説明

下帯カバー付き車両用シート

【課題】下帯カバー表面に波打ちやワイヤハーネス等の部材の形状が現れず、意匠性の高い下帯カバー付き車両用シートを提供すること。
【解決手段】シートバックとシートクッションの接合部に生じた空隙が、シートバックの後面の下部に上端が止着され、シートクッションの底部に下端が止着された布材よりなる下帯カバーによって覆われ、下帯カバーの内側には、樹脂よりなるプレート材が設けられる。プレート材は、シートバックとシートクッションの接合部の両側面に設けられるインナシールドとアウタシールドに両端を固定されている。プレート材の後側の表面を下帯カバーが張力を及ぼされた状態で被覆するので、プレート材の形状が下帯カバーに反映される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、さらに詳しくは、シートバックとシートクッションの間の空隙を覆う下帯カバーを備えた車両用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来一般の車両用シートにおいて、シートクッションの後端部とシートバックの下端部の間に生じる空隙は下帯カバーによって覆われている。この空隙およびその前方には、エアバッグ用やシートヒータ用のワイヤハーネスが配設されており、これらのワイヤハーネスを隠蔽して後部の乗員の足による引掛けなどから保護すること及び意匠性を高めることを目的として、このような下帯カバーが設けられている。通常、下帯カバーの上端はシートバックの下部に縫いつけられ、下端はゴムバンドなどによりシートクッションの底部に固定されている。
【0003】
特許文献1に開示されるように、布材製の下帯カバー(隠しカバー)は、裏打ちプレートにより補強して形成されており、裏打ちプレートは上辺及び縁周り辺を下帯カバーに縫い付けることで下帯カバーの内側に固定されている。裏打ちプレートは、ポリプロピレン等の樹脂やプレスフェルト等の剛性を有する布材よりなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−22502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような構成では、下帯カバーが裏打ちプレートによって補強されているとはいえ、裏打ちプレートは下帯カバーにしか固定されていないので、下帯カバーの内側に配設されたワイヤハーネスが裏打ちプレートごと下帯カバーを押して下帯カバーの表面の形状に影響を与えることがある。また、シートクッションとシートバックの接合部の車両幅方向内側及び外側の側面には、インナシールド及びアウタシールドが設けられるが、下帯カバーはインナシールド及びアウタシールドの後端面よりも前側を通り、両シールドの後端面と下帯カバーの面の間に段差が生じる。このように、従来一般の車両用シートおいては、下帯カバー部分の意匠性が良くない。さらに、リクライニング装置を使用してシートバックを後方に倒したときには、シートバックが起立している状態に比べてシートバック下端部とシートクッション後端部との間の空隙が狭くなるため、下帯カバーが下方に撓んで波打ってしまい、ますます見栄えが悪くなる。
【0006】
加えて、下帯カバーに裏打ちプレートを縫いつける必要があり、裏打ちプレートが硬いうえ、縫製箇所も多いため、シートの製造工程において縫製作業に労力とコストを要するという問題もある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、シートクッションの後端部とシートバックの下端部との間に生じる空隙を下帯カバーによって覆うに際し、シートバックを起立させた状態でも傾けた状態でもその下帯カバーの見栄えがよく、かつ下帯カバーの製造及び取り付けを容易に行うことができる下帯カバー付き車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる下帯カバー付き車両用シートは、シートクッションの後方にシートバックが連結され、それらの連結部の車幅方向内側の側面はインナシールドで被覆され、車幅方向外側の側面はアウタシールドで被覆された車両用シートにおいて、前記インナシールドの後端面と前記アウタシールドの後端面の間には樹脂製のプレート材が設けられ、該プレート材は一側端を前記インナシールドに固定され、他側端を前記アウタシールドに固定されており、前記プレート材の後側表面は、布材よりなる下帯カバーに被覆され、該下帯カバーは、上端部が前記シートバックの後面の下部に止着され、下端部が前記シートクッションの底部に止着され、前記上端部から下端部に向かって張力が及ぼされていることを要旨とする。
【0009】
ここで、前記プレート材の一側端は前記インナシールドの後端面に設けられた嵌合穴に挿入嵌合され、他側端は前記アウタシールドの後端面に設けられた嵌合穴に挿入嵌合されていることが好ましい。
【0010】
この場合、前記インナシールド及び前記アウタシールドの後端面はシート幅方向に二段よりなる階段形状に形成され、該階段形状のシート幅方向内側の段はシート幅方向外側の段よりもプレート材の厚さだけ低くなっており、前記嵌合穴は前記シート幅方向内側の段に形成され、前記プレート材の後側表面と前記インナシールド及び前記アウタシールドの前記シート幅方向外側の段とが面一に揃っているとよい。
【0011】
あるいは、前記インナシールド及び前記アウタシールドの後端面はシート幅方向に三段よりなる階段形状に形成され、該階段形状の中央の段はシート幅方向外側の段よりも前記下帯カバーの厚さだけ低くなっており、さらにシート幅方向内側の段は前記中央の段よりもプレート材の厚さだけ低くなっており、前記嵌合穴は前記シート幅方向内側の段に形成され、前記下帯カバーは前記中央の段において前記インナシールドおよび前記アウタシールドと接触し、前記下帯カバーの後側表面と前記インナシールド及び前記アウタシールドの前記シート幅方向外側の段とが面一に揃っているとよい。
【発明の効果】
【0012】
上記発明にかかる下帯カバー付き車両用シートによれば、樹脂製のプレート材がインナシールドとアウタシールドに固定されて両者の後端面の間に設けられており、樹脂製プレートの後側表面を被覆して下帯カバーが設けられるので、下帯カバーの表面形状がプレート材の形状によって規定され、ワイヤハーネス等が下帯カバーを押して下帯カバーの表面の形状に影響を与えることが防止される。後部の座席の乗員による足蹴り等があった場合でも、この下帯カバーの形状は安定に保持される。このような形状の安定性は、下帯カバーとして目付の低い布材を使用した場合にも享受される。また、プレート材の存在により、下帯カバーがインナシールドとアウタシールドの後端面よりも前側を通ることはない。さらに、シートバックをリクライニング装置により傾けた時にも、下帯カバーがプレート材の表面に弛みなく張り渡される状態が維持されるため、下帯カバーの波打ちが防止される。このように、上記構成によれば、下帯カバー部分の意匠性が従来の車両用シートに比べて向上する。さらに、プレート材は下帯カバーの裏面に縫いつける必要がなく、従来の裏打ちプレートを使用した車両用シートでは必要であった縫製作業を必要としない。
【0013】
ここで、プレート材がインナシールド及びアウタシールドに設けられた嵌合穴に挿入嵌合されていれば、プレート材がインナシールド及びアウタシールドに確実に固定される。また、嵌合穴に嵌合片を挿入嵌合するだけの容易な作業でプレート材を取り付けることができる。
【0014】
この場合、インナシールド及びアウタシールドの後端面に二段の階段形状が形成され、プレート材の後側表面とインナシールド及びアウタシールドのシート幅方向外側の段が面一に揃っていると、シートを後方から見たときに下帯カバーとインナシールド及びアウタシールドの後端縁が下帯カバーの布材の厚さを除いて揃うので、意匠性がさらに高まる。
【0015】
あるいは、インナシールド及びアウタシールドの後端面に三段の階段形状が形成され、下帯カバーの後側表面とインナシールド及びアウタシールドのシート幅方向外側の段が面一に揃っていると、シートを後方から見たときに下帯カバーとインナシールド及びアウタシールドの後端縁が揃うので、シートの下帯カバー部分の意匠性が一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態にかかる下帯カバー付き車両用シートの斜視図である。
【図2】上記実施形態にかかる下帯カバー付き車両用シートの側面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】上記実施形態にかかる下帯カバー付き車両用シートの一部の分解斜視図である。
【図5】プレート材と下帯カバーを設置した状態における図4のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態にかかる下帯カバー付き車両用シートについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。車両用シート1は乗員が着座するシートクッション2と、シートクッション2の後方に取り付けられ、背もたれとなるシートバック3を有する。シートバック3は、リクライニング装置により、傾動可能となっている。シートクッション2とシートバック3の連結部の後方には空隙Sが生じているが、空隙Sは布材よりなる下帯カバー4により、隠蔽されている。下帯カバー4の内側には、エアバッグやシートヒータなどに接続されるワイヤハーネスが配設されている。また、シートクッション2とシートバック3の連結部の車両幅方向内側の側面にはインナシールド5が、車両幅方向外側の側面にはアウタシールド6が設けられている。インナシールド5及びアウタシールド6は樹脂製であり、シートクッション2とシートバック3の接合箇所及びリクライニング装置等の部品を隠蔽するためのものである。
【0018】
下帯カバー4の内側には、プレート材7が配設されている。プレート材7は樹脂製であり、シート幅方向に長い形状を有している。プレート材7は一側縁をインナシールド5に固定され、他側縁をアウタシールド6に固定されて、アウタシールド6とインナシールド5の後端面の間を連結するように設置される。
【0019】
下帯カバー4は上端部がシートバック3の下方に縫い止められており、プレート材7の後側表面を被覆している。下帯カバー4の下側の端部には輪状にしたゴムバンド4aが取り付けられている。下帯カバー4は、ゴムバンド4aの弾性によって、上端部から下端部に向けて張力を及ぼされた状態でプレート材7の後側の表面に接触している。
【0020】
図4にプレート材7の形状が示される。インナシールド5とアウタシールド6との間の距離と略同一の幅を有する略長方形の板材の両端に、シート前方に折り曲げられた嵌合片7a、7bが形成されている。一方、インナシールド5及びアウタシールド6の後端面には、嵌合片7a、7bを挿入嵌合可能なスリット状の嵌合穴5a、6aがそれぞれ形成されている。嵌合片7aが嵌合穴5aに挿入嵌合され、嵌合片7bが嵌合穴6aに挿入嵌合されることで、プレート材7がインナシールド5とアウタシールド6の間に固定され、プレート材7の略長方形の部分がインナシールド5とアウタシールド6の間に渡された状態となる。
【0021】
プレート材7を構成する樹脂材料は特に限定されないが、インナシールド5とアウタシールド6の間で安定して保持可能であり、後部からの足蹴り等を受けても容易に変形、変位しない程度の剛性を有する材質と厚みを選択する必要がある。材質として、ポリプロピレンが例示できる。
【0022】
図4及び図5に示されるように、インナシールド5及びアウタシールド6の後側側面には、シートの幅方向に三段の階段形状が形成されている。インナシールド5を例にとると、シート幅方向外側(車両幅方向内側)の段5dが最も高くなっている。次に中央の段5cが高くなっている。シート幅方向内側(車両幅方向外側)の段5bが最も低くなっている。シート幅方向外側の段と中央の段との高さの差は下帯カバー4の布材の厚みに等しく、中央の段とシート幅方向内側の段との高さの差は、プレート材7の樹脂材料の厚みに等しい。嵌合穴5aは、シート幅方向内側の段5bに形成されている。アウタシールド6はインナシールド5と鏡面対称な構成を有し、後端面にシート幅方向内側(車両幅方向内側)に向かって低くなる階段形状が形成されている。
【0023】
プレート材7の嵌合片7a、7bが挿入嵌合される嵌合穴がインナシールド5及びアウタシールド6の後端面のシート幅方向内側の段5b、6bにそれぞれ形成されているため、インナシールド5とアウタシールド6の間に取り付けられたプレート材7の後側の表面は、中央の段5c、6cと面一に揃う。
【0024】
さらに、下帯カバー4の幅をインナシールド5の中央の段5cとアウタシールド6の中央の段6cとの間の距離と略同一にしておき、プレート材7の上に下帯カバー4を被せると、下帯カバー4は両シールド5、6の中央の段5c、6cの表面と接触することになる。中央の段5c、6cとシート幅方向外側の段5d、6dの間には下帯カバー4の布材の厚みに等しい段差が存在するので、下帯カバー4の後側の表面はシート幅方向外側の段5d、6dと面一に揃う。つまりシートを後側から見たとき、インナシールド5及びアウタシールド6の後端面と、下帯カバー4の表面が揃っている状態となる。
【0025】
上述のように下帯カバー4は、ゴムバンド4aの弾性によって、上端部から下端部に向けて張力を及ぼされた状態でプレート材7の後側の表面に接触しているので、下帯カバー4はプレート材7の表面に弛みなく張り渡されている。このため、下帯カバー4の表面に波打ちや空隙Sに収納されたワイヤハーネスの形状が現れることはない。リクライニング装置を使用してシートバック3を傾けたときも、プレート材7がインナシールド5とアウタシールド6に固定されているため、その表面に弛みなく沿う下帯カバー4には波打ちが発生しない。
【0026】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0027】
例えば、インナシールド及びアウタシールドの後端面を三段の階段形状に形成するのではなく、二段の階段形状に形成しておくこともできる。この場合は、段差をプレート材の樹脂材料の厚みと等しくしておくと、プレート材を取り付けたとき、インナシールド及びアウタシールドの後端面とプレート材7の後側表面が揃うことになる。この上に下帯カバーを被覆させると、シート後方から見たとき、下帯カバーの厚みを除いて、インナシールド及びアウタシールドの後端面と下帯カバーの表面が面一に揃う。上記実施形態のように階段形状を三段構成にする場合よりも意匠性において劣るが、この構成でもある程度高い意匠性は達成される。
【0028】
また、上記実施形態においては、プレート材のインナシールドとアウタシールドの間の部分が略長方形に形成されていたが、この部分を後方に張り出すように湾曲させ、インナシールド及びアウタシールドの後端面の曲面と同じ湾曲形状を有する曲面として形成してもよい。するとインナシールドとアウタシールドの間が一体的に曲線で連結されているような外観となるうえ、プレート材の後方に張り出して湾曲した形状により、下帯カバーが後方向きの張力を受けるので、確実に弛みがない状態でプレート材を被覆するようになる。これにより、シートの見栄えが一層向上する。
【符号の説明】
【0029】
2 シートクッション
3 シートバック
4 下帯カバー
5 インナシールド
5a 嵌合穴
6 アウタシールド
6a 嵌合穴
7 プレート材
7a、7b 嵌合片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションの後方にシートバックが連結され、それらの連結部の車幅方向内側の側面はインナシールドで被覆され、車幅方向外側の側面はアウタシールドで被覆された車両用シートにおいて、
前記インナシールドの後端面と前記アウタシールドの後端面の間には樹脂製のプレート材が設けられ、該プレート材は一側端を前記インナシールドに固定され、他側端を前記アウタシールドに固定されており、
前記プレート材の後側表面は、布材よりなる下帯カバーに被覆され、該下帯カバーは、上端部が前記シートバックの後面の下部に止着され、下端部が前記シートクッションの底部に止着され、前記上端部から下端部に向かって張力が及ぼされていることを特徴とする下帯カバー付き車両用シート。
【請求項2】
前記プレート材の一側端は前記インナシールドの後端面に設けられた嵌合穴に挿入嵌合され、他側端は前記アウタシールドの後端面に設けられた嵌合穴に挿入嵌合されていることを特徴とする請求項1に記載の下帯カバー付き車両用シート。
【請求項3】
前記インナシールド及び前記アウタシールドの後端面はシート幅方向に二段よりなる階段形状に形成され、該階段形状のシート幅方向内側の段はシート幅方向外側の段よりもプレート材の厚さだけ低くなっており、前記嵌合穴は前記シート幅方向内側の段に形成され、前記プレート材の後側表面と前記インナシールド及び前記アウタシールドの前記シート幅方向外側の段とが面一に揃っていることを特徴とする請求項2に記載の下帯カバー付き車両用シート。
【請求項4】
前記インナシールド及び前記アウタシールドの後端面はシート幅方向に三段よりなる階段形状に形成され、該階段形状の中央の段はシート幅方向外側の段よりも前記下帯カバーの厚さだけ低くなっており、さらにシート幅方向内側の段は前記中央の段よりもプレート材の厚さだけ低くなっており、前記嵌合穴は前記シート幅方向内側の段に形成され、前記下帯カバーは前記中央の段において前記インナシールドおよび前記アウタシールドと接触し、前記下帯カバーの後側表面と前記インナシールド及び前記アウタシールドの前記シート幅方向外側の段とが面一に揃っていることを特徴とする請求項2に記載の下帯カバー付き車両用シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−100001(P2013−100001A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244544(P2011−244544)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】