説明

不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の製造方法

本発明は、不稔性が誘導された遺伝子組み換え野芝の製造方法を開示する。具体的に、本発明は、(a)遺伝子組み換え芝の花に物理的突然変異原を処理する段階と、(b)突然変異原の処理された遺伝子組み換え芝を栽培してその種子を採種する段階と、(c)その種子を栽培して不稔性の誘導された遺伝子組み換え芝を選別する段階とを含んでなる、不燃性が誘導された遺伝子組み換え野芝の製造方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球の温暖化、農地の荒廃化、急速な産業化などにより、全世界的に農耕地の面積が減少しつつあり、化学肥料や化学農薬などの使用が環境保存の必要性のため制約されるので、食糧生産は鈍化しているが、全世界の人口はこれを上回って増加している。
【0003】
このような時代現象により人類食糧問題の解決が依然として要求されているが、その代案として認識されているものが、生命工学技術の発達に励まされて開発された遺伝子組み換え作物(GMO)である。
【0004】
遺伝子組み換え作物とは、遺伝子組み換えなどの生命工学技術を用いた人為的な遺伝子操作によって人間に有用な特性を持たせた作物として定義できる。
【0005】
1994年にカルジーン社の日持ちの良いトマトが開発されて以来、モンサント社の除草剤抵抗性ダイズ、ノバティス社の害虫抵抗性トウモロコシなどが開発されながら、遺伝子組み換え作物の商業化が本格化し始め、害虫抵抗性稲(Tu et al., 2000)、ビタミンAが強化された稲(Ye et al., 2000)、鉄分含量が強化された稲(Vasconcelos et al., 2003)などが商業化準備段階にある。
【0006】
最近まで開発された遺伝子組み換え作物は、その種類が大豆、トウモロコシ、小麦、トマト、ジャガイモ、綿花、稲などを含んで100余種に達し(Mohan Babu et al., 2003)、その栽培面積も1996年に170万ha、2003年には6,770万haに達しているという報告がある(James, 2004)。
【0007】
遺伝子組み換え作物は、除草剤抵抗性、病虫害抵抗性、および品質向上などヒトに有用性を与える目的で開発されるが、組み換えられた遺伝子の移動によるヒトおよび環境に対する危害性が常に論難になっている。
【0008】
遺伝子組み換え作物の遺伝子移動は、遺伝子組み換え作物自体およびその種子による遺伝子移動と、花粉飛散による遺伝子移動に分けられる。
【0009】
現在まで知られている大部分の遺伝子移動は花粉飛散によるものであり、花粉飛散による遺伝子移動は同種および近縁種の形質を変化させて環境生態系を撹乱・破壊させる危険性を持っている(Karevar et al., 1994)。
【0010】
除草剤抵抗性キャノーラ(Brassica napus)の場合は、3km離れているところで花粉飛散による遺伝子移動が観察されたという報告があり(Rieger et al., 2002)、除草剤抵抗性ベントグラス(Creeping bentgrass)の場合は、21km離れているところでも遺伝子移動が観察されたという報告がある(Watrud et al., 2004)。
【0011】
本発明は、遺伝子組み換え芝の花粉飛散による遺伝子移動を防止するために完成したものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的または具体的な様態などは、以下に提示されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、遺伝子組み換え芝において花粉飛散による遺伝子移動を遮断することが可能な技術を開示する。
【0015】
本発明者は、下記の実施例から確認されるように、遺伝子組み換え芝としてバスタ除草剤抵抗性野芝を使用し、その野芝の開花時期にγ線を照射した後、種子を採種し、その種子を発芽させて成熟な植物体に成長させたとき、γ線処理区において4%(223個体のうち9個体)の比率で不稔性が誘導されることを確認することができた。
【0016】
本発明は、このような実験結果に基づいて提供されるものである。
【0017】
本発明の不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の製造方法は、(a)遺伝子組み換え芝の花に物理的突然変異原を処理する段階と、(b)物理的突然変異原が処理された遺伝子組み換え芝を栽培し、その種子を採種する段階と、(c)その種子を栽培し、不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝を選別する段階とを含んでなる。
【0018】
本明細書において、前記「芝」は、パスパルム属グラス(Paspalum sp.)、アグロスチス属グラス(Agrostis sp.)、シノドン属グラス(Cynodon sp.)、フェスク属グラス(Festuca sp.)、ポア属グラス(Poa sp.)、ロリウム属グラス(Lolium sp.)、ステノタフルム属グラス(Stenotaphrum sp.)、およびゾイシア属グラス(Zoysia spp.)を意味し、好ましくは、バイアグラス(Bahia Grass, Paspalum notatum)、ベントグラス(Bentgrass, Agrostis stolonifera, Agrostis capillaris)、バミューダガラス(Bermuda Grass, Cynodon dactylon)、フェスキュ(Fescue, Festuca arundinacea)、ケンタッキーブルーグラス(Kentucky Bluegrass, Poa pratensis)、ライグラス(Rye Grass, Lolium perenne)、セントオーガスチングラス(St. Augustine Grass, Stenotaphrum secundatum)、ノシバ(Zoysia japonica)、コウシュンシバ(Zoysia matrella)、コウライシバ(Zoysia tenuifolia)、オニシバ(Zoysia macrotachya)、およびコオニシバ(Zoysia sinica)を意味する。
【0019】
また、本明細書において、前記「遺伝子組み換え芝」は、遺伝子組み換え、化学的・物理的突然変異原の処理などの遺伝子操作技術を用いて人為的に意図した特性が誘導された芝を意味する。ここで、人為的に意図した特性としては、除草剤抵抗性、矮性、病虫害抵抗性などが例示できる。好ましくは、除草剤抵抗性芝、特にバスタ除草剤抵抗性芝を意味する。
【0020】
また、本明細書において、前記「芝の花」とは、花の各器官である雌蕊、雄蕊、花弁およびウテナが分化した状態にあることを意味する。一般に、開花は、花芽の形成後に花軸が形成され、この花軸から花の各器官、すなわち雌蕊、雄蕊、花弁およびウテナが分化し、その分化した花の各器官が成熟する過程を経て行われる。よって、「芝の花」とは、花芽の形成後に花の各器官が分化した時点から閉花するまでの状態にある花を意味するものと理解できる。
【0021】
本発明者が芝の花に突然変異原を処理した理由は、開花時期が授粉・授精の行われる次期であって、この時期に突然変異原を処理する場合、突然変異の効率を高めることができるという点に着目したことにある。参考として、本発明者が芝の種子に突然変異原を処理したとき、特に化学的突然変異原(EMS、EES(ethyl ethane sulfonate)、EO(Ethylene oxide)、NMCなど)を処理したときは不稔性が誘導されていないことを明らかにしておく。
【0022】
また、本明細書において、前記「不稔性」とは、有性生殖が不可能な形質を意味し、抽薹(bolting)されない(すなわち、花芽・花軸が形成されない)形質、或いは抽薹されなくて種子が生成されない形質の意味としても理解することができる。
【0023】
また、本明細書において、前記「不稔性が誘導された」とは、その突然変異された形質、すなわち不稔性が次の世代でも発現できるように遺伝的変異が起こった場合を意味する。ゾイシア属芝を含む芝類は、地下茎と地上匍匐茎を通じた栄養繁殖能力を持っている。よって、前記「不稔性が次の世代でも発現される」というのは、地下茎と地上匍匐茎を通じて栄養繁殖した場合にもその栄養繁殖した個体に不稔性の形質が現れることを意味する。
【0024】
本発明において、物理的突然変異原としては、当業界で使用されるX線、γ線(60Co)、β線(32P、35Sなど)、中性子ビーム(Hasegawa et al. 1995; Ling et al. 1991; Wang et al. 1988; Honda et al. 2006; Naito et al. 2005)などが全て使用でき、特に好ましくは60Coを使用する場合である。
【0025】
前記物理的突然変異原をどれほどの時間照射するかは、使用しようとする突然変異原の種類によって当業者における通常の能力範囲内で決定できる。一般に、ある物理的突然変異原の強度が高ければ、相対的に強度の低い他の物理的突然変異原に比べて照射量を短くしても、目的の突然変異を誘発することができる。
【0026】
したがって、芝の花に物理的突然変異原を処理して不稔性の誘導された芝を得ることができる限りは、その物理的突然変異原の種類やその物理的突然変異原の処理時間などが本発明の範囲を制限するものと理解されてはならない。
【0027】
但し、下記実施例を参照するとき、物理的突然変異原の場合、その突然変異原の種類を問わず、線量が10(Gy)〜100(Gy)の範囲内で処理されることが好ましく、さらに好ましくは線量が10(Gy)〜50(Gy)の範囲内で処理される。特に、物理的突然変異原としては-60Coを使用することが好ましい。
【0028】
また、本発明において、不稔性の誘導された芝を矮性の形質が共に誘導された芝であることが好ましい。
【0029】
本明細書において、「矮性」は、芝のサイズ(または生物量(biomass))が野生型のそれに比べて小さい形質を意味し、具体的には芝の高さ、節間(internode)、および/または葉の長さと広さが野生型のそれに比べて小さい形質を意味する。
【0030】
また、本明細書において、「矮性が誘導された」とは、その突然変異された形質、すなわち矮性が次の世代でも発現できるように遺伝子変異が起こった場合を意味する。ここで、前記「矮性が次の世代でも発現する」というのは、地下茎と地上匍匐茎を通じて栄養繁殖した場合にもその繁殖した個体に矮性の形質が現れることを意味する。
【0031】
このような矮性の形質は芝の刈り草作業を省略することができるため、労働力の節減に直結する形質である。
【0032】
一方、不稔性の誘導された遺伝子組み換え芝の選別は、下記実施例での如く、花芽・花軸の形成有無から判断することができ、さらに葉節位の数を比較して判断することができる。
【0033】
他の側面において、本発明は、不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の地下茎の製造方法に関する。
【0034】
本発明の不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の地下茎の製造方法は、(a)遺伝子組み換え芝の花に物理的突然変異原を処理する段階と、(b)突然変異原が処理された遺伝子組み換え芝を栽培し、その種子を採種する段階と、(c)その種子を栽培して不稔性の誘導された遺伝子組み換え芝を選別する段階と、(d)その不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝から地下茎を採取する段階とを含んでなる。
【0035】
別の側面において、本発明は、不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の地上匍匐茎の製造方法に関する。
本発明の不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の地上匍匐茎の製造方法は、(a)遺伝子組み換え芝の花に物理的突然変異原を処理する段階と、(b)突然変異原の処理された遺伝子組み換え芝を栽培し、その種子を採種する段階と、(c)その種子を栽培して不稔性の誘導された遺伝子組み換え芝を選別する段階と、(d)その不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝から地上匍匐茎を採取する段階とを含んでなる。
【0036】
これらの方法によって得られた地下茎または地上匍匐茎は、不稔性を有する遺伝子組み換え芝を増殖させることが可能な材料として有用である。
【0037】
これらの方法において、前記地下茎または地上匍匐茎は、矮性が共に誘導された芝から得られることが好ましい。
【0038】
前記地下茎または地上匍匐茎の製造方法において、「芝」、「遺伝子組み換え芝」、「不稔性」、「矮性」などに関連しては前述した意味がそのまま有効である。
【0039】
別の側面において、本発明は、前記方法によって得られた地下茎または地上匍匐茎を土壌に移植する段階、およびこれを繁殖させる段階を含む、不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の増殖方法に関する。
【0040】
前記地下茎または地上匍匐茎を土壌に移植するとき、その土壌は露地の土壌または植木鉢の土壌であってもよい。
【0041】
また、前記繁殖段階には通常的な芝の栽培条件、例えば日光条件や温度条件などを適用してもよく、繁殖効率を高めるために日光条件、温度条件などを変化させて適用してもよい。
【発明の効果】
【0042】
前述したように、本発明によれば、不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の製造方法を提供することができる。このような方法によって得られる、不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝は、生態系を撹乱・破壊させる原因となる花粉飛散による遺伝子移動が源泉的に遮断された遺伝子組み換え芝である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】γ線(60Co)を0(無処理区)、10(Gy)、20(Gy)、30(Gy)、40(Gy)、50(Gy)、75(Gy)および100(Gy)線量でバスタ除草剤抵抗性bar遺伝子の導入された遺伝子組み換え野芝に照射し、その野芝から種子を採種して発芽させたときの種子の枯死率をグラフで示す。
【図2】無処理区の抽薹された植物体のいずれか一つ(A)と処理区の非抽薹された植物体のいずれか一つ(B)との葉節位の数を比較することが可能な写真である。
【図3】矮性形質が共に誘導された芝を野生型芝と比較して示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明について実施例を参照して説明する。ところが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。
【0045】
<実施例>不稔性が誘導された遺伝子組み換え野芝の製造
<実施例1>γ線(60Co)照射のための予備実験
<実施例1−1>γ線(60Co)の照射および種子(M1)の採種
本実験に使用された遺伝子組み換え野芝は、バスタ除草剤抵抗性bar遺伝子が導入された遺伝子組み換え野芝(Zoysia japonica Steud.)(Toyama K, Bae CH, Kang JG, Lim YP, Adachi T, Riu KZ, Song PS, Lee HY(2003) Production of herbicide-tolerant zoysiagrass by Agrobacterium-mediated transformation Mol Cells. 16:19-27)のうち、導入遺伝子の遺伝的安定性が検証されたT6世代植物体(Bae TW, Vanjildorj E, Song SY, Nishiguchi S, Yang SS, Song IJ, Chandrasekhar T, Kang TW, Kim JI, Koh YJ, Park SY, Lee J, Lee YE, Ryu KH, Riu KZ, Song PS, Lee HY(2008) Environmental risk assessment of genetically engineered herbicide-tolerlant Zoysia japonica. J. Environ. Qual. 37:207-218)であって、直径25cmの植木鉢に移植して自然光条件のGMO隔離温室で栽培したものである。
適正のγ線照射線量を定めるために、開花状態の遺伝子組み換え野芝(授粉・授精次期の野芝であって、穂内に葯(Anther)が2/3以上伸長した野芝である)にγ線(60Co)を処理した。
γ線(60Co)の処理は、0(無処理区)、10(Gy)、20(Gy)、30(Gy)、40(Gy)、50(Gy)、75(Gy)および100(Gy)線量で済州大学校(韓国済州島に所在)放射線研究所の照射施設を用いて行われた。
γ線が処理された各植物体を済州大学校の温室内で32℃±7の自然光条件で栽培して3ヶ月後に各処理区から種子(M1)を採種した。
採種された種子は自然光条件で3日間乾燥させた後、−15℃で保管してから種子発芽実験に使用した。
【0046】
<実施例1−2>種子(M1)の発芽率の調査
まず、発芽率を高めるために、γ線照射後に得られたM1野芝の種子を5M水酸化カリウム(potassium hydroxide)(Junsei, Japan)に30分間浸漬した後、1M酢酸(acetic acid)(Junsei, Japan)で5分間中和させて種皮を軟化させた。
次に、種子を2%次亜塩素酸ナトリウム(sodium hypochlorite)(Daejung, Korea)で15分間浸漬した後、滅菌水で5回洗浄し、その洗浄された種子を、吸湿した濾過紙上に播種した。播種の後、暗条件で2日間水分を吸収させた後、3日間32℃±2の連続光(4000lux)条件で栽培して発芽を誘導した。
各処理区による種子の枯死率(発芽していない種子の比率)を図1に示した。図1を参照すると、10〜25Gy処理区では平均32%の枯死率を示し、50〜75Gy処理区では59.5%の枯死率を示し、100Gy処理区では75%の枯死率を示したことが分かる。
このような結果を考慮し、γ線照射線量を、半数致死量(LD50)を含む50(Gy)線量以下である0(無処理区)、10、20、30、40および50Gyに決定した。
【0047】
<実施例2>不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝を得るためのγ線(60Co)の照射、種子の採種、および発芽
前記実施例1と同様の方式で、γ線(60Co)を0、10、20、30、40および50Gyの線量で照射し、M1種子を採種・発芽させた。
発芽率および生存率を下記表1に示した。ここで、発芽率は最初発芽した植物体から5週まで発芽した植物体までの総個数を調べて計算した。また、生存率は種子から発芽した幼植物体を植木鉢に移植し、8ヶ月間生育させ、生存した植物体の総個数を調べて計算した。
【0048】
(表1)γ線処理された遺伝子組み換え野芝(M1)の発芽率および生存率

【0049】
前記生存したM1植物体(無処理区70個体および処理区223個体)を直径10cmの植木鉢で25℃±7の自然光条件で3ヶ月間順化させた後、直径15cmの植木鉢に移植し、2年間25℃±7の自然光条件で栽培した後、1次的に不稔性有無を調べ、さらに直径25cmの植木鉢に移植して25℃±7の自然光条件でGMO隔離温室で2年間栽培して2次的に不稔性有無を調べた。不稔性有無の調査は野芝の抽薹性(bolting)/非抽薹性(unbolting)によって1次的に選抜した後、その選抜された各個体の葉節位(leaf-node stage)の数を比較して2次的に選抜した。
下記表2には各処理区による非抽薹/抽薹された個体の数を示す。
【0050】
(表2)非抽薹/抽薹された個体の数と百分率

【0051】
表2に示すように、2年目では、無処理区の場合は5.7%(4/70)が抽薹されておらず、処理区の場合は52%((15+20+34+38+9)/(42+42+56+64+19))が抽薹されていない。4年目では、無処理区の場合は全ての植物体が抽薹されており、処理区の場合は4%((1+1+2+3+2)/(42+42+56+64+19))が抽薹されていない。
ゾイシア属芝(Zoysia spp.)は、冬季の休眠期に葉が枯死してから、季節が変わって芝の生育期に入ると、既存の直立茎の葉節位の次に新しい葉が発生しながら成長していくが、葉節位の数が通常12個程度に達すると、抽薹されながら開花する(Yeam DY, Murray JI, Portz HL, Joo YK(1985) Optimum seed coat scarification and light treatment for the germination of Zoysiagrass(Zoysia japonica Steud)seed. J. Kor. Soc. Hort. Sci. 26:179-185)。よって、ゾイシア属芝(Zoysia spp.)の葉節位の数は開花有無に対する指標になれる。
このような理由から葉節位の数を観察したが、2年目の場合、非抽薹植物体では葉節位の数が平均11.4個観察されており、抽薹された植物体では葉節位の数が平均13.6個観察されている。よって、2年目の非抽薹植物体は、葉節位の数からみて、追って抽薹される可能性がある。
したがって、4年目でさらに葉節位の数を観察したが、4年目の場合、抽薹された植物体の葉節位の数は、無処理区では平均14.8個が観察されており、処理区では平均15.7個が観察されているが、これに対し、非抽薹された処理区では平均15.4個が観察されている。
図2には無処理区の抽薹された植物体のいずれか一つ(A)と、処理区の非抽薹された植物体のいずれか一つ(B)との葉節位の数を比較することが可能な写真を例示した。図2において、バー(bar)の1cmである。
非抽薹された処理区で葉節位の数が平均15.4個であるにも拘らず抽薹されていないというのは、上記で引用した論文の内容、および前記の結果をまとめるとき、不稔性が誘導されたことを示すといえる。
一方、4年目の非抽薹された植物体のうち、2個体は矮性の形質を共に持っており、その2個体のうち1個体に対して図3に野生型植物体と比較した写真を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)遺伝子組み換え芝の花に物理的突然変異原を処理する段階と、
(b)突然変異原の処理された遺伝子組み換え芝を栽培し、その種子を採種する段階と、
(c)その種子を栽培して不稔性の誘導された遺伝子組み換え芝を選別する段階とを含んでなることを特徴とする、不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の製造方法。
【請求項2】
前記芝は、パスパルム属グラス(Paspalum sp.)、アグロスチス属グラス(Agrostis sp.)、シノドン属グラス(Cynodon sp.)、フェスク属グラス(Festuca sp.)、ポア属グラス(Poa sp.)、ロリウム属グラス(Lolium sp.)、ステノタフルム属グラス(Stenotaphrum sp.)、およびゾイシア属グラス(Zoysia spp.)よりなる群から選ばれた芝であることを特徴とする、請求項1に記載の不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の製造方法。
【請求項3】
前記芝は、ゾイシア属グラス(Zoysia spp.)を意味し、好ましくは、バイアグラス(Bahia Grass, Paspalum notatum)、ベントグラス(Bentgrass, Agrostis stolonifera, Agrostis capillaries)、バミューダガラス(Bermuda Grass, Cynodon dactylon)、フェスキュ(Fescue, Festuca arundinacea)、ケンタッキーブルーグラス(Kentucky Bluegrass, Poa pratensis)、ライグラス(Rye Grass, Lolium perenne)、セントオーガスチングラス(St. Augustine Grass, Stenotaphrum secundatum)、ノシバ(Zoysia japonica)、コウシュンシバ(Zoysia matrella)、コウライシバ(Zoysia tenuifolia)、オニシバ(Zoysia macrotachya)、およびコオニシバ(Zoysia sinica)よりなる群から選ばれた芝であることを特徴とする、請求項1に記載の不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の製造方法。
【請求項4】
前記遺伝子組み換え芝は、除草剤抵抗性芝であることを特徴とする、請求項1に記載の不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の製造方法。
【請求項5】
前記物理的突然組み換え原はX線、γ線、β線、および中性子ビームのいずれか一つであることを特徴とする、請求項1に記載の不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の製造方法。
【請求項6】
前記物理的突然変異原は、60Coであり、その線量が10(Gy)〜100(Gy)の範囲内で処理されることを特徴とする、請求項1に記載の不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の製造方法。
【請求項7】
前記不稔性が誘導された芝は、矮性が共に誘導された芝であることを特徴とする、請求項1に記載の不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の製造方法。
【請求項8】
(a)遺伝子組み換え芝の花に物理的突然変異原を処理する段階と、
(b)突然変異原の処理された遺伝子組み換え芝を栽培してその種子を採種する段階と、
(c)その種子を栽培して不稔性の誘導された遺伝子組み換え芝を選別する段階と、
(d)その不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝から地下茎を採取する段階とを含んでなることを特徴とする、不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の地下茎または地上匍匐茎の製造方法。
【請求項9】
前記芝は、パスパルム属グラス(Paspalum sp.)、アグロスチス属グラス(Agrostis sp.)、シノドン属グラス(Cynodon sp.)、フェスク属グラス(Festuca sp.)、ポア属グラス(Poa sp.)、ロリウム属グラス(Lolium sp.)、ステノタフルム属グラス(Stenotaphrum sp.)、およびゾイシア属グラス(Zoysia spp.)よりなる群から選ばれた芝であることを特徴とする、請求項8に記載の不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の地下茎または地上匍匐茎の製造方法。
【請求項10】
前記芝は、ゾイシア属グラス(Zoysia spp.)を意味し、好ましくは、バイアグラス(Bahia Grass, Paspalum notatum)、ベントグラス(Bentgrass, Agrostis stolonifera, Agrostis capillaries)、バミューダガラス(Bermuda Grass, Cynodon dactylon)、フェスキュ(Fescue, Festuca arundinacea)、ケンタッキーブルーグラス(Kentucky Bluegrass, Poa pratensis)、ライグラス(Rye Grass, Lolium perenne)、セントオーガスチングラス(St. Augustine Grass, Stenotaphrum secundatum)、ノシバ(Zoysia japonica)、コウシュンシバ(Zoysia matrella)、コウライシバ(Zoysia tenuifolia)、オニシバ(Zoysia macrotachya)、およびコオニシバ(Zoysia sinica)よりなる群から選ばれた芝であることを特徴とする、請求項8に記載の不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の地下茎または地上匍匐茎の製造方法。
【請求項11】
前記遺伝子組み換え芝は、除草剤抵抗性芝であることを特徴とする、請求項8に記載の不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の地下茎または地上匍匐茎の製造方法。
【請求項12】
前記物理的突然組み換え原はX線、γ線、β線、および中性子ビームのいずれか一つであることを特徴とする、請求項8に記載の不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の地下茎または地上匍匐茎の製造方法。
【請求項13】
前記物理的突然変異原は、60Coであり、その線量が10(Gy)〜100(Gy)の範囲内で処理されることを特徴とする、請求項8に記載の不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の地下茎または地上匍匐茎の製造方法。
【請求項14】
前記不稔性が誘導された芝は、矮性が共に誘導された芝であることを特徴とする、請求項8に記載の不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の地下茎または地上匍匐茎の製造方法。
【請求項15】
請求項1の製造方法によって得られた、不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝。
【請求項16】
請求項8の製造方法によって得られた、不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の地下茎または地上匍匐茎。
【請求項17】
(a)請求項8の製造方法によって得られた、不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の地下茎または地上匍匐茎を土壌に移植する段階と、(b)土壌に移植された地下茎または地上匍匐茎を繁殖させる段階とを含んでなることを特徴とする、不稔性が誘導された遺伝子組み換え芝の増殖方法。

【図1】
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【図2(A)】
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【図2(B)】
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【図3(A)】
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【図3(B)】
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【公表番号】特表2011−524180(P2011−524180A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514493(P2011−514493)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【国際出願番号】PCT/KR2009/003246
【国際公開番号】WO2009/154400
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(510333726)チェジュ ナショナル ユニバーシティ インダストリーアカデミック コオペレーション ファウンデーション (1)
【出願人】(307043027)ザ インダストリー アンド アカデミック クーパレイション イン チュンナン ナショナル ユニバーシティー(アイエーシー) (5)
【Fターム(参考)】