説明

中空ポリエステル繊維及びその製造方法

【課題】常圧下でカチオン染料に可染性である中空ポリエステル繊維を提供する。
【解決手段】主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートより構成されるポリエステルであり、下記要件を満足する常圧カチオン可染中空ポリエステル繊維とする。
a)ポリエステルを構成する酸成分中に、スルホイソフタル酸の金属塩(A)、および特定の化合物(B)を、下記数式(1)及び数式(2)を同時に満足する条件で含有すること。
b)ポリエステル中のジエチレングリコール含有量が2.5重量%以下であること。
c)ポリエステルの固有粘度が0.55〜1.0であること。
d)単糸の中空率が5〜80%であること。
3.0≦A+B≦5.0 (数式1)
0.2≦B/(A+B)≦0.7 (数式2)
[ここで、A、Bはスルホイソフタル酸の金属塩と特定化合物の共重合量(モル%)を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軽量感に優れ、且つ常圧下でカチオン染料に可染性であって、布帛の引き裂き強力を上げることが可能となるスポーツ衣料等に適した中空常圧カチオン可染性ポリエステル繊維及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル繊維は機械的特性をはじめ様々な優れた特性を有しており、衣料用途をはじめ各種用途・分野に利用されている。しかしながら天然繊維に比べて風合い的に硬く感じられるという特徴があった。そのため、最近ではポリエステル繊維の機能性を向上させるべく、ポリエステル繊維の断面形状の変更やポリマー改質により、軽量性や深色性を向上させたりしてきた。特にスポーツ衣料用途としては、更なる軽量性及び布帛の強度が必要とされてきている。
【0003】
その軽量性を発現させるため、紡糸口金を中空形状にして、高中空率を保つことで、その軽量性を謳ったり、複合繊維により中心部にポリビニルアルコール系の樹脂を添加し、紡糸巻取後にその樹脂を溶出させ、実質のポリエステル繊維の中空率を高め、軽量性を発現させる方法が各種提案されてきている。(例えば特許文献1参照)
また、深色性に関しては、ポリエステルにスルホイソフタル酸の金属塩を2〜3モル%共重合する方法が提案されている(例えば特許文献2,3参照)。
【0004】
しかしながら、かかる方法によって得られるポリエステル繊維は、高温・高圧下でしか染色することができず、天然繊維やウレタン繊維などと交編、交織した後に染色すると、天然繊維、ウレタン繊維が脆化するという問題があった。これを常圧、100℃付近の温度で十分に染色しようとすれば、スルホイソフタル酸の金属塩を多量に共重合されることが必要となるが、この場合、スルホネート基による増粘効果から、ポリエステルの重合度を高くすることができず、溶融紡糸にて得られるポリエステル繊維の強度が著しく低下し、さらに紡糸操業性が著しく悪化するという問題があった。
【0005】
一方、このような問題を解決するため、イオン結合性分子間力の小さいカチオン可染モノマーを共重合する技術が開示されている(例えば特許文献4,5参照)。イオン結合性分子間力の小さいカチオン可染モノマーとしては、5−スルホイソフタル酸テトラブトキシホスホネートなどが例示されているが、これらのカチオン可染モノマー共重合ポリエステルは熱安定性が悪く、常圧カチオン可染化させるため、共重合量を増加させようとしても、重合反応途中で熱分解が進行し、高分子量化させることが困難であった。さらに溶融紡糸する際の熱履歴による分解が大きく、結果として得られる糸の強度が弱くなるという欠点を有していた。また、使用する5−スルホイソフタル酸テトラブトキシホスホネートは非常に高価であり、結果として得られるカチオン可染性ポリエステルのコストが大幅に増大するという問題があった。
【0006】
かかる問題を解決する方法として、スルホイソフタル酸の金属塩に加え、分子量が2000以上のポリエチレングリコールを共重合する方法、アジピン酸、セバシン酸などの直鎖炭化水素のジカルボン酸を共重合する方法、あるいはジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールのようなグリコール成分を共重合する方法が提案されている。(例えば特許文献6,7参照)
【0007】
一方、耐光性の低下が少なく、且つ常圧可染性を出す方法としてアジピン酸、セバシン酸のような直鎖炭化水素のジカルボン酸、あるいはジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールのようなグリコール成分、また、平均分子量が400〜1000のポリアルキレングリコールをスルホイソフタル酸の金属塩と共重合する方法が提案されている(例えば特許文献8参照)。
【0008】
しかしながら、これらいずれの方法でも得られたポリエステルを溶融紡糸して得られる常圧カチオン可染性ポリエステル繊維の強度が低くなり、強いては得られる布帛の引き裂き強度が低下する、更には染色堅牢度が低いなどの問題があった。
【0009】
また、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合したポリエステルを鞘部に、95モル%以上がエチレンテレフタレートの繰返し単位からなるポリエステルを芯部に配した複合繊維が提案されている(例えば特許文献9参照)。しかしながら、鞘部を構成する共重合ポリエステル中のスルホイソフタル酸成分の共重合量には、前述と同様の理由で限界があり、十分な染着性を得ることが困難であること、並びに複合繊維とすることで紡糸工程での加工コストが増加、または繊維断面形状などに制約が生じるなどの課題があった。
【0010】
【特許文献1】特開平10−96136号公報
【特許文献2】特公昭34−10497号公報
【特許文献3】特開昭62−89725号公報
【特許文献4】特開平1−162822号公報
【特許文献5】特開2006−176628号公報
【特許文献6】特開2002−284863号公報
【特許文献7】特開2006−200064号公報
【特許文献8】特開2002−284863号公報
【特許文献9】特開平7−126920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の課題を解決するものであり、優れた軽量感を有し、常圧下でカチオン染料に可染性である中空ポリエステル繊維に関するものであり、さらにはそれを布帛とした時にソフトな風合い、優れた深色性を持つと同時に布帛の引き裂き強力を上げることが可能となるスポーツ衣料等に適した常圧カチオン可染性中空断面マルチフィラメントに関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題に鑑み本発明者らは鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明によれば、
主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートより構成されるポリエステルであり、下記要件を満足する常圧カチオン可染中空ポリエステル繊維。
a)ポリエステルを構成する酸成分中に、スルホイソフタル酸の金属塩(A)、および下記化学式(1)で表される化合物(B)を、下記数式(1)及び数式(2)を同時に満足する条件で含有すること。
b)ポリエステル中のジエチレングリコール含有量が2.5重量%以下であること。
c)ポリエステルの固有粘度が0.55〜1.0であること。
d)単糸の中空率が5〜80%であること。
【化1】

[上記式中、Rは水素または炭素数1〜10のアルキル基を表し、Xは4級ホスホニウム塩、または4級アンモニウム塩を表す。]
3.0≦A+B≦5.0 (数式1)
0.2≦B/(A+B)≦0.7 (数式2)
[ここで、Aはスルホイソフタル酸の金属塩の共重合量(モル%)、Bは上記化学式(1)で表される化合物の共重合量(モル%)を表す。]
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、優れた軽量性を有し、色調が良好で、常圧下でのカチオン染色による染着性が良好なポリエステル繊維を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリエステル中空断面繊維は、単糸の断面形状が中空形状であり、中空率が5〜80%、好ましくは10〜60%、より好ましくは20〜40%である。
本発明の中空断面繊維の断面形状は丸断面または3ケ以上の多角形断面形状の中空部を形成しているポリエステル繊維をあらわす。また中空部は1つに限定されず、2ケ以上の中空部を有する中空繊維であってもよい。また繊維全体の形状も丸断面に限定されることはなく、3ケ以上の多角形断面形状であってもよい。また繊維全体の形状も丸断面に限定されることはなく、3ケ以上の多角形断面形状であっても良く、中空を形成するのに影響がない範囲内で断面形状に凹部を有するような異型断面であってもよい。また、中空繊維の繊度は、特に限定されるものではないが、製糸性や深色性の観点から10〜300dtex、好ましくは30〜200dtex、単糸繊度は0.3〜5.0dtex、好ましくは0.5〜3.0dtexである。
【0015】
また、本発明に使用されるポリエステルとは、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコール成分とを重縮合反応せしめて得られるエチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルであり、共重合成分としてスルホイソフタル酸の金属塩(A)、及び下記化学式(1)で表される化合物(B)を、下記数式1及び2を同時に満足する状態で含有する共重合ポリエステルであり、該ポリエステル中のジエチレングリコール含有量が2.5重量%以下、固有粘度が0.55〜1.0であり、これにより得られた繊維の断面形状が偏平形状であり、該偏平形状は長手方向に丸断面単糸の3〜6個が接合したような形状を有している偏平断面であることを特徴とする常圧カチオン可染ポリエステル繊維である。
【0016】
【化2】

[上記式中、Rは水素または炭素数1〜10のアルキル基を表し、Xは4級ホスホニウム塩、または4級アンモニウム塩を表す。]
3.0≦A+B≦5.0 (数式1)
0.2≦B/(A+B)≦0.7 (数式2)
[ここで、Aはスルホイソフタル酸の金属塩の共重合量(モル%)、Bは上記化学式(1)で表される化合物の共重合量(モル%)を表す。]
【0017】
(成分Aについての説明)
本発明で使用されるスルホン酸塩基含有芳香族ジカルボン酸成分としては、5−スルホイソフタル酸の金属塩(ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩)、5−スルホイソフタル酸の4級ホスホニウム塩、または5−スルホイソフタル酸の4級アンモニウム塩が例示される。また、これらのエステル形成性誘導体も好ましく例示される。これらの群の中では、熱安定性、コストなどの面から、5−スルホイソフタル酸の金属塩が好ましく例示され、特に、5−スルホイソフタル酸のナトリウム塩およびそのジメチルエステルである5−スルホイソフタル酸ジメチルのナトリウム塩が特に好ましく例示される。
【0018】
(成分Bについての説明)
また、上記化学式(1)で表される化合物(B)としては、5−スルホイソフタル酸あるいはその低級アルキルアエステルの4級ホスホニウム塩または4級アンモニウム塩である。4級ホスホニウム塩、4級アンモニウム塩としては、アルキル基、ベンジル基、フェニル基が置換された4級ホスホニウム塩、4級アンモニウム塩が好ましく、特に4級ホスホニウム塩であることが好ましい。また、4つある置換基は同一であっても異なっていても良い。上記化学式(1)で表される化合物の具体例としては、5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸エチルトリブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸ベンジルトリブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸フェニルトリブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラフェニルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸ブチルトリフェニルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸ベンジルトリフェニルホスホニウム塩、あるいはこれらイソフタル酸誘導体のジメチルエステル、ジエチルエステルが好ましく例示される。
【0019】
(数式1の説明)
本発明において、ポリエステルに共重合させる成分Aと成分Bの合計は酸成分を基準として、A+Bが3.0〜5.0モル%の範囲である必要がある。3.0モル%より少ないと、常圧下でのカチオン染色では十分な染着を得ることができない。一方、5.0モル%より多くなると、得られるポリエステル糸の強度が低下するため実用に適さない。さらに染料を過剰に消費するため、コスト面でも不利である。
【0020】
(数式2の説明)
また、成分Aと成分Bの成分比は、B/(A+B)が0.2〜0.7の範囲にある必要がある。0.2以下、つまり成分Aの割合が多い状態では、スルホイソフタル酸金属塩による増粘効果により、得られるポリエステルの重合度を上げることが困難になる。一方、0.7以上、つまり成分Bの割合が多い状態では、反応が遅くなり、さらに成分Bの比率が多くなると分解が進むため重合度を上げることができない。さらに、成分Bの比率多くなると熱安定性が悪化し、溶融紡糸段階で再溶融した際の熱分解による分子量の低下が大きくなるため、得られるポリエステル糸の強度が低下するため、好ましくない。
【0021】
(DEG量の説明)
本発明における常圧カチオン可染性ポリエステルに含有されるジエチレングリコールは、2.5重量%以下であることが好ましい。
一般にカチオン可染性ポリエステルを製造する際には、ポリエステルの製造工程において副生するジエチレングリコール(DEG)量を抑制するために、DEG抑制剤として少々のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、水酸化テトラアルキルホスホニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルアミンなどの少なくとも1種類を、使用するカチオン可染性モノマー(本発明の場合は化合物(A)及び(B))に対して、1〜20モル%程度を添加することが好ましい。
【0022】
(固有粘度の説明)
本発明で使用されるポリエステルの固有粘度(溶媒:オルトクロロフェノール、測定温度:35℃)は0.55〜1.0の範囲であることが好ましい。固有粘度が0.55以下である場合、得られるポリエステル繊維の強度不足、溶融粘度不足による中空率の低下が起こり、一方、1.0以上とする場合、溶融粘度が高くなりすぎて溶融成型が困難になるため好ましくなく、また、溶融重合法に引続いて固相重合法により重合ポリエステルの重縮合工程での生産コストが大幅に増大するため好ましくない。常圧カチオン可染性ポリエステルの固有粘度としては、0.60〜0.90の範囲が更に好ましい。
【0023】
(ポリエステルの製造方法)
本発明における共重合ポリエステルの製造は特に限定されず、通常知られているポリエステルの製造方法が用いられる。すなわち、テレフタル酸とエチレングリコールの直接重縮合反応させる、あるいはテレフタル酸ジメチルに代表されるテレフタル酸のエステル形成性誘導体とエチレングリコールとをエステル交換反応させて低重合体を製造する。次いでこの反応性生物を重縮合触媒の存在下で減圧加熱して所定の重合度になるまで重縮合反応させることにより製造される。スルホイソフタル酸を含有する芳香族ジカルボン酸および/またはそのエステル誘導体を共重合する方法についても通常知られている製造方法を用いる事ができる。
【0024】
(その他添加剤)
また、本発明における共重合ポリエステルは、必要に応じて少量の添加剤、例えば酸化防止剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、遮光剤または艶消し剤などを含んでいても良い。特に酸化防止剤、艶消し剤などは特に好ましく添加される。
【0025】
(溶融紡糸)
本発明におけるポリエステルの製糸方法は、特に制限は無く、従来公知の方法が採用される。すなわち、乾燥した共重合ポリエステルを270℃〜300℃の範囲で溶融紡糸して製造することが好ましく、溶融紡糸の引取り速度は400〜5000m/分で紡糸することが好ましい。紡糸速度がこの範囲にあると、得られる繊維の強度も十分なものであると共に、安定して巻取りを行うこともできる。さらに、上述の方法で得られた未延伸糸もしくは部分延伸糸を、延伸工程にて1.2倍〜6.0倍程度の範囲で延伸することが好ましい。この延伸は未延伸ポリエステル繊維を一旦巻き取ってから行ってもよく、一旦巻き取ることなく連続的に行ってもよい。
【0026】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。実施例における各項目は次の方法で測定した。
(1)固有粘度
ポリエステル組成物を100℃、60分間でオルトクロロフェノールに溶解した希薄溶液を、35℃でウベローデ粘度計を用いて測定した値から求めた。なお、チップの固有粘度をηC、紡糸後の未延伸糸の固有粘度をηFとする。
(2)ジエチレングリコール(DEG)含有量:
ヒドラジンヒドラート(抱水ヒドラジン)を用いてポリエステル組成物チップを分解し、この分解生成物中のジエチレングリコールの含有量をガスクロマトグラフィー(ヒューレットパッカード社製(HP6850型))を用いて測定した。
(3)繊維の引張強度・伸度
JIS L1070記載の方法に準拠して測定を行った。
(4)カチオン可染性
CATHILON BLUE CD−FRLH)0.2g/L、CD−FBLH0.2g/L(いずれも保土ヶ谷化学)、硫酸ナトリウム3g/L、酢酸0.3g/Lの染色液中にて100℃で1時間、浴比1:50で染色し、次式により染着率を求めた。
染着率=(OD0−OD1)/OD0
OD0:染色前の染液の576nmの吸光度
OD1:染色後の染液の576nmの吸光度
本発明では、染着率98%以上のものを可染性良好と判断した。
【0027】
[実施例1]
テレフタル酸ジメチル100重量部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル4.1重量部とエチレングリコール60重量部の混合物に、酢酸マンガン0.03重量部、酢酸ナトリウム三水和物0.12重量部を添加し、140℃から240℃まで徐々に昇温しつつ、反応の結果生成するメタノールを系外に留出させながらエステル交換反応を行った。その後、正リン酸0.03重量部を添加し、エステル交換反応を終了させた。
その後、反応生成物に三酸化アンチモン0.05重量部と5−スルホイソフタル酸テトラブトキシホスホネート2.8重量部と水酸化テトラエチルアンモニウム0.3重量部とトリエチルアミン0.003重量部を添加して重合容器に移し、285℃まで昇温し、30Pa以下の高真空にて重縮合反応を行い、重合槽の攪拌機電力が所定電力に到達、もしくは所定時間を経過した段階で反応を終了させ、常法に従いチップ化した。
このポリエチレンテレフタレートチップを、同心円状の二重丸の単糸断面形状となる吐出孔を36個有した紡糸口金から、紡糸温度290℃で紡出し、油剤を付与し、紡糸速度3000m/minで引き取った後、予熱温度85℃、熱セット温度120℃、延伸倍率1.7、800m/minの速度で延伸し、単繊度2.4dtex、総繊度84dtexの本発明の中空断面繊維からなるマルチフィラメントを得た。得られたマルチフィラメントを110本/2.54cmの織密度、経緯無撚で製織し、平織物とした後、定法に従い、染色加工をし、得られた布帛について、上記の各方法で評価を行った。結果を表1に示す。
【0028】
[実施例2〜4、比較例1〜4]
実施例1において、5−スルホイソフタル酸ナトリウム及び5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホネートの添加量を表1となるように変更した事以外は実施例1と同様に実施した。
【0029】
[比較例5]
実施例4において、重縮合反応での攪拌電力が低い段階で反応終了させること以外は実施例4と同様に実施した。
【0030】
[比較例6]
実施例4において、酢酸ナトリウム三水和物、水酸化テトラエチルアンモニウム、トリエチルアミンを添加しないこと以外は実施例4と同様に実施した。
【0031】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、優れた軽量性を有し、優れた深色性を持つと同時に布帛の引き裂き強力の高い常圧カチオン可染性中空糸としてスポーツ衣料等に適したものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明におけるポリエステル中空断面繊維の単糸断面の模式図を示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートより構成されるポリエステルであり、下記要件を満足する常圧カチオン可染中空ポリエステル繊維。
a)ポリエステルを構成する酸成分中に、スルホイソフタル酸の金属塩(A)、および下記化学式(1)で表される化合物(B)を、下記数式(1)及び数式(2)を同時に満足する条件で含有すること。
b)ポリエステル中のジエチレングリコール含有量が2.5重量%以下であること。
c)ポリエステルの固有粘度が0.55〜1.0であること。
d)単糸の中空率が5〜80%であること。
【化1】

[上記式中、Rは水素または炭素数1〜10のアルキル基を表し、Xは4級ホスホニウム塩、または4級アンモニウム塩を表す。]
3.0≦A+B≦5.0 (数式1)
0.2≦B/(A+B)≦0.7 (数式2)
[ここで、Aはスルホイソフタル酸の金属塩の共重合量(モル%)、Bは上記化学式(1)で表される化合物の共重合量(モル%)を表す。]
【請求項2】
スルホイソフタル酸の金属塩が、5−ナトリウムスルホイソフタル酸である、請求項1記載の常圧カチオン可染性ポリエステル繊維。
【請求項3】
上記化合物(B)が、5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホネートである、請求項1〜2いずれかに記載の常圧カチオン可染性ポリエステル繊維。

【図1】
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【公開番号】特開2010−90503(P2010−90503A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260721(P2008−260721)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】