説明

両面接着テープおよびこれを備えたかつら

かつら(100)を頭部に被着するための両面接着テープ(10)であって、芯材(11)の両側の粘着層(12,13)の少なくとも一方の粘着層(12)の表面を、微小凹凸状(12a)に成形することにより艶消し処理するとともに、一方の粘着層(12)を、かつらベース(101)のネット部材に用いるフィラメント(103)の線径の少なくとも過半を埋没させる厚みで形成することにより、かつらの裏面から、一方の粘着層(12)をネット部材の網目(104)に入り込ませてネット部材に接着するとともに、粘着層(12)によってフィラメント(103)を面状に接着し、他方の粘着層(13)を頭部に接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は両面接着テープに係り、典型的にはヘアファッション用あるいは増毛用などに好適なかつらを頭部に止着するために用いる両面接着テープと、この両面接着テープを用いたかつらに関する。
【背景技術】
かつらは、一般に、軟質の合成樹脂材料で成形した人工皮膚製或いはネット部材を主体としたかつらベースとこのかつらベースに植設した多数の毛髪とで構成されている。かつらを装着した時の通気性と軽さを指向すると、かつらベースに植設する毛髪の重量を軽減化することはもとより、かつらベースの重量を如何に軽く作製するかに考慮を払わなければならない。かつらベースの軽量化のために、人工皮膚製のかつらベースの一部、例えば天頂部や両サイドなどをくり抜き、このくり抜き部分にネット部材を結合して部分的にネット部材のかつらベースとしたり、或いはかつらベース全体をネット部材で構成し、周囲を合成樹脂製の補強部材で縁取りして補強したものなど、従来から種々の技術開発がなされてきた。また、かつらの軽量化と通気性を確保し、自然な生え際を呈させるために生え際をネット部材で構成したかつらベースも、例えば特開昭62−215002号公報で開示された技術をはじめとして、種々に存在する。
ところで、かつらを頭部へ装着するには、かつらが頭部からずれたり容易に外れたりしないよう、かつらベースの裏面と頭部との間を止着手段によって確実に止着しなければならない。従来、このような止着手段として、市販されている液状又は粘性の接着剤や市販の両面接着テープ或いはかつら止着専用の挟着具などがあり、何れかの手段で頭部へ固定するようにしている。専用の挟着具を用いれば、かつらの着脱が容易である。この挟着具は、典型的には、櫛歯状の複数の突片を備えた反転部材をかつらベースの裏面に固定し、該突片を頭髪に挿し入れて反転部材の反転作用を利用して自毛に挟着するようになっている。この挟着具は使用者の頭髪を利用するものであるため、頭部の固着箇所に頭髪の残毛が少ない場合などには不適当である。
かつらを頭部に止着するのに、液状又は粘性の接着剤を用いる場合は、これを頭皮とかつらベース裏面との間に塗布して貼り付けるため、皮膚との反応性がなく、かぶれなどの炎症を起こしにくい医療用のものを用いる。しかし、かつらを外すときに、頭皮に接着した接着剤をシンナーなどの剥離液を用いて剥がさなければならないため、皮膚が物理的にも化学的もダメージを受けがちであり、取外し作業も面倒である。
両面接着テープの場合は剥離液は殆ど必要とならず、液状又は粘性の接着剤を用いる場合に比ベてかつらの着脱がより簡易である。両面接着テープは、通常、厚さが30μm程度のポリエチレンフィルム製の芯材の両面に粘着剤を塗布し、その各表面を剥離紙で貼り合わせてロール状にしたものが市販されている。このロール状の両面接着テープを適宜長さに裁断して剥離紙を取り除き、一方の粘着面を人工皮膚製のかつらベースの裏面又はネットベース裏面に取り付けた合成樹脂製の補強部材に、例えば前後左右の4か所で貼り付けるとともに、他方の粘着面を頭皮や頭髪に貼り付けてかつらを固定する。両面接着テープの粘着剤の層厚は、通常、30μm〜50μm厚程度の低アレルギー性アクリル系の医療用粘着剤が用いられ、上記芯材の両面にそれぞれ平滑に塗布されている。
ところで、かつらベースの全体又は一部をネット部材で構成する場合(これを以下、ネットベースと称することもある。)、ネット素材として、ナイロン,ポリエステル等の、直径が約100μm〜150μm程度のフィラメントを用い、このフィラメントで菱形や矩形状の空間を有するよう網目をもったシート状に形成し、使用者の頭部膨出状態に沿った形状に成形してネットベースとしており、このネットベースに多数の毛髪を植設してかつらを形成している。かつらの使用者は、装着時にネットベースがしわになったりたるまないようにその周囲を外方へ引っ張りながら、ネットベース裏面の所定箇所に付設した挟着具や、頭皮に塗布した液状又は粘性の接着剤、或いは両面接着テープを用いて頭部に固定する。
このように、ネットベースを周囲方向に外力を加えながら展張しつつかつらを装着するため、細いフィラメントで構成したネット部材に過度の引張力がかかって、ネットベースの歪みや破損を招きやすい。そのため、ネットベースの負荷がかかり易い部分、とくにその周縁部にやや硬質のプラスチック製の補強部材を固定することが必要である。加えて、ネットベースの裏面所定箇所に接着剤を塗布したり又は挟着具を取り付けるためには、軟質の合成樹脂や布材などの別部材で止着手段用の止着台座を製作し、この止着台座をネット部材の裏面所定箇所に設けなければならない。この止着台座は接着剤や挟着具を取り付けるためのものであるから、一般に、幅広の合成樹脂や布材で肉厚に形成し、これをネットベース裏面の周囲数カ所に頑強に縫着することになるため、この部分が重く且つ肉厚にならざるを得ない。また、ネットベースに上記補強部材や止着台座などを設けると、その部分の網目が塞がれてしまって通気性が阻害され、蒸れや歪み或いは劣化の原因となる。
したがって、ネットベースの軽量化及び通気性を重視すると、補強部材や止着台座を設けない方が望ましい。このため、補強部材や止着台座を介することなくネットベースに直接、止着手段を設けようとすると、このような止着手段としては、接着剤や挟着具に代えて、両面接着テープを利用するほかない。何故なら、ネット部材を構成する細い径のフィラメントに挟着具を直接設けようとすると、この挟着具を複数のフィラメントに引っ掛けて縫着することになるが、ネットベースを周囲に引っ張りながら挟着具を頭部の自髪に挟着しようとすると、細いフィラメントに過度の張力が生じ、フィラメントの交点の解離やフィラメント自体の切断などが生じてネットベースの破損を招いてしまう。のみならず、この挟着具がかつらの外側から、毛髪の隙間を通して容易に視認されてしまう。一方、液状又は粘性の接着剤を用いて頭皮や頭髪にネットベースと直接接着しようとしても、ネットベースのフィラメントと使用者の頭部とは実質的に線状にしか接触し得ない。そのため、フィラメントと頭部との線状の接着だけではかつらが頭部から簡単に外れてしまい、実用に適さない。
そこで、本発明者らは、市販の医療用両面接着テープを用い、一方の粘着面をネットベース裏面の所定箇所に直接、貼り付けることを試みた。この場合、両面接着テープの一方の粘着面をネット部材を構成する各フィラメントに対して直接貼り付け、また、両面接着テープの他方の粘着面を装着者の頭皮及び頭髪に貼り付けて固定してみた。このようにして固定したとき、かつらが頭部に確実に固着されるのであれば、わざわざかつらベース裏面に合成樹脂や布製の補強部材,止着台座を設ける必要がなく、その結果、通気性が十分に確保されるとともに、軽量化も達成することができる筈である。
しかしながら、本発明者らは種々の実験を繰り返したところ、両面接着テープの一方の粘着面をネット部材に直接貼り付けようとしても、ネット部材を構成するフィラメントの断面が円状であるため、液状又は粘性の接着剤の場合と同様、線接触でしか貼り付くことができないことが分かった。これは、市販の医療用両面接着テープの一方の粘着層の厚さが30〜50μm程度であるのに対して、ネット部材を構成するフィラメントは一定の強度を必要とするから、通常、100〜150μm程度のものを用いているため、両面接着テープの粘着層をネット部材に対して圧接しても、せいぜい丸い断面のフィラメントの一辺に沿って線状にしか接着できないからである。
また、それに加えて、交差する各フィラメント間に形成される網目、すなわち格子状のネット目は空間であることから、大部分の粘着面は役に立つことができず、僅かにフィラメントの線方向でしか貼り付けることができないので、接着力が弱く、かつらを装着した場合に容易に頭部から外れてしまうことが分かった。これは両面接着テープの粘着剤の粘着力を強くしても同様であった。このようにネットベースのかつらに市販の医療用両面接着テープを適用しても、接着剤のネットベースへの付着力が弱すぎて実用的でないことが確認された。
また、上記市販の医療用両面接着テープをネットベースに適用したものを試作して、かつら装着時の状態を外側から観察してみると、ネットベースに植設した毛髪の隙間を通して、交差する各フィラメントの網目から頭皮が透けて見えるのであるが、両面接着テープを貼り付けた箇所では、各フィラメントの網目から両面接着テープの上記一方の平滑な粘着面が光ってしまい、観察者にこの不自然な輝光が視認されて、このてかりのため粘着面の部分が白く浮き上がって見え、その結果、両面接着テープの存在が容易に知られてしまうことも分かった。
このように、ネットベースで成るかつらを両面接着テープを用いて頭部に装着しても、ネットベースに対して線状にしか接着し得ないため十分な定着力が得られず、さらに、両面接着テープの粘着面が平滑であるため、かつら内に通過した光がかつらの毛髪を通してネットベースの裏面に貼られている両面接着テープの上記平滑な粘着面に当たって反射してしまい、両面接着テープが視認されてしまう等の課題があった。
本発明は以上の点に鑑み、ネット部材から構成されたかつらベースに対しても十分な接着力が得られると共に、かつら装着時に存在が露見されにくいかつら止着用両面接着テープと、この両面接着テープを備えた良好な外観見栄えを呈するかつらを提供することを目的としている。
【発明の開示】
上記目的を達成するため、本発明の一態様による、かつらを頭部に止着するために用いる両面接着テープは、両面の粘着層の少なくとも一方の表面が艶消し処理されることにより構成されている。
前記構成において、前記粘着層は、好ましくは、その表面を微小凹凸状に形成することにより艷消し処理が施される。
前記粘着層表面の微小凹凸は、微小突起を形成した押し型具で該粘着層を押圧することにより付与されるか、芯材に粒状の粘着剤をスプレー塗布することにより形成されることができる。或いは、前記粘着層表面の微小凹凸は、ブラスト加工にて付与されてもよい。ブラスト加工の場合、ブラスト材として微細に粉砕したドライアイス又は氷を用いれば、粘着層に凹凸加工を付与した後でブラスト材が溶けるので、ブラスト材が粘着層に残存することがない。
前記微小凹凸の表面粗さは、好ましくは光の波長より大きな波長となるような粗さに形成され、これにより、本発明のかつら止着用両面接着テープの一方の粘着面をかつらの裏面に接着した場合、かつらの外側から光が入射して両面接着テープの粘着面に当たっても微細凹凸により乱反射するので、不自然な光が発生することがない。
本発明の他の態様によれば、ネット部材が少なくとも一部に構成されるかつらを頭部に止着するために用いる両面接着テープであって、両面の粘着層の少なくとも一方が、該ネット部材の線径の過半を埋没させる厚みで形成されていることを特徴とする。
さらに、本発明は、ネット部材が少なくとも一部に構成されるかつらを頭部に止着するために用いる両面接着テープであって、両面の粘着層の少なくとも一方が、該ネット部材の線径の過半を埋没させる厚みで形成されるとともに、該一方の粘着層の表面が艶消し処理されて成ることを特徴とする。
前記構成において、前記粘着層の一方の厚さは、好ましくは、かつらベースの少なくとも一部を構成するネット部材の線径と同等もしくはそれ以上の厚みに設定され、この一方の粘着層の表面が艶消し処理を施される。また、前記粘着層の他方の厚さは、頭髪の直径と同等もしくはそれ以上の厚みに設定される。前記各粘着層の一方又は両方は、好ましくは、それぞれ50μm〜200μmの範囲の厚みに形成される。
さらに、本発明にかかるかつらは、ネット部材を少なくとも一部に有するかつらベースと、かつらベースに植設した毛髪と、芯材の両面に粘着層を有し一方の粘着層をかつらベースに接着すると共に、他方の粘着層を使用者の頭部に接着するかつら止着用両面接着テープと、を備えており、上記かつら止着用両面接着テープの上記一方の粘着層の表面が艶消し処理されて成り、この艷消しされた一方の粘着層を、好ましくは、かつらベースのネット部材の網目に入り込ませて該ネット部材に接着したことを特徴とする。
前記構成において、好ましくは、かつら止着用両面接着テープの一方の粘着層の表面を微小凹凸状に形成することによりこの表面が艶消し処理を施される。
本発明によれば、かつら止着用両面接着テープの粘着層の一表面を微小凹凸状に形成することにより艶消し処理が施されているため、艶消しされた粘着層表面をかつらベースのネット部材の裏側からこのネット部材に接着することにより、ネット部材を構成するフィラメントの網目に位置する微小凹凸状の粘着層に対してかつらの外側から光が当たっても、この微小凹凸によって乱反射される。従って、不自然な光沢が消え、両面接着テープがかつら裏側に接着されているのが外部からは分からず良好な外観見栄えが得られる。
また、本発明にかかるかつらは、ネット部材を少なくとも一部に有するかつらベースと、かつらベースに植設した毛髪と、芯材の両面にそれぞれ粘着層を有し一方の粘着層を上記かつらベースに接着すると共に他方の粘着層を使用者の頭部に接着するかつら止着用両面接着テープと、を備えており、かつら止着用両面接着テープの上記一方の粘着層が、上記ネット部材の線径の過半を埋没させる厚みで形成され、一方の粘着層をネット部材の網目に入り込ませて該ネット部材に接着したことを特徴としている。
前記両面接着テープの一方の粘着層の表面は、好ましくは、微小凹凸状に形成されることにより艶消し処理される。
前記止着用両面接着テープの一方の粘着層は、好ましくは、ネット部材を構成するフィラメンントの線径と同等もしくはそれ以上の厚みで形成されるとともに、該一方の粘着層の表面が艶消し処理を施される。また、止着用両面接着テープの他方の粘着層は、好ましくは、頭髪の直径と同等もしくはそれ以上の厚みで形成される。前記粘着層の一方又は両方は、好ましくは、それぞれ、50μm〜200μmの範囲の厚みに形成される。
両面接着テープの粘着層の、少なくともネットベースに接着する側の肉厚を厚く、すなわち、ネット部材の線径の過半を埋没させる程度の肉厚に形成することで、かつら裏側から両面接着テープがネット部材に接着された際、粘着剤がネット部材を構成するフィラメント間の網目まで入り込み、そして、各フィラメントを包んで周面で面状に接着されることになるので、高い接着力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の実施形態におけるかつらを示す斜視図である。
図2は、本発明の実施形態における両面接着テープの構成を示す図である。
図3は、一方の粘着面にフィラメントが半分程度埋まって面状に接着された状態を示す断面図である。
図4は、一方の粘着面にフィラメントの全周が埋まって面状に接着された状態を示す断面図である。
図5は、両面接着テープにおいて、凹凸形状を形成した一方の粘着面でフィラメントを面状に接着し、他方の粘着面に頭髪を埋め込んだ状態の断面図である。
図6は、両面接着テープにおいて、凹凸形状を形成した一方の粘着面でフィラメントを全周で接着し、他方の粘着面に頭髪を埋め込んだ状態の断面図である。
図7は、本発明の実施形態における両面接着テープの使用時の様子を示す図である。
図8は、実施例1による、両面接着テープの一方の粘着層表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(200倍)である。
図9は、実施例2による、平織りにしたネットベースと両面接着テープの接着状態の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(50倍)である。
図10は、実施例3による、チュール織りにしたネットベースと両面接着テープの接着状態の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(50倍)である。
図11は、比較例1による、従来の両面接着テープの一方の粘着層表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(200倍)である。
図12は、比較例2による、平織りにしたネットベースと従来の両面接着テープの接着状態の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(50倍)である。
図13は、比較例3による、チュール織りにしたネットと従来の両面接着テープの接着状態の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(50倍)である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明は、以下の詳細な発明及び本発明の幾つかの実施の形態を示す添付図面に基づいて、より良く理解されるものとなろう。なお、添付図面に示す種々の実施例は本発明を特定または限定することを意図するものではなく、単に本発明の説明及び理解を容易とするためだけのものである。
以下、図面に基き、本発明によるかつら止着用両面接着テープおよびこれを備えたかつらの好適な実施の形態を説明する。
図1は、本発明によるかつら止着用両面接着テープを備えたかつら100の構成例を示している。両面接着テープ10は、かつらを頭部に止着するために用いられるが、この実施形態では、たとえば図1に示すように、使用者の頭部の湾曲状に沿って上面がやや膨出した形状の所謂部分かつら100に使用される。図示の例では、両面接着テープ10は、部分かつら100の内面側、即ち裏面側の周縁に沿って断続的に複数箇所に配置されており、両面接着テープ10の一方の粘着面が部分かつら100の裏側からこのかつら100に接着され、他方の粘着面が使用者の頭部に接着される。
部分かつら100は、全体が網目状のネット部材でなるかつらベース101に毛髪102を植毛して構成されている(図1には、毛髪102が数本だけ描かれているが、実際は、かつらベース101の全表面に多数本植毛されている。)。なお、かつらベース101は、図示のように全体をネット部材で構成することなく、例えば分髪部やつむじ部に相当する箇所を部分的に柔軟な合成樹脂製の人工皮膚で形成し、この人工皮膚部と残余のネット部材とを接合して全体形状がキャップ状に構成されたものであってもよく、或いは、両面接着テープ10が接着される箇所だけをネット部材で構成し、他の大部分を人工皮膚で構成したものであってもよい。本発明のかつら止着用両面接着テープ10は、かつらベースがとくにネット部材で成る場合に好適に使用されるが、勿論これに限定されることなく人工皮膚その他の素材のかつらに適用してもよい。また、本発明に適用し得るかつらは、図1に示すような頭部を部分的に覆う部分かつら100であっても、また、使用者の頭部全体に被せるタイプの所謂、全かつらであっても構わない。
図1に示す部分かつら100のかつらベース101は、全体がネット部材で構成されており、このネット素材は、ナイロン糸やポリエステル糸の単繊維又は撚り糸で成るフィラメント103を用い、このフィラメント103を、図1のC部拡大図に示すように、菱形や矩形状の空間でなる格子状の網目104を有するように組んで、使用者の頭部膨出状態に沿った形状に軽量に形成されている。ネット部材を構成するフィラメント103の材料及び繊度(デニール)や番手は、適宜のものを選択使用できるが、かつらベースをネットベースにする場合は、通気性と軽さが最も重要な要素になるため、ネットベースをできるだけ軽量に成形するには、フィラメント103の径が細ければ細いほど有利になる。また、フィラメント径が細ければそれだけ、外部から視認され難くなり有利である。しかし、細くなればなるほど破断力が低下するので、かつらのネットベースとしては、例えばナイロン,ポリエステル等の、直径が約100μm〜150μm程度のフィラメント103で構成するのが一般的である。ただし、フィラメント103の直径がこれ以上細いものであっても、本発明は十分に適用可能である。
このフィラメント103で、網目104を有するように予め平織りやチュール織りなどで形成した偏平なシートを所定の頭部形状に沿ってキャップ形状に膨出させて成形したものをかつらベース101とするか、または、フィラメント103を経糸と緯糸に配置してこれらの交点を熱溶着等するとともに、キャップ形状に膨出させて成形したものをかつらベース101とする。
また、経糸と緯糸との組み合わせで構成されるフィラメント103の網目104の大きさは、植毛する毛髪のボリュームによって適宜のサイズとすることができる。一般に、毛量を多くしたい場合は、なるべく目の細かい網目104にすればよく、或いは、使用者の頭髪を網目から引き出してかつらの毛髪と混合して活用しようとする場合は網目のサイズを大きく、例えば1cm以上に設定すればよい。植毛する毛髪102は、フィラメント103の経糸と緯糸にそれぞれ結着又は接着等で締結し、場合によりその交点にも毛髪102を結着することができる。何れの場合においても、形成される網目104には当然ながら毛髪102を植毛することができないので、使用者がかつらを装着したとき、この網目104を通して着用者の頭部(頭皮や頭髪)が毛髪102の隙間等から視認されがちである。従って、かつらベース101の裏面からネット部材に接着する両面接着テープ10も、毛髪102の隙間を通して視認され得ることになるので、フィラメント103の網目104に位置する粘着面の反射(てかり)が問題となるが、本発明では、後述するように、両面接着テープ10の粘着面の表面が艶消し処理されていることによって乱反射され、不自然な輝光が生じない。したがって、かつらの外側から毛髪等の隙間を通して両面接着テープ10の存在が視認される虞れが軽減する。
つぎに、本発明のかつら止着用両面テープの具体的構成を図2および図3を参照して説明する。
図2(a)はかつら止着用両面テープ10の平面図、同(b)はその断面図、同(c)は図2(b)のB部を拡大して示す詳細図である。図2(b)から明らかなように、両面接着テープ10は、たとえばポリエチレンフィルム製の透明な芯材11の両側において、その両表面に粘着層12,13がそれぞれ形成されている。粘着層12,13は、人体に使用するものであるため、医療分野で適用される低アレルギー性の透明なアクリル系粘着剤が好適である。両面の粘着層12,13の少なくとも一方の表面には艶消し処理が施されている。本例では、芯材11の両側面の粘着層12,13の表面がともに艶消し処理されているものとするが、少なくとも、かつらベース101に接着する側の粘着層12(以下、これを一方の粘着層と称する。)だけに艶消し処理が施されていればよい。さらに、図示を省略するが、一方の粘着層12と他方の粘着層13の上から、それぞれ保護層もしくは保護膜として剥離紙(図示せず)が密着される。剥離紙は両面接着テープ10の使用に際して粘着層12,13から剥離される。そのため、剥離紙にはシリコーン樹脂が塗布される。
なお、芯材11および粘着剤12,13は透明のものに限らず、頭皮の色や、例えば乳白色や肌色などネットベースの色彩と同系色に着色されていてもよく、外部からかつらベースが視認され難い迷彩色性を備えていれば好ましい。
粘着層12,13の表面に施される艶消し処理は、該粘着層12,13の表面を図2(c)(図2(b)のB部)のように微小凹凸12aを形成することにより行なわれる。この艶消し処理としては、例えばエンボス加工が好適である。エンボス加工を行なう場合、微小凹凸状の表面をもつ転写型を用いて直接粘着層に微小凹凸12aを形成してもよく、或いは剥離紙(図示せず)を密着した上からエンボス加工を行ってもよい。粘着層の微小凹凸(エンボス加工)は表面粗さ(Ra)として、可視光(0.38μm〜0.76μm)の乱反射がよく起きるように、光の波長よりも十分に大きくし、例えば、2〜10μmとすることが望ましい。約4μm程度に形成されていれば十分である。
ここで、両面接着テープ10の粘着層12,13表面に微小凹凸12a,13aを付与する場合の二,三の例を挙げる。
第1は、表面に微小突起を形成した押し型具で粘着層表面12,13又は剥離紙の上から押圧することで、粘着層表面に微小凹凸を付与する方法である。この押し型具は、平板形,ローラ形を問わないが、その表面に上記した光の波長よりも十分に大きい、例えば約4μm程度の表面粗さの微小突起が形成されており、この押し型具を両面接着テープ10の粘着層12,13表面に直接か又は粘着層上に剥離紙を密着した状態で、この上から押圧して微小凹凸12a,13aを形成する。
第2は、両面接着テープ10用の芯材11に対して、適当な粘度を有する粘着剤をスプレー塗布して、微小凹凸を付与する方法である。粘着剤に適度の粘性があれば、細かい粒状のまま芯材表面に残り、微小凹凸を形成することができる。
第3は、両面接着テープ10の粘着層12,13表面に直接、又は剥離紙の上からブラスト加工を施す方法である。この場合、ブラスト材(研磨材)としては、サンドではなくドライアイスや氷の微細粒子を用いて行うことで、粘着層に凹凸加工を付与した後でブラスト材としてのドライアイスや氷が溶けるので、粘着層12,13又は剥離紙の表面に研磨材が残存することがない。
これらの方法を適宜に用いることで、両面接着テープ10の作製時、或いは入手した市販の両面接着テープ10に対して、粘着層12,13表面に微小凹凸を付与することができる。
さらに、本発明の両面接着テープ10の第2の特徴は、図3に示すように、両面の粘着層12,13のうちの少なくとも一方の粘着層12が、ネットベース101を構成するフィラメント103の線径の過半を埋没させる厚みで形成されていることである。
かつらベース101において、ネット部材を構成するフィラメント103の線径は、上記したように通常、約100μm〜150μm程度のものを用いており、少なくとも、このフィラメント103に接着する側の、両面接着テープ10の一方の粘着層12が、本発明では、フィラメント103の直径の少なくとも1/2以上の厚み、すなわち50μm〜70μm以上の肉厚に設定されている。このように、一方の粘着層12がフィラメント103の直径の少なくとも1/2以上の厚みを備えることによって、両面接着テープ10の一方の粘着層12をネットベースに押しつけたとき、粘着層12の中にフィラメント103のほぼ下半分が包まれるように面状に接着されることになり、従来の線状に接着される場合に比べて、十分な接着強度が得られる。
さらに好ましくは、両面接着テープ10の一方の粘着層12は、図4に示すように、ネットベース101に使用するフィラメント103の線径(直径)とほぼ同等又はそれ以上の厚みをもつような肉厚に設定される。これにより、フィラメント103がほぼ全周囲方向で包囲されるように接着されるので、極めて強力な接着力が得られる。要は、ネットベースを構成するフィラメントの線径との比で粘着層12の肉厚を設定すればよい。
ここで、図2(b)に示すように、両面接着テープ10の芯材11の厚さt1は、一般に、30μm程度のものが用いられており、厚肉に形成する一方の粘着層12は、フィラメントの直径を考慮すると、t2=50μm〜200μm程度、好ましくは150μm程度とする。例えば直径130μm程度のナイロンフィラメントをネット部材として構成する場合、両面接着テープ10の一方の粘着層12をt2=150μm程度に形成し、この粘着層12をナイロンモノフィラメントに押しつけて接着すると、ナイロンモノフィラメント103が一方の粘着層12の中まで侵入して、フィラメント103の周面の一部又は全周まで覆われ、フィラメントの周面にわたって面状に接着される。そして、フィラメント103の網目104まで粘着層12が入り込んで定着されることになる。ここで、上記一方の粘着層12の厚みt2が厚すぎると、フィラメント及びその網目が完全に埋没してしまって、かつらベース101から剥離し難くなり取扱いがやっかいであるとともに、ネットの網目から粘着層12が上方へはみ出して、植毛した毛髪102に接着したりする。また、例えば50μm以下の肉薄であると、面状の接着を確保できない。
一方、両面接着テープ10の頭部側に接着される他方の粘着層13は、必ずしも上記のような厚みに設定する必要はなく、市販の両面接着テープ10の通常の30um程度の厚みを備えていればよい。何故なら、頭部は一般に多少の凹凸はあっても一般に平面状を呈しているから、他方の粘着層13は面で接着するからである。しかし、他方の粘着層13を頭髪の上から押しつけて接着する場合、頭髪の通常の直径が50〜100μmであることを考慮すると、他方の粘着層13の厚みが上記の50μm〜150μm程度の肉厚に設定されていれば、頭部Hへの接着力が十分に発揮されるので好ましい。
なお、図1に示すように、この実施形態ではかつらベース101の周縁部に沿って設定される止着箇所に、図示のように所定ピッチ間隔で複数の両面接着テープ10を貼着して頭部適所に止着する。
本発明のさらに好ましい態様によれば、図5に示すように、上記両面接着テープ10の粘着層12,13、とくに、かつら100側に接着する一方の粘着層12は、上記したように、フィラメント103の直径の少なくとも1/2以上の厚み、例えば、50μm〜70μm以上の肉厚に設定されるとともに、好ましくは、当該一方の粘着層12の表面が、既述したように艶消し処理されて成る。これにより、一方の粘着層12はネットベースに確実に接着されると共に、フィラメント103の間に形成される網目104を通して、この粘着層12の表面がかつらの外側から見えたとしても、乱反射されて粘着層が視認されることがなく、粘着剤が透明であれば恰も頭皮がそのまま見える外観を呈する。図6に示すように、かつら100側に接着する一方の粘着層12を、フィラメント103の直径と同等程度に形成すれば、フィラメント103の全周囲を接着することができるので、グリップ性能がさらに向上する。
図7は、一方の粘着層12を肉厚に形成するとともに、その表面に微細凹凸12aを形成した両面接着テープ10の断面図であり、この両面接着テープ10を用いて、かつら100を頭部Hに止着した状態を示している。かつらベース101には毛髪102が植毛されており、一方の粘着層12をかつらベースを構成するフィラメント103に接着するとともに、他方の粘着層13を頭部Hに接着している。このように頭部Hに装着されたかつら100において、粘着層12,13の表面に艶消し処理が施されているため光が当たって反射するのを防ぎ、かつら内側に両面テープが接着されているのが外部からは分からず良好な外観見栄えが呈される。また、両面接着テープ10は透明であるためそれ自体の色が外部から透けて見えることはなく、この点でも見栄えを向上することができる。ここで、網目104の中に入り込んだ粘着層12が微小凹凸状の表面を有しているので、外部からの光が当たっても凹凸表面で乱反射され、反射光が光って不自然なてかりが生じるのが抑えられる。
また、両面接着テープ10をかつら100の内側に接着すると、粘着層12がかつらベース101の網目104に入り込み、フィラメント103の周囲を面状に包んで接着するので高い止着性が確保される。すなわち、粘着層12は、かつらベース101のネット部材の線径のほぼ1/2、好ましくは、それと同等もしくはそれ以上の厚さに設定されているため、ネット部材の網目104に入り込んでかつらベース101をしっかりと固定し、結合強度を有効に高めることができる。
次に、かつら止着用両面テープおよびこれを備えたかつらの具体的実施例と比較例について述べる。
【実施例1】
両面接着テープ10は、ポリエチレンフィルム製の厚さが30μmの透明な芯材11の両面に低アレルギー性の透明なアクリル系粘着剤をそれぞれ150μm厚さに堆積して粘着層12,13を形成した。粘着層12,13の表面に施される艶消し処理は、エンボス加工により表面粗さ(Ra)として、約4μm程度とした。
図8は、両面接着テープ10の粘着層に形成された微小凹凸表面を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。電子の加速電圧は15keVで、倍率は200倍である。図示するように、粘着層12の表面に微小凹凸が形成されていることが分かる。この粘着層12に光を照射したところ、粘着層12の表面からの反射は観察されなかった。なお、他方の粘着層13も粘着層12と同様な表面状態と艶消し処理効果が得られた。
【実施例2】
上記の両面接着テープ10をかつら100に接着させた。かつら100のかつらベース101は、ナイロン6の糸径130μmのフィラメント103を平織り組織状にしたネットを用いた。ネットの網目の大きさ、即ち糸と糸の間の距離を示すオープニングは、716.7μmである。両面接着テープ10の粘着層12は150μm厚、その表面にはエンボス加工により微細凹凸が形成されている。ここで、オープニング(μm)=25400/メッシュ数(インチ)−糸径、で表される。
図9は、かつらベース101と両面接着テープ10の接着状態の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。電子の加速電圧は15keVで、倍率は50倍である。図において、かつらベース101を上側に、両面接着テープ10の粘着層12を下側にしたときの表面を観察している。かつらベース101のネットに用いたナイロン6の格子状のフィラメント103が粘着層12に食い込み、面接触していることがわかる。
このかつら100を被試験者に装着させて両面接着テープ10の接着強度と外観観察を行った。かつらベース101のネットと被試験者の頭皮及び毛髪への両面接着テープ10の接着強度は良好で、また、両面接着テープ10の周囲からの光の反射は観察されなかった。さらに、かつら100を装着しない別の被試験者に観察させても、両面接着テープ10によりかつら100を装着していることは分からず、見栄えがよいことが判明した。
【実施例3】
上記の両面接着テープ10をかつら100に接着した。かつら100のかつらベース101は、ナイロン6の糸径93.3μmのフィラメント103を撚り組織状にしたネットを用いた。ネットの網目104の大きさ(オープニング)は1700μmである。
図10は、かつらベース101と両面接着テープ10の接着状態の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。電子の加速電圧は15keVで、倍率は50倍である。図において、かつらベース101を上側に、両面接着テープ10の粘着層12を下側にしたときの表面を観察している。粘着層12の厚さは、実施例2と同様に150μm厚、その表面には微細凹凸が形成されている。かつらベース101のネットに用いたナイロン6の格子状のフィラメント103が粘着層12に食い込み、面接触していることがわかる。
このかつら100を被試験者に装着させて両面接着テープ10の接着強度と外観観察を行った。かつらベース101のネットと被試験者の頭皮及び毛髪への両面接着テープ10の接着強度は良好で、また、両面接着テープ10の周囲からの光の反射は観察されなかった。さらに、かつら100を装着しない別の被試験者に観察させても、両面接着テープ10によりかつら100を装着していることは分からず、見栄えがよいことが判明した。
比較例1
従来の両面接着テープは、粘着層の表面に艶消し加工を行わなかった。ポリエチレンフィルム製の厚さが30μmの透明な芯材11の両側に低アレルギー性の透明なアクリル系粘着剤を50μmの厚さで塗布した市販されている通常の粘着層を形成し、保護膜として剥離紙を密着させた。
図11は艶消し処理を行っていない従来の両面接着テープ10の粘着層表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。電子の加速電圧は15keVで倍率は200倍である。図示するように、粘着層の表面には凹凸が形成されず平坦な表面であることが分かる。この粘着層に光を照射したところ、図8で示した本発明の実施例の場合と異なり、粘着層の平滑な表面からの反射が観察された。
比較例2
比較例1の従来の両面接着テープをかつら100に接着した。かつら100のかつらベース101は、ナイロン6の糸径130μmのフィラメントを平織りにしたネットを用いた。ネットの網目は、30本×30本/1インチ(2.54cm)である。図12はかつらベース101と両面接着テープ10の接着状態の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。電子の加速電圧は15keVで、倍率は50倍である。図において、かつらベース101を上側に、従来の両面接着テープの粘着層を下側にしたときの表面を観察している。図9に示す本発明の実施例2の場合と異なり、かつらベース101のナイロン6の格子状のフィラメントが、従来の両面接着テープの粘着層と、部分的にしか接着していないことが分かる。つまり、従来の両面接着テープにおいては、ネット部材の網目の下部にあるナイロン6で成るフィラメントが線接触でしかも部分的にしか粘着層と接着していない。このため、従来の両面接着テープは、かつらベース101のネット及びかつらの装着者の頭皮及び毛髪への密着が悪い。また、従来の両面接着テープの粘着層が凹凸を有していない平坦な面であるので、光が当たると反射が生じた。
比較例3
比較例1の両面接着テープをかつら100に接着した。かつら100のかつらベース101は、ナイロン6の糸径130μmの糸をチュール織りにしたネットを用いた。フィラメントの網目は、30本×30本/1インチ(2.54cm)である。図13は、かつらベース101への両面接着テープ10の接着状態の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。電子の加速電圧は15keVで倍率は50倍である。図において、かつらベース101を上側に、従来の両面接着テープの粘着層を下側にしたときの表面を観察している。
図10に示す本発明の実施例3の場合と異なり、かつらベース101のネットに用いたナイロン6の格子状のフィラメントが、従来の両面接着テープの粘着層と単に線状に接触するだけで、部分的にしか接着していないことが分かる。つまり、従来の両面接着テープにおいては、かつら100のかつらベース101のネットのチュール織の下部にあるナイロン6のフィラメントに線状でしかも部分的にしか粘着層と接着していない。このため、従来の両面接着テープは、かつらベース101のネット及びかつらの装着者の頭皮及び毛髪への密着が悪い。また、従来の両面接着テープの粘着層が凹凸を有していない平坦な面であるので、光が当たると反射が生じた。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は実施形態にのみ限定されるものでなく、本発明の範囲内で適宜変更等が可能である。たとえば、両面接着テープの両側の粘着層12,13の表面には艶消し処理される例を説明したが、少なくともいずれか一方、特にかつら100側に配置される粘着層12のみに艶消し処理を施すようにしてもよい。また、艶消し処理を行なうための微小凹凸は、エンボス加工に限らずその他の形状等が可能である。また、本発明の両面接着テープは、かつらベースの少なくとも一部にネット部材が配置されこのネット部材に対して接着すれば特に有利であるが、人工皮膚製のかつらベースにも通常の両面接着テープと同様に適用できることは勿論である。
なお、本発明の両面接着テープはかつらの止着用に止まらず、各種の物品に適用して、とくに、外部から見える側の被接着面の光沢を抑える場合に有効に適用可能である。さらに、上記実施形態で説明した具体的数値等は、必要に応じて適宜変更可能である。
本発明によれば、この種のかつら止着用両面接着テープにおいて芯材の両側に粘着層を持ち、その表面に艶消し処理を施すことで光が当たって反射するのを防ぎ、かつら内側に貼着されているのが外部からは分からず良好な外観見栄えが達成される。また、止着用両面接着テープの一方の粘着層を肉厚に形成したので、かつら裏側に接着した際、粘着層がかつらベースの網目に入り込み、フィラメントに面状に接着されるため高い止着性が確保される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
かつらを頭部に止着するために用いる両面接着テープであって、両面の粘着層の少なくとも一方の表面が艶消し処理されて成ることを特徴とする、かつら止着用両面接着テープ。
【請求項2】
前記粘着層の表面に微小凹凸が形成されることにより、該表面が艶消し処理されて成ることを特徴とする、請求項1に記載のかつら止着用両面接着テープ。
【請求項3】
前記粘着層表面の微小凹凸が、微小突起を形成した押し型具で該粘着層を押圧することにより付与されることを特徴とする、請求項2に記載のかつら止着用両面接着テープ。
【請求項4】
前記粘着層表面の微小凹凸が、芯材に粒状の粘着剤をスプレー塗布することにより形成されていることを特徴とする、請求項2に記載のかつら止着用両面接着テープ。
【請求項5】
前記粘着層表面の微小凹凸が、ブラスト加工にて付与されていることを特徴とする、請求項2に記載のかつら止着用両面接着テープ。
【請求項6】
前記ブラスト加工が、ブラスト材として微細に粉砕したドライアイス又は氷を用い、該ブラスト材の粘着層表面への吹きつけにより行われることを特徴とする、請求項5に記載のかつら止着用両面接着テープ。
【請求項7】
前記粘着層の微小凹凸の表面粗さが、光の波長より大になるように艶消し処理されて成ることを特徴とする、請求項2〜5の何れかに記載のかつら止着用両面接着テープ。
【請求項8】
ネット部材がかつらベースの少なくとも一部に構成されるかつらを頭部に止着するために用いる両面接着テープであって、両面の粘着層の少なくとも一方が、該ネット部材の線径の過半を埋没させる厚みで形成されていることを特徴とする、かつら止着用両面接着テープ。
【請求項9】
ネット部材がかつらベースの少なくとも一部に構成されるかつらを頭部に止着するために用いる両面接着テープであって、両面の粘着層の少なくとも一方が、該ネット部材の線径の過半を埋没させる厚みで形成されるとともに、該一方の粘着層の表面が艶消し処理されて成ることを特徴とする、かつら止着用両面接着テープ。
【請求項10】
前記粘着層の一方が、前記ネット部材の線径と同等もしくはそれ以上の厚みで形成されることを特徴とする、請求項6に記載のかつら止着用両面接着テープ。
【請求項11】
前記粘着層の一方の厚みが、50μmを超え200μmの範囲で形成されていることを特徴とする、請求項10に記載のかつら止着用両面接着テープ。
【請求項12】
前記粘着層の他方が、頭髪の直径と同等もしくはそれ以上の厚みで形成されていることを特徴とする、請求項1,2,8,9の何れかに記載のかつら止着用両面接着テープ。
【請求項13】
前記粘着層の他方が、50μm以上の厚みに形成されていることを特徴とする、請求項12に記載のかつら止着用両面接着テープ。
【請求項14】
ネット部材を少なくとも一部に有するかつらベースと、
上記かつらベースに植設した毛髪と、
芯材の両面にそれぞれ粘着層を有し、一方の粘着層を上記かつらベースに接着すると共に、他方の粘着層を使用者の頭部に接着するかつら止着用両面接着テープと、を備えたかつらであって、
上記かつら止着用両面接着テープの上記一方の粘着層の表面が艶消し処理されて成ることを特徴とする、かつら。
【請求項15】
ネット部材を少なくとも一部に有するかつらベースと、
上記かつらベースに植設した毛髪と、
芯材の両面にそれぞれ粘着層を有し、一方の粘着層を上記かつらベースに接着すると共に、他方の粘着層を使用者の頭部に接着するかつら止着用両面接着テープと、を備えたかつらであって、
上記かつら止着用両面接着テープの上記一方の粘着層の表面が艶消し処理されて成り、
該艷消しされた一方の粘着層を上記ネット部材の網目に入り込ませて該ネット部材に接着したことを特徴とする、かつら。
【請求項16】
前記かつら止着用両面接着テープの前記一方の粘着層の表面が、微小凹凸状に形成されることで艶消し処理されて成ることを特徴とする、請求項14又は15に記載のかつら。
【請求項17】
前記一方の粘着層表面の微小凹凸が、微小突起を形成した押し型具で該粘着層を押圧することにより付与されていることを特徴とする、請求項14又は15に記載のかつら。
【請求項18】
前記一方の粘着層表面の微小凹凸が、芯材に粒状の粘着剤をスプレー塗布することにより形成されていることを特徴とする、請求項14又は15に記載のかつら。
【請求項19】
前記一方の粘着層表面の微小凹凸が、ブラスト加工にて付与されていることを特徴とする、請求項14又は15に記載のかつら。
【請求項20】
前記ブラスト加工が、ブラスト材として微細に粉砕したドライアイス又は氷を用い、該ブラスト材の前記一方の粘着層表面への吹きつけにより行われることを特徴とする、請求項19に記載のかつら。
【請求項21】
前記微小凹凸の表面粗さを、光の波長より大きく設定したことを特徴とする、請求項16〜19の何れかに記載のかつら。
【請求項22】
ネット部材を少なくとも一部に有するかつらベースと、
上記かつらベースに植設した毛髪と、
芯材の両面にそれぞれ粘着層を有し、一方の粘着層を上記かつらベースに接着すると共に、他方の粘着層を使用者の頭部に接着するかつら止着用両面接着テープと、を備えたかつらであって、
上記かつら止着用両面接着テープの上記一方の粘着層が、上記ネット部材の線径の過半を埋没させる厚みで形成されており、
上記一方の粘着層を上記ネット部材の網目に入り込ませて該ネット部材に接着したことを特徴とする、かつら。
【請求項23】
ネット部材を少なくとも一部に有するかつらベースと、
上記かつらベースに植設した毛髪と、
芯材の両面にそれぞれ粘着層を有し、一方の粘着層を上記かつらベースに接着すると共に、他方の粘着層を使用者の頭部に接着するかつら止着用両面接着テープと、を備えたかつらであって、
かつら止着用両面接着テープの一方の粘着層が、上記ネット部材の線径の過半を埋没させる厚みで形成されるとともに、該一方の粘着層の表面が艶消し処理されて成り、
上記一方の粘着層を上記ネット部材の網目に入り込ませて該ネット部材に接着したことを特徴とする、かつら。
【請求項24】
前記両面接着テープの一方の粘着層が、前記ネット部材と同等もしくはそれ以上の厚みで形成されていることを特徴とする、請求項16〜23の何れかに記載のかつら。
【請求項25】
前記両面接着テープの一方の粘着層の厚みが、50μmを超え200μmの範囲で形成されていることを特徴とする、請求項24に記載のかつら。
【請求項26】
前記両面接着テープの他方の粘着層が、頭髪の直径と同等もしくはそれ以上の厚みで形成されていることを特徴とする、請求項14〜25の何れかに記載のかつら。
【請求項27】
前記両面接着テープの他方の粘着層が、50μm以上の厚みに形成されていることを特徴とする、請求項26に記載のかつら。

【国際公開番号】WO2005/009157
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【発行日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512022(P2005−512022)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010425
【国際出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000126676)株式会社アデランス (49)
【Fターム(参考)】