説明

中空エンジンバルブの製造方法

【課題】所望の肉厚の軸部を有する中空エンジンバルブを比較的容易に製造することができる中空エンジンバルブの製造方法を提供することにある。
【解決手段】軸部から弁傘部の拡径部に亘って形成された中空部を有する中空エンジンバルブの製造方法であって、軸部11と軸部に接続する弁傘部形成部分12からなり、軸部から弁傘部形成部分の拡径部に亘って円柱体形状の穴部13が形成された中空エンジンバルブの弁本体半完成品10に対し、回転塑性加工を行うことで、軸部を縮径する回転塑性加工工程と、この工程に引き続き、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対しネッキング加工を行うことで、軸部の外径および内径を縮径するネッキング加工工程と、この工程に引き続いて、軸部の先端を封止することにより、中空エンジンバルブを得る封止工程を備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸部(胴部)から弁傘部の拡径部に亘って中空部が形成された中空エンジンバルブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空エンジンバルブ(弁)の製造方法が種々開発され、中空エンジンバルブを鍛造で成形する方法がある。例えば、特許文献1には、中空エンジンバルブの弁傘部の製造方法及び中空エンジンバルブが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の製造方法では、熱間鍛造にて中実丸棒(円柱状のビレット材)の上面にパンチで円柱形の穴を明けてコップ状中間部材を成形し、この下部を鍛造により拡径して弁傘部形成部分を成形し、これに対しネッキング加工を複数回行うことで弁傘部形成部分の上部を徐々に絞り上げて弁傘部およびこれに接続する中空軸部を成形して中空エンジンバルブの弁本体を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第430291号(例えば、[実施例1]、[図1]〜[図4]など参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した中空エンジンバルブの製造方法では、図6に示すように、中空エンジンバルブの弁本体半完成品を成形して弁本体を得ている。まず、図6Aに示すように、肉厚t0である軸部(胴部)101とこれに接続する弁傘部形成部分102とを有する中空エンジンバルブの弁本体半完成品100を用意する。中空エンジンバルブの弁本体半完成品100においては、軸部101から弁傘部形成部分102の拡径部に亘って、直径d0の穴部103が形成されている。続いて、第1回目のネッキング加工を行うことにより、図6Bに示すように、軸部104が肉厚t1(>t0)となると共に、穴部105が直径d1(<d0)となる。続いて、第2回目のネッキング加工を行うことにより、図6Cに示すように、軸部106が肉厚t2(>t1)となると共に、穴部107が直径d2(<d1)となる。このようにネッキング加工を複数回繰り返し行い、第n回目のネッキング加工を行うことにより、図6Dに示すように、軸部108が肉厚tn(>t(n-1))となると共に、穴部109が直径dn(<d(n-1))となる。
【0006】
上述したネッキング加工では、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の穴部内にマンドレル(中子)を入れることができない。そのため、ネッキング加工により軸部を絞り上げると、この加工の回数に応じて、軸部の肉厚が厚くなっていく。よって、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部の肉厚およびネッキング加工の回数により、中空エンジンバルブの弁本体の軸部の肉厚が制約されてしまう。また、軸部が折れる座屈変形などが生じないように、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部の肉厚を所定の大きさ以上にする必要があった。このように、上述した中空エンジンバルブの製造方法では、所望の肉厚の軸部を有する中空エンジンバルブを得ることは難しかった。
【0007】
以上のことから、本発明は、前述した課題を解決するために為されたもので、所望の肉厚の軸部を有する中空エンジンバルブを比較的容易に製造することができる中空エンジンバルブの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決する第1の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法は、
軸部から弁傘部の拡径部に亘って中空部が形成された中空エンジンバルブを製造する方法であって、
軸部と前記軸部に接続する弁傘部形成部分からなり、前記軸部から前記弁傘部形成部分の拡径部に亘って円柱体形状の穴部が形成された中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し、回転塑性加工を行うことで、前記軸部を縮径する第1の回転塑性加工工程と、
この工程に引き続き、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し、当該中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記弁傘部形成部分の拡径部および前記軸部を押圧するダイスのダイス孔の内径が、段階が進むごとに少しずつ縮径されたダイスを、絞り上げ工程の数だけ用いて徐々に絞り上げるネッキング加工を行うことで、前記軸部の外径および内径を縮径するネッキング加工工程と、
この工程に引き続いて、前記軸部の先端を封止することにより、中空エンジンバルブを得る封止工程とを備える
ことを特徴とする。
【0009】
上述した課題を解決する第2の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法は、
第1の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法であって、
前記回転塑性加工が、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記穴部内に中子を挿入し、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品と前記中子を一緒に軸回転しつつ、前記軸部の外周部にスエージング加工用ダイスによる打撃を与えるロータリースエージング加工、または前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記穴部内に中子を挿入し、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品と前記中子を一緒に軸回転しつつ、前記軸部の外周部にスピニング加工用ダイスを押し付けるスピニング加工である
ことを特徴とする。
【0010】
上述した課題を解決する第3の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法は、
第1の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法であって、
前記回転塑性加工が、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品を軸回転しつつ、前記軸部の外周部にスエージング加工用ダイスによる打撃を与えるロータリースエージング加工、または、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品を軸回転しつつ、前記軸部の外周部にスピニング加工用ダイスを押し付けるスピニング加工と、
この加工に引き続き、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記穴部内に中子を挿入し、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品と前記中子を一緒に軸回転しつつ、前記軸部の外周部にスエージング加工用ダイスによる打撃を与えるロータリースエージング加工、または前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記穴部内に中子を挿入し、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品と前記中子を一緒に軸回転しつつ、前記軸部の外周部にスピニング加工用ダイスを押し付けるスピニング加工との組み合わせである
ことを特徴とする。
【0011】
上述した課題を解決する第4の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法は、
第1の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法であって、
前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し前記ネッキング加工を行った後に、回転塑性加工を行うことで、前記軸部の内径の大きさを保持しつつその外径を縮径する第2の回転塑性加工工程をさらに備える
ことを特徴とする。
【0012】
上述した課題を解決する第5の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法は、
第4の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法であって、
前記第2の回転塑性加工工程における前記回転塑性加工が、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記穴部内に中子を挿入し、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品と前記中子を一緒に軸回転しつつ、前記軸部の外周部にスエージング加工用ダイスによる打撃を与えるロータリースエージング加工、または前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記穴部内に中子を挿入し、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品と前記中子を一緒に軸回転しつつ、前記軸部の外周部にスピニング加工用ダイスを押し付けるスピニング加工である
ことを特徴とする。
【0013】
上述した課題を解決する第6の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法は、
第4の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法であって、
前記第2の回転塑性加工工程の前記回転塑性加工を、前記軸部の上部以外の部分に対してのみ行って、前記軸部の上部以外にて内径の大きさを保持しつつその外径を縮径する一方、前記軸部の上部における外径を加工前の大きさを保持して大径部とし、
前記封止工程にて、前記大径部をプレスして、前記軸部の先端を封止することにより、前記中空エンジンバルブを得る
ことを特徴とする。
【0014】
上述した課題を解決する第7の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法は、
軸部から弁傘部の拡径部に亘って中空部が形成された中空エンジンバルブを製造する方法であって、
軸部と前記軸部に接続する弁傘部形成部分からなり、前記軸部から前記弁傘部形成部分の拡径部に亘って円柱体形状の穴部が形成された中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し、当該中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記弁傘部形成部分の拡径部および前記軸部を押圧するダイスのダイス孔の内径が、段階が進むごとに少しずつ縮径されたダイスを、絞り上げ工程の数だけ用いて徐々に絞り上げるネッキング加工を行うことで、前記軸部の外径および内径を縮径する第1のネッキング加工工程と、
この工程に引き続き、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し回転塑性加工を行うことで、前記軸部を縮径する回転塑性加工工程と、
この工程に引き続いて、前記軸部の先端を封止することにより、中空エンジンバルブを得る封止工程とを備える
ことを特徴とする。
【0015】
上述した課題を解決する第8の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法は、
第7の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法であって、
前記回転塑性加工が、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記穴部内に中子を挿入し、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品と前記中子を一緒に軸回転しつつ、前記軸部の外周部にスエージング加工用ダイスによる打撃を与えるロータリースエージング加工、または前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記穴部内に中子を挿入し、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品と前記中子を一緒に軸回転しつつ、前記軸部の外周部にスピニング加工用ダイスを押し付けるスピニング加工である
ことを特徴とする。
【0016】
上述した課題を解決する第9の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法は、
第7の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法であって、
前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し前記回転塑性加工を行った後に、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記弁傘部形成部分の拡径部および前記軸部を押圧するダイスのダイス孔の内径が、段階が進むごとに少しずつ縮径されたダイスを、絞り上げ工程の数だけ用いて徐々に絞り上げるネッキング加工を行うことで、前記軸部の外径および内径を縮径する第2のネッキング加工工程をさらに備える
ことを特徴とする。
【0017】
上述した課題を解決する第10の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法は、
第7の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法であって、
前記回転塑性加工を、前記軸部の上部以外の部分に対してのみ行って、前記軸部の上部以外にて内径の大きさを保持しつつその外径を縮径する一方、前記軸部の上部における外径を加工前の大きさを保持して大径部とし、
前記封止工程にて、前記大径部をプレスして、前記軸部の先端を封止することにより、前記中空エンジンバルブを得る
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1または第2の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法によれば、ネッキング加工を行う前に、回転塑性加工を行うことで、軸部の肉厚を周方向および軸方向に亘って均一化することができ、次工程のネッキング加工での歩留まりを向上させることができる。また、回転塑性加工を行った後にネッキング加工を行うだけであり、所望の肉厚の軸部を有する中空エンジンバルブを比較的容易に製造することができる。
【0019】
第3の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法によれば、第1の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法と同様の作用効果を奏する上に、中子を用いてロータリースエージング加工またはスピニング加工を行う前に、中子を用いずにロータリースエージング加工またはスピニング加工を行うことにより、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部の外径及び肉厚を調整することができる。
【0020】
第4の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法によれば、第1の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法と同様の作用効果を奏する上に、ネッキング加工を行った後に回転塑性加工を行うことにより、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部の外径を所望の大きさに調整することができる。また、最後にネッキング加工を行う中空エンジンバルブの製造方法と比べて、中空エンジンバルブの軸部における内径の加工精度を向上させることができる。
【0021】
第5の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法によれば、第4の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法と同様の作用効果を奏する上に、ネッキング加工を行った後に中子を用いてロータリースエージング加工またはスピニング加工を行うことにより、中空エンジンバルブの軸部の外径を所望の大きさに調整することができる。また、最後にネッキング加工を行う中空エンジンバルブの製造方法と比べて、中空エンジンバルブの軸部における内径の加工精度を向上させることができる。
【0022】
第7または第8の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法によれば、ネッキング加工を行うことにより軸部の内径を所望の大きさにした後に回転塑性加工を行うことにより、中空エンジンバルブの軸部の外径を所望の大きさに調整することができる。また、最後にネッキング加工を行う中空エンジンバルブの製造方法と比べて、中空エンジンバルブの軸部における内径の加工精度を向上させることができる。
【0023】
第9の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法によれば、ネッキング加工を行った後に回転塑性加工を行い、この加工に引き続いてさらにネッキング加工を行うため、ネッキング加工を行った後に回転塑性加工を行って中空エンジンバルブの軸部を成形する場合と比べて、回転塑性加工にて直径の大きい中子を用いることができ、製造作業の煩雑化を抑制できる。
【0024】
第6または第10の発明に係る中空エンジンバルブの製造方法によれば、一連の加工作業にて軸部の端部を閉塞でき、軸部の端部を閉塞する部材を別途用意する必要が無いため、製造工程を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法を説明するための図であって、図1Aに加工前の中空エンジンバルブの弁本体半完成品の斜視を示し、図1Bにロータリースエージング加工時の状態を示し、図1Cに第1回目のネッキング加工時の状態を示し、図1Dに第n回目のネッキング加工時の状態を示し、図1Eに中空エンジンバルブの完成品の斜視を示す。
【図2】本発明に係る中空エンジンバルブの製造方法による工程と軸部の内径および外径の大きさとの関係を示すグラフである。
【図3】本発明の第6の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法を説明するための図であって、図3Aに平面を示し、図3Bに斜視を示す。
【図4】本発明の第6の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法を説明するための図であって、図4Aに端部加工前の中空エンジンバルブの断面を示し、図4Bに端部加工後の中空エンジンバルブの断面を示す。
【図5】本発明に係る中空エンジンバルブの製造方法の他例を説明するための図であって、図5Aに加工前の中空エンジンバルブの弁本体半完成品の斜視を示し、図5Bにスピング加工時の状態を示し、図5Cに第1回目のネッキング加工時の状態を示し、図5Dに第n回目のネッキング加工時の状態を示し、図5Eに中空エンジンバルブの完成品の斜視を示す。
【図6】従来の中空エンジンバルブの製造方法を説明するための図であって、図6Aに加工前の中空エンジンバルブの弁本体半完成品の断面を示し、図6Bに第1回目のネッキング加工後の断面を示し、図6Cに第2回目のネッキング加工後の断面を示し、図6Dに第n回目のネッキング加工後の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る中空エンジンバルブの製造方法について、各実施例にて具体的に説明する。
【実施例1】
【0027】
本発明の第1の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法について、図1および図2を参照して説明する。図2にて、横軸が工程を示し、縦軸が各工程の処理後における中空エンジンバルブの弁本体半完成品および弁本体における軸部の内径および外径の大きさを示す。また、バツ印が実施例1に係る中空エンジンバルブの弁本体半完成品および弁本体における軸部の外径の大きさを示し、三角印が中空エンジンバルブの弁本体半完成品および弁本体における軸部の内径の大きさを示し、実線が実施例1の場合を示す。なお、工程S0(初期状態)にて、中空エンジンバルブの弁本体半完成品における軸部の内径の大きさおよび外径の大きさを示す。
【0028】
本実施例では、中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対しロータリースエージング加工(回転塑性加工)を行った後に、ネッキング加工を行っている。具体的には、図2に示すように、中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し第1の工程S1から第2の工程S2(第1の回転塑性加工工程)にてロータリースエージング加工を行い、続いて、第3の工程S3から第8の工程S8の工程(ネッキング加工工程)にてネッキング加工を行っている。
【0029】
中空エンジンバルブの弁本体半完成品を用意する。中空エンジンバルブの弁本体半完成品10は、図1Aに示すように、軸部(胴部)11と、軸部11の下端部に接続する弁傘部形成部分12aとを有する。軸部11から弁傘部形成部分12aの拡径部に亘って円柱体状の穴部13が形成されている。
【0030】
最初に、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部に対しロータリースエージング加工を行う。例えば、図1Bに示すように、中空エンジンバルブの弁本体半完成品10の軸部11に中子52を入れておき、中空エンジンバルブの弁本体半完成品10の軸心を中心として方向Rに中空エンジンバルブの弁本体半完成品10と中子52を一緒に回転しつつ、この軸部11の外周部11aにダイス(スエージング加工用ダイス)51による打撃を与える。これにより、軸部11の外径が縮径する。ここでは、2つのダイス51を1組として4つのダイス51を用いている。1組のダイス51,51は軸部11を中心として対向配置される。ダイス51の先端部51aは、軸部11に沿う曲面状に形成されている。この加工を、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部の外径が所定の大きさになるまで行う。本実施例では、第1の工程S1から第2の工程S2まで、中子を用いたロータリースエージング加工を行う。これにより、軸部14と軸部14の下端部に接続する弁傘部形成部分12bとを有し、軸部14から弁傘部形成部分12bの拡径部に亘って穴部15が形成された中空エンジンバルブの弁本体半完成品が得られる。この中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部14の外径は所定の大きさ(>d1)に形成される。
【0031】
続いて、上述したロータリースエージング加工により得られた中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対しネッキング加工を行う。すなわち、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し、当該中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記弁傘部形成部分の拡径部および前記軸部を押圧するダイスのダイス孔の内径が、段階が進むごとに少しずつ縮径されたダイスを、絞り上げ工程の数だけ用いて徐々に絞り上げるネッキング加工を行う。例えば、第1回目の絞り上げ工程にて、図1Cに示すように、ダイス61を用いてネッキング加工を行う。まず、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の上方にダイス61を配置する。ダイス61は、円柱体状であって、下面部61aから上面部61bに亘ってダイス孔62が形成されている。ダイス孔62は、下面部61aに開口し、上方に向かうに従い縮径する縮径部63と、縮径部63に接続し、下部から上部に亘って同径で延在する同径部64とを有する。ダイス61の下面部61aに開口して縮径部63を形成したことにより、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部14をダイス61の同径部64に円滑に案内することができる。続いて、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部14とダイス61のダイス孔62の軸心を一致して配置し、ダイス61を中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し押圧して、ダイス61により中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部14を絞り上げる。これにより、軸部14は、軸方向に延びる。また、軸部14は、ネッキング加工前と比べて肉厚となる。軸部14における穴部15の内径および外径は、ネッキング加工前と比べて小さくなる。
【0032】
そして、軸部の外径が小さくなると、この軸部の外径の大きさに応じたダイスに交換し、このダイスを用いて軸部を絞り上げる。例えば、第n回目の絞り上げ工程にて、図1Dに示すように、ダイス65を用いてネッキングを行う。ただし、nは2以上の正数とする。まず、第(n−1)回目の絞り上げ工程で得られた中空エンジンバルブの弁本体半完成品の上方にダイス65を配置する。ダイス65は、ダイス61と同様、円柱体状であって、下面部65aから上面部65bに亘ってダイス孔66が形成されている。ダイス孔66は、下面部65aに開口し、上方に向かうに従い縮径する縮径部67と、縮径部67に接続し、下部から上部に亘って同径で延在する同径部68とを有する。ダイス孔66はダイス孔62よりも小径であって、同径部68は、同径部64よりも小径に形成されている。続いて、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部16とダイス65のダイス孔66の軸心を一致して配置し、ダイス65を中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し押圧して、ダイス65により中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部16を絞り上げる。これにより、軸部16は、軸方向に延びる。また、軸部16は、ネッキング加工前と比べて肉厚となる。軸部16における穴部17の内径および外径は、ネッキング加工前と比べて小さくなる。
【0033】
言い換えると、上述したネッキング加工を、上述した中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部の外径の大きさに応じてダイス孔が形成されたダイスを用い、軸部の外径が所定の大きさd1になると共に、軸部の内径が所定の大きさd2(<d1)になるまで行う。これにより、軸部18の外径がd1であり、軸部18の穴部19の直径がd2の中空エンジンバルブの弁本体となる。本実施例では、第3の工程S3から第8の工程S8まで、ネッキング加工を行う。
【0034】
続いて、上述したネッキング加工により得られた中空エンジンバルブの弁本体に対し、必要に応じて軸部を所定の長さに加工する。そして、封止工程にて、軸部の先端(上端)を封止することにより、中空エンジンバルブを得る。例えば、図1Eに示すように、軸部18の先端部に円柱体状の封止部材31を溶接して、軸部の先端を封止することにより、中空エンジンバルブ(完成品)を得ることができる。
【0035】
したがって、本実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法によれば、ネッキング加工を行う前に、ロータリースエージング加工を行うことで、軸部の肉厚を周方向および軸方向に亘って均一化することができ、次工程のネッキング加工での歩留まりを向上させることができる。また、ロータリースエージング加工を行った後にネッキング加工を行うだけであり、所望の肉厚の軸部を有する中空エンジンバルブを比較的容易に製造することができる。
【実施例2】
【0036】
本発明の第2の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法について、図2を参照して具体的に説明する。図2にて、バツ印が実施例2に係る中空エンジンバルブの弁本体半完成品および弁本体における軸部の外径の大きさを示し、三角印が中空エンジンバルブの弁本体半完成品および弁本体における軸部の内径の大きさを示し、2点鎖線が実施例2の場合を示す。
【0037】
本実施例では、上述した第1の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法におけるロータリースエージング加工(回転塑性加工)を2つの工程に分けて行っている。まず、中子を用いずにロータリースエージング加工を行い、続いて、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部に中子を入れてロータリースエージング加工を行っている。具体的には、図2に示すように、中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し第1の工程S1から第3の工程S3(第1の回転塑性加工工程)にて中子を用いずにロータリースエージング加工を行い、続いて、第4の工程S4および第5の工程S5(第2の回転塑性加工工程)にて中子を用いたロータリースエージング加工を行い、続いて、第6の工程S6から第8の工程S8(ネッキング加工工程)にてネッキング加工を行っている。
【0038】
最初に、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部に対し中子を用いずにロータリースエージング加工を行う。これにより、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部の内径および外径が縮径する。これは、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部内に中子が無く、ダイスが軸部の外周部を叩いたときにこの力を軸部の内側で受ける部材が無いためである。この加工を、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部の内径および外径が所定の大きさになるまで行う。本実施例では、第1の工程S1から第3の工程S3まで、中子を用いずにロータリースエージング加工を行う。続いて、前述した中子を用いないロータリースエージング加工で得られた中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部内に中子を入れ、ロータリースエージング加工を行う。これにより、軸部の内径の大きさを保持しつつ、外径が縮径する。中子を用いたロータリースエージング加工を、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部の外径が所定の大きさになるまで行う。本実施例では、第4の工程S4から第5の工程S5まで、中子を用いたロータリースエージング加工を行う。
【0039】
続いて、上述した中子を用いたロータリースエージング加工で得られた中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し、上述した第1の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法と同様に、ネッキング加工を行う。すなわち、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し、当該中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記弁傘部形成部分および前記軸部を押圧するダイスのダイス孔が、段階が進むごとに少しずつ縮径されたダイスを、絞り上げ工程の数だけ用いて徐々に絞り上げるネッキング加工を行う。この加工は、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部の外径が所定の大きさd1になると共に、軸部の内径が所定の大きさd2(<d1)になるまで行われる。これにより、軸部18の外径がd1であり、軸部18の穴部19の直径がd2の中空エンジンバルブの弁本体となる。本実施例では、第6の工程S6から第8の工程S8まで、ネッキング加工を行う。
【0040】
続いて、上述したネッキング加工により得られた中空エンジンバルブの弁本体の軸部の長さを必要に応じて調整し、上述した第1の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法と同様に、中空エンジンバルブの弁本体の軸部の先端(上端)を封止することにより、中空エンジンバルブ(完成品)を得ることができる。
【0041】
したがって、本実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法によれば、上述した第1の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法と同様の作用効果を奏する上に、中子を用いてロータリースエージング加工を行う前に、中子を用いずにロータリースエージング加工を行うことにより、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部の外径および肉厚を調整することができる。
【実施例3】
【0042】
本発明の第3の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法について、図2を参照して具体的に説明する。図2にて、バツ印が実施例3に係る中空エンジンバルブの弁本体半完成品および弁本体における軸部の外径の大きさを示し、三角印が中空エンジンバルブの弁本体半完成品および弁本体における軸部の内径の大きさを示し、点線が実施例3の場合を示す。
【0043】
本実施例では、中子を用いたロータリースエージング加工(回転塑性加工)、ネッキング加工、中子を用いたロータリースエージング加工(回転塑性加工)を記載順に行っている。具体的には、図2に示すように、中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し第1の工程S1(第1の回転塑性加工工程)にて中子を用いたロータリースエージング加工を行い、続いて、第2の工程S2から第7の工程S7(ネッキング加工工程)にてネッキング加工を行い、続いて、第8の工程S8(第2の回転塑性加工工程)にて中子を用いたロータリースエージング加工を行っている。すなわち、本実施例では、第1の工程S1では、上述した第1の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法における第1の工程S1から第2の工程S2と同様に、中子を用いたロータリースエージング加工を行い、第2の工程S2から第7の工程S7では、上述した第1の実施例における第3の工程S3から第8の工程S8と同様に、ネッキング加工を行っており、その説明を省略する。
【0044】
本実施例では、中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対しネッキング加工を行い、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部の内径が所定の大きさd2付近(≧d2)になる一方、その外径が所定の大きさ付近(>d1)になると、軸部に中子を入れ、ロータリースエージング加工を行う。この加工では、ネッキング加工により調整された中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部の内径の大きさに応じた中子を用いる。これにより、軸部の内径の大きさを保持しつつ、外径が縮径する。中子を用いたロータリースエージング加工を、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部の外径が所定の大きさd1になるまで行う。これにより、中空エンジンバルブの弁本体となる。本実施例では、第8の工程S8にて、中子を用いたロータリースエージング加工を行う。
【0045】
続いて、上述したロータリースエージング加工で得られた中空エンジンバルブの弁本体の軸部の長さを必要に応じて調整し、上述した第1の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法と同様に、中空エンジンバルブの弁本体の軸部の先端(上部)を封止することにより、中空エンジンバルブ(完成品)を得ることができる。
【0046】
したがって、本実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法によれば、上述した第1の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法と同様の作用効果を奏する上に、ネッキング加工を行った後にロータリースエージング加工を行うことにより、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部の外径を所望の大きさに調整することができる。また、最後にネッキング加工を行う中空エンジンバルブの製造方法と比べて、中空エンジンバルブの軸部における内径の加工精度を向上させることができる。
【実施例4】
【0047】
本発明の第4の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法について、図1および図2を参照して説明する。図2にて、バツ印が実施例4に係る中空エンジンバルブの弁本体半完成品および弁本体における軸部の外径の大きさを示し、三角印が中空エンジンバルブの弁本体半完成品および弁本体における軸部の内径の大きさを示し、1点鎖線が実施例4の場合を示す。
【0048】
本実施例では、中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対しネッキング加工を行った後に、ロータリースエージング加工(回転塑性加工)を行っている。具体的には、図2に示すように、中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し第1の工程S1から第6の工程S6(第1のネッキング加工工程)にてネッキング加工を行い、続いて、第7の工程S7から第8の工程S8(回転塑性加工工程)にて中子を用いたロータリースエージング加工を行っている。
【0049】
上述した第1の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法の場合と同様、中空エンジンバルブの弁本体半完成品を用意する。中空エンジンバルブの弁本体半完成品10は、図1Aに示すように、軸部(胴部)11と、軸部11の下端部に接続する弁傘部形成部分12aとを有し、軸部11から弁傘部形成部分12aの拡径部に亘って円柱体状の穴部13が形成されている。
【0050】
最初に、中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し、上述した第1の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法と同様に、ネッキング加工を行う。すなわち、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し、当該中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記弁傘部形成部分および前記軸部を押圧するダイスのダイス孔が、段階が進むごとに少しずつ縮径されたダイスを、絞り上げ工程の数だけ用いて徐々に絞り上げるネッキング加工を行う。ダイスとして、例えば、図1Cおよび図1Dに示すダイス61,65などが用いられる。この加工は、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部の内径が所定の大きさd2付近(≧d2)になると共に、その外径が所定の大きさ(>d1)になるまで行われる。本実施例では、第1の工程S1から第6の工程S6まで、ネッキング加工を行う。
【0051】
続いて、上述したネッキング加工により得られた中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し、軸部に中子を入れ、ロータリースエージング加工を行う。この加工では、ネッキング加工により調整された中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部の内径の大きさに応じた中子を用いる。これにより、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部の内径の大きさを保持しつつその外径が縮径する。中子を用いたロータリースエージング加工を、上述した中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部の外径が所定の大きさd1(>d2)になるまで行う。これにより、中空エンジンバルブの弁本体となる。本実施例では、第7の工程S7から第8の工程S8まで、中子をロータリースエージング加工を行う。
【0052】
続いて、上述したロータリースエージング加工で得られた中空エンジンバルブの弁本体の軸部の長さを必要に応じて調整し、上述した第1の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法と同様に、中空エンジンバルブの弁本体の軸部の先端(上端)に封止することにより中空エンジンバルブ(完成品)を得ることができる。
【0053】
したがって、本実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法によれば、ネッキング加工を行うことにより軸部の内径を所望の大きさにした後にロータリースエージング加工を行うことにより、中空エンジンバルブの軸部の外径を所望の大きさに調整することができる。また、最後にネッキング加工を行う中空エンジンバルブの製造方法と比べて、中空エンジンバルブの軸部における内径の加工精度を向上させることができる。
【実施例5】
【0054】
本発明の第5の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法について、図2を参照して説明する。図2にて、バツ印が実施例5に係る中空エンジンバルブの弁本体半完成品および弁本体における軸部の外径の大きさを示し、三角印が中空エンジンバルブの弁本体半完成品および弁本体における軸部の内径の大きさを示し、2点鎖線が実施例5の場合を示す。
【0055】
本実施例では、ネッキング加工、中子を用いたロータリースエージング加工(回転塑性加工)、ネッキング加工を記載順に行っている。具体的には、図2に示すように、中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し第1の工程S1から第3の工程S3(第1のネッキング加工工程)にてネッキング加工を行い、続いて、第4の工程S4から第5の工程S5(回転塑性加工工程)にて所定の直径(>d2)の中子を用いたロータリースエージング加工を行い、続いて、第6の工程S6から第8の工程S8(第2のネッキング加工工程)にてネッキング加工を行っている。すなわち、本実施例では、第1の工程S1から第3の工程S3までは、上述した第4の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法における第1の工程S1から第6の工程S6と同様に、ネッキング加工を行い、第4の工程S4から第5の工程S5では、上述した第4の実施例における第7の工程S7から第8の工程S8と同様に、中子を用いたロータリースエージング加工を行っており、その説明を省略する。
【0056】
本実施例では、中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対しネッキング加工に引き続いてロータリースエージング加工を行い、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部の内径が所定の大きさ(>d2)になると共に、その外径が所定の大きさ(>d1)になると、ロータリースエージング加工で得られた中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し、上述した第1の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法と同様に、ネッキング加工を行う。すなわち、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し、当該中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記弁傘部形成部分および前記軸部を押圧するダイスのダイス孔が、段階が進むごとに少しずつ縮径されたダイスを、絞り上げ工程の数だけ用いて徐々に絞り上げるネッキング加工を行う。この加工は、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部の外径が所定の大きさd1になると共に、軸部の内径が所定の大きさd2(<d1)になるまで行われる。これにより、中空エンジンバルブの弁本体となる。本実施例では、第6の工程S6から第8の工程S8まで、ネッキング加工を行う。
【0057】
続いて、上述したネッキング加工で得られた中空エンジンバルブの弁本体の軸部の長さを必要に応じて調整し、上述した第1の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法と同様に、中空エンジンバルブの弁本体の軸部の先端(上端)に封止することにより中空エンジンバルブ(完成品)を得ることができる。
【0058】
したがって、本実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法によれば、ネッキング加工を行った後にロータリースエージング加工を行い、この加工に引き続いてさらにネッキング加工を行うため、ネッキング加工を行った後にロータリースエージング加工を行って中空エンジンバルブの軸部を成形する場合と比べて、ロータリースエージング加工にて直径の大きい中子を用いることができ、製造作業の煩雑化を抑制できる。
【実施例6】
【0059】
本発明の第6の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法について、図3および図4を参照して説明する。
【0060】
本実施例では、上述した第3の実施例または第4の実施例に中空エンジンバルブの製造方法におけるネッキング加工を行った後のロータリースエージング加工を、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部の全体ではなく、上部以外の部分に対してのみ行い、この加工に引き続いて、軸部の上部をプレスして軸部の先端を封止している。
【0061】
本実施例では、中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対しネッキング加工を行い、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部の内径が所定の大きさd2付近(≧d2)になる一方、その外径が所定の大きさ(>d1)になると、軸部に中子を入れ、ロータリースエージング加工を行う。具体的には、図3Aおよび図3Bに示すように、ネッキング加工を行った後の中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部21の穴部23内に中子56を入れておき、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸心を中心として方向Rに回転しつつ、この軸部21の上部以外の部分に対してのみダイス(スエージング加工用ダイス)55による打撃を与える。これにより、軸部21の上部以外の内径の大きさを保持しつつ、その外径が縮径する。他方、軸部21の上部における外径にあっては、加工前の大きさを保持して大径部22となる。なお、軸部21の上部における内径も加工前の大きさが保持される。
【0062】
続いて、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部21の上部以外の部分の外径が所定の大きさd1になると、封止工程にて、図4Aに示すように、軸部21の大径部22に対し、軸部21の軸心に向けて矢印Yの方向にプレスする。これにより、図4Bに示すように、大径部22がプレスされて軸部21の先端を封止する端部封止部24となる。
【0063】
したがって、本実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法によれば、第3の実施例および第4の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法と同様の作用効果を奏する上に、一連の加工作業にて軸部21の端部を閉塞でき、軸部21の端部を閉塞する部材を別途用意する必要が無いため、製造工程を簡略化できる。
【0064】
なお、上述した第1〜第6の実施例では、回転塑性加工がロータリースエージング加工である場合について説明したが、回転塑性加工としてスピニング加工を用いたり、ロータリースエージング加工とスピニング加工を併用したりすることも可能である。このような場合であって、上述した中空エンジンバルブの製造方法と同様な作用効果を奏する。例えば、上述した第1の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法の回転塑性加工工程にて、図5に示すように、ロータリースエージング加工の代わりにスピニング加工を行うことも可能である。具体的には、図5Bに示すように、中空エンジンバルブの弁本体半完成品10の穴部13内に中子54を挿入し、中空エンジンバルブの弁本体半完成品10の軸心を中心として方向Rに中空エンジンバルブの弁本体半完成品10と中子54を一緒に回転しつつ、この軸部11の外周部11aにダイス(スピニング加工用ダイス)53を押し付ける。これにより、中空エンジンバルブの弁本体半完成品の軸部の内径の大きさを保持しつつその外径を縮径することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る中空エンジンバルブの製造方法によれば、所望の肉厚の軸部を有する中空エンジンバルブを比較的容易に製造することができるため、自動車産業などで有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 中空エンジンバルブの弁本体半完成品
11 軸部
12a〜12c 弁傘部形成部分
12d 弁傘部
13 穴部
14,16、18 軸部
15,17,19 穴部
21 軸部
22 大径部
23 穴部
24 端部封止部
31 封止部材
51 ダイス
52 中子(マンドレル)
55 ダイス
56 中子(マンドレル)
61,65 ダイス
62,66 穴部
63,67 縮径部
64,68 同径部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部から弁傘部の拡径部に亘って中空部が形成された中空エンジンバルブを製造する方法であって、
軸部と前記軸部に接続する弁傘部形成部分からなり、前記軸部から前記弁傘部形成部分の拡径部に亘って円柱体形状の穴部が形成された中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し、回転塑性加工を行うことで、前記軸部を縮径する第1の回転塑性加工工程と、
この工程に引き続き、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し、当該中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記弁傘部形成部分の拡径部および前記軸部を押圧するダイスのダイス孔の内径が、段階が進むごとに少しずつ縮径されたダイスを、絞り上げ工程の数だけ用いて徐々に絞り上げるネッキング加工を行うことで、前記軸部の外径および内径を縮径するネッキング加工工程と、
この工程に引き続いて、前記軸部の先端を封止することにより、中空エンジンバルブを得る封止工程とを備える
ことを特徴とする中空エンジンバルブの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の中空エンジンバルブの製造方法であって、
前記回転塑性加工が、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記穴部内に中子を挿入し、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品と前記中子を一緒に軸回転しつつ、前記軸部の外周部にスエージング加工用ダイスによる打撃を与えるロータリースエージング加工、または前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記穴部内に中子を挿入し、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品と前記中子を一緒に軸回転しつつ、前記軸部の外周部にスピニング加工用ダイスを押し付けるスピニング加工である
ことを特徴とする中空エンジンバルブの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の中空エンジンバルブの製造方法であって、
前記回転塑性加工が、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品を軸回転しつつ、前記軸部の外周部にスエージング加工用ダイスによる打撃を与えるロータリースエージング加工、または、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品を軸回転しつつ、前記軸部の外周部にスピニング加工用ダイスを押し付けるスピニング加工と、
この加工に引き続き、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記穴部内に中子を挿入し、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品と前記中子を一緒に軸回転しつつ、前記軸部の外周部にスエージング加工用ダイスによる打撃を与えるロータリースエージング加工、または前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記穴部内に中子を挿入し、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品と前記中子を一緒に軸回転しつつ、前記軸部の外周部にスピニング加工用ダイスを押し付けるスピニング加工との組み合わせである
ことを特徴とする中空エンジンバルブの製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の中空エンジンバルブの製造方法であって、
前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し前記ネッキング加工を行った後に、回転塑性加工を行うことで、前記軸部の内径の大きさを保持しつつその外径を縮径する第2の回転塑性加工工程をさらに備える
ことを特徴とする中空エンジンバルブの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の中空エンジンバルブの製造方法であって、
前記第2の回転塑性加工工程における前記回転塑性加工が、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記穴部内に中子を挿入し、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品と前記中子を一緒に軸回転しつつ、前記軸部の外周部にスエージング加工用ダイスによる打撃を与えるロータリースエージング加工、または前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記穴部内に中子を挿入し、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品と前記中子を一緒に軸回転しつつ、前記軸部の外周部にスピニング加工用ダイスを押し付けるスピニング加工である
ことを特徴とする中空エンジンバルブの製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載の中空エンジンバルブの製造方法であって、
前記第2の回転塑性加工工程の前記回転塑性加工を、前記軸部の上部以外の部分に対してのみ行って、前記軸部の上部以外にて内径の大きさを保持しつつその外径を縮径する一方、前記軸部の上部における外径を加工前の大きさを保持して大径部とし、
前記封止工程にて、前記大径部をプレスして、前記軸部の先端を封止することにより、前記中空エンジンバルブを得る
ことを特徴とする中空エンジンバルブの製造方法。
【請求項7】
軸部から弁傘部の拡径部に亘って中空部が形成された中空エンジンバルブを製造する方法であって、
軸部と前記軸部に接続する弁傘部形成部分からなり、前記軸部から前記弁傘部形成部分の拡径部に亘って円柱体形状の穴部が形成された中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し、当該中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記弁傘部形成部分の拡径部および前記軸部を押圧するダイスのダイス孔の内径が、段階が進むごとに少しずつ縮径されたダイスを、絞り上げ工程の数だけ用いて徐々に絞り上げるネッキング加工を行うことで、前記軸部の外径および内径を縮径する第1のネッキング加工工程と、
この工程に引き続き、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し回転塑性加工を行うことで、前記軸部を縮径する回転塑性加工工程と、
この工程に引き続いて、前記軸部の先端を封止することにより、中空エンジンバルブを得る封止工程とを備える
ことを特徴とする中空エンジンバルブの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の中空エンジンバルブの製造方法であって、
前記回転塑性加工が、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記穴部内に中子を挿入し、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品と前記中子を一緒に軸回転しつつ、前記軸部の外周部にスエージング加工用ダイスによる打撃を与えるロータリースエージング加工、または前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記穴部内に中子を挿入し、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品と前記中子を一緒に軸回転しつつ、前記軸部の外周部にスピニング加工用ダイスを押し付けるスピニング加工である
ことを特徴とする中空エンジンバルブの製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の中空エンジンバルブの製造方法であって、
前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品に対し前記回転塑性加工を行った後に、前記中空エンジンバルブの弁本体半完成品の前記弁傘部形成部分の拡径部および前記軸部を押圧するダイスのダイス孔の内径が、段階が進むごとに少しずつ縮径されたダイスを、絞り上げ工程の数だけ用いて徐々に絞り上げるネッキング加工を行うことで、前記軸部の外径および内径を縮径する第2のネッキング加工工程をさらに備える
ことを特徴とする中空エンジンバルブの製造方法。
【請求項10】
請求項7に記載された中空エンジンバルブの製造方法であって、
前記回転塑性加工を、前記軸部の上部以外の部分に対してのみ行って、前記軸部の上部以外にて内径の大きさを保持しつつその外径を縮径する一方、前記軸部の上部における外径を加工前の大きさを保持して大径部とし、
前記封止工程にて、前記大径部をプレスして、前記軸部の先端を封止することにより、前記中空エンジンバルブを得る
ことを特徴とする中空エンジンバルブの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−197718(P2012−197718A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62198(P2011−62198)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【特許番号】特許第4929408号(P4929408)
【特許公報発行日】平成24年5月9日(2012.5.9)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(508282203)株式会社 吉村カンパニー (14)