説明

不均一系触媒でのクリック化学

本発明は、不均一系触媒系を用いるクリック反応によって分子をカップリングさせる新規な方法および試薬に関するものである。さらに本発明は、クリック反応を実施するための新規な装置に言及するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不均一系触媒系を用いるクリック反応によって分子をカップリングするための新たな方法および試薬に関するものである。さらに本発明は、クリック反応を実施するための新規な装置に言及するものである。
【背景技術】
【0002】
2001/2002年に、シャープレスら(SharplessおよびMeldal)のグループが独立に、「クリック化学」の概念と「クリック」反応と考えられる変換の基準を定義した[2]および[3]。それ以降、アジドとアルキンの銅触媒反応による1,2,3-トリアゾール類の製造(1,3-双極性ヒュスゲン環化付加[1])が最も広く利用されるクリック反応となった。温和な条件と高い効率の結果として、この反応には、DNA標識用などの生物学および材料化学で無数の用途が生じた[16]。
【0003】
生体分子標識に適用される場合のその方法の制限の一つは、クリック反応の触媒としてのCu(I)に関係するものである。Cuイオンは、細菌細胞および哺乳動物細胞に対して毒性であることから、生体系内での反応の使用が制限されることになる。さらに、DNAおよびRNAの場合、触媒の取り扱いが不適切であると、Cuイオン触媒リン酸ジエステル加水分解のためにオリゴヌクレオチドの分解が生じる可能性がある[17、18]。それらの問題に対する解決法が報告されており、それにはイン・サイツ(in situ)でのCu(I)発生および/またはCu(I)安定化配位子の使用などがある。後者は、有機配位子(通常は3級アミン)を溶かすためにクリック反応で関与する有機溶媒の存在に耐容する基質および実験条件に限定される。タンパク質または長鎖DNA鎖などの分子は、例え少量の溶媒であっても、それを加えると最終的に沈澱するか不溶性凝集体を形成することから、クリック反応の結果に悪影響を与える。
【0004】
いずれにしても、遊離Cu(I)イオンは、環境条件下での寿命が制限されており、酸化されてクリック反応非活性のCu(II)となる。従って、クリック反応用の調製したばかりのCu(I)配位子混合物は、注意深くしかも迅速に取り扱う必要がある。従って、この方法は、労働集約型の手動作業でのみ使用可能であって、自動工程では使えない。
【0005】
最近の総覧によれば[4]、硫酸銅(II)(約1%)およびアスコルビン酸ナトリウム(約10%)存在下でのクリック反応は、水系媒体(例:H2O/tBuOH)中イン・サイツで触媒活性Cu(I)を発生させる働きをし、特に好ましいものである。Cu(0)のイン・サイツ酸化またはCu(I)塩(通常はCuIまたはCuBr)の直接導入などの別の条件も使用されている[5]。固相条件下では(例えば、ポリスチレン上)[3、6]、両方の反応相手が個別にカップリングされているが、不均一銅(I)源が介在するクリック化学の例は希である。ある報告は、ポリスチリル系ベンジル型アミンによる不安定な可能性がある銅へのキレート化に依存している[7a]。その場合、立体障害がない低分子量で非塩基性窒素含有例のみ調べられており、固体担体からの銅の損失を数量化するデータがない。担持されていない銅クラスターの懸濁液に基づく他の研究にも制限がある[7b]。
【0006】
リプシュッツ(Lipshutz)らは最近、この新興分野で使用される簡単かつ安価で特に一般的かつ効率的な不均一系触媒としての銅-活性炭(Cu-C)の価値について述べている[19]。超音波浴を用いるCu(II)源、例えばCu(NO3)2水溶液による活性化木炭(Aldrich、100メッシュ、$53.90/kg)の含浸[8]が、水の蒸留および乾燥後に、ナノ粒子の大きさのCu(I)-Cを生じると記載されている[9]。Cu(I)はイン・サイツ還元ではなく、活性炭が介在する還元を介してCu(II)から発生され、その方法では、そのように発生されるCu(I)源を予め構成し、長期間にわたって保存することが可能となる。活性炭基材内に存在する化学種としてCuOおよびCu2Oの両方が提案されていることから[10]、Cu(I)の存在は、還元剤が必要ない可能性があることを示唆していた。実際、前記著者は、10モル%Cu-C存在下に室温でジオキサン中にてベンジルアジドをフェニルアセチレンと混和(1:1)したら、環化付加が10時間以内に完結することを示している。濾過および溶媒留去によって、位置特異的かつほぼ定量的に純粋なトリアゾールが得られた[19]。さらに、リプシュッツらは、溶液中で遊離Cu(I)が存在しないことを示しており、それはクリック-反応事象の不均一性を実証するものである。
【0007】
結論として、リプシュッツらは、有機アジドと末端アルキンとの間の非常に効率的なクリック化学が活性炭の孔内に取り込まれている銅ナノ粒子によって不均一に触媒され得ると報告した[9]。さらに、当該著者らは、化学量論量のEt3Nによって、または単純に反応温度を上げることで反応を加速することが可能であることを示した。マイクロ波照射下で、トリアゾール類は150℃で数分内に形成可能である。環化付加は、純粋に有機媒体中、水系溶媒混合物中、または純水中で行うことができる。銅塩を選択した場合に通常伴う溶解度の問題、銅の汚染および高くない収率は、完全に回避される。クリック反応を加速することが知られている外部配位子は必要ない。その触媒は空気への曝露によって影響を受けないように見え、それは保存寿命がかなり長いことを示唆している。リプシュッツら[19]が示したように、一方または両方の相手での立体的密集は十分に耐容され、生成物の単離は非常に容易である。
【0008】
遊離型での有機分子を用いるクリック反応へのCu/Cの使用も、[20]および[21]に開示されている。しかしながら、これらの文献の中で、クリック相手のうちの一つを固体担体上に固定化するクリック反応の記載はない。
【0009】
生体分子の使用が関与するクリック反応が[16]、[22]、[23]および[24]に開示されている。これらの反応は、可溶性触媒の存在下に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO 2006/11761
【特許文献2】WO 2008/052775
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】R. Huisgen, 1,3-Dipolar Cycloaddition Chemistry (Ed.: A. Padwa), Wiley, New York, 1984.
【非特許文献2】K. B. Sharpless, V. V. Fokin, L. G. Green, V. V. Rostovtsev, Angew. Chem. 2002, 114, 2708; Angew. Chem. Int. Ed. 2002, 41, 2596.
【非特許文献3】M. Meldal, C. Christensen, C.W. Tornoe, J. Org. Chem. 2002, 67, 3057.
【非特許文献4】J. H. Maarseveen, H. Hiemstra, V. D. Bock, Eur. J. Org. Chem. 2006, 51.
【非特許文献5】a) K. B. Sharpless, V. V. Fokin, V. V. Rostovtsev, L. Noodleman, R. Hilgraf, T. Lovell, F. Himo, J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 210; b) C. J. Hawker, T. P. Russell, P. Wu, V. V. Fokin, E. Drockenmuller, K. Schleicher, M. Malkoch, Macromolecules 2005, 38, 3663.
【非特許文献6】a) P. Gmeiner, H. Hubner, S. Lober, P.-R. Loaiza, J. Comb. Chem. 2006, 8, 252; b) M. G. Finn,Q.Wang, J. Kuzelka, S. Punna, Angew. Chem. 2005, 117, 2255; Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 2215.
【非特許文献7】a) C. Girard, E. Onen, M. Aufort, S. Beauviere, E. Samson, J. Herscovici, Org. Lett. 2006, 8, 1689; b) G. Rothenberg, J.-V. Maarseveen, L. D. Pachon, Adv. Synth. Catal. 2005, 347, 811; see also: A. Ponti, N. Santo, G. Marinoni, C. L. Bianchi, G. Molteni, New J. Chem. 2006, 30, 1137.
【非特許文献8】Aldrich Catalogue, #278092. Darko KB, Wet Powder, 100 mesh, contains less than 30% water.
【非特許文献9】B. H. Lipshutz, B. A. Frieman, A. E. Tomaso, Angew. Chem. 2006, 118, 1281; Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 1259.
【非特許文献10】T. Tsoncheva, S. Vankova, D. Mehandjiev, Fuel 2003, 82, 755.
【非特許文献11】V. V. Fokin, K. B. Sharpless, R. Hilgraf, T. R. Chan, Org. Lett. 2004, 6, 2853.
【非特許文献12】M. G. Finn, V. V. Fokin, V. O. Rodionov, Angew. Chem. 2005, 117, 2250; Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 2210.
【非特許文献13】M. R. Ghadiri, C. D. Stout,W. S. Horne, J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 9372.
【非特許文献14】C-H.Wong, J. C. Paulson, O. Blixt, M. C. Bryan, F. Fazio, J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 14397.
【非特許文献15】For a recent article that describes use of copper(II) salts to catalyze Click cycloadditions in water, see: M. L. Kantam, K. Rajgopal, K. R. Reddy, Synlett 2006, 957-959.
【非特許文献16】Gramlich, P. M. A.; Wirges, C. T.; Manetto, A.; Carell, T., Postsynthetic DNA Modification through the Copper-Catalyzed Azide-Alkyne Cycloaddition Reaction. Angew. Chem. Int. Ed., 2008, 47, 8350-8358.
【非特許文献17】C. J. Burrows, J. G. Muller, Chem. Rev. 1998, 98, 1109-1152.
【非特許文献18】S. Thyagarajan, N. N. Murthy, A. A. Narducci Sarjeant, K. D. Karlin, S. E. Rokita, J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 7003-7008.
【非特許文献19】H. Lipshutz, B. R. Taft, Angew. Chem. Int. Ed., 2006, 45, 8235-8238.
【非特許文献20】D. Urankar, J. Kosmrli, J. Comb. Chem. 2008, 10, 981-988.
【非特許文献21】H. Sharghi, R. Khalifeh, M.M. Doroodmand, Adv. Synth. Catal. 2009, 351, 207-218
【非特許文献22】J.F. Lutz, Z. Zarafshani, Adv. Drug Deliv. Rev. 2008, 60, 958-970.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、DNAなどの生体分子の標識における不均一系触媒、特にはCu(I)-C触媒の利用、ならびに本発明に基づく多くの可能な使いやすい装置または方法(これらのいくつかが、コンセプト証明および実施例として本願で示されている)について記載するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、例えば核酸などの生体分子を標識するための、不均一系触媒存在下に、好ましくは水相で生体分子に対して行われるクリック反応に関するものである。本発明は、新規で使いやすい生体分子標識方法および取り扱いやすく、かつ/または自動化された生体分子-標識プロトコールのための道を開くものである。
【0014】
以下において、クリック反応は、不均一系触媒、例えば不均一系の銅(I)その他の金属触媒によって触媒される、1,3-双極性部分、特にはアジドと、不飽和部分、特にはアルキンとの間の反応とする。好ましくは、クリック反応は、1,2,3-トリアゾール部分などの5員複素環部分を与える(3+2)1,3-双極性環化付加を含むものである。
【0015】
本発明の第1の態様は、クリック反応によって第1の分子を第2の分子にカップリングさせる方法であって、前記第1の分子がクリック反応性不飽和基である第1のクリック官能基を含み、前記第2の分子がクリック反応によって前記第1のクリック官能基と反応することができるクリック反応性1,3-双極性基である第2の相補的クリック官能基を含み、前記第1の分子と第2の分子の間のクリック反応が起こる条件下に、不均一系触媒の存在下で、前記第1の分子と前記第2の分子を接触させる段階を有し、前記第1および第2の分子のうちの一方が生体分子である方法に関するものである。
【0016】
本発明の別の態様は、クリック反応によって第1の分子を第2の分子にカップリングさせる方法であって、前記第1の分子がクリック反応性不飽和基である第1のクリック官能基を含み、前記第2の分子がクリック反応によって前記第1のクリック官能基と反応することができるクリック反応性1,3-双極性基である第2の相補的クリック官能基を含み、前記第1の分子と前記第2の分子の間のクリック反応が起こる条件下に、不均一系触媒の存在下で前記第1の分子と第2の分子を接触させる段階を有し、前記第1の分子および前記第2の分子のうちの一つが固体担体、例えば不均一系触媒上および/または別の固体担体材料、例えばクロマトグラフィー材料上に固定化されている方法に関するものである。そのような実施形態では、クリック反応は、「固体支持体上のクリック」と見なすことができる。
【0017】
本発明の別の態様は、特には上記で記載の方法で使用するための、少なくとも1個の反応チャンバーを有する装置であって、前記反応チャンバーはクリック反応を行うための不均一系触媒および適宜に別の固体担体材料を含み、前記クリック反応の相手は前記不均一系触媒上および/または前記別の固体担体材料上に固定化されていることができる装置に関するものである。
【0018】
本発明のさらに別の態様は、クリック反応用の不均一系触媒および適宜に該触媒上に固定化された前記クリック反応用の前記相手のうちの一方、好ましくはクリック反応性1,3-双極性基を含む相手を含む、少なくとも1個の反応チャンバーを有する装置に関するものである。
【0019】
本発明のさらに別の態様は、少なくとも1個の反応チャンバーを有する装置[前記反応チャンバーがクリック反応を行うための不均一系触媒および適宜に別の固体担体材料を含み、前記クリック反応の相手が前記不均一系触媒上および/または前記別の固体担体材料上に固定化されていても良い。]、ならびに第1のおよび第2の分子[前記第1の分子はクリック反応性不飽和基である第1のクリック官能基を含み、前記第2の分子はクリック反応性1,3-双極性基である第2の相補的クリック官能基を含む。]を含むクリック反応用試薬キットを指す。
【0020】
本発明のさらに別の態様は、標識された生体分子を製造する上での上記方法および試薬の方法に関するものである。これらの標識された生体分子は、特には検出対象の分析物と会合生成物を形成するクリック反応によって標識される化合物の使用が関与する、分析物、例えばサンプル中の核酸の検出に用いることができる。
【0021】
この態様の1実施形態は、
(i)少なくとも1個の反応チャンバーを有する装置を提供する段階[前記反応チャンバーは、クリック反応を行うための不均一系触媒および適宜に別の固体担体材料を含み、前記クリック反応の一方の相手は前記不均一系触媒上および/または前記別の固体担体材料上に固定化されていることができる。]、
(ii)前記反応チャンバー中で、第1のクリック相手である第1の分子を第2のクリック相手である第2の分子と、前記第1の分子と前記第2の分子の間のクリック反応が起こる条件下に不均一系触媒の存在下で接触させる段階[前記第2の分子は好ましくは、レポーター基またはレポーター前駆体基を含む。]、
(iii)必要に応じて、レポーター前駆体基をレポーター基に変換する段階、
(iv)前記分析物の検出が可能となる条件下で、前記第1の分子と前記第2の分子のカップリング生成物をサンプルと接触させる段階、および
(v)好ましくは前記レポーター基を介して、前記分析物を定性的および/または定量的に検出する段階
を有する、サンプル中の分析物の検出方法に関するものである。
【0022】
好ましくは、前記分析物検出は、自動化手順を含む。より好ましくは、前記クリック反応および分析物検出は、単一の統合された装置で行う。
【0023】
本発明は、分析物の非常に高感度の検出ならびに生命科学研究、分子診断、医薬およびナノテクノロジーの用途に好適な不均一触媒されるクリック反応を介して結合される新たな結合体の設計および合成を可能とするものである。好ましい用途には、例えば一塩基多型(SNP)などの遺伝的変動性、農薬もしくは医薬に対する抵抗性、耐性もしくは不耐性の検出、例えば生命の種もしくは系統の検出などの遺伝子型決定、遺伝子組み換え生物もしくは系統の検出、または病原体もしくは害虫の検出、および例えば遺伝病、アレルギー疾患、自己免疫疾患もしくは感染症などの疾患の診断などがあるが、これらに限定されるものではない。別の好ましい用途は、ブランド保護のためのサンプル中の核酸の検出があり、その場合に、農産物、食品または価値ある物品などの製品および/またはこれら製品の包装に、例えば製造場所、製造日、配給業者など(これらに限定されるものではない)の製品固有の情報がコード化されており、この情報を上記の方法によって検出する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)Cu(I)活性炭触媒およびそれの製造の模式図である。(b)不均一系触媒存在下での第1のクリック官能化分子と第2のクリック官能化分子の間の反応の模式図である。
【図2】先行技術によるDNA標識のためのクリック反応プロトコールの模式図である。
【図3】Cu/C触媒系を用いる核酸標識のための本発明のクリック反応プロトコールの模式図である。
【図4】不均一系触媒系を含むピペットチップ使用が関与するクリック反応の模式図である。
【図5】本発明の使用に好適なスピンカラムの代表例を示す図である。
【図6】スピンカラムで行われるクリック反応の模式図である。
【図7】DNAなどの固定化された生体分子を用いて行われるクリック反応の模式図である。
【図8】標識アジド分子などの固定化されたレポーター分子を用いて行われるクリック反応の模式図である。
【図9】不均一Cu(I)-C触媒およびピペットチップ(クリック・チップ)またはスピンカラム(クリック・スピン)を用いるDNA標識のためのクリック反応プロトコールの好ましい実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、クリック反応によるレポーター基を用いる分析物の使いやすく特異的な標識を可能とする方法および試薬を提供する。さらに、本発明は、一つまたは複数のクリック反応によって2以上の相手からの結合体の特異的形成を可能とする方法および試薬を提供する。そのクリック反応は、不均一系触媒の存在下で第1の分子と第2の分子の間で行う。これらの分子のうちの一方は、クリック反応によってクリック反応性1,3-双極性基、好ましくはアジド基と反応することができる不飽和クリック反応性基、好ましくはアルキン基を含むクリック相手である。他方の分子は、クリック反応性1,3-双極性基、好ましくはアジド基を含む相補的クリック相手である。
【0026】
好ましい実施形態において、クリック反応相手のうちの一方、または複数のクリック反応の場合には複数の相手は、固定化し、例えば共有結合的もしくは非共有結合的に不均一系触媒および/または別の固体担体材料上に担持および/または吸着させて、即時使用可能なキットを得ることができる。さらに、そのようなキットは、洗浄段階後に再利用可能である。
【0027】
クリック反応性不飽和基の好ましい例は、アルケン類およびアルキン類などの親双極子(dipolarophile)および関連するヘテロ原子官能基(カルボニル類およびニトリル類など)を有する分子である。クリック反応性不飽和基の特に好ましい例はアルキン類である。
【0028】
クリック反応性1,3-双極性基の好ましい例は、帯電双極子を表す少なくとも一つの共鳴効果を有すると記載することができる1以上のヘテロ原子を含む化合物である。好ましいものは、直鎖1,3-双極性基、例えば下記のようなプロパルギル-アレニル型双極子である。
【化1】

【0029】
クリック相手は、クリック官能基と反応相手の間の環状連結、例えば複素環連結が形成される環化付加反応で相補的クリック相手と反応することができる官能基を含む。そのようなクリック反応の特に好ましい例は、1,2,3-トリアゾール環の形成を生じる、アジドとアルキン基の間の(3+2)環化付加である。従って、カップリング生成物は、それぞれアジドおよびアルキン基を含む相手同士のクリック反応を行うことで形成することができる。
【0030】
クリック反応の特別に好ましい1実施形態は、例えばアジドとアルキン基の間の銅触媒(3+2)環化付加を含む。アジド/アルキン環化付加の結果としての1,2,3-トリアゾール類の不可逆的生成は直交的であり、必要な化学基は小さく(生体分子の環境の乱れが非常に小さい組み込み)、かつ天然に認められるアジドおよびアルキンが欠如しているために選択的である。
【化2】

【0031】
式中、R1およびR2は第1および第2の分子である。
【0032】
本発明の方法は、不均一系触媒の存在下でのクリック反応を包含する。不均一系触媒は、好ましくは不均一Cu触媒、より好ましくは不均一Cu(I)触媒である。しかしながら留意すべき点として、クリック反応連結の触媒に直接もしくは間接的に寄与するZr、W、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Ag、Au、Zn、Cd、Hgおよび他の金属イオンなどの他の不均一金属触媒が使用可能である。好ましい実施形態では、不均一系触媒は、金属-C触媒、すなわち例えばCu(I)イオンなどの金属イオンを組み込んだ活性炭などの炭素系支持体を含む触媒である。特別に好ましい実施形態では、不均一系触媒は、Cu(I)-C触媒、例えば[19]に記載の方法に従って製造可能なCu(I)-活性炭触媒である。
【0033】
好適なCu(I)-活性炭触媒およびそれの製造の模式的描画を図1aに示した。活性炭にCu(II)源を加え、それは活性炭によって還元され、それに組み込まれて、安定なCu(I)源が提供される。第1の分子と第2の分子の間のクリック反応の好ましい実施形態、すなわち不均一系触媒存在下でのDNA-アルキンとアジドの間の反応を、図1bに示した。
【0034】
不均一系触媒は、粒子状触媒、例えば粒径10nm〜1000μm、好ましくは10μm〜200μmまたは10nm〜1000nmを有する粒子からなる不均一系触媒であることができる。あるいは、その触媒は、多孔質非粒子状触媒、例えば触媒活性粒子が中に埋め込まれた固体基材であっても良い。
【0035】
さらに、その反応は、反応相手のうちの一方が、クリック反応の試薬および/または生成物(核酸その他のクリック相手)との物理的相互作用が可能である固体担体材料上で固定化されている条件下で実施することができる。その固体担体材料は好ましくは、固体担体材料、例えばクリック反応の相手を固定化することができる粒子状または非粒子状固体材料である。1実施形態において、固体担体材料は、不均一系触媒、例としては例えばクリック官能化レポーター分子、例えば蛍光もしくは非蛍光色素もしくはビオチンを吸着させることができるCu(I)-C-触媒であることができる。別の実施形態において、固体担体材料は、不均一系触媒とは異なる材料、例えば核酸、核酸類縁体、タンパク質またはペプチドなどの生体分子を固定化することができるクロマトグラフィー材料である。これらの実施形態において、クリック反応は、第1の反応相手および/または第2の反応相手が固体担体上に固定化されており、他方の相手が溶液中で遊離状態である条件下で行うことができる。
【0036】
好適なクロマトグラフィー材料の例には、イオン交換材料、親水性材料または疎水性材料がある。好ましい実施形態では、親水性材料、例えばシリカゲルを、不均一系触媒、例えばCu(I)/Cと組み合わせて用いることができる。別の好ましい実施形態において、疎水性材料、例えばシリカC18またはC4またはイオン交換樹脂を、不均一系触媒、例えばCu(I)/Cと組み合わせて用いることができる。さらに別の好ましい実施形態では、固体担体材料は、生体分子、例えば核酸、核酸類縁体、タンパク質またはペプチドの固相合成に用いられる樹脂であることができる。
【0037】
驚くべきことに、固定化した反応相手(例えば共有結合的または非共有結合的に固定化された反応相手)と溶液中で遊離して存在している反応相手の間のクリック反応が不均一系触媒系によって効率的に触媒することができることが認められた。この戦略によって、クリック反応と精製および/または試薬溶液中に最終的に存在する不純物からおよび/または塩からの生成物の分離を同時に行うことが可能となる。
【0038】
本発明の好ましい実施形態では、クリック反応は、少なくとも一つの反応チャンバー、例えばピペットチップ、スピンカラム、バイオチップ上もしくはマイクロタイタープレート中の反応チャンバーなどを有する装置で行う。その反応チャンバーは、不均一系触媒および適宜に反応相手を固定化するための上記の別の固体担体材料を含む。前記触媒および担体材料は、例えば粒子の物理的混合物として、もしくは不均一固体基材として単一の反応チャンバー中に、または反応チャンバーの別個の区画に存在することができる。
【0039】
クリック反応相手は、反応チャンバーに同時または順次に入れることができる。反応チャンバーが固体担体を有する場合、最初に、固定化が起こる条件下で固定化させる反応相手をチャンバーに入れるのが好ましい。この実施形態では、固定化された反応相手は、好ましくは生体分子、例えば核酸またはペプチドもしくはポリペプチドである。次に、遊離のクリック相手、例えばクリック官能性レポーター分子を、固定化クリック相手と遊離クリック相手の間でクリック反応が起こり得る条件下に反応チャンバーに入れることができる。
【0040】
別の好ましい実施形態では、固体担体材料(すなわち、触媒および/または適宜に別の担体材料)を、反応相手の一方で前含浸し、乾燥型で提供することができる。次に、固定化クリック相手と遊離クリック相手の間のクリック反応が起こる条件下で、他方の反応相手を含む液体媒体を固体担体材料上に送ることができる。
【0041】
不均一系触媒および別の担体材料の個々の量は、広い範囲で変動し得る。例えば、触媒および別の担体材料は、1:1000〜1000:1の重量比で存在することができる。クリック反応が行われた後、カップリング生成物を、例えば温度および/または媒体組成を変えることで(例えば、塩および/または有機溶媒の量を変えることで)、固体担体材料から溶出する。
【0042】
本発明によれば、クリック反応は好ましくは、水系媒体中、すなわち少なくとも60%(体積比)、好ましくは少なくとも75%(体積比)、さらにより好ましくは少なくとも90%(体積比)、そしてさらに好ましくは少なくとも95%(体積比)、98%(体積比)または99%(体積比)の水を含む液体媒体中で行う。最も好ましくは、前記水系媒体は、有機溶媒を含まない。水に加えて、液体媒体は、好適な緩衝物質または所望に応じて別の補助剤を含むことができる。あるいは、その反応は、有機溶媒中または個々の不均一系触媒と適合性である有機溶媒を用いる水系/有機液体媒体中で行うことができる。
【0043】
本発明によれば、不均一に触媒されるクリック反応は、室温で効果的に実施できることが認められた。概して、反応温度は約4〜約80℃以上、特には約10〜約40℃で変動し得るものである。最も好ましくは、その反応は、約15〜約25℃の温度で行われる。
【0044】
さらに、本発明による不均一に触媒されるクリック反応は妥当な速度で進行して、生体分子の標識を行う上で簡便かつ簡単なプロトコールを提供することが認められた。例えば、反応時間は、約1分〜約10分以上、特には約2分〜約5分であることができる。特定の場合に、それより長い反応時間が必要となる可能性があり、特には10分〜4時間または10分〜8時間である。
【0045】
不均一に触媒されるクリック反応は、不均一系触媒および/または基質と相互作用するアミン類その他の分子の存在によって加速され得る。好ましい実施形態では、10%以下(体積比)、より好ましくは1%以下(体積比)、最も好ましくは0.1%以下(体積比)のアミンを触媒/試薬混合物に加える。そのアミンは、1級、2級もしくは3級であることができ、それらは芳香族、ヘテロ芳香族、脂肪族、脂環式、不飽和もしくは完全飽和の骨格を有することができる。好ましくは、そのアミンはトリエチルアミンなどの3級アミンである。
【0046】
さらに、不均一に触媒されるクリック反応は、マイクロ波源もしくは赤外線などの各種エネルギー源によって加速することができる。
【0047】
さらに、その反応は、非常に小さい体積、例えばマイクロタイターウェル、ピペットチップまたはスピンカラムで生じる反応体積で進行し得ることが認められた。例えば、その反応は、約0.1〜約1000μL以上、好ましくは約0.1μL〜約100μL、より好ましくは約0.1μL〜約10μLの体積を有する反応チャンバーで進行し得る。ある特別に好ましい実施形態では、その反応は、ピペットチップで、例えば所定量の不均一系触媒を提供したピペットのチップで行われる。別の好ましい実施形態では、その反応は、所定量の不均一系触媒が中に組み込まれているスピンカラムで行うことができる。ある別の好ましい実施形態では、その反応は、10mLまで(大量のクリック反応の場合)、または1〜5mL、または好ましくは0.1〜1mLの所定体積で不均一系触媒が充填された注射器内部で行うことができる。
【0048】
本発明の1実施形態では、第1および/または第2の分子は、
(1)天然および人工のアミノ酸およびそれのオリゴマーおよびポリマー、例えばペプチド、ロタキサン、グリコペプチド、タンパク質、酵素、抗体など、
(2)核酸および核酸類縁体、例えばDNA、RNA、LNA、PNA、MeO-RNA、ホスホロチオエート核酸など、
(3)脂肪酸およびそれらの誘導体などの脂質、例えば脂肪酸エステル、リン脂質、スフィンゴ脂質およびリポソーム、ミセル、細胞膜などの構造を含む脂質など、
(4)ポリマーおよび生体ポリマーまたはそれらのモノマー、ゲルおよび膜、
(5)ウィルス、ビタミン、ホルモン、神経伝達物質、例えばドーパミン、アドレナリン、セロトニンなど、
(6)単糖類、オリゴ糖類および多糖類などの糖類、
(7)有機および無機粒子、ガラス表面、ケイ素材料、シリカビーズ、電磁ビーズ、金属ナノ粒子、金属錯体、メタロセン、デンドリマー、糖デンドリマー、ナノチューブ、フラーレン、量子ドットなどの巨大分子
から選択される。
【0049】
そのような分子は、すでにクリック反応には用いられているが、不均一系触媒との組み合わせはない。広範囲の概要が、書籍″Click Chemistry for Biotechnology and Materials Science″ Ed. Joerg Lahamk, Wiley 2009(これの内容は、参照によって本明細書に組み込まれる)にある。
【0050】
好ましい実施形態では、第1の分子および第2の分子のうちの一方が生体分子、例えば天然および修飾されたヌクレオチドもしくは核酸を含むヌクレオシド、ヌクレオチド、アミノ酸、ペプチド、糖類および脂質から選択される分子である。より好ましくは、前記生体分子は、修飾核酸を含む核酸から選択される。生体分子は、遊離分子または例えば上記のように固体担体材料に共有結合的もしくは非共有結合的に結合した固定化型で存在することができる。
【0051】
第1の分子および第2の分子のうちの他方は、
(i)レポーター分子、
(ii)アフィニティ分子、
(iii)固相、
(iv)生体分子、例えばタンパク質もしくは脂質、
(v)脂肪族もしくは脂環式基、芳香族もしくはヘテロ芳香族基、アルケン基、アルキン基、および/またはポリマー基、例えばポリエチレングリコール基を含むことができる連結基またはスペーサー、
(vi)医薬の化合物もしくは基、光活性基、および/またはレドックス活性基、および/または認識部位
であることができる。
【0052】
レポーター分子は、公知の分析方法によって検出可能な分子であることができる。好ましくは、レポーター分子は、色素、すなわち光学的方法によって検出可能な分子である。その色素は、蛍光、発光または他の形での光学的に検出可能な色素であることができる。アフィニティ分子は、ストレプトアビジンもしくはアビジンとアフィニティ結合を形成することができるビオチンもしくはビオチン類縁体または抗体とアフィニティ結合を形成することができるハプテンなどの相補的アフィニティ相手に対する非共有結合的アフィニティ結合を特異的に形成することができる分子であることができる。固相は、分析方法で好適な固相であることができ、例えばチップの表面、マイクロウェルなどまたは粒子である。第2のクリック相手は、所定または不定の分布を有する天然もしくは合成ポリマーであることもでき、例えばポリエチレングリコール、または医薬またはそれらの分子の組み合わせがある。
【0053】
特別に好ましい実施形態では、生体分子である第1の分子を、レポーターもしくはアフィニティ分子またはレポーターもしくはアフィニティ分子へのカップリングに関して反応性の化合物である少なくとも一つの第2の分子と反応させる。第1の分子は好ましくは少なくとも1個のアルキン基を含み、各第2の分子は好ましくはアジド基を含む。
【0054】
クリック反応による不均一系触媒の存在下での水系媒体中における生体分子標識には、かなりの利点がある。これらの利点は、下記のようにまとめることができる。
【0055】
1.不均一系触媒は環境条件下で安定であり、例えば核酸での鎖切断などの生体分子の損傷を引き起こさない。従って、金属触媒を予め製造し、長期間保存することができる。これは、特に生体分子を用いるクリック反応において非常に重要な改善を代表するものである。
【0056】
2.その反応は、例えばCu(I)配位子などの非水溶性金属配位子の非存在下に実施することができる。
【0057】
3.その反応は、水系溶媒中で、すなわちDMSOおよび/またはt-ブタノールなどの有機溶媒非存在下で行うことができる。これらの有機溶媒は、相対的に長い核酸分子、すなわち30ヌクレオチドを超えるDNA鎖にはあまり適していない。さらに、これらの分子は、ポリペプチド類やHPLCを用いる反応混合物の後処理と適合しない。
【0058】
4.不均一系触媒を用いることによって、準備、反応実施および後処理を含む反応時間を大幅に短縮することができる。
【0059】
5.不均一に触媒されるクリック反応は、自動プロセスで、例えば自動DNA合成装置などの自動標識プロセスで用いることができ、それによってクリック化学の工業的用途の拡大が可能となる。
【0060】
6.反応混合物の脱色および精製に、通常は活性炭が用いられる。
【0061】
従って、不均一炭素系触媒、例えばCu(I)/C触媒を用いることのもう一つの利点は、1段階反応-精製からなるものである。例えばクリック反応中またはその反応後に、例えばオリゴヌクレオチドなどの核酸分子を保持するC18材料とCu(I)/Cの混合物もしくは基材を用いることで塩および他の不純物の洗い流しを可能とし、サンプルの濃縮を可能とすることで、この効果を高めることができる。次に、適切な溶離液、例えばアセトニトリル/水1:1もしくは8:2の存在下に、または異なる組成物中で、例えば核酸接合体などの生成物の最終溶離を行うことができる。
【0062】
7.その反応は、第1の反応相手または第2の反応相手のいずれかが固定化されている固体担体材料の存在下で行うことができる。これによって、所望の反応生成物の有効な精製および/または分離が可能となる。
【0063】
代表的な先行技術クリック反応プロトコール(図2)と本発明のクリック反応プロトコール(図3)の比較によって、上記の利点が明らかになる。
【0064】
別の好ましい実施形態では、反応相手のうちの一方(例えば、クリック反応性蛍光もしくは非蛍光色素またはDNAなどの生体分子)を、予め固体担体上に直接吸着させておくことができ、その固体担体は不均一系触媒(例えばCu-C)および/または別の固体担体材料であることができる。それによって、例えば生体分子標識用に、(a)不均一系触媒および適宜に別の固体担体材料、および(b)クリック反応の相手の一方、好ましくは触媒および/または別の固体担体材料上に非共有結合的に固定化されていることができる標識を含む即時使用キットが提供される。これによって、生体分子、例えばオリゴヌクレオチドまたはタンパク質の標識プロトコールが非常に簡便になり、人が行う作業が少なくなって、予め吸着された固相(例えば、蛍光標識された生体分子;Cu-C-ビオチン;Cu-C-Alexa550、Cu-C-Eterneonなどを得るためのCu-C-フルオレセイン)が入った反応チャンバー中に、標識されるべき生体分子が簡単に入る。そのような即時使用キットは、自動プロセスにも好適である。
【0065】
特別に好ましい実施形態では、クリック反応性不飽和基を含む第1の分子は、上記で記載の生体分子である。この生体分子は好ましくは、同一であっても異なっていても良い複数のクリック反応性不飽和基を含む。第2の分子は好ましくは、上記で記載のレポーター分子であり、例えば蛍光色素または非蛍光色素である。
【0066】
別の特別に好ましい実施形態では、クリック反応性1,3-双極性基を含む第2の分子は、上記の生体分子である。この生体分子は、単一のクリック反応性1,3-双極性基を含むことができる。好ましくは、この生体分子は、同一でも異なっていても良い複数のクリック反応性1,3-双極性基を含む。第2の分子は好ましくは、上記のレポーター分子であり、例えば蛍光色素または非蛍光色素である。
【0067】
本発明の別の特別に好ましい実施形態は、水または水系緩衝液中、不均一系触媒の存在下での、例えばDNAなどのアルキン修飾核酸および例えば蛍光色素もしくは非蛍光色素などのアジド修飾レポーター基、あるいはDNAなどのアジド修飾核酸および例えば蛍光色素もしくは非蛍光色素などのアルキン修飾レポーター基の反応を含む。反応終了後、生成物は、原料がまだ溶液中に存在している場合には、例えばサイズ排除によって最終生成物を原料から分離することでその原料から精製することができ、および/または例えば濾過によって不均一系触媒から精製することができる。生成物は水溶液で得られ、反応後にそのまま分析もしくは使用することができる。
【0068】
サンプルからのCu/Cの濾過は、反応混合物からの他の成分(例えば、色素、ヌクレオチド、小分子など)の分離の前、途中および/または後に行うことができる。好適な濾過/精製システムの例には、シリカゲル膜(例えば、Jena Bioscience)による100bpより大きいDNA断片の精製、遠心フィルターユニット(例えば、Jena Bioscienceから)による組み込まれていないヌクレオチドの除去、QIAquick PCR精製キット(QIAGENから)、Microcon(登録商標)遠心フィルター装置(Milliporeから)、Amicon(登録商標)Ultra-0.5およびUltra-15遠心フィルター装置(Milliporeから)、Ultrafree(登録商標) -MCおよび-CL遠心フィルター装置(Milliporeから)、孔径0.2および0.45μmを有するAcrodisc(登録商標)13mmおよび25mmシリンジフィルター(PALL Scienceから)、酢酸セルロースもしくは例えば膜孔径0.22または0.45μmを有するナイロン膜を有するCostar(登録商標)Spin-X(登録商標)遠心管フィルター、Vectaspin Micro、Anopore(商標名)(Whatman(登録商標)から)、Nanosep MF装置、サンプルリザーバーフィルター、例えばサンプル製造および少量化学濾過用のPTFE、ナイロンもしくはポリプロピレン膜を有する13mmシリンジフィルター、0.2μm(VWRから)、EconoSpin(商標名)オールインワン・ミニスピンカラムおよび好適なレシーバ管、フィルタープレート96ウェル、1mL、GF/FF、GF/NおよびGF/B Filters、RC/5、10限外濾過マイクロプレート、5および10kD、96ウェル、RC/30および100限外濾過マイクロプレート、30および100kD、96ウェル、およびAcroPrep 96および384複数ウェルフィルタープレート(PALLから)がある。
【0069】
本発明は、分析物の検出も含む。その検出は、分析対象のサンプル中の特異的核酸配列などの分析物の有無の決定のような定性的検出であることができる。しかしながら本発明は、分析対象サンプル中の核酸配列などの分析物の定量的検出も可能とするものである。定性的および/または定量的検出は、当業界で公知の方法によるレポーター基の測定を含み得る。
【0070】
検出される分析物は好ましくは、生体分子、医薬または毒性化合物などの生物サンプルまたは環境サンプル中に存在する分析物から選択される。生体分子の例には、核酸、ペプチド、ポリペプチド、糖類、脂質、ステロイドなどがある。例えば、分析物は、核酸ならびにヌクレオシド-、ヌクレオチド-もしくは核酸-結合性分子、例えばヌクレオシド-、ヌクレオチド-もしくは核酸-結合性タンパク質から選択することができる。より好ましくは、分析物は、核酸、例えば公知の技術、特にはハイブリダイゼーション技術によって検出可能なあらゆる種類の核酸である。例えば、核酸分析物は、DNA、例えば二本鎖もしくは一本鎖DNA、RNAまたはDNA-RNAハイブリッドから選択することができる。核酸分析物の特定の例には、ゲノムDNA、mRNAまたはそれら由来の産生物、例えばcDNAがある。
【0071】
本発明の方法は、サンプル中の分析物、特には核酸分析物の検出に好適な公知の試験方式に従って行うことができる。例えば、その方法では、例えばウェスタン、サザンもしくはノーザンブロットでの膜、チップ、アレーまたはビーズなどの粒子のような固体表面上に固定化された分析物の検出を行うことができる。さらに、その検出は、例えばアガロースもしくはポリアクリルアミドゲルなどのゲル上でのサンプルの電気泳動分離、クロマトグラフィー手順および/または質量分析手順後に、ゲルで行うことができる。その方法では、例えばチップもしくはマイクロアレー様式で、単一の分析物の検出または複数の分析物の並列検出を行うことができる。
【0072】
サンプルは、検出対象の分析物を含むことができるサンプルであることができる。例えば、サンプルは、農業サンプル、例えば植物材料および/または植物が生長する場所、植物材料が保管もしくは処理される場所に関連する材料を含むサンプルなどの生物サンプルであることができる。他方、サンプルは、特にはヒト起源の組織サンプルまたは血液、血清、血漿などの体液サンプルのような臨床サンプルであることもできる。別の種類のサンプルには、環境サンプル、土壌サンプル、食品サンプル、法医学サンプルまたはブランド保護を目的として試験を行う価値ある物品からのサンプルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
選択性が高いことから、本発明の方法は、増幅せずに直接分析物を検出するのに好適である。例えば、生物サンプル中の遺伝子などの分析物の検出を、サザンブロッティングと本発明の方法の組み合わせによって行うことができると考えられる。しかしながら、留意すべき点として、本発明の方法によって、PCRまたは非対称PCR、リアルタイムPCR、逆転写PCRなどのそれの改変型のような公知のプロトコールまたはLCRなどの増幅プロトコールによって行うことができる増幅段階と組み合わせた核酸の検出も可能となる。
【0074】
本発明の好ましい実施形態では、例えばサンプル中で特異的配列を有する核酸を他の核酸配列と識別するか、サンプル中で特異的核酸配列に結合できるポリペプチドを他のポリペプチドと識別する分析物の配列特異的検出を行う。そのような配列特異的検出は好ましくは、検出すべき核酸配列がマーカー基またはマーカー前駆体基を有する化合物と会合する配列特異的ハイブリダイゼーション反応を含む。しかしながら留意すべき点として、本発明によって、核酸の配列非特異的検出、例えばサンプル中に存在するあらゆる核酸の検出も可能となる。
【0075】
検出すべき分析物を同定するために、核酸などの分析物との会合生成物が形成される条件下で、クリック相手、すなわち上記の第1の分子または第2の分子である検出試薬とサンプルを接触させることができる。この実施形態では、クリック反応は、分析物の存在下で、すなわち形成された会合生成物に関して行うことができる。
【0076】
ある別の実施形態では、第1の分子および第2の分子をクリック反応によって反応させて標識された検出試薬を得て、それを次に、検出対象の分析物と接触させる。クリック反応および分析(analyte)は、好ましくは単一の統合装置で、自動手順によって行うことができる。
【0077】
第1の分子は、単一のクリック官能基または複数の官能基を含むことができる。例えば、上記で示した複数、例えば2、3、4、5、6、7、8またはそれ以上のクリック官能基を有するデンドリマー部分に分子をカップリングさせることができる。デンドリマー部分は、公知の技術によって合成することができる。第1の分子上のクリック官能基は、同一でも異なっていても良く、例えばWO2008/052775(この内容は参照によって本明細書に組み込まれる)に記載の保護されていないアルキン基と1種類もしくは数種類の保護されたアルキン基の組み合わせである。第1の分子が保護されていないクリック官能基と保護されたクリック官能基を含む場合、数種類の異なる第2の分子との連続反応が起こる可能性がある。
【0078】
クリック官能基は、分析物と会合生成物を形成することができる分子に結合している。その分子は、ヌクレオシド化合物またはヌクレオチド化合物であることができ、例えばヌクレオシドもしくはヌクレオシド類縁体またはヌクレオチドもしくはヌクレオチド類縁体またはオリゴマーもしくはポリマー、例えば核酸または核酸類縁体である。ヌクレオシド化合物またはヌクレオチド化合物は、例えば化学的もしくは酵素的方法によって核酸もしくは核酸類縁体に組み込むことができるヌクレオシドもしくはヌクレオチド類縁体またはヌクレオチドもしくはヌクレオチド類縁体である。得られる核酸または核酸類縁体は、分析物と会合生成物、例えば核酸ハイブリッドを形成することができるはずである。好ましくは、その化合物は、塩基部分、例えば核酸塩基または核酸塩基と塩基対を形成することができる別の複素環塩基部分、および例えばヌクレオシドもしくはヌクレオチドで糖部分および適宜にリン酸部分を有する骨格部分またはヌクレオシドもしくはヌクレオチド類縁体での異なる骨格部分を有する。
【0079】
官能性ヌクレオシド化合物の好ましい例は、核酸塩基が7-dN-G、C、7-dN-AまたはTであるものである。
【0080】
好ましくは、クリック官能基は、塩基部分、例えば核酸塩基部分に結合している。しかしながら、クリック官能基は、例えば糖基、リン酸基またはヌクレオシドもしくはヌクレオチド類縁体の場合には、修飾糖基、修飾リン酸基もしくはペプチド骨格部分等の骨格部分に結合していても良い。好ましくは、前記官能基は、直接結合を介して、またはスペーサーを介して化合物に共有結合的に結合している。結合がスペーサーを介して行われる場合、そのスペーサーは、脂肪族もしくは脂環式基、芳香族もしくはヘテロ芳香族基、アルケン基および/またはアルキン基および/またはポリエチレン基を含むことができる。
【0081】
官能化されたヌクレオシド、ヌクレオチドおよび核酸では、クリック基は好ましくは、天然および人工のプリン塩基およびピリミジン塩基から選択することができる核酸塩基に結合している。好ましくは、核酸塩基は、シチジン、ウラシル、チミン、アデニン、グアニン、7-デアザアデニン、7-デアザグアニン、イノシンおよびキサンチンから選択される。その官能基は好ましくは、特に核酸への酵素的組み込みが要求される場合、ピリミジン核酸塩基の5位もしくは6位、より好ましくは5位に、またはプリン核酸塩基の7位もしくは8位、より好ましくは7位に結合している。
【0082】
クリック官能基、すなわち不飽和基および1,3-双極性基は、それぞれ第1の分子または第2の分子に共有結合的に結合している。一方もしくは両方の基が、連結基を介して個々の分子に結合していることができる。好ましくは、少なくとも1,3-双極性基が、連結基を介してそれの分子に結合している。連結基含有基は、直接結合または原子20個以下の鎖長を有する連結基を介して、それの分子に結合していることができる。連結基は1〜20個またはそれ以上の原子の鎖長を有していることができ、O、Sおよび/またはNなどのヘテロ原子を含んでいても良いアルキレン系連結基のように可撓性であっても良く、または例えばアルケン基、アルキン基、環状基、特には芳香族基もしくはヘテロ芳香族基から選択される少なくとも1個の剛性基だけでなく脂環式基およびそれらの組み合わせを含む連結基のように少なくとも部分剛性であっても良い。
【0083】
第1の分子または第2の分子および/またはそれらのカップリング生成物は、検出対象の分析物と会合生成物を形成することができる場合がある。
【0084】
例えば、第1の分子または第2の分子は、修飾されたヌクレオチドまたは核酸を含むヌクレオチドまたは核酸であることができる。本発明による「ヌクレオチド」という用語は特には、リボヌクレオチド、2′-デオキシリボヌクレオチドまたは2′,3′-ジデオキシリボヌクレオチドに関するものである。ヌクレオチド類縁体は、特には酵素的に核酸に組み込むことができるヌクレオチド類縁体の糖もしくは骨格で修飾されたヌクレオチドから選択することができる。好ましい糖修飾ヌクレオチドでは、リボース糖の2′-OHまたはH-基が、OR、R、ハロ、SH、SR、NH2、NHR、NR2またはCNから選択される基によって置き換わっており、RはC1-C6アルキル、アルケニルもしくはアルキニルであり、ハロはF、Cl、BrまたはIである。リボース自体が、シクロペンタンまたはシクロヘキセン基などの他の炭素環系もしくは複素環系の5員もしくは6員基によって置き換わっていることができる。好ましい骨格修飾ヌクレオチドでは、ホスホロ(トリ)エステル基が、修飾された基によって、例えばホスホロチオエート基またはH-ホスホネート基によって置き換わっていても良い。別の好ましいヌクレオチド類縁体には、モルホリノ核酸、ペプチド核酸、ロックされた(locked)核酸またはホスホロチオエートなどの核酸類縁体の合成用の構成要素などがある。
【0085】
クリック核酸または官能化核酸は、オリゴヌクレオチド、例えば30以下のヌクレオチド(またはヌクレオチド類縁体)構成要素の長さを有する核酸または30を超えるヌクレオチド(またはヌクレオチド類縁体)構成要素の長さを有するポリヌクレオチドであることができる。好ましくは、核酸および核酸類縁体は、分析物に特異的に結合することができ、例えばアッセイ条件下で核酸分析物とハイブリダイズすることができる。最小長さは、好ましくは12、より好ましくは14ヌクレオチド(またはヌクレオチド類縁体)構成要素である。
【0086】
官能化核酸または核酸類縁体構成要素は、化学合成の標準的な技術によって、および/またはWO2006/117161(その内容は参照によって本明細書に組み込まれる)に記載の酵素的組み込みによって、核酸中に組み込むことができる。
【0087】
本発明の方法は、分析物検出の各種実施形態を提供する。核酸の検出方法は、例えばWO2006/117161(その内容は参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0088】
さらに別の実施形態では、本発明の方法を、生存細胞、例えば哺乳動物もしくはヒトの細胞などの真核細胞または原核細胞のイン・ビボ標識に用いることができる。そのような方法は、例えばWO2007/50811およびWO2007/120192(それらの内容は参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されている。本実施形態では、反応は、生存細胞の受け入れおよび/または維持をするよう作られた反応チャンバー中で行うことができる。
【0089】
ポリペプチド、炭化水素もしくは脂質、医薬、または有毒物質などの他の分析物の検出方法は、基本的に公知の方法に従って行うことができるが、ポリエチレングリコールクリック官能基、例えばポリエチレングリコール-アジド基を含む試薬、またはそのような試薬と上記で詳細に説明した相補的クリック相手とのカップリング生成物の使用が関与する。
【0090】
例えば、本発明の検出方法は、例えば固体支持体の使用が関与する、いずれか公知の検出プロトコールによって行うことができる。例えば、検出対象の分析物を結合、例えばハイブリダイズさせることができる捕捉試薬が結合している固体支持体、例えばチップもしくはアレイまたはビーズなどの粒子状材料を提供することができる。固相結合した分析物は、分析物に結合するものを用い、次に結合した試薬を検出することで検出することができる。この方法は、農業および臨床分野での診断用途に、例えば遺伝子操作植物などの植物からのDNAおよび/またはmRNA、病原体もしくは植物病害虫などからのDNAのような分析物の検出に特に好適である。
【0091】
レポーター分子中のマーカー基の検出は、公知の方法に従って行うことができる。例えば、光学的方法および/または電気的方法によって、金属付着を定性的および/または定量的に測定することができる。公知の蛍光測定方法、例えばレーザーなどの好適な光源による励起と放出された蛍光の検出によって、蛍光マーカー基を定性的および/または定量的に測定することができる。
【0092】
好ましい実施形態では、本発明の方法および試薬キットが農業用途に使用される。例えば本発明は、ウィルス、細菌、真菌または昆虫などの植物、植物病原体または植物病害虫からの核酸の検出に好適である。さらに本発明は、遺伝的変動性、例えば植物もしくは植物部分、植物病原体または昆虫などの植物病害虫におけるSNPの検出に好適である。
【0093】
別の用途は、除草剤、殺菌剤または農薬の抵抗性、耐性または不耐性、例えば生物もしくは生物群における真菌、昆虫もしくは植物での抵抗性、耐性または不耐性の検出またはモニタリングである。本発明は、迅速な遺伝型決定、例えば真菌、昆虫もしくは植物の種もしくは系統の迅速な検出および/または鑑別にも好適である。さらに、系統についての遺伝子操作生物、例えば生物または真菌、昆虫もしくは植物の系統の検出および/または鑑別が可能である。
【0094】
さらに本発明は、例えばヒトもしくは獣医学での医学的、診断的および法医学的用途に、例えばヒト病原体または家畜もしくはペット動物の病原体などの病原体からの核酸の検出に好適である。
【0095】
別の好ましい用途には、遺伝的変動性、例えばヒトでのSNPの検出、または医薬抵抗性、耐性もしくは不耐性またはアレルギーの検出などがある。さらに本発明は、遺伝子型決定、特には障害、アレルギーおよび不耐性の素因またはリスク上昇に関連する突然変異を確認するためのヒトの遺伝子型決定に好適である。本発明は、遺伝子組換え生物または系統、生物または細菌もしくはウィルスの系統ならびに遺伝子組換え家畜などの検出に用いることもできる。本発明は、疾患、例えば遺伝病、アレルギー疾患、自己免疫疾患または感染症の迅速な診断に特に好適である。
【0096】
さらに本発明は、例えば研究目的の遺伝子の機能および/または発現の検出に好適である。
【0097】
さらに別の実施形態は、ブランド保護方法、例えばマーク可能な植物保護製品、医薬品、化粧品およびファインケミカル(例えばビタミンおよびアミノ酸)および飲料製品、燃料製品、例えばガソリンおよびディーゼル、消費家電製品のような価値ある製品などの製品にコード化された固有情報を検出する方法の使用である。さらに、これらおよび他の製品の包装にマークを施すことができる。その情報は、製品および/または製品の包装にすでに組み込まれている核酸または核酸類縁体によってコード化される。その情報は、製造者の識別、製造場所、製造日および/または販売業者に関するものであっても良い。本発明により、製品固有のデータの迅速な検出を行うことができる。製品の小分けしたものからサンプルを調製し、それを次に、サンプルにおける核酸コード情報の存在を検出可能な一つもしくはいくつかの配列特異的官能化ハイブリダイゼーションプローブと接触させることができる。
【0098】
本発明は、栄養物の分野にも好適である。例えば、飼料の分野では、動物用栄養物、例えばトウモロコシに、プロピオン酸などの非常に多量の防腐剤を補給する。本発明の方法を適用することにより、防腐剤の添加を減らすことができる。さらに、本発明の方法を用いるゲノム解析によって、個体が特定の栄養素を利用できる能力を予測することが可能となる(栄養ゲノム情報科学)。
【0099】
さらに別の好ましい実施形態は、エピジェネティクスの分野に言及するものである。この実施形態は特には、DNA、例えばシトシン塩基のメチル化に関してのゲノムDNAの解析に言及するものである。本実施形態では、DNAをシトシン特異的試薬、例えばヒドラジンおよび/またはヒドロキシルアミンで処理することができる。その処理によって、シトシン残基もしくはメチルシトシン残基の選択的反応が起こる。例えば、ヒドロキシルアミンで処理することで、シトシン残基の選択的修飾が生じる。好ましくは、前記試薬を化学量論量より少ない量で加えて、例えばシトシン残基の部分的修飾を行う。その後、例えば上記で示した少なくとも一つの修飾核酸構成要素、例えばdUおよび/またはdC塩基を用いるプライマー伸長反応によって、処理されたDNAを分析する。好ましくは、クリック修飾塩基、例えばアルキン修飾塩基を用いる。プライマー反応によって、修飾されたdCまたは5-メチル-dC塩基上での反応の中断によって生じる特徴的な配列決定ラダー(ladder)が得られる。
【0100】
不均一に触媒されるクリック反応の使用が関与する本発明の方法および試薬によって、いくつかの具体的な実施形態での利用が可能となる。1実施形態は、自動生体分子(例:DNA/RNA)合成のため、オリゴ合成装置などの合成装置での生体分子、例えばオリゴヌクレオチドまたはペプチドの直接標識を包含するものである。この実施形態では、クリック反応またはクリック反応の少なくとも一つの段階は、生体分子、例えばオリゴヌクレオチドもしくはペプチドが固相に共有結合的に結合している場合に行うことができる。適宜に、担体材料からの生体分子の開裂後に、異なるクリック相手を用いる別のクリック反応を行うことができる。別の実施形態は、イン・ビトロおよび/またはイン・ビボでの細胞内外の遺伝子標識を包含する。さらに別の実施形態は、核酸増幅方式での、例えばPCR方式での分子の標識を包含する。さらに、固体表面も同様に不均一系触媒を用いて触媒することができる。他の好ましい実施形態には、装置、例えば微小流系およびHPLC様用途などの不均一系触媒および適宜に上記のような固体担体材料が部分的または完全に充填されているピペットチップまたはスピンカラムでの生体分子の標識などがある。
【実施例】
【0101】
実施例1:クリック・チップ
クリック・チップは、適宜にシリカゲルおよび/またはC18および/またはC4および/またはイオン交換樹脂および/またはクリック反応成分のうちの1以上を保持することができる他の材料などのクロマトグラフィー材料の存在下に、固体多孔質支持体上、例えば好ましくはデッド・ボリュームがないように末端で固定された活性炭上で担持されたほぼ所定の体積(例:0.2〜0.6μLまたはそれ以上)のCu(I)などの不均一系触媒の床を有するピペットチップ(例えば、10μL、100μLまたは1000μL)である。クリック反応または別の共有結合形成を触媒または促進する他の不均一材料を類似の装置で用いることができる。触媒上またはクロマトグラフィー材料上で、クリック反応相手のうちの一方、例えば生体分子用標識を、吸着された形で提供することができる。
【0102】
クリック・チップピペットチップは、簡単で使用が容易である。そのチップは、好適な吸引器、例えば単一もしくは多チャンネルピペッター、標準的な22ゲージ平滑末端HPLC針または適合性の自動液体取り扱い/サンプル調製ステーション上に置くことができる。サンプル処理のためには、1回または数回にわたり、クリック反応性分子、例えばDNA-アルキンおよび標識-アジドを吸引し、支持体を通って分配する。クリック反応は、このプロセス中にチップ自体で起こる(図4)。新たに生成したクリック生成物、例えばDNA/標識結合体が最終的に放出され、最終的にクリック・チップを新鮮な媒体(すなわち水)で洗浄する。比較的小さい反応体積(例えば、<1μL)を必要とする用途の場合、比較的小さい容量の支持体(例えば、0.2μL)を含むマイクロビーズ形態を製造することができる。比較的大きいチップ(例えば、100μLまたは1000μL)を用いて、大量反応の準備を行うことが可能である。別の好ましい実施形態では、不均一系触媒をクロマトグラフィー材料、例えばC18またはC4またはイオン交換樹脂と直接組み合わせて、1段階反応/精製アッセイを行うようにする。
【0103】
実施例2:クリック・スピン
クリック・スピンは、クリック反応およびその後の分離/精製を行うための即時使用性の微量遠心適合性カラムである。それは、カラムおよびバイアルという二つの別個の部分からなる(図5)。
【0104】
クリック反応用の不均一系触媒、例えばCu(I)/活性炭触媒をカラム内に導入し、例えばサイズ排除または粒子濾過もしくはイオン交換用に、そこでフリット上に固定することができる。クリック反応は、例えば標準的振盪(例えばサーモミキサーで)によって、または遠心段階中に直接(急速に進行する反応の場合)、充填カラムで起こる。分離/精製段階は遠心によって行われ、固体支持体(例えば、触媒)はカラム上に保持され(フィルター上またはサイズ排除材料上)、そして生成物、例えば接合DNA/色素はバイアル中に溶出される。サイズ排除支持体を用いる場合、分離段階は、最終的に未反応の基質からの生成物の精製を含むことができる(図6)。別の好ましい実施形態では、不均一系触媒を、クロマトグラフィー材料、例えばC18もしくはC4またはイオン交換樹脂と直接組み合わせて、1段階の反応/精製アッセイを行うようにする。
【0105】
実施例3:固相固定化分子を用いるクリック化学
本発明のさらに別の実施形態では、クリック相手の一方を、不均一系触媒および/または別の固体材料、例えば実施例1および2に記載のクロマトグラフィー材料上に固定化することができる。
【0106】
図7には、固体担体、例えばDNAを固定化するクロマトグラフィー材料、例えば疎水性のC18もしくはC4樹脂またはイオン交換樹脂と触媒を組み合わせた実施形態が記載されている。
【0107】
不均一系触媒(例えばCu(I)活性炭)とクロマトグラフィー材料(例えばC18)の組み合わせによって、固体支持体上でのクリック反応が可能となる。この実施形態は図8に模式的に記載されている。
【0108】
さらに別の実施形態では、反応相手の一方、例えばアジド官能化レポーター分子(RN3)を、不均一系触媒(例えばC/Cu)に固定化してから、好適なカートリッジ、例えば上記のクリック・チップまたはクリック・スピンカートリッジに触媒を負荷する。これに関して、好適な溶媒中の適切な量の官能化された反応相手を触媒と接触させることができ、溶媒を留去することができる。そうして得られた含浸済みカートリッジは、生体分子、例えばDNAなどのアルキン官能化生体分子と反応する準備が整ったものとなる。
【0109】
例えば、レポーター分子は、FAM、Cy3、Atto、Eterneonなどの蛍光色素から、ビオチンなどの他の標識基から選択することができる。
【0110】
不均一系触媒を、別の固体材料、例えば上記のC18のようなクロマトグラフィー材料と組み合わせることができる。
【0111】
実施例4:不均一触媒系を用いるDNA標識のためのクリック反応プロトコール
アルキン基(例えばDNA)およびアジド修飾レポーター基(例えば色素)を含む分子を、好適な装置、例えば実施例1および2に記載のクリック・チップまたはクリック・スピンで、不均一系触媒、例えばCu(I)-C触媒と混合・接触させる。この製造段階の時間は1分以内である。その装置におけるクリック反応は、好ましくは2〜5分にわたって行うが、それより長い反応時間を検討しても良い。最後に、例えば1分間を要する可能性がある濾過によって、反応生成物の後処理を行うことができる。
【0112】
このプロトコールの模式的図を図9に示してある。
【0113】
実施例5:不均一触媒存在下でのクリック反応
5.1 Cu/C触媒の製造
Darco KB活性炭(15.0g、100メッシュ、25%H2O含有量)を、撹拌バーの入った300mL丸底フラスコに加えた。Cu(NO3)23H2O(Acros Organics、3.334g、13.80mmol)の脱イオンH2O(100mL)中溶液を活性炭に加え、追加の脱イオンH2O(125 mL)を加えてフラスコの側面を洗った。フラスコをアルゴンでパージし、30分間高撹拌した。次に、1時間にわたり、陽圧アルゴン流下に超音波浴にフラスコを入れ、次にアルゴンパージされた蒸留装置に取り付け、撹拌プレート付きの予熱された175〜180℃のサンドバスに入れた。蒸留が終了した時点で、フラスコ温度の上昇を開始し、210℃以下でさらに15分間保持した。冷却して室温として、トルエン(75mL)を加えてフラスコ側面を洗浄した。トルエン/H2O共沸物が蒸留されてしまうまでフラスコを再度熱サンドバスに入れた。蒸留が終了したら、2回目の共沸蒸留を繰り返した。冷却して室温として、得られた黒色固体をアルゴン下にトルエンで洗浄して(50mLで2回)、予め乾燥しておいた150mL粗フリット漏斗に入れた(真空下)。減圧下にフリット漏斗の上下を逆にし、フリットからCu/Cが回収フラスコ中に落下するまで5時間経過させた。次に、回収フラスコを減圧下に110〜115℃のサンドバスで18時間加熱して、触媒をさらに乾燥させた。含浸活性炭(約13g)を琥珀色バイアルに移し、保存した。触媒のICP-EAS分析によって、1.01mmol Cu/g触媒または6.4重量%Cuの添加が示唆された。
【0114】
そうして調製したCu/C触媒は、約12ヶ月の限られた有効期間を有し、それを不活性雰囲気下に密閉状態で保存すると>18ヶ月となった。
【0115】
エチレングリコール(EG)中のCu/Cの調製
Cu/C 120mgをEG 500μLに加えた。混合物を渦撹拌し、遠心した。
【0116】
ポリエチレングリコール(PEG)中Cu/Cの調製
Cu/C 120mgをPEG 500μLに加えた。混合物を渦撹拌し、遠心した。
【0117】
5.2 オリゴヌクレオチドの製造
基Z=C8dC(X)(Xは下記で定義されている)を含むオリゴヌクレオチドを、標準的な方法に従って製造した。
【0118】
オリゴ1:22量体
5′-CGCGTATCGCTATCGCTATGGZ-3′ (配列番号1)
オリゴ2:5量体
5′-ZCTAG-3′ (配列番号2)
オリゴ3:33量体
5′-ZAAAT[C][T]AGAGAATCCCAGAATGCGAAACTCAG-リン酸-3′ (配列番号3)。
【0119】
[C]および[T]は、修飾(LNA)ヌクレオチドを指す。
【0120】
5.3 回収および変換の定義
本明細書において「回収率」とは、沈澱段階後に得られたnmol単位でのオリゴヌクレオチドのパーセントと見なす。
【0121】
本明細書において「変換率」とは、反応で形成される生成物のMALDIパーセントと見なす。
【0122】
5.4 MALDI測定用のサンプル調製
反応後、サンプルを脱塩し、各サンプル0.4μLを、HPA-C基材(ヒドロキシ-ピコリン酸+15-Crown-5)0.4μLとともにMALDIターゲット上にスポット添加した。水およびアセトニトリルによる洗浄によりピペットチップZipTipc18:(Millipore)を用い、またはMF(商標名)膜フィルター0.025μmVSWP(Millipore)を用いて、サンプルを脱塩した。
【0123】
5.5 Cu/C触媒を用いる5ntオリゴヌクレオチド-PEG結合体の合成
オリゴ2のPEG-8-N3との反応
PEG-N3 1μLおよびCu/Cをオリゴ2 100μL(1.6nmol/μL→合計160nmol)に加え、熱振盪器に入れて、25℃で900rpiにて2時間経過させた。その後、サンプルを水100μLで希釈し、Acrodisc13mmシリンジフィルターで濾過した。フィルターを追加の水100μLで洗浄し、溶液を、HPLCおよびMALDI分析用にそのまま用いた。生成物をRP-HPLCによってさらに精製した。ナノフォトメーターを用いて濃度を得た。
【0124】
結果:回収率93.8%。
【0125】
配列:3′-GATCU-X(PEG)8NH2
量*:27nmol;MW:2005(1567+438)。
【0126】
*量は、溶液30μLの260nmで測定した濃度から計算し、それは溶液中のオリゴ濃度を指す(5.3参照)。
【0127】
U--Xは下記のものである。
【化3】

【0128】
5.6 Cu/C触媒を用いる33ntオリゴヌクレオチド-PEG結合体の合成
オリゴ3のPEG-8-N3との反応
修飾33量体オリゴ(オリゴ3)を、この反応に用いた。それは5′-アルキン(C8-アルキン-dU)、2種類のロックされたヌクレオシド(LNA塩基)および3′-リン酸を含む。
【0129】
PEG-N3 1μLおよびCu/Cをオリゴ3 5μL(1.56nmol/μL→合計7.8nmol)に加え、熱振盪器に入れて、25℃で900rpiにて2時間経過させた。その後、サンプルを水100μLで希釈し、Acrodisc13mmシリンジフィルターで濾過した。フィルターを追加の水100μLで洗浄し、溶液を、HPLCおよびMALDI分析用にそのまま用いた。結合体(R33-PEG8)をRP-HPLCによってさらに精製して、純粋な生成物176pmolを得た。ナノフォトメーターを用いて濃度を得た。
【0130】
結果:回収率80%。
【0131】
配列:3′-リン酸-GACTCAAAGCGTAAGACCCTAAGAGA[T][C]TAAAU-X(PEG)8NH2
量*:O6=176pmol;MW(g/mol):10825(10387+438)。
【0132】
*量は、260nmで測定した濃度から計算し、それは溶液中のオリゴ濃度を指す(5.3参照)。
【0133】
U--Xは下記のものである。
【化4】

【0134】
5.7 Cu/C触媒を用いる5ntオリゴヌクレオチド-ペプチド接合体の合成
ペプチド-N3 75μL(1.2mM→合計90nmol)およびCu/Cをオリゴ2 75μL(1.6nmol/μL→合計120nmol)に加え、25℃で900rpiにて2時間振盪した。その後、サンプルを水100μLで希釈し、Acrodisc13mmシリンジフィルターで濾過した。フィルターを追加の水100μLで洗浄し、得られた溶液を、MALDI、RP-HPLC分析および精製に用いた。Nanodropを用いて280 nmにおける濃度を測定した。
【0135】
結果:回収率97%。
【0136】
ペプチド-N3配列=XYGQLRNSRAYGQLRNSRA-OH
X=
【化5】

【0137】
配列:3′-GATCU--XYGQLRNSRAYGQLRNSRA-OH
量:124μg*(マイクログラム);32.6nmol;MW:3803。
【0138】
*量は、溶液35μLの280nmで測定した濃度から計算した(5.3参照)。
【0139】
U--Xは下記のものである。
【化6】

【0140】
5.8 オリゴヌクレオチドのビオチンとの接合
EG(5μL)中のビオチン-アジド(0.4μL、326g/mol、20当量)およびCu/Cを、オリゴ1 3.8μL(6807.5g/mol、5nmol/μL、1当量)に加えた。水(10μL)を溶媒として用いた。反応バイアルをサーモミキサー中60℃で1000rpiにて振盪した。
【0141】
6時間後、溶液をNaOAc(0.3M) 100μLで希釈し、H2O 100μLおよびDMSO/tBuOH(3:1) 100μLで洗浄しておいたNanosepスピンカラムで濾過した。濾過した溶液をNaOAc(0.3M) 100μLと次に冷EtOH/Et2O(5%) 1mLでさらに希釈して沈澱を行った。溶液を6000rpiで20分間遠心した。有機相を除去し、Et2O 1mLを加えた。6000rpiで20分間遠心後、Et2Oを除去し、沈澱を37℃で乾燥させ、水10μLに溶かした。
【0142】
結果:回収率44%;変換率20%。
【0143】
5.9 オリゴヌクレオチドのFAMとの接合
5.9.1 PTFE膜による濾過
EG(5μL)中のFAM(1μL、458g/mol、20当量)およびCu/Cをオリゴ1 3.8μL(6807.5g/mol、5nmol/μL、1当量)に加えた。水(20μL)およびDMSO/tBuOH(3:1) 5μLを溶媒として用いた。反応バイアルを、熱振盪器中40℃で1000rpiにて振盪した。
【0144】
3時間後、溶液をNaOAc(0.3M) 200μLで希釈し、NaOAc(0.3M)で洗浄(100μLで2回)しておいた0.2μmPTFE膜(VWR)で濾過した。濾過した溶液を再度、NaOAc(0.3M) 100μLで2回、次に冷EtOH/Et2O(5%) 1mLで洗浄して沈澱を行った。溶液を-20℃で終夜保存し、6000rpiで20分間遠心した。有機相を除去し、Et2O 1mLを加えた。6000rpiで20分間遠心後、Et2Oを除去し、沈澱を37℃で乾燥させ、水10μLに溶かした。
【0145】
結果:回収率65%;変換率40%。
【0146】
5.9.2 Nanosepスピンカラムを用いる濾過
EG(5μL)中のFAM(0.4μL、458g/mol、20当量)およびCu/Cを、オリゴ1(3.8μL、6807.5g/mol、5nmol/μL、1当量)に加えた。水(20μL)を溶媒として用いた。反応バイアルを熱振盪器にて60℃で1000rpiにて振盪した。
【0147】
6時間後、溶液をNaOAc(0.3M) 100μLで希釈し、H2O 100μLおよびDMSO/tBuOH(3:1) 100μLで洗浄しておいたNanosepスピンカラムで濾過した。濾過した溶液をNaOAc(0.3M) 100μLと次に冷EtOH/Et2O(5%) 1mLでさらに希釈して沈澱を行った。溶液を6000rpiで20分間遠心した。有機相を除去し、Et2O 1mLを加えた。6000rpiで20分間遠心後、Et2Oを除去し、沈澱を37℃で乾燥させ、水10μLに溶かした。
【0148】
結果:回収率60%;変換率70%。
【0149】
5.10 オリゴヌクレオチドのPEG-連結基との接合
5.10.1 NH2-PEG-8との反応およびPTFE膜を用いる濾過
EG(5μL)中のNH2-PEG-8(0.4μL、438g/mol、20当量)およびCu/Cをオリゴ1 3.8μL(6807.5g/mol、5nmol/μL、1当量)に加えた。水(10μL)およびDMSO/tBuOH(3:1) 5μLを溶媒として用いた。反応バイアルを、熱振盪器中40℃で1000rpiにて振盪した。
【0150】
3時間後、溶液をNaOAc(0.3M) 200μLで希釈し、NaOAc(0.3M)で洗浄(100μLで2回)しておいた0.2μmPTFE膜(VWR)で濾過した。濾液を、NaOAc(0.3M) 100μLで2回、次に冷EtOH/Et2O(5%) 1mLで洗浄して沈澱を行った。溶液を-20℃で終夜保存し、6000rpiで20分間遠心した。有機相を除去し、Et2O 1mLを加えた。6000rpiで20分間遠心後、Et2Oを除去し、沈澱を37℃で乾燥させ、水10μLに溶かした。
【0151】
結果:回収率8.8%;変換率100%。
【0152】
5.10.2 NH2-PEG-8との反応およびNanosepスピンカラムを用いる濾過
EG(5μL)中のNH2-PEG-8(0.4μL,438g/mol、20当量)およびCu/Cをオリゴ1(3.8μL、6807.5g/mol、5nmol/μL、1当量)に加えた。水(20μL)を溶媒として用いた。反応バイアルを、熱振盪器中60℃で1000rpiにて振盪した。
【0153】
6時間後、溶液をNaOAc(0.3M) 100μLで希釈し、H2O 100μLおよびDMSO/tBuOH(3:1) 100μLで洗浄しておいたNanosepスピンカラムで濾過した。フィルターをNaOAc(0.3M) 100μLと次に冷EtOH/Et2O(5%) 1mLで洗浄して沈澱させた。溶液を6000rpiで20分間遠心した。有機相を除去し、Et2O 1mLを加えた。6000rpiで20分間遠心後、Et2Oを除去し、沈澱を37℃で乾燥させ、水10μLに溶かした。
【0154】
結果:回収率20%;変換率100%。
【0155】
5.10.3 PEG-24との反応およびPTFE膜を用いる濾過
EG(5μL)中のPEG-24(10μL、1114g/mol、20当量)およびCu/Cをオリゴ1(3.8μL、6807.5g/mol、5nmol/μL、1当量)に加えた。水(10μL)およびDMSO/tBuOH(3:1) 5μL(5μL)を溶媒として用いた。反応バイアルを、熱振盪器中1000rpiで振盪した。
【0156】
3時間後、溶液をNaOAc(0.3M) 200μLで希釈し、NaOAc(0.3M)で洗浄(100μLで2回)しておいた0.2μmPTFE膜(VWR)で濾過した。濾液を、NaOAc(0.3M) 100μLで2回、次に冷EtOH/Et2O(5%) 1mLで洗浄して沈澱を行った。溶液を-20℃で終夜保存し、6000rpiで20分間遠心した。有機相を除去し、Et2O 1mLを加えた。6000rpiで20分間遠心後、Et2Oを除去し、沈澱を37℃で乾燥させ、水10μLに溶かした。
【0157】
結果:回収率16%;変換率80%。
【0158】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリック反応によって第1の分子を第2の分子にカップリングさせる方法であって、前記第1の分子がクリック反応性不飽和基である第1のクリック官能基を含み、前記第2の分子がクリック反応によって前記第1のクリック官能基と反応することができるクリック反応性1,3-双極性基である第2の相補的クリック官能基を含み、前記第1の分子と第2の分子の間のクリック反応が起こる条件下に、不均一系触媒の存在下で、前記第1の分子と前記第2の分子を接触させる段階を有し、前記第1および第2の分子のうちの一方が固体担体上に固定化されている方法。
【請求項2】
前記第1の分子および第2の分子のうちの一方が生体分子である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の分子および第2の分子のうちの一方が前記不均一系触媒および/または別の固体担体材料に固定化されている請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の分子および第2の分子のうちの一方で予め含浸された乾燥固体担体が提供され、該担体が他方の分子を含む液体媒体と接触している請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の分子がヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸、アミノ酸、ペプチド、糖類および脂質から、特には核酸から選択される生体分子である請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の分子が、
(i)レポーター分子、特には色素、
(ii)アフィニティ分子、
(iii)固相、
(iv)生体分子、例えばタンパク質もしくは脂質、
(v)脂肪族もしくは脂環式基、芳香族もしくはヘテロ芳香族基、アルケン基、アルキン基、および/またはポリマー基、例えばポリエチレングリコール基を含むことができる連結基またはスペーサー、
(vi)医薬の化合物もしくは基、光活性基、および/またはレドックス活性基、および/または認識部位
である請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記クリック官能性不飽和基がアルキン基であり、前記クリック官能性1,3-双極性基がアジド基である請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記不均一系触媒が不均一Cu触媒、特にはCu-C触媒である請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記クリック反応を、前記不均一系と相互作用して前記クリック反応の速度を上昇させることができる分子の存在下に、特にはアミン存在下に、好ましくは10%以下(体積比)、最も好ましくは1%以下(体積比)、さらに最も好ましくは0.1%以下(体積比)の量で実施し、前記アミンが好ましくは芳香族、ヘテロ芳香族、脂肪族、脂環式、不飽和もしくは完全飽和の骨格を有することができる1級、2級または3級アミンであり、前記アミンがより好ましくはトリエチルアミンである請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
(i)反応温度が約4〜約80℃、特には約10〜約40℃であり、および/または(ii)反応時間が約1分〜約8時間、例えば約1分〜約10分、特には約2分〜約5分、または約10分〜8時間であり、および/または反応体積が約0.1〜約1000μL以上である請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記反応をピペットチップ、スピンカラムまたは注射器で行う請求項1〜10のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
分離/精製段階をさらに有する請求項1〜11のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
クリック反応用の不均一系触媒および適宜に別の固体担体材料を含む少なくとも1個の反応チャンバーを有する装置であって、特には請求項1〜12のうちのいずれか1項に記載の方法で使用するために、前記クリック反応の相手が前記不均一系触媒および/または前記別の固体担体材料に固定化されており、前記装置が好ましくはピペットチップまたはスピンカラムである装置。
【請求項14】
前記クリック反応用の不均一系触媒および該触媒に固定化された前記クリック反応用の前記相手のうちの一方、好ましくはクリック反応性1,3-双極性基を含む相手を含む、少なくとも反応チャンバーを有する装置。
【請求項15】
請求項13または14に記載の装置ならびに第1の分子および第2の分子を含むクリック反応用試薬キットであって、前記第1の分子がクリック反応性不飽和基である第1のクリック官能基を含み、前記第2の分子がクリック反応によって前記第1のクリック官能基と反応することができるクリック反応性1,3-双極性基である第2の相補的クリック官能基を含むキット。
【請求項16】
(i)少なくとも1個の反応チャンバーを有する装置を提供する段階[前記反応チャンバーは、クリック反応を行うための不均一系触媒および適宜に別の固体担体材料を含み、前記クリック反応の相手は前記不均一系触媒上および/または前記別の固体担体材料上に固定化されている。]、
(ii)前記反応チャンバー中で、第1のクリック相手である第1の分子を第2のクリック相手である第2の分子と、前記第1の分子と前記第2の分子の間のクリック反応が起こる条件下に不均一系触媒の存在下で接触させる段階[前記第2の分子は好ましくは、レポーター基またはレポーター前駆体基を含む。]、
(iii)必要に応じて、レポーター前駆体基をレポーター基に変換する段階、
(iv)前記分析物の検出が可能となる条件下で、前記統合された装置内にて、前記第1の分子と前記第2の分子のカップリング生成物をサンプルと接触させる段階、および
(v)好ましくは前記レポーター基を介して、前記分析物を定性的および/または定量的に検出する段階
を有する、サンプル中の分析物の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−523224(P2012−523224A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504020(P2012−504020)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054645
【国際公開番号】WO2010/115957
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(509122120)ベースクリック ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】