説明

不織布

【課題】 防腐効果を持つ紙おしぼり・お手ふき用不織布を製造する。
【解決手段】
ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルおよび/またはパラオキシ安息香酸エステルを添加したバインダーで不織布を製造することにより、保存性の高い紙おしぼり・お手ふきを提供することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おしぼり・お手ふき用の不織布に関する。詳しくはブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルおよび/またはパラオキシ安息香酸エステルを配合したバインダーを用いた不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙おしぼり・お手ふきは水を含むという性質上、微生物(細菌類・真菌類)の繁殖の危険性がある。このため加工液には防腐剤が配合されている。しかしその配合成分や配合量においては使用用途を考慮すると、安全性の高い物質でなければならない。
【0003】
またウェットティシューとは異なり、簡易、個包装であるにもかかわらず3〜6ヶ月の保存期間が考えられ、その保管には夏季は冷たく、冬季は暖かくするなどの条件により、より強力な防腐効果が求められている。
【0004】
また紙おしぼり・お手ふきの加工に関しては、ほとんどがスプレー方式によるもので、均一に処理することがむずかしいため、加工液の浸透性及び分散性が重要になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、紙おしぼりやお手ふきに用いる不織布自体に防腐効果を持たせることにより十分な保存効果を付与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を解決する為、安全性を考慮し、化粧品に配合できる成分の中から使用することにより、安全かつ効果的な紙おしぼり・お手ふき保存時の細菌類・真菌類の増殖を抑制する配合を発見し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0007】
不織布製造時に用いるバインダーに化粧品に添加可能な薬剤を添加,加工することにより紙おしぼり・お手ふきの保存時に十分な防腐効果が得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の配合成分であるブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルは、ヨウ素を含むカーバメイト系の化合物であり、真菌類に対して高い殺菌効力を持つ。
【0009】
皮膚に対する刺激性は若干あるものの、本発明の使用においてはほとんど刺激性はみられない。
【0010】
またもう1つの成分であるパラオキシ安息香酸エステルは、食品添加物,化粧品原料基準等で保存剤,防腐剤に認可された薬剤であり、特に細菌類に対して殺菌効果を持つ。
【0011】
本発明の配合成分をバインダーに添加する方法としては、フロアブルや界面活性剤を用いた乳化物などがあるが、特に限定されるものではない。
【実施例】
【0012】
以下、実施例により詳細説明する。しかし本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0013】
(試料作成)合成樹脂繊維とセルロースパルプ繊維とを30:70の比率で混合し、エアレイド法にて40g/mのウェブを作成した。その後、バインダーとしてアクリル系樹脂エマルジョン(Nipol LX852:日本ゼオン(株))をスプレー散布し、スルーエアオーブンにて乾燥シートを得た。バインダーのスプレー量は対ウェブ10%の量(4g/m)とした。
【0014】
バインダーの添加したブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル(ヨートルIP:三井化学(株))及びパラオキシ安息香酸エステル(ソブレロール:ランクセス(株))の配合は表1に示す。なおブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルは界面活性剤を用い、10%フロアブルを作成しバインダーに添加、パラオキシ安息香酸エステルは界面活性剤を用い、自己乳化物を作成しバインダーに添加した。
【0015】
【表1】

【0016】
試験方法1
抗菌試験:JIS L−1902繊維製品の抗菌性試験に準じた。
供試細菌
A:Escherichia coli NBRC 3301(大腸菌)
B:Staphylococcus aureus NBRC 12732(黄色ブドウ球菌)
防カビ試験:JIS Z−2911カビ抵抗性試験 繊維試験指定繊維カビ
A:Aspergillus niger FERM S−1
B:Penicillium citrinum FERM S−5
Chaetomium globosum FERM S−11
Myrothecium verrucaria FERM S−13 以上3種の混合
【0017】
判定方法
抗菌試験 細菌・・・効果有り (−)
効果なし (+)
防カビ試験・・・JIS Z−2911 カビ抵抗性試験 表示方法による
0・・・試料上にカビの発育なし
右側の数値は発育阻止mm数
1・・・試料上のカビの発育面積が全体の1/3以下
2・・・試料上のカビの発育面積が全体の1/3以上
【0018】
抗菌防カビ試験の結果を表2に示す。
【0019】
【表2】

【0020】
試験方法2
作成した試料を煮沸して冷やした水道水に浸漬(絞り率:200%)し、ビニル袋に入れ、密封した。その後28℃の恒温器に2週間保存し試料の状態を確認した。その結果を表3に示す。
【0021】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0022】
【0023】
以上のごとく、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルおよび/またはパラオキシ安息香酸エステルで処理した不織布は、優れた抗菌・防カビ効果を発揮する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダーにブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルおよび/またはパラオキシ安息香酸エステルを配合してなる紙おしぼり・お手ふき用不織布。
【請求項2】
ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルおよび/またはパラオキシ安息香酸エステルを配合したバインダーを用いたエアレイド法の不織布製造方法。

【公開番号】特開2008−303517(P2008−303517A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175610(P2007−175610)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000208260)大和化学工業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】