説明

中空孔を有する陶板

【課題】寒冷地における破損を抑制することのできる中空孔を有する陶板を提供すること。
【解決手段】板厚BTが20mm以下で形成されると共に、設置状態における両側面6間にかけて水平方向に開けられる中空孔10を有する陶板1において、中空孔10は、高さhが12mm以上で形成する。陶板1の設置状態における両側面6間にかけて水平方向に開けられる中空孔10を、このような形状にすることにより、中空孔10に入り込んだ水が流出し易い形態にすることができる。このため、中空孔10内に水が入り込んだ場合でも、この水は中空孔10の開口部から流出するため、中空孔10に水が留まることを抑制することができる。これにより、陶板1が低温の環境に晒される場合でも、中空孔10内で水が凍結することを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空孔を有する陶板に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の壁面を施工する際における施工法として、焼成した陶板等を用いることにより壁面の施工の容易性を向上させたり、外観を向上させたりすることができる施工法がある。この施工法では、複数の陶板等を配列して設けることによって壁面の施工を行うが、この場合に用いる陶板として、中空孔が形成されている陶板を用いる場合がある。例えば、特許文献1に記載されたユニット建材から成る壁構造では、建材の軽量化や資源の有効活用を図ることを目的として、中空の孔である中空部が複数形成される中空無機建材を用いており、この中空無機建材を複数個でユニット化して用いることにより、施工の容易性や外観の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−155614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、陶板の向きは、中空孔の内部にゴミ等が入り込むことを防止するために、中空孔が水平方向に向う向きで配設される場合が多くなっているが、中空孔が水平方向に形成された場合でも、中空孔に水が入り込む場合がある。このように、中空孔に水が入った場合、その水が中空孔を塞ぐように、中空孔内が満水状態になる場合がある。例えば、中空孔の開口部分に位置する水の表面張力が重力に勝った場合、中空孔の中の水は外部に流出しなくなるので、中空孔内は満水状態になる。
【0005】
一方、このような中空孔が形成された陶板は、建物が建設される場所に関わらず使用されるため、寒冷地でも使用される場合がある。また、このような寒冷地では、水が凍結し易くなるため、陶板が有する中空孔の内部に水が溜まっている場合も、中空孔内の水は凍結する。
【0006】
しかし、水が凍結した場合、水は凍結膨張をするため、中空孔内の水が凍結した場合も凍結膨張するが、中空孔の内部が満水状態で水が凍結する場合、凍結膨張によって体積が大きくなる際における逃げ場がない状態で凍結する。このため、陶板には、中空孔内から陶板を外側に押し広げようとする力が発生し、この力が大きい場合には、陶板には中空孔を伝うように亀裂が生じる場合がある。このように、中空孔を有する陶板を寒冷地で使用する場合、水の凍結によって陶板が破損する可能性があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、寒冷地における破損を抑制することのできる中空孔を有する陶板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る中空孔を有する陶板は、板厚が20mm以下で形成されると共に、設置状態における両側面間にかけて水平方向に開けられる中空孔を有する陶板において、前記中空孔は、高さが12mm以上で形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る中空孔を有する陶板は、板厚が20mm以下で形成されると共に、設置状態における両側面間にかけて水平方向に開けられる中空孔を有する陶板において、前記中空孔は、高さが11mm以上で、且つ、前記板厚方向における幅が2mm以上7mm以下であり、さらに、高さ方向に直線の辺を有することを特徴とする。
【0010】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る中空孔を有する陶板は、板厚が20mm以下で形成されると共に、設置状態における両側面間にかけて水平方向に開けられる中空孔を有する陶板において、前記中空孔は、高さが10mm以上11mm未満で、且つ、前記板厚方向における幅が6mm以上7mm以下であり、さらに、角部の半径が1.5mm以下であることを特徴とする。
【0011】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る中空孔を有する陶板は、板厚が20mm以下で形成されると共に、設置状態における両側面間にかけて水平方向に開けられる中空孔を有する陶板において、前記中空孔は、高さが10mm以上11mm未満で、且つ、前記板厚方向における幅が2mm以上6mm未満であり、さらに、角部の半径が1.0mm以下であることを特徴とする。
【0012】
上記のこれらの発明では、陶板の設置状態における両側面間にかけて水平方向に開けられる中空孔を、上述した各形状にすることにより、中空孔に入り込んだ水が流出し易い形態にすることができる。このため、中空孔内に水が入り込んだ場合でも、この水は中空孔の開口部から流出するため、中空孔に水が留まることを抑制することができ、陶板が低温の環境に晒される場合でも、中空孔内で水が凍結することを抑制することができる。この結果、寒冷地における破損を抑制することができる。
【0013】
また、上記中空孔を有する陶板において、前記中空孔は、内壁に凹凸がないことが好ましい。
【0014】
この発明では、中空孔の内壁に凹凸がないため、中空孔内に水が入り込んだ場合でも、中空孔内を水が流れ易くすることができ、水が中空孔内から流出する際に、流出し易くすることができる。従って、中空孔に水が留まることを、より確実に抑制することができ、中空孔内で水が凍結することを抑制することができる。この結果、寒冷地における破損を、より確実に抑制することができる。
【0015】
また、上記中空孔を有する陶板において、前記板厚方向における前記陶板の外面から前記中空孔までの厚さが5.1mm以上であることが好ましい。
【0016】
この発明では、中空孔は、陶板の外面から中空部までの厚さが5.1mm以上になっているため、焼成前の陶板の生地における外面と中空孔との間の部分の強度を確保することができる。これにより、生地を作成後、生地を寝かせて焼成するまでの間に、中空部と外面との間の生地が中空部側に垂れることを抑制することができる。この結果、陶板の外面に凹みができることを抑制することができ、意匠性に優れた陶板にすることができる。
【0017】
また、上記中空孔を有する陶板において、前記中空孔は、前記中空孔の形成方向に見た場合における形状が、前記陶板の設置状態における前記陶板の表面側は前記表面方向に凸となり、前記陶板の前記表面の反対側の面である裏面側は直線状となって形成されていることが好ましい。
【0018】
この発明では、中空孔の表面側を表面の方向に凸となるように形成するため、陶板の生地を、表面側を上側にして寝かせて焼成する場合に、中空孔と表面との間の生地が下側に垂れ下がることを、より確実に抑制することができる。この結果、より確実に意匠性に優れた陶板にすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る中空孔を有する陶板は、寒冷地における破損を抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、実施形態に係る中空孔を有する陶板の斜視図である。
【図2】図2は、図1のA矢視図である。
【図3−1】図3−1は、中空孔の解析結果についての説明図である。
【図3−2】図3−2は、中空孔の解析結果についての説明図である。
【図3−3】図3−3は、中空孔の解析結果についての説明図である。
【図4】図4は、中空孔が長孔の場合における説明図である。
【図5】図5は、中空孔が楕円の場合における説明図である。
【図6】図6は、実施形態に係る陶板が有する中空孔の変形例に係る説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る中空孔を有する陶板の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0022】
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係る中空孔を有する陶板の斜視図である。図2は、図1のA矢視図である。同図に示す陶板1は、粘土等を高温で焼き固めて焼成することにより、略矩形状の板状の形状で形成されており、板厚BTが20mm以下の厚さで形成されている。このため、陶板1は、外面が、矩形状の形状で形成されると共に互いに反対方向を向く向きで設けられた2つの平面部2と、2箇所の平面部2の外周部分同士の間に、この外周に沿って形成される側面6と、によって形成されている。つまり、側面6は、それぞれ異なる方向に向った4箇所に形成されており、また、陶板1の板厚BTは、2箇所の平面部2同士の距離になっている。
【0023】
また、陶板1には、板厚方向における内側、即ち、2箇所の平面部2同士の間に、中空孔10が複数形成されている。この中空孔10は、4箇所に形成されている外周面5のうち、1箇所の外周面5から、この外周面5の反対側に位置する外周面5にかけて形成されている。このように形成される中空孔10は、平面部2の面の形成方向に、複数が平行に並んで形成されている。
【0024】
また、この陶板1は、建物の壁面等に用いられ、壁面等への設置時には、板が立設する向きで設置される。つまり、4箇所に形成される外周面5のうち、互いに反対方向に位置する2箇所の外周面5が、横方向における両端に位置し、他の2箇所の外周面5が、上下方向における両端に位置する向きで設置される。また、このように設置される陶板1は、2箇所の平面部2のうち、一方の平面部2が外部から視認することができる向きで設置されるが、この外部から視認可能な平面部2は表面3となっており、反対側に位置する平面部2は裏面4となっている。即ち、表面3は、裏面4と比較して仕上げ状態が良好になって形成されている。
【0025】
また、中空孔10は、4箇所の外周面5のうち、この陶板1の設置状態における、横方向の両端に位置する外周面5同士の間にかけて形成されている。即ち、4箇所の外周面5のうち、横方向の両端に位置する外周面5は側面6として設けられており、中空孔10は、陶板1の設置状態における両側面6間にかけて水平方向に開けられている。また、この方向に形成されている中空孔10は、複数が形成されているが、複数の中空孔10は、陶板1の設置状態における上下方向に並んで平行に形成されている。
【0026】
また、複数の中空孔10は、全て2箇所の平面部2同士の間に形成されているが、平面部2から中空孔10までの厚さtは、全て5.1mm以上になっている。即ち、陶板1の板厚方向における陶板1の外面から中空孔10までの厚さが5.1mm以上になっている。複数の中空孔10は、このように平面部2から5.1mm以上離間しており、さらに、内壁に凹凸がない状態で、両側面6間にかけて形成されている。
【0027】
また、中空孔10は、当該中空孔10の形成方向に見た場合における形状が、陶板1の板厚方向よりも、平面部2の形成方向に沿った方向の方が大きくなっている。つまり、陶板1の設置状態における上下方向と陶板1の板厚方向で見た場合に、中空孔10は、板厚方向における大きさよりも、上下方向における大きさの方が大きくなっている。
【0028】
このように、上下方向と板厚方向とで大きさが異なって形成される中空孔10は、上下方向の大きさと板厚方向の幅が、相対的に所定の範囲内となり、さらに、中空孔10の形状も、上下方向の大きさや板厚方向の幅に応じた所定の形状となって形成されている。具体的には、複数形成される全ての中空孔10は、陶板1の使用時における設置状態、即ち、水平方向に開けられている向きの中空孔10内を水で満たした場合に、水の表面張力に重力が打ち勝って中空孔10の水が外部に流出することが可能な形状で形成されている。
【0029】
図3−1〜図3−3は、中空孔の解析結果についての説明図である。図4は、中空孔が長孔の場合における説明図である。図5は、中空孔が楕円の場合における説明図である。次に、水平方向に開けられている中空孔10内を水で満たした場合に、中空孔10の中の水が外部に流出することが可能な中空孔10の形状の解析結果について説明する。発明者らは、陶板1の使用時の設置状態における上下方向の高さが300mm、水平方向における幅が900mmで、板厚BTが18mmの陶板1の両側面6間にかけて形成されている中空孔10内を水で満たした場合における水の流出状態を、CAEによって解析した。図3−1〜図3−3は、その解析結果を示す図表になっている。
【0030】
この解析では、陶板1の板厚方向における中空孔10の幅Wを、2〜7mmの間で1mm間隔で設定し、上下方向における高さを4〜16mmの間で1mm間隔で設定し、それぞれの大きさの場合について水の流出状態の解析を行った。
【0031】
また、この解析では、中空孔10の高さhと幅Wのみでなく、中空孔10の形状も異ならせて解析を行った。即ち、それぞれの大きさの中空孔10を、当該中空孔10の形成方向に見た場合における形状が長孔状に形成されている場合(図4参照)と、楕円状に形成されている場合(図5参照)とについて解析を行った。
【0032】
なお、この場合における長孔は、中空孔10の高さh方向における両端がそれぞれ1つの円弧によって形成されているのみでなく、高さh方向における両端に、幅W方向に延びる直線状の辺を有している場合も含まれる。つまり、この場合における長孔は、高さh方向における両端は、図4の(a)に示すように1つの円弧で形成されていてもよく、図4の(b)に示すように幅W方向に延びる辺を設け、この幅W方向に延びる辺と高さh方向に延びる辺とが交差する角部を円弧状にすることによって形成されていてもよい。中空孔10を長孔状に形成する場合は、高さh方向に延びる直線状の辺を有していれば、高さh方向における両端の形状は問わない。
【0033】
また、中空孔10が長孔の場合には、高さh方向に延びる辺の両端に位置する円弧の半径rを1.0〜3.0mmの間で0.5mm間隔で設定し、それぞれの大きさの場合についても、水の流出状態の解析を行った。
【0034】
この水の流出状態の解析では、中空孔10内に水を満たした場合に、水が流出しないものをNGとし、形状的にほぼ確実に水が流出せず、いずれの条件の場合もNGのものを「×」とする。また、各部の寸法が正確に設定した寸法になっている場合は水が流出するが、陶板1に3mm以上の側反りがあった場合に水が流出しないものは、条件によってNGの場合があるため「△」とする。これらに対し、陶板1に側反りがあっても水が流出する場合には、条件に関わらず水が流出するため、この場合の中空孔10の形態は「○」とする。
【0035】
つまり、中空孔10に水が満たされた場合には、中空孔10の開口部分には、中空孔10内の水を流出させる力である重力と、この水を中空孔10内に留まらせる力である水の表面張力とが作用するが、この力のバランスは、主に中空孔10の高さhによって変化する。即ち、中空孔10の高さhが比較的低く、中空孔10内の水全体に作用する重力があまり大きくない場合は、相対的に重力よりも表面張力の方が大きくなり、水は流出し難くなる。水の流出状態の解析では、このような場合は「×」になる。反対に、中空孔10の高さhが比較的高く、中空孔10内の水全体に作用する重力が大きくなることにより、相対的に表面張力に対して重力が大きくなる場合は、中空孔10内の水は流出し易くなる。水の流出状態の解析では、このような場合に「○」になる。また、表面張力と重力との相対的な力のバランスが拮抗し、理想的な条件の場合には水が流出し易くなるが、理想的な条件から外れると水が流出し難くなる場合には、この水の流出状態の解析では「△」になる。
【0036】
これらのように、中空孔10からの水の流出の解析は、中空孔10の形態によって3つの種類に分類され、この解析結果は、図3−1〜図3−3で示したようになる。なお、図中において「−」で示してある部分は、形状的に実現できない形状を示している。例えば、長孔の中空孔10においては、半径rの大きさが、幅Wの1/2を超える大きさになっているものを示している。また、楕円の中空孔10においては、高さhが6mm以下のものを示している。
【0037】
本実施形態に係る中空孔10を有する陶板1では、これらの水の流出状態の解析のうち、解析結果が「○」となる形態を有する中空孔10の形状が適用される。具体的には、中空孔10の高さhが12mm以上の場合には、幅Wの大きさに関わらず水の流出状態が良好になるため、高さhが12mm以上の場合は、幅Wの大きさに関わらず適用される。
【0038】
また、中空孔10の高さhが12mm未満の場合は、中空孔10が楕円状に形成されている場合には、図3−1〜図3−3に示すように、条件によって水が流出し難くなる場合があるため、中空孔10の高さhが11mm以上12mm未満の場合は、所定の条件の場合に、この範囲の高さhの中空孔10が適用される。つまり、中空孔10の高さhが11mm以上の場合には、幅Wが2mm以上7mm以下で、且つ、長孔状の形状で形成されている場合、即ち、高さh方向に直線の辺を有している場合に適用される。
【0039】
また、中空孔10の高さhが11mm未満の場合は、水の流出が困難になる条件がさらに増加する。具体的には、図3−1〜図3−3に示すように、中空孔10の高さhが10mm以上11mm未満の場合は、高さh方向の辺と幅W方向の辺とが交差する角部の半径rが1.5mmの場合に水の流出状態が良好になるのは、中空孔10の幅Wが6mmの場合と7mmの場合のみになる。このため、本実施形態に係る陶板1が有する中空孔10としては、高さhが10mm以上11mm未満で、且つ、陶板1の板厚方向における幅Wが6mm以上7mm以下であり、さらに、角部の半径rが1.5mm以下の場合に適用される。
【0040】
また、中空孔10の高さhが10mm以上11mm未満で角部の半径rが1.0mmの場合に水の流出状態が良好になるのは、中空孔10の幅Wが2mm以上6mm未満の範囲内の場合のみになる。このため、本実施形態に係る陶板1が有する中空孔10としては、高さhが10mm以上11mm未満で、且つ、陶板1の板厚方向における幅Wが2mm以上6mm未満であり、さらに、角部の半径rが1.0mm以下の場合に適用される。
【0041】
この実施形態に係る中空孔10を有する陶板1は、以上のごとき構成からなり、次に、この陶板1の製造時の方法について説明する。この陶板1を製造する場合には、まず粘土等の生地を、焼き固める際における伸縮を考慮して最終的に所望の形状になるように形成する。即ち、板状の粘土等に、中空孔10に該当する孔を開けて生地を作成する。次に、このように作成した生地を、平面部2が水平になる向きで寝かせた状態で、生地を焼き固める。その際に、表面3側を汚さないように表面3を上側にし、裏面4側を下側にして焼き固める。陶板1は、このように、孔を開けた板状の生地を焼き固めて焼成することにより、中空孔10を有する状態にして製造する。
【0042】
次に、このように製造した中空孔10を有する陶板1の作用について説明する。陶板1は、建物の壁部等を形成する建材として使用されるが、この陶板1を使用する際には、陶板1は平面部2が、当該陶板1を設置する壁面に沿って垂直になり、当該陶板1に複数形成される中空孔10が水平方向に延在する向きで設置する。その際に、陶板1は、設置後も表面3側が外部から視認可能な向きとなって設置される。
【0043】
陶板1は、このように壁部を構成し、壁部の一部として用いられる場合が多く、その際に、側面6が外部に対して開放された状態で設置される場合があるが、陶板1の側面6には、中空孔10が開口している。このため、陶板1の設置後に雨が降った場合、雨水が中空孔10の開口部分から中空孔10内に入り込み、中空孔10内が水で満たされる場合がある。このような場合でも、中空孔10は上述したように、内部の水が流出する状態の解析結果に基づき、水が流出し易い形態で形成されている。
【0044】
つまり、本実施形態に係る陶板1が有する中空孔10は、高さhが比較的高く、中空孔10内に入り込んだ水に作用する重力が、相対的に表面張力に対して大きくなることにより水が流出し易い形態で形成されている。このため、中空孔10内が水で満たされる場合でも、この水は中空孔10内から流出する。
【0045】
また、陶板1を使用して建造される建物は、場合によっては寒冷地に建築される場合があり、この場合、建物は低温の環境に晒され、陶板1も低温の環境に晒される状態になる場合がある。このような場合でも、陶板1に形成される中空孔10には、水が溜まらないため、中空孔10内では水は凍結せず、陶板1は、中空孔10内に水が溜まっていない状態で、温度が低下する。
【0046】
以上の本実施形態に係る中空孔10を有する陶板1は、陶板1の設置状態における両側面6間にかけて水平方向に開けられた中空孔10を、水の流出状態の解析結果に基づき、中空孔10に入り込んだ水が流出し易い形態で形成している。具体的には、中空孔10は、高さhが12mm以上で形成されている、または、高さhが11mm以上で、且つ、幅Wが2mm以上7mm以下であり、さらに、高さh方向に直線の辺を有して形成されている、または、高さhが10mm以上11mm未満で、且つ、幅Wが6mm以上7mm以下であり、さらに、角部の半径rが1.5mm以下で形成されている、または、高さhが10mm以上11mm未満で、且つ、幅Wが2mm以上6mm未満であり、さらに、角部の半径rが1.0mm以下で形成されている。このため、中空孔10内に水が入り込んだ場合でも、この水は中空孔10の開口部から流出するため、中空孔10に水が留まることを抑制することができ、陶板1が低温の環境に晒される場合でも、中空孔10内で水が凍結することを抑制することができる。この結果、寒冷地における陶板1の破損を抑制することができる。
【0047】
また、中空孔10は、内壁に凹凸がないため、中空孔10内に水が入り込んだ場合でも、水は中空孔10内を流れ易くなり、水が中空孔10内から流出する際に、流出し易くなる。従って、中空孔10に水が留まることを、より確実に抑制することができ、中空孔10内で水が凍結することを抑制することができる。この結果、寒冷地における陶板1の破損を、より確実に抑制することができる。
【0048】
また、中空孔10は、陶板1の平面部2から中空孔10までの厚さtが5.1mm以上になっているため、生地を作成後、焼成するまでの間に、中空孔10と平面部2との間の生地が中空孔10側に垂れることを抑制することができる。つまり、生地を焼成する場合には、表面3を上側にし、裏面4を下側にして生地を寝かせた状態にして焼成するが、焼成前の生地は軟らかくなっている。このため、平面部2から中空孔10までの厚さtが薄過ぎる場合、寝かせた状態の生地における中空孔10の上側に位置する部分が下側に、即ち、中空孔10側に垂れる場合がある。このように、中空孔10と平面部2との間にある生地が中空孔10側に垂れると、平面部2におけるこの部分に凹みができるが、本実施形態に係る陶板1では、平面部2から中空孔10までの厚さtが5.1mm以上になっている。このため、焼成する前の軟らかい生地における、平面部2と中空孔10との間の部分の強度を確保することができるため、焼成する際に生地を寝かせた場合でも、平面部2と中空孔10との間に生地が中空孔10側に垂れることを抑制することができる。この結果、平面部2に凹みができることを抑制することができ、意匠性に優れた陶板1にすることができる。
【0049】
なお、上述した陶板1が有する中空孔10は、中空孔10の形成方向に見た場合における形状が長孔状のものと楕円状のものとを説明しているが、中空孔10は、厳密にこれらの形状で形成されていなくてもよい。図6は、実施形態に係る陶板が有する中空孔の変形例に係る説明図である。中空孔10は、例えば図6に示すように、中空孔10の形成方向に見た場合における形状が、陶板1の表面3側は表面3方向に凸となり、陶板1の裏面4側は直線状となって形成されていてもよい。このように、中空孔10の表面3側を表面3の方向に凸となるように形成することにより、陶板1の生地を、表面3側を上側にして寝かせて焼成する場合に、中空孔10と表面3との間の生地が下側に垂れ下がり、表面3に凹みができることを、より確実に抑制することができる。この結果、より確実に意匠性に優れた陶板1にすることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 陶板
2 平面部
3 表面
4 裏面
5 外周面
6 側面
10 中空孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚が20mm以下で形成されると共に、設置状態における両側面間にかけて水平方向に開けられる中空孔を有する陶板において、
前記中空孔は、高さが12mm以上で形成されていることを特徴とする中空孔を有する陶板。
【請求項2】
板厚が20mm以下で形成されると共に、設置状態における両側面間にかけて水平方向に開けられる中空孔を有する陶板において、
前記中空孔は、高さが11mm以上で、且つ、前記板厚方向における幅が2mm以上7mm以下であり、さらに、高さ方向に直線の辺を有することを特徴とする中空孔を有する陶板。
【請求項3】
板厚が20mm以下で形成されると共に、設置状態における両側面間にかけて水平方向に開けられる中空孔を有する陶板において、
前記中空孔は、高さが10mm以上11mm未満で、且つ、前記板厚方向における幅が6mm以上7mm以下であり、さらに、角部の半径が1.5mm以下であることを特徴とする中空孔を有する陶板。
【請求項4】
板厚が20mm以下で形成されると共に、設置状態における両側面間にかけて水平方向に開けられる中空孔を有する陶板において、
前記中空孔は、高さが10mm以上11mm未満で、且つ、前記板厚方向における幅が2mm以上6mm未満であり、さらに、角部の半径が1.0mm以下であることを特徴とする中空孔を有する陶板。
【請求項5】
前記中空孔は、内壁に凹凸がないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の中空孔を有する陶板。
【請求項6】
前記板厚方向における前記陶板の外面から前記中空孔までの厚さが5.1mm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の中空孔を有する陶板。
【請求項7】
前記中空孔は、前記中空孔の形成方向に見た場合における形状が、前記陶板の設置状態における前記陶板の表面側は前記表面方向に凸となり、前記陶板の前記表面の反対側の面である裏面側は直線状となって形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の中空孔を有する陶板。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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