説明

下着

【課題】ユーザーの個人個人の要望に応じてきめ細かくかつより忠実に対応することができる下着を提供する。
【解決手段】下着1は、下着本体2と、液吸収体3からなる。下着本体2は、起毛5aを有するシート状の接合用布5を一体的に有しており、この接合用布5は下着本体2の上縁2d,2eから脚貫通用孔2a,2bの周線2a1,2b1まで延設されている。接合用布5の起毛5aは面ファスナーの一側接合部を構成しており、接合用布5がシート状に広く形成されているので、この一側接合部も広く構成される。また、液吸収体3には面ファスナーの他側接合部が設けられており、この他側接合部が一側接合部に接合することで、液吸収体3が下着本体2に着脱自在に取り付けられる。このとき、一側接合部が広く構成されることで、液吸収体3の下着本体2への取付位置が広範囲に設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性を有しかつ尿等の液を吸収可能に形成されるとともに所定の位置に着脱自在に取り付けられたシート状の液吸収体を備える下着の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生理用や失禁用の下着においては、柔軟性を有しかつ失禁尿等の液を吸収可能に形成されたシート状の液吸収体を交換可能に備える下着が広く知られている。このような下着として、使い捨てのシート状の液吸収体を機械的接合手段により下着本体に着脱自在に取り付けて形成された下着が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、同じく特許文献1には、液を吸収して溜めた液吸収体を下着本体から取り外して洗濯することにより液を液吸収体から除去しかつ乾燥した後、再び下着本体に取り付けて再び利用することも開示されている。
【0003】
このように、液吸収体を下着本体に対して簡単に交換可能にすることで、所定量以上の液を吸収して溜めた液吸収体に代えて、新しい液吸収体や洗濯して液が除去されてきれいになった液吸収体を下着本体に取り付けることで、装着者(ユーザー)の下着の履き心地が長期にわたって快適にすることができる。
【特許文献1】特開2001−329401号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この特許文献1には、液吸収体を機械的接合手段により下着本体に着脱自在に単に取り付けることは開示されているだけである。しかしながら、下着のユーザーの要望は個人個人種々異なる場合多い。例えば、液吸収体を下着本体に取り付ける所望の位置がユーザーによって異なったり、液吸収体のサイズや形状あるいは下着本体のサイズや形状がユーザーによって異なったりすることが多い。そこで、このようなユーザーの多種多様の異なる要望毎に、下着本体および液吸収体をそれぞれ作製しかつ互いに組み合わせることで下着を構成することが考えられる。しかし、このように下着本体および液吸収体をそれぞれ異なる要望毎に作製したのでは、効率的でないばかりでなく、コストが高くなるという問題がある。
【0005】
また、一般に液吸収体は、液を吸収拡散する吸水層、吸水層からの液を溜める保水層、および保水層に溜まった液が下着本体の方へ漏出するのを防止する防水層が積層された多層構造に形成されている。このような多層構造の液吸収体を機械的接合手段で下着本体に取り付けるためには、液吸収体に機械的接合手段の一側接合部材を設ける必要がある。その場合、液吸収体の一側接合部材は、下着本体に設けた機械的接合手段の他側接合部材に接合するために液吸収体の防水層に設ける必要がある。しかし、機械的接合手段の一側接合部材を防水層に設けたのでは、柔軟性を有する液吸収体を洗濯した際に液吸収体が撓むことで一側接合部材が防水層に繰り返し当接するので、一側接合部材により防水層が傷付けられるおそれがある。このように防水層が傷付けられると、防水層の防水機能が損なわれてしまう場合が考えられる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ユーザーの個人個人の要望に応じてきめ細かくかつより忠実に対応することができる下着を提供することである。
また、本発明の他の目的は、接合部材が設けられた液吸収体を洗濯しても、接合部材による液吸収体の損傷を防止することのできる下着を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するために、請求項1の発明は、左右二股に分岐する分岐部に形成された左右一対の脚貫通用孔を有しかつ柔軟性を有する下着本体と、柔軟性を有しかつ液を吸収するシート状の液吸収体と、シート状の液吸収体を前記下着本体に着脱自在に取り付ける面ファスナーとを少なくとも備え、前記面ファスナーが前記下着本体に設けられた一側接合部と前記液吸収体に設けられて一側接合部に接離自在に接合可能な他側接合部とからなる下着において、前記一側接合部が前記下着本体の上縁または上縁近傍位置から、前記分岐部における前記左右一対の脚貫通用孔の周縁または周縁近傍位置までシート状に延設されていることを特徴としている。
【0008】
また、請求項2の発明は、前記一側接合部が柔軟性を有するシート状の接合用布からなり、この接合用布が前記下着本体に一体に縫着されていることを特徴としている。
更に、請求項3の発明は、前記一側接合部および前記他側接合部はそれぞれ多数の起毛を有する起毛状素材から形成されており、前記他側接合部の起毛が前記一側接合部の起毛に接触することで前記他側接合部が前記一側接合部に接離自在に接合することを特徴としている。
【0009】
更に、請求項4の発明は、前記液吸収体は前記下着本体に、前記下着本体に対向する面の全面が前記下着本体に接触するようにして取り付けられることを特徴としている。
更に、請求項5の発明は、前記液吸収体は前記下着本体に、前記下着本体に対向する面の一部が前記下着本体から離間して吊り下げ状に取り付けられていることを特徴としている。
【0010】
更に、請求項6の発明は、前記液吸収体に設けられる前記他側接合部は細長いテープ状に形成されていることを特徴としている。
更に、請求項7の発明は、前記液吸収体に、前記他側接合部と接離自在に接合可能な更にもう1つの一側接合部が前記他側接合部に対して所定間隔を置き隣接して設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
このように構成された本発明の下着によれば、下着本体に設けられた一側接合部がシート状に延設されているので、一側接合部を広範囲に設定することができる。したがって、液吸収体を所望の位置に取り付けることができ、液吸収体の取付位置の自由度が高くなる。これにより、液吸収体を下着のユーザーが要望する取付位置に簡単に取り付けあるいは交換することができる。また、液吸収体の取付位置の自由度が高くなることから、液吸収体のサイズおよび形状を自由に設定することができる。これにより、ユーザーは要望するサイズおよび形状の液吸収体を用いることができる。
【0012】
このようにユーザーの個人個人の要望に応じてきめ細かくかつより忠実に対応することができるので、下着の履き心地が良好になり、ユーザーは長期的に快適な下着の装着感を得ることができる。
【0013】
特に、請求項7の発明によれば、液吸収体に、更にもう1つの一側接合部が他側接合部に隣接して設けられているので、一側接合部と他側接合部との間の液吸収体の部分を折り曲げて、これらの一側接合部と他側接合部とを互いに接合することで、一側接合部と他側接合部とを露出することが防止できる。したがって、液吸収体の洗濯時に、一側接合部と他側接合部とを互いに接合した状態で洗濯することにより、一側接合部および他側接合部が液吸収体に直接接触することはなく、これらの一側接合部および他側接合部による液吸収体の損傷を防止することができる。これにより、液吸収体の機能が損なわれるのを防止でき、液吸収体の耐久性が向上する。
【0014】
しかも、液吸収体の洗濯時に、装着者から排出される液のほとんどが溜まる液吸収体の部分が曲げて重ねられないので、この部分に溜まっている液を効果的に除去することができ、液吸収体の洗濯効率を向上することができる。
このように、液吸収体の耐久性が向上することで液吸収体を洗濯しても液吸収体の機能を十分に確保することができるとともに液を効果的に除去できるので、液吸収体を比較的長期間にわたって再利用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は本発明に係る下着の実施の形態の一例を模式的にかつ部分的に示し、(a)は全体斜視図、(b)は(a)におけるIB−IB線に沿う断面図、図2は図1に示す下着本体の展開図、図3は図1に示す下着に用いられる液吸収体を示し、(a)は平面図、(b)は(a)におけるIIIB−IIIB線に沿う断面図、(c)は(b)におけるIIIC部の拡大図、(d)は液吸収体の変形例を示す、(b)と同様の断面図である。
【0016】
図1(a)および(b)に示すように、この例の下着1はブリーフ形のパンツであり、左右の脚がそれぞれ貫通可能な左右一対の脚貫通用孔2a,2bを有する下着本体2と、この下着本体2に着脱可能に取り付けられる液吸収体3とからなっている。その場合、左右一対の脚貫通用孔2a,2bは左右二股に分岐する分岐部2c(下着1の装着者の股間部に対応する部位)に形成されている。図1(a)、(b)および図2に示すように、下着本体2は、本体布4に、同じく柔軟性を有するシート状の接合用布5が一体に縫着されて構成されている。
【0017】
本体布4は、従来から下着に使用されている柔軟性を有する公知の布を使用することができる。そして、図2に示すように本体布4は、その左右両側縁に左右一対の脚貫通用孔2a,2bを形成するための左右の凹部4a,4bを有し、全体として図2に示す展開図において上下方向中心線αに関して線対称に形成されている。
【0018】
また図1(b)に示すように、接合用布5は一側の全面に起毛5aを有する幅広いシート状の起毛状素材から形成されており、この起毛状素材としては、従来から起毛状素材に使用されている柔らかい布を使用することができる。その場合、起毛5aは下着1の装着者の肌が直接接触しても、肌触りが良好なように柔らかく形成されている。また、起毛5aを有する接合用布5は、後述するように接離自在に接合する接合部材である面ファスナーの一側接合部を構成している。
【0019】
そして、接合用布5は起毛5a側の面が表面となるようにして本体布4の所定位置に逢着されている。その場合、図2に示すように接合用布5は、本体布4の上縁4c,4d(つまり、下着本体2の上縁2d,2e)から左右の凹部4a,4bの縁4a1,4b1(つまり、下着本体2の脚貫通用孔2a,2bの周線2a1,2b1の一部までシート状に延設されているとともに、下着本体2の前側から後側にかけて連続するようにして本体布4に一体に設けられている。しかも、接合用布5は本体布4に、図2に示す展開図において上下方向中心線αに関して線対称に配設されているとともに、下着本体2の上縁2d,2eにおける接合用布5の幅が下着本体2の凹部4a,4bの縁4a1,4b1における接合用布5の幅より小さく設定されている。このようにして、接合用布5は、下着1を装着した装着者の前部、股間部、および後部に対して、いわゆる褌のようにかつ左右対称に対向するようになる。
【0020】
図3(a)および(b)に示すように、液吸収体3は、いずれも柔軟性を有する第1ないし第4シート状体6,7,8,9がこれらの順に積層された4層の多層構造に構成されている。その場合、各第1ないし第4シート状体6,7,8,9は、いずれも、図3(a)においてほぼ中央位置に、装着者の股間部に対応する湾曲形状部10が形成された同じ形状にかつ同サイズに形成されている。
【0021】
そして、図3(a)において、各第1ないし第4シート状体6,7,8,9は、それらの湾曲形状部10より右側部分が装着者の前部に対応するとともに、それらの湾曲形状部10より左側部分が装着者の後部に対応する。その場合、湾曲形状部10の幅(図3(a)において上下方向の長さ)が最も小さく、次いで右側部分の幅(同)が大きく、次いでに左側部分の幅(同)が最も大きく設定されている。
【0022】
第1シート状体6は吸水拡散層であり、装着者から出た失禁尿や汗等の液を吸収拡散する機能を有している。この第1シート状体6は失禁尿や汗等の液を吸収拡散可能な従来公知の柔らかい布から形成することができる。
【0023】
また、第2シート状体7は保水層であり、第1シート状体6によって吸水拡散された液をしみ込ませた状態で溜める機能を有している。この第2シート状体7は、蓄水機能を有する従来公知の柔らかい布から形成することができる。
【0024】
更に、第3シート状体8は防水層であり、第1シート状体6で吸水拡散されかつ第2シート状体7に溜められた液が、防水層の第2シート状体7と反対側に漏出するのを防止する機能を有している。この第3シート状体8は、防水機能を有する従来公知の柔らかい布から形成することができる。
【0025】
更に、第4シート状体9は、図3(a)において左右両端部にそれぞれ面ファスナーの他側接合部11,12がこれらの左右両端部に沿って縫着β(図3(c)の図示)により取り付けられた当て布であり、これらの面ファスナーの他側接合部11,12を支持するための機能を有している。その場合、他側接合部11,12は、それぞれ起毛11a,12aを有する細長いテープ状でかつまったく同じサイズの起毛状素材からなり、それらの起毛11a,12a側が表面に露出するようにして当て布に縫着される。このように当て布を用いる理由は、他側接合部11,12を第3シート状体8の直接防水層に直接縫着させると、その縫い目から液が漏出するおそれが考えられるので、この縫い目からの液の漏出を防止するためである。この第4シート状体9は、防水機能を有する従来公知の柔らかい布から形成することができる。また、両他側接合部11,12は部品共通化されて、コスト低減が図られている。もちろん、両他側接合部11,12は互いに異なるように形成することもできる。
【0026】
図3(b)に示すように、各第1ないし第4シート状体6,7,8,9は、それらの全周縁が一致するようにして積層された状態で、撥水性テープ13が第1ないし第4シート状体6,7,8,9の全周にわたって当てがわれる。そして、図3(c)に示すようにその撥水性テープ13の長手方向に沿う側縁部13a,13bがコ字状に折り曲げられて第1シート状体6の表面および第4シート状体9の表面に接触させられる。この状態で、両側縁部13a,13b、および各第1ないし第4シート状体6,7,8,9の周縁部が縫着γにより一体的に接合される。撥水性テープ13は、従来公知の柔らかい防水性を有し肌触りの良好な材料から形成することができる。この撥水性テープ13により、第1および第2シート状体6,7に吸水拡散されかつ溜められた液が各第1ないし第4シート状体6,7,8,9の周縁部から漏出するのが防止される。こうして、失禁尿や汗等の所定量の液が吸収されかつ溜められる液吸収体3が形成される。このように、液吸収体3は、装着者から排出される失禁尿や汗等の液を吸収拡散しかつ溜めるとともに、溜まった液を下着本体2に漏出させない機能を有している。
【0027】
このように構成されたこの例の下着1においては、図1(a)および(b)に示すように液吸収体3が下着本体2の接合用布5における装着者の所望の位置(例えば、図4に実線で示す液吸収体3の位置δ)に取り付けられる。その場合、液吸収体3は、その第4シート状体9が本体布4に直接対向しかつ接触するようにして他側接合部11,12がそれぞれ接合用布5に接合される。このとき、接合用布5の起毛5aと他側接合部11,12の起毛11a,12aとによる、例えばマジックテープ(登録商標)と同様の相互作用で、他側接合部11,12が接合用布5に接離自在に接合される。こうして、液吸収体3が下着本体2に着脱自在に取り付けられて、この例の下着1が完成される。このように液吸収体3が下着本体2に取り付けられた状態では、図1(b)に示すように下着本体2に対向する液吸収体3の面(つまり、第4シート状体9の下着本体2への対向面)の全面が下着本体2に接触するようにして支持される。そして、接合用布5の起毛5aからなる一側接合部と他側接合部11,12とにより、本発明の接離自在な面ファスナーが構成されている。
【0028】
このような面ファスナーとしては、マジックテープ(登録商標)等の機械的な面ファスナー、あるいは接着ファスナー等の化学的な面ファスナーを用いることができる。
【0029】
そして、この例の下着1が装着者に装着される。このとき、液吸収体3の湾曲形状部10が装着者の股間部に位置されかつ湾曲形状部10の側縁が装着者のそけい部あるいはその近傍にフィットされる。液吸収体3により、装着者の失禁尿や汗等の液が液吸収体3に吸収されかつ溜められる。このとき、第3シート状体8の防水層により第2シート状体7に溜められた液が第4シート状体9の当て布側に漏出しないとともに、撥水性テープ13により第1および第2シート状体6,7に吸水拡散されかつ溜められた液が各第1ないし第4シート状体6,7,8,9の周縁部から漏出しないので、下着1の装着者は不快感を抱くことはない。また、液吸収体3に覆われずに露出した接合用布5の露出部5bに装着者の肌が直接触れるようになるが、接合用布5が肌触りの良好な布によって形成されているので、下着1の装着者は、肌が接合用布5の露出部5bに直接触れることによる不快感も抱くことはない。
【0030】
装着者の失禁尿や汗等の所定量の液が液吸収体3に吸収されかつ溜められると、下着1が装着者から脱がされる。更に、他側接合部11,12が手によって剥がされることで液吸収体3が下着本体2の接合用布5から取り外される。そして、前述と同様に新しい液吸収体3が下着本体2の接合用布5の所定位置δに取り付けられ、その後、下着1が再び装着者に装着され、装着者の履き心地が快適になる。
また、所定量の液が吸収されかつ溜められた液吸収体3は洗濯されて、吸収された液が除去された後乾燥されて、再び使用可能にされる。
【0031】
ところで、下着1の装着者には、失禁量の多いや少ない人、下着1を装着したときに液吸収体3の位置が所望の位置となるように強く希望する人など、種々の装着者がいる。このため、1種類の液吸収体3のみでしかも下着本体2への取付個所が1個所のみでは、これらの種々の装着者に対応することができない。その場合、種々の装着者に対応して液吸収体3を作製したり、種々の装着者に対応して取付位置の異なる下着本体2を作製したりしたのでは効率が悪く、コスト高になってしまう。
【0032】
そこで、この例の下着1では、種々の装着者のうちできるだけ多くの装着者に対して下着本体2が共通化され、液吸収体3のみが種々の装着者に対応して作製される。すなわち、図2および図4に示すようにこの例の下着1の接合用布5が、本体布4の上縁4c,4d(つまり、下着本体2の上縁2d,2e)から左右の凹部4a,4bの縁4a1,4b1の一部まで延設され、かつ下着本体2の前側から後側にかけて連続するようにして本体布4に一体に設けられ、しかも、前述のように左右線対称に配設されているので、接合用布5は比較的広い面積のシート状となる。これにより、接合用布5における液吸収体3の取付個所が広範囲に設定されて、接合用布5における液吸収体3の取付自由度が高くなる。こうして、多くの装着者に対して共通化される下着本体2が構成される。そして、液吸収体3の取付自由度が高くなることから、図3に示す液吸収体3の前述の実線位置δとは異なる細い二点鎖線で示す位置ε等に液吸収体3が取付可能である。
【0033】
一方、この例の下着1の液吸収体3は、前述の図3に示す液吸収体3に加えて、例えば図4に細い点線で示すような図3に示す液吸収体3より長さ(図4で上下方向の長さ)が短くかつ幅(図4で左右方向の長さ)が大きい液吸収体3′が作製される。もちろん、液吸収体3は図4に細い点線で示す液吸収体3′に限定されることはなく、種々のサイズおよび種々の外周形状の液吸収体が作製され、共通の下着本体2の接合用布5に取付可能である。
このように、この例の下着1では、共通の下着本体2に対して、液吸収体3がその取付位置がかなり自由に設定できるとともに、種々のサイズおよび種々の外周形状の液吸収体3′が取り付けできる。
【0034】
なお、本発明では、当て布である第4シート状体9は必ずしも必要ではなく、例えば図3(d)に示すように第4シート状体9を省略して液吸収体3を前述の例と同じ第1ないし第3シート状体6,7,8からなる3層構造に形成することもできる。その場合には、第3シート状体8が防水層であることから、他側接合部11,12は第3シート状体8の縫着することができないので、第3シート状体8の表面の対応位置に、例えばのり等の接着剤により接着される。この3層構造の液吸収体3の他の構成は前述の図3(a)ないし(c)に示す例と同じである。
【0035】
更に、前述の例では共通の下着本体2の接合用布5に、種々のサイズおよび種々の外周形状の液吸収体が取付可能であるとしているが、逆に、共通化された液吸収体3が種々のサイズおよび種々の外周形状の接合用布5に、あるいは種々のサイズおよび種々の外周形状の下着本体2に取付可能にすることもできる。
【0036】
更に、前述の例のように下着本体2および液吸収体3のいずれか1一方を共通化することに限らず、種々のサイズおよび種々の外周形状の液吸収体3と、種々のサイズおよび種々の外周形状の接合用布5あるいは種々のサイズおよび種々の外周形状の下着本体2とを組み合わせて本発明の下着1を構成することもできる。このようにすれば、下着1をユーザーの個人個人の要望に応じてきめ細かくかつより忠実に対応することができる。
【0037】
種々のサイズおよび種々の外周形状の接合用布5としては、例えば、図5(a)に示すように本体布4の上縁4c,4dから凹部4a,4bの縁4a1,4b1の近傍位置4a2,4b2(つまり、下着本体2の脚貫通用孔2a,2bの周線2a1,2b1の近傍位置)まで延設させることもできる。また接合用布5は、図5(b)に示すように本体布4の上縁4c,4dの近傍位置4c1,4d1(つまり、下着本体2の上縁2d,2eの近傍位置)まで延設させることもできるし、更に、同図に示すように接合用布5を前部用別体布5cと後部用別体布5dとの2つの別体布に形成することもできる。その場合、前部用別体布5cは下着本体2の前側部に対応する本体布4の部位のに取り付けられるとともに、後部用別体布5dは下着本体2の後側部に対応する本体布4の部位に取り付けられる。そして、2つの別体布5c,5dとも、下着本体2の上縁2d,2e近傍における接合用布5の幅(図5(a)において左右方向の長さ)が下着本体2の凹部4a,4bの縁4a1,4b1近傍における接合用布5の幅より小さく設定されている。もちろん、接合用布5はこれらの図5(a)およ(b)に示すものに限定されなく、種々の変形例が可能である。
【0038】
更に前述の各例では、いずれも、下着本体2の上縁2d,2eあるいはその近傍における接合用布5の幅が下着本体2の凹部4a,4bあるいはそれらの縁4a1,4b1近傍における接合用布5の幅より小さく設定されているが、図6(a)に示すように、接合用布5が下着本体2の凹部4a,4bの縁4a1,4b1に当接する位置間の接合用布5の幅のみを凹部4a,4bの形状に倣って小さく設定し、接合用布5の他の部分の幅を一定に設定することもできる。更に、図6(b)に示すように、接合用布5が下着本体2の凹部4a,4bの縁4a1,4b1近傍に位置させることで、接合用布5のの幅を全体にわたって一定に設定することもできる。
【0039】
また、種々のサイズおよび種々の外周形状の下着本体2としては、例えば、図7に示すようにトランクス形のパンツの下着本体2がある。この下着本体2では、前述の図5(b)に示す例と同様に接合用布5が前部用別体布5cと後部用別体布5dとの2つの別体布に形成されており、これらの前部用別体布5cおよび後部用別体布5dは、それぞれ本体布4の所定位置(つまり、下着本体2の前側部および後側部)に取り付けられている。その場合、前部用別体布5cおよび後部用別体布5dは、いずれも下着本体2の上縁2fの近傍位置から左右二股に分岐する分岐部2c(下着1の装着者の股間部に対応する部位)における脚貫通用孔2a,2bの周線2a1,2b1の近傍位置まで延設されている。なお、このトランクス形のパンツの場合でも、接合用布5は下着本体2の前側部から後側部にかけて1枚の接合用布で構成することもできるし、また、接合用布5および液吸収体3は種々のサイズおよび種々の外周形状に形成することができる。
【0040】
更に、本発明の下着1は、図1に示すブリーフ形のパンツおよび図7に示すトランクス形のパンツに限らず、少なくとも装着者の股間にあてがわれ、装着者から排出される失禁尿や汗等の液を吸収するために用いられるものであれば、どのようなものにも適用することができる。
【0041】
このように前述の各例の下着1によれば、下着本体2に設けられた、起毛5aを有する接合用布5がシート状に延設されているので、接合用布5の起毛面5aを広くすることができ、面ファスナーの一側接合部を広範囲に設定することができる。したがって、液吸収体3を所望の位置に取り付けることができ、液吸収体3の取付位置の自由度が高くなる。これにより、液吸収体3を下着1のユーザーが要望する取付位置に簡単に取り付けあるいは交換することができる。また、液吸収体3の取付位置の自由度が高くなることから、液吸収体3のサイズおよび形状を自由に設定することができる。これにより、ユーザーは要望するサイズおよび形状の液吸収体3を用いることができる。液吸収体3として、例えば抗菌、防臭、消臭等の作用を行う素材で液吸収体3を形成することもできるし、夏場等の蒸し暑い時期に、下着1の装着者の体が蒸れないように通気性防水素材を使用することもできる。更に、液吸収体3に磁石や遠赤外線等の装着者の体に良好に作用する素材を用いることで、装着者の体の機能回復や冷え防止等を効果的に図ることができる。
以上のことから、種々のサイズおよび形状の下着本体2と種々のサイズおよび形状の液吸収体3とをユーザの要望に応じてより的確に組みあわせることができるようになる。
【0042】
このようにユーザーの個人個人の要望に応じてきめ細かくかつより忠実に対応することができるので、下着1の履き心地が良好になり、ユーザーは男女にかかわらず、長期的に快適な下着1の装着感を得ることができる。
【0043】
図8は本発明に係る下着に用いられる液吸収体の他の例を示し、(a)は図3(a)と同様の平面図、(b)は(a)におけるVIIIB−VIIIB線に沿う断面図、(c)は使用状態を説明する図である。
図8(a)および(b)に示すように、この例の液吸収体3は、前述の図3(a)および(d)に示す例の第1ないし第3シート状体6,7,8からなる3層構造の液吸収体3に、更に面ファスナーの2つの一側接合部14,15が、それぞれ、防水層である第3シート状体8に接着されている。その場合、これらの一側接合部14,15はいずれも他側接合部11,12の起毛状素材とまったく同じであり、それぞれ起毛14a,15aを有する細長いテープ状の起毛状素材から構成されている。、一方の一側接合部14は他側接合部11と所定間隔を置きかつ平行に隣接して配置されているとともに、他方の一側接合部15は他側接合部12と所定間隔を置きかつ平行に隣接して配置されている。
【0044】
そして、図8(c)に示すように、液吸収体3の左右両端部が曲げられて、他側接合部11が一方の一側接合部14に接離自在に接合されるとともに他側接合部12が他方の一側接合部15に接離自在に接合されるようになっている。すなわち、他側接合部11と一側接合部14とにより、また、他側接合部12と一側接合部15とによりそれぞれ接離自在な面ファスナーが構成されている。このように、液吸収体3が下着本体2に取り付けられない状態で液吸収体3の左右両端部が曲げられることで、他側接合部11,12が露出しないようになっている。
【0045】
この例の液吸収体3によれば、液吸収体3の左右両端部を曲げて、他側接合部11,12をそれぞれ一側接合部14,15に接合して他側接合部11,12を露出させないようにすることができるので、液吸収体3を洗濯する際、他側接合部11,12が防水層である第3シート状体8に接触することで、第3シート状体8が損傷するのを防止できる。これにより、液吸収体3の耐久性が向上する。
【0046】
しかも、装着者の股間部に対応する液吸収体3の湾曲形状部10を含む領域Aにおける第1および第2シート状体6,7に液がほとんど溜まるようになるが、この領域Aは曲げて重ねられないので、液吸収体3の洗濯により、領域Aに溜まっている液を効果的に除去することができ、液吸収体3の洗濯効率を向上することができる。
このように、液吸収体3の耐久性が向上することで液吸収体3を洗濯しても液吸収体3の機能を十分に確保することができるとともに液を効果的に除去できるので、液吸収体3を比較的長期間にわたって再利用することが可能となる。
この例における液吸収体3の他の構成および他の作用効果は、前述の例の液吸収体3のそれらと同じである。
【0047】
なお、前述の図3(a)および(c)に示す例の液吸収体3において、液吸収体3を左右方向に2つに折り曲げ、かつ一方の他側接合部11を他方の他側接合部12に接離自在に接合させることで、両他側接合部11,12を露出させない状態で洗濯することが可能である。これによっても、洗濯時に他側接合部11,12が第3シート状体8を傷つけることが防止できるとともに、領域Aにおける第1および第2シート状体6,7に溜まっている液を除去することができる。しかし、この場合には、ほとんどの液が第1および第2シート状体6,7に溜まる領域Aが2つに折り曲げられて重ねられるので、液吸収体3の洗濯により、領域Aにおける第1および第2シート状体6,7に溜まっている液を十分にかつより確実に除去することができず、液吸収体3の洗濯効率をそれほど向上することができない。したがって、図8(a)ないし(c)に示すように、更に面ファスナーの一側接合部14,15を設けることが望ましい。
【0048】
図9は本発明に係る下着の実施の形態の他の例を示す、図1(b)と同様の断面図である。
図1(a)および(b)に示す例の下着1では、下着本体2に対向する液吸収体3の面の全面が下着本体2に接触するようにして支持されるが、図9に示すように、この例の下着1では、液吸収体3の他側接合部11,12が接合用布5の起毛5aによる一側接合部に接合されて液吸収体3が下着本体2に取り付けられたとき、液吸収体3の他側接合部11,12間の部分は下着本体2の接合用布5に接触しなく、接合用布5から離間し隙間Bが形成されるようになっている。すなわち、液吸収体3は、その両上端部が面ファスナーでそれぞれ下着本体2の接合用布5に接合されるだけで中間部(つまり、前述の領域Aを含む部分)が吊り下げられた状態で下着本体2に取り付けられる。
【0049】
このように液吸収体3の中間部が吊り下げられた状態にされることで、液が最も溜められる液吸収体3の中間部が装着者の股間により一層密着(フィット)するので、液の吸収効果を高めることができる。また、前述のように液吸収体3に磁石や遠赤外線等の装着者の体に良好に作用する素材を用いれば、これらの素材が装着者の体に密着することで、装着者の体の機能回復や冷え防止等をより一層効果的に図ることができる。
この例における下着1の他の構成および他の作用効果は、前述の例の下着1のそれらと同じである。
【0050】
図10は本発明に係る下着に用いられる液吸収体の更に他の例を示し、(a)は図3(a)と同様の平面図、(b)は(a)におけるXB−XB線に沿う断面図、(c)は(a)におけるXC−XC線に沿う断面図である。
図3(a)および(b)に示す例の液吸収体3では、撥水性テープ13が第1ないし第4シート状体6,7,8,9の全周にわたって当てがわれているが、図10に示すように、この例の液吸収体3では、液が吸収拡散されず漏出するおそれのない第1ないし第4シート状体6,7,8,9の両端縁(図10(a)において左右両端縁)には、撥水性テープ13が当てがわれておらず、液が吸収拡散されて漏出するおそれのある、第1ないし第4シート状体6,7,8,9の周端縁の他の部分のみ(図10(a)において上下両周縁)に、当てがわれている。このように撥水性テープ13を設けることで、撥水性テープ13を節約しつつ、液の漏出を効率よく防止することができる。
この例における液吸収体3の他の構成および他の作用効果は、前述の例の液吸収体3のそれらと同じである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の下着は、下着本体と、この下着本体の所定の位置に着脱自在に取り付けられるとともに、柔軟性を有しかつ尿等の液を吸収可能に形成されるシート状の液吸収体とを備える下着に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る下着の実施の形態の一例を模式的にかつ部分的に示し、(a)は全体斜視図、(b)は(a)におけるIB−IB線に沿う断面図である。
【図2】図1に示す下着本体の展開図である。
【図3】図1に示す下着に用いられる液吸収体を示し、(a)は平面図、(b)は(a)におけるIIIB−IIIB線に沿う断面図、(c)は(b)におけるIIIC部の拡大図、(d)は液吸収体の変形例を示す、(b)と同様の断面図である。
【図4】図1に示す下着本体に対する液吸収体の取付位置の設定および種々のサイズや外周形状の液吸収体の下着本体への取付けを説明する図である。
【図5】(a)は本発明に係る液吸収体の一変形例示す、図2と同様の下着本体の展開図、(b)は本発明に係る液吸収体の他の変形例示す、図2と同様の下着本体の展開図である。
【図6】(a)は本発明に係る液吸収体の更に他の変形例示す、図2と同様の下着本体の展開図、(b)は本発明に係る液吸収体の更に他の変形例示す、図2と同様の下着本体の展開図である。
【図7】本発明に係る下着の変形例示す、図1(a)と同様の全体斜視図である。
【図8】本発明に係る下着に用いられる液吸収体の他の例を示し、(a)は図3(a)と同様の平面図、(b)は(a)におけるVIIIB−VIIIB線に沿う断面図、(c)は使用状態を説明する図である。
【図9】本発明に係る下着の実施の形態の他の例を示す、図1(b)と同様の断面図である。
【図10】本発明に係る下着に用いられる液吸収体の更に他の例を示し、(a)は図3(a)と同様の平面図、(b)は(a)におけるXB−XB線に沿う断面図、(c)は(a)におけるXC−XC線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1…下着、2…下着本体、2a,2b…脚貫通用孔、2a1,2b1…周線、2c…分岐部、2d,2e…上縁、3…液吸収体、4…本体布、5…接合用布、5a…起毛(一側接合部)、6…第1シート状体、7…第2シート状体、8…第3シート状体、9…第4シート状体、11,12…他側接合部、11a,12a…起毛、13…撥水性テープ、14,15…一側接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右二股に分岐する分岐部に形成された左右一対の脚貫通用孔を有しかつ柔軟性を有する下着本体と、柔軟性を有しかつ液を吸収するシート状の液吸収体と、シート状の液吸収体を前記下着本体に着脱自在に取り付ける面ファスナーとを少なくとも備え、前記面ファスナーが前記下着本体に設けられた一側接合部と前記液吸収体に設けられて一側接合部に接離自在に接合可能な他側接合部とからなる下着において、
前記一側接合部が前記下着本体の上縁または上縁近傍位置から、前記分岐部における前記左右一対の脚貫通用孔の周縁または周縁近傍位置までシート状に延設されていることを特徴とする下着。
【請求項2】
前記一側接合部が柔軟性を有するシート状の接合用布からなり、この接合用布が前記下着本体に一体に縫着されていることを特徴とする請求項1記載の下着。
【請求項3】
前記一側接合部および前記他側接合部はそれぞれ多数の起毛を有する起毛状素材から形成されており、前記他側接合部の起毛が前記一側接合部の起毛に接触することで前記他側接合部が前記一側接合部に接離自在に接合することを特徴とする請求項1または2記載の下着。
【請求項4】
前記液吸収体は前記下着本体に、前記下着本体に対向する面の全面が前記下着本体に接触するようにして取り付けられることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1記載の下着。
【請求項5】
前記液吸収体は前記下着本体に、前記下着本体に対向する面の一部が前記下着本体から離間して吊り下げ状に取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1記載の下着。
【請求項6】
前記液吸収体に設けられる前記他側接合部は細長いテープ状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1記載の下着。
【請求項7】
前記液吸収体に、前記他側接合部と接離自在に接合可能な更にもう1つの一側接合部が前記他側接合部に対して所定間隔を置き隣接して設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1記載の下着。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−93321(P2008−93321A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281149(P2006−281149)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000131304)株式会社シキナミ (1)
【Fターム(参考)】