説明

不正開封防止包装体およびその製造方法

【課題】本発明は、封かんと埃防止の機能を備えるだけでなく、更に偽造防止機能をも具備し、しかも、シュリンク包装すると同時に、被包装物に包装材の一部が転写され、包装材の再利用を防止するとともに、開封したことがわかる不正開封防止包装体を提供するものである。
【解決手段】透明な熱収縮性フィルムを基材とする包装材で被包装物の全体または一部を包んでシュリンク包装してなる包装体であって、前記熱収縮性フィルムの、前記被包装物に接する側の面の一部に、少なくとも剥離層、機能層、接着層が順に積層されており、該接着層は前記被包装物の表面に接着していることを特徴とする不正開封防止包装体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な熱収縮性フィルムを基材とする包装材で、被包装物の全体または一部を包んで、シュリンクしてなる包装体に関わり、特には、一旦開封すると、包装材を再使用したり、再包装することが不可能となる不正開封ならびに包装材の再利用を防止する包装体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シュリンク包装に適するフィルムとしては、種々のものが開発され、種々の商品のシュリンク包装に適用されている。現在、シュリンク包装は、主に、異形物の包装が容易であること、収縮の性質を利用して商品の結束ができること、保証包装の機能が期待できること、等の利点を有し、多方面に利用されている。
【0003】
しかしながら時には、シュリンク包装材を開封した後に、内容物に不正な行為を施し、再封止するいたずらや、物品を偽物に交換して再包装する偽造行為なども行われている。
【0004】
偽造を防止する手段として、偽造することが困難なステッカーや箔を本物であることの証明として物品に取り付けることにより、本物と偽物を区別できるようにする方法がある。代表的なものとして、近年多用されているレリーフ型ホログラム、回折格子、体積型ホログラムなどのホログラムがある。この中で、例えばレリーフ型ホログラムは、画像を微細な凹凸状に形成したものであり、これにより光の回折と干渉により、見る角度(すなわち、ホログラムを支持している角度)に応じて、固有のカラーシフト(反射光の色変化)を生じ、観察する位置により見える色が異なるものであるため、その状態の有無を確認することにより、真正物であるか否かを容易に判定することができる。一般的には、このようなものをステッカーや箔に加工し、パッケージに貼付して、偽造防止手段としている。
【0005】
これらのステッカーや箔を、商品をシュリンク包装した包装体に後から貼付するのではなく、あらかじめシュリンク包装材にステッカーや転写箔を用いてホログラム層を設けることにより、包装材を商品にシュリンク包装するのと同時に、真正性を証明する包装体が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-77174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された情報記録媒体の包装体は、ホログラムを添付することにより商品の真正性を証明したとしても、シュリンクフィルムを剥がし、内容物を改竄または交換した後、再度包装することが不可能とはいえず、不正開封ならびに改竄防止効果において、十分ではないという問題点がある。
【0008】
本発明は以上の問題点に着目してなされたもので、封かんと埃防止の機能を備えるだけでなく、更に偽造防止機能をも具備し、しかも、シュリンク包装すると同時に、被包装物に包装材の一部が転写され、包装材の再利用を防止するとともに、開封したことがわかる不正開封防止包装体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、透明な熱収縮性フィルムを基材とする包装材で被包装物の全体または一部を包んでシュリンク包装してなる包装体であって、前記熱収縮性フィルムの、前記被包装物に接する側の面の一部に、少なくとも剥離層、機能層、接着層が順に積層されており、該接着層は前記被包装物の表面に接着していることを特徴とする不正開封防止包装体である。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記機能層が金属薄膜層または金属化合物薄膜層を含むことを特徴とする請求項1に記載の不正開封防止包装体である。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、前記機能層がさらに回折構造層を含むことを特徴とする請求項2に記載の不正開封防止包装体である。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、前記機能層が回折構造層を含み、被包装物は、表面に反射層を有することを特徴とする請求項1に記載の不正開封防止包装体である。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、前記機能層が印刷層を含むことを特徴とする請求項1に記載の不正開封防止包装体である。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、前記印刷層が角度依存性を有する光干渉顔料を含むことを特徴とする請求項5に記載の不正開封防止包装体である。
【0015】
また、請求項7に記載の発明は、前記接着層が部分的にあるいはパターン状に設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の不正開封防止包装体である。
【0016】
また、請求項8に記載の発明は、被包装物の凸部または角部近傍に接する部分に前記接着層が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の不正開封防止包装体である。
【0017】
また、請求項9に記載の発明は、透明な熱収縮性フィルムを基材とし、少なくとも剥離層、機能層、接着層が順に積層された包装材で被包装物の全体または一部を包んで加熱し、シュリンク包装すると同時に前記接着層を被包装物の表面に接着させることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の不正開封防止包装体の製造方法である。
【0018】
また、請求項10に記載の発明は、シュリンク包装した後に、加熱した加圧手段によって前記接着層を押圧することを特徴とする請求項9に記載の不正開封防止包装体の製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る不正開封防止包装体は、透明な熱収縮性フィルムを基材とする包装材で被包装物の全体または一部を包んでシュリンク包装してなる包装体であって、前記熱収縮性フィルムの一方の面に、少なくとも剥離層、機能層、接着層が順に積層されているものであるから、シュリンク包装する時の熱により、接着層を被包装物の表面に接着させることができる。このため包装体を開封すると、剥離層、機能層、接着層は被包装物の表面に転写され、開封したことが一目瞭然に分かる。このため本発明に係る包装体は、一旦開封した後は、再封止することも、包装材を再利用することもできないものであり、高い不正開封防止効果ならびに偽造防止効果を有するものである。
【0020】
前記機能層が金属薄膜層あるいは金属化合物薄膜層や、さらに回折構造層との組み合わせ、あるいは印刷層や、角度依存性を有する光干渉顔料を含む印刷層を含むものである場合には、各機能層の特性に応じて、独特の顕著な外観を発揮することができるため、包装
材を偽造することが困難であり、また開封したことが一目で判然とするようにすることが可能である。
【0021】
また接着層を部分的にあるいはパターン状に設けた場合には、機能層が転写される部分を限定したり、パターン状に転写することが可能であるから、被包装物に応じて、開封後の被包装物の外観を自在に設計することができる。
【0022】
被包装物の凸部または角部近傍に接する部分に前記接着層が設けられている場合には、シュリンク包装時に接着剤層に圧力がかかりやすく、転写が安定して行われる。
【0023】
またシュリンク包装した後に、加熱した加圧手段によって前記接着層を押圧することにより、被包装物表面への機能層の転写をより確実なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る包装体の一実施態様を示した模式図である。
【図2】図1の包装体の包装材を開封し、除去した状態を示した模式図である。
【図3】本発明に係る包装体に用いる包装材の断面模式図である。
【図4】本発明に係る包装体に用いる包装材の一実施態様を示した断面模式図である。
【図5】本発明に係る包装体に用いる包装材の他の実施態様を示した断面模式図である。
【図6】本発明に係る包装体に用いる包装材の他の実施態様を示した断面模式図である。
【図7】本発明に係る包装体に用いる包装材の他の実施態様を示した断面模式図である。
【図8】本発明に係る包装体の他の実施態様を示した断面模式図である。
【図9】本発明に係る包装体の他の実施態様を示した模式図である。
【図10】本発明に係る包装体の製造方法の一実施態様を示した断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に従い本発明に係る不正開封防止包装体について詳しく説明する。
図1は、本発明に係る包装体の一実施態様を示した模式図である。また図2は、図1の包装体の包装材を開封し、除去した状態を示した模式図である。
本発明に係る不正開封防止包装体1は、透明な熱収縮性フィルム11を基材とする包装材3で被包装物2の全体または一部を包んでシュリンク包装してなる包装体であって、熱収縮性フィルム11の、被包装物2に接する側の面の一部に、少なくとも剥離層12、機能層10、接着層15が順に積層されており、接着層15は被包装物2の表面に接着していることを特徴とする。
【0026】
剥離層12、機能層10、接着層15は、熱収縮性フィルム11の被包装物2に接する面、すなわち包装体1の内側の面に設けられており、シュリンク包装時の熱によって熱収縮性フィルム11が収縮して被包装物2に密着する時に、被包装物2に転写する。
【0027】
包装材3は、被包装物2の表面側と裏面側に1枚づつ繰り出して周囲を重ね合わせ、シ
ール部4を熱シールして包み、この包装体1を加熱したシュリンクトンネルに通過させてシュリンク包装する。
【0028】
剥離層12、機能層10、接着層15が、熱収縮性フィルム11の内側全面に設けられていると、周囲をシールしても剥離してしまうので、少なくともシール部4には、これらの層を設けることはできないが、シール部4以外の部分であれば、どこにあっても良い。
【0029】
図3は、本発明に係る包装体に用いる包装材3の断面模式図である。透明な熱収縮性フィルム11の片面に剥離層12、機能層10、接着層15が順に設けられている。これらの層は、グラビア印刷法等の印刷法によって部分的に設けられる。これらの層は、図3に示したように、順に少しずつ面積が小さくなるように設けるのが、一般的であるが、少なくとも接着層15より剥離層12の方が大きくなるように設けることが必要である。
【0030】
熱収縮性フィルム11は、加熱によって収縮するフィルムであり、熱収縮性フィルムとして公知のフィルムが使用できる。例としては、ポリエチレン樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、放射線架橋ポリエチレン樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル樹脂フィルム、ポリ塩化ビニリデン樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂フィルム、アイオノマー樹脂フィルム等の2軸延伸した熱可塑性樹脂フィルムを使用することができる。
【0031】
熱収縮性フィルム11の厚さとしては、使用目的、対象商品の種類、収縮包装の方法等によって、異なるが、5〜400μm位が良く、好ましくは10〜200μm位が望ましい。次に、フィルムの収縮率としては、縦方向に3〜15%、横方向に4〜20%程度の収縮率を有する2軸延伸したフィルムを使用することができる。
【0032】
また、熱収縮性フィルム11は、シュリンクトンネルを通す前に、周囲を熱シールする必要があるので、ヒートシール性を有していることが必要であり、ヒートシール温度範囲が広く、かつ、ヒートシール強度が強いものが望ましい。
【0033】
剥離層12としては、一般的には透明な樹脂ワニスが用いられる。剥離層12の材質は、熱収縮性フィルム11の材質に応じて、選択される。例えば熱収縮性樹脂フィルム11がPET樹脂フィルムであれば、アクリル樹脂系の剥離ニスを用いることができる。熱収縮性樹脂フィルム11がポリ塩化ビニル樹脂フィルムであれば、ポリビニルブチラール樹脂系の剥離ニスを用いることができる。
【0034】
熱収縮性樹脂フィルム11がPP樹脂フィルムである場合の、好ましい剥離層12としては、ポリメチルメタクリレート樹脂と他の熱可塑性樹脂たとえば塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体もしくはニトロセルロース樹脂との混合物、またはポリメチルメタクリレート樹脂とポリエチレンワックスとの混合物などが挙げられる。また、酢酸セルロース樹脂と熱硬化性樹脂たとえばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、熱硬化型アクリル樹脂またはメラミン樹脂との混合物を塗工した後、熱により硬化させたものも好ましい例として挙げられる。剥離が困難である場合には、熱収縮性フィルムと剥離層の間に、別途従来既知の離形層を設けても良く、剥離が軽すぎる場合には同様に従来既知の易接着処理を行って剥離を調整しても良い。
【0035】
機能層10は、本発明に係る包装体の重要な機能のひとつである偽造防止効果を担う層であり、一見して偽造が困難であると印象付けるばかりでなく、実際上も偽造が困難であることが望ましいが、どのような構成の機能層とするかは、目的とする被包装物である商品の要求レベルに応じて選択される。
【0036】
図4は、本発明に係る包装体に用いる包装材の一実施態様を示した断面模式図であり、機能層として、金属薄膜層14を用いた例を示したものである。金属薄膜層14は、アルミニウムなどの金属や金属化合物を真空蒸着法もしくはスパッタリング法によって50〜100nmの厚さに形成する。蒸着に先立って、蒸着層の密着性を向上させるために、蒸着アンカー層を設けても良い。
【0037】
図5は、本発明に係る包装体に用いる包装材の他の実施態様を示した断面模式図であり、機能層として回折構造層13と金属薄膜層14を用いた例を示したものである。回折構造層13は、回折格子を形成する微小な凹凸がエンボスされてなる層であり、各種のホログラムエンボスはこれに含まれる。目視ではホログラム画像を見ることができ、観察する位置、角度によって画像あるいは色が変化して観察される。金属薄膜層14は、回折構造層13の画像をより見やすくするために設けるもので、真空蒸着法もしくはスパッタリング法にて形成する。回折構造層13と金属薄膜層14の順序は、逆でもよい。機能層として回折構造層13と金属薄膜層14を併用した場合には、一般に包装材3を偽造することが極めて困難なものとなる。
【0038】
図6は、本発明に係る包装体に用いる包装材の他の実施態様を示した断面模式図であり、機能層として回折構造層13のみを用いた例である。被包装物の表面が、金属面や金属蒸着面などのように、光を反射する反射層を有する場合には、包装材の金属薄膜層を省略することができる場合もある。この場合の包装材の層構成としては、熱収縮性フィルム11/剥離層12/回折構造層13/接着層15となる。
【0039】
図7は、本発明に係る包装体に用いる包装材の他の実施態様を示した断面模式図であり、機能層として印刷層16を用いた例を示したものである。印刷層16としては、通常のグラビア印刷法等による印刷層でも十分機能を発揮する場合もある。例えば高度な製版技術を用いて高精細なパターンを印刷することで、偽造防止効果は飛躍的に向上する。
【0040】
印刷層16に用いるインキとして、角度依存性を有する光干渉顔料を含むインキを用いることによって、偽造防止効果はさらに向上する。印刷層16を形成する光干渉顔料を含むインキは、目視角度を変化させることによりカラーシフトの性質の高い特徴を有する。光干渉顔料はその被覆された酸化物等の膜厚により特定の波長を透過させ、それ以外の波長を反射させる性質を持っている。光干渉顔料の例として、天然雲母等の表面を酸化チタン及び、または酸化鉄を主成分とする金属酸化物で被覆してなる、平均の厚みが0.1〜5μmであり、平均粒子径が2〜300μmの顔料が挙げられる。前記金属酸化物の被覆率によって、金色、銀色、或いはメタリック色の金属光沢色を呈したり、カラーシフトを有したりする効果を得る。ここで、前記平均粒子径は、レーザー回折法平均粒子径を示し、体積基準のメジアン径が累積分布の50%に相当する粒子径である。こうしてできた光干渉顔料をインキメジウムと混合し、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等の公知の印刷法にて印刷し、形成することができる。
【0041】
印刷層16に用いるインキとしては、上記の他、特定の波長の光によって発色する顔料や、紫外線によって発光する蛍光顔料なども使用することができる。
【0042】
機能層としては、以上説明したそれぞれの層を併用または組み合わせることによって、さらに複雑な目視効果を発揮させることができる。このようにすることによって、偽造防止効果はさらに向上する。
【0043】
次に接着層について説明する。接着層15は、一般的な接着材料を用いることができる。このような接着材料としては、例えば、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系ポリアミド、並びにアクリル系、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコーン系及びポリイソブチル系等の接着剤を上げることができる。これら接着材料には、アルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリルニトリル、スチレン、及びビニルモノマー等の凝集成分、不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有モノマー、およびアクリルニトリル等に代表される改質成分、重合開始剤、可塑剤、硬化剤、硬化促進剤、及び酸化防止剤等の添加剤を必要に応じて添加することができる。この接着層14は、例えば、グラビア印刷法等の既知の印刷法により形成することができる。
【0044】
接着層15は、図3〜7に模式的に示したように、部分的にブロック状に設けることもできるし、図2の例のように、パターン状に設けることもできる。図2の例では、接着層15を文字のパターン状に印刷している。
【0045】
図8は、本発明に係る包装体の他の実施態様を示した断面模式図である。
この実施態様においては、包装体1の表面側の包装材として、熱収縮性フィルム11の被包装物2に接する側の面の一部に、剥離層12、回折構造層13、金属薄膜層14が設けられ、さらに接着層15がパターン状に設けられている。包装体1の裏面側の包装材としては、単体の熱収縮性フィルム11が用いられている。表面側の包装材と裏面側の包装材とは、周囲を熱シールによってシールされ、シール部4を形成している。包装体1の包装材を開封して除去すると、接着層15の存在している部分のみが被包装物2の表面に接着しており、接着層15の存在する部分の金属薄膜層14、回折構造層13、剥離層12のみが被包装物2の表面に転写する。
【0046】
図9は、本発明に係る包装体の他の実施態様を示した模式図である。図9は、包装体から包装材が開封除去された状態を示したものである。この実施態様においては、被包装物2の角部近傍に接する部分に接着層15が設けられていることを特徴とする。この例のように、接着層15が被包装物2の凸部または、角部近傍に接する部分に設けられていると、シュリンク包装時の圧力が掛かりやすく、機能層10の転写性が安定する。
【0047】
本発明に係る不正開封防止包装体の製造方法について説明する。まず、被包装物2を包装材3で包み、ヒートシーラーで包装材3の周囲をシールし、これをシュリンクトンネルに通すと、包装材3が収縮して、被包装物2の形状に沿って、密着してシュリンク包装することができ、トンネルに入ったときの熱により、包装材3が収縮して被包装物2と密着し、接着層が被包装物2の表面に接着する。包装材3を開封し、取り除くとき、接着層15のある部分が、剥離層12から剥がれ、機能層10が被包装物2側に転写される。包装材3を引き剥がし、開封すると一部分が被包装物2側に転写されるため、包装材3にも被包装物2にも機能層10が残り、開封したことがわかる。
【0048】
図10は、本発明に係る包装体の製造方法の一実施態様を示した断面説明図である。この製造方法においては、被包装物2をシュリンク包装後に、加熱した加圧手段によって接着層15を押圧することを特徴とする。図9に示した実施態様においては、加熱した加圧手段は、熱ロール17であるが、加熱したシリコーンゴムパッドなどでも良い。このように、加熱した加圧手段によって接着層の部分を補助的に押圧することによって、機能層10の転移をより確実なものとすることができる。なお加熱、加圧は、被包装物が変形しないような範囲で行うべきことは、当然である。
以下、実施例に基づいて、本発明に係る不正開封防止包装体について、より具体的に説明する。
【実施例1】
【0049】
厚さ25μmで、150℃における縦方向の延伸率4%、縦方向の延伸率6%のポリプロピレン樹脂フィルムの上に、下記組成の剥離層をグラビア印刷法により2μmの厚みに
なるように印刷し、真空蒸着法により硫化亜鉛を蒸着した後、回折構造層として下記の組成からなるインキを塗布し、次いで、ロールエンボス法により回折構造パターンを形成した後、接着層をグラビア印刷法により、パターン状に印刷し、包装材を得た。
以下に各インキ成分の配合比(固形分wt%)を示す。
[剥離層のインキ組成]
アクリル樹脂(Tg:105℃)・・・・・・・・・・98.7wt%
ポリエチレンパウダー・・・・・・・・・・・・・・・・1.3wt%
[回折構造層のインキ組成]
ウレタン樹脂・・・・・・・・・・・・・・・・・・100.0wt%
[接着層のインキ組成]
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂・・・・・・・・・・7.2wt%
アクリル樹脂・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34.4wt%
ポリエステル樹脂・・・・・・・・・・・・・・・・・・3.9wt%
シリカ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54.5wt%
【0050】
上記で得た包装材で被包装物を包み、この3方をシールした後、180℃のシュリンクトンネル内を通して、シュリンク包装した。上記で製造したシュリンク包装材で包んだ製品は、印刷層を設けることにより、装飾効果を与えるとともに、偽造防止効果を付加することができた。さらに、この不正開封防止包装体を開封すると、接着層のある部分のインキ層が被包装物に転写され、開封した痕跡が被包装物に残るとともに、包装材の方も印刷層が一部取り去られた痕跡が残り、再利用不可能な状態になった。
【実施例2】
【0051】
厚さ25μmで、150℃における縦方向の延伸率4%、縦方向の延伸率6%のポリプロピレン樹脂フィルムの上に、下記組成の剥離層、印刷層、接着層をグラビア印刷法により、パターン状に印刷し、包装材を得た。以下に各インキ成分の配合比(固形分wt%)を示す。
[剥離層のインキ組成]
アクリル樹脂(Tg:105℃)・・・・・・・・・・98.7wt%
ポリエチレンパウダー・・・・・・・・・・・・・・・・1.3wt%
[印刷層のインキ組成]
ColorstreamT10−01(メルク社製)・・・・・20部
ファインスターメジウム(東洋インキ製造社製)・・・・・・・80部
[接着層のインキ組成]
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂・・・・・・・・・・・7.2wt%
アクリル樹脂・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34.4wt%
ポリエステル樹脂・・・・・・・・・・・・・・・・・・3.9wt%
シリカ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54.5wt%
【0052】
上記で得た包装材で被包装物を包み、この3方をシールした後、180℃のシュリンクトンネル内を通して、シュリンク包装した。上記で製造したシュリンク包装材で包んだ製品は、印刷層を設けることにより、装飾効果を与えるとともに、偽造防止効果を付加することができた。さらに、この不正開封防止包装体を開封すると、接着層のある部分のインキ層が被包装物に転写され、開封した痕跡が被包装物に残るとともに、包装材の方も印刷層の一部が取り去られた痕跡が残るため、再利用不可能な状態になった。
【符号の説明】
【0053】
1・・・不正開封防止包装体
2・・・被包装物
3・・・包装材
4・・・シール部
10・・・機能層
11・・・熱収縮性フィルム
12・・・剥離層
13・・・回折構造層
14・・・金属薄膜層
15・・・接着層
16・・・印刷層
17・・・熱ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な熱収縮性フィルムを基材とする包装材で被包装物の全体または一部を包んでシュリンク包装してなる包装体であって、前記熱収縮性フィルムの、前記被包装物に接する側の面の一部に、少なくとも剥離層、機能層、接着層が順に積層されており、該接着層は前記被包装物の表面に接着していることを特徴とする不正開封防止包装体。
【請求項2】
前記機能層は、金属薄膜層または金属化合物薄膜層を含むことを特徴とする請求項1に記載の不正開封防止包装体。
【請求項3】
前記機能層は、さらに回折構造層を含むことを特徴とする請求項2に記載の不正開封防止包装体。
【請求項4】
前記機能層は、回折構造層を含み、被包装物は、表面に反射層を有することを特徴とする請求項1に記載の不正開封防止包装体。
【請求項5】
前記機能層は、印刷層を含むことを特徴とする請求項1に記載の不正開封防止包装体。
【請求項6】
前記印刷層は、角度依存性を有する光干渉顔料を含むことを特徴とする請求項5に記載の不正開封防止包装体。
【請求項7】
前記接着層は、部分的にあるいはパターン状に設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の不正開封防止包装体。
【請求項8】
被包装物の凸部または角部近傍に接する部分に前記接着層が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の不正開封防止包装体。
【請求項9】
透明な熱収縮性フィルムを基材とし、少なくとも剥離層、機能層、接着層が順に積層された包装材で被包装物の全体または一部を包んで加熱し、シュリンク包装すると同時に前記接着層を被包装物の表面に接着させることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の不正開封防止包装体の製造方法。
【請求項10】
シュリンク包装した後に、加熱した加圧手段によって前記接着層を押圧することを特徴とする請求項9に記載の不正開封防止包装体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−25939(P2011−25939A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171134(P2009−171134)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】