説明

中空管及びそれを用いたガラス溶融装置

【課題】本発明の目的は、加熱と冷却による膨張と収縮を吸収し、また、肉厚の偏差による破損の発生を抑制することができる中空管を提供することである。また、蛇腹式とする機械加工の工程を省き、作製容易な中空管を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る中空管は、上流側槽3から下流側槽7へ溶融ガラスを流すための白金若しくは白金合金で形成された中空管5において、中空管の流入側の端部が上流側槽に固定され、中空管の流出側の端部が下流側槽に接合されずに嵌め込まれており、かつ、中空管の流出側の外表面及び中空管の流出側の端部と下流側槽との嵌合部を外側から覆った状態で中空管及び下流側槽の両方に接合された白金若しくは白金合金製の漏れ防止手段12を有し、漏れ防止手段が排液抜き15及び空気抜き16を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスを溶解するときに溶融、清澄、攪拌などの各槽間を接続し、連続的に流出することを可能にした溶融ガラス用中空管に関する。詳しくは、溶融、清澄、攪拌などの各槽間を接続するときに、ガラス流入側の中空管を接合固定し、ガラス流出側の中空管を接合固定しない溶融ガラス用中空管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス溶融装置において、溶融、清澄、攪拌などの各槽間を接続した中空管が設けられており、例えば清澄槽や攪拌槽へ溶融ガラスを移動させる。このような構成とすることで、ガラスの溶解を連続的に行なうことが可能となる。
【0003】
ガラス溶融装置は、ガラスの溶解が行われるときは、1000℃以上の熱が加わり、ガラスの溶解が行われていないときは、常温になる。その結果、加熱と冷却が繰り返し行われることになり、各槽間を接続した中空管も、溶解したガラスの通過の有無によって、加熱と冷却が繰り返し行われることになる。
【0004】
加熱と冷却が繰り返し行われると、中空管が膨張と収縮を繰り返すため、接続された槽の壁が変形し、若しくは、中空管自体が変形するという問題が起こる。そこで、凹凸等の形状が設けられたベローズ状の中空管を用いることによって、中空管の膨張分若しくは収縮分を吸収させ、前記問題を解決しようとする技術がある(例えば、特許文献1を参照。)。中空管をベローズ状とすれば、伸縮性及びバネ性を持たせることができる。その結果、中空管が管軸方向に膨張したときには、その膨張に逆らうことなく膨張させることができ、一方収縮したときには、その収縮に逆らうことなく収縮させることができるため、膨張と収縮の繰り返しによる金属疲労を抑制することができ、中空管の破損を防止することができる。
【0005】
同様の技術として、ベローズの具体的構造を開示した文献もある(例えば、特許文献2又は3を参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開平8‐67518号公報
【特許文献2】特開2006‐206439号公報
【特許文献3】特開2006‐315894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1〜3に示されたベローズ状の中空管は、伸縮性及びバネ性を持たせるため、凹凸等の形状を形成するための機械加工を行なうことが必要になる。そして、機械加工によって凹凸の形状を形成する時に、凹凸の箇所において肉厚の偏差が生じてしまう。肉厚の偏差が生じると、肉厚が厚い箇所では膨張と収縮による寸法の変化の吸収が起こりにくくなり、一方、肉厚が薄い箇所では膨張と収縮による寸法の変化の吸収が起こりやすくなるため、膨張と収縮による金属疲労が肉厚の薄い箇所にかかりやすくなる。この結果、中空管に伸縮性及びバネ性を持たせても、肉厚の薄い箇所から破損が生じてしまう。
【0008】
凹凸の箇所において肉厚の偏差が生じないように加工できれば問題ないが、凹部、凸部、傾斜部等、箇所によって加工時の力のかかり方や力の加減が異なるため、人的な要因及び機械的な要因を調整したとしても、中空管の肉厚を均一に制御することは容易でない。また、ベローズでは、ガラス素地の成分変更時に凹部に滞留する旧成分素地の除去に時間と余分な素地を流すロスが生じる。
【0009】
そこで本発明の目的は、加熱と冷却による膨張と収縮を吸収し、また、肉厚の偏差による破損の発生を抑制することができる中空管を提供することである。また、蛇腹式とする機械加工の工程を省き、作製容易な中空管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、従来の蛇腹式中空管で膨張と収縮を吸収するのではなく、中空管のガラス流出側を流出槽に固定しない方式を採用し、かつ、固定しないことによる溶融ガラスの漏れに対して、漏れ防止手段を設けることによって、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係る中空管は、上流側槽から下流側槽へ溶融ガラスを流すための白金若しくは白金合金で形成された中空管において、前記中空管の流入側の端部が前記上流側槽に固定され、前記中空管の流出側の端部が前記下流側槽に接合されずに嵌め込まれており、かつ、前記中空管の流出側の外表面及び前記中空管の流出側の端部と前記下流側槽との嵌合部を外側から覆った状態で前記中空管及び前記下流側槽の両方に接合された白金若しくは白金合金製の漏れ防止手段を有し、該漏れ防止手段が排液抜き及び空気抜きを有していることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る中空管は、壁表面の法線方向に凹凸のない平坦な壁面を有していることが好ましい。中空管を平坦な壁面で形成するのであれば、機械加工時の力の加減を調整しやすく、部材に係る力が均一になる。そして複雑な形状でないため、側面の肉厚の偏差が少ない。また、側面の肉厚の偏差が少ないため、加熱と冷却による膨張と収縮の負荷が均一になり、破損を抑制することができる。さらに、平坦な壁面であるため、ガラス流のよどみが少なく、ガラス種の変更(種類換え)を手早く行なうことができる。
【0012】
本発明に係る中空管では、前記中空管の流出側の端部の外表面は、セラミックス系材料からなる膜がコーティングされていることが好ましい。外側の装置部品との熱による拡散接合を抑制することができる。また、中空管の流出側の端部が外側の装置部品と拡散接合してしまうと中空管の膨張と収縮による応力がかかってしまうが、このような事態を防止できる。
【0013】
本発明に係る中空管では、前記漏れ防止手段は、環状の筒形状を有し、同心円状に波状加工がされていることが好ましい。漏れ防止手段は、中空管自体を支持するほどの強度を必要としないが、漏れた溶融ガラスを封じ込めておくために中空管と下流側槽に接合されているため、同心円状の波状加工を設けることで中空管の伸び縮みに追随しやすくなる。
【0014】
本発明に係るガラス溶融装置は、複数の槽を有し、上流側槽から下流側槽へ溶融ガラスを流すために本発明に係る中空管が前記上流側槽に固定され、かつ、前記下流側層に接合されずに嵌め込まれていることを特徴とする。下流側槽に対して中空管が固定されずに嵌め込まれているため、中空管の伸び縮みによる熱変形を防止しつつ、下流側槽の溶融ガラスの漏れを抑制することができる。
【0015】
本発明に係るガラス溶融装置では、前記中空管の流出側の端部を加熱する加熱手段を有することが好ましい。ガラス流出側におけるガラスの凝固を防止できるため、中空管の破損を防止することができる。
【0016】
本発明に係るガラス溶融装置では、前記下流側槽は、溶融ガラスが流入する開口部を有し、該開口部から外側に向けて起立するパイプを設け、前記中空管は、前記パイプの中に挿し込まれており、前記中空管の外表面の金属と前記パイプの内表面の金属とは直接接面していない状態であることが好ましい。金属同士の拡散接合が予防される。パイプと中空管との隙間には、前回流したガラスが固化するが、再度加熱して溶融させることによって、澱みガラスが若干の隙間より少しずつ漏れ防止手段に移行し、排液抜きによって排出される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、中空管のガラス流入側を接合固定し、中空管のガラス流出側を接合固定しないことによって、加熱による膨張及び冷却による収縮が中空管の管軸方向に生じても何ら制限されることなく自由に行なえる。このため、槽の外壁の変形若しくは中空管自体の変形が生じることがない。また、漏れ防止手段を設けることで、非接合部からのガラス漏れの抑制や、漏れたガラスの回収が可能である。また、中空管の作製には蛇腹式とする機械加工の工程がないため作製容易であり、かつ、側面の肉厚の偏差が少ないため金属疲労による薄い部分の破損も生じにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。なお、同一部材・同一部位には同一符号を付した。
【0019】
図1に、本実施形態に係るガラス溶融装置の断面概略図を示す。図1において、槽と槽とを接続するのは本実施形態に係る中空管である。図1に示すように 本発明に係るガラス溶融装置100は、複数の槽(溶解槽2,清澄槽3,攪拌槽7)を有し、上流側槽である清澄槽3から下流側槽である攪拌槽7へ溶融ガラスを流すために本実施形態に係る中空管5が上流側槽(清澄槽)3に固定され、かつ、下流側層(攪拌槽)7に接合されずに嵌め込まれている。図2は、図1のA−A’線断面図である。
【0020】
槽は、例えば、溶解槽、清澄槽又は攪拌槽であるが、この他に脱泡槽も含まれる。図1では、溶解槽2、清澄槽3及び攪拌層7の3つの槽を示した。溶解槽2と清澄槽3とは、一つの槽を隔壁1で仕切ることによって分けられている。なお、隔壁1の下方は仕切りが開放となっている。溶融槽2に投入されたガラス原料が溶解し、溶解したガラスは隔壁1の下を潜って清澄槽3へ流れる。
【0021】
上流側槽に相当する清澄槽3の側壁には開口部があり、この開口部の周端には、外側へ突き出すようにパイプ4が接合されている。パイプ4に、中空管5の流入側の端部が固定されている。固定方法は例えば溶接である。清澄したガラスは、パイプ4を介して中空管5を流れる。図1において、中空管5とパイプ4との溶接箇所11は、ガラス漏れを防止するために周回して溶接されていることが好ましい。
【0022】
ここで中空管5は、壁表面の法線方向に凹凸のない平坦な壁面を有していることが好ましい。例えば、円筒、三角柱、四角柱又は六角柱などの管状である。管は、曲げられていてもよい。また、拡径若しくは縮径していてもよい。壁表面の法線方向に凹凸がある形状、例えば特許文献1〜3に記載のベローズ状の場合、ガラスの溜りが多くなるが、壁表面の法線方向に凹凸のない平坦な壁であればガラスの溜りも僅かである。しかも、機械加工時の力の加減を調整しやすく、部材に係る力が均一になる。そして複雑な形状でないため、側面の肉厚の偏差が少なく、金属疲労もかかりにくくなる。
【0023】
一方、下流側槽に相当する攪拌槽7の側壁には溶融ガラスが流入する開口部があり、この開口部の周端には、外側へ突き出すようにパイプ6が接合されている。中空管5の流出側の端部は、パイプ6の中に挿し込まれている。ここで、嵌め込まれているのみであり、中空管5の流出側の端部は攪拌槽7に接合されていない。清澄したガラスは、さらに中空管5を介して、中空管5に接合されていないパイプ6を通り、攪拌槽7へ移動する。
【0024】
ここで、本発明に係るガラス溶融装置100は、図1及び図2に示すように、中空管5の流出側の外表面及び中空管5の流出側の端部と下流側槽7との嵌合部を外側から覆った状態で中空管5及び下流側槽7のパイプ6の両方に接合された白金若しくは白金合金製の漏れ防止手段12を有する。中空管5と漏れ防止手段12の材質は、同じであることが好ましい。ここで中空管5はパイプ6に嵌め込まれている。中空管5が嵌めこまれていることから、中空管5の外表面とパイプ6の内表面との製作上生じる若干の隙間から溶融ガラスが僅かに漏れるおそれがある。そこで、ガラスが漏れたとしても、一定量以上のガラスが漏れないように漏れ防止手段12を設ける。漏れ防止手段12は、例えば、外形が、球状若しくは楕円球状或いはこれらの扁平形状、又は、六角柱状、八角柱状等の角柱形状で、かつ、内部が空間を有する形状である。特に環状の筒形状を有していることが好ましく、中空管5とは図1の接面部位13aにおいて溶接等で接合されていることが好ましい。また、漏れ防止手段12は、パイプ6とも図1の接面部位13bにおいて溶接等で接合されていることが好ましい。接面部位13a,13bは図2に示すように環状であるため、周回して接合する。これによって、漏れ防止手段12と中空管5との接合部及び漏れ防止手段12とパイプ6との接合部からのガラスの漏れが防止できる。
【0025】
中空管5自体は、伸縮してもパイプ6と接合されていないため、パイプ6からは応力を受けずに、変形することはない。しかし、漏れ防止手段12は、中空管5及びパイプ6の両方に接合されているため、中空管5の伸縮に伴い、その伸縮方向に応力を受ける。中空管5及びパイプ6も同様に漏れ防止手段12からこれに反する伸縮方向の応力を受けることとなるが、筒の主軸方向の強度は高いため、変形はされにくい。一方、漏れ防止手段12は、中空管5とパイプ6との嵌合部を外側から覆っているため、曲げ応力がかかる場合がある。そこで、図2に示すように漏れ防止手段12に、同心円状の波状加工を施すことが好ましい。同心円状に山線14aと谷線14bとが交互に配置されるように波状加工をすることで、中空管5の伸縮によって受ける応力を緩和することができる。なお、漏れ防止手段12自体は、ガラスが漏れようとする圧力に耐える強度を有していれば充分であるため、凹凸の箇所において肉厚の偏差が存在しても許容される。
【0026】
漏れ防止手段12には排液抜き15が設けられている。好ましくは漏れ防止手段12の底部に排液抜き15を設ける。連続製造中は、例えば排液抜き15に栓をしておくことで、漏れ防止手段12の容積以上のガラス漏れが防止できる。排液抜き15から取り出されたガラスは、同種のガラスであれば、再度溶解槽に戻すことで再利用できる。また、連続製造中に栓をせずに、連続的に漏れたガラスを排出してもよい。また、漏れ防止手段12には、空気抜き16が設置される。好ましくは、漏れ防止手段12の天部に設ける。空気抜き16は漏れ防止手段12内に滞留する空気の膨張収縮に対応して、漏れ防止手段12の内部空間に空気の出入りを可能とする。空気抜き16が無いと、温度変動により漏れ防止手段12内の圧力が変動し、破損に至る事がある。
【0027】
中空管5の流出側の端部の外表面は、セラミックス系材料からなる膜がコーティングされていることが好ましい。外側の装置部品は白金系材料で形成されるが、白金系材料同士が接触していると、1000℃以上の加熱において、相互に拡散する現象が発生して接合してしまう。接合されると、中空管5がパイプ6に固定されてしまい、固定されると、膨張と収縮によって中空管5に負荷がかかり、破損してしまう。そのため、中空管5の外表面は、少なくともパイプ6が重なる部分においてセラミックス系材料で被覆することが好ましく、パイプ6に中空管5が接合されるのを抑制する。
【0028】
セラミックス系材料としては、例えば、アルミナ系、ムライト系、チタニア系等である。いずれも公知の成膜法、例えばCVD法やPVD法によって膜付けする。また、これらの材料と中空管の間に酸化チタン(TiO)や酸化タンタル(Ta)等の中間層を設けてもよい。
【0029】
図1において、中空管5は、管軸方向がほぼ水平となっているが、上流側槽3から下流側槽7への流れを作るために下流側に向かうにつれて管軸方向を斜め下方に向けてもよい。また、上流側槽3が下流側槽7の上方にある場合においては、管軸方向を垂直方向に向けてもよい。
【0030】
図1のガラス溶融装置において、加熱装置8を用いて中空管5とパイプ6の重複箇所を加熱する。例えば中空管の流出側の端部を加熱することが好ましい。中空管5とパイプ6との固定は、溶解したガラスが中空管5とパイプ6の隙間に侵入し、凝固してしまうことによって発生してしまう為、中空管5とパイプ6の重複箇所に加熱装置を設置し、少なくとも、ガラスの溶解時は加熱することによって、中空管5はパイプ6に固定されず、中空管5の膨張と収縮の自由度を確保することができる。
【0031】
このように中空管5をパイプ4に溶接等で接合し、パイプ6に接合しないことによって、ベローズの加工を必要とせず、中空管の側面が平行な面でベローズ状となっていなくても膨張、収縮に対応できる。
【0032】
さらに、中空管5の外表面の金属とパイプ6の内表面の金属とは直接接面していない状態であることが好ましい。例えば、中空管5の外表面又はパイプ6の内表面の少なくとも一方にセラミック系材料をコーティングすれば、直接接面がなされず、拡散接合が予防される。或いは、中空管5の外表面とパイプ6の内表面との間に僅かに隙間を設け、接面しないようにすることで拡散接合を予防する。このようにすることで、中空管5の伸縮が生じても、パイプ6が中空管5の膨張と収縮の自由度を低下させない。このとき、パイプ6と中空管5との段差には、前回流したガラスが固化し、段差に溜り易い。しかし、再度加熱して溶融させることによって、澱みガラスが若干の隙間より少しずつ排出され、最終的に、漏れ防止手段12の排液抜き15から排出される。また、僅かな隙間であれば、不純物の混入はほとんどない。
【0033】
図1では、中空管5が清澄槽3から攪拌槽7にガラスを流す形態を示したが、上流側槽から下流側槽へ溶融ガラスを流す目的を達する限り本実施形態に係る中空管であり、例えば脱泡槽を上流側槽若しくは下流側槽として途中に組み込んでもよい。
【0034】
中空管5の組成は、周辺の装置と同様に、白金又は白金合金で形成される。1300℃程度までの溶解時に使用することができる。また、大気雰囲気中の酸素やガラス成分の酸素に対する耐性を有する。白金合金は、ロジウム(Rh)、金(Au)等の各金属をそれぞれ5〜20wt%含み、或いは/さらには、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化サマリウム(Sm)、酸化ユウロピウム(Eu)、酸化イットリウム(Y)、酸化ハフニウム(HfO)又は酸化トリウム(ThO)の各酸化物等をそれぞれ0.05〜2wt%含む。また、これらの元素を複数含むものも適用できる。
【0035】
攪拌槽7のガラスは、攪拌装置9で攪拌し、流出部10から流出される。
【0036】
排液抜き15から、排液を流し出すために、排液抜き15を加熱する加熱手段(不図示)を設けることが好ましい。ガラスが、排液抜き15中を流れるだけで冷却固化してしまう場合があり、ガラスの冷却固化を防止する為である。同様、空気抜き16にも加熱手段を設置することが好ましい。
【0037】
排液抜き15及び空気抜き16の加熱手段の例としては、排液抜き15、空気抜き16のそれぞれの両端に電極を設置し、電極に接続した電気供給装置により電流を流し、排液抜き15の全体と空気抜き16の全体を加熱することによって、排液抜き15中に凝固しているガラスを溶解し、排出することができる。また、空気抜き16の気道を保つことができる。
【0038】
排液抜き15の加熱手段は、前回溶解した古いガラスと種類が異なる新しいガラスを溶解する場合等に作動させ、空気抜き16の加熱手段は、ガラスの溶解時に作動させる。
【0039】
漏れ防止手段12の中にあるガラスは、排液抜き15から重力によって自然に流し出すか、或いは、漏れ防止手段12の内部空間を加圧することによって強制的に流し出す。
【実施例】
【0040】
図1及び図2に示した構成を有するガラス溶融装置を用いて、実施例1〜11及び比較例1〜4の各中空管の評価を行なった。中空管の組成は表1に示した。表1の「側面形状」の欄において、「平面」とは外形が4角柱状の中空管、「蛇腹」とはベローズ状の中空管、「円筒」とは円筒状の中空管を意味する。また、「流出側被覆」の欄において、「有」は、アルミナを被覆したことを意味し、「無」は、非被覆を意味する。また、「流出側接合」の欄の「有」は、中空管5とパイプ6とを溶接したことを意味し、「無」は、非固定を意味する。また、「流出側加熱」の欄の「有」は、加熱装置8を作動させたことを意味し、「無」は、加熱装置8を作動させなかったことを意味する。また、「漏れ防止手段」の欄の「筒形」とは、環状の筒形状の漏れ防止手段12を中空管5の外表面とパイプ6の外表面に溶接したことを意味し、「無」は、漏れ防止手段12を設けなかったことを意味する。なお、「排液抜き」、「空気抜き」は「漏れ防止手段」を設置している場合には、「有」とし、「漏れ防止手段」を設置していない場合には、「無」とする。溶融するガラスはアルミノシリケートガラスとし、1週間の連続製造を行ない、装置を停止、冷却し、再度、1週間連続製造を行なった。条件を表1にまとめた。なお、表1の材質について、例えばPt‐20%Rhと表記した場合、Ptの組成はRhの残部である80質量%となるが、Ptの組成の記載は省略した。他の組成についても同様の表記とした。
【0041】
【表1】

【0042】
実施例1〜実施例11は、使用後の中空管を確認したが、破損等は確認されず、さらに使用することが可能であった。
【0043】
比較例1は、使用後の中空管を確認したが、蛇腹の凹部に破損等が確認された。破損箇所の肉厚は、他の箇所の肉厚より薄く、機械加工による肉厚偏差が、膨張と収縮による薄い箇所の負荷を増大させたものと考えられる。
【0044】
比較例2は、使用後の中空管を確認したが、破損等が確認されたと共に、外部のパイプ6と接合されていた。溶解時の熱により、中空管の白金とパイプの白金が相互に拡散し、接合、固定されてしまった。これによって、中空管の膨張と収縮の自由度がなくなり、負荷が増大したことによって破損等が発生したものと考えられる。
【0045】
比較例3は、使用後の中空管を確認したが、破損等が確認された。中空管の流出側を溶接していたため、膨張と収縮の自由度がなく、負荷が増大したことによって破損等が発生したものと考えられる。
【0046】
比較例4は、使用後の中空管を確認したが、破損等が確認されたと共に、外部のパイプ6が溶解ガラスを介して接合されていた。加熱装置を作動させなかったため、溶解時にガラスが中空管5とパイプ6の隙間に侵入し、冷却時に固まってしまった。このために中空管5とパイプ6とは、凝固したガラスにより接合、固定され、中空管の膨張と収縮の自由度がなくなり、負荷が増大したことによって破損等が発生したものと考えられる。
【0047】
比較例5は、使用中の中空管を確認したが、中空管5とパイプ6の隙間からガラスが流出していることが確認された。僅かな隙間でもガラスが流出されるため、漏れ防止手段の必要性が確認された。
【0048】
実施例を通じて、接合されていない中空管5とパイプ6の隙間からガラスが流出され、その抑制手段として漏れ防止手段が設けることが必要であることが確認されたが、漏れ防止手段も容量に限界があり、ガラスの除去を行なうことが必要である為、ガラスの除去手段である排液抜き及び空気抜きを漏れ防止手段に設けることによって、容易に澱みガラスが除去できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態に係るガラス溶融装置の断面概略図を示す。
【図2】A−A’線断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 隔壁
2 溶解槽
3 清澄槽
4 清澄槽側のパイプ
5 中空管
6 攪拌槽側のパイプ
7 攪拌槽
8 加熱装置
9 攪拌装置
10 流出部
11 溶接箇所
12 漏れ防止手段
13a,13b 接面部位
14a 波状加工の山線
14b 波状加工の谷線
15 排液抜き
16 空気抜き
100 ガラス溶融装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側槽から下流側槽へ溶融ガラスを流すための白金若しくは白金合金で形成された中空管において、
前記中空管の流入側の端部が前記上流側槽に固定され、前記中空管の流出側の端部が前記下流側槽に接合されずに嵌め込まれており、かつ、
前記中空管の流出側の外表面及び前記中空管の流出側の端部と前記下流側槽との嵌合部を外側から覆った状態で前記中空管及び前記下流側槽の両方に接合された白金若しくは白金合金製の漏れ防止手段を有し、該漏れ防止手段が排液抜き及び空気抜きを有していることを特徴とする中空管。
【請求項2】
前記中空管は、壁表面の法線方向に凹凸のない平坦な壁面を有していることを特徴とする請求項1に記載の中空管。
【請求項3】
前記中空管の流出側の端部の外表面は、セラミックス系材料からなる膜がコーティングされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の中空管。
【請求項4】
前記漏れ防止手段は、環状の筒形状を有し、同心円状に波状加工がされていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の中空管。
【請求項5】
複数の槽を有し、上流側槽から下流側槽へ溶融ガラスを流すために請求項1、2、3又は4に記載の中空管が前記上流側槽に固定され、かつ、前記下流側層に接合されずに嵌め込まれていることを特徴とするガラス溶融装置。
【請求項6】
前記中空管の流出側の端部を加熱する加熱手段を有することを特徴とする請求項5に記載のガラス溶融装置。
【請求項7】
前記下流側槽は、溶融ガラスが流入する開口部を有し、該開口部から外側に向けて起立するパイプを設け、前記中空管は、前記パイプの中に挿し込まれており、前記中空管の外表面の金属と前記パイプの内表面の金属とは直接接面していない状態であることを特徴とする請求項5に記載のガラス溶融装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−67616(P2009−67616A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235847(P2007−235847)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【特許番号】特許第4076578号(P4076578)
【特許公報発行日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000136561)株式会社フルヤ金属 (48)