説明

下着及びその製造方法

【課題】吸水性の高い下着を提供する。
【解決手段】 ショーツ1は、縫い糸110により形成された縫い目によって、肌布100の表面を凹凸形状にして、表面張力のバランスを変化させて吸水を早めると共に、縫い糸110によって水分を吸水体102まで誘導する。これにより、ショーツ1は、綿トリコット、フライス、スムースなどの素材を肌布100に用い、かつ、普段使いのショーツの同等の厚さで構成しても、より素早く吸水でき、より狭い吸水面で吸水でき、肌面をより清潔に保つことができる。また、生理用又は失禁用のナプキン等を用いる場合に比べて、装着感が普段使いのショーツに近く、精神的にも経済的にも負担が少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下着に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、不織繊維層が伸縮性繊維を含む編糸によってステッチ縫合されてなる伸縮性不織布41から構成され、前身頃、後身頃及びこれら両者間に位置する股下部4を有するショーツ本体を具備し、前記股下部4の肌対向面側に、親水性繊維を含有するシート71からなる吸収層7が設けられ、該吸収層7の非肌対向面側に液不透過性で且つ透湿性の防漏層8が設けられているサニタリーショーツが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−154922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、吸水性の高い下着を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る下着は、肌に接する肌布と、前記肌布の外側に設けられた吸水体と、前記肌布の表面に縫い目を形成し、少なくとも前記吸水体まで刺し込まれた縫い糸とを有する。
【0006】
好適には、前記縫い糸は、前記吸水体よりも撥水性の高い糸である。
【0007】
また、本発明に係る製造方法は、肌に接する肌布と、この肌布よりも吸水性の高い吸水体とを積層させるステップと、積層させた肌布と吸水体とを、肌布の中央部に縫い目ができるように縫い合わせるステップとを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吸水性の高い下着を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】吸水シート10の表面(肌に接する面)を例示する図である。
【図2】吸水シート10の断面を例示する図である。
【図3】(A)は、吸水体102の裏面に防水層が設けられた形態を例示し、(B)は、吸水体102の裏面側に、防水シート104が設けられた形態を例示する図である。
【図4】縫い糸110により形成される縫い目のバリエーションを例示する図である。
【図5】ショーツ1の作成工程(S10)を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
図1は、吸水シート10の表面(肌に接する面)を例示する図である。
図2は、吸水シート10の断面を例示する図である。
図1に例示するように、吸水シート10は、ショーツ1(不図示)のクロッチであり、ショーツ本体120に縫い合わされる。吸水シート10の本体丈(図中上下方向の長さ)は、40cm以下であり、12cm〜22cmであることが望ましい。また、吸水シート10の本体巾(図中の左右方向の最も狭い部分の巾)は、4cm〜12cmである。最も好ましくは、吸水シート10の本体巾は4cm〜5cmである。
吸水シート10の表面は、肌に接する肌布100が設けられ、肌布100の中央部には、縫い糸110で縫い目が形成される。縫い糸110による縫い目は、例えば、装着時において液体を最初に受け入れる領域を中心に形成される。縫い糸110により形成される縫い目の丈(図中上下方向の長さ)は、7cm〜30cmである。
また、肌布100の周縁部両側には、ショーツ本体120に吸水シート10を縫い合わせるための縫い代が設けられている。縫い代の巾は、0.5cm〜2.0cmである。
なお、肌布100と吸水シート10とが一体的に構成されてもよい。
【0011】
図2に例示するように、肌布100と、吸水体102とが積層されている。吸水体102は、肌布100よりも吸水性、拡散性及び保水性の高い素材によって構成されたシート部材である。縫い糸110は、肌布100の表面(肌に接する面)から、吸水体102まで刺し込まれている。縫い糸110は、例えば、本縫い又は千鳥ミシン目で、肌布100に分割線を形成し、肌布100の表面に凹凸を形成する。形成された凹凸によって、肌布表面における表面張力のバランスが変化し、液体が肌布100の凹部に導かれる。さらに、肌布100表面の縫い糸110が、液体を吸水体102に誘導する。
これにより、受け入れた液体が、他の領域(ショーツ本体など)に拡散する前に素早く吸収体102まで誘導され吸収される。すなわち、肌面の注入口が小さく、漏れも少なく、ドライなショーツ1が実現される。
【0012】
図3(A)は、吸水体102の裏面に防水層が設けられた形態を例示し、図3(B)は、吸水体102の裏面側に、防水シート104が設けられた形態を例示する図である。
図3(A)に例示するように、吸水体102の裏面側(すなわち、肌布100から遠い側の面)に防水層が設けられてもよい。防水層は、ラミネート層として吸収体及び保水体と一体である。
また、図3(B)に例示するように、吸水体102と、防水シート104とが完全に別体となっていてもよい。この場合、縫い糸110は、吸水体102まで刺し込まれているが、防水シート104には達していない。
【0013】
図4は、縫い糸110により形成される縫い目のバリエーションを例示する図である。
図4に例示するように、肌布100の中央部(すなわち、周縁部より内側の領域)に形成される縫い目(縫い糸110の一部)は、1つの直線、複数の直線、渦巻状、1つの波線、複数の波線、又は、デザイン化された模様であってもよい。
また、縫い糸110は、肌布100よりも撥水性の高い素材にしてもよい。この場合、吸水体102が十分に液体を吸収すると、撥水性の高い縫い糸110の縫い目が、肌布100で浮き上がって見えるようになる。これにより、ショーツ1の交換時期を知ることができる。
【0014】
図5は、ショーツ1の作成工程(S10)を例示するフローチャートである。
図5に例示するように、ステップ100(S100)において、肌布100と吸水体102とを積層させる。
【0015】
ステップ110(S110)において、縫い糸110を用いて、肌布100の中央部に縫い目ができるように、肌布100と吸水体102とを縫い合わせる。
【0016】
ステップ120(S120)において、縫い合わせた肌布100及び吸水体102(すなわち、吸水シート10)と、防水シート104と、ショーツ本体120とを積層させる。
【0017】
ステップ130(S130)において、積層された吸水シート10と、防水シート104と、ショーツ本体120とを周縁部で縫い合わせる。これにより、ショーツ1が出来上がる。
【0018】
以上説明したように、本実施形態のショーツ1(下着の一例)は、縫い糸110により形成された縫い目によって、肌布100の表面を凹凸形状にして、表面張力のバランスを変化させて吸水を早めると共に、縫い糸110によって水分を吸水体102まで誘導する。
従来のショーツの股布部は、身体の保護に加えて清潔が求められているにも関わらず、わずか1cc未満の体液をも瞬時に吸収することができず、肌面を清潔に保つことが困難となっている。これは、肌布の素材として、普段使いのショーツには、薄さ、柔らかさ、肌触りなどが優先され、綿トリコット、フライス、スムースが採用されているからである。すなわち、これらの素材による肌布は、水分を瞬時に吸収しにくく、吸収できた頃には水分が肌布表面に大きく広がったり、ショーツ本体へ浸み出したり、伝え漏れを起こし、外衣にも汚れが伝わる可能性があった。
そこで、本実施形態のショーツ1は、上記の構成とすることにより、綿トリコット、フライス、スムースなどの素材を肌布100に用い、かつ、普段使いのショーツの同等の厚さで構成しても、より素早く吸水でき、より狭い吸水面で吸水できるため、肌面をより清潔に保つことができる。また、生理用又は失禁用のナプキン等を用いる場合に比べて、装着感が普段使いのショーツに近く、精神的にも経済的にも負担が少ない。
【符号の説明】
【0019】
10 吸水シート
100 肌布
102 吸水体
104 防水シート
110 縫い糸
120 ショーツ本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌に接する肌布と、
前記肌布の外側に設けられた吸水体と、
前記肌布の表面に縫い目を形成し、少なくとも前記吸水体まで刺し込まれた縫い糸と
を有する下着。
【請求項2】
前記縫い糸は、前記吸水体よりも撥水性の高い糸である
請求項1に記載の下着。
【請求項3】
肌に接する肌布と、この肌布よりも吸水性の高い吸水体とを積層させるステップと、
積層させた肌布と吸水体とを、肌布の中央部に縫い目ができるように縫い合わせるステップと
を有する下着の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−23792(P2013−23792A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161884(P2011−161884)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(593046212)北陸エステアール協同組合 (13)
【Fターム(参考)】