説明

両面粘着シート及びその使用方法

【課題】本発明の目的は、細幅や長尺の形状で用いた場合であっても、貼り合わせの際に伸びたり破断することなく貼付作業性が良好なプラスチックフィルム基材の両面粘着シートであって、優れた接着性を有し、かつ剥離する際には糊残りを生じることなく優れた剥離性(再剥離性)を発揮する両面粘着シートを提供することにある。
【解決手段】プラスチックフィルム基材の両面側に粘着剤層を有する両面粘着シートであって、一方の粘着剤層表面(A面)の引張速度300mm/分で測定されるステンレス板に対する180°引き剥がし粘着力が8N/20mm以上であり、かつ再剥離性評価試験において糊残りを生じないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面粘着シートに関する。詳しくは、強い接着力を有し、かつ再剥離性にも優れた両面粘着シートに関する。また、前記両面粘着シートの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
両面粘着シート(両面粘着テープも含む)は、作業性が良好で接着の信頼性が高い接合手段として、家電製品や自動車、OA機器などの各種産業分野に利用されている。近年、省資源の観点から、製品に使用されているリサイクル可能な部品については、使用後に製品を分解して再利用する場合が多くなっている。このとき、両面粘着シートを用いて部品を被着体に貼付している場合には、貼付された両面粘着シートを剥離(再剥離)することが必要となる。このように再剥離される両面粘着シートには、部品固定のための接着性に加えて、剥離時に被着体表面に粘着剤が残らないようにすること(糊残り防止性)や剥離時に両面粘着シートが破断しないことなどが必要とされる。
【0003】
上記の再剥離される用途に用いられる両面粘着シートとしては、これまでにも各種の提案がなされており、例えば、剥離時の破断を防止したものとして、マニラ麻を主成分とする不織布基材の両面に粘着剤層が設けられ、粘着剤層のうち少なくとも一方が水溶性粘着剤層であることを特徴とする両面粘着シート(特許文献1参照)や、さらに糊残り防止性を改良したものとして、不織布基材の両面に粘着剤層が形成されており、層間破壊が抑制された両面接着テープ(特許文献2参照)などが知られている。
【0004】
しかしながら、上記のような不織布基材を用いた両面粘着シートは腰がないため、細幅や長尺のフィルム等の固定に用いる場合には、貼付の際の位置合わせが困難となり、また、再剥離する際に破断が生じることがあり、作業性が著しく低下していた。特に、近年の家電製品やOA機器の部品の小型化により上記の問題は一層深刻となっているのが現状である。
【0005】
一方、基材としてプラスチックフィルムを用いた両面粘着シート(特許文献3参照)においては、上記の腰の弱さや破断の問題は改善するものの、基材への粘着剤層の投錨性が不足するため、被着体(部品)からの剥離の際に糊残りが生じ、これらの残渣を取り除く作業が必要となり、やはり、作業性が低下する問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−70527号公報
【特許文献2】特開2003−342544号公報
【特許文献3】特開2010−37413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、細幅や長尺の形状で用いた場合であっても貼り合わせの際に伸びたり破断することなく、貼付作業性が良好なプラスチックフィルム基材の両面粘着シートであって、優れた接着性を有し、かつ剥離する際には糊残りを生じることなく優れた剥離性(再剥離性)を発揮する両面粘着シートを提供することにある。また、本発明の他の目的は、剥離応力が長時間加えられた場合であっても、貼付した部材のずれや剥がれを生じにくい特性(「定荷重に対する耐剥離性」と称する場合がある)に優れた両面粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、プラスチックフィルム基材の両面側に粘着剤層を有する両面粘着シートであって、両面粘着シートの一方の粘着剤層表面(A面)のステンレス板に対する180°引き剥がし粘着力を特定範囲に制御し、かつ後述の再剥離性評価試験において糊残りを生じさせないことによって、細幅、長尺の形状で用いた場合であっても貼付作業性が良好であり、接着性に優れ、なおかつ、再剥離時には被着体に糊残りを生じない両面粘着シートが得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、プラスチックフィルム基材の両面側に粘着剤層を有する両面粘着シートであって、一方の粘着剤層表面(A面)の引張速度300mm/分で測定されるステンレス板に対する180°引き剥がし粘着力が8N/20mm以上であり、かつ下記の再剥離性評価試験において糊残りを生じないことを特徴とする両面粘着シートを提供する。上記の再剥離性評価試験は以下の通りである。両面粘着シートのA面を、貼付部分のサイズが幅20mm×長さ100mmとなるようにポリスチレン板(RP東プラ(株)製、商品名「ポリスチレン板」)に貼付し、60℃、90%RHの雰囲気下で1ヵ月放置した後、剥離角度180°、引張速度10m/分の条件で、前記ポリスチレン板から両面粘着シートを引き剥がした時の、該ポリスチレン板表面への糊残りの有無を目視で評価する。
【0010】
さらに、前記両面粘着シートは、下記の定荷重剥離試験により測定される剥離距離が、10mm以下であることが好ましい。上記の定荷重剥離試験は以下の通りである。ポリスチレン板(RP東プラ(株)製、商品名「ポリスチレン板」)の片面に、両面粘着シート(幅20mm×長さ60mm)のA面を貼付し、2kgのゴムローラーを1往復させて圧着後、30分間養生する。その後、23℃、50%RHの条件下で、両面粘着シートの長さ方向の末端に、ポリスチレン板の表面と垂直方向に100gfの荷重をかけ、3時間経過後の両面粘着シートの剥離距離を測定する。
【0011】
さらに、前記両面粘着シートにおいては、前記プラスチックフィルム基材が、前記プラスチックフィルム基材の表面のうち少なくともA面側の表面が強接着処理面であるプラスチックフィルム基材であることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、プラスチックフィルム基材の両面側に粘着剤層を有する両面粘着シートであって、一方の粘着剤層(a層)が、炭素数が4〜9の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として構成されるアクリル系ポリマーと粘着付与樹脂とを含有する粘着剤組成物から形成されたゲル分率が5〜50%である粘着剤層であり、前記プラスチックフィルム基材の表面のうち少なくともa層を有する側の表面が強接着処理面であることを特徴とする両面粘着シートを提供する。
【0013】
さらに、前記両面粘着シートにおいては、前記アクリル系ポリマーの含有量が、粘着剤組成物の固形分(100重量%)に対して、50〜99重量%であることが好ましい。
【0014】
さらに、前記両面粘着シートにおいては、前記アクリル系ポリマーが、アクリル酸n−ブチル又はアクリル酸2−エチルヘキシルを必須のモノマー成分として構成されるアクリル系ポリマーであることが好ましい。
【0015】
さらに、前記両面粘着シートにおいては、前記アクリル系ポリマーが、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量部)に対して、アクリル酸n−ブチルの含有量が50重量%以上であるモノマー成分より構成されたアクリル系ポリマーであることが好ましい。
【0016】
さらに、前記両面粘着シートにおいては、前記粘着剤組成物が、前記アクリル系ポリマー100重量部に対して、粘着付与樹脂を10〜50重量部、イソシアネート系架橋剤を1.0重量部以上、3.0重量部未満含有する粘着剤組成物であり、かつa層の厚さが2〜100μmであることが好ましい。
【0017】
さらに、前記両面粘着シートにおいては、前記プラスチックフィルム基材の厚さが20〜200μmであることが好ましい。
【0018】
さらに、前記両面粘着シートは、長手方向の破断強度が50N/10mm以上、かつ長手方向の降伏点強度が20N/10mm以上であることが好ましい。
【0019】
また、本発明は、両面粘着シートのA面(a層表面)を、家電製品又はOA機器におけるリサイクルされる部材に貼付する前記の両面粘着シートの使用方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の両面粘着シートは、プラスチックフィルム基材を有するため腰が強く、細幅、長尺の部材(部品)の固定に用いられる場合であっても、貼付作業性が良好である。また、本発明の両面粘着シートは、ステンレス板に対する180°引き剥がし粘着力が特定範囲に制御され、なおかつ再剥離性評価試験において糊残りを生じないため、被着体に貼付している間には高い接着性を有し、被着体から剥離する際には優れた再剥離性を発揮する。さらに、本発明の両面粘着シートは、定荷重剥離試験により測定される剥離距離が特定範囲に制御されることによって、貼付固定した部材や部品等に対して剥離応力が長時間加えられた場合であっても、これら部材等のずれや剥がれを生じにくい特性を十分に発揮し、接着信頼性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、定荷重剥離試験における、試験板、両面粘着シート、錘の位置関係を示す説明図(斜視図)である。
【図2】図2は、定荷重剥離試験における、測定開始時の、試験板、両面粘着シート、錘の位置関係を示す説明図(側面図)である。
【図3】図3は、定荷重剥離試験における、測定開始から3時間経過後の粘着シートの剥離状態、及び、剥離距離を示す説明図(側面図)である。
【図4】図4は、実施例における作業性の評価における、両面粘着シート、測定台の位置関係、及び、たわみ距離を示す説明図(側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の両面粘着シートは、プラスチックフィルム基材の両面側に粘着剤層を有する両面粘着シートである。本明細書では、本発明の両面粘着シートの一方の粘着剤層表面(粘着面)をA面、他方の粘着剤層表面(粘着面)をB面と称する。なお、本明細書において、「両面粘着シート」という場合には、テープ状のもの、即ち、「両面粘着テープ」も含まれるものとする。また、本明細書において、長手方向(MD)とは、粘着シートの製造工程における製造ライン方向(流れ方向)を指し、長尺体の場合には長さ方向を意味する。また、幅方向(TD)とは、上記長手方向に対する垂直方向(直交方向)を意味する。
【0023】
本発明の両面粘着シートは、プラスチックフィルム基材を有するため腰が強く、細幅や長尺の形状で用いられる場合であっても、伸びや破断を生じることなく被着体に貼付することができ、貼付作業性に優れる。また、被着体から剥離する際にも破断等の不具合が生じることなく、剥離作業性にも優れる。特に、プラスチックフィルム基材を有することにより、両面粘着シートの引張強度や降伏点強度を下記の特定範囲に制御しやすく、このような場合には作業性が一層向上する。これに対して、基材としてグラシン紙や不織布を有する従来の両面粘着シートは、腰がないため、上述の貼付作業性や剥離作業性が不良であった。
【0024】
上記プラスチックフィルム基材としては、特に限定されず、例えば、後述の具体的構成の両面粘着シートにおいて例示したプラスチックフィルム等を用いることができ、特に、後述の少なくとも一方の表面が強接着処理面であるプラスチックフィルム基材を好ましく使用することができる。本発明の両面粘着シートにおいては、プラスチックフィルム基材の表面のうち少なくとも両面粘着シートのA面側の表面を強接着処理面とすることにより、A面側の再剥離性が向上する。
【0025】
本発明の両面粘着シートの、A面の引張速度300mm/分で測定されるステンレス板(SUS板)に対する180°引き剥がし粘着力(以下、「180°引き剥がし粘着力(A面)」と称する場合がある)は、8N/20mm以上(例えば、8〜30N/20mm)であり、好ましくは14〜25N/20mmである。180°引き剥がし粘着力(A面)を8N/20mm以上とすることにより、部材等を被着体に対して強固に貼付固定できる。一方、180°引き剥がし粘着力(A面)を30N/20mm以下とすることにより、再剥離しやすくなる。なお、180°引き剥がし粘着力(A面)は、引張試験機を用い、ステンレス板(SUS304の研磨板)に対する両面粘着シートの180°剥離試験(引張速度:300mm/分)を行うことによって測定することができる。具体的には、後述の(評価)の「(1)180°引き剥がし粘着力」に記載の方法によって測定することができる。
【0026】
本発明の両面粘着シートの、B面の引張速度300mm/分で測定されるステンレス板に対する180°引き剥がし粘着力(以下、「180°引き剥がし粘着力(B面)」と称する場合がある)は、特に限定されないが、例えば、8N/20mm以上(例えば、8〜30N/20mm)が好ましく、より好ましくは14〜25N/20mmである。180°引き剥がし粘着力(B面)を8N/20mm以上とすることにより、部材等を被着体に対して強固に貼付固定できる。一方、180°引き剥がし粘着力(B面)を30N/20mm以下とすることにより、再剥離しやすくなる。なお、180°引き剥がし粘着力(B面)は、上述の180°引き剥がし粘着力(A面)と同様の方法により測定することができる。
【0027】
本発明の両面粘着シートは、A面側についての下記再剥離性評価試験において、ポリスチレン板に対する糊残りを生じないことが必要とされる。上記再剥離性評価試験においてポリスチレン板への糊残りが生じると、例えば、家電製品やOA機器等に幅広く使用されるポリスチレン(PS)や、ポリカーボネート(PC)とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)との混合樹脂等のプラスチック製の被着体(部材等)に対して糊残りが生じやすく、これらの被着体(部材等)をリサイクルする際の作業性等が悪化する。
【0028】
上記再剥離性評価試験は、両面粘着シートのA面を、貼付部分のサイズが幅20mm×長さ100mmとなるようにポリスチレン板(RP東プラ(株)製、商品名「ポリスチレン板」)に、2kgのローラーを1往復させて貼付(圧着)し、60℃、90%RHの雰囲気下で1ヵ月放置した後、剥離角度180°、引張速度10m/分の条件で、前記ポリスチレン板から両面粘着シートを引き剥がした時の、該ポリスチレン板表面への糊残りの有無を目視で評価する試験である。具体的には、後述の(評価)の「(2)再剥離性評価試験」に記載の方法によって、評価を実施することができる。なお、上記「糊残り」とは、粘着シートを被着体から剥がした時に、被着体表面に粘着剤層の一部が残る現象をいう。
【0029】
本発明の両面粘着シートの、B面側についての再剥離性評価試験におけるポリスチレン板への糊残りの有無については、特に限定されない。上記B面側についての再剥離性評価試験において糊残りを生じない場合には、B面側の再剥離性にも優れるため、当該B面側をリサイクル可能な部材等に対して貼付する用途に好適に使用できる。ただし、両面粘着シートのB面側は上記用途に限定されず、例えば、再剥離を要しない部材等に貼付する用途(部材等を半永久的に固定する用途)等にも好ましく使用される。なお、上記B面側についての再剥離性評価試験は、上述のA面側についての再剥離性評価試験と同様の方法により実施することができる。
【0030】
本発明の両面粘着シートの、A面側についての下記定荷重剥離試験により測定される剥離距離は、10mm以下が好ましく、より好ましくは0〜7mm、さらに好ましくは0〜3mmである。上記剥離距離は、両面粘着シートを用いて貼付した部材等に、静荷重等の剥離応力が長時間加わった場合に、これら部材等のずれや剥離の生じにくさを表す指標となる。上記剥離距離を10mm以下とすることにより、貼付固定した部材等に対して剥離応力が長時間加えられた場合であっても、これら部材等のずれや剥がれが生じにくく、優れた接着信頼性を発現する。
【0031】
上記の定荷重剥離試験は以下のようにして行う。
ポリスチレン板(RP東プラ(株)製、「ポリスチレン板」)の片面に、両面粘着シート(幅20mm×長さ60mm)のA面を貼付し、2kgのゴムローラーを1往復させて圧着した後、30分間養生する。その後、23℃、50%RHの条件下で、両面粘着シートの長さ方向の末端に、ポリスチレン板の表面と垂直方向に100gfの荷重をかけ、3時間経過後の両面粘着シートの剥離した長さ(剥離距離)を測定する。
【0032】
より具体的には、上記の定荷重剥離試験は以下のようにして行う。
[定荷重剥離試験]
ポリスチレン板[RP東プラ(株)製、「ポリスチレン板」、長さ100mm×幅30mm]の片面に、両面粘着シート(幅20mm×長さ60mm)のA面を貼付し、2kgのゴムローラーを1往復させて圧着した後、30分間養生する。
次いで、図1、図2に示すように、上記ポリスチレン板11を、両面粘着シート12を貼付した面が下面になるように水平に設置する。両面粘着シート12を、長さ方向の末端(片末端)から長さ方向に5mm剥離し、長さ方向の端部(幅方向の中心位置)から、100gの錘13をひもで吊し、両面粘着シート12の長さ方向の末端に、ポリスチレン板の表面と垂直方向に100gfの荷重をかける。
その後、23℃、50%RHの条件下で、3時間放置し、両面粘着シート12の剥離距離16を測定する。
なお、上記剥離距離は、測定開始時から3時間経過する間に両面粘着シートが剥離した長さ(長さ方向の距離)であり、測定開始時に両面粘着シートとポリスチレン板が密着している末端位置14から、3時間経過後に両面粘着シートとポリスチレン板が密着している末端位置15までの距離16をいう(図2、図3参照)。
なお、両面粘着シートは、ポリスチレン板側とは反対側の粘着面上に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:25μm)を貼付(裏打ち)して測定に用いてもよい。
【0033】
本発明の両面粘着シートの、B面側についての定荷重剥離試験における剥離距離は、特に限定されないが、例えば、10mm以下が好ましく、より好ましくは0〜7mm、さらに好ましくは0〜3mmである。上記剥離距離を10mm以下とすることにより、貼付固定した部材等に対して剥離応力が長時間加えられた場合であっても、これら部材等のずれや剥がれを生じにくく、優れた接着信頼性を発現する。なお、上記B面側についての定荷重剥離試験における剥離距離は、上述のA面側についての定荷重剥離試験と同様の方法により、測定することができる。
【0034】
本発明の両面粘着シートの長手方向の引張強度(破断強度)は、特に限定されないが、例えば、50N/10mm以上(例えば、50〜300N/10mm)が好ましく、より好ましくは100〜250N/10mmである。長手方向の引張強度を50N/10mm以上とすることにより、貼付時に伸びや破断(特に、破断)が生じにくく、貼付作業性が向上する。特に、両面粘着シートを細幅や長尺形状で使用すると、引張応力を加えながら貼付部位への位置合わせや貼付を行わなければならない場合があるが、このような場合にも両面粘着シートの伸びや破断が生じにくいため、貼付作業性に優れる。また、両面粘着シートを剥離する際にも破断しにくく、剥離作業性が向上する。
【0035】
本発明の両面粘着シートの長手方向の降伏点強度は、特に限定されないが、例えば、20N/10mm以上(例えば、20〜200N/10mm)が好ましく、より好ましくは50〜150N/10mmである。長手方向の降伏点強度を20N/10mm以上とすることにより、特に、細幅や長尺の形状で用いた場合であっても、貼付時に伸びや破断(特に、伸び)が生じにくく、貼付作業性が向上する。
【0036】
上記の本発明の両面粘着シートの引張強度および降伏点強度は、JIS K7127に準拠し、引張試験機を用いた引張試験によって測定することができる。なお、上記引張強度(破断強度)は、両面粘着シートが破断した時の引張荷重をいい、上記降伏点強度は、両面粘着シートが降伏点に達した際の引張荷重をいう。より具体的には、後述の(評価)の「(5)引張強度(破断強度)及び降伏点強度」に記載の方法によって測定することができる。
【0037】
本発明の両面粘着シートはプラスチックフィルム基材を有し、さらに、A面のステンレス板に対する180°引き剥がし粘着力が上記範囲に制御され、なおかつA面側についての上記再剥離性評価試験において糊残りを生じない。従って、本発明の両面粘着シートは、細幅、長尺の形状で用いた場合であっても貼付作業性が良好であり、少なくともA面側が優れた接着性かつ再剥離性を発揮する。さらに、本発明の両面粘着シートの、A面についての定荷重剥離試験により測定される剥離距離が上記範囲に制御されている場合には、定荷重に対する優れた耐剥離性を発揮する。なお、本発明の両面粘着シートのB面側については、特に限定されないが、A面側と同様に優れた接着性かつ再剥離性を有し、さらには定荷重に対する優れた耐剥離性を発揮する粘着面であってもよい。
【0038】
本発明の両面粘着シートは上述の特性を有するため、部材等を貼付固定している間には優れた接着性(強接着性)を有し、なおかつ当該部材等からの剥離時には優れた剥離性(再剥離性)を発揮する両面粘着シート(強接着再剥離型両面粘着シート)として好適に使用することができる。このような強接着再剥離型両面粘着シートが求められる用途としては、具体的には、例えば、OA機器、家電機器等の製品において、リサイクルされる(再使用(リユース)される)部材(例えば、ポリスチレン、ポリカーボネートとABSの混合樹脂等から構成される部材など)と他の部材(例えば、使用後に廃棄されるフィルム、緩衝材、ラベル等の消耗部材など)を接合する用途が挙げられる。中でも、部材が長尺や細幅である場合に特に好ましく用いられる。なお、本発明の両面粘着シートは、使用用途が上記用途に限定されるわけではなく、部材や被着体を半永久的に固定する用途にも使用できる。
【0039】
本発明の両面粘着シートの使用方法としては、特に限定されないが、例えば、リサイクルされる部材と上述の消耗部材とを接合する場合には、本発明の両面粘着シートのA面にリサイクルされる部材を貼付し、一方、B面に消耗部材を貼付して両部材を貼付固定する、物品の接合方法を挙げることができる。このように接合された部材においては、リサイクルされる部材から糊残りを生じることなく両面粘着シートおよび消耗部材を剥離し、取り除くことができるため、剥離工程における作業性が向上し、当該剥離工程を経て製造される物品(製品)等の生産性が向上する。
【0040】
本発明の両面粘着シートは、プラスチックフィルム基材の両面側に粘着剤層を有する両面粘着シートであって、A面のステンレス板に対する180°引き剥がし粘着力が上記の特定範囲に制御され、A面側についての上記再剥離性評価試験において糊残りを生じない限り、特に限定されないが、その具体的構成としては、例えば、プラスチックフィルム基材の両面側に粘着剤層を有する両面粘着シートであって、少なくとも一方の粘着剤層がアクリル系粘着剤層である両面粘着シートが挙げられる。
【0041】
本発明の両面粘着シートの具体的構成の一つは、プラスチックフィルム基材の両面側に粘着剤層を有する両面粘着シートであって、一方の粘着剤層(a層)が、炭素数が4〜9の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として構成されるアクリル系ポリマーと粘着付与樹脂とを含有する粘着剤組成物から形成されたゲル分率が10〜50%である粘着剤層であり、前記プラスチックフィルム基材の表面のうち少なくともa層を有する側の表面が強接着処理面であることを特徴とする両面粘着シートである。
【0042】
以下に、上記具体的構成の両面粘着シートについて、詳細に説明する。
【0043】
上記具体的構成の両面粘着シートは、プラスチックフィルム基材の一方の表面側にa層を有し、他方の表面側にはb層を有する両面粘着シートである。上記具体的構成の両面粘着シートにおけるa層表面が、前述のA面に対応し、少なくとも強接着性かつ再剥離性を発揮する表面(粘着面)である。
【0044】
上記具体的構成の両面粘着シートにおけるプラスチックフィルム基材は、粘着剤層(a層およびb層)の支持基材であり、上述のように、特に、細幅や長尺の形状で使用する際の、両面粘着シートの貼付作業性や剥離作業性を向上させる役割を担う。また、両面粘着シートの加工性を向上させる役割も担っている。
【0045】
上記プラスチックフィルム基材としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、商品名「アートン(環状オレフィン系ポリマー;JSR製)」、商品名「ゼオノア(環状オレフィン系ポリマー;日本ゼオン製)」等の環状オレフィン系ポリマーなどのプラスチックフィルム材料から構成されたプラスチックフィルムなどを用いることができる。なお、上記プラスチックフィルム材料は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用されていてもよい。また、上記プラスチックフィルム基材は、単層および複層のいずれの形態を有していてもよい。上記の中でも、上記プラスチックフィルム基材としては、入手性やコストの観点で、ポリエステル系樹脂から構成されたプラスチックフィルムが好ましく、より好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。
【0046】
上記具体的構成の両面粘着シートにおいては、上記プラスチックフィルム基材の表面のうち、少なくともa層を有する側の表面が強接着処理面である。上記強接着処理面としては、特に限定されないが、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、コロナ処理(コロナ放電処理)、イオン化放射線処理などの化学的又は物理的方法による酸化処理が施された表面や、下塗り剤によるコーティング処理等が施された表面などを挙げることができる。中でも、上記強接着処理面としては、量産性の観点で、コロナ処理が施された表面(コロナ処理面)であることが好ましい。なお、上記「強接着処理」は、「易接着処理」と称する場合もある。
【0047】
即ち、上記プラスチックフィルム基材は、上記プラスチックフィルム(特に、PETフィルム)の少なくとも一方の表面にコロナ処理が施されたプラスチックフィルム基材(少なくとも一方の表面がコロナ処理面であるプラスチックフィルム基材)であることが好ましい。このようなプラスチックフィルム基材は、特に限定されないが、例えば、上記プラスチックフィルム(特に、PETフィルム)の少なくとも一方の表面に上記の酸化処理(特に、コロナ処理)やコーティング処理を施すことによって得てもよいし、例えば、商品名「ルミラー S105」(東レ(株)製)などの市販品を使用することもできる。
【0048】
上記プラスチックフィルム基材における強接着処理面(特に、コロナ処理面)の濡れ張力は、45mN/m以上が好ましく、より好ましくは50mN/m以上である。上記強接着処理面の濡れ張力を45mN/m以上とすることにより、当該強接着処理面に設けられた粘着剤層の投錨性が向上し、被着体から剥離する際に投錨破壊が生じにくくなって、再剥離性が向上する。一般的に、PETフィルムを基材として有する両面粘着テープの場合には、貼付された被着体から高速剥離(例えば、引張速度:10m/分)した時に特に投錨破壊が生じやすい。これに対して、上記具体的構成の両面粘着テープにおいては、強接着処理面(特に、コロナ処理面)の濡れ張力を45mN/m以上とすることによって、該強接着処理面に設けられた粘着剤層表面側が、貼付後、高速剥離した時に糊残りを生じることなく、優れた再剥離性を発揮する。なお、上記濡れ張力は、JIS K6768に準拠して測定することができる。
【0049】
上記プラスチックフィルム基材の長手方向のヤング率は、特に限定されないが、例えば、2GPa以上が好ましく、より好ましくは3GPa以上である。長手方向のヤング率を2GPa以上とすることにより、両面粘着シートを細幅や長尺の形状で用いる場合であっても、貼付時に伸びが生じることなく、貼付作業性が向上する。なお、長手方向のヤング率は、JIS K7161に準拠して、引張試験機を用いて測定することができる。
【0050】
上記プラスチックフィルム基材の厚さは、特に限定されないが、例えば、20〜200μmが好ましく、より好ましくは50〜125μm、さらに好ましくは75〜100μmである。厚さを20μm以上とすることにより、両面粘着テープの伸びや破断が生じにくくなる。特に、厚さを75μm以上とすることにより、両面粘着シートの腰が強くなるため、両面粘着シートを細幅や長尺の形状で用いる場合であっても、貼り合わせ時の位置合わせがしやすく、さらに被着体への貼付時(圧着時)に伸びや破断が生じにくいことにより、貼付作業性が向上する。一方、厚さを200μm以下とすることにより、両面粘着テープの加工性が向上し、コスト面で有利となる。
【0051】
上記具体的構成の両面粘着シートにおけるa層は、アクリル系ポリマー及び粘着付与樹脂を必須の成分とする粘着剤組成物(アクリル系粘着剤組成物)から形成されたアクリル系粘着剤層である。
【0052】
上記a層を構成するアクリル系ポリマーは、炭素数が4〜9の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下、「(メタ)アクリル酸C4-9アルキルエステル」と称する場合がある)を必須のモノマー成分として構成される重合体である。上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分には、さらに、極性基含有単量体、多官能性単量体やその他の共重合性単量体が共重合モノマー成分として含まれていてもよい。上記粘着剤組成物中の上記アクリル系ポリマーの含有量は、粘着剤組成物の固形分(100重量%)に対して、50〜99重量%が好ましく、より好ましくは60〜80重量%である。なお、上記の「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を表し、他も同様である。
【0053】
上記(メタ)アクリル酸C4-9アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニルなどが挙げられる。上記の(メタ)アクリル酸C4-9アルキルエステルは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、アクリル酸n−ブチル(BA)又はアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)が好ましい。即ち、上記アクリル系ポリマーは、アクリル酸n−ブチル又はアクリル酸2−エチルヘキシルを必須のモノマー成分として構成されるアクリル系ポリマーであることが好ましい。
【0054】
上記(メタ)アクリル酸C4-9アルキルエステルの含有量は、再剥離性の観点から、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、50重量%以上(例えば、50〜99重量%)が好ましく、より好ましくは80〜99重量%、さらに好ましくは90〜99重量%である。含有量を50重量%以上とすることにより、アクリル系ポリマーとしての特性(粘着性、剥離性など)を発現させやすくなる。中でも、本発明においては、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、アクリル酸n−ブチルの含有量が50重量%以上(例えば、50〜99重量%)であることが好ましく、より好ましくは80〜99重量%、さらに好ましくは90〜99重量%である。即ち、上記アクリル系ポリマーは、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、アクリル酸n−ブチルの含有量が50重量%以上であるモノマー成分より構成されたアクリル系ポリマーであることが好ましい。
【0055】
上記極性基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体(無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有単量体も含む);(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、ビニルアルコール、アリルアルコールなどの水酸基(ヒドロキシル基)含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有単量体;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾールなどの複素環含有ビニル系単量体;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体;2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有単量体;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有単量体;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体;(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4−エトキシブチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルなどが挙げられる。上記極性基含有モノマーは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、カルボキシル基含有単量体、水酸基含有単量体が好ましく、より好ましくはアクリル酸(AA)、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチルである。
【0056】
上記極性基含有単量体の含有量は、(メタ)アクリル酸C4-9アルキルエステルの含有量(100重量部)に対して、1〜20重量部が好ましく、より好ましくは5〜15重量部である。極性基含有単量体の含有量を1重量部以上とすることにより、粘着性を発現しやすくなる。一方、含有量を20重量部以下とすることにより、粘着特性のバランスをとりやすくなる。
【0057】
特に、上記極性基含有単量体の中でも、カルボキシル基含有単量体(特に、アクリル酸)の含有量は、接着力向上、硬さと極性のバランスの観点から、(メタ)アクリル酸C4-9アルキルエステルの含有量(100重量部)に対して、1〜15重量部が好ましく、より好ましくは1〜10重量部、さらに好ましくは1〜5重量部である。カルボキシル基含有単量体の含有量を1重量部以上とすることにより、接着力が向上する。一方、含有量を15重量部以下とすることにより、特性のバランスをとりやすい。
【0058】
また、特に、上記極性基含有単量体の中でも、水酸基含有単量体の含有量は、架橋の促進の観点から、(メタ)アクリル酸C4-9アルキルエステルの含有量(100重量部)に対して、0.01〜1重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜0.8重量部、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部である。水酸基含有単量体の含有量を0.01重量部以上とすることにより、粘着剤層の架橋を促進し、養生時間を短くすることができる。一方、含有量を1重量部以下とすることにより、ゲル化が速くなり過ぎることなく、塗工性が向上する。
【0059】
上記の多官能性単量体としては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。上記多官能性単量体は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0060】
また、上記の極性基含有単量体や多官能性単量体以外の共重合性単量体(その他の共重合性単量体)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル等のアルキル基の炭素数が1〜3の(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の炭素数が10〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルやフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどの前述の(メタ)アクリル酸C4-9アルキルエステル、極性基含有モノマーおよび多官能性モノマー以外の(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン類又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニルなどが挙げられる。
【0061】
上記アクリル系ポリマーは、上記モノマー成分を公知慣用の重合方法により重合して調製することができる。上記アクリル系ポリマーの重合方法としては、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合方法や活性エネルギー線照射による重合方法(活性エネルギー線重合方法)などが挙げられる。中でも、コスト、量産性などの点で、溶液重合方法が好ましい。なお、重合に際しては、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤や溶剤など、それぞれの重合方法に応じた適宜な成分を、公知乃至慣用のものの中から適宜選択して使用することができる。
【0062】
上記アクリル系ポリマーの重合に際して用いられる重合開始剤としては、例えばアゾ系開始剤、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエートなど)、レドックス系重合開始剤などが挙げられる。中でも、特開2002−69411号公報に開示されたアゾ系開始剤が特に好ましい。かかるアゾ系開始剤は開始剤の分解物が加熱発生ガス(アウトガス)の発生原因となる部分としてアクリル系ポリマー中に残留しにくいため好ましい。上記アゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと称する場合がある)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(以下、AMBNと称する場合がある)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸などが例示される。上記アゾ系開始剤の使用量は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量部)に対して、0.01〜1重量部が好ましい。
【0063】
上記の溶液重合に際しては、各種の一般的な溶剤を用いることができる。このような溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。溶剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0064】
a層を形成する粘着剤組成物は、粘着性向上の観点から、粘着付与樹脂(粘着付与剤)を必須の構成成分として含有する。上記粘着付与樹脂としては、例えば、テルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂、石油系粘着付与樹脂などが挙げられる。これら粘着付与樹脂は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、ロジン系粘着付与樹脂が好ましい。
【0065】
上記テルペン系粘着付与樹脂としては、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体などのテルペン系樹脂や、これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性など)した変性テルペン系樹脂(例えば、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂など)などが挙げられる。
【0066】
上記フェノール系粘着付与樹脂としては、各種フェノール類(例えば、フェノール、m−クレゾール、3,5−キシレノール、p−アルキルフェノール、レゾルシンなど)とホルムアルデヒドとの縮合物(例えば、アルキルフェノール系樹脂、キシレンホルムアルデヒド系樹脂など)、前記フェノール類とホルムアルデヒドとをアルカリ触媒で付加反応させたレゾールや、前記フェノール類とホルムアルデヒドとを酸触媒で縮合反応させて得られるノボラックの他、ロジン類(未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体など)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジン変性フェノール樹脂などが挙げられる。
【0067】
上記ロジン系粘着付与樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの未変性ロジン(生ロジン)や、これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合などにより変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンの他、その他の化学的に修飾されたロジンなど)の他、各種のロジン誘導体などが挙げられる。なお、前記ロジン誘導体としては、例えば、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したロジンのエステル化合物や、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなどの変性ロジンをアルコール類によりエステル化した変性ロジンのエステル化合物などのロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなど)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなど)、不飽和脂肪酸変性ロジン類や不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩などが挙げられる。
【0068】
上記石油系粘着付与樹脂としては、例えば、芳香族系石油樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂(脂肪族環状石油樹脂)、脂肪族・芳香族系石油樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加石油樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂等の公知の石油樹脂を用いることができる。具体的には、芳香族系石油樹脂としては、例えば、炭素数が8〜10であるビニル基含有芳香族系炭化水素(スチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、インデン、メチルインデンなど)が1種のみ又は2種以上用いられた重合体などが挙げられる。芳香族系石油樹脂としては、ビニルトルエンやインデン等の留分(いわゆる「C9石油留分」)から得られる芳香族系石油樹脂(いわゆる「C9系石油樹脂」)を好適に用いることができる。また、脂肪族系石油樹脂としては、例えば、炭素数4〜5のオレフィンやジエン[ブテン−1、イソブチレン、ペンテン−1等のオレフィン;ブタジエン、ピペリレン(1,3−ペンタジエン)、イソプレン等のジエンなど]が1種のみ又は2種以上用いられた重合体などが挙げられる。脂肪族系石油樹脂としては、ブタジエン、ピペリレンやイソプレン等の留分(いわゆる「C4石油留分」や「C5石油留分」など)から得られる脂肪族系石油樹脂(いわゆる「C4系石油樹脂」や「C5系石油樹脂」など)を好適に用いることができる。脂環族系石油樹脂としては、例えば、脂肪族系石油樹脂(いわゆる「C4系石油樹脂」や「C5系石油樹脂」など)を環化二量体化した後重合させた脂環式炭化水素系樹脂、環状ジエン化合物(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジペンテン、エチリデンビシクロヘプテン、ビニルシクロヘプテン、テトラヒドロインデン、ビニルシクロヘキセン、リモネンなど)の重合体又はその水素添加物、前記の芳香族系炭化水素樹脂や、下記の脂肪族・芳香族系石油樹脂の芳香環を水素添加した脂環式炭化水素系樹脂などが挙げられる。脂肪族・芳香族系石油樹脂としては、スチレン−オレフィン系共重合体などが挙げられる。脂肪族・芳香族系石油樹脂としては、いわゆる「C5/C9共重合系石油樹脂」などを用いることができる。
【0069】
粘着付与樹脂は、市販品を用いることが可能であり、例えば、住友ベークライト(株)製、商品名「スミライトレジン PR−12603」、荒川化学工業(株)製、商品名「ペンセルD125」などを使用することができる。
【0070】
a層を形成する粘着剤組成物における粘着付与樹脂の含有量は、特に限定されないが、例えば、アクリル系ポリマー(100重量部)に対して、10〜50重量部が好ましく、より好ましくは35〜50重量部である。含有量を10重量部以上とすることにより、接着性(粘着性)が向上する。中でも、特に、含有量を35重量部以上とすることにより、上記定荷重剥離試験における剥離距離を上記範囲に制御しやすく、剥離応力が長時間加えられた場合でも部材にずれや剥がれが生じにくいため、優れた接着信頼性を発現する。一方、含有量を50重量部以下とすることにより、上記再剥離性評価試験における糊残りが抑止(抑制)され、再剥離性が向上する。
【0071】
さらに、上記粘着剤組成物は、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤を用いることにより、粘着剤層(a層)を構成するベースポリマー(上記アクリル系ポリマー)を架橋させ、粘着剤層の凝集力を一層大きくすることができる。上記架橋剤としては、特に限定されず、公知乃至慣用のものの中から適宜選択して使用することができる。具体的には、例えば、多官能性メラミン化合物(メラミン系架橋剤)、多官能性エポキシ化合物(エポキシ系架橋剤)、多官能性イソシアネート化合物(イソシアネート系架橋剤)が好ましく使用される。架橋剤は単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。中でも、イソシアネート系架橋剤が特に好ましい。
【0072】
上記イソシアネート系架橋剤(多官能イソシアネート化合物)としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられる。上記の中でも、芳香族ポリイソシアネート類が好ましい。市販品としては、例えば、商品名「コロネートL」(日本ポリウレタン工業(株)製、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物)、商品名「コロネートHL」(日本ポリウレタン工業(株)製、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物)、商品名「タケネート110N」(三井化学(株)製)などを用いることができる。
【0073】
上記エポキシ系架橋剤(多官能エポキシ化合物)としては、例えば、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。市販品としては、例えば、商品名「テトラッドC」(三菱ガス化学(株)製)などを用いることができる。
【0074】
a層を形成する粘着剤組成物における上記架橋剤(特に、イソシアネート系架橋剤)の含有量としては、特に限定されないが、アクリル系ポリマー(100重量部)に対して、1.0重量部以上、3.0重量部未満であることが好ましく、より好ましくは1.5〜2.5重量部である。上記架橋剤の含有量を1.0重量部以上とすることにより、凝集力が出て、粘着性能と加工性が向上する。中でも、特に、含有量を1.5重量部以上とすることにより、粘着剤層が十分な凝集力を有し、再剥離性が向上する。一方、上記架橋剤の含有量を3.0重量部未満とすることにより、上記定荷重剥離試験における剥離距離を上記範囲に制御しやすく、剥離応力が長時間加えられた場合でも部材にずれや剥がれが生じにくいため、優れた接着信頼性を発現する。
【0075】
一般的に、粘着剤組成物中のイソシアネート系架橋剤の含有量を増量すると、粘着剤層のゲル分率が高くなるため、該粘着剤層表面側の定荷重に対する耐剥離性は低下する傾向にある。一方で、イソシアネート系架橋剤の含有量を減量(低減)すると、粘着剤層のプラスチックフィルム基材への投錨性が低下し、その結果、再剥離時に投錨破壊が生じやすく、再剥離性が低下する傾向があった。このため、従来は、投錨性の向上(再剥離性の向上)と定荷重に対する耐剥離性の向上の両立は困難であった。これに対して、本発明における上記具体的構成の両面粘着シートにおいては、少なくともa層を有する側のプラスチックフィルム表面を強接着処理面とすることで投錨性を高めていることにより、イソシアネート系架橋剤の配合量を増量することなく優れた再剥離性を発揮でき、同時に定荷重に対する優れた耐剥離性を発揮することができる。
【0076】
上記粘着剤組成物は、さらに、必要に応じて、架橋促進剤、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの公知の添加剤や溶剤(前述のアクリル系ポリマーの溶液重合の際に使用可能な溶剤など)を含有していてもよい。
【0077】
上記粘着剤組成物は、アクリル系ポリマー(又はアクリル系ポリマー溶液)、架橋剤、粘着付与樹脂、溶剤や他の添加剤を混合することにより、調製することができる。
【0078】
上記具体的構成の両面粘着シートにおけるa層の厚さは、特に限定されないが、2〜100μmが好ましく、より好ましくは10〜90μmであり、さらに好ましくは30〜80μmである。厚さを2μm以上とすることにより、接着性(粘着性)が出る。中でも、特に、厚さを30μm以上とすることにより、定荷重剥離試験における剥離距離を上記範囲に制御しやすく、剥離応力が長時間加えられた場合でも部材にずれや剥がれが生じにくいため、優れた接着信頼性を発現する。一方、厚さを100μm以下とすることにより、両面粘着シートの加工時に発生する断面からの糊はみ出し等が抑制される。
【0079】
a層のゲル分率は、5〜50%(重量%)であり、好ましくは10〜50%、より好ましくは10〜35%、特に好ましくは15〜25%である。ゲル分率を5%以上とすることにより、凝集力が低くなり過ぎることなく、再剥離性が向上する。一方、ゲル分率を50%以下とすることにより、凝集力が高くなり過ぎることなく、接着性(粘着性)が向上する。中でも、特に、ゲル分率を35%以下とすることにより、上記定荷重剥離試験における剥離距離を上記範囲に制御しやすく、剥離応力が長時間加えられた場合でも部材にずれや剥がれが生じにくいため、優れた接着信頼性を発現する。
【0080】
上記ゲル分率(溶剤不溶分の割合)は、具体的には、例えば、以下の「ゲル分率の測定方法」により算出される値である。
(ゲル分率の測定方法)
両面粘着シートから粘着剤層(a層):約0.1gを採取し、平均孔径0.2μmの多孔質テトラフルオロエチレンシート(商品名「NTF1122」、日東電工株式会社製)に包んだ後、凧糸で縛り、その際の重量を測定し、該重量を浸漬前重量とする。なお、該浸漬前重量は、粘着剤層(上記で採取した粘着剤層)と、テトラフルオロエチレンシートと、凧糸との総重量である。また、テトラフルオロエチレンシートと凧糸との合計重量も測定しておき、該重量を包袋重量とする。
次に、粘着剤層をテトラフルオロエチレンシートで包み凧糸で縛ったもの(「サンプル」と称する)を、酢酸エチルで満たした50ml容器に入れ、23℃にて7日間静置する。その後、容器からサンプル(酢酸エチル処理後)を取り出して、アルミニウム製カップに移し、130℃で2時間、乾燥機中で乾燥して酢酸エチルを除去した後、重量を測定し、該重量を浸漬後重量とする。
そして、下記の式からゲル分率を算出する。
ゲル分率(重量%)=((X−Y)/(Z−Y))×100
(上記式において、Xは浸漬後重量であり、Yは包袋重量であり、Zは浸漬前重量である。)
【0081】
上記ゲル分率は、例えば、アクリル系ポリマーのモノマー組成、重量平均分子量、架橋剤の使用量(添加量)等により制御することができる。
【0082】
上記具体的構成の両面粘着シートにおける粘着剤層のうち、他方の粘着剤層(b層)を構成する粘着剤としては、特に制限されず、例えば、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤などの公知の粘着剤から形成された公知慣用の粘着剤層が挙げられる。上記粘着剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、b層は、接着性の観点から、アクリル系粘着剤から形成された粘着剤層(アクリル系粘着剤層)であることが好ましい。このようなアクリル系粘着剤層としては、特に限定されないが、例えば、a層として例示した上記アクリル系粘着剤層などが挙げられる。
【0083】
b層の厚さは、特に限定されないが、2〜100μmが好ましく、より好ましくは10〜90μmであり、さらに好ましくは30〜80μmである。厚さを2μm以上とすることにより、接着性(粘着性)が出る。中でも、特に、厚さを30μm以上とすることにより、b層側についての定荷重剥離試験における剥離距離を上記範囲に制御しやすく、剥離応力が長時間加えられた場合でも部材にずれや剥がれが生じにくいため、優れた接着信頼性を発現できる。一方、厚さを100μm以下とすることにより、両面粘着シートの加工時に発生する断面からの糊はみ出し等が抑制される。
【0084】
上記具体的構成の両面粘着シートにおける粘着剤層(a層およびb層)の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、上記の粘着剤組成物を、セパレータ又はプラスチックフィルム基材に塗布(塗工)し、必要に応じて、乾燥及び/又は硬化する方法を挙げることができる。
【0085】
なお、上記粘着剤層の形成方法における塗布(塗工)には、公知のコーティング法を用いることが可能であり、慣用のコーター、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーターなどを用いることができる。
【0086】
上記具体的構成の両面粘着シートは、公知慣用の粘着シートの製造方法に従って製造することができる。例えば、プラスチックフィルム基材の表面に粘着剤層(a層およびb層)を直接形成してもよいし(直写法)、セパレータ上に粘着剤層を形成した後、プラスチックフィルム基材に転写する(貼り合わせる)ことにより、プラスチックフィルム基材上に粘着剤層(a層およびb層)を設けてもよい(転写法)。上記の中でも、プラスチックフィルム基材に対する粘着剤層の投錨性を向上させる観点では、直写法が好ましい。
【0087】
上記具体的構成の両面粘着シートの粘着剤層(a層およびb層)表面は、使用時まではセパレータ(剥離ライナー)により保護されていてもよい。なお、上記各粘着剤層表面は2枚のセパレータによりそれぞれ保護されていてもよいし、両面が剥離面となっているセパレータ1枚によりロール状に巻回される形態で保護されていてもよい。セパレータは粘着剤層の保護材として用いられており、被着体に貼付する際に剥がされる。なお、セパレータは必ずしも設けられていなくてもよい。上記セパレータとしては、慣用の剥離紙などを使用でき、特に限定されないが、例えば、剥離処理層を有する基材、フッ素ポリマーからなる低接着性基材や無極性ポリマーからなる低接着性基材などを用いることができる。上記剥離処理層を有する基材としては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等が挙げられる。上記フッ素ポリマーからなる低接着性基材におけるフッ素系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。また、上記無極性ポリマーとしては、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等が挙げられる。特に、両面粘着シートと部材の貼り合わせ品を細幅や長尺の形状(微細な形状)にハーフカット加工(両面粘着シートのセパレータをカットしない加工)を施す場合には、このようなハーフカット加工を施しやすい点で、セパレータとしては、上質紙等の紙系基材の両面側にポリエチレン又はポリプロピレンによるラミネート層を有するセパレータ、もしくはポリエステルフィルムのセパレータが好ましい。
【0088】
上記セパレータが、紙系基材の両面側にポリエチレン又はポリプロピレンによるラミネート層を有するセパレータである場合、前記ラミネート層(ポリエチレン又はポリプロピレンによるラミネート層)の厚さとしては、5〜50μmが好ましく、より好ましくは10〜40μmである。厚さを5μm以上とすることにより、ハーフカット加工がしやすくなる。一方、厚さを50μm以下とすることにより、コストが安価となり、量産性が向上する。また、ラミネート層を構成するポリエチレンとしては、公知慣用のポリエチレンを用いることができ、特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒法ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどを挙げることができる。
【0089】
上記セパレータは公知乃至慣用の方法により形成することができる。例えば、上記セパレータが紙系基材の両面にポリエチレンのラミネート層を有するセパレータである場合は、押し出しラミネート方法により形成することができる。また、市販品を用いることも可能であり、このような市販品としては、例えば、商品名「SLB−80W5D」(住化加工紙(株)製)などを挙げることができる。
【0090】
上記セパレータの厚さは、特に制限されないが、例えば、12〜200μmが好ましく、より好ましくは50〜150μmである。
【0091】
上記具体的構成の両面粘着シートは、基材としてプラスチックフィルム基材を有するため、腰が強く、長尺、細幅の形状で用いる場合であっても、貼付作業性や剥離作業性が良好である。また、少なくとも一方の粘着剤層(a層)を特定構成の粘着剤組成物から形成された特定ゲル分率の粘着剤層とし、前記プラスチックフィルム基材の表面のうち少なくともa層を有する側の表面を強接着処理面とすることによって、少なくともa層側が優れた接着性かつ再剥離性を発揮できる。さらに、前記粘着剤組成物におけるイソシアネート系架橋剤の配合量を特定範囲に制御した場合には、定荷重に対する優れた耐剥離性を発揮することもできる。
【0092】
従来の両面粘着シートにおいては、粘着剤組成物中のイソシアネート系架橋剤の配合量を増量することによって、粘着剤層の基材への投錨性を向上させ、再剥離性を向上させる手法が一般的に採用されていた。しかしながら、イソシアネート系架橋剤の配合量を増量すると、粘着剤層のゲル分率が高くなって定荷重に対する耐剥離性が低下するため、上述の投錨性向上(即ち、再剥離性向上)と定荷重に対する耐剥離性向上の両立は困難であった。これに対して、上記具体的構成の両面粘着シートにおいては、a層を有する側のプラスチックフィルム表面を強接着処理面とすることによりa層の投錨性を高めているため、イソシアネート系架橋剤の配合量を増量することなく優れた再剥離性を発揮することができ、同時に定荷重に対する優れた耐剥離性を発揮することもできる。
【実施例】
【0093】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、以下の記載及び表1中の「コロネートL」の配合量は、固形分換算の配合量(重量部)で表した。
【0094】
実施例1
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、および窒素導入管を備えた反応容器に、モノマー原料としてのアクリル酸n−ブチル(BA):100重量部、アクリル酸(AA):2重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA):0.1重量部および酢酸ビニル:5重量部、重合溶媒としてのトルエンを入れ、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して容器内を窒素置換して、反応液を得た。上記反応液を60℃に加熱し、重合開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.2重量部加えた。系を60〜70℃に保ちつつ重合反応を10時間行い、アクリル系ポリマー(共重合体)の溶液を得た。
上記アクリル系ポリマーの溶液に、アクリル系ポリマー(共重合体)100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン(株)製、商品名「コロネートL」)2重量部、テルペンフェノール樹脂(住友ベークライト(株)製、商品名「スミライトレジンPR−12603」)25重量部、重合ロジンエステル樹脂(荒川化学工業(株)製、商品名「ペンセルD125」)15重量部を配合し、トルエンを加えて均一に混合した粘着剤組成物溶液を作製した。
次に、上記粘着剤組成物溶液を、一方の表面(片面)がコロナ処理面であるPETフィルム(東レ(株)製、商品名「ルミラー S−105」、厚さ:75μm、コロナ処理面の濡れ張力:63mN/m)の両面側に、それぞれ乾燥後の厚さが50μmとなるように塗布し、100℃で2分間乾燥させて、両面粘着シートを得た。なお、PETフィルムのコロナ処理面側に形成した粘着剤層のことを「コロナ処理面側の粘着剤層」と、コロナ処理面とは反対側の表面に形成した粘着剤層のことを「反対側の粘着剤層」と称する場合があり、以下の実施例2及び実施例3で得られた両面粘着シートに関しても同様とする。なお、両面粘着シートの両側の粘着面には、厚さ135μmのセパレータ(住化加工紙(株)製、商品名「SLB−80W5D」:上質紙の両面にポリエチレンのラミネート層を有し、該ラミネート層の表面にシリコーン系の剥離剤層を有するセパレータ)を設けた。
【0095】
実施例2
表1に示すように、基材として、一方の表面がコロナ処理面であるPETフィルム(東レ(株)製、商品名「ルミラー S−105」、厚さ:38μm、コロナ処理面の濡れ張力:63mN/m)を用い、粘着剤層の厚さをそれぞれ40μmに変更した以外は実施例1と同様にして、両面粘着シートを得た。
【0096】
実施例3
表1に示すように、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン(株)製、商品名「コロネートL」)の配合量を、アクリル系ポリマー(共重合体)100重量部に対して3重量部に変更し、さらに、粘着剤層の厚さをそれぞれ20μmに変更した以外は実施例1と同様にして、両面粘着シートを得た。
【0097】
実施例4
表1に示すように、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン(株)製、商品名「コロネートL」)の配合量を、アクリル系ポリマー(共重合体)100重量部に対して4重量部に変更し、さらに、粘着剤層の厚さをそれぞれ40μmに変更した以外は実施例1と同様にして、両面粘着シートを得た。
【0098】
比較例1
表1に示すように、基材として、PETフィルム(東レ(株)製、商品名「ルミラー S−27」、厚さ:75μm、濡れ張力:43mN/m(濡れ張力は両面ともに等しい))を用いたこと以外は実施例1と同様にして、両面粘着シートを得た。
【0099】
比較例2
表1に示すように、基材として、不織布(日本板紙(株)製、商品名「CB−175原紙」、厚さ45μm、坪量17g/m2)を用い、粘着剤層の厚さをそれぞれ70μmに変更した以外は実施例1と同様にして、両面粘着シートを得た。
【0100】
(評価)
実施例および比較例で得られた両面粘着シートについて、表1に示す評価を行った。測定方法又は評価方法は下記の通りである。また、実施例および比較例で得られた両面粘着シートにおける粘着剤層のゲル分率は、上述の方法により測定した。
【0101】
(1)180°引き剥がし粘着力(対SUS板)
実施例および比較例で得られた両面粘着シートの一方の粘着面(実施例で得られた両面粘着シートの場合には、反対側の粘着剤層表面)に、PETフィルム(東レ(株)製、商品名「ルミラー S10 #25」、厚さ:25μm)を裏打ちし、幅20mm×長さ100mmのテープ片を切り出して、これを測定用サンプルとした。
上記測定用サンプルについて、180°剥離試験を行った。23℃、50%RHの雰囲気下、測定用サンプルと試験板(SUS304研磨板)を、2kgのゴムローラー(幅:約30mm)を1往復させることによって貼り合わせた。30分経過後、引張試験機を使用して、測定用サンプルを剥離した際の荷重を測定し、表1の「180°引き剥がし粘着力(対SUS板)」の欄に示した。
測定は、23℃、50%RHの雰囲気下、剥離角度180°、引張速度300mm/分の条件で行った。なお、測定回数は3回とし、平均値を算出した。
【0102】
(2)再剥離性評価試験
実施例および比較例で得られた両面粘着シートの一方の粘着面(実施例で得られた両面粘着シートの場合には、反対側の粘着剤層表面)に、PETフィルム(東レ(株)製、商品名「ルミラー S10 #25」、厚さ:25μm)を裏打ちし、幅20mm×長さ100mmのテープ片を切り出した。次いで、他方の粘着面(実施例で得られた両面粘着シートの場合には、コロナ処理面側の粘着剤層表面)をポリスチレン板(RP東プラ(株)製、商品名「ポリスチレン板」、幅30mm×長さ120mm、厚さ2mm)に、2kgのローラー(ゴムローラー、幅:約30mm)を1往復させて貼付(圧着)し、これを評価用サンプルとした。
上記評価用サンプルを60℃、90%RHの雰囲気下で1ヵ月放置した後、23℃、50%RHの雰囲気下で24時間放置し、その後、23℃、50%RHの雰囲気下、引張試験機を用いて、剥離角度180°、引張速度10m/分の条件で、ポリスチレン板からテープ片を引き剥がした。テープ片を剥離後、ポリスチレン板の表面を目視で観察し、糊残りが生じなかった場合を○(再剥離性良好)、糊残りが生じた場合を×(再剥離性不良)として評価し、表1の「再剥離性」の欄に結果を示した。
【0103】
(3)作業性(図4参照)
実施例および比較例で得られた両面粘着シートを、幅10mm×長さ150mmのサイズに切り出し、セパレータを剥離した。
上記両面粘着シート21の一方の粘着面を、両面粘着シート21の長さ方向の末端から長さ方向に50mmの部分のみが測定台22の端から張り出すようにして、表面が水平である測定台22の表面に貼り付けて固定した(即ち、両面粘着シート21の長さ方向の末端から長さ方向に100mmの部分のみを測定台22の表面に貼付した)。
測定台から張り出した両面粘着テープの末端部分23の位置の、測定台表面を含む水平面に対する垂直距離(図4における24)をノギスで測定し、これを両面粘着シートの「たわみ距離」とした。なお、上記たわみ距離の大小は、両面粘着テープの腰の強弱を表し、両面粘着テープの貼付時や剥離時の作業性(貼付作業性および剥離作業性)の良否の指標となる。上記たわみ距離が35mm以下であれば○(作業性良好)、35mmよりも大きければ×(作業性不良)として評価を行い、表1の「作業性」の欄に結果を示した。
【0104】
(4)定荷重剥離試験(図1〜3参照)
実施例および比較例で得られた両面粘着シートの一方の粘着面(実施例で得られた両面粘着シートの場合には、反対側の粘着剤層表面)に、PETフィルム(東レ(株)製、商品名「ルミラー S10 #25」、厚さ:25μm)を裏打ちし、幅20mm×長さ60mmのテープ片を切り出して、測定用サンプル12(両面粘着シート/PETフィルムの貼り合わせ体)とした。
上記の測定用サンプル12の他方の粘着面(実施例で得られた両面粘着シートの場合には、コロナ処理面側の粘着剤層表面)を、ポリスチレン板11[RP東プラ(株)製、商品名「ポリスチレン板」、長さ100mm×幅30mm]の片面(中央部)に、2kgのゴムローラー(幅:約30mm)を1往復させて圧着し、30分間養生した。
次いで、ポリスチレン板11を、クランプを用いて、測定用サンプル12を貼付した面が下側になるように水平に設置した(図1、図2参照)。
図1、図2に示すように、ポリスチレン板11から、測定用サンプル12を、サンプルの長さ方向の末端から長さ方向に5mm剥離した。さらに、測定用サンプル12の長さ方向の端部(上記剥離した部分)から、100gの錘13をひもで吊るし、ポリスチレン板11の表面と垂直(下)方向に100gf(0.98N)の荷重をかけた。なお、上記の錘13は、測定用サンプル12の幅方向の中央、長さ方向の末端から5mmの部分に穴を開けて通したひもの先に取り付けた。
上記のように荷重をかけた後、23℃、50%RHの条件下で、3時間放置した。測定開始から3時間が経過する間(3時間放置の間)に測定用サンプル12が剥離した距離(剥離距離)16を測定した。なお、結果は表1の「剥離距離」の欄に示した。
なお、上記剥離距離16は、測定用サンプル12の長さ方向における剥離距離であり、測定開始時に両面粘着シートとポリスチレン板が密着している末端位置14から、3時間経過後に両面粘着シートとポリスチレン板が密着している末端位置15までの距離16をいう(図2、図3参照)。上記剥離距離16は測定用サンプル12の幅方向の中心距離で測定する。
【0105】
(5)引張強度(破断強度)および降伏点強度
実施例および比較例で得られた両面粘着シートを、幅10mm×長さ100mmの形状に打ち抜き、試験片を作製した。なお、上記試験片の長さ方向が、両面粘着シートの長手方向と一致するように打ち抜いた。
23℃、50%RHの雰囲気下、引張試験機を使用し、チャック間距離(初期長)を50mm、引張速度を100mm/分として、上記試験片の引張試験を行い、両面粘着シートの破断強度および降伏点強度を測定した。なお、試験回数(n数)は3回とし、それぞれの平均値を算出し、結果を表1に示した。
【0106】
【表1】

【0107】
表1の結果から明らかなように、本発明の両面粘着シート(実施例)は、細幅や長尺の形状で用いた場合であっても作業性が良好であり、接着性および再剥離性に優れていた。さらに、粘着剤層の厚さ、架橋剤の配合量、粘着剤層のゲル分率を適切な範囲に制御した場合(実施例1、2)には、特に、定荷重に対する耐剥離性が特に優れていた。一方、プラスチックフィルム基材として、表面にコロナ処理が施されていないPETフィルムを用いた場合(比較例1)には、PETフィルムに対する粘着剤層の投錨性が不足し、再剥離性が不良であった。また、両面粘着シートの基材として不織布を用いた場合(比較例2)には、腰がないため作業性が不良であった。
【0108】
表1中の略語は以下の通りである。
BA:アクリル酸n−ブチル
AA:アクリル酸
HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル
VA:酢酸ビニル
コロネートL:日本ポリウレタン(株)製、商品名「コロネートL」、イソシアネート系架橋剤
スミライトレジンPR−12603:住友ベークライト(株)製、商品名「スミライトレジンPR−12603」、テルペンフェノール樹脂
ペンセルD125:荒川化学工業(株)製、商品名「ペンセルD125」、重合ロジンエステル樹脂
【符号の説明】
【0109】
11 ポリスチレン板
12 両面粘着シート(又は測定用サンプル(両面粘着シート/PETフィルム))
13 錘
14 測定開始時に両面粘着シート(又は測定用サンプル)とポリスチレン板が密着している末端位置
15 3時間経過後に両面粘着シート(又は測定用サンプル)とポリスチレン板が密着している末端位置
16 剥離距離
21 両面粘着シート
22 測定台
23 末端部分
24 たわみ距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルム基材の両面側に粘着剤層を有する両面粘着シートであって、一方の粘着剤層表面(A面)の引張速度300mm/分で測定されるステンレス板に対する180°引き剥がし粘着力が8N/20mm以上であり、かつ下記の再剥離性評価試験において糊残りを生じないことを特徴とする両面粘着シート。
再剥離性評価試験:両面粘着シートのA面を、貼付部分のサイズが幅20mm×長さ100mmとなるようにポリスチレン板(RP東プラ(株)製、商品名「ポリスチレン板」)に貼付し、60℃、90%RHの雰囲気下で1ヵ月放置した後、剥離角度180°、引張速度10m/分の条件で、前記ポリスチレン板から両面粘着シートを引き剥がした時の、該ポリスチレン板表面への糊残りの有無を目視で評価する。
【請求項2】
下記の定荷重剥離試験により測定される剥離距離が、10mm以下である請求項1に記載の両面粘着シート。
定荷重剥離試験:ポリスチレン板(RP東プラ(株)製、商品名「ポリスチレン板」)の片面に、両面粘着シート(幅20mm×長さ60mm)のA面を貼付し、2kgのゴムローラーを1往復させて圧着後、30分間養生する。その後、23℃、50%RHの条件下で、両面粘着シートの長さ方向の末端に、ポリスチレン板の表面と垂直方向に100gfの荷重をかけ、3時間経過後の両面粘着シートの剥離距離を測定する。
【請求項3】
前記プラスチックフィルム基材が、前記プラスチックフィルム基材の表面のうち少なくともA面側の表面が強接着処理面であるプラスチックフィルム基材である請求項1又は2に記載の両面粘着シート。
【請求項4】
プラスチックフィルム基材の両面側に粘着剤層を有する両面粘着シートであって、一方の粘着剤層(a層)が、炭素数が4〜9の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として構成されるアクリル系ポリマーと粘着付与樹脂とを含有する粘着剤組成物から形成されたゲル分率が5〜50%である粘着剤層であり、前記プラスチックフィルム基材の表面のうち少なくともa層を有する側の表面が強接着処理面であることを特徴とする両面粘着シート。
【請求項5】
前記アクリル系ポリマーの含有量が、粘着剤組成物の固形分(100重量%)に対して、50〜99重量%である請求項4に記載の両面粘着シート。
【請求項6】
前記アクリル系ポリマーが、アクリル酸n−ブチル又はアクリル酸2−エチルヘキシルを必須のモノマー成分として構成されるアクリル系ポリマーである請求項4又は5に記載の両面粘着シート。
【請求項7】
前記アクリル系ポリマーが、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量部)に対して、アクリル酸n−ブチルの含有量が50重量%以上であるモノマー成分より構成されたアクリル系ポリマーである請求項4〜6のいずれかの項に記載の両面粘着シート。
【請求項8】
前記粘着剤組成物が、前記アクリル系ポリマー100重量部に対して、粘着付与樹脂を10〜50重量部、イソシアネート系架橋剤を1.0重量部以上、3.0重量部未満含有する粘着剤組成物であり、かつa層の厚さが2〜100μmである請求項4〜7のいずれかの項に記載の両面粘着シート。
【請求項9】
前記プラスチックフィルム基材の厚さが20〜200μmである請求項1〜4のいずれかの項に記載の両面粘着シート。
【請求項10】
長手方向の破断強度が50N/10mm以上、かつ長手方向の降伏点強度が20N/10mm以上である請求項1〜9のいずれかの項に記載の両面粘着シート。
【請求項11】
両面粘着シートのA面(a層表面)を、家電製品又はOA機器におけるリサイクルされる部材に貼付する請求項1〜10のいずれかの項に記載の両面粘着シートの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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