説明

中皿の上昇機構を備えた容器

【課題】円形内周面を備えた容器体Aに対して外部からの操作が可能に螺軸41付きの操作ハンドルCを設け、容器体Aに対する操作ハンドルCの相対回動により、螺軸41が回転して螺軸41に内周縁を螺着した中皿Eが上昇し、中皿E上方の収容液を押し上げる如く構成した容器であって、中皿外周と容器体内周との間の液漏れの虞がなく、しかも、簡単な構造で円滑な中皿の上昇が可能である中皿の上昇機構を備え容器を提案する。
【解決手段】中皿E外周の容器体A内周部分との摺動部分下方に、所定周方向に傾倒した状態で外縁を容器体A内周部に摺動可能に圧接した弾性を有する回動防止用突部55を突設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中皿の上昇機構を備えた容器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器体内の中皿が上昇する上昇機構を備え、該上昇機構の操作で中皿を上昇させてその上方の収容液を上昇させる如く構成した容器が提案されている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
特許文献1に記載された容器は、容器体外部から操作が可能な操作ハンドルと、容器体内に立設した操作ハンドルの螺軸に内周縁を螺着した中皿とを備え、操作ハンドルの回動で螺軸が回転し、中皿が上昇する如く構成したものである。容器体の内周縁が円形のものの場合には螺軸の回動とともに中皿も回動してしまう虞があり、収容物の円滑な注出が行われない虞がある。従って、螺合部分の摩擦力に抗する力が周縁部に働く如く構成しており、例えば、外周縁の摩擦力が摺動可能な範囲で螺合部分の摩擦力より大きく構成している。
【0004】
この様な相互の回転を防止して円滑な中皿の上昇を行うために中皿外周部の容器体内周面との当接面積を考慮する等の手段が考えられるが、相互の回転防止に関してはいまだ改良の余地があった。
【0005】
この様な点を考慮して容器体の周壁内面に凹溝を縦設し、一方、中皿の外周に凹溝に上下動可能に嵌合する突条を突設することで容器体に対する中皿の相対回動を防止し、牽いては円滑な中皿の上昇を可能としている容器も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−206723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら後者の場合には容器体内のシール性に問題があり、収容物が液の場合には凹溝と突条との嵌合部分から液が漏出する虞が生じる。
【0008】
本発明は上記した点に鑑みてなされたもので、容器体内に上昇可能に嵌合させた中皿を上昇させる上昇機構を備えた容器であって、中皿外周と容器体内周との間の液漏れの虞がなく、しかも、簡単な構造で円滑な中皿の上昇が可能である中皿の上昇機構を備え容器を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の手段として、以下の通り構成した。即ち、下部から上部に亘り同サイズの円形内周面を備えた容器体Aと、容器体Aの底部に容器体Aに対して相対回動が可能に且つ外部からの操作が可能に設けるとともに、容器体A内に螺軸41を立設した操作ハンドルCと、螺軸41に内周縁を螺着するとともに、外周縁を容器体A内周面に嵌合した中皿Eとを備え、容器体Aに対する操作ハンドルCの相対回動による螺軸41の回転で中皿Eが上昇し、中皿E上方の収容液を押し上げる如く構成した容器であって、中皿E外周の容器体A内周部分との摺動部分下方に、所定周方向に傾倒した状態で外縁を容器体A内周部に摺動可能に圧接した弾性を有する回動防止用突部55を突設した。
【0010】
第2の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段に於いて、回動防止用突部55を中皿E外周に周方向等間隔に複数設けた。
【0011】
第3の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段又は第2の手段のいずれかの手段に於いて、回動防止用突部55の下方の中皿E外周に、容器体A内周に摺動上昇可能に嵌合する環状の安定上昇用突部56を突設した。
【0012】
第4の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段乃至第3の手段のいずれかの手段に於いて、螺軸41の上端を容器体Aの上端に嵌着した中蓋B裏面に回動可能に嵌合させた。
【0013】
第5の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段乃至第4の手段のいずれかの手段に於いて、容器体Aと操作ハンドルCとの間に、相互の回動を所定方向に規制する回動規制手段を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、下部から上部に亘り同サイズの円形内周面を備えた容器体Aで、容器体内周面には凹溝が縦設されていないため中皿Eと容器体A内周の摺動部分から下方への液の漏出の虞がなく、しかも、回動防止用突部55の存在で容器体Aに対する中皿Eの相互回動を確実に防止して、中皿Eの円滑な上昇を行うことができる。
【0015】
また、回動防止用突部55は、中皿E外周の容器体A内周部分との摺動部分下方に、所定周方向に傾倒した状態で外縁を容器体A内周部に摺動可能に圧接した弾性を有するため、回動防止用突部55は液と接触せずに回動防止機能を発揮することができて滑らず、また、中皿Eが螺軸41の回転により仮に螺軸41と一緒に廻ってしまうであろう方向に向かって傾倒して弾性的に圧接しているため、回動してしまうであろう方向への抗力が大きく作用して回転の防止をより図れるものである。
【0016】
回動防止用突部55を中皿E外周に周方向等間隔に複数設けた場合には、中皿E外面への摺動摩擦力が均等に掛かり、より円滑な中皿Eの上昇が可能となる。
【0017】
回動防止用突部55の下方の中皿E外周に、容器体A内周に摺動上昇可能に嵌合する環状の安定上昇用突部56を突設した場合には、中皿Eの上昇時にガタつき等をより確実に防止することができ、更なる円滑な上昇が可能となる。
【0018】
螺軸41の上端を容器体Aの上端に嵌着した中蓋B裏面に回動可能に嵌合させた場合には、螺軸41の回転のブレをなくしこの点からも円滑な中皿Eの上昇が可能となり、また、螺軸と中皿Eとの螺合部分のシール性をより確実に行える利点もある。
【0019】
容器体Aと操作ハンドルCとの間に、相互の回動を所定方向に規制する回動規制手段を備えている場合には、操作ハンドルCを逆廻しするという不都合を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】容器の縦断面図である。(実施例1)
【図2】中皿の縦断面図である。(実施例1)
【図3】中皿の底面図である。(実施例1)
【図4】図2のx−x線に沿う横断面図である。(実施例1)
【図5】容器の縦断面図である。(実施例2)
【図6】容器の縦断面図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の形態を図面を参照して説明する。
【0022】
図1乃至図5は中皿の上昇機構を備えた容器(以下、単に容器という)の一例を示し、図中1は容器を示す。容器1は、容器体Aと、中蓋Bと、操作ハンドルCと、螺軸部材Dと、中皿Eと、キャップFとを備えている。
【0023】
容器体Aは、円筒形の周壁10の上端部に、それぞれ円筒形をなす下段11a,中段11b,上段11cの三段に順次縮径した口頸部11を起立している。中段11bの外周には螺条を、上段11cの外周には係止突条をそれぞれ突設している。また、容器体周壁10の下端外周に、操作ハンドルCを回動可能に嵌合させるための環状凹部12を形成し、環状凹部12内の容器体周壁10上部には係止突条を突周設している。
【0024】
また、容器体周壁10の下端部対向位置には、操作ハンドルCの回動規制手段を付与するための一対の係止突部13を突設している。各係止突部13は周方向一側面を傾斜面に、他側面を垂直面に形成しており、後述する係合突部に順次乗り越え係合する。操作ハンドルCの回動規制手段に関しては後述する。
【0025】
中蓋Bは、口頸部11の外周上端部に、突条相互の乗り越え係合による抜け出しを防止して、嵌合筒20を嵌合させ、嵌合筒20上端縁より延設した頂板21により口頸部11の上端開口を閉塞している。頂板21の裏面中央より筒部22を垂設し、筒部22の外周上端部には周方向複数の係止リブ23を突設し、更に、各係止リブ23上方の頂板21に複数の注出口24を穿設している。また、頂板21の下面から垂設したシール筒を口頸部11の上段11c内周に液密に嵌合させている。
【0026】
操作ハンドルCは、容器体Aの環状凹部12に、容器体周壁10との相互の回動が可能に且つ突条相互の乗り越え係合による下方への抜け出しを図って、嵌合させた回動筒部30を備え、回動筒部30の下端より延設した底板31の上面より螺軸部材Dを固定するための固定筒32を起立している。固定筒32の外周には、周方向多数の縦リブを縦設している。
【0027】
螺軸部材Dは、操作ハンドルCに嵌着した嵌着基部40より螺軸41を起立している。螺軸41の外周には螺条を周設している。嵌着基部40は、操作ハンドルCの固定筒32外周に嵌合させた周壁部40aを備えている。周壁部40aは、内周面に周方向多数縦設した縦リブを固定筒32外周に周方向多数縦設した縦リブと係合させることで相互の回動を防止して嵌合させている。また、周壁部40aの下端縁より外方へ延設したフランジ部40bの外周縁を回動筒部30の内周下端部に上方への抜け出しを防止して嵌着している。抜け出し防止は回動筒部30の内周に突設した突条下面に周縁部を乗り越え係合させること行っている。また、周壁部40aの上端より延設したフランジ状の頂壁部40cの内周縁より螺軸41を起立しており、その上端を中蓋Bの筒部22外周に回動可能に嵌合させている。
【0028】
フランジ部40bの上面には周方向等間隔に係合突部42を突設しており、係合突部42の周方向一側面は垂直面に、他側面は傾斜面に形成されている。そして、この係合突部42と容器体周壁10下端の係止突部13とで、容器体Aと操作ハンドルCとの間に、相互の回動を所定方向に規制する回動規制手段を構成する。操作ハンドルCを容器体Aに対して所定方向に回動させると係合突部42と係止突部13の傾斜面相互が当接して相互に乗り越えることができ、逆方向に回動させると係合突部42と係止突部13の垂直面が係合してその方向の相互回動が不能となる如く構成している。
【0029】
中皿Eは、図2乃至図4に単独で示す如く、内周壁50と外周壁51とを、頂壁52で連結した形態を採っており、頂壁52は内周壁50の上端縁より傾斜上昇した後湾曲下降して外周縁を外周壁51上端縁と連結している。また、頂壁52を下方に凹ませた凹部を、平面視十字形状に凹設している。内周壁50の内面には螺軸41外周の螺条と螺合する螺条を周設している。尚、螺合部分は充分な液密性を持って螺合させている。また、内周壁50と外周壁51との間には支持板53を掛け渡しており、支持板53は周方向複数掛け渡している。
【0030】
外周壁51の下部は大径部51aに形成しており、大径部51aの上端部に環状のシール突部54を突設している。また、シール突部54の下方の大径部51aに回動防止用突部55を突設している。回動防止用突部55は、図4に示す如く、回動してしまうであろう所定方向に向かって傾倒して突設した、即ち、所定方向に湾曲或いは傾斜突設した横断面形状をなしており、対向する位置に一対設けている。尚、回動してしまうであろう所定方向とは、螺軸41の回転により仮に螺軸41と一緒に廻ってしまうであろう方向を示す。また、回動防止用突部55は対向する位置に一対設けているが、これに限らず、1箇所であっても複数個所であっても良いが、中皿Eの円滑な作動を考慮すれば周方向等間隔に複数設けることが好ましい。
【0031】
更に、回動防止用突部55下方の大径部51a下端部には、中皿Eの上昇をより安定したものとするための安定上昇用突部56を突周設している。中皿Eは、図1に示す如く、内周を螺軸41外周に螺着させ、外周のシール突部54、回動防止用突部55及び安定上昇用突部56をそれぞれ周壁10内周に密嵌させて装着するが、シール突部54は主として液密性の付与に関与し、回動防止用突部55は主として相互の回動防止に寄与し、安定上昇用突部56は主として上昇時のガタツキ防止に寄与する。
【0032】
キャップFは、口頸部11の中段11bに螺合した周壁の上端より頂壁を延設した伏皿状をなし、容器体Aに対して着脱可能に装着している。
【0033】
上記の如く構成した容器1は、図1の状態からキャップFを外し、容器体Aに対して操作ハンドルCを相対回動させると、操作ハンドルCと一体に螺軸部材Dが回動し牽いては螺軸41が一体に回転し、それに伴って中皿Eが上昇し、中皿E上方の容器体A内に収容された液が注出口24より押し出されて使用が可能となる。螺軸41の回動による中皿Eの上昇の際には、回動防止用突部55の存在により中皿Eが螺軸41と一緒に回転してしまい上昇しないという不都合を確実に防止する。
【0034】
図5は他の例を示し、図1の例に於いて、中蓋Bの上に塗布体Gを設けた例を示す。中蓋Bの構成は基本的には図1の例と類似し、本例では頂板21の上面周縁部から支持筒部25を起立し、また、筒部22を頂板21を貫通して支持筒部25上方位置まで上端を突出させ、更に筒部22の外周にリブ26を介して筒27を立設している。また、塗布体Gは、合成樹脂発泡体等の多孔性物質で構成された中空円柱状の塗布部70を備え、塗布部70内周を筒27外周に嵌着させ、また、塗布部70の外周に嵌着したフランジより嵌合筒を垂設した固定枠71を、その嵌合筒を支持筒部25外周に抜け出しを防止して嵌着している。キャップFは塗布体Gの形状に合わせて塗布体Gが収納可能な形状をなし容器体Aに対して着脱可能に設けている。その他の構成は図1の例と同様であるため説明を省略する。
【0035】
この場合には容器体A内の液を塗布体Gの塗布部70を介して塗布することができる。
【0036】
図6は更に他の例を示し、図1の例に於いて、中蓋Bの上に塗布液の引き延ばし用のヘラを設けた例を示す。中蓋Bの構成は基本的には図1の例と類似し、本例では筒部22を頂板21を貫通してその上方まで起立させ、その外周に支持筒部25を起立し、支持筒部25と筒部22とはリブ26で連結している。また、支持筒部25外周にヘラ部材Hを嵌着している。ヘラ部材Hは、支持筒部25外周に嵌着させた嵌着筒部の上端に、先端が斜めに傾斜した板状のヘラ部80を延設し、ヘラ部80に注出口81を開口している。そして、容器体A内から支持筒部25と筒部22との間をとおり、注出口81に連通する如く構成している。また、キャップFの頂壁52裏面から注出口81に嵌合する棒栓60垂設している。その他の構成は図1の例と同様であるため、説明を省略する。
【0037】
上記各例にある如く、容器の吐出部の形態は種々採用でき、これらに限られるものではない。また、上記各部材の材質は特に限定はないが、材質としては合成樹脂等が好ましく採用できる。
【符号の説明】
【0038】
1…中皿の上昇機構を備えた容器
A…容器体
10…周壁、11…口頸部、11a …下段、11b …中段、11c …上段、12…環状凹部、
13…係止突部
B…中蓋
20…嵌合筒、21…頂板、22…筒部、23…係止リブ、24…注出口、25…支持筒部、
26…リブ、27…筒
C…操作ハンドル
30…回動筒部、31…底板、32…固定筒
D…螺軸部材
40…嵌着基部、40a …周壁部、40b …フランジ部、40c …頂壁部、41…螺軸、
42…係合突部 E…中皿
50…内周壁、51…外周壁、51a …大径部、52…頂壁、53…支持板、54…シール突部、
55…回動防止用突部、56…安定上昇用突部
F…キャップ
60…棒栓
G…塗布体
70…塗布部、71…固定枠
H…ヘラ部材
80…ヘラ部、81…注出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部から上部に亘り同サイズの円形内周面を備えた容器体(A)と、容器体(A)の底部に容器体(A)に対して相対回動が可能に且つ外部からの操作が可能に設けるとともに、容器体(A)内に螺軸(41)を立設した操作ハンドルCと、螺軸(41)に内周縁を螺着するとともに、外周縁を容器体(A)内周面に嵌合した中皿(E)とを備え、容器体(A)に対する操作ハンドルCの相対回動による螺軸(41)の回転で中皿(E)が上昇し、中皿(E)上方の収容液を押し上げる如く構成した容器であって、中皿(E)外周の容器体(A)内周部分との摺動部分下方に、所定周方向に傾倒した状態で外縁を容器体(A)内周部に摺動可能に圧接した弾性を有する回動防止用突部(55)を突設したことを特徴とする中皿の上昇機構を備えた容器。
【請求項2】
回動防止用突部(55)を中皿(E)外周に周方向等間隔に複数設けた請求項1記載の中皿の上昇機構を備えた容器。
【請求項3】
回動防止用突部(55)の下方の中皿(E)外周に、容器体(A)内周に摺動上昇可能に嵌合する環状の安定上昇用突部(56)を突設した請求項1又は請求2のいずれか1項に記載の中皿の上昇機構を備えた容器。
【請求項4】
螺軸(41)の上端を容器体(A)の上端に嵌着した中蓋(B)裏面に回動可能に嵌合させた請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の中皿の上昇機構を備えた容器。
【請求項5】
容器体(A)と操作ハンドル(C)との間に、相互の回動を所定方向に規制する回動規制手段を備えている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の中皿の上昇機構を備えた容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−130617(P2012−130617A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287400(P2010−287400)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】