説明

両面印刷装置及び当該装置における用紙搬送方法

【課題】積載用紙の積載枚数や種類等によって積載用紙の全体重量が変動することに起因して搬送ベルトの用紙搬送力が変動しても、再給紙トレイにおける積載用紙の先端を揃えることのできる両面印刷装置を提供する。
【解決手段】両面印刷装置において、排紙トレイは、搬送されてきた用紙の一側の先端を受け止めるとともに、受け止めた用紙を再給紙トレイに向けて搬送するエンドプレートを備え、再給紙トレイは、再給紙トレイに搬送されてきた用紙を搬送する再給紙搬送ベルトと、再給紙搬送ベルトを駆動する駆動モータと、再給紙搬送ベルトにより搬送されてきた用紙の他側の先端を受け止める突き当て面と、を備え、制御部は、再給紙搬送ベルトより搬送された用紙の他側の先端が前記突き当て面に当接したあとさらに、駆動モータを駆動して再給紙搬送ベルトが所定の追加移動距離で移動するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、用紙の表面及び裏面の両面に印刷することができる両面印刷装置及び当該装置における用紙搬送方法に関する。本発明は、詳細には、積載用紙が再給紙トレイの再給紙位置で安定して当接するように搬送される両面印刷装置及び当該装置における用紙搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙の消費量を低減する場合、用紙の両面に印刷を行う両面印刷装置が用いられている。そして、両面印刷装置を小型化するために、版胴を1つとし、表面印刷された用紙を裏返して、版胴に向けて搬送して裏面印刷するという印刷装置が開示されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−318934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の両面印刷装置において、排紙トレイの上に積載された用紙は、排紙トレイ上のエンドプレートが再給紙トレイに向かって移動することにより、再給紙トレイ上に移送されるようになっている。ここで、排紙トレイから再給紙トレイへの用紙の受渡においては、排紙トレイに積載された全ての用紙を一度に移送することになるため、積載用紙の枚数が多くて積載用紙の全体重量が重くなる場合、積載用紙の下面と排紙トレイの上面との間での摩擦抵抗力及び積載用紙の下面と再給紙トレイの上面との間での摩擦抵抗力がそれぞれ大きくなる。その結果、排紙トレイから再給紙トレイへの積載用紙の受渡を円滑に行えず、積載用紙の下部の用紙にシワ等の損傷が発生する恐れがある。また、大きな摩擦抵抗力に抗してエンドプレートを移動することになるために、エンドプレートを駆動するモータとして駆動力の大きなモータが必要となり、コストが高くなることが考えられる。
【0005】
積載用紙が再給紙トレイに移送されるとき、積載用紙は再給紙トレイにおける排紙トレイ側の途中部分まで搬送され、再給紙トレイの搬送ベルト上に移送される。そして、搬送ベルトに移送された積載用紙は、搬送ベルトの移動に合わせて積載用紙の先端が再給紙トレイの突き当て面(再給紙位置)に当接するように搬送される。再給紙トレイの搬送ベルトによる用紙搬送力は、積載用紙の下面と搬送ベルトの搬送面との間での摩擦抵抗力に関係するので、積載用紙の全体重量に依存する。
【0006】
しかしながら、積載用紙の積載枚数や種類等によって積載用紙の全体重量が変動することに起因して搬送ベルトの用紙搬送力が変動するにもかかわらず、搬送ベルトは一定の駆動力で一定の時間にわたって積載用紙を搬送しようとする。積載用紙の積載枚数が少ないときや積載用紙のサイズが小さいときのように積載用紙の全体重量が軽い場合、搬送ベルトの用紙搬送力が小さくなるために積載用紙の搬送距離が短くなり、給紙不良(給紙ジャム)となる恐れがある。反対に、積載用紙の積載枚数が多いときや積載用紙のサイズが大きいときのように積載用紙の全体重量が重い場合、搬送ベルトの用紙搬送力が大きくなるために積載用紙の搬送距離が長くなり、積載用紙における搬送ベルトとの接触面(下面)にシワや損傷が発生する恐れがある。したがって、従来技術におけるいずれの場合においても、積載用紙の先端が再給紙トレイの突き当て面(再給紙位置)に適切に当接しないで積載用紙の先端が揃わない恐れがあるという問題がある。
【0007】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、積載用紙の積載枚数や種類等によって積載用紙の全体重量が変動することに起因して搬送ベルトの用紙搬送力が変動しても、再給紙トレイにおける積載用紙の先端を揃えることのできる両面印刷装置及び当該装置における用紙搬送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決するために、本発明によれば、以下の両面印刷装置及び当該装置における用紙搬送方法が提供される。
【0009】
すなわち、本発明の請求項1に係る両面印刷装置は、
給紙トレイ上の用紙を、印刷ユニットに搬送し、当該印刷ユニットで第1面印刷処理を行って排紙トレイに搬送し、当該排紙トレイから再給紙トレイへ搬送し、裏返した状態で当該再給紙トレイから前記印刷ユニットに搬送し、前記印刷ユニットで第2面印刷処理を行って前記排紙トレイに搬送するように、制御部が制御する両面印刷装置において、
前記排紙トレイは、搬送されてきた用紙の一側の先端を受け止めるとともに、受け止めた用紙を前記再給紙トレイに向けて搬送するエンドプレートを備え、
前記再給紙トレイは、該再給紙トレイに搬送されてきた用紙を搬送する再給紙搬送ベルトと、当該再給紙搬送ベルトを駆動する駆動モータと、前記再給紙搬送ベルトによって搬送されてきた用紙の他側の先端を受け止める突き当て面と、を備え、
前記制御部は、前記再給紙搬送ベルトによって搬送された用紙の他側の先端が前記突き当て面に当接したあとさらに、前記駆動モータを駆動して前記再給紙搬送ベルトが所定の追加移動距離で移動するように制御することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2に係る両面印刷装置では、
前記排紙トレイから前記再給紙トレイに搬送されてきた用紙の重量変化に応じて、前記所定の追加移動距離を変更することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3に係る両面印刷装置では、
前記用紙の重量変化は、前記再給紙搬送ベルトの上に積載される用紙の枚数に起因していることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4に係る両面印刷装置では、
前記用紙の重量変化は、前記再給紙搬送ベルトの上に積載される用紙の種類に起因していることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項5に係る両面印刷装置では、
前記排紙トレイから前記再給紙トレイに搬送されてきた用紙の重量変化に応じて、前記所定の追加移動距離を移動するための移動時間を変更することを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項6に係る両面印刷装置では、
前記再給紙搬送ベルトによる用紙搬送速度は、前記エンドプレートによる用紙搬送速度以上であることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項7に係る両面印刷装置では、
前記再給紙トレイは、前記突き当て面の側に下方に傾斜するように配置されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項8に係る両面印刷装置における用紙搬送方法では、
給紙トレイ上の用紙を、印刷ユニットに搬送し、当該印刷ユニットで第1面印刷処理を行って排紙トレイに搬送し、当該排紙トレイから再給紙トレイへ搬送し、裏返した状態で当該再給紙トレイから前記印刷ユニットに搬送し、前記印刷ユニットで第2面印刷処理を行って前記排紙トレイに搬送するように、制御部が制御する両面印刷装置における用紙搬送方法において、
前記排紙トレイに設けられたエンドプレートにより、搬送されてきた用紙の一側の先端が受け止められるとともに、受け止めた用紙が前記再給紙トレイに向けて搬送され、
前記再給紙トレイの駆動モータで駆動される再給紙搬送ベルトにより、前記再給紙トレイに搬送されてきた用紙が、突き当て面に向けて搬送されて用紙の他側の先端が前記突き当て面に当接し、
前記再給紙搬送ベルトで搬送された用紙の他側の先端が、前記突き当て面に当接したあとさらに、前記駆動モータで駆動される前記再給紙搬送ベルトにより所定の追加移動距離で移動するように前記制御部で制御されることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項9に係る両面印刷装置における用紙搬送方法では、
前記排紙トレイから前記再給紙トレイに搬送されてきた用紙の重量変化に応じて、前記所定の追加移動距離を変更することを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項10に係る両面印刷装置における用紙搬送方法では、
前記用紙の重量変化は、前記再給紙搬送ベルトの上に積載される用紙の枚数に起因していることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項11に係る両面印刷装置における用紙搬送方法では、
前記用紙の重量変化は、前記再給紙搬送ベルトの上に積載される用紙の種類に起因していることを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項12に係る両面印刷装置における用紙搬送方法では、
前記排紙トレイから前記再給紙トレイに搬送されてきた用紙の重量変化に応じて、前記所定の追加移動距離を移動するための移動時間を変更することを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項13に係る両面印刷装置における用紙搬送方法では、
前記再給紙搬送ベルトによる用紙搬送速度は、前記エンドプレートによる用紙搬送速度以上であることを特徴とする。
【0022】
本発明の請求項14に係る両面印刷装置における用紙搬送方法では、
前記再給紙トレイは、前記突き当て面の側に下方に傾斜するように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に係る本発明では、再給紙トレイにおいて、用紙の搬送量が不足していることに起因して再給紙位置での用紙揃えが不十分である場合に、突き当て面への用紙揃えを安定的に且つ確実に実行することができるとともに、積載用紙が揃っている場合であっても、追加移動距離が所定量に規定されているために過剰な用紙搬送に起因した最下位用紙へのシワ等の発生を防止することができるという効果を奏する。
【0024】
請求項2に係る本発明では、搬送用紙の重量変化に起因した搬送ベルトの用紙搬送力の変動を抑えるので、突き当て面への用紙揃えを安定的に且つ確実に実行することができるという効果を奏する。
【0025】
請求項3に係る本発明では、搬送用紙の重量変化を引き起こす搬送用紙の枚数の変動に起因した搬送ベルトの用紙搬送力の変動を抑えるので、突き当て面への用紙揃えを安定的に且つ確実に実行することができるという効果を奏する。
【0026】
請求項4に係る本発明では、搬送用紙の重量変化を引き起こす搬送用紙の種類の変化に起因した搬送ベルトの用紙搬送力の変動を抑えるので、搬送用紙の突き当て面への用紙揃えを安定的に且つ確実に実行することができるという効果を奏する。
【0027】
請求項5に係る本発明では、搬送時の積載用紙の崩れを防止しながら用紙搬送時間を短縮することができるという効果を奏する。
【0028】
請求項6に係る本発明では、排紙トレイから再給紙トレイへの用紙の受渡において、エンドプレートへの負荷を低減し、最下位用紙へのシワ等の発生を防止して、円滑な用紙の受渡を行うことができるという効果を奏する。
【0029】
請求項7に係る本発明では、搬送用紙に作用する重力の分力が、搬送用紙を突き当て面の方に向かわせる力となるために、搬送用紙の突き当て面への用紙揃えを安定的に且つ確実に実行することができるという効果を奏する。
【0030】
請求項8に係る本発明では、再給紙トレイにおいて、用紙の搬送量が不足していることに起因して再給紙位置での用紙揃えが不十分である場合に、突き当て面への用紙揃えを安定的に且つ確実に実行することができるとともに、積載用紙が揃っている場合であっても、追加移動距離が所定量に規定されているために過剰な用紙搬送に起因した最下位用紙へのシワ等の発生を防止することができるという効果を奏する。
【0031】
請求項9に係る本発明では、搬送用紙の重量変化に起因した搬送ベルトの用紙搬送力の変動を抑えるので、突き当て面への用紙揃えを安定的に且つ確実に実行することができるという効果を奏する。
【0032】
請求項10に係る本発明では、搬送用紙の重量変化を引き起こす搬送用紙の枚数の変動に起因した搬送ベルトの用紙搬送力の変動を抑えるので、突き当て面への用紙揃えを安定的に且つ確実に実行することができるという効果を奏する。
【0033】
請求項11に係る本発明では、搬送用紙の重量変化を引き起こす搬送用紙の種類の変化に起因した搬送ベルトの用紙搬送力の変動を抑えるので、搬送用紙の突き当て面への用紙揃えを安定的に且つ確実に実行することができるという効果を奏する。
【0034】
請求項12に係る本発明では、搬送時の積載用紙の崩れを防止しながら用紙搬送時間を短縮することができるという効果を奏する。
【0035】
請求項13に係る本発明では、排紙トレイから再給紙トレイへの用紙の受渡において、エンドプレートへの負荷を低減し、最下位用紙へのシワ等の発生を防止して、円滑な用紙の受渡を行うことができるという効果を奏する。
【0036】
請求項14に係る本発明では、搬送用紙に作用する重力の分力が、搬送用紙を突き当て面の方に向かわせる力となるために、搬送用紙の突き当て面への用紙揃えを安定的に且つ確実に実行することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る両面印刷装置の全体構成を模式的に示す図であって、給紙トレイの用紙が表面印刷される様子を説明する図である。
【図2】図1に示した両面印刷装置において、表面印刷された用紙が排紙トレイに積載される様子を説明する図である。
【図3】図1に示した両面印刷装置において、排紙トレイに積載された用紙が再給紙トレイに積載される様子を説明する図である。
【図4】図1に示した両面印刷装置において、用紙の積載された再給紙台が再給紙ローラに向けて持ち上げられる様子を説明する図である。
【図5】再給紙トレイの上方斜視図である。
【図6】図5に示した再給紙トレイの側面図であって、再給紙台が下方の再給紙受止位置に位置している状態を示す図である。
【図7】図5に示した再給紙トレイの側面図であって、再給紙台が上方の再給紙受渡位置に位置している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
まず、図1を参照しながら、本発明の一実施形態に係る両面印刷装置10の全体構成を説明する。
【0039】
図1は、本発明に係る両面印刷装置10の全体構成を模式的に示す図である。説明の都合上、用紙の給紙方向及び搬送方向M1の上流側を「前側」、給紙方向及び搬送方向M1の下流側を「後側」として、以下、説明する。
【0040】
図1に示すように、印刷機本体1の前側下部に給紙ユニット2が配置され、印刷機本体1の後側下部に排紙ユニット3が配置されている。そして、給紙ユニット2と排紙ユニット3との前後方向の間に、印刷ユニット4が配置され、排紙ユニット3よりも前側であって印刷ユニット4の下方には、再給紙ユニット5が配置されている。また、印刷機本体1の前側上部に製版ユニット6が配置され、印刷機本体1の後側上部に排版ユニット7が配置されている。印刷機本体1の上側には、画像読取ユニット8が配置されている。また、印刷機本体1内には、両面印刷装置10を構成する各ユニット2乃至8の各種動作を制御する制御部(図示せず)が配置されている。
【0041】
すなわち、制御部としてのCPU(中央処理演算装置)は、入力操作部や出力表示部が配置された操作パネルや、各ユニットの動作を制御する制御プログラム等を記憶したROM(リード・オンリー・メモリ:フラッシュROM)や、種々のデータを一時的に記憶するRAM(ランダム・アクセス・メモリやハードディスク)や、各種のユニット2乃至8等の動作を制御する。
【0042】
本発明における制御部は、後述するように、特に、再給紙搬送ベルト5123によって搬送された用紙の前側の先端が突き当て面55に当接したあとさらに、駆動モータを駆動して再給紙搬送ベルト5123が所定の追加移動距離で移動するように制御する。
【0043】
給紙ユニット2は、給紙トレイ21と、給紙トレイ21の後側端部に配置された給紙ローラ22及びサバキ部材23と、給紙ローラ22よりも後側に配置された一対のタイミングローラ24と、を備えている。給紙ローラ22及びサバキ部材23は、給紙トレイ21に積載された用紙を最上位から1枚ずつ取り出すようになっている。タイミングローラ24は、用紙の所定位置に印刷できるように、印刷ユニット4の版胴41の回転と同期して適宜のタイミングで作動し、給紙ローラ22及びサバキ部材23によって取り出された用紙を、印刷ユニット4の印刷部へ送り込むようになっている。
【0044】
排紙ユニット3は、エア吸引式の搬送ベルト機構31と、排紙トレイ32と、ベースガイド33と、を備えている。排紙ユニット3は、印刷ユニット4で印刷された用紙を、搬送ベルト機構31によってエア吸引しながら後側に搬送し、排紙トレイ32上へ排出するようになっている。ベースガイド33は、上下方向に移動可能となっており、搬送ベルト機構31によって排紙トレイ32に用紙が搬送されて来る際には、下方の閉止位置に位置し、排紙トレイ32から用紙を再給紙ユニット5に搬送する際には、上方の開放位置に位置するようになっている。
【0045】
印刷ユニット4は、製版済の孔版原紙が外周面に装着される円筒状の版胴41と、版胴41に下方から当接離反自在に対向する押圧ローラ42と、を備えている。印刷ユニット4は、回転する版胴41と押圧ローラ42との間で用紙を挟持し、M1方向に用紙を搬送しつつ、版胴41内から供給されるインクによって、孔版原紙の画像を用紙の上面に転写する(表面印刷処理又は裏面印刷処理を行う)ようになっている。
【0046】
再給紙ユニット5は、排紙トレイ32上に積載された表面印刷(第1面印刷)処理された用紙を排紙ユニット3から受け入れる再給紙トレイ51と、再給紙トレイ51上の用紙を最上位から1枚ずつ取り出して搬送する再給紙ローラ52及びサバキ部材54と、再給紙ローラ52から搬送されてきた用紙を再度印刷ユニット4に向けて搬送する1つ以上の一対の中間搬送ローラ53と、を備えている。再給紙ユニット5は、再給紙ローラ52、中間搬送ローラ53及びサバキ部材54によって、再給紙トレイ51上の用紙を、最上位から1枚ずつ、給紙ユニット2のタイミングローラ24へ搬送するようになっている。
【0047】
製版ユニット6は、孔版原紙ロール61と、サーマルヘッド62と、サーマルヘッド62に当接するプラテンローラ63と、を備えている。製版ユニット6は、画像読取ユニット8で読み取られた画像のデータに基づき、孔版原紙ロール61をサーマルヘッド62で製版し、製版後の孔版原紙を印刷ユニット4の版胴41の外周面に装着するようになっている。
【0048】
排版ユニット7は、印刷機本体1内に取り付けられた排版用のハウジング71と、ハウジング71の前側上端部に取り付けられた上下一対の引き込みローラ72と、ハウジング71内に後側からスライド可能に挿入された上面開放状の原紙収納ロール73と、を備えている。引き込みローラ72は、版胴41の後側上端部に対応する位置に位置しており、版胴41の外周面に装着されている印刷終了後の孔版原紙の先端部を挟持して回転することにより、ハウジング71の原紙収納ロール73に印刷終了後の孔版原紙を巻き付けるようになっている。
【0049】
以下、図1乃至4を参照しながら、両面印刷装置10の基本的動作を説明する。
【0050】
図1に示すように、製版ユニット6は、画像読取ユニット8で読み取られた画像(表面画像)のデータに基づき、孔版原紙ロール61をサーマルヘッド62で製版し、表面製版後の孔版原紙N1を印刷ユニット4の版胴41の外周面に装着する。
【0051】
次に、給紙ローラ22及びサバキ部材23は、給紙トレイ21に積載された用紙P1(表面及び裏面の両方とも印刷されていない)を、最上位から1枚ずつ取り出す。タイミングローラ24は、用紙P1の所定位置に印刷できるように、印刷ユニット4の版胴41の回転と同期して適宜のタイミングで作動し、取り出された用紙P1を印刷ユニット4の印刷部へ送り込む。
【0052】
そして、印刷ユニット4は、回転する版胴41と押圧ローラ42との間で用紙P1を挟持し、M1方向(後側)に用紙P1を搬送しつつ、版胴41内から供給されるインクにより、孔版原紙N1の表面画像を用紙P1の上面(表面)に転写(第1面印刷処理、以下、「表面印刷処理」という)する。
【0053】
そして、図2に示すように、排紙ユニット3は、印刷ユニット4で表面印刷処理された用紙P2を、搬送ベルト機構31によりエア吸引しながら後側に搬送し、排紙トレイ32上へ排出する。このとき、排紙トレイ32の後側に設けられたエンドプレート322は、排紙トレイ32上に積載された用紙P2の後側の先端を揃える。また、ベースガイド33は、下方の閉止位置に位置し、排紙トレイ32上に積載された用紙P2の前側の先端を揃える。
【0054】
そして、排版ユニット7は、引き込みローラ72が、版胴41の外周面に装着されている表面印刷処理終了後の孔版原紙N1の先端部を挟持して回転することによって、ハウジング71の原紙収納ロール73に表面印刷処理終了後の孔版原紙N1を巻き付ける。
【0055】
表面印刷処理終了後の孔版原紙N1が版胴41から取り除かれた後、製版ユニット6は、画像読取ユニット8で読み取られた画像(裏面画像)のデータに基づき、孔版原紙ロール61をサーマルヘッド62で製版し、裏面製版後の孔版原紙N2を印刷ユニット4の版胴41の外周面に装着する。
【0056】
そして、図3に示すように、排紙ユニット3は、排紙トレイ32上に積載された表面印刷処理された用紙P2を、M2方向(再給紙方向)に向けて、再給紙ユニット5に移送(受渡)する。このとき、表面印刷処理された用紙P2の積載された再給紙台511は、突き当て面55に向けて下方に傾斜した再給紙受止位置に位置する。また、ベースガイド33は、上方の開放位置に位置する。
【0057】
そして、図4に示すように、表面印刷処理された用紙P2の積載された再給紙台511は、上方に移動して略水平の再給紙受渡位置に位置する。また、ベースガイド33は下方の閉止位置に位置する。再給紙ローラ52及びサバキ部材54は、排紙ユニット3から移送されて積載された用紙P2を最上位から1枚ずつ取り出し、再給紙ローラ52及び中間搬送ローラ53は、取り出された用紙P2を、すでに表面印刷処理された表面が下面に、印刷されていない裏面が上面となるように裏返して、給紙ユニット2のタイミングローラ24に搬送する。ここで、中間搬送ローラ53とタイミングローラ24との間で用紙P2は撓みP2aが形成されるようになっている。
【0058】
タイミングローラ24は、印刷ユニット4の版胴41の回転と同期して適宜のタイミングで作動し、印刷ユニット4の印刷部へ、印刷されていない裏面を上面にして用紙P2を送り込む。ここで、中間搬送ローラ53とタイミングローラ24との間で形成された用紙P2の撓みP2aを維持するように、中間搬送ローラ53とタイミングローラ24とは略同じ線速度で回転する。この線速度は、版胴41の線速度と一致している。印刷ユニット4は、回転する版胴41と押圧ローラ42との間で用紙P2を挟持し、M1方向に搬送しつつ、版胴41内から供給されるインクにより、孔版原紙N2の裏面画像を用紙P2の上面(裏面)に転写(第2面印刷処理、以下、「裏面印刷処理」という)する。
【0059】
印刷ユニット4で裏面印刷処理された用紙P3は、搬送ベルト機構31によりエア吸引されながら後側に搬送され、排紙トレイ32上へ排出される。
【0060】
排版ユニット7は、引き込みローラ72が、版胴41の外周面に装着されている裏面印刷処理終了後の孔版原紙N2の先端部を挟持し、回転することによって、ハウジング71の原紙収納ロール73に表面印刷処理終了後の孔版原紙N2を巻き付ける。
【0061】
以下、排紙トレイ32及び再給紙トレイ51に関する具体的構成をそれぞれ説明する。
【0062】
(排紙トレイ)
排紙トレイ32は、印刷ユニット4で印刷された用紙が積載される排紙台321と、印刷された用紙の先端を受け止めるエンドプレート322と、略用紙幅に等しい間隔で用紙の両側縁を規制する一対の排紙側板(図示せず)と、を備えている。一対の排紙側板は、排紙台321の上面に対して略垂直姿勢で立設されている。一対の排紙側板は、ラックとベルト式伝導機構とモータとを備える排紙側板移動機構(図示せず)により、側板検知センサで検出された排紙側板の用紙幅方向の位置に基づき、M1方向に対する直交方向(用紙幅方向)に移動可能となっている。
【0063】
エンドプレート322は、スライド軸とベルト式伝導機構とモータとを備えるエンドプレート移動機構(図示せず)により、排紙トレイ32に排出される用紙の先端部を受け止める受止位置と、排紙トレイ32の用紙を再給紙トレイ51に受け渡す受渡位置との間をM方向に往復移動することができる。
【0064】
なお、エンドプレート322は、その用紙接触面において、M2方向(前側)に向かって突出する突出部を形成することができる。突出部の用紙接触面は、用紙との摩擦係数が高い高摩擦部材、例えばゴム等でできている。また、排紙台321には、排紙台321上に積載される用紙の搬送が円滑となるように、複数のコロを配置することができる。コロは、使用されるすべての仕様の用紙を均等に保持できるように、排紙台321上に均等に配置される。
【0065】
(再給紙トレイ)
図5乃至7を参照しながら、再給紙トレイ51について詳細に説明する。
【0066】
再給紙トレイ51は、積載用紙が積載される再給紙台511と、再給紙台511上の積載用紙を再給紙台511の前側端部に位置する突き当て面55まで搬送する再給紙搬送手段512と、略用紙幅に等しい間隔で積載用紙の両側縁を規制する一対の再給紙側板513と、再給紙台511のM2方向(前側)端部の再給紙位置に位置した突き当て面55を有する前側板11と、を備えている。
【0067】
再給紙側板513は、レールとラックとピニオンと駆動モータとを備える再給紙側板移動機構(図示せず)によって、M方向に対する直交方向(用紙幅方向:Y方向)に移動可能となっている。再給紙側板移動機構において、Y方向に延びるレールに沿ってスライド可能な一対のラックに一対の再給紙側板513がそれぞれ固定されていて、一対のラックが、ピニオンを間に挟んで対向配置されている。駆動モータで一方の再給紙側板513をレールに沿って内向きにスライドさせると、他方の再給紙側板513も、同じ距離だけ、レールに沿って内向きにスラドする。また、一方の再給紙側板513を、レールに沿って外向きにスライドさせると、他方の再給紙側板513も、同じ距離だけ、レールに沿って外向きにスライドする。したがって、一対の再給紙側板513は、その間隔を自在に変更することができる。したがって、再給紙側板513は、再給紙側板移動機構によって、用紙の両側縁を規制する規制位置と、用紙の両側縁を規制しない待機位置と、の間で移動可能となっている。
【0068】
再給紙搬送手段512は、再給紙台511と、再給紙台511のM1方向(後側)端部に位置するローラ5121と、ローラ5121に対してM2方向(前側)に位置するローラ5122と、ローラ5121及びローラ5122に巻き掛けられた再給紙搬送ベルト5123と、を備えている。ローラ5121及びローラ5122は、駆動モータ(図示せず)によって回転するようになっており、ローラ5121及びローラ5122の回転によって再給紙搬送ベルト5123は周回するようになっている。再給紙搬送手段512は、略水平の状態から、M2方向(前側)に向かって下方に傾斜した状態までの範囲とすることができる。再給紙搬送ベルト5123は、例えば、用紙との摩擦係数が高い高摩擦部材、例えばゴム等で構成されている。
【0069】
本実施形態では、再給紙搬送手段512が、全体として、M2方向(前側)に向かって下方に傾斜するように構成されている。当該傾斜角度は、約10度までの角度であり、好適には約4乃至約5度である。再給紙搬送手段512を下方に傾斜させることで、搬送用紙に作用する重力の分力が、搬送用紙を突き当て面55の方に向かわせる力となるために、搬送用紙の突き当て面55への用紙揃えを安定的に且つ確実に実行することができるという効果を奏する。それとともに、印刷機本体1内部における高さ方向のスペースを節約できるという効果を奏する。
【0070】
再給紙搬送ベルト5123上の積載用紙は、再給紙搬送ベルト5123の周回によって、再給紙台511のM2方向(前側)端部の再給紙位置に位置する突き当て面55まで搬送されるようになっている。そして、再給紙搬送手段512の再給紙搬送ベルト5123による用紙搬送速度は、エンドプレート322による用紙搬送速度よりも速くなっている。再給紙搬送ベルト5123による用紙搬送速度がエンドプレート322による用紙搬送速度よりも速ければ、排紙トレイ32から再給紙トレイ51への積載用紙の移送(受渡)の際に、積載用紙が再給紙搬送ベルト5123の側に引き抜かれるような動きになるために、エンドプレート322への負荷が低減され、排紙トレイ32に積載された用紙の最下位の用紙にシワ等が発生することを防止でき、排紙トレイ32から再給紙トレイ51への用紙の移送(受渡)を円滑に行うことができる。例えば、エンドプレート322による用紙搬送速度及び再給紙搬送ベルト5123による用紙搬送速度は、それぞれ、80mm/秒及び160mm/秒に設定される。
【0071】
図6及び7は、再給紙トレイ51の側面図であり、図6は、再給紙台511が下方の再給紙受止位置に位置する状態を示しており、図7は、再給紙台511が上方の再給紙受渡位置に位置する状態を示している。図6及び7に示すように、再給紙台511を上下方向に移動させる再給紙台上下機構は、回転部材5161と、連結部材5162と、揺動部材5163と、押上部材5164と、を備えている。
【0072】
回転部材5161は、モータ(図示せず)に連結されており、前記モータによってR1方向に回転するようになっている。連結部材5162は、その一端部が、回転部材5161の偏心位置5161aに取り付けられており、その他端部が、上下方向に延びる揺動部材5163の中央位置5161bに取り付けられている。また、揺動部材5163は、再給紙トレイ51のフレームに取り付けられたバネ部材5165に対して、揺動軸5163aを中心として、回動可能に取り付けられている。そして、押上部材5164は、揺動部材5163に対して、揺動軸5163bを中心として回動可能に取り付けられている。これにより、前記モータを作動させて回転部材5161を回転させると、連結部材5162がM方向に揺動する。そして、連結部材5162がM方向に揺動すると、揺動部材5163はその下端に接続されたバネ部材5165を伸縮させながら、揺動軸5163aを中心としてR2方向に回動する。揺動部材5163が揺動軸5163aを中心として回動すると、押上部材5164は揺動軸5163aを中心としてR3方向に回動する。
【0073】
ここで、再給紙台511は、その後側端部511aにおいて、再給紙搬送手段512のフレームに取り付けられており、端部511aを中心として上下方向に回動可能となっている。したがって、押上部材5164がR3方向に回動すると、再給紙台511は、押上部材5164によって、端部511aを中心として、上下方向に回動するようになっている。
【0074】
図5に示すように、再給紙搬送手段512は、再給紙位置に位置する突き当て面55の近傍(例えば、突き当て面55から後側に約10mmの距離で)において、再給紙トレイ51に搬送されてきた用紙の先端部を検出する先端検出センサ59を備えることができる。先端検出センサ59を例示すると、先端検出センサ59に設けられた発光部から光を放射して用紙で反射した反射光を受光部で検出する反射センサである。駆動モータを駆動して再給紙搬送ベルト5123で積載用紙を搬送して当該先端検出センサ59が用紙の先端部を検出した後、所定時間さらに駆動モータを駆動して、再給紙搬送ベルト5123が所定の追加移動距離で移動するように制御部が制御する。所定の追加移動距離をモータの駆動時間で制御する代わりに、駆動モータが、例えば、ステッピングモータである場合には駆動パルスの数により、あるいは、サーボモータである場合にはサーボモータに付随するエンコーダの回転量により、それぞれ、再給紙搬送ベルト5123の所定の追加移動距離を規定することができる。
【0075】
図6は、押上部材5164が回動し、押上部材5164と再給紙台511とが非接触となった状態を示しており、この状態で、排紙トレイ32から再給紙トレイ51へ用紙が搬送される。図7は、押上部材5164が回動し、押上部材5164が再給紙台511を最大に押し上げた状態を示している。再給紙トレイ51から給紙ユニット2のタイミングローラ24に用紙を搬送する際、再給紙台511上の用紙の最上位用紙が再給紙ローラ52に接触するように、押上部材5164が再給紙台511を徐々に押し上げるように、再給紙台上下機構が作動する。
【0076】
図6及び7に示すように、サバキ部材54は、再給紙ローラ52のローラ本体521に向かって突出する対向部541を備えている。対向部541は、Y方向略中央部に位置し、ローラ本体521に向かう突出量を変更可能な1つの可変突出部と、可変突出部のY方向外方に位置し、ローラ本体521に向かって突出する複数の固定突出部と、を備える。図示しない可変突出部及び固定突出部は、再給紙トレイ51の前側端部に配置された前側板11の上部の傾斜部11aのY方向中央部近傍に設けられている。そして、可変突出部及び固定突出部は、用紙を再給紙ローラ52のローラ本体521に押し付けないように、ローラ本体521から離間した位置に設けられている。そして、再給紙ローラ52のローラ本体521とサバキ部材54の対向部541とによって、再給紙トレイ51上の用紙を最上位から1枚ずつ取り出して搬送するようになっている。
【0077】
再給紙トレイ51は、ユニット化されて印刷機本体1に取り付けられ、印刷機本体1から引き出し可能に構成されても良い。また、再給紙トレイ51、再給紙ローラ52、中間搬送ローラ53及びサバキ部材54が、再給紙ユニット5としてユニット化されて、印刷機本体1から引き出し可能に構成されても良い。この場合、再給紙ユニット5を引き出すことで、再給紙ユニット5内にジャムした用紙の取り除き処理を効率良く行うことができる。
【0078】
(再給紙搬送ベルトの動作)
本発明における両面印刷装置10では、再給紙搬送ベルト5123よって搬送された用紙の前側の先端が突き当て面55に当接したあとさらに、駆動モータを駆動して再給紙搬送ベルト5123が所定の追加移動距離で移動するように制御部が制御する。
【0079】
用紙の前側の先端が突き当て面55に当接したあと再給紙搬送ベルト5123がさらに移動する所定の追加移動距離は、例えば、10乃至90mmである。当該追加移動距離のデータは、制御部に電気的に接続されたROMの中に格納されている。
【0080】
突き当て面55への用紙揃えを安定的に且つ確実に実行するという目的のためには、上記追加移動距離を、排紙ユニット3から再給紙ユニット5に移送(受渡)された積載用紙の重量変化に関係なく一定の値とすることもできる。
【0081】
しかしながら、積載用紙の全体重量に応じて再給紙搬送ベルト5123の用紙搬送力(積載用紙の最下面に対する再給紙搬送ベルト5123の摩擦抵抗力)が変化するために、積載用紙の全体重量が重くなれば再給紙搬送ベルト5123の用紙搬送力が大きくなり、積載用紙の全体重量が軽くなれば再給紙搬送ベルト5123の用紙搬送力が小さくなる。再給紙搬送ベルト5123の用紙搬送力が大きいほど積載用紙を確実に搬送することができるので、追加移動距離が短くても、突き当て面55への用紙揃えを安定的に且つ確実に実行するという効果を十分に発揮する。逆に、再給紙搬送ベルト5123の用紙搬送力が小さければ、追加移動距離を長くすることが有効である。したがって、好適には、上記追加移動距離は、排紙ユニット3から再給紙ユニット5に移送された用紙の重量変化に応じて変更される。
【0082】
積載用紙の全体重量を変化させる要因として、積載用紙の枚数や積載用紙の種類(サイズや厚みや紙種等)等を挙げることができる。積載用紙の枚数が多くなるに従って、積載用紙の全体重量が重くなる。積載用紙の枚数が同じであっても、A3、A4、B4又はB5等のように用紙サイズによっても積載用紙の全体重量が変化する。また、用紙サイズや積載用紙の枚数が同じであっても、用紙厚みによっても積載用紙の全体重量が変化する。
【0083】
また、突き当て面55への用紙揃えを安定的に且つ確実に実行するという目的のためには、排紙ユニット3から再給紙ユニット5に移送(受渡)された積載用紙の重量変化に応じて、所定の追加移動距離を移動するための移動時間、すなわち、再給紙搬送ベルト5123の用紙搬送速度を変更することができる。再給紙搬送ベルト5123の用紙搬送力が大きければ再給紙搬送ベルト5123の用紙搬送速度を速くして、再給紙搬送ベルト5123の用紙搬送力が小さければ再給紙搬送ベルト5123の用紙搬送速度を遅くする。特に、再給紙搬送ベルト5123の用紙搬送力が小さい場合には、積載用紙の最下位の用紙と再給紙搬送ベルト5123との間でのスリップ等により積載用紙が崩れやすくなっているために、再給紙搬送ベルト5123の用紙搬送速度を遅くすることが有効である。なお、再給紙搬送ベルト5123の用紙搬送力が小さい場合に再給紙搬送ベルト5123の用紙搬送速度を遅くしたとしても、エンドプレート322による用紙搬送速度よりも速いことには変わりがない。
【0084】
積載用紙の枚数に関する情報は、両面印刷装置10に設置された枚数カウンタ(図示せず)から取得される。積載用紙のサイズに関する情報は、給紙トレイ21や排紙トレイ32や再給紙トレイ51に設けられた各側板の用紙幅方向(Y方向)の移動量を検知するセンサの少なくとも一つから取得することができる。それらの各種情報はいずれもRAMに一時的に格納されて、再給紙搬送ベルト5123の追加移動距離や用紙搬送速度を制御するために使用される。また、両面印刷に供される用紙の枚数やサイズや厚みや紙種等に関する情報は、操作パネル(図示せず)から入力された情報を利用することもできる。
【0085】
積載用紙の全体重量が重くて再給紙搬送ベルト5123の用紙搬送力が十分であるにもかかわらず、積載用紙の前側の先端が突き当て面55に当接したあと再給紙搬送ベルト5123を必要以上に長い距離で移動させる場合、積載用紙の最下位用紙の前側の先端が突き当て面55に押し当てられて、シワや損傷を発生させる恐れがある。反対に、積載用紙の全体重量が軽くて再給紙搬送ベルト5123の用紙搬送力が不十分であるにもかかわらず、積載用紙の前側の先端が突き当て面55に当接したあと再給紙搬送ベルト5123を短い距離で移動させた場合、再給紙ローラ52及びサバキ部材54が積載用紙の最上位用紙を取り出すことができなくなって再給紙ミスを起こす恐れがある。したがって、用紙の前側の先端が突き当て面55に当接したあと再給紙搬送ベルト5123がさらに移動する追加移動距離として、上述したような所定の数値が存在する。
【0086】
次に、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0087】
(実施例1)
積載用紙の重量に応じて追加移動距離を変更する例として、積載用紙の枚数に着目した場合について説明する。
【0088】
再給紙搬送ベルト5123によって搬送される積載用紙の枚数として、200枚以下の少量積載の場合、及び、201枚以上の多量積載の場合という2つのパターンに区分する。そして、追加移動距離として、200枚以下の少量積載の場合、及び、201枚以上の多量積載の場合に対して、それぞれ、90mm及び10mmに設定する。追加移動距離の設定値は、制御部に電気的に接続されたROMの中に格納されている。積載用紙の枚数の情報は、両面印刷装置10に設置された枚数カウンタから取得されて、制御部に電気的に接続されたRAMの中に格納されている。そして、以下のようなプロセスに従って両面印刷が行われるように、制御部が各ユニット2乃至7を制御する。なお、上記の90mm及び10mmという追加移動距離の値は、再給紙搬送ベルト5123の用紙搬送速度を160mm/秒とした場合に、それぞれ、0.56秒及び0.06秒の追加移動時間と読み替えて時間の値で規定することができる。
【0089】
給紙トレイ21上の用紙を、表面用の孔版が装着された印刷ユニット4に搬送し、印刷ユニット4で表面印刷処理を行う。表面印刷処理された用紙を排紙トレイ32に搬送し、搬送されてきた用紙の後側の先端を排紙トレイ32に設けられたエンドプレート322で受け止めて、表面印刷処理された用紙を排紙トレイ32の上に積載する。エンドプレート322が、排紙トレイ32上の積載用紙を再給紙トレイ51に向けて搬送する。排紙トレイ32に排出されてきた用紙の枚数を枚数カウンタでカウントして、積載用紙の枚数として取得する。
【0090】
再給紙トレイ51の駆動モータで駆動される再給紙搬送ベルト5123によって再給紙トレイ51に搬送されてきた積載用紙を、突き当て面55に向けて搬送する。その結果、積載用紙の前側の先端が突き当て面55に当接するが、当接後にさらに駆動モータを駆動して再給紙搬送ベルト5123を所定の追加移動距離で移動させる。枚数カウンタから得られた積載用紙の枚数が200枚以下の少量積載の場合には、追加移動距離が90mmとなり、再給紙搬送ベルトを90mmの距離で前側に向けて移動させる。また、枚数カウンタから得られた積載用紙の枚数が201枚以上の多量積載の場合には、追加移動距離が10mmとなり、再給紙搬送ベルト5123を10mmの距離で前側に向けて移動させる。その結果、いずれの場合においても、積載用紙の最下位用紙にシワ等を発生させることなく、突き当て面55への用紙揃えを安定的に且つ確実に実行することができた。
【0091】
積載用紙の前側の先端が突き当て面55に当接して揃えられた積載用紙を再給紙ローラ52及び中間搬送ローラ53を通過させることにより、用紙が裏返った状態になる。裏返しになった用紙を、裏面用の孔版が装着された印刷ユニット4に搬送し、印刷ユニット4で裏面印刷処理を行う。裏面印刷処理された用紙を、排紙トレイ32に搬送して、一連の両面印刷が完了する。
【0092】
(実施例2)
積載用紙の重量に応じて追加移動距離を変更する例として、積載用紙の枚数及び用紙サイズに着目した場合について説明する。
【0093】
再給紙搬送ベルト5123によって搬送される積載用紙の枚数や用紙サイズに従って、追加移動距離(追加移動時間)を、例えば、表1に示すような15種類のパターンに区分する。表1において、例えば、用紙サイズがA3サイズであり且つ積載枚数が150枚である場合、追加移動距離(追加移動時間)を70mm(0.44秒)に設定する。
【0094】
【表1】


なお、表1における()内の数値は、再給紙搬送ベルト5123の用紙搬送速度を160mm/秒とした場合の再給紙搬送ベルト5123の追加移動時間である。
【0095】
追加移動距離(追加移動時間)の設定値は、制御部に電気的に接続されたROMの中に格納されている。積載用紙の枚数の情報は、両面印刷装置10に設置された枚数カウンタから取得され、制御部に電気的に接続されたRAMの中に格納されている。用紙サイズの情報は、給紙トレイ21や排紙トレイ32や再給紙トレイ51に設けられた各側板の用紙幅方向(Y方向)の移動量を検知するセンサの少なくとも一つから取得され、制御部に電気的に接続されたRAMの中に格納されている。そして、以下のようなプロセスに従って両面印刷が行われるように、制御部が各ユニット2乃至7を制御する。
【0096】
給紙トレイ21上の用紙を、表面用の孔版が装着された印刷ユニット4に搬送し、印刷ユニット4で表面印刷処理を行う。表面印刷処理された用紙を排紙トレイ32に搬送し、搬送されてきた用紙の後側の先端を排紙トレイ32に設けられたエンドプレート322で受け止めて、表面印刷処理された用紙を排紙トレイ32の上に積載する。エンドプレート322が、排紙トレイ32上の積載用紙を再給紙トレイ51に向けて搬送する。排紙トレイ32に搬送されてきて枚数カウンタでカウントされた用紙の枚数を、積載用紙の枚数としてRAMに一時的に格納する。また、操作パネル上にて設定された用紙サイズ、又は、排紙トレイ32に設けられた側板の用紙幅方向(Y方向)の移動量を検知するセンサで検出された用紙サイズを、積載用紙の用紙サイズとしてRAMに一時的に格納する。
【0097】
再給紙トレイ51の駆動モータで駆動される再給紙搬送ベルト5123によって再給紙トレイ51に搬送されてきた積載用紙を、突き当て面55に向けて搬送する。その結果、積載用紙の前側の先端が突き当て面55に当接するが、当接後にさらに駆動モータを駆動して再給紙搬送ベルト5123を所定の追加移動距離(追加移動時間)で移動させる。すなわち、得られた積載用紙の枚数や用紙サイズに応じて、再給紙搬送ベルト5123を所定の追加移動距離(追加移動時間)で前側に向けて移動させる。その結果、表1に示したいずれの場合においても、積載用紙の最下位用紙にシワ等を発生させることなく、突き当て面55への用紙揃えを安定的に且つ確実に実行することができた。
【0098】
積載用紙の前側の先端が突き当て面55に当接して揃えられた積載用紙を再給紙ローラ52及び中間搬送ローラ53を通過させることにより、用紙が裏返った状態になる。裏返しになった用紙を裏面用の孔版が装着された印刷ユニット4に搬送し、印刷ユニット4で裏面印刷処理を行う。裏面印刷処理された用紙を、排紙トレイ32に搬送して、一連の両面印刷が完了する。
【0099】
上述したように、本発明によれば、再給紙トレイ51において、用紙の搬送量が不足していることに起因して再給紙位置での用紙揃えが不十分である場合に、突き当て面55への用紙揃えを安定的に且つ確実に実行することができるとともに、積載用紙が揃っている場合であっても、追加移動距離が所定量に規定されているために過剰な用紙搬送に起因した最下位用紙へのシワ等の発生を防止することができるという効果を奏する。
【0100】
なお、本発明を理解しやすくするために、具体的な構成や材料や数値を用いて説明したが、これらはあくまでも例示であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲内において、種々の実施形態や変形例を構成することができることは、当業者には明らかである。
【符号の説明】
【0101】
1:印刷機本体
2:給紙ユニット
3:排紙ユニット
4:印刷ユニット
5:再給紙ユニット
6:製版ユニット
7:排版ユニット
10:両面印刷装置
11:前側板
21:給紙トレイ
32:排紙トレイ
51:再給紙トレイ
52:再給紙ローラ
54:サバキ部材
55:突き当て面
59:先端検出センサ
321:排紙台
322:エンドプレート
511:再給紙台
5123:再給紙搬送ベルト
P1:用紙(両面とも印刷処理されていない)
P2:表面(第1面)印刷処理された用紙
P3:表面(第1面)印刷処理後さらに裏面(第2面)印刷処理された用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙トレイ上の用紙を、印刷ユニットに搬送し、当該印刷ユニットで第1面印刷処理を行って排紙トレイに搬送し、当該排紙トレイから再給紙トレイへ搬送し、裏返した状態で当該再給紙トレイから前記印刷ユニットに搬送し、前記印刷ユニットで第2面印刷処理を行って前記排紙トレイに搬送するように、制御部が制御する両面印刷装置において、
前記排紙トレイは、搬送されてきた用紙の一側の先端を受け止めるとともに、受け止めた用紙を前記再給紙トレイに向けて搬送するエンドプレートを備え、
前記再給紙トレイは、該再給紙トレイに搬送されてきた用紙を搬送する再給紙搬送ベルトと、当該再給紙搬送ベルトを駆動する駆動モータと、前記再給紙搬送ベルトによって搬送されてきた用紙の他側の先端を受け止める突き当て面と、を備え、
前記制御部は、前記再給紙搬送ベルトによって搬送された用紙の他側の先端が前記突き当て面に当接したあとさらに、前記駆動モータを駆動して前記再給紙搬送ベルトが所定の追加移動距離で移動するように制御することを特徴とする、両面印刷装置。
【請求項2】
前記排紙トレイから前記再給紙トレイに搬送されてきた用紙の重量変化に応じて、前記所定の追加移動距離を変更することを特徴とする、請求項1に記載の両面印刷装置。
【請求項3】
前記用紙の重量変化は、前記再給紙搬送ベルトの上に積載される用紙の枚数に起因していることを特徴とする、請求項2に記載の両面印刷装置。
【請求項4】
前記用紙の重量変化は、前記再給紙搬送ベルトの上に積載される用紙の種類に起因していることを特徴とする、請求項2に記載の両面印刷装置。
【請求項5】
前記排紙トレイから前記再給紙トレイに搬送されてきた用紙の重量変化に応じて、前記所定の追加移動距離を移動するための移動時間を変更することを特徴とする、請求項1に記載の両面印刷装置。
【請求項6】
前記再給紙搬送ベルトによる用紙搬送速度は、前記エンドプレートによる用紙搬送速度以上であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の両面印刷装置。
【請求項7】
前記再給紙トレイは、前記突き当て面の側に下方に傾斜するように配置されていることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一つに記載の両面印刷装置。
【請求項8】
給紙トレイ上の用紙を、印刷ユニットに搬送し、当該印刷ユニットで第1面印刷処理を行って排紙トレイに搬送し、当該排紙トレイから再給紙トレイへ搬送し、裏返した状態で当該再給紙トレイから前記印刷ユニットに搬送し、前記印刷ユニットで第2面印刷処理を行って前記排紙トレイに搬送するように、制御部が制御する両面印刷装置における用紙搬送方法において、
前記排紙トレイに設けられたエンドプレートにより、搬送されてきた用紙の一側の先端が受け止められるとともに、受け止めた用紙が前記再給紙トレイに向けて搬送され、
前記再給紙トレイの駆動モータで駆動される再給紙搬送ベルトにより、前記再給紙トレイに搬送されてきた用紙が、突き当て面に向けて搬送されて用紙の他側の先端が前記突き当て面に当接し、
前記再給紙搬送ベルトで搬送された用紙の他側の先端が、前記突き当て面に当接したあとさらに、前記駆動モータで駆動される前記再給紙搬送ベルトにより所定の追加移動距離で移動するように前記制御部で制御されることを特徴とする、両面印刷装置における用紙搬送方法。
【請求項9】
前記排紙トレイから前記再給紙トレイに搬送されてきた用紙の重量変化に応じて、前記所定の追加移動距離を変更することを特徴とする、請求項8に記載の両面印刷装置における用紙搬送方法。
【請求項10】
前記用紙の重量変化は、前記再給紙搬送ベルトの上に積載される用紙の枚数に起因していることを特徴とする、請求項9に記載の両面印刷装置における用紙搬送方法。
【請求項11】
前記用紙の重量変化は、前記再給紙搬送ベルトの上に積載される用紙の種類に起因していることを特徴とする、請求項9に記載の両面印刷装置における用紙搬送方法。
【請求項12】
前記排紙トレイから前記再給紙トレイに搬送されてきた用紙の重量変化に応じて、前記所定の追加移動距離を移動するための移動時間を変更することを特徴とする、請求項8に記載の両面印刷装置における用紙搬送方法。
【請求項13】
前記再給紙搬送ベルトによる用紙搬送速度は、前記エンドプレートによる用紙搬送速度以上であることを特徴とする、請求項8乃至12のいずれか一つに記載の両面印刷装置における用紙搬送方法。
【請求項14】
前記再給紙トレイは、前記突き当て面の側に下方に傾斜するように配置されていることを特徴とする、請求項8乃至13のいずれか一つに記載の両面印刷装置における用紙搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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