説明

中空シリカ粒子

【課題】均細孔径1nm未満のマイクロ細孔構造を有する中空シリカ粒子、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】(1)中空シリカ粒子であって、粉末X線回折測定において、結晶格子面間隔(d)が1〜10nmの範囲に相当する回折角(2θ)に1本以上のピークを示し、結晶格子面間隔(d)が1nm未満の範囲に相当する回折角(2θ)にピークを示さず、かつ外殻部が平均細孔径1nm未満のマイクロ細孔構造を有する中空シリカ粒子、(2)外殻部が平均細孔径1〜10nmのメソ細孔構造を有する中空シリカ粒子(A)をシラン化合物(B)処理、又は700〜950℃で焼成処理する工程を含む、前記中空シリカ粒子の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平均細孔径1nm未満のマイクロ細孔構造を有する中空シリカ粒子、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質構造をもつ物質は高い表面積を有するため、触媒担体、酵素や機能性有機化合物等の固定化担体として広く使用されている。特に、多孔質構造を形成する細孔の細孔径分布がシャープである場合、分子篩としての作用が発現し、構造選択性を有する触媒担体としての利用や、徐放性担体、物質分離剤への応用が可能となる。かかる応用のために、均一で微細な細孔を有する多孔体が求められている。
【0003】
メソ細孔構造を有するシリカとして、外殻がメソ細孔構造を有し内部が中空のシリカ粒子が知られている(例えば、非特許文献1及び2参照)。
また、中空メソポーラスシリカの表面にアミノプロピルトリメトキシシラン等の有機シランを結合させることにより、担持したイブプロフェンの水への溶出速度を抑制できることが知られている(非特許文献3参照)。これは、イブプロフェンのカルボキシ基とメソポーラスシリカ表面のアミノ基との静電的作用によるものと推察されている。従って、非特許文献3の技術は、カルボキシ基を有しない素材の水への溶出抑制については適用できない。
一方、中空メソポーラスシリカの細孔径を素材の分子サイズまで小さくすることができれば、様々な素材においても、中空部に担持した素材の溶出を抑制できる可能性が考えられる。例えば、1nm未満の細孔を持つ中空粒子として、中空ゼオライト粒子が知られている(非特許文献4参照)。しかし、中空ゼオライト粒子を担体として用いる場合、ゼオライト自身の触媒作用により素材の変質が危惧される。
【0004】
【非特許文献1】Qianyano Sun他、Adv.Mater.、第15巻、第1097頁(2003年)
【非特許文献2】Nicole E.Botterhuis他,Chem.Eur.J.,第12巻、第1448頁(2006年)
【非特許文献3】Y.F.Zhu他、Microporous Mesoporous Mater.,第85巻、第75頁(2005年)
【非特許文献4】A.Dong他、Chem. Mater.、第14巻、第3217頁(2002年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、平均細孔径1nm未満のマイクロ細孔構造を有する中空シリカ粒子、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、中空メソポーラスシリカをシラン化合物処理、又は700〜950℃の高温焼成処理することにより、上記課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(3)を提供する。
(1)中空シリカ粒子であって、粉末X線回折測定において、結晶格子面間隔(d)が1〜10nmの範囲に相当する回折角(2θ)に1本以上のピークを示し、結晶格子面間隔(d)が1nm未満の範囲に相当する回折角(2θ)にピークを示さず、かつ外殻部が平均細孔径1nm未満のマイクロ細孔構造を有する中空シリカ粒子。
(2)外殻部が平均細孔径1〜10nmのメソ細孔構造を有する中空シリカ粒子(A)をシラン化合物(B)で処理する工程を含む、前記(1)の中空シリカ粒子の製造方法。
(3)外殻部が平均細孔径1〜10nmのメソ細孔構造を有する中空シリカ粒子(A)を700〜950℃で焼成する工程を含む、前記(1)の中空シリカ粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、平均細孔径1nm未満のマイクロ細孔構造を有する中空シリカ粒子、及びその効率的な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[中空シリカ粒子]
本発明の中空シリカ粒子(以下、単に「中空シリカ粒子」ともいう)は、粉末X線回折測定において、結晶格子面間隔(d)が1〜10nmの範囲に相当する回折角(2θ)に1本以上のピークを示し、結晶格子面間隔(d)が1nm未満の範囲に相当する回折角(2θ)にピークを示さず、かつ外殻部が平均細孔径1nm未満のマイクロ細孔構造を有することを特徴とする。
粉末X線回折(XRD)測定において、結晶格子面間隔(d)が1〜10nmの範囲に相当する回折角(2θ)に1本以上のピークを示すことは、この中空シリカ粒子がメソ領域に周期性のある物質であることを意味し、結晶格子面間隔(d)が1nm未満の範囲に相当する回折角(2θ)にピークを示さないことは、ゼオライトなどの結晶性化合物と異なるものであることを意味する。なお、中空シリカ粒子のナノ細孔周期の規則性が高くなるとピークは明瞭化され、高次ピークが見られる場合がある。
本発明の中空シリカ粒子の外殻部の細孔構造の平均細孔径は1nm未満である。なお、本発明における平均細孔径とは、細孔径分布においてピーク値を示す細孔径を意味する。1nm未満の平均細孔径は、窒素吸着による測定方法による場合、ピーク値が1nm以上に存在せず、細孔径分布において測定下限細孔径1nmにテーリングが見られること、その上で30m2/g以上の比表面積が得られていることから判断される。なおアルゴンガス吸着による場合は、より小さい細孔径まで測定することができる。
メソ細孔構造を有する外殻部と粒子内部の中空部分の構造は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することができ、その細孔径、細孔規則性、外殻部から内部への細孔の繋がり具合を確認することができる。
メソ細孔径は製造時に用いる界面活性剤等のミセルの大きさに影響されることから、陽イオン界面活性剤を用いる場合は、該界面活性剤のアルキル基の炭素数の違いや、アルキル鎖の数によって調製することができる。
【0009】
中空シリカ粒子の平均一次粒子径は、数平均粒子径であり、用途、内包物等の種類により適宜調整しうるが、好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.05〜5μm、更に好ましくは0.2〜2μmである。中空シリカ粒子は、好ましくは一次粒子全体の80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上が平均粒子径±30%以内の一次粒子径を有しており、非常に揃った粒子径の粒子群から構成されていることが望ましい。
中空シリカ粒子のメソ細孔構造の平均細孔径、平均粒子径が揃っていれば、内包物、例えば香料等を、長期間、安定した速度で揮散させることができるため、所望の揮散制御を容易に行うことができる。
なお、中空シリカ粒子の平均一次粒子径は、製造時に使用しうる界面活性剤の選択、混合時の撹拌力、調製溶液の濃度や温度等によって調整することができる。また後述するプロトコア−シェル粒子のコアにポリマーを用いる製造方法では、ポリマーの大きさや分布の程度によっても得られる中空シリカの平均粒子径や、粒径のばらつきの程度を調製することができる。中空シリカ粒子の製造工程において、陽イオン界面活性剤等の界面活性剤を使用する場合は、界面活性剤が中空シリカ粒子内部、メソ細孔内、又はシリカ粒子表面に残留する可能性がある。界面活性剤が残留しても問題ない場合は除去する必要はないが、残留する界面活性剤の除去を望む場合は、水や酸性水溶液で洗浄処理して置換することにより除去することができる。
また、中空シリカ粒子のBET比表面積は、内包物、例えば香料等の徐放性能等の観点から、好ましくは30〜800m2/g、より好ましくは50〜750m2/g、更に好ましくは60〜700m2/gである。
【0010】
中空シリカ粒子の外殻部の構造は、用いるシリカ源により異なる。シリカ源として有機基を有するものを用いた場合、有機基を有するシリカ構造の外殻部が得られ、またシリカ源以外に、他の元素、例えばAl、Ti、V、Cr、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、B、Mn、Fe等の金属を含有するアルコキシ塩やハロゲン化塩等の金属原料を製造時又は製造後に添加することで、該金属をシリカ粒子の外殻部に存在させることができる。外殻部の構造としては、安定性の観点から、テトラメトキシシランやテトラエトキシシランをシリカ源として製造され、シリカ壁が実質上酸化ケイ素から構成されていることが好ましい。
【0011】
中空シリカ粒子の外殻部の平均厚みは、中空シリカ粒子が担体としての強度を維持できる範囲で薄い方が好ましく、中空部の平均直径(平均容積)は、内包物を多く保持する観点から大きい方が好ましい。これらの観点から、外殻部の平均厚みは、通常0.5〜500nm、好ましくは2〜400nm、より好ましくは3〜300nm、更に好ましくは50〜200nmである。
外郭部の平均厚みもまた、後述するプロトコア−シェル粒子のコア物質(ポリマー粒子(a−1)又は疎水性有機化合物(a−2)、以下同じ)の大きさ及び濃度と、シリカ源の濃度との関係により適宜調製することができる。例えば、コア物質の大きさと濃度を一定にして、シリカ源の配合濃度を変化させた場合、そのシリカ源の量の違いが外殻部の平均厚みに影響する。
また、〔外殻部の平均厚み/中空シリカ粒子の平均粒子径〕の比は、通常0.01〜0.9、好ましくは0.05〜0.8、より好ましくは0.1〜0.7である。この比率もまた、コア物質の大きさ、コア物質の濃度、シリカ源の濃度、及び温度等の環境条件により適宜調整される。
なお、中空シリカ粒子の平均粒子径、平均外殻厚み、BET比表面積、平均細孔径、及び粉末X線回折(XRD)の測定は、実施例記載の方法により行うことができる。
【0012】
[中空シリカ粒子の製造方法]
本発明の中空シリカ粒子の製造方法に特に制限はないが、下記の工程(I)と工程(II-1)又は工程(II-2)を含む方法によれば、効率的に製造することができる。
工程(I):外殻部が平均細孔径1〜10nmのメソ細孔構造を有する中空シリカ粒子(A)(以下、単に「中空シリカ粒子(A)」ともいう)を調製する工程
工程(II-1):工程(I)で得られた中空シリカ粒子(A)をシラン化合物(B)で処理する工程
工程(II-2):工程(I)で得られた中空シリカ粒子(A)を700〜950℃で焼成する工程
以下、工程(I)、(II-1)、(II-2)の詳細とそこで用いる各成分等について説明する。
【0013】
工程(I)
工程(I)は、中空シリカ粒子(A)を調製する工程である。中空シリカ粒子(A)を製造しうる方法であれば特に制限はないが、下記工程A〜Cを含む方法がより好ましい。
工程A:ポリマー粒子(a−1)を0.1〜50グラム/L、又は疎水性有機化合物(a−2)を0.1〜100ミリモル/Lと、下記一般式(1)及び(2)で表される第四級アンモニウム塩から選ばれる1種以上(b)を0.1〜100ミリモル/L、及び加水分解によりシラノール化合物を生成するシリカ源(c)を0.1〜100ミリモル/L含有する水溶液を調製する工程。
[R1(CH33N]+- (1)
[R12(CH32N]+- (2)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数4〜22の直鎖状又は分岐状アルキル基を示し、Xは1価陰イオンを示す。)
工程B:工程Aで得られた水溶液を10〜100℃の温度で撹拌して、シリカから構成される外殻を有し、かつ核にポリマー粒子(a−1)又は疎水性有機化合物(a−2)を有するプロトコア−シェル粒子の水分散液を調製する工程
工程C:工程Bで得られたプロトコア−シェル粒子を分散媒から分離し、焼成する工程
【0014】
以下工程A、B及びCについて説明する。
[工程A]
[ポリマー粒子(a−1)]
工程Aで用いられるポリマー粒子(a−1)としては、カチオン性ポリマー、ノニオン性ポリマー及び両性ポリマーから選ばれる1種以上のポリマーの粒子が好ましく、実質的に水不溶性のポリマーが好ましい。
ポリマー粒子の平均粒子径は、好ましくは0.02〜1μm、より好ましくは0.05〜0.9μm、さらに好ましくは0.1〜0.8μm、特に好ましくは0.12〜0.7μmであることが望ましい。またポリマー粒子は、好ましくは粒子全体の80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上が平均粒子径±30%以内の粒子径を有しており、非常に揃った粒子径の粒子群から構成されていることが望ましい。
【0015】
[カチオン性ポリマー]
カチオン性ポリマーとしては、連続相を水系とする媒体中に、陽イオン界面活性剤の存在下で、ポリマーエマルジョンとなって分散可能であるポリマーが好ましく、陽イオン界面活性剤の存在下でカチオン性モノマー、特にはカチオン性基を有するエチレン性不飽和モノマーを含むモノマー混合物を、公知の方法で乳化重合して得られるものが好ましい。
カチオン性モノマーとしては、アミノ基を有する単量体の酸中和物、又は該単量体を4級化剤で4級化した第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
カチオン性モノマーの具体例としては、ジアルキルアミノ基又はトリアルキルアンモニウム基を有する(メタ)アクリレートがより好ましく、ジアルキルアミノ基又はトリアルキルアンモニウム基を有する(メタ)アクリレートが最も好ましい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート又はそれらの両方を意味する。
【0016】
カチオン性ポリマーは、前記カチオン性モノマー由来の構成単位を含有するが、カチオン性モノマー構成単位以外に、疎水性モノマー、特にはアルキル(メタ)アクリレート、芳香環含有モノマー等の疎水性モノマーに由来する構成単位を含有することがより好ましい。その好適例としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数3〜22、より好ましくは炭素数3〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、スチレンもしくは2−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアリールエステル、炭素数6〜22の芳香族基含有ビニルモノマー、又は酢酸ビニル等が挙げられる。これらの中ではアルキル(メタ)アクリレート、スチレンが最も好ましい。
【0017】
なお、疎水性モノマーとは、水に対する溶解性が低く、水と分相を形成する重合性の有機化合物を意味する。疎水性モノマーは、LogP値が0以上、好ましくは0.5以上、また25以下の化合物が挙げられる。ここで、LogPとは、化学物質の1−オクタノール/水の分配係数の対数値を意味し、SRC's LOGKOW / KOWWIN Programにより、フラグメントアプローチで計算された数値をいう。具体的には、化学物質の化学構造を、その構成要素に分解し、各フラグメントの有する疎水性フラグメント定数を積算して求められる(Meylan, W.M. and P.H. Howard. 1995. Atom/fragment contribution method for estimating octanol-water partition coefficients. J. Pharm. Sci. 84: 83-92参照)。
カチオン性ポリマーを構成するカチオン性モノマー構成単位は少量でよく、カチオン性ポリマーを構成する殆どが疎水性モノマー由来の構成単位によって構成されていてもよい。カチオン性ポリマーに占めるカチオン性モノマー構成単位と疎水性モノマー由来の構成単位の合計量は、70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、特に好ましくは95〜100質量%である。特に〔(カチオン性モノマー由来の構成単位)/(疎水性モノマー由来の構成単位)〕の質量比は、粒子形成性の観点から、好ましくは0.001〜0.5、より好ましくは0.002〜0.3、特に好ましくは0.003〜0.1である。
【0018】
[ノニオン性ポリマー]
ノニオン性ポリマーは、水溶液中で荷電を有しないポリマーを意味する。ノニオン性ポリマーは、荷電を有しないモノマーすなわちノニオン性モノマーを由来とするポリマーであり、公知の乳化重合法、無乳化剤重合法等によりノニオン性モノマーを重合して得ることができる。
ノニオン性モノマーとしては、カチオン性ポリマーの説明で挙げた疎水性モノマー(段落〔0017〕)を挙げることができる。その好適例としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数3〜22、より好ましくは炭素数3〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、及びスチレンから選ばれる一種以上が挙げられる。
ノニオン性ポリマーの具体例としては、ポリスチレン、エチルアクリレート・エチルメタクリレート共重合体、エチルアクリレート・メチルメタクリレート共重合体、オクチルアクリレート・スチレン共重合体、ブチルアクリレート・酢酸ビニル共重合体、メチルメタクリレート・ブチルアクリレート・オクチルアクリレート共重合体、酢酸ビニル・スチレン共重合体、ビニルピロリドン・スチレン共重合体、ブチルアクリレート、ポリスチレンアクリル酸樹脂等が挙げられる。
【0019】
カチオン性ポリマー、ノニオン性ポリマー及び両性ポリマーの中では、カチオン性ポリマー及びノニオン性ポリマーが好ましく、中空シリカ粒子(A)の形成し易さの観点から、カチオン性ポリマーがより好ましい。
ポリマーは中空シリカ粒子(A)の製造上、実質的に水に溶解しないものが用いられ、そのために疎水性モノマーの重合比率を高める方法、架橋する方法等を採用できる。
かかるポリマーの好適例として、アルキル(メタ)アクリレート及びスチレンから選ばれる疎水性モノマーとカチオン性基を有する(メタ)アクリレートとのコポリマー、並びにアルキル(メタ)アクリレート及びスチレンから選ばれる一種以上の疎水性モノマーからなるノニオン性ポリマーを挙げることができる。
上記のポリマーは、単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
ポリマー粒子の形状、形態は特に制限はなく、複合シリカ粒子の使用目的に応じて、粒子の大きさを変えたり、真球状、卵状等に形成することができる。ポリマー粒子の大きさや粒径分布を変えることで、中空シリカ粒子(A)の粒径や中空部分の大きさを適宜調製することができる。
【0020】
[疎水性有機化合物(a−2)]
本発明において、疎水性有機化合物(a−2)とは、水に対する溶解性が低く、水と分相を形成する化合物を意味する。好ましくは、前記の第四級アンモニウム塩の存在下で分散可能な化合物である。このような疎水性有機化合物としては、LogP値が1以上、好ましくは2〜25の化合物が挙げられる。
(c)疎水性有機化合物としては、例えば、炭化水素化合物、エステル化合物、炭素数6〜22の脂肪酸、炭素数6〜22のアルコール及びシリコーンオイル等の油剤や、香料、農薬、医薬等の各種基材等を挙げることができる。
疎水性有機化合物を用いる場合、中空シリカ粒子(A)の粒径や中空部分の大きさは、疎水性有機化合物の液滴の大きさに影響されるので、疎水性有機化合物の融点、反応温度、攪拌速度、使用する界面活性剤等により適宜調整することができる。
【0021】
[第四級アンモニウム塩(b)]
第四級アンモニウム塩(b)は、メソ細孔の形成とポリマー粒子(a−1)又は疎水性有機化合物(a−2)の分散のために用いられる。
前記一般式(1)及び(2)におけるR1及びR2は、炭素数4〜22、好ましくは炭素数6〜18、更に好ましくは炭素数8〜16の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。炭素数4〜22のアルキル基としては、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、各種エイコシル基等が挙げられる。
一般式(1)及び(2)におけるXは、高い結晶性を得るという観点から、好ましくはハロゲンイオン、水酸化物イオン、硝酸化物イオン、硫酸化物イオン等の1価陰イオンから選ばれる1種以上である。Xとしては、より好ましくはハロゲンイオンであり、更に好ましくは塩素イオン又は臭素イオンであり、特に好ましくは臭素イオンである。
【0022】
一般式(1)で表されるアルキルトリメチルアンモニウム塩としては、ブチルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ブチルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロミド、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
一般式(2)で表されるジアルキルジメチルアンモニウム塩としては、ジブチルジメチルアンモニウムクロリド、ジヘキシルジメチルアンモニウムクロリド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド、ジヘキシルジメチルアンモニウムブロミド、ジオクチルジメチルアンモニウムブロミド、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
これらの第四級アンモニウム塩(b)の中では、規則的なメソ細孔を形成させる観点から、特に一般式(1)で表されるアルキルトリメチルアンモニウム塩が好ましく、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド又はアルキルトリメチルアンモニウムクロリドがより好ましく、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド又はドデシルトリメチルアンモニウムクロリドが特に好ましい。
また、第四級アンモニウム塩(b)として、上記以外に、塩化セチルピリジニウムなどのピリジニウム塩等も用いることができる。
【0023】
[シリカ源(c)]
シリカ源(c)は、アルコキシシラン等の加水分解によりシラノール化合物を生成するものであり、下記一般式(3)〜(7)で示される化合物を挙げることができる。
SiY4 (3)
3SiY3 (4)
32SiY2 (5)
33SiY (6)
3Si−R4−SiY3 (7)
(式中、R3はそれぞれ独立して、ケイ素原子に直接炭素原子が結合している有機基を示し、R4は炭素原子を1〜4個有する炭化水素基又はフェニレン基を示し、Yは加水分解によりヒドロキシ基になる1価の加水分解性基を示す。)
より好ましくは、一般式(3)〜(7)において、R3がそれぞれ独立して、水素原子の一部がフッ素原子に置換していてもよい炭素数1〜22の炭化水素基であり、具体的には炭素数1〜22、好ましくは炭素数4〜18、より好ましくは炭素数6〜18、特に好ましくは炭素数8〜16のアルキル基、フェニル基、又はベンジル基であり、R4が炭素数1〜4のアルカンジイル基(メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、テトラメチレン基等)又はフェニレン基であり、Yが炭素数1〜22、より好ましくは炭素数1〜8、特に好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基、又はフッ素を除くハロゲン基である。
【0024】
シリカ源(c)の好適例としては、次の化合物が挙げられる。
・一般式(3)において、Yが炭素数1〜3のアルコキシ基であるか、又はフッ素を除くハロゲン基であるシラン化合物。
・一般式(4)又は(5)において、Yが炭素数1〜3のアルコキシ基であるか、又はフッ素を除くハロゲン基であり、R3がフェニル基、ベンジル基、又は水素原子の一部がフッ素原子に置換されている炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5の炭化水素基であるトリアルコキシシラン又はジアルコキシシラン。
一般式(6)において、Yが炭素数1〜3のアルコキシ基であるか、又はフッ素を除くハロゲン基であり、R3がフェニル基、ベンジル基、又は水素原子の一部がフッ素原子に置換されている炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5の炭化水素基であるモノアルコキシシラン。
・一般式(7)において、Yがメトキシ基であって、R4がメチレン基、エチレン基又はフェニレン基である化合物。
これらの中では、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、1,1,1−トリフルオロプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0025】
工程Aにおける水溶液中のポリマー粒子(a−1)又は疎水性有機化合物(a−2)(以下、両者を総称して「(a)成分」ともいう)、第四級アンモニウム塩(b)、及びシリカ源(c)の含有量は次のとおりである。
(a−1)成分の含有量は、好ましくは0.1〜50グラム/L、より好ましくは0.3〜40グラム/L、特に好ましくは0.5〜30グラム/Lである。
(a−2)成分の含有量は、0.1〜100ミリモル/L、より好ましくは1〜100ミリモル/L、特に好ましくは5〜80ミリモル/Lである。
(b)成分の含有量は、好ましくは0.1〜100ミリモル/L、より好ましくは1〜100ミリモル/L、特に好ましくは5〜80ミリモル/Lであり、(c)成分の含有量は、好ましくは0.1〜100ミリモル/L、より好ましくは1〜100ミリモル/L、特に好ましくは5〜80ミリモル/Lである。
(a)〜(c)成分を含有させる順序は特に制限はない。例えば、(i)水溶液を撹拌しながら(a)成分の懸濁液、(b)成分、(c)成分の順に投入する、(ii)水溶液を撹拌しながら(a)成分の懸濁液、(b)成分、(c)成分を同時に投入する、(iii)(a)成分の懸濁液、(b)成分、(c)成分の投入後に撹拌する、等の方法を採用することができるが、これらの中では(i)の方法が好ましい。
(a)〜(c)成分を含有する水溶液には、プロトコア−シェル粒子の形成を阻害しない限り、その他の成分として、メタノール等の有機化合物や、無機化合物等の他の成分を添加してもよく、前記のように、シリカや有機基以外の他の元素を担持したい場合は、それらの金属を含有するアルコキシ塩やハロゲン化塩等の金属原料を製造時又は製造後に添加することもできる。
【0026】
[工程B]
工程Bはプロトコア−シェル粒子の水分散液を調製する工程である。工程Aで得られる水溶液を10〜100℃、好ましくは10〜80℃の温度で所定時間撹拌した後、静置することで、ポリマー粒子(a−1)又は疎水性有機化合物(a−2)の表面に、第四級アンモニウム塩(b)とシリカ源(c)によりメソ細孔が形成され、内部にポリマー粒子(a−1)又は疎水性有機化合物(a−2)を包含したプロトコア−シェル粒子を析出させることができる。撹拌処理時間は温度によって異なるが、通常10〜80℃で0.1〜24時間でプロトコア−シェル粒子が形成される。なお、この時点で得られるプロトコア−シェル粒子のメソ細孔には製造の際に用いた界面活性剤が詰った状態にある。
得られたプロトコア−シェル粒子は、水中に懸濁した状態で得られる。用途によってはこれをそのまま使用することもできるが、好ましくはプロトコア−シェル粒子を分離して使用する。分離方法としは、ろ過法、遠心分離法等を採用することができる。
工程Bで得られたプロトコア−シェル粒子に陽イオン界面活性剤等を含む場合は、酸性溶液と1回又は複数回接触させることにより陽イオン界面活性剤等を除去することができる。用いる酸性溶液としては、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸;酢酸、クエン酸等の有機酸;陽イオン交換樹脂等を水やエタノール等に加えた液が挙げられるが、塩酸が特に好ましい。pHは通常1.5〜5.0に調整される。
上記の方法により細孔から界面活性剤が除去された粒子は、メソ細孔構造を表面に有し、BET比表面積の高い、ポリマー粒子(a−1)又は疎水性有機化合物(a−2)を包含するプロトコア−シェル粒子である。
【0027】
[工程C]
工程Cでは、工程Bで得られたプロトコア−シェル粒子を分散媒から分離し、必要に応じて、酸性水溶液と接触、水洗、乾燥、また、高温で処理した後、電気炉等で好ましくは350〜800℃、より好ましくは450〜700℃で、1〜10時間焼成し、内部のポリマー(a−1)又は疎水性有機化合物(a−2)を除去する。得られる中空シリカ粒子(A)は、その外殻部の基本構成は変わらないが、内部のポリマー(a−1)又は疎水性有機化合物(a−2)は焼成により除去されている。
本発明においては、ポリマー(a−1)又は疎水性有機化合物(a−2)を包含するプロトコア−シェル粒子を焼成するため、特に内包されるポリマー粒子(a−1)の形状、形態を所望の状態に予め制御しておくことにより、所望の形状、形態を有する中空シリカ粒子(A)を容易に製造することができる。例えば、内部に真球状のポリマーを有するプロトコア−シェル粒子を焼成することにより、内部中空及び外形が真球状の中空シリカ粒子(A)を製造することができる。
【0028】
工程(I)で得られる中空シリカ粒子(A)のメソ細孔構造の平均細孔径は、好ましくは1〜8nm、より好ましくは1〜5nmであり、該メソ細孔径は、その70質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上が平均細孔径の±30%以内に入ることが望ましい。
また、中空シリカ粒子(A)のBET比表面積は、好ましくは100〜1500m2/g、より好ましくは200〜1500m2/g、更に好ましくは300〜1500m2/gである。
中空シリカ粒子(A)の平均粒子径は、好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.05〜5μm、更に好ましくは0.02〜2μmである。中空シリカ粒子(A)は、好ましくは一次粒子全体の80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上が平均粒子径±30%以内の一次粒子径を有しており、非常に揃った粒子径の粒子群から構成されていることが望ましい。
中空シリカ粒子(A)の外殻部(メソポーラスシリカ部)の平均厚みは、最終的に得られる中空シリカ粒子が担体としての強度を維持できるように、範囲で薄い方が好ましく、中空部の平均直径(平均容積)は、内包物を多く保持する観点から大きい方が好ましい。これらの観点から、外殻部の平均厚みは、通常0.5〜500nm、好ましくは2〜400nm、より好ましくは3〜300nmである。また、〔外殻部の平均厚み/中空シリカ粒子の平均粒子径〕の比は、通常0.01〜0.9、好ましくは0.05〜0.8、より好ましくは0.1〜0.7である。
中空シリカ粒子(A)の平均粒子径、平均外殻厚み、BET比表面積、平均細孔径、及び粉末X線回折(XRD)パターンの測定は、実施例記載の方法により行うことができる。
【0029】
工程(II-1)
工程(II-1)は、工程(I)で得られた中空シリカ粒子(A)をシラン化合物(B)で処理する工程である。
[シラン化合物(B)]
本発明におけるシラン化合物(B)は、特に制限はないが、中空シリカ粒子(A)の細孔内にシラン化合物(B)を結合させて細孔径を小さくさせる観点から、アルコキシシラン、ジシラザン、クロルシラン等の有機基を有する加水分解性有機シラン化合物が好ましく、アルコキシシラン、ジシラザンがより好ましい。また、加水分解可能な官能基がアルコキシ基の場合、好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4、更に好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましく、特にメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
有機基は、性能発現、製造容易性、コストの観点から、アルキル基、アミノ基、アンモニウム基、エポキシ基、フェニル基、メルカプト基、ビニル基、及びメタクリル基からなる群から選ばれる1種以上を含有するものが好ましく、アルキル基、アミノ基、エポキシ基、及びフェニル基からなる群から選ばれる1種以上を含有するものがより好ましい。
【0030】
アルコキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ベンジルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−[2−(2−アミノエチルアミノエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、3−[2−(2−アミノエチルアミノエチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシシラン、ジメトキシメチル−3−(3−フェノキシプロピルチオプロピル)シラン等が挙げられる。これらの中では、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−[2−(2−アミノエチルアミノエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン等の炭素数1〜3のアルコキシ基を有するトリアルコキシシランが好ましい。
【0031】
ジシラザンとしては、下記一般式(8)で表される化合物が好ましい。
53SiNHSiR63 (8)
(式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリル基、アリール基、又はアルコキシ基を示し、複数のR5及びR6は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
これらの中では、炭素素数1〜3のアルキル基を有するヘキサアルキルジシラザンが好ましく、特にヘキサメチルジシラザン〔(CH33SiNHSi(CH33〕が好ましい。
クロルシランとしては、トリメチル−3−トリメトキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、ジメチルオクタデシル−3−トリメトキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、テトラメチルジシラザン、テトラメチルジフェニルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。これらの中では、トリメチル−3−トリメトキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、ジメチルオクタデシル−3−トリメトキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等のモノ又はジクロロシランが好ましい。
上記のシラン化合物(B)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
シラン化合物(B)による処理方法は、特に限定されるものではなく、気相法、液相法等の常法に従い行うことができる。例えば、シラン化合物(B)をシリカ粒子(A)の100質量部に対し1〜500質量部添加し、20℃〜150℃で1〜120時間処理することにより行うことができる。
3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシランを用いて液相処理する場合、性能発現、製造容易性、コストの観点から、アルコキシシランの添加量は、中空シリカ粒子(A)100質量部に対し、1〜500質量部が好ましく、10〜200質量部がより好ましく、30〜150質量部が更に好ましい。また、処理溶媒はアルコキシシランの種類などにも依存するが、非水系溶媒が好ましく、メタノール、エタノール、トルエンがより好ましい。処理温度は、20〜150℃が好ましく、60〜130℃がより好ましく、処理時間は、1〜120時間が好ましく、2〜60時間がより好ましい。
ヘキサメチルジシラザンを用いて気相処理する場合、性能発現、製造容易性、コストの観点から、ヘキサメチルジシラザンの添加量は、中空メソポーラスシリカの100質量部に対し、1〜300質量部が好ましく、10〜100質量部がより好ましく、30〜100質量部が更に好ましい。また、処理温度は、20〜150℃が好ましく、60〜120℃がより好ましく、処理時間は、1〜120時間が好ましく、2〜60時間がより好ましい。
シラン化合物(B)の処理工程の後に、未反応化合物や副生化合物を除去するために、未反応化合物や副生化合物の沸点以上の温度で熱処理したり、未反応化合物や副生化合物が可溶な溶媒で洗浄することもできる。
【0033】
工程(II-1)により得られる中空シリカ粒子(外殻部)は、その主成分がシリカで構成されており、その構造中にケイ素に直接結合する有機基を有するものであるが、Al、Ti、V、Cr、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、B、Mn、Fe等の他元素を担持した形態、又はシリカの一部が他元素で置換された形態であってもよい。これら元素を導入する場合はそれらの金属を含有するアルコキシ塩やハロゲン化塩等の金属原料を製造時又は製造後に添加すればよい。
シラン化合物中の有機基は核磁気共鳴測定を用いたケイ素原子(29Si−NMR)や炭素原子(13C−NMR)の測定、元素分析、熱重量分析などにより確認することができる。
外殻の一部を構成する有機基の数はケイ素元素数あたり1〜70%が好ましく、2〜50%がより好ましく、3〜30%が更に好ましい。中空シリカ粒子に含まれる有機基の炭素元素数は、製造時のシリカ源の種類や配合率等から求めることができるし、また、元素分析や熱質量分析によっても確認することができる。
【0034】
工程(II-2)
工程(II-2)は、工程(I)で得られた中空シリカ粒子(A)を700〜950℃で焼成する工程である。
焼成条件は、細孔を適度に焼き締め、外殻部の平均細孔径を1nmにする観点から、好ましくは800〜940℃であり、より好ましくは820〜930℃、更に好ましくは850〜920℃である。
焼成は電気炉等を用いて行うことができ、焼成時間は、焼成温度等により異なるが、通常0.5〜10時間、好ましくは1〜6時間である。
本発明においては、工程(I)で中空シリカ粒子(A)を一旦製造してから、これを工程(II-2)で700〜950℃で焼成することが好ましい。
工程(II-2)により得られる中空シリカ粒子(外殻部)はシリカで構成されているが、Al、Ti、V、Cr、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、B、Mn、Fe等の他元素を担持した形態、又はシリカの一部が他元素で置換された形態であってもよい。これは工程(II-1)の場合と同様である。
【0035】
上記の方法で得られた中空シリカ粒子に、内包物として、例えば液体香料等を含浸させ、複合シリカ粒子とすることができる。
香料等の含有量は、特に限定されないが、高い残香性を賦与する観点から、中空シリカ粒子に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50〜300質量%である。
本発明の中空シリカ粒子には、香料等の内包物の可溶化、溶解性、保存安定性の観点から、更に、公知の界面活性剤を含有させることができる。
【実施例】
【0036】
製造例、実施例及び比較例で得られた中空シリカ粒子の各種測定は、以下の方法により行った。
(1)粉末X線回折(XRD)の測定
粉末X線回折装置(理学電機工業株式会社製、商品名:RINT2500VPC)を用いて、X線源:Cu-kα、管電圧:40mA、管電流:40kV、サンプリング幅:0.02°、発散スリット:1/2°、発散スリット縦:1.2mm、散乱スリット:1/2°、及び受光スリット:0.15mmの条件で粉末X線回折測定を行った。走査範囲を回折角(2θ)1〜70°、走査速度を4.0°/分とした連続スキャン法を用いた。なお、測定は、粉砕した試料をアルミニウム板に詰めて行った。
(2)粒子形状の観察
電解放射型高分解能走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所社製、商品名:FE−SEM S−4000)を用いて粒子形状の観察を行った。
(3)平均一次粒子径、平均中空部径、及び平均外殻部厚みの測定
透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子株式会社製、商品名:JEM−2100)を用いて加速電圧160kVで粒子の観察を行った。20〜30個の粒子が含まれる5視野中の全粒子の直径、中空部径、及び外殻部厚みを写真上で実測し、平均一次粒子径、平均中空部径、及び平均外殻部厚みを求めた。なお、観察は、高分解能用カーボン支持膜付きCuメッシュ(応研商事株式会社製、200−Aメッシュ)に付着させ、余分な試料をブローで除去したものを用いて行った。
【0037】
(4)BET比表面積、及び平均細孔径の測定
比表面積・細孔分布測定装置(株式会社島津製作所製、商品名:ASAP2020)を用いて、液体窒素を用いた多点法でBET比表面積を測定し、パラメータCが正になる範囲で値を導出した。平均細孔径の導出にはBJH法を採用し、そのピーク値の細孔径を平均細孔径とした。試料には250℃で5時間の前処理を施した。
(5)中空部の香料量の測定
理学電機工業株式会社製、差動型示差熱天秤Thermo plus TG8120を用いて、エアーフロー(300mL/min)下、室温から40℃まで10℃/分の速度で昇温後、40℃で5時間保持、更に700℃まで10℃/分の速度で昇温した。700℃で残存した質量をシリカの質量とした。また、40℃における質量減量を時間(分)で微分し、単位シリカ質量(g)当たり、単位時間(分)における香料の質量減量(mg)を揮発速度(mg香料/分/シリカg)として求めた。測定時間30〜200分の範囲内に、揮発速度が1〜3mg香料/分/シリカgで時間に依存せずほぼ一定となる領域が見られ、この領域に相当する香料量を中空部香料量(シリカ質量に対する質量%)とした。
【0038】
製造例1(中空シリカ粒子(A1)の製造)
2L−セパラフルフラスコに、イオン交換水600部、メタクリル酸メチル99.5部、塩化メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム0.5部を入れ、内温70℃まで昇温させた。次いで、これに、水溶性開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)二塩酸塩(和光純薬株式会社製、商品名:V−50)0.5部をイオン交換水5部に溶かした溶液を添加し、3時間加熱撹拌(300rpm)を行った。
その後、さらに75℃で3時間加熱撹拌(300rpm)を行って冷却した後、得られた混合液から凝集物を200メッシュ(目開き約75μm)でろ過し、カチオン性ポリマー粒子の懸濁液(固形分(有効分)含有量14質量%、平均一次粒子径280nm、平均粒子径±30%の割合が100%)を得た。
次に、10Lフラスコに、水6kg、メタノール2kg、1M水酸化ナトリウム水溶液45g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド35g、及び上記で得られたカチオン性ポリマー粒子の懸濁液33gを入れて撹拌し、その水溶液に、テトラメトキシシラン34gをゆっくりと加え、5時間撹拌した後、12時間熟成させた。
次いで、得られた白色沈殿物を、孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過した後、10Lの水で洗浄し、100℃の温度条件で5時間乾燥した。
得られた乾燥粉末を、焼成炉(株式会社モトヤマ製、商品名:SK−2535E)を用いて、エアーフロー(3L/min)しながら1℃/分の速度で600℃まで昇温し、600℃で2時間焼成することにより有機成分を除去し、中空シリカ粒子(A1)を得た。
この中空シリカ粒子(A1)粉末について、粉末X線回折(XRD)測定を行った結果、結晶格子面間隔(d)=2.9nmに相当する回折角の非常に強いピーク、d=1.7nm及びd=1.5nmに相当する回折角の弱いピークにより、この中空シリカ粒子(A1)粉末のメソ細孔がヘキサゴナル配列を有することを確認した。d=1.0nm未満に相当する回折角の領域にXRDピークは見られなかった。また、SEM観察により、この中空シリカ粒子(A1)の粒子形状が球状であることを確認した。
さらに、TEM観察より、この中空シリカ粒子(A1)が中空構造を有し、平均一次粒子径が560nm、平均中空部径が280nm、平均外殻部厚みが140nmであり、外殻部がヘキサゴナル配列を示す均一なメソ細孔を有し、そのメソ細孔が粒子中心から外殻部の外側に向かって放射状に貫通していることを確認した。全ての一次粒子が平均一次粒子径±30%以内の一次粒子径を有していた。
また、この中空シリカ粒子(A1)粉末は、BET比表面積が1230m2/g、平均細孔径が1.48nmであった。
【0039】
製造例2(中空シリカ粒子(A2)の製造)
製造例1において、平均一次粒子径360nmのカチオン性ポリマー粒子を用いた以外は、製造例1と同様にして、中空シリカ粒子(A2)を製造した。
この中空シリカ粒子(A2)粉末について、粉末X線回折(XRD)測定を行った結果、d=3.0nmに相当する回折角の非常に強いピーク、d=1.7nm及びd=1.5nmに相当する回折角の弱いピークにより、この中空シリカ粒子(A2)粉末のメソ細孔がヘキサゴナル配列を有することを確認した。d=1.0nm未満に相当する回折角の領域にXRDピークは見られなかった。また、SEM観察により、この中空シリカ粒子(A2)の粒子形状が球状であることを確認した。
さらに、TEM観察より、この中空シリカ粒子(A2)が中空構造を有し、平均一次粒子径が680nm、平均中空部径が360nm、平均外殻部厚みが160nmであり、外殻部がヘキサゴナル配列を示す均一なメソ細孔を有し、そのメソ細孔が粒子中心から外殻部の外側に向かって放射状に貫通していることを確認した。また平均一次粒子径等の測定に用いられた視野内の全ての一次粒子が平均一次粒子径±30%以内の一次粒子径を有していた。
また、この中空シリカ粒子(A2)粉末は、BET比表面積が1200m2/g、平均細孔径が1.50nmであった。
【0040】
実施例1(中空シリカ粒子(A1)のジシラザン処理)
製造例1で得られた中空シリカ粒子(A1)粉末1gとヘキサメチルジシラザン(和光純薬工業株式会社製)0.3gを1Lテトラーバッグに入れ、密封し、電気乾燥機中で80℃で2日間放置することにより、ジシラザン処理した中空シリカ粒子粉末を得た。
このジシラザン処理した中空シリカ粒子粉末の元素分析値は、Si=43質量%、C=7.5質量%であった。
このジシラザン処理した中空シリカ粒子粉末について、粉末X線回折(XRD)測定を行った結果、d=2.9nmに相当する回折角の非常に強いピーク、d=1.7nm及びd=1.5nmに相当する回折角の弱いピークにより、この中空シリカ粒子粉末のメソ細孔がヘキサゴナル配列を有することを確認した。d=1.0nm未満の領域にXRDピークは見られなかった。また、SEM観察により、この中空シリカ粒子の粒子形状が球状であることを確認した。
さらに、TEM観察より、この中空シリカ粒子が中空構造を有し、平均一次粒子径が560nm、平均中空部径が280nm、平均外殻部厚みが140nmであり、外殻部がヘキサゴナル配列を示す均一なメソ細孔を有し、そのメソ細孔が粒子中心から外殻部の外側に向かって放射状に貫通していることを確認した。また平均一次粒子径などの測定に用いられた視野内の全ての一次粒子が平均一次粒子径±30%以内の一次粒子径を有していた。また、この中空シリカ粒子粉末は、BET比表面積が600m2/gであった。
図1に、中空シリカ粒子(A1)とジシラザン処理後の中空シリカ粒子(実施例1)の細孔径分布の測定結果を示す。中空シリカ粒子(A1)の平均細孔径は1.48nmであるが、ジシラザン処理後の中空シリカ粒子(実施例1)は、ピーク値が1nm以上に存在せず、細孔径分布において測定下限細孔径1nmにテーリングが見られる。従って、ジシラザン処理後の中空シリカの平均細孔径(実施例1)は1nm未満である。
【0041】
実施例2(中空シリカ粒子(A1)のアルコキシシラン処理)
室温、攪拌下、トルエン50gに3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(東京化成工業株式会社製)2gを溶解後、製造例1で得られた中空シリカ粒子(A1)粉末2gを分散させ、120℃で24時間処理した。処理液を孔径0.2μmのフィルターでろ過、エタノールで洗浄後、100℃で24時間乾燥させることにより、アルコキシシラン処理した中空シリカ粉末を得た。
このアルコキシシラン処理した中空シリカ粒子粉末の元素分析値は、Si=37質量%、C=12質量%であった。
このアルコキシシラン処理した中空シリカ粒子粉末について、粉末X線回折(XRD)測定を行った結果、d=3.0nmに相当する回折角の非常に強いピーク、d=1.7nm及びd=1.5nmに相当する回折角の弱いピークにより、この中空シリカ粒子粉末のメソ細孔がヘキサゴナル配列を有することを確認した。d=1.0nm未満に相当する回折角の領域にXRDピークは見られなかった。また、SEM観察により、この中空シリカ粒子の粒子形状が球状であることを確認した。
さらに、TEM観察より、この中空シリカ粒子が中空構造を有し、平均一次粒子径が560nm、平均中空部径が280nm、平均外殻部厚みが140nmであり、外殻部がヘキサゴナル配列を示す均一なメソ細孔を有し、そのメソ細孔が粒子中心から外殻部の外側に向かって放射状に貫通していることを確認した。全ての一次粒子が平均一次粒子径±30%以内の一次粒子径を有していた。
また、この中空シリカ粒子粉末は、BET比表面積が80m2/gであった。またピーク値が1nm以上に存在せず、細孔径分布において測定下限細孔径1nmにテーリングが見られたことから、平均細孔径は1nm未満である。
【0042】
実施例3(中空シリカ粒子(A2)の焼成処理)
製造例2で得られた中空シリカ粒子(A2)粉末5gを焼成皿に入れ、焼成炉(株式会社モトヤマ製、商品名:SK−2535E)を用いて、エアーフロー(3L/min)しながら10時間かけて900℃まで昇温し、更に900℃で2時間焼成した。
この900℃焼成処理した中空シリカ粒子粉末について、粉末X線回折(XRD)測定を行った結果、d=2.5nmのピークが見られ、この中空シリカ粒子粉末が規則的な細孔構造を有することを確認した。d=1.0nm未満の領域にXRDピークは見られなかった。また、SEM観察により、この中空シリカ粒子の粒子形状が球状であることを確認した。
さらに、TEM観察より、この中空シリカ粒子が中空構造を有し、平均一次粒子径が630nm、平均中空部径が310nm、平均外殻部厚みが160nmであり、外殻部が細孔構造を有していることを確認した。全ての一次粒子が平均一次粒子径±30%以内の一次粒子径を有していた。
また、この中空シリカ粒子粉末は、BET比表面積が70m2/gであった。またピーク値が1nm以上に存在せず、細孔径分布において測定下限細孔径1nmにテーリングが見られたことから、平均細孔径は1nm未満である。
【0043】
比較例1
製造例1の中空シリカ粒子(A1)をそのまま用いた。
比較例2
製造例2の中空シリカ粒子(A2)をそのまま用いた。
実施例1〜3および比較例1,2の中空シリカ粒子の物性を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1から、中空シリカ粒子(細孔径約1.5nm)をシラン化合物処理又は高温焼成(900℃)することにより、シリカ粒子の基本構成を保持したまま、1nm未満の平均細孔径(ピーク細孔径)を有する中空シリカ粒子が得られることが分かる。
【0046】
実施例4(香料担持中空シリカ粒子)
実施例1で得られた中空シリカ粒子粉末0.5gを20mlのサンプル瓶へ入れ、その上に香料として(R)−(+)−リモネン(和光純薬工業株式会社製)6.0gを注いだ。その容器をガラス製デシケータ中に移し、ロータリーポンプを用い3分間減圧した。その後、窒素ガスを充填し内圧を常圧に戻した。この操作を3度繰り返した後、サンプルを一晩静置した。翌日、メンブレンフィルター(ADVANTEC社製、材質:ポリテトラフルオロエチレン、孔径:0.2μm)によりろ別し、リモネン香料を担持した中空シリカ粒子を得た。
熱質量分析により、この香料担持中空シリカ粒子の中空部のリモネン量を求めた結果、中空シリカ粒子の質量に対して15質量%であった。
20mLスクリュー管にこの香料担持中空シリカ粒子0.05gと4mmol/L塩酸水溶液(pH=2.4)10gを入れ、室温で10分間磁気攪拌を行った。攪拌終了後すぐにメンブレンフィルター(ADVANTEC社製、材質:セルロールアセテート、孔径:0.2μm)で5分間ろ過した。
熱質量分析により、このろ過した中空シリカ粒子の中空部のリモネン量を求めた結果、中空シリカ粒子の質量に対して15質量%であった。すなわち、中空部のリモネンが水に溶出しないことが判明した。
【0047】
比較例3(香料担持中空メソポーラスシリカ)
実施例4において、製造例1で得られた中空シリカ粒子(A1)を用いた以外は同様にリモネン香料担持中空メソポーラスシリカを得た。
熱質量分析により、この香料担持中空シリカ粒子の中空部のリモネン量を求めた結果、中空シリカ粒子の質量に対して16質量%であった。
20mLスクリュー管にこの香料担持中空メソポーラスシリカ0.05gと4mmol/L塩酸水溶液(pH=2.4)10gを入れ、室温で10分間磁気攪拌を行った。攪拌終了後すぐにメンブレンフィルター(ADVANTEC社製、材質:セルロールアセテート、孔径:0.2μm)で5分間ろ過した。
熱質量分析により、このろ過した中空メソポーラスシリカの中空部のリモネン量を求めた結果、中空シリカ粒子の質量に対して0質量%であった。すなわち、中空部のリモネン全てが水に溶出したことが判明した。
実施例4および比較例3の香料担持中空シリカ粒子の評価結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
表2から、平均細孔径1nm未満の中空シリカ粒子は、中空部の素材(香料)を水中でも安定保持できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の中空シリカ粒子に香料等を内包させれば、内包物の揮散制御が容易であるため、徐放性香料粒子等として、化粧品、洗剤、防虫剤、農薬、食品、繊維、インク等の広範な分野において極めて有効に利用できる。また、触媒担体、機能性有機化合物等の固定化担体、物質分離剤としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】中空シリカ粒子(A1)と実施例1のジシラザン処理後の中空シリカ粒子の細孔径分布を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空シリカ粒子であって、粉末X線回折測定において、結晶格子面間隔(d)が1〜10nmの範囲に相当する回折角(2θ)に1本以上のピークを示し、結晶格子面間隔(d)が1nm未満の範囲に相当する回折角(2θ)にピークを示さず、かつ外殻部が平均細孔径1nm未満のマイクロ細孔構造を有する中空シリカ粒子。
【請求項2】
平均一次粒子径が0.05〜10μmであって、粒子全体の80%以上が平均一次粒子径±30%以内の一次粒子径を有する、請求項1記載の中空シリカ粒子。
【請求項3】
BET比表面積が30〜800m2/gである、請求項1又は2に記載の中空シリカ粒子。
【請求項4】
外殻部が平均細孔径1〜10nmのメソ細孔構造を有する中空シリカ粒子(A)をシラン化合物(B)で処理する工程を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の中空シリカ粒子の製造方法。
【請求項5】
シラン化合物(B)の処理量が、中空シリカ粒子(A)100質量部に対して1〜500質量部である、請求項4に記載の中空シリカ粒子の製造方法。
【請求項6】
シラン化合物(B)が、炭素数1〜3のアルキル基を有するヘキサアルキルジシラザンである、請求項4又は5に記載の中空シリカ粒子の製造方法。
【請求項7】
外殻部が平均細孔径1〜10nmのメソ細孔構造を有する中空シリカ粒子(A)を700〜950℃で焼成する工程を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の中空シリカ粒子の製造方法。
【請求項8】
中空シリカ粒子(A)が下記工程A〜Cを含む方法によって製造されたものである請求項4〜7のいずれかに記載の中空シリカ粒子の製造方法。
工程A:ポリマー粒子(a−1)を0.1〜50グラム/L、又は疎水性有機化合物(a−2)を0.1〜100ミリモル/Lと、下記一般式(1)及び(2)で表される第四級アンモニウム塩から選ばれる1種以上(b)を0.1〜100ミリモル/L、及び加水分解によりシラノール化合物を生成するシリカ源(c)を0.1〜100ミリモル/L含有する水溶液を調製する工程。
[R1(CH33N]+- (1)
[R12(CH32N]+- (2)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数4〜22の直鎖状又は分岐状アルキル基を示し、Xは1価陰イオンを示す。)
工程B:工程Aで得られた水溶液を10〜100℃の温度で撹拌して、シリカから構成される外殻を有し、かつ核にポリマー粒子(a−1)又は疎水性有機化合物(a−2)を有するプロトコア−シェル粒子の水分散液を調製する工程
工程C:工程Bで得られたプロトコア−シェル粒子を分散媒から分離し、焼成する工程

【図1】
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【公開番号】特開2009−203116(P2009−203116A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47244(P2008−47244)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】