物のピーク面積比
:内部標準に対する試験調製物中の化合物のピーク面積比
測定条件:
検出器:蛍光分光計(励起波長259nm;蛍光波長394nm)
カラム:内径約5mm、長さ約25cmのステンレス管、5μmの液体クロマトグラフ用オクタデシルシリルシリカゲルを充填
カラム温度:35℃付近で安定
移動相:アセトニトリル(液体クロマトグラフグレード)/メタノール(液体クロマトグラフグレード)/酢酸アンモニウム水溶液(0.05mol/L)(4:11:5)の混合溶液
【0077】
【表1】

【0078】
本発明の組成物は、非常に強力な腸貯留効果をもたらし、腸における水分の吸収を阻害する。さらに、本化合物は、PGE類やPGF類が有する腸収縮作用を有さないか、有するとしても非常に小さい作用しか有さない。したがって、本組成物は、腹痛などの、腸収縮による腹部の不調をともなわずに便秘を治療する。さらに、本化合物は、便秘を治して正常な腸状態をもたらす。さらに、大きな腸管内輸送促進効果を有する本化合物によって、下痢症状が引き起こされたとしても、すぐに回復する。それゆえ、本化合物は下剤としても非常に有用である。
【0079】
本発明の組成物は、動物およびヒトの便秘の治療薬および予防薬として利用でき、一般的に、経口投与、または坐薬、浣腸剤などによって、全身または局所使用される。静脈内注射または皮下注射として投与してもよい。用量は、動物により、またヒトにより、年齢、体重、病状、治療効果、投与経路、治療時期などによって変動する。好ましくは、0.001−1.000μg/kg、より好ましくは0.01から100μg/kgである。
【0080】
本発明の組成物は、内視鏡検査、結腸内視鏡、二重造影バリウム注腸X−線および静脈内腎盂撮影法などの、予防、診断または手術処置の前の腸の調製のため、そして、薬物中毒や食中毒の除去などの緊急処置のための腸洗浄剤を提供するためにも利用できる。
【0081】
本発明の経口投与用の固形組成物には、錠剤、標品、顆粒などが含まれる。そのような固形組成物中において、1または複数の活性成分を少なくとも1つの不活性の希釈剤と混合してもよい。希釈剤には例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、ヒドロキシプロピルセルロース、微晶質セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、アルミン酸マグネシウムメタシリケートなどが挙げられる。通常の生成工程にしたがって、組成物は、不活性希釈剤以外の添加剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、繊維性グルコン酸カルシウムなどの崩壊剤、シクロデキストリン(例えばα,β−またはγ−シクロデキストリン)、エーテル化シクロデキストリン(例えばジメチル−α−、ジメチル−β−、
トリメチル−β−、またはヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)、分枝シクロデキストリン(例えばグルコシル−、マルトシル−シクロデキストリン)、ホルミル化シクロデキストリン、硫黄含有シクロデキストリン、リン脂質などの安定剤を含んでいてもよい。上記のシクロデキストリンを用いる場合、シクロデキストリンに封入される化合物は安定性が増強した形になることがある。リン脂質は、リポソームを形成するために用いられることがあり、その結果安定性が増強する。
【0082】
錠剤または丸薬は、必要であれば、糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどの、胃または腸において溶解される薄膜で被覆してもよい。さらに、それらはゼラチンなどの吸収可能な物質と共にカプセルとして成型してもよい。
【0083】
経口投与用の液体組成物は、医薬上許容し得る乳濁液、溶液、懸濁液、シロップ、エリキシル剤、および、一般的に用いられる不活性の希釈剤を含むものでよい。そのような組成物は、不活性の希釈剤のほかに、懸濁化剤、甘味料、調味料、保存料、可溶化剤、抗酸化剤などのアジュバントを含んでいてもよい。添加剤の詳細は、医薬分野の一般的なテキストに記載されているものから選択すればよい。そのような液体組成物を、ソフトカプセル中に直接封入してもよい。しかし、二環式/単環式組成物が溶解または混合される、上記のもの以外の希釈剤は、二環式/単環式比に影響を与えないように注意深く選択しなければならない。
【0084】
例えば坐薬、浣腸などの本発明による非経口投与用の溶液は、無菌の、水性または非水性の溶液、懸濁液、乳濁液などを含む。水性の溶液および懸濁液は、例えば、蒸留水、生理的食塩水、リンゲル液などを含む。
【0085】
非水性の溶液および懸濁液は、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、脂肪酸トリグリセリド、オリーブ油などの植物油、エタノールなどのアルコール、ポリソルベートなどを含む。そのような組成物は、保存料、湿潤剤、乳化剤、分散剤、抗酸化剤などのアジュバントを含んでいてもよい。
【0086】
本発明を以下の実施例において説明する。これは単に例示のためのものであって本発明の範囲を制限する意図のものではない。
【0087】
単環式/二環式構造と生物活性の相関
本発明の組成物における、C−16位にハロゲン原子を有するハロゲン化−二環式化合物の効果を例証するために、以下の実施例を用意し、試験した。
【0088】
実施例1
本発明の、一般式(I)のZが酸素原子であって、C−9位にケトンが存在する、単環式/二環式構造の比による、組成物の生物活性が、以下の実施例により理解されるであろう。C−16位のフッ素原子の数と単環式/二環式構造の比を表2に示す。
【0089】
【化24】

【0090】
腸貯留試験と下痢試験を行った。結果を表2に示す。腸管内含量を50%増加させる用量をED50と称した。
【0091】
【表2】

CDCL溶液中でのNMR測定によって測定
POは経口(経口投与)
SCは皮下投与
【0092】
実施例2
式(I)のZが酸素であって、C−9位にケトンが存在し、5,6−炭素間が二重結合である、単環式/二環式構造の比による、組成物の生物活性を、以下に示す。
【0093】
【化25】

【0094】
腸貯留試験と下痢試験を行った。結果を表3に示す。腸管内含量を50%増加させる用量をED50と称した。
【0095】
【表3】

CDCL溶液中でのNMR測定によって測定
POは経口(経口投与)
【0096】
中鎖脂肪酸トリグリセリドに溶解した本発明の、健康な男性ヴォランティアへの単回経口投与後の便通への効果
3から9名の健康な男性ヴォランティアを以下の単環式/二環式構造(CDCl中)を4:96の比で含有する組成物で処置した。
【化26】

【0097】
試験物質(RおよびRがF原子)をパナセット800(Panacet 800)((日本油脂(株)日本国尼崎市)によって製造された中鎖脂肪酸トリグリセリド)に溶解し、カプセルに満たした(各カプセルは混合物200Lを含有)。各被験者に100mLの水とともに1つのカプセルを投与した。
【0098】
表4は、軟便または下痢を経験した被験者数を示す。
【0099】
【表4】

【0100】
本発明を詳細に、特定の実施態様に言及して記載したが、本発明の精神および枠内から逸脱することなく様々な変更および改変を行うことができることが当業者に明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される二環式化合物を、便通誘導のために有効な量含む下剤組成物:
【化1】

[式中VおよびVは炭素または酸素である;
が炭素である場合のWおよびVが炭素である場合のWは以下の、
【化2】

である;
(式中RおよびRは水素であるか、あるいは、これらの1つがOHである;)
およびXは水素、低級アルキルまたはハロゲンであり、これらの少なくとも1つはハロゲンである;
Zは炭素、酸素、硫黄、または窒素である;
は水素またはアルキルである;
Yは非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシル、アリール、または複素環基で置換された、飽和または不飽和C2−10炭化水素鎖である;
Aは−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはその官能性誘導体である;そして、
は非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基、または複素環−オキシ基で置換された直鎖または分枝鎖を形成する飽和または不飽和低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環−オキシ基である;
C−13位とC−14位の間の結合は二重結合または単結合である;そして、
C−15はR、Sまたはその混合物の立体配置を有する]。
【請求項2】
さらに式(I)の単環式互変異性体である化合物を、単環式構造に対する二環式構造の比が少なくとも1:1となる量含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらに式(I)の単環式互変異性体である化合物を、単環式構造に対する二環式構造の比が少なくとも20:1となる量含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
Aが−COOH、Wがケトン、Zが酸素原子、Rが水素原子、そしてXおよびXがフッ素原子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
Zが硫黄原子または窒素原子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
AがCOOH;Yが(CH;Wが=O;RおよびRが水素原子;VおよびVが炭素原子;Zが酸素原子、XおよびXがフッ素原子;そしてRが(CHCHである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
さらに中鎖脂肪酸トリグリセリドを含有する、請求項1−6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
中鎖脂肪酸トリグリセリドが、式(I)の二環式化合物1重量部に対して1−1,000,000重量部存在する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
中鎖脂肪酸トリグリセリドが、式(I)の二環式化合物1重量部に対して5−500,000重量部存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
中鎖脂肪酸トリグリセリドが、式(I)の二環式化合物1重量部に対して10−200,000重量部存在する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
中鎖脂肪酸トリグリセリドが、6−14の炭素原子を有する脂肪酸のトリグリセリドである、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
中鎖脂肪酸トリグリセリドが、カプリル酸トリグリセリドおよび/またはカプリン酸トリグリセリドである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ヒト便秘患者における便秘の軽減または予防のための、請求項1−12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
腸洗浄のための、請求項1−12のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
下記式(I)の二環式化合物を下剤として有効な量含有する組成物を患者に投与する工程を含む、下剤効果をそれを必要とする患者に提供する方法:
【化3】

[式中VおよびVは炭素または酸素である;
が炭素である場合のWおよびVが炭素である場合のWは以下の、
【化4】

である;
(式中RおよびRは水素であるか、あるいは、これらの1つがOHである;)
およびXは水素、低級アルキルまたはハロゲンであり、これらの少なくとも1つはハロゲンである;
Zは炭素、酸素、硫黄、または窒素である;
は水素またはアルキルである;
Yは非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシル、アリール、または複素環基で置換された、飽和または不飽和C2−10炭化水素鎖である;
Aは−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはその官能性誘導体である;そして、
は非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基、または複素環−オキシ基で置換された直鎖または分枝鎖を形成する飽和または不飽和低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環−オキシ基である;
C−13位とC−14位の間の結合は二重結合または単結合である;そして、
C−15はR、Sまたはその混合物の立体配置を有する]。
【請求項16】
組成物がさらに式(I)の二環式化合物の単環式互変異性体である化合物を、単環式構造に対する二環式構造の比が少なくとも1:1となる量含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
単環式構造に対する二環式構造の比が少なくとも20:1である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
Aが−COOH、Wがケトン、Zが酸素原子、Rが水素原子、そしてXおよびXがフッ素原子である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
Zが硫黄原子または窒素原子である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
AがCOOH;Yが(CH;Wが=O;RおよびRが水素原子;VおよびVが炭素原子;Zが酸素原子、XおよびXがフッ素原子;そしてRが(CHCHである、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
組成物がさらに中鎖脂肪酸トリグリセリドを含有する、請求項15−20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
中鎖脂肪酸トリグリセリドが、式(I)の二環式化合物1重量部に対して1−1,000,000重量部存在する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
中鎖脂肪酸トリグリセリドが、式(I)の二環式化合物1重量部に対して5−500,000重量部存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
中鎖脂肪酸トリグリセリドが、式(I)の二環式化合物1重量部に対して10−200,000重量部存在する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
中鎖脂肪酸トリグリセリドが、6−14の炭素原子を有する脂肪酸のトリグリセリドである、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
中鎖脂肪酸トリグリセリドが、カプリル酸トリグリセリドおよび/またはカプリン酸トリグリセリドである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ヒト患者における便秘の軽減または予防のための、請求項15−26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
腸洗浄のための、請求項15−26のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
下記式(I)の二環式化合物の下剤組成物の製造のための使用:
【化5】

[式中VおよびVは炭素または酸素である;
が炭素である場合のWおよびVが炭素である場合のWは以下の、
【化6】

である;
(式中RおよびRは水素であるか、あるいは、これらの1つがOHである;)
およびXは水素、低級アルキルまたはハロゲンであり、これらの少なくとも1つはハロゲンである;
Zは炭素、酸素、硫黄、または窒素である;
は水素またはアルキルである;
Yは非置換またはオキソ、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシル、アリール、または複素環基で置換された、飽和または不飽和C2−10炭化水素鎖である;
Aは−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはその官能性誘導体である;そして、
は非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基、または複素環−オキシ基で置換された直鎖または分枝鎖を形成する飽和または不飽和低級炭化水素;低級シクロアルキル;低級シクロアルキルオキシ;アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環−オキシ基である;
C−13位とC−14位の間の結合は二重結合または単結合である;そして、
C−15はR、Sまたはその混合物の立体配置を有する]。
【請求項30】
組成物がさらに式(I)の二環式化合物の単環式互変異性体である化合物を、単環式構造に対する二環式構造の比が少なくとも1:1となる量含有する、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
単環式構造に対する二環式構造の比が少なくとも20:1である、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
Aが−COOH、Wがケトン、Zが酸素原子、Rが水素原子、そしてXおよびXがフッ素原子である、請求項29に記載の使用。
【請求項33】
Zが硫黄原子または窒素原子である、請求項29に記載の使用。
【請求項34】
AがCOOH;Yが(CH;Wが=O;RおよびRが水素原子;VおよびVが炭素原子;Zが酸素原子、XおよびXがフッ素原子;そしてRが(CHCHである、請求項29に記載の使用。
【請求項35】
組成物がさらに中鎖脂肪酸トリグリセリドを含有する、請求項29−34のいずれかに記載の使用。
【請求項36】
中鎖脂肪酸トリグリセリドが、式(I)の二環式化合物1重量部に対して1−1,000,000重量部存在する、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
中鎖脂肪酸トリグリセリドが、式(I)の二環式化合物1重量部に対して5−500,000重量部存在する、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
中鎖脂肪酸トリグリセリドが、式(I)の二環式化合物1重量部に対して10−200,000重量部存在する、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
中鎖脂肪酸トリグリセリドが、6−14の炭素原子を有する脂肪酸のトリグリセリドである、請求項35に記載の使用。
【請求項40】
中鎖脂肪酸トリグリセリドが、カプリル酸トリグリセリドおよび/またはカプリン酸トリグリセリドである、請求項39に記載の使用。
【請求項41】
ヒト患者における便秘の軽減または予防のための、請求項29−40のいずれかに記載の使用。
【請求項42】
腸洗浄のための、請求項29−40のいずれかに記載の使用。

【公開番号】特開2009−114217(P2009−114217A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50902(P2009−50902)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【分割の表示】特願2002−524492(P2002−524492)の分割
【原出願日】平成13年9月4日(2001.9.4)
【出願人】(501131276)スキャンポ・アーゲー (37)
【氏名又は名称原語表記】Sucampo AG
【Fターム(参考)】