説明

両極性入力昇圧回路

【課題】
電源電圧が低い場合に電力損失が少ない両極性入力昇圧回路を提供する。
【解決手段】
図1の両極性入力昇圧回路において、電源入力側にブリッジ整流回路を用いず、異なる極性の電源入力に対応する2つの昇圧回路に電源電圧がそのまま入力されるようにし、整流部は出力側に設け、電力損失を整流素子1個分にとどめることで、電源電圧が低い場合に電力損失が少ない両極性入力昇圧回路を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両極性入力昇圧回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
両極性入力昇圧回路は、電子装置などを駆動させる場合に、入力電圧が正極性のときと逆極性のときのどちらの状態でも、入力された電圧より高い電圧を整流された状態で出力したいという要求に応えるものである。
図2は、従来の両極性入力昇圧回路の一例を示す回路図である。このような回路において、電源電圧が低い場合に入力電流をブリッジ整流回路で整流すると、その整流回路による電圧降下が大きく、実用的な効率が得られなかった。
【0003】
具体例を挙げると、整流回路をシリコンダイオードによるブリッジで構成した場合、約1.2Vの電圧降下を生じる。整流回路をショットキーバリアダイオードによるブリッジで構成した場合、約0.8Vの電圧降下を生じる。
仮に、電源を乾電池1本、1.5Vでまかなうことを考えると、前者は約0.3V、後者は約0.7Vの供給電圧しか残っておらず、何らかの電子回路を駆動させることも、昇圧回路を駆動させることも非常に困難である。
電源を2本の乾電池、3.0Vでまかなった場合は、前者は約1.8V、後者は約2.2Vの供給電圧が残っている。電子回路を駆動させることは可能であるが、ダイオードブリッジのない単極性入力昇圧回路と比べて、前者で約40%、後者で約27%の電力損失。
このため、このような構成の両極性入力昇圧回路は、低電圧電源用としてほとんど用いられることはなかった。
【0004】
結果として、両極性に対応することを諦め、使用者に電池の向きを正しく入れるように注意を促す方法がとられてきた。
【非特許文献1】長谷川彰著「改訂スイッチングレギュレータ設計ノウハウ」CQ出版株式会社 2003年10月1日改訂第10版発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、両極性入力昇圧回路において、電源電圧が低い場合に電力損失を少なくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の両極性入力昇圧回路は、正方向か逆方向のどちらかの電圧をとりうる両極性電源(V1)に対応した両極性昇圧回路であって、
正方向か逆方向のどちらかの電圧をとりうる両極性電源(V1)の一方の極に第1の昇圧回路(U1)の+極と第2の昇圧回路(U2)の−極を接続し、両極性電源(V1)の別の極に第1の昇圧回路(U1)の−極と第2の昇圧回路(U2)の+極を接続し、昇圧回路(U1)の出力と昇圧回路(U2)の出力を負荷(RL)の一方の極に接続し、負荷(RL)の別の極を整流素子(D1)と整流素子(D2)の一方の極に接続し、整流素子(D2)の別の極を両極性電源(V1)の一方の極に接続し、整流素子(D1)の別の極を両極性電源(V1)別の極に接続することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の両極性入力昇圧回路は、前記整流素子を整流用スイッチング素子とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の両極性入力昇圧回路は、ブリッジ整流回路がなく昇圧回路に電源電圧がそのまま入力されるので、電池1本からの駆動も可能になる。
本発明の整流部における電力損失は、整流素子1個分の電力損失となり、ブリッジ整流器の場合の整流素子2個分の電力損失と比べて、少なくなる。
【0009】
具体例を挙げて、本発明の両極性入力昇圧回路とブリッジ整流回路を用いた両極性入力昇圧回路の効率を計算してみたい。
電源電圧3V、昇圧回路の効率を75%、負荷にかける出力電圧を4V、整流素子を電圧降下0.4Vのショットキーバリアダイオードと仮定する。

本発明の両極性入力昇圧回路の効率は、以下の式で表される。
効率=昇圧回路の効率−(整流素子の電圧降下/出力電圧)
上記条件における、本発明の両極性入力昇圧回路の効率は、65%である。

ブリッジ整流回路を用いた両極性入力昇圧回路の効率は、以下の式で表される。
効率=(1−(整流素子の電圧降下×2/電源電圧))×昇圧回路の効率
上記条件における、ブリッジ整流回路を用いた両極性入力昇圧回路の効率は、55%である。

上記条件において、本発明の両極性入力昇圧回路は、ブリッジ整流回路を用いた両極性入力昇圧回路より10%効率がよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明による両極性昇圧回路の基本回路図である。正方向か逆方向の電圧が入力されると、第1の昇圧回路(U1)または第2の昇圧回路(U2)のどちらが一方が動作し、昇圧された電圧を負荷に供給し、第1の整流素子(D1)または第2の整流素子(D1)のどちらかを通って負荷に電流が流れる。このとき、動作していない昇圧回路と整流素子は、動作している昇圧回路と整流素子および電源と負荷に影響を与えない。
【実施例1】
【0011】
本発明による両極性昇圧回路を用いると、使用者が電池を挿入する向きを気にせずに使用可能な電子機器を作ることができる。特に、ボタン電池など極性を間違えやすい電池を用いる機器に有用な技術である。
また、お年寄りや幼児向けの機器などに組み込むと、サポートの必要な状況を減らすことができる。
【実施例2】
【0012】
LEDを光源とした低電圧用電球の両極性昇圧回路として用いると、極性を気にせず電圧1V程度からLEDを発光させられる電球ができる。
これまで、使用者は極性のない電球を使用してきたため、新たに電球の極性を考えながら使用してもらうことは困難である。
低い電圧でも両極性で使用できる昇圧回路は、フィラメント電球との電気的互換性を維持するために必要不可欠である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による両極性入力昇圧回路の回路図
【図2】従来の両極性入力昇圧回路の回路図
【符号の説明】
【0014】
D1 整流素子
D2 整流素子
D3 ブリッジ整流回路
RL 負荷
U1 昇圧回路
U2 昇圧回路
V1 両極性電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正方向か逆方向のどちらかの電圧をとりうる両極性電源(V1)に対応した両極性昇圧回路において、
正方向か逆方向のどちらかの電圧をとりうる両極性電源(V1)の一方の極に第1の昇圧回路(U1)の+極と第2の昇圧回路(U2)の−極を接続し、両極性電源(V1)の別の極に第1の昇圧回路(U1)の−極と第2の昇圧回路(U2)の+極を接続し、昇圧回路(U1)の出力と昇圧回路(U2)の出力を負荷(RL)の一方の極に接続し、負荷(RL)の別の極を整流素子(D1)と整流素子(D2)の一方の極に接続し、整流素子(D2)の別の極を両極性電源(V1)の一方の極に接続し、整流素子(D1)の別の極を両極性電源(V1)別の極に接続することを特徴とする両極性昇圧回路。
【請求項2】
前記整流素子を整流用スイッチング素子とした請求項1に記載の両極性昇圧回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−333541(P2006−333541A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−149185(P2005−149185)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(304026939)XIQY株式会社 (4)
【Fターム(参考)】