説明

中空埋込体ユニット

【課題】複数の中空埋込体を支持筋で一列に連設した際に、中空埋込体の所定ピッチでの位置決めと、中空埋込体の支持筋への固定とを同時に行うことができる中空埋込体ユニットを提供する。
【解決手段】複数の中空埋込体20とこれらを所定ピッチで一列に連設する支持筋10とを有する中空埋込体ユニット1であって、支持筋10が複数の係止用フランジ部14を有し、中空埋込体20が支持筋10を係止する支持筋係止部40を有し、支持筋係止部40が、係止用フランジ部14が係合した状態で支持筋10をスライドさせるガイド溝42と、ガイド溝42をスライドする支持筋10が挿入される凹部を有するフック部44と、フック部44の凹部に挿入された支持筋10に当接してフック部44の凹部の開口部側への支持筋10のスライドを規制する規制部46とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートスラブ内に複数の中空埋込体を埋設して中空コンクリートスラブを形成する中空スラブ工法に用いられる中空埋込体ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートスラブ内に複数の中空埋込体を埋設して、中空部を有する中空コンクリートスラブを形成する、いわゆる中空スラブ工法(ボイドスラブ工法とも呼ばれる。)が知られている。中空スラブ工法によって中空コンクリートスラブを形成することによって、下記の利点が生じる。
・コンクリートスラブの軽量化および強度向上が図れ、その結果、梁を極力なくすことができ、広い室内空間を確保できる。
・コンクリートスラブの遮音性が向上する。
【0003】
中空スラブ工法による中空コンクリートスラブの施工方法としては、型枠パネルの上に下端筋および上端筋をそれぞれ格子状に配筋し;下端筋の格子の1つの升目とこれに対応する上端筋の格子の1つの升目とそれぞれの升目の角同士を結ぶ仮想線とで形成される略立方体の配置用空間のそれぞれに上端筋の上方から中空埋込体を1つ1つ挿入して配置し;下端筋、中空埋込体および上端筋が完全に埋まるように型枠パネルの上にコンクリートを打設し;コンクリートが硬化した後、型枠パネルを脱型する方法が挙げられる。
【0004】
中空スラブ工法に用いられる中空埋込体としては、複数の中空埋込体を複数の配置用空間に同時に配置でき、また、コンクリート打設の際の中空埋込体の浮き上がりを抑制できることから、複数の中空埋込体を支持筋で一列に連設してユニット化した中空埋込体ユニットが提案されている(特許文献1)。
【0005】
しかし、この中空埋込体ユニットにおいては、中空埋込体の表面から突設された支持筋取付片の支持筋挿通孔に支持筋を挿通しているだけであるため、中空埋込体は支持筋の長手方向に移動自在とされている。そのため、下記の問題が生じる。
・配置用空間のピッチに合わせて中空埋込体をあらかじめ位置決めする場合、施工の現場においてメジャー等で中空埋込体のピッチを1つ1つ計測しながら位置決めする必要があり、煩雑である。
・中空埋込体が支持筋の長手方向に移動しやすいため、せっかく中空埋込体を所定ピッチで位置決めしても、中空埋込体ユニットの各中空埋込体をそれぞれ配置用空間に配置する際、各中空埋込体の位置がずれやすく、すべての中空埋込体を同時に配置用空間に挿入することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3990380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、複数の中空埋込体を支持筋で一列に連設した際に、中空埋込体の所定ピッチでの位置決めと、中空埋込体の支持筋への固定とを同時に行うことができる中空埋込体ユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の中空埋込体ユニットは、複数の中空埋込体と、前記中空埋込体を所定ピッチで一列に連設する支持筋とを有する中空埋込体ユニットであって、
前記支持筋が、棒状の支持筋本体と、前記支持筋本体に所定ピッチで形成され、前記支持筋本体の長手方向に直交する方向に突出した複数のフランジ部とを有し、
前記中空埋込体が、内部に中空部を有する外殻と、前記外殻の表面に設けられた、前記支持筋を係止する支持筋係止部とを有し、
前記支持筋係止部が、前記外殻の表面に形成され、前記支持筋のフランジ部が係合した状態で前記支持筋をその長手方向に直交する方向にスライドさせるガイド溝と、前記外殻の表面から突設され、前記ガイド溝の長手方向にスライドする前記支持筋の支持筋本体が挿入される凹部を有するフック部と、前記外殻の表面に設けられ、前記フック部の凹部に挿入された前記支持筋本体に当接して前記フック部の凹部の開口部側への前記支持筋のスライドを規制する規制部とを有することを特徴とする。
【0009】
前記支持筋のフランジ部は、前記中空埋込体の数よりも2つ多くに形成され、それらのうち両側に位置するフランジ部は、前記支持筋本体の端部近傍に形成され、かつ該フランジ部とこれに最も近い内側のフランジ部との間隔が、前記所定ピッチの半分であることが好ましい。
前記規制部は、前記フック部の凹部に前記支持筋本体を挿入する際には、前記支持筋本体に押圧されて弾性変形するものであり、かつ前記フック部の凹部に前記支持筋本体が挿入された後には、前記支持筋本体に先端部が当接して前記支持筋のスライドを規制するものであることが好ましい。
【0010】
前記支持筋が2本であり、前記中空埋込体が、それぞれの支持筋に対応した前記支持筋係止部を有することが好ましい。
前記中空埋込体は、二分割可能な外殻と、二分割された外殻同士をその開口周縁部にて連結するヒンジ部と、前記外殻の中心を挟んで前記ヒンジ部とは反対側の開口周縁部の近傍に設けられた前記支持筋係止部とを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の中空埋込体ユニットによれば、複数の中空埋込体を支持筋で一列に連設した際に、中空埋込体の所定ピッチでの位置決めと、中空埋込体の支持筋への固定とを同時に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の中空埋込体ユニットの一例を示す斜視図である。
【図2】支持筋の一例を示す側面図である。
【図3】外殻が閉じた状態の中空埋込体の一例を示す上面図である。
【図4】外殻が閉じた状態の中空埋込体の一例を示す側面図である。
【図5】外殻が開いた状態の中空埋込体の一例を示す上面図である。
【図6】外殻が開いた状態の中空埋込体の一例を示す側面図である。
【図7】外殻が開いた状態にて中空埋込体ユニットを積み重ねた様子を示す斜視図である。
【図8】中空埋込体の支持筋係止部に支持筋を係止した状態を示す斜視図である。
【図9】2つの支持筋10を連結した際の支持筋10の端部付近を示す側面図である。
【図10】外殻が開いた状態の中空埋込体の他の例を示す斜視図である。
【図11】本発明の中空埋込体ユニットを用いた中空スラブ工法による中空コンクリートスラブの施工方法の一工程を示す斜視図である。
【図12】本発明の中空埋込体ユニットを用いた中空スラブ工法による中空コンクリートスラブの施工方法の一工程を示す斜視図である。
【図13】本発明の中空埋込体ユニットを用いた中空スラブ工法による中空コンクリートスラブの施工方法の一工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<中空埋込体ユニット>
図1は、本発明の中空埋込体ユニットの一例を示す斜視図である。
中空埋込体ユニット1は、2本の平行な支持筋10と;支持筋10の下方に吊設されることによって支持筋10の長手方向に所定ピッチで一列に連設された複数の球状の中空埋込体20とを有する。
【0014】
中空埋込体ユニット1における中空埋込体20間のピッチとは、中空埋込体20の中心と、この隣に位置する中空埋込体20の中心との間隔のことである。中空埋込体20間のピッチは、中空埋込体20の寸法よりも少し長くされる。このことによって、中空埋込体20は、この隣に位置する中空埋込体20と接触することはなく、所定の隙間をもって連設される。
【0015】
中空埋込体ユニット1における中空埋込体20間のピッチ、中空埋込体20間の隙間の幅、中空埋込体20の寸法は、最終的に形成される中空コンクリートスラブに要求される強度、遮音性等に応じて適宜設計される、中空コンクリートスラブの厚さ、中空コンクリートスラブの中空部の大きさ、中空部の間隔等に応じて、適宜決定すればよい。
中空埋込体ユニット1における中空埋込体20の数(中空埋込体ユニット1の長さ)は、中空埋込体ユニットの取扱性に応じて適宜決定すればよく、図示例の中空埋込体ユニット1においては、中空埋込体20の数は5つである。
【0016】
(支持筋)
支持筋10は、複数の中空埋込体20を所定ピッチで一列に連設するための部材であり、かつコンクリート打設時には上端筋に固定されて中空埋込体20の浮き上がりを抑制する部材でもある。
【0017】
支持筋10は、図2に示すように、棒状の支持筋本体12と;中空埋込体20のピッチと同じピッチで中空埋込体20の数と同じ数だけ支持筋本体12に形成され、支持筋本体12の長手方向に直交する方向に突出した係止用フランジ部14と;支持筋本体12の端部近傍に形成され、支持筋本体12の長手方向に直交する方向に突出した2つ連結用フランジ部16とを有する。
【0018】
支持筋本体12の長さや太さは、中空埋込体20の数に応じて適宜決定すればよい。
係止用フランジ部14の、支持筋本体12から突出した長さは、後述する中空埋込体20の支持筋係止部40を構成するガイド溝42に係合できる程度の長さであればよい。
【0019】
連結用フランジ部16の、支持筋本体12から突出した長さは、2つの支持筋10を連結する際に、一方の支持筋10の連結用フランジ部16と他方の支持筋10の連結用フランジ部16とを確実に突き合わせることができる程度の長さであればよい。
連結用フランジ部16とこれに最も近い係止用フランジ部14との間隔は、係止用フランジ部14間のピッチの半分とされる。
【0020】
(中空埋込体)
中空埋込体20は、中空コンクリートスラブ内における中空部を形成するための球状の部材である。
中空埋込体20の材料としては、プラスチック(ポリプロピレン等)が挙げられる。
中空埋込体20は、例えば、射出成形法等によってプラスチックを一体成形することによって製造される。
【0021】
中空埋込体20は、図3〜図6に示すように、内部に中空部を有し、半球状の第1の分割外殻22と半球状の第2の分割外殻24とに分割可能な外殻26と;第1の分割外殻22と第2の分割外殻24とをその開口周縁部27にて連結するヒンジ部28と;第1の分割外殻22の開口周縁部27に設けられた3つの係止爪部30と;第2の分割外殻24の開口周縁部27に設けられた3つの係止穴部32と;第1の分割外殻22および第2の分割外殻24の開口周縁部27から表面に沿って外殻26の分割面に直交する方向に延びる6つの荷崩れ防止リブ34と;第1の分割外殻22および第2の分割外殻24の開口周縁部27に形成された4つの嵌合凹部36と;外殻26の中心を挟んでヒンジ部28とは反対側の第1の分割外殻22および第2の分割外殻24の開口周縁部27の近傍の外殻の表面に設けられた2つの支持筋係止部40とを有する。
【0022】
第1の分割外殻22および第2の分割外殻24は、外殻26を分割面にて二分割した半球状の部材であり、それぞれの開口周縁部27を重ね合わせることによって中空部を有する外殻26を形成する。
分割面とは、外殻26が閉じている状態では、第1の分割外殻22の開口周縁部27と第2の分割外殻24の開口周縁部27との境界線に囲まれた境界面であり、外殻26が開いている状態では、第1の分割外殻22の開口周縁部27に囲まれた開口面および第2の分割外殻24の開口周縁部27に囲まれた開口面である。
【0023】
ヒンジ部28は、図5に示すように、外殻26を第1の分割外殻22および第2の分割外殻24に二分割して開いた状態において、第1の分割外殻22の開口周縁部27と第2の分割外殻24と開口周縁部27とが最も接近する、開口周縁部27上の点(以下、基準点Aという。)を挟むように離間して2箇所設けられる。
【0024】
ヒンジ部28には、その中央に、基準点Aと外殻26の中心とを結ぶ線に直交する方向に延びる筋状の薄肉部38が形成される。薄肉部38においてヒンジ部28を折り曲げることによって、図6に示すように、薄肉部38が回動軸となって、ヒンジ部28に接続する第1の分割外殻22および第2の分割外殻24が回動自在となり、その結果、外殻26が開閉自在となる。
【0025】
係止爪部30は、図5に示すように、第1の分割外殻22の開口周縁部27の基準点Aを含めて、開口周縁部27を円周四等分する4つの点のうち、基準点Aを除く3つの点Bにおける開口周縁部27から外方に突出して形成される。
係止穴部32は、図5に示すように、第2の分割外殻24の開口周縁部27の基準点Aを含めて、開口周縁部27を円周四等分する4つの点のうち、基準点Aを除く3つの点Cにおける開口周縁部27に形成される。
【0026】
外殻26を閉じて第1の分割外殻22および第2の分割外殻24を突き合わせた際、第1の分割外殻22の開口周縁部27の3つの係止爪部30と、これらに対応する位置に形成された、第2の分割外殻24の開口周縁部27の3つの係止穴部32とがそれぞれ係合し、第1の分割外殻22と第2の分割外殻24とが繋ぎ合わされる。
【0027】
荷崩れ防止リブ34は、第1の分割外殻22の開口周縁部27の基準点Aを含めて、開口周縁部27を円周四等分する4つの点のうち、支持筋係止部40近傍の点Bを除く2つの点Bおよび基準点Aにおける開口周縁部27から表面に沿って外殻26の分割面に直交する方向に延びて形成される板状部材である。また、荷崩れ防止リブ34は、第2の分割外殻24の開口周縁部27の基準点Aを含めて、開口周縁部27を円周四等分する4つの点のうち、支持筋係止部40近傍の点Cを除く2つの点Cおよび基準点Aにおける開口周縁部27から表面に沿って外殻26の分割面に直交する方向に延びて形成される板状部材である。
【0028】
荷崩れ防止リブ34は、図7に示すように、外殻26を開いた状態にて中空埋込体20を積み重ねた際に、下側の中空埋込体20の荷崩れ防止リブ34の端部と、上側の中空埋込体20の第1の分割外殻22および第2の分割外殻24の開口周縁部27とが当接し、下側の中空埋込体20の第1の分割外殻22および第2の分割外殻24の外面と上側の中空埋込体20の第1の分割外殻22および第2の分割外殻24の内面との間に適度な隙間を形成することによって、下側の中空埋込体20と上側の中空埋込体20とが密着して上側の中空埋込体20を取り外しにくくなることを防止するとともに、運搬の際には積み重ねた中空埋込体20の荷崩れを抑制するものである。
【0029】
嵌合凹部36は、外殻26の中心を挟んでヒンジ部28とは反対側の第1の分割外殻22および第2の分割外殻24の開口周縁部27に形成される。嵌合凹部36の、外殻26の分割面に直交する方向の延長線上には、後述する支持筋係止部40を構成するフック部44が存在する。
嵌合凹部36は、図7に示すように、外殻26を開いた状態にて中空埋込体20を積み重ねた際に、下側の中空埋込体20のフック部44が、上側の中空埋込体20の嵌合凹部36に嵌合し、フック部44と開口周縁部27との干渉を防止するとともに、運搬の際には積み重ねた中空埋込体20の荷崩れを抑制するものである。
【0030】
(支持筋係止部)
支持筋係止部40は、支持筋10を係止するものである。
支持筋係止部40は、外殻26の中心を挟んでヒンジ部28とは反対側の第1の分割外殻22および第2の分割外殻24の開口周縁部27の近傍の外殻の表面にそれぞれ設けられ、2つの支持筋係止部40は、2本の平行な支持筋10のそれぞれに対応する。
【0031】
支持筋係止部40は、図8に示すように、外殻26の表面に形成され、支持筋10の係止用フランジ部14が係合した状態で支持筋10をその長手方向に直交する方向にスライドさせるガイド溝42と;外殻26の表面から突設され、ガイド溝42の長手方向にスライドする支持筋10の支持筋本体12が挿入される凹部を有するフック部44と;外殻26の表面に設けられ、フック部44の凹部に挿入された支持筋本体12に当接してフック部44の凹部の開口部側への支持筋10のスライドを規制する規制部46とを有する。
【0032】
ガイド溝42は、外殻26の分割面に対して直交する方向に延びる。したがって、ガイド溝42に係止用フランジ部14が係合した支持筋10の長手方向は、外殻26の分割面と平行になる。
【0033】
フック部44は、ガイド溝42を挟むように、分割面に平行な方向に離間して2箇所設けられる。
フック部44の凹部は、外殻26の分割面に対して直交する方向に、かつ開口周縁部27側に向かって開口するように形成される。
【0034】
規制部46は、ガイド溝42を挟むように、分割面に平行な方向に離間して2箇所設けられる。
規制部46は、外殻26に固定された基端部から、フック部44の凹部に挿入された支持筋本体12に当接する先端部(自由端)に向かって、ガイド溝42の長手方向と平行に延びる板状部材である。また、規制部46の下方には、円弧状の段部48が形成されることによって、外殻26との間に間隙が形成されている。
【0035】
規制部46は、フック部44の凹部に支持筋本体12を挿入する際には、支持筋本体12に押圧されて下方に弾性変形するものであり、フック部44の凹部に支持筋本体12が挿入された後には、弾性変形が解除され、支持筋本体12に先端部が当接して支持筋10のスライドを規制するものであり、かつフック部44の凹部から支持筋本体12を離脱させる際には、作業者に押圧されて下方に弾性変形するものである。
【0036】
(作用効果)
以上説明した中空埋込体ユニット1にあっては、支持筋10が所定ピッチで形成された複数の係止用フランジ部14を有し、この係止用フランジ部14が、中空埋込体20の外殻26の表面に設けられた支持筋係止部40のガイド溝42に係合するため、複数の中空埋込体20を支持筋10で一列に連設した際に、中空埋込体20を所定ピッチで位置決めできる。
【0037】
また、支持筋10の係止用フランジ部14が、ガイド溝42に係合しているため、支持筋10のその長手方向への移動が規制され、さらに、支持筋10の支持筋本体12が、中空埋込体20の支持筋係止部40のフック部44の凹部に挿入され、かつ規制部46によってフック部44の凹部の開口部側への支持筋10のスライドが規制されているため、中空埋込体20を支持筋10に固定できる。
【0038】
また、支持筋10が、支持筋本体12の端部近傍に形成された2つの連結用フランジ部16を有し、連結用フランジ部16とこれに最も近い内側の係止用フランジ部14との間隔が、係止用フランジ部14間の所定ピッチの半分とされているため、図9に示すように、一方の支持筋10の連結用フランジ部16と他方の支持筋10の連結用フランジ部16とを突き合わせることによって、突き合わせ部分を挟んだ一方の支持筋10の係止用フランジ部14と他方の支持筋10の係止用フランジ部14との間隔が所定ピッチとほぼ同じになるように、2つの支持筋10を連結できる。
【0039】
また、規制部46が、フック部44の凹部に支持筋本体12を挿入する際には、支持筋本体12に押圧されて弾性変形するものであり、かつフック部44の凹部に支持筋本体12が挿入された後には、弾性変形が解除され、支持筋本体12に先端部が当接して支持筋10のスライドを規制するものであるため、支持筋係止部40への支持筋10の取り付けおよび固定を規制部46の弾性変形によって容易に行うことができる。
【0040】
また、規制部46が弾性変形するものであるため、フック部44の凹部から支持筋本体12を離脱させる際には、支持筋係止部40からの支持筋10の取り外しが、規制部46の弾性変形によって容易に行うことができる。例えば、一列に連設した複数の中空埋込体20のうち、中空埋込体20の不具合等の理由で一部の中空埋込体20を取り外す必要が生じた場合であっても、その中空埋込体20のみを支持筋10から取り外すことができる。
【0041】
また、支持筋10が2本であり、かつ中空埋込体20がそれぞれの支持筋10に対応した支持筋係止部40を有するため、支持筋10を回転軸とした中空埋込体20の回転が抑制され、コンクリート打設の際の中空埋込体20の浮き上がりを抑制できる。
【0042】
また、中空埋込体20が、二分割可能な外殻26と、二分割された第1の分割外殻22および第2の分割外殻24をその開口周縁部27にて連結するヒンジ部28を有するため、外殻26を開いた状態にて複数の中空埋込体20または中空埋込体ユニット1を積み重ねることができ、外殻26を閉じたままで運搬する場合よりも数多くの中空埋込体20または中空埋込体ユニット1を運搬できる。
【0043】
さらに、外殻26の中心を挟んでヒンジ部28とは反対側の開口周縁部27の近傍に支持筋係止部40が設けられているため、外殻26を開いた状態にて複数の中空埋込体ユニット1を積み重ねる場合には、図7に示すように、支持筋10が両側方に位置することになり、中空埋込体ユニット1を積み重ねる際に支持筋10が邪魔になることはない。また、外殻26を閉じた状態においては、図8に示すように、一列に連設された複数の中空埋込体20の上方に2本の支持筋10が平行に位置することになり、中空埋込体ユニット1の取扱性、および中空スラブ工法によって中空コンクリートスラブを形成する際の施工性が良好となる。
【0044】
(他の形態)
なお、本発明の中空埋込体ユニットは、図示例の中空埋込体ユニット1に限定はされない。
例えば、中空埋込体の形状は、図示例の球状に限定はされず、楕円体形状であってもよく、立方体形状であってもよい。ただし、コンクリート打設時の圧力に対する強度の点から、球状または楕円体形状が好ましく、球状が特に好ましい。
【0045】
また、支持筋の本数(支持筋係止部40の数)は、図示例の2本に限定はされず、1本であってもよく、3本以上であってもよい。ただし、支持筋10を回転軸とした中空埋込体20の回転が抑制され、コンクリート打設の際の中空埋込体20の浮き上がりを抑制できる点から、支持筋の本数は複数本が好ましく、中空埋込体20の連設のしやすさの点から、支持筋の本数は2本が特に好ましい。
【0046】
また、図10に示すように、中空埋込体20は、第1の分割外殻22および第2の分割外殻24のそれぞれの内面に、十字形の補強リブ49が設けられていてもよい。開口面側に向いた補強リブ49の端面は、外殻26が開いた状態の中空埋込体20を積み重ねやすい点から、外殻26の該面の曲率半径と同じ曲率半径とすることが好ましい。
補強リブ49を設けることによって、外殻26の歪が抑制され、中空埋込体20の外観がよくなる;外殻26が開いた状態の中空埋込体20を安定して積み重ねることができ、また、保管中の外殻26の変形も抑制される;コンクリート打設時の圧力に対する中空埋込体20の強度が増す;等の効果が発揮される。
【0047】
<施工方法>
以下、本発明の中空埋込体ユニットを用いた中空スラブ工法による中空コンクリートスラブの施工方法について説明する。
まず、図11に示すように、型枠パネル50の上に下端筋52および上端筋54をそれぞれ格子状に、かつ格子の升目の位置が高さ方向で一致するように配筋し、下端筋52同士が交差する箇所および上端筋54同士が交差する箇所において結束する。さらに、上端筋54の位置決めを行うためのフックアンカー56を複数用意し、フックアンカー56の上端のフックを上端筋54に引っ掛けた状態で、フックアンカー56の下端のアンカーを型枠パネル50の取付孔に挿し込み、固定する。
【0048】
ついで、図12に示すように、下端筋52の格子の1つの升目とこれに対応する上端筋54の格子の1つの升目とそれぞれの升目の角同士を結ぶ仮想線とで形成される略立方体の配置用空間のそれぞれに中空埋込体20が1つ1つ挿入されるように、上端筋54の上方から中空埋込体ユニット1を複数配置し、中空埋込体ユニット1の支持筋10が上端筋54の上に掛け渡された状態にて、支持筋10と上端筋54とが交差する箇所において結束する。
【0049】
ついで、図13に示すように、下端筋52、中空埋込体ユニット1および上端筋54が完全に埋まるように型枠パネル50の上にコンクリート58を打設する。
コンクリートが硬化した後、型枠パネル50を脱型し、中空コンクリートスラブが完成する。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の中空埋込体ユニットは、中空スラブ工法によって中空コンクリートスラブを施工する際の、中空埋埋込体として有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 中空埋込体ユニット
10 支持筋
12 支持筋本体
14 係止用フランジ部
16 連結用フランジ部
20 中空埋込体
22 第1の分割外殻
24 第2の分割外殻
26 外殻
27 開口周縁部
28 ヒンジ部
40 支持筋係止部
42 ガイド溝
44 フック部
46 規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中空埋込体と、
前記中空埋込体を所定ピッチで一列に連設する支持筋と
を有する中空埋込体ユニットであって、
前記支持筋が、
棒状の支持筋本体と、
前記支持筋本体に所定ピッチで形成され、前記支持筋本体の長手方向に直交する方向に突出した複数のフランジ部と
を有し、
前記中空埋込体が、
内部に中空部を有する外殻と、
前記外殻の表面に設けられた、前記支持筋を係止する支持筋係止部と
を有し、
前記支持筋係止部が、
前記外殻の表面に形成され、前記支持筋のフランジ部が係合した状態で前記支持筋をその長手方向に直交する方向にスライドさせるガイド溝と、
前記外殻の表面から突設され、前記ガイド溝の長手方向にスライドする前記支持筋の支持筋本体が挿入される凹部を有するフック部と、
前記外殻の表面に設けられ、前記フック部の凹部に挿入された前記支持筋本体に当接して前記フック部の凹部の開口部側への前記支持筋のスライドを規制する規制部と
を有する、中空埋込体ユニット。
【請求項2】
前記支持筋のフランジ部が、前記中空埋込体の数よりも2つ多くに形成され、それらのうち両側に位置するフランジ部は、前記支持筋本体の端部近傍に形成され、かつ該フランジ部とこれに最も近い内側のフランジ部との間隔が、前記所定ピッチの半分である、請求項1に記載の中空埋込体ユニット。
【請求項3】
前記規制部が、前記フック部の凹部に前記支持筋本体を挿入する際には、前記支持筋本体に押圧されて弾性変形するものであり、かつ前記フック部の凹部に前記支持筋本体が挿入された後には、前記支持筋本体に先端部が当接して前記支持筋のスライドを規制するものである、請求項1または2に記載の中空埋込体ユニット。
【請求項4】
前記支持筋が、2本であり、
前記中空埋込体が、それぞれの支持筋に対応した前記支持筋係止部を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の中空埋込体ユニット。
【請求項5】
前記中空埋込体が、
二分割可能な外殻と、
二分割された外殻同士をその開口周縁部にて連結するヒンジ部と、
前記外殻の中心を挟んで前記ヒンジ部とは反対側の開口周縁部の近傍に設けられた前記支持筋係止部と
を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の中空埋込体ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−220036(P2011−220036A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92381(P2010−92381)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)