説明

不飽和ポリエステル樹脂および不飽和ポリエステル樹脂組成物

【課題】従来の不飽和ポリエステル樹脂を改良し、より耐薬品性や耐熱性に優れた不飽和ポリエステル樹脂および不飽和ポリエステル樹脂組成物を提供する事を目的とする。
【解決手段】
(A)不飽和カルボン酸および/またはその無水物、ならびに(B)飽和カルボン酸および/またはその無水物、ならびに(C)多価アルコール、ならびに(D)式(I)で示されるテルペン骨格を有するジメチロール化合物の4成分を必須成分とする不飽和ポリエステル樹脂ならびにこの不飽和ポリエステル樹脂と架橋用単量体、さらに、イソシアネート化合物を含有してなる不飽和ポリエステル樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐薬品性、耐熱性に優れた不飽和ポリエステル樹脂および不飽和ポリエステル樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステル樹脂としては、イソフタル酸系やビスフェノール系の不飽和ポリエステル樹脂等が使用されている。
【0003】
しかしながら、上記のような一般的なポリエステル樹脂は、耐薬品性、耐熱性に優れていないのが現状である(特許文献1)。
また別に、本発明に用いられている原料としての特殊なジメチロール化合物に関する特許出願は、既に行っている(特許文献2)。
【特許文献1】特開昭55−161820号公報
【特許文献2】特願2003−390179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の不飽和ポリエステル樹脂を改良し、より耐薬品性や耐熱性に優れた不飽和ポリエステル樹脂を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、次のような不飽和ポリエステル樹脂および不飽和ポリエステル樹脂組成物を提案した。
すなわち、(A)不飽和カルボン酸および/またはその無水物、ならびに(B)飽和カルボン酸および/またはその無水物、ならびに(C)多価アルコール、ならびに(D)式(I)で示されるテルペン骨格を有するジメチロール化合物の4成分を必須成分とする不飽和ポリエステル樹脂ならびにこの不飽和ポリエステル樹脂と架橋用単量体を含有してなる不飽和ポリエステル樹脂組成物、さらに、この不飽和ポリエステル樹脂と架橋用単量体、ならびにイソシアネート化合物を含有してなる不飽和ポリエステル樹脂組成物である。
【0006】
ここで、(D)式(I)で示されるテルペン骨格を有するジメチロール化合物は、下記の式(I)で表される新規ジメチロール化合物である。具体的には、式(II)で表される化合物が好ましい。
【0007】
【化3】

(ただし、R、R、R、R、R、Rは互いに
同一または異なり、水素原子、またはnが1〜5の
整数である式C2n+1で表される炭化水素基を表す。)
【0008】
【化4】

【発明の効果】
【0009】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂は、必須成分としてのテルペン骨格を有するジメチロール化合物をブレンドし反応することにより、耐薬品性や耐熱性に優れた不飽和ポリエステル樹脂および不飽和ポリエステル樹脂組成物を工業的に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いられる(A)不飽和カルボン酸及び/またはその無水物、(B)飽和カルボン酸および/またはその無水物、(C)多価アルコール、(D)テルペン骨格を有するジメチロール化合物を必須成分とする不飽和ポリエステル樹脂、縮合剤および架橋用単量体およびイソシアネート化合物について説明する。
【0011】
本発明の(A)不飽和カルボン酸及び/またはその無水物としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸などが挙げられる。
【0012】
本発明の(B)飽和カルボン酸および/またはその無水物としては、アジピン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、3,6−エンドジクロロメチレン・テトラクロロフタル酸(ヘット酸)、3,6−エンドメチレン・テトラヒドロ無水フタル酸(無水ナジン酸)などが挙げられる。
【0013】
本発明の(C)多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールジオキシエチルエーテル、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンなどが挙げられる。
【0014】
本発明の(D)テルペン骨格を有するジメチロール化合物は、上記式(I)で表される化合物であるが、具体的な化合物として、上記式(II)で表されるジメチロール化合物や下記式(III)で表されるジメチロール化合物が挙げられる。しかしながら、式(I)で表される化合物は、これら式(II)、式(III)の化合物に限定されるものではない。
【0015】
【化5】

【0016】
また、式(I)、式(II)または式(III)で表されるジメチロール化合物には、シス型とトランス型の幾何異性体が存在するが、本発明のジメチロール化合物は、シス型、トランス型にとらわれない。ただし、本発明のジメチロール化合物をポリマー原料に使用する場合は、トランス型が好ましく用いられる。
【0017】
本発明のジメチロール化合物は、次に示すような方法で製造することが出来るが、これに限定されるものではない。
すなわち、(a)テルペン化合物と、(b)不飽和ジカルボン酸、その酸無水物、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルから選ばれた少なくとも1種の化合物を反応させ、つづいて、還元反応を行うことにより本発明のジメチロール化合物が得られる。
【0018】
この(a)テルペン化合物は、特に制限はないが、通常、α−ピネン、β−ピネン、カレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、d−リモネン、ジペンテン、ターピノーレン、α−フェランドレン、β−フェランドレン、パラメンタジエン類、ピロネン、カンフェンなどを用いることができる。好ましくはd−リモネン、ジペンテン、α−フェランドレン、β−フェランドレン、α−テルピネンなどが用いられる。テルペン化合物は、単独または2種以上を併用して使用してもよい。
【0019】
また、(b)不飽和ジカルボン酸、その酸無水物、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルは、特に制限はないが、通常、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸ジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸ジアルキルエステルなどを用いることができる。好ましくは不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルが用いられる。
これら不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルは、単独または2種以上を併用して使用してもよい。
また、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルのアルキル成分としては、特に制限はなく、例えば、ジメチル、ジエチル、ジプロピル、ジブチルなどが挙げられる。
【0020】
上記テルペン化合物と不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルから選ばれた少なくとも1種の化合物の反応としては、特に限定されないが、通常、環化付加反応が用いられる。好ましくはディールス−アルダー反応と呼ばれる環化付加反応が用いられる。このようにして得られる化合物は、通常、二重結合を有する環化付加反応物である。
【0021】
この環化付加反応の反応方式は特に限定されないが、バッチ反応でも連続反応でも反応できる。
【0022】
この環化付加反応の反応温度は、通常、0〜250℃、好ましくは30〜200℃、さらに好ましくは50〜180℃に加熱することで反応が行なわれる。反応温度が0℃未満だと反応速度が極端に遅く、また250℃を超えると、重合などの副反応が顕著になり好ましくない。
【0023】
この環化付加反応は、通常、無触媒で行われるが、触媒を用いて行ってもよい。反応触媒としては特に限定されないが、好ましくは通常、塩酸、硫酸、パラトルエンスルホン酸、活性白土などの酸触媒が用いられる。
【0024】
このようにして得られた二重結合を有する環化付加反応物に、続いて還元反応を行うと、目的のジメチロール化合物が得られる。還元反応の方法は特に限定されないが、通常、以下の二通りの方法が挙げられる。
すなわち、第1の方法は、まず触媒の存在下で水素による環化付加反応物の二重結合の水素添加反応を行った後、還元剤にて不飽和ジカルボン酸、その酸無水物、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルを還元してジメチロール化合物を得る方法である。
【0025】
この水素添加反応で使用される触媒としては、特に限定されるものではなく、通常、水素添加反応用の金属触媒が用いられる。例えば、ニッケル系、銅系、パラジウム系、白金系などの触媒が挙げられる。また、水素添加反応の温度は、0〜300℃が好ましく、さらに好ましくは25〜100℃である。
【0026】
また、この還元反応で使用される還元剤は、特に限定されるものではないが、例えば、水素化リチウムアルミニウム、水素化硼素ナトリウム、ナトリウム水素化ビス(2−エトキシメトキシ)アルミニウムなどの還元剤が挙げられる。
【0027】
この還元反応の反応温度は、通常、0〜120℃、好ましくは30〜100℃で反応が行われる。
【0028】
また、第2の還元反応の方法は、触媒を用い水素による接触水素化還元反応により、環化付加反応物の二重結合および不飽和ジカルボン酸、その酸無水物、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルを還元してジメチロール化合物を得る方法である。
【0029】
その際使用される触媒は、特に限定されるものではなく、通常使用される接触還元触媒が使用できる。例えば、銅−クロム系触媒、銅−鉄−アルミニウム系触媒、パラジウム系、白金系、ルテニウム系などの金属系触媒などが挙げられる。また、温度は、0〜500℃が好ましく、さらに好ましくは100〜300℃である。
また、前記水素化触媒で二重結合を水素添加したのちに、銅−クロム系触媒、銅−鉄−アルミニウム系触媒などの還元触媒で不飽和ジカルボン酸、その酸無水物、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルを還元することもできる。
【0030】
このようにして生成したジメチロール化合物は、精製することにより高純度の製品として得られる。その精製方法は特に限定されないが、例えば、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどが挙げられる。
【0031】
以上の本発明のジメチロール化合物は、赤外線吸収スペクトルにより、O−H伸縮に起因する3300cm−1、C−H伸縮に起因する3000〜2800cm−1、C−H変角に起因する1500〜1350cm−1、C−O伸縮に起因する1030cm−1のピークにより確認することができる。
また、1H−NMRチャートにより、ビシクロ環および側鎖に起因する0.77〜1.76ppmのピーク、水酸基に隣接するメチレン基に起因する3.22〜3.89ppmのピーク、水酸基に起因する3.98ppmのピークにより確認することができる。
【0032】
さらに、13C−NMRおよびDEPTチャートにより、ビシクロ環および側鎖に起因する16.8〜50.1ppmのピーク、水酸基に隣接するメチレン基に起因する63.1および64.3ppmのピークにより確認することができる。
【0033】
本発明の(A)不飽和カルボン酸及び/またはその無水物、(B)飽和カルボン酸および/またはその無水物、(C)二価アルコール、(D)テルペン骨格を有するジメチロール化合物の4成分を必須成分とする不飽和ポリエステル樹脂を合成する縮合反応は、例えば、次のような反応である。
上記(A)、(B)、(C)、(D)を密閉したステンレス製の反応釜に入れ、窒素ガスを吹き込みながら、最初1〜2時間は170〜180℃、次いで200℃に上げて数時間反応させる。縮合水が放出口からガスと共に系外に除去されるにしたがって反応は進行することになる。
【0034】
反応終了後、温度が100℃前後に下がったところでハイドロキノンまたはt−ブチルカテコールのような重合禁止剤を加えた後、スチレンのような架橋用単量体をこの不飽和ポリエステル樹脂に対して加えて溶解すると、本発明の不飽和ポリエステル組成物である樹脂液が出来る。
【0035】
架橋用単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ジビニルベンゼン、tert−ブチルスチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジアリルフタレート、アクリロニトリル等々が挙げられるが、コスト面、相溶性等の関係から、スチレンが好ましい。
【0036】
不飽和ポリエステル樹脂と架橋用単量体との配合割合は、不飽和ポリエステル樹脂を100重量部とするとき、架橋用単量体が10〜90重量部であることが好ましい。より好ましくは、架橋用単量体が30〜40重量部である。
架橋用単量体が10重量部未満であると、不飽和ポリエステル樹脂組成物の粘度が高すぎて、他の成分と混合しにくくなる。架橋用単量体が90重量部を越えると、不飽和ポリエステル樹脂組成物の粘度が低すぎて、シート状等に塗布しにくくなる。
【0037】
また、上記重合禁止剤としては、ハイドロキノン、t−ブチルカテコール、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、p−トルキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−アセトキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等々が挙げられる。
その配合量は、得られる不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化性により適宜決定されるが、その配合量は、不飽和ポリエステル樹脂及び重合性単量体の総量100重量部に対して、0.01〜5.0重量部であり、好ましくは、0.5〜3.0重量部である。
【0038】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂と架橋用単量体との縮合反応は、例えば、180〜230℃の高温で、カルボン酸等の自己触媒作用で系外から触媒を添加しなくても進行するが、酸等の酸触媒を使用してもよい。
【0039】
本発明の縮合反応の際使用される縮合剤としては、水酸化アルカリ、炭酸アルカリ、ピペリジン、ジエチルアミン、アルカリ金属アミドなどの塩基性触媒や塩化水素、塩化亜鉛、亜硫酸水素カリウム、ポリリン酸、塩化アルミニウム、塩化チタン(IV)、シリカゲルなどの酸性触媒、イオン交換樹脂、モレキュラーシーブなどがある。
【0040】
不飽和ポリエステル樹脂と架橋用単量体、特に架橋用ビニルモノマーとのとの共重合は、常温硬化では、ほとんどの場合、触媒としてメチルエチルケトンパーオキシド、促進剤としてコパルトナフテネールが用いられる。また、加熱硬化では、加熱用触媒として、ベンゾイルパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等がある。ジ−t−ブチルパーオキサイドなどは分解温度が高く、スチレン系のポリエステルの硬化には適さない。加熱硬化温度は140〜170℃であり、加熱硬化触媒の使用量は、樹脂に対して0.5〜2.0重量%が適当で、少なすぎても、また多すぎても完全硬化しないことがあり、成型品の品質も悪くなる。
【0041】
また、本発明では、不飽和ポリエステル樹脂及び架橋用単量体にさらに、イソシアネート化合物を含有させることにより、不飽和ポリエステル樹脂組成物をより増粘させることが出来、良好な熟成性を付与することが出来る。
【0042】
本発明のイソシアネート化合物としては、多官能性イソシアネート化合物が好適である。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等々が挙げられる。
【0043】
これらイソシアネート化合物の配合量は、使用する不飽和ポリエステル樹脂組成物に対して、不飽和ポリエステル樹脂の水酸基/イソシアネート化合物のイソシアネート基(モル比)が0.2/1〜2/1となるように設計することが好ましい。より好ましくは0.6/1〜1.4/1である。
【0044】
また、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物には、必要に応じて、低収縮材、硬化剤、充填材、内部離型剤、増粘剤、繊維類等を配合して使用してもよい。
【0045】
低収縮材としては、例えば、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリ−ε−カプロラクタン、飽和ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム等が挙げられ、これらを1種もしくは2種以上併用して使用することが出来る。
【0046】
硬化剤としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキシド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチルカーボネイト等が挙げられる。硬化剤の配合量は、不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対して、1.0〜10重量部が好ましい。
【0047】
充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、粉砕石、桂砂、珪藻土、雲母粉末、ガラス粉末、酸化亜鉛、木粉等が挙げられる。
充填材の配合量は、粘度、流動性、成形品の強度等の物性などの面から、不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対して、100〜300重量部が好ましい。
【0048】
内部離型剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ワックス系、シリコーン系が挙げられる。配合量は、不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対して、1.0〜10重量部が好ましい。1.0重量部未満では、成形品が、離型しにくく、10重量部を越えると、圧縮時に成形材料の流動性が悪くなる。
【0049】
増粘剤としては、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛等が挙げられる。好ましくは、作業性、増粘性の面から、酸化マグネシウムである。配合量は、不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対して、1.0〜10重量部が好ましい。1.0重量部未満では、粘度が不十分であり、10重量部を越えると、粘度が上昇しすぎて、成形材料の流動性が悪くなる。
【0050】
繊維類等としては、例えば、ガラス、ポリエステル、ビニロン、ナイロン、アラミド、フェノール樹脂等が挙げられる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により説明する。ただし本発明は実施例により限定されるものではない。
製造例1、実施例1
(D)のジメチロール化合物の製造:
冷却管、温度計、撹拌棒を備えた500ml三つ口フラスコに、α−テルピネン71g(0.5モル)およびフマル酸58g(0.5モル)を仕込み、撹拌しながら昇温して、150〜160℃で12時間反応した。反応後、アセトンから再結晶することにより、フマル化α−テルピネン79g(α−テルピネン基準で収率60%、純度96%)を得た。
【0052】
続いて、電磁撹拌装置を備えた内容500mlのオートクレーブに、上記で得られたフマル化テルピネン71g(0.27モル)、2−プロパノール140g、および粉末状の5%パラジウムカーボン触媒0.7gを仕込んだ。次いで、これを密閉し、雰囲気を窒素ガスで置換した後、水素ガス15kg/cm2の圧力をかけながら導入した。そして、撹拌を開始すると、内温が27℃から32℃へ上昇した。吸収された水素を補うことで圧力を15〜20kg/cm2に保ちながら4時間反応させた。その後、得られた懸濁液をブフナーロートで吸引ろ過を行い、触媒をろ別した。その後、ろ液を減圧濃縮することにより、水素化フマル化α−テルピネン69g(収率95%、純度95%)を得た。
【0053】
次に、冷却管、温度計、撹拌棒、滴下ロートを備えた21四つ口フラスコに、窒素気流下、脱水テトラヒドロフランを500ml入れ、水素化リチウムアルミニウム26.1g(0.687モル)を加えた。混合液を、65℃で30分間環流させた後、加熱をやめ、ここに上記のようにして得られた水添フマル化α−テルピネン60g(0.224モル)をテトラヒドロフラン300mlに溶解した溶液を3時間かけて滴下した。混合液を65℃で12時間環流させた後、0℃付近に冷却し、水を26ml、4規定水酸化ナトリウム水溶液を26ml、水80mlを順次加えた。灰色の部分がなくなるまで撹拌し、酢酸エチルを加え、油層と水層に分離した。油層を減圧蒸留にて溶媒を除去し、粗生成物53gを得た。これをカラムクロマトグラフィーで精製することにより、ジメチロール化合物の白色結晶20g(収率40%、純度99%)を得た。
【0054】
上記ジメチロール化合物252g(1モル)、無水マレイン酸98g(1モル)、無水フタル酸148g(1モル)、エチレングリコール62g(1モル)を密閉したステンレス製の反応釜に仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、最初の1〜2時間は170〜180℃、その後、200℃に上げて約2時間反応させた。縮合水を放出口からガスと共に除去した。
反応終了後、温度が100℃前後に下がったところで、重合禁止剤として4−t−ブチルカテコールを1重量%加えた後、スチレンを上記不飽和ポリエステル100重量部に対して35重量部加えて溶解し、樹脂液Aを作った。
【0055】
得られた樹脂液Aを、触媒としてメチルエチルケトンパーオキサイドとナフテン酸コバルトを、樹脂に対してそれぞれ1%添加し、スプレ成形法により樹脂を吹き付けた後、室温硬化させ、厚さ3mm以下、重さ30gの試験片を作成し、下記の耐薬品・耐熱性の評価を行った。結果を表1に示す。
耐薬品・耐熱性の評価
・耐アルカリ試験:試験片を、10%水酸化ナトリウム水溶液の中に入れ、2時間煮沸し、重量の変化を測定した。
・煮沸試験:試験片を、沸騰水の中に100時間入れ、重量の変化を測定した。
【0056】
実施例2
上記樹脂液Aに日本ポリウレタン工業(株)製ミリオネートMR100(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート)を水酸基(OH基)/イソシアネート基(NCO基)=1/1(モル比)になるようにを加え、十分攪拌した後、40℃で48時間熟成させ樹脂液Bを作製し、上記実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0057】
比較例1
無水マレイン酸98g(1モル)、無水フタル酸116g(1モル)、エチレングリコール62g(1モル)、プロピレングリコール76g(1モル)、及び合成したポリエステルに対して、35%のスチレンを使用して、実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂液を製造し、室温硬化させ、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂および不飽和ポリエステル樹脂組成物は、必須成分として、テルペン骨格を有するジメチロール化合物をブレンドし反応するだけで、より耐薬品性や耐熱性に優れた不飽和ポリエステル樹脂および不飽和ポリエステル樹脂組成物を工業的に製造することが可能となり、塗料、浄化槽、タンクなど様々な利用分野に展開可能となるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)不飽和カルボン酸および/またはその無水物、ならびに(B)飽和カルボン酸および/またはその無水物、ならびに(C)多価アルコール、ならびに(D)式(I)で示されるテルペン骨格を有するジメチロール化合物の4成分を必須成分とする不飽和ポリエステル樹脂。
【化1】

(ただし、R、R、R、R、R、Rは互いに同一
または異なり、水素原子、またはnが1〜5の整数である
式C2n+1で表される炭化水素基を表す。)
【請求項2】
請求項1記載の不飽和ポリエステル樹脂及び架橋用単量体を含有してなる不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、イソシアネート化合物を含有してなる請求項2記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
(D)の化1で示されるテルペン骨格を有するジメチロール化合物が、式(II)である請求項1〜3記載の不飽和ポリエステル樹脂および不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【化2】


【公開番号】特開2006−77221(P2006−77221A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−294348(P2004−294348)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000117319)ヤスハラケミカル株式会社 (85)
【Fターム(参考)】