説明

下着および下着セット

【課題】 日常生活において恒常的に装身して、男性性器を装身したという完全な充足感を得られるようにする。
【解決手段】 前身頃1と脇見頃に連続した後身頃2とが伸縮性を有する布地で形成されている。前身頃1,後身頃2の腹部側の縫合部3が腹部が挿通される開口の縁加工部4から前身頃1,後身頃2の股間側の縫合部6に延びている。前身頃1の内側に前身頃1,後身頃2の腹部側の縫合部3の下半部と前身頃1,後身頃2の股間側の縫合部6とに袋形に縫着された裏布7が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、性同一性障害(Gender Identity Disorder)の女性等が模造された男性性器を装身するための下着に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
最近、性同一性障害の存在が社会的に認知され、この障害をもった人の治療等が研究されるようになってきている。特に、この障害をもった女性の精神的な安定化,充足化を図るためには、異性装(男装)が有効であるということが確認されている。この異性装については、単なる男性用の衣服を装身するだけでなく、模造された男性性器を装身することが有効であるとされている。
【0003】
従来、模造された男性性器を装身する技術としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。
【0004】
特許文献1には、腰に装着されるベルトに模造された男性性器の陰茎部を挿通支持する支持部材が取付けられた装着具が記載されている。
【0005】
特許文献1に係る装着具は、裸の女性の腰にベルトを装着し、模造された男性性器の陰茎部を支持部材で挿通支持することで、下着を穿いた感覚で模造された男性性器を装身することができるようにするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 特表2004−536977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に係る装着具では、陰嚢部がないかまたは陰嚢部が極めて小さく模造された男性性器の陰茎部を支持するもので、リアル感に乏しく、男性性器を装身したという完全な充足感が得られないという問題点がある。また、模造された男性性器の陰茎部を強調して性的行為に供するものであるため、日常生活において恒常的に装身するには不適であるという問題点がある。
【0008】
なお、一般的なブリーフ形の男性用下着は、図7に示すように、前身頃1と脇見頃に連続した後身頃2とからなるもので、前身頃1と後身頃2との腹部側での縫合部3が腹部が挿通される開口の縁加工部4から大腿部が挿通される開口の縁加工部5まで湾曲拡開された格好になっている。縫合部3は、補強的なプリーツの構造を備えて、前身頃1の内側での男性性器のずれを防止しておさまりをよくする機能を奏する。
【0009】
従って、ブリーフ形の男性用下着を使用して模造された男性性器を縫合部3で囲まれた前身頃1の内側に装着すれば、模造された男性性器を装身することが可能になる。然しながら、下腹部に固定されていない模造された男性性器では、縫合部3で囲まれた前身頃1の内側でのずれを完全に防止することができず、日常生活において恒常的に装身するには不適であるという問題点がある。
【0010】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、日常生活において恒常的に装身して、男性性器を装身したという完全な充足感を得ることのできる下着と、この下着に模造された男性性器を組合わせた下着セットとを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の課題を解決するため、本発明に係る下着は、特許請求の範囲の請求項1〜3に記載の手段を採用する。
【0012】
即ち、請求項1では、前身頃と脇見頃に連続した後身頃とが伸縮性を有する布地で形成され、前身頃,後身頃の腹部側の縫合部が腹部が挿通される開口の縁加工部から前身頃,後身頃の股間側の縫合部に延び、前身頃の内側に前身頃,後身頃の腹部側の縫合部の下半部と前身頃,後身頃の股間側の縫合部とに袋形に縫着された裏布が設けられている。
【0013】
この手段では、前身頃と裏布との間に陰茎部,陰嚢部を有して模造された男性性器を収容することができ、収容されている模造された男性性器を前身頃,後身頃の腹部側の縫合部で両側から挟込むように支持することで、収容されている模造された男性性器のずれを防止することができる。
【0014】
また、請求項2では、請求項1の下着において、前身頃,後身頃の腹部側の縫合部は下方に向けて湾曲して後身頃側に拡開されていることを特徴とする。
【0015】
この手段では、前身頃,後身頃の腹部側の縫合部が拡開されることで、模造された男性性器の陰嚢部の膨らみに対応することができる。
【0016】
また、請求項3では、請求項1または2の下着において、前見頃は前方に膨らんだ立体形状に形成されていることを特徴とする。
【0017】
この手段では、前見頃が前方に膨らんだ立体形状に形成されることで、模造された男性性器の陰茎部がどの位置にあっても陰茎部,陰嚢部の膨らみに対応することができる。
【0018】
前述の課題を解決するため、本発明に係る下着セットは、特許請求の範囲の請求項4,5に記載の手段を採用する。
【0019】
即ち、請求項4では、請求項1〜3のいずれかの下着と、下着の前身頃と裏布との間に収容される模造された男性性器とを備え、模造された男性性器は陰茎部が陰嚢部に対する角度に可変性を有する弾性材で形成されていることを特徴とする。
【0020】
この手段では、模造された男性性器の弾性を利用することで、陰茎部を自由な位置に設定して下着の前身頃と裏布との間に模造された男性性器を収容することができる。
【0021】
また、請求項5では、請求項4の下着セットにおいて、模造された男性性器は陰嚢部に恥骨部に対面する平面形の平坦部が設けられていることを特徴とする。
【0022】
この手段では、模造された男性性器に恥骨部に対面する平坦部が設けられることで、下着の前身頃と裏布との間に収容されている模造された男性性器の収容姿勢が安定化される。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る下着は、前身頃と裏布との間に陰茎部,陰嚢部を有して模造された男性性器を収容することができ、収容されている模造された男性性器を前身頃,後身頃の腹部側の縫合部で両側から挟込むように支持することで、収容されている模造された男性性器のずれを防止することができるため、日常生活において恒常的に装身して、男性性器を装身したという完全な充足感を得ることができる効果がある。
【0024】
さらに、請求項2として、前身頃,後身頃の腹部側の縫合部が拡開されることで、模造された男性性器の陰嚢部の膨らみに対応することができるため、収容されている模造された男性性器のずれをより確実に防止することができる効果がある。
【0025】
さらに、請求項3として、前見頃が前方に膨らんだ立体形状に形成されることで、模造された男性性器の陰茎部がどの位置にあっても陰茎部,陰嚢部の膨らみに対応することができるため、陰茎部がどの位置にあっても収容されている模造された男性性器のずれをより確実に防止することができる効果がある。
【0026】
さらに、請求項4として、模造された男性性器の弾性を利用することで、陰茎部を自由な位置に設定して下着の前身頃と裏布との間に模造された男性性器を収容することができるため、使用者の好みに対応して模造された男性性器の収容形態を選択することができ、日常生活において恒常的に装身して、男性性器を装身したというより高く完全な充足感を得ることができる効果がある。
【0027】
さらに、請求項5として、模造された男性性器に恥骨部に対面する平坦部が設けられることで、下着の前身頃と裏布との間に収容されている模造された男性性器の収容姿勢が安定化されるため、収容されている模造された男性性器のずれをより確実に防止することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】 本発明に係る下着を実施するための形態の主要部を透視した正面図である。
【図2】 図1の側面図である(一部拡大断面図を含む)。
【図3】 図1のX−X線拡大断面図である。
【図4】 本発明に係る下着セットを実施するための形態の主要部の断面図である。
【図5】 本発明に係る下着および下着セットを実施するための形態の使用状態図である(要部拡大を含む)。
【図6】 図5とは別の使用状態図である(要部拡大を含む)。
【図7】 一般的な男性用下着の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る下着および下着セットを実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
この形態は、下着Aと模造された男性性器Bとの組合わせで構成されている。
【0031】
下着Aは、図1〜図3に示すように、前身頃1と脇見頃に連続した後身頃2とが伸縮性を有する薄地の布地で形成されている。前身頃1は、中央の下半部を切断して余分代を中央に寄せて縫合1aする等によって、前方に膨らんだ立体形状1bに形成されている。前身頃1,後身頃2は、腹部側で長い2本のラインの縫合部3で縫着され、股間部側で短い1本のラインの縫合部5で縫着されている。腹部側の縫合部3は、腹部が挿通される開口の縁加工部4から、大腿部が挿通される開口の縁加工部5に到達することなく、股間部側の縫合部6にまで延びている。また、腹部側の縫合部3は、下半部に向けて間隔a,bが長くなるように湾曲して後身頃2側に拡開されている。
【0032】
この下着Aには、裏布7が縫着されている。裏布7は、伸縮性を有する薄地の布地でほぼ方形に形成されたもので、前身頃1の内側に前身頃1,後身頃2の腹部側の縫合部3の下半部と前身頃1,後身頃2の股間側の縫合部6とに袋形に縫着されている。裏布7の縫着については、図3に示すように、縫着強度を高めるために、前身頃1,後身頃2の間に差込まれて積層された状態で刺縫される構造となっている。なお、図3では前身頃1,後身頃2が連続されているが、前身頃1,後身頃2が別の布地とされることもある。
【0033】
模造された男性性器Bは、図4に示すように、弾性材であるゴム材,合成樹脂材によって球体形の陰嚢部10と棒体形の陰茎部20とが形成され、実際の男性性器の外形(陰嚢部,陰茎部)と同一の形状(少し勃起した状態)になっている。陰嚢部10には、恥骨部に対面する平面形の平坦部30が設けられている。陰茎部20は、弾性によって陰嚢部10に対する角度に可変性を有している。
【0034】
この形態では、2つの使用例が考えられる。
【0035】
1つの使用例では、図5に示すように、模造された男性性器Bの陰茎部20を陰嚢部10の前に垂れさせた状態で下着Aの前身頃1,裏布7の間の袋形となった部分に収容する。
【0036】
この使用例で収容されている模造された男性性器Bは、陰嚢部10が湾曲して拡開された前身頃1,後身頃2の腹部側の縫合部3で両側から挟込むように無理なく支持されることになる。また、模造された男性性器Bの陰茎部20は、前身頃1の立体形状1bに無理なく収容される。このとき、前身頃1,後身頃2の腹部側の縫合部3が大腿部が挿通される開口の縁加工部5に到達していないため、陰嚢部10を支持する引張力が大腿部が挿通される開口に作用して、大腿部が挿通される開口がずり上がってしまうようなことはない。模造された男性性器Bの陰嚢部10を支持する引張力は、股間部側の縫合部6を介して後身頃2に作用するため、下着Aの全体が体にフィットすることはあっても一部分に変形,ずれを生ずることはない。また、模造された男性性器Bの平坦部30が恥骨部に対面するため、模造された男性性器Bの収容姿勢が安定化される。従って、下着Aに収容されている模造された男性性器Bのずれが確実に防止される。この結果、日常生活において恒常的に装身して、男性性器を装身したという完全な充足感を得ることができる。
【0037】
他の1つの使用例では、図6に示すように、模造された男性性器Bの陰茎部20を陰嚢部10から屹立させた状態で下着Aの前身頃1,裏布7の間の袋形となった部分に収容する。
【0038】
この使用例で収容されている模造された男性性器Bは、陰嚢部10が湾曲して拡開された前身頃1,後身頃2の腹部側の縫合部3で両側から挟込むように無理なく支持されることになる。また、模造された男性性器Bの陰茎部20は、間隔aが狭くなった前身頃1,後身頃2の腹部側の縫合部3の上半部で両側から挟込まれて無理なく支持されることになる。このとき、前身頃1,後身頃2の腹部側の縫合部3が大腿部が挿通される開口の縁加工部5に到達していないため、陰嚢部10を支持する引張力が大腿部が挿通される開口に作用して、大腿部が挿通される開口がずり上がってしまうようなことはない。模造された男性性器Bの陰嚢部10を支持する引張力は、股間部側の縫合部6を介して後身頃2に作用するため、下着Aの全体が体にフィットすることはあっても一部分に変形,ずれを生ずることはない。また、模造された男性性器Bの平坦部30が恥骨部に対面するため、模造された男性性器Bの収容姿勢が安定化される。従って、下着Aに収容されている模造された男性性器Bのずれが確実に防止される。この結果、日常生活において恒常的に装身して、男性性器を装身したという完全な充足感を得ることができる。なお、前身頃1の立体形状1bは、布地の伸縮性によって伸張するため、模造された男性性器Bの陰茎部20がないことによって無用の皺寄せ等が生ずることはない。
【0039】
下着Aと模造された男性性器Bが組合わされてセットされることによって、使用者の好みに対応して模造された男性性器Bの収容形態を選択することができる。この結果、日常生活において恒常的に装身して、男性性器を装身したというより高く完全な充足感を得ることができる。
【0040】
以上、図示した形態の外に、裏布7を網状等とすることも可能である。
【0041】
さらに、下着Aに対して、大きさや弾性の異なる複数の模造された男性性器Bを組合わせセットすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る下着は、性同一性障害をもたない女性,男性が通常の下着として着用することも可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 前身頃
1b 立体形状
2 後身頃
3 縫合部(腹部側の)
4 縁加工部(腹部が挿通される開口の)
5 縁加工部(大腿が挿通される開口の)
6 縫合部(股間側の)
7 裏布
10 陰嚢部
20 陰茎部
30 平坦部
A 下着
B 模造された男性性器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃と脇見頃に連続した後身頃とが伸縮性を有する布地で形成され、前身頃,後身頃の腹部側の縫合部が腹部が挿通される開口の縁加工部から前身頃,後身頃の股間側の縫合部に延び、前身頃の内側に前身頃,後身頃の腹部側の縫合部の下半部と前身頃,後身頃の股間側の縫合部とに袋形に縫着された裏布が設けられている下着。
【請求項2】
請求項1の下着において、前身頃,後身頃の腹部側の縫合部は下方に向けて湾曲して後身頃側に拡開されていることを特徴とする下着。
【請求項3】
請求項1または2の下着において、前見頃は前方に膨らんだ立体形状に形成されていることを特徴とする下着。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの下着と、下着の前身頃と裏布との間に収容される模造された男性性器とを備え、模造された男性性器は陰茎部が陰嚢部に対する角度に可変性を有する弾性材で形成されていることを特徴とする下着セット。
【請求項5】
請求項4の下着セットにおいて、模造された男性性器は陰嚢部に恥骨部に対面する平面形の平坦部が設けられていることを特徴とする下着セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−261141(P2010−261141A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133508(P2009−133508)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(504360532)有限会社シーナイン (2)
【出願人】(500396780)株式会社ターキー (1)
【出願人】(509131188)
【出願人】(509131203)
【Fターム(参考)】