説明

不織布及びそれを加熱してなる成形体

【課題】天然由来の繊維と石油由来のポリマーからなる成形体であって、石油由来のポリマーの使用量が少なく、強度、弾性率、タフネスおよび寸法安定性に優れ、廃棄時に有害なガスの発生が極小化された成形体、およびその原料不織布を提供すること。
【解決手段】少なくとも天然物由来の繊維と主たる繰り返し単位が1−オキソトリメチレン単位から構成されたポリケトン繊維を含有する不織布であって、天然物由来の繊維とポリケトン繊維の一部または全部が3次元交絡しており、目付が5〜1000g/m2、かつ任意の方向の引張強度が0.5N/cm2以上であって、ポリケトン繊維の含有率が4〜80wt%であることを特徴とする不織布、および該不織布を加熱して得られる成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも天然物由来の繊維とポリケトン繊維を含有する不織布、およびその不織布を加熱して得られる成形体に関するものである。更に詳しくは、本発明は、優れた強度、弾性率、タフネスおよび寸法安定性を示し、かつ、石油使用ポリマーが低減されると共に、燃焼廃棄時に有害なガスがでない成形体、およびその原料不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素による地球温暖化問題および石油価格の高騰問題が高まっている。更には、石油由来のポリマーは、埋め立ててもいつまでも腐らず、また、燃やすと有害なガスがでるなど廃棄が困難であることから、石油由来のポリマーの使用をできる限り手控える動きが世界的に広まっている。しかしながら、石油由来のポリマーを使用することなく、植物由来等の天然物のみから成形体を作ることは実質的に不可能である。これは、天然物のみでは、強度、弾性率およびタフネス等の力学物性および生産性が低いからである。そこで、石油由来ポリマーの一部を天然物に置き換えることが従来なされてきた。
【0003】
しかしながら、単に石油由来のポリマーに植物由来等の天然物を混ぜても、石油由来のポリマー並もしくはそれ以上の高度な力学物性はでにくい。これは石油由来のポリマーと天然物のそれぞれを混合および混練する段階で石油由来のポリマーと天然物の間の接着が不十分であったり、それぞれの間にすきまが生じたり、天然物が分解したりするためである。植物由来等の天然物の混合比率をできるだけ高めると同時に、石油由来ポリマーと同等の力学物性を持つ成形体ができれば、環境配慮素材として様々な用途への展開が可能となるが、市場に受け入れられるものはまだまだ少ないのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、石油由来のポリマーの使用量を少なくするために天然物を混合した成形体、およびその原料不織布の提供である。具体的には、天然由来の繊維と石油由来のポリマーからなる成形体であって、石油由来のポリマーの使用量が少なく、強度、弾性率、タフネスおよび寸法安定性に優れ、廃棄時に有害なガスの発生が極小化された成形体、およびその原料不織布の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、石油由来ポリマーの使用量削減のために単に天然由来の繊維の使用量を増やしても、得られる成形体の強度、弾性率およびタフネスは向上しないことがわかった。これは互いの素材が十分に混ざり合わないためである。そこで、組み合わせる両素材の種類、構造および混合方法等を詳細に検討した結果、少なくとも天然物由来の繊維と主たる繰り返し単位が1−オキソトリメチレン単位から構成されたポリケトン繊維を含有する不織布を熱成形することで本発明の目的が達成される可能性を見出し、更にその不織布の構造および製造方法を詳細に検討した結果、本発明に到達した。
【0006】
即ち、本発明は下記の発明を提供する。
(1)少なくとも天然物由来の繊維と主たる繰り返し単位が1−オキソトリメチレン単位から構成されたポリケトン繊維を含有する不織布であって、天然物由来の繊維とポリケトン繊維の一部または全部が3次元交絡しており、目付が5〜1000g/m2、かつ任意の方向の引張強度が0.5N/cm2以上であって、ポリケトン繊維の含有率が4〜80wt%であることを特徴とする不織布。
(2)ポリケトン繊維以外の熱可塑性ポリマーからなる繊維をさらに含有することを特徴とする上記(1)に記載の不織布。
(3)天然物由来の繊維の単糸直径が1μm〜2mm、繊維長が3〜300mmであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の不織布。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の不織布を加熱し、ポリケトン繊維および/またはポリケトン繊維以外の熱可塑性ポリマーからなる繊維の一部または全部を熱融着させたことを特徴とする成形体。
(5)少なくとも天然物由来の繊維と主たる繰り返し単位が1−オキソトリメチレン単位から構成されたポリケトン繊維を含有する成形体であって、ポリケトン繊維の含有率が4〜80wt%、吸水変化率が0〜5%の成形体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の不織布は、天然物由来の繊維を多く含くみ、石油由来ポリマーの使用を減らしておりながら、熱成形することで石油由来ポリマー単独と同様の高度な力学特性を有する成形体を与える。本発明で得られる成形体は、電気・電子部品、建築土木部材、自動車部品、農業資材、包装材料および日用品など各種用途として使用できる。もちろん、不織布をそのまま熱処理することなく、様々な産業用材料としても使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明について、以下に具体的に説明する。
本発明の不織布は、少なくとも天然物由来の繊維と主たる繰り返し単位が1−オキソトリメチレン単位から構成されたポリケトン繊維を含有する不織布であって、上記天然物由来の繊維とポリケトン繊維の一部または全部が3次元交絡しており、目付が5〜1000g/m2、かつ任意の方向の引張強度が0.5N/cm2以上であって、ポリケトン繊維の含有率が4〜80wt%であることを特徴とする不織布である。
【0009】
本発明に用いる天然物由来の繊維は、植物性繊維、動物性繊維および鉱物繊維のいずれでもよいが、好ましくは、加工のしやすさ、入手の容易さから、植物性繊維が好ましい。植物性繊維の中でも、ケナフ、竹、杉、檜、さとうきび、およびパイナップルが好ましく、強度、弾性率、タフネスおよび成形性のよさからケナフが特に好ましい。植物の利用部位としては、表皮および内部繊維のいずれでもよく、目的に応じて任意に選択することができる。本発明の不織布に含まれる天然物由来繊維の長さについては特に制限はなく、短繊維であっても長繊維であってもよい。
【0010】
天然物由来の繊維は、原料をそのまま、あるいは、乾燥後、粉砕して製造することができる。粉砕方法としては、機械的粉砕、爆砕およびアルカリ等を用いた薬品粉砕などが使用できるが、機械的粉砕で製造することが好ましい。天然物由来の繊維が植物由来の場合、爆砕およびアルカリ等を用いた薬品粉砕を用いると、天然物由来の繊維を構成するセルロースの重合度が低下し、貫通強力が低下するからである。天然物由来の繊維を構成するセルロースの重合度としては、400〜1500が好ましく、特に好ましくは400〜1200である。
【0011】
本発明に用いる天然物由来の繊維の形状しては、短繊維であっても長繊維であってもよい。繊維長が長すぎると不織布にした場合繊維同士が絡んで斑となって部分的にバリアー性が低下したり、抄造法によって得られるシートの目付の均一性が低下することがある。また、繊維長が短すぎると繊維同士の交絡が不十分で素抜けが起こりやすく十分な強度を発現出来ない場合がある。従って、繊維長は3〜300mmであることが好ましい。繊維長は10〜200mmであるとさらに好ましく、50〜120mmであると特に好ましい。
【0012】
天然物由来の繊維の単糸直径は1μm〜2mmが好ましい。その理由は、この範囲で不織布にする時の交絡性がよく、不織布の強度を高めることができるからである。単糸の直径が1μm未満になると、水流交絡する時に水中で均一に分散しにくくなり、また、2mmを越えると、交絡がかかりにくくなる場合がある。好ましくは、10μm〜1mm、更に好ましくは10μm〜800μmである。
【0013】
天然物由来繊維の比表面積は、0.05〜50m2/gが好ましい。0.05m2/g以下だと力学強度が下がり、50m2/g以上であると細かすぎて貫通強力が低下する場合がある。好ましくは0.05〜5m2/g、特に好ましくは0.05〜3m2/gである。
【0014】
本発明に用いるポリケトン繊維は、主たる繰り返し単位が1−オキソトリメチレンであるポリケトン繊維から構成される。全繰り返し単位の20モル%未満で、下記式(1)で表される1−オキソトリメチレン以外の繰り返し単位を含有していてもよい。ちなみに、1−オキソトリメチレン単位とは、式(1)でRが−CH2CH2−の場合である。
【化1】

(ここで、Rはエチレン基以外の炭素数1〜30の有機基であり、例えばプロピレン基、ブチレン基および1−フェニルエチレン基等が例示される。これらの基の水素原子の一部または全部が、ハロゲン基、エステル基、アミド基、水酸基またはエーテル基で置換されていてもよい。もちろん、Rは2種以上であってもよく、例えば、プロピレン基と1−フェニルエチレン基が混在していてもよい。)
ただし、1−オキソトリメチレン以外の繰り返し単位が増えると力学特性、耐熱性および寸法安定性が低下するので、好ましくは1−オキソトリメチレンの繰り返し単位は90〜100モル%、さらに好ましくは94〜100モル%、最も好ましくは99〜100%である。
【0015】
高度な耐屈曲磨耗性、耐疲労性および機械特性が達成可能で、耐熱性が優れるという観点から、全繰り返し単位の98モル%以上が1−オキソトリメチレンであるポリケトンが特に好ましく、最も好ましくは1−オキソトリメチレンが100モル%である。
【0016】
また、これらのポリケトンには必要に応じて、酸化防止剤、ラジカル抑制剤、他のポリマー、艶消し剤、紫外線吸収剤、難燃剤および金属石鹸等の添加剤を含んでいてもよい。不織布の熱成形段階での劣化を抑制するために、重合で用いるPd触媒の残存量を減らすことは重要であり、好ましくはPd元素量として0〜10ppmが好ましい。
【0017】
本発明において、ポリケトン繊維の単糸繊度には特に制約はないが、太すぎると天然由来の繊維との均一混合が困難となる他、可撓性が低下して取り扱い性が困難になり、一方細すぎると工程上の単糸切れが起こりやすくなるため、0.1〜5dtexの範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜3dtexの範囲である。
不織布中のポリケトン繊維の繊維長としては、天然由来の繊維との均一混合性の観点から、2〜300mmが好ましく、さらに好ましくは5〜200mmである。このような短繊維化は、ロータリーカッターやギロチンカッターを用いる公知の方法で達成できる。更に、天然由来の繊維との均一混合性を高めるために、ポリケトン繊維はクリンプを有していることが好ましい。クリンプの方法としては、仮撚法、擦過法、スタフィング法およびエアジェット法等の公知の方法を用いることができ、2.54cm(1インチ)当たりのクリンプの個数は2〜50個、好ましくは3〜30個である。
【0018】
本発明に用いるポリケトン繊維は、不織布および成形体の力学特性を高めるために、強度は、好ましくは5〜30cN/dtex、より好ましくは10〜30cN/dtex、特に好ましくは15〜30cN/dtexである。また、弾性率は、好ましくは100〜1000cN/dtex、より好ましくは200〜1000cN/dtex、特に好ましくは300〜1000cN/dtexである。
【0019】
本発明において、不織布中のポリケトン繊維の含有量は、不織布重量中の4〜80wt%である必要がある。ポリケトン繊維の含有率が4%未満となると補強効果が小さくなり、強度が小さくなる。また、上限の80wt%を越えると、天然物由来の繊維量が少なくなりすぎて環境効果が減る。好ましくは、補強効果が顕著になる観点から30〜80wt%である。
【0020】
また、本発明の不織布には、本発明の目的を達成できる範囲で、天然物由来の繊維およびポリケトン繊維以外の繊維を含有してもよい。とりわけ、天然物由来の繊維の交絡性が悪い場合や得られた不織布の熱付形性を改良したい場合に、天然物由来の繊維以外の繊維を混合することは好ましい。それらの例としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリ乳酸繊維、アクリル繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリル繊維、銅アンモニアレーヨンおよびレーヨン等の再生セルロース繊維、酢酸セルロース繊維、アラミド繊維、ポリビニルアルコール繊維およびポリベンザゾール繊維等が挙げられる。これらの繊維中、使用エネルギーが少ないので、熱可塑性ポリマーからなる繊維が好ましい。熱可塑性ポリマーからなる繊維の中でも、燃焼廃棄時にNOx、シアンガスおよび二酸化硫黄などの有毒なガスが発生しない、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリ乳酸繊維、ポリエチレン繊維およびポリプロピレン繊維等の炭素、水素および酸素のみから構成される、融点が100〜300℃の繊維が好ましい。
【0021】
これらの繊維の形状としては、特に制限はないが、繊維長が0.5〜75mmの短繊維が好ましい。単糸繊度は0.1〜10dtexが好ましく、さらに好ましくは1〜7dtexである。L/Dは50〜10000が好ましい。また、ポリケトン繊維と同様のクリンプ処理がなされていると、均一混合性が向上するので好ましい。不織布への混合比率としては、不織布重量の50wt%未満が好ましく、さらに好ましくは40wt%未満、特に好ましくは35wt%未満である。
【0022】
不織布内部では、天然物由来の繊維、ポリケトン繊維および必要に応じて混合した上記のそれら以外の繊維は、互いに3次元的に交絡していることが好ましい。このような交絡は、目付や力学物性の向上、取り扱い性の向上および繊維の脱落防止に有効となる。交絡は、後述するように例えばニードルパンチ処理および高速流体処理等によって行なうことができる。
【0023】
本発明の不織布には、必要に応じて、接着剤、添加剤、表面塗布剤、撥水剤および親水剤等の表面改質剤、樹脂、ゴムおよびフィルム等の繊維以外の成分を含んでいてもよい。
本発明の不織布の目付は5〜1000g/m2 であることが必要である。目付が5g/m2未満の場合、強力の高い不織布を得ることが困難となり、また、形態保持性が劣り、その結果として、成形体を製造するときにシワ発生などの不具合が生じる。目付の上限については、不織布内部の交絡の均一性、不織布厚みの均一性および表面平滑性等の観点から1000g/m2以下であることが好ましい。目付のさらに好ましい範囲は20〜400g/m2 であり、特に好ましい範囲は20〜350g/m2 である。
【0024】
本発明の不織布の厚みは特に制限はないが、通常0.1mm〜1cmである。
本発明の不織布は、任意の方向の引張強度が0.5N/cm2以上であることが必要である。引張強度が0.5N/cm2未満では、加工時や加工後に衝撃や突き当て等の外力に対して不織布が破損したり、孔が空く等の不具合が起こりやすい。好ましくは1N/cm2以上、より好ましくは2N/cm2以上である。上限は、大きければ大きい程よいのであるが、製造上およびコスト上の観点から300N/cm2以下が好ましい。
【0025】
本発明の不織布は、下記の製造方法によって得られるものであるが、製造方法は特に限定されるものではない。
本発明の不織布を製造する方法として好ましく採用される方法は、ニードルパンチ処理、高速流体処理、あるいはそれらを組み合わせる方法である。短繊維をウエブ化する方法としては、カードやクロスラッパーまたはランダムウエバーを用いる乾式法や、抄紙法等による湿式法を採用することができる。必要に応じて、ニードルパンチ処理と高速流体処理の2種の交絡処理を組み合わせることも好ましい。絡合処理の際に、適度な伸び又は伸び止まりを付与するため、または得られる不織布の強度等の物性を向上させるために他の織物、編物または不織布と一体化させることもできる。
【0026】
本発明の成形体は、本発明の不織布を加熱し、ポリケトン繊維および/または必要に応じて添加される上記の熱可塑性ポリマーからなる繊維の一部または全部を熱融着させることで製造できる。加熱温度としては、100〜300℃、好ましくは150〜280℃である。必要に応じて加熱時に加圧することは好ましく、プレスやロール加熱することができる。
【0027】
こうして得られた成形体は、少なくとも天然物由来の繊維と主たる繰り返し単位が1−オキソトリメチレン単位から構成されたポリケトン繊維を含有する成形体であって、優れた力学物性の他、優れた吸水変化率を示す。具体的な物性例としては、吸水変化率が−1〜5%の成形体である。引張強度としては、1000〜8000N/mm2、伸度としては、0.5〜10%である。成形体はシート状またはブロック状で得られ、厚みは通常0.1mm〜50cmであり、成形体の厚みは薄くても厚くても上記性能は達成される。
本発明の成形体は、そのまま又は加工して電気または電子部品、建築土木部材、自動車部品、農業資材、包装材料および日用品など各種用途に使用することができる。
【実施例】
【0028】
実施例などによって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
本発明に用いられる各測定値の測定方法は次の通りである。
(1)比表面積:島津製作所(株)製のトライスター3000を用い、吸着ガスを窒素とした、BET吸着法で測定した。
(2)目付:JIS−L−1096に準じて測定した。
(3)厚み:試験片の4ヶ所を一定の測定面積(直径10mmの円面積)で一定の圧力(5kPa)がかかる厚み計(ピーコック社製:モデルH)にて測定し、その平均値を厚みとした。
(4)引張強度、伸度および弾性率:JIS−L−1096のストリップ法に基づいて、縦(シートの進行方向)の引張強度、伸度および弾性率を測定した。
(5)吸水変化率:特定の相対湿度下で放置したときの水分による任意の方向の寸法変化の割合を、[温度30℃および相対湿度30%下で24時間放置した時の長さ/温度30℃および相対湿度90%下で24時間放置した時の長さ]×100(%)で求めた。
【0029】
(実施例1〜6および比較例1および2)
1700dtex/1250fのポリ(1−オキソトリメチレン)繊維(強度:17.6cN/dtex、伸度:5%、弾性率:335cN/dtex、重合触媒であるPd残さ量:5ppm)をスタッフィングボックスでけん縮を付与した。次いで、カッターで44mmにカットした。クリンプ数は5個/2.54cm(1インチ)であった。
ケナフは10mmの長さのものを使用した。また、竹繊維は長さ10cm、幅100〜700μmおよび比表面積0.7m2/gのものを使用した。
ポリプロピレン繊維(表1および2ではPP繊維と略記する)は、単糸繊度3.3dtexのものを使用した。
不織布は表1に記載した比率でそれぞれの繊維を混合し、開繊機およびパラレルカード機を通してウエブを作製した。続いて、このウエブをニードルパンチ機(針本数50本/cm2)を用いて繊維を交絡させ不織布を得た。得られた不織布の特性を表1に併せて示す。
【0030】
【表1】

【0031】
(実施例7〜12および比較例3および4)
実施例1〜6、比較例1および2で得られた不織布を22cm×22cmに切り出し、62.2kg/cm2の圧力をかけて、200℃で1分間圧縮成形した。表2に得られた成形体の物性を示す。実施例に示した成形体は、いずれも優れた力学特性および水分寸法安定性を示した。
【0032】
(比較例5)
実施例12の組成で、ケナフとポリケトン繊維と、ポリプロピレン繊維の変わりにポリプロピレンペレットを混合し、2軸押出機で混合を行い、混練物を実施例12と同じ条件で圧縮成形を行った。得られた結果を表2に併せて示す。不織布を用いた成形体と比べ、強度および弾性率共に低下が認められた。これはペレットを用いて混練した場合、ケナフとポリケトン繊維とポリプロピレンが均一混合されていないためである。
【0033】
(実施例13)
クリンプがないポリケトン繊維を用いた以外は、実施例6と同様に不織布を作製し、得られた不織布を用いて実施例12と同様に成形体を作製した。得られた結果を表2に併せて示す。実施例12に比べ、引張強度および引張弾性率がやや低下した。
【0034】
【表2】

【0035】
(実施例14)
Pd残さ量が20ppmのポリケトン繊維を用いた以外は、実施例6と同様に不織布を作製し、得られた不織布を用いて実施例12と同様に成形体を作製した。実施例12の成形体の熱減量開始温度は340℃であったが、実施例14のそれは302℃であった。なお、熱減量開始温度はSIIナノテクノロジー(株)製TG−DTA測定機を用いて測定した。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の不織布は、天然物由来の繊維を多く含くみ、石油由来ポリマーの使用を減らしておりながら、熱成形することで石油由来ポリマー単独と同様の高度な力学特性を有する成形体を与える。得られた成形体は、優れた力学特性と吸水寸法安定性を示すので、そのまま又は加工して、電気または電子部品、建築土木部材、自動車部品、農業資材、包装材料および日用品など各種用途に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも天然物由来の繊維と主たる繰り返し単位が1−オキソトリメチレン単位から構成されたポリケトン繊維を含有する不織布であって、天然物由来の繊維とポリケトン繊維の一部または全部が3次元交絡しており、目付が5〜1000g/m2、かつ任意の方向の引張強度が0.5N/cm2以上であって、ポリケトン繊維の含有率が4〜80wt%であることを特徴とする不織布。
【請求項2】
ポリケトン繊維以外の熱可塑性ポリマーからなる繊維をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
天然物由来の繊維の単糸直径が1μm〜2mm、繊維長が3〜300mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の不織布。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の不織布を加熱し、ポリケトン繊維および/またはポリケトン繊維以外の熱可塑性ポリマーからなる繊維の一部または全部を熱融着させたことを特徴とする成形体。
【請求項5】
少なくとも天然物由来の繊維と主たる繰り返し単位が1−オキソトリメチレン単位から構成されたポリケトン繊維を含有する成形体であって、ポリケトン繊維の含有率が4〜80wt%、吸水変化率が0〜5%の成形体。

【公開番号】特開2010−100948(P2010−100948A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270875(P2008−270875)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】