説明

中空糸モジュール

【課題】筒状部の両端部におけるポッティング剤の供給位置をより安定させることが可能な中空糸モジュールを提供する。
【解決手段】中空糸モジュール1は、中空糸膜Aが収容される筒状部10と、筒状部10の両側の各開口端を閉鎖する蓋部11とを有し、筒状部10の両端部において中空糸膜Aの両端部がポッティング剤Bにより封止されている。各蓋部11には、第1のノズル20が形成され、筒状部10の両端部のポッティング剤Bより内側には、第2のノズル21が形成されて当該第2のノズル21のノズル開口部21aが形成されている。筒状部10のノズル開口部21aの外側端Eにおける内径よりも、筒状部10の端10aにおける内径が大きくなっている。筒状部10の端10aを含む最端部には、筒状部10の端10aと内径が同じで一定の大同径部44が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
中空糸モジュールは、中空糸膜を用いて液体から所定成分を分離するものであり、血液処理、水処理、ガス分離処理などに多く用いられている。
【0003】
中空糸モジュールは、束状の中空糸膜が収容される筒状部と、筒状部の両側の各開口端を閉鎖する蓋部を有しており、筒状部の両端部において中空糸膜の両端部がポッティング剤により封止されている。両側の各蓋部には、一次側のノズルが形成されており、筒状部の両端部付近には、二次側のノズルが形成されている。
【0004】
上記中空糸モジュールの製造プロセスでは、例えば先ず筒状部の内部に多数本の束状の中空糸膜が挿入され、筒状部の各開口端に一旦キャップが嵌め込まれる。次に例えば筒状部が回転され、その状態で、キャップの流入口から筒状部内にポッティング剤が注入される(特許文献1参照。)。これにより、筒状部の端部において中空糸膜の端部同士の間と、中空糸膜の端部と筒状部の内周面との間でポッティング剤が硬化して、中空糸膜の両端部が封止される。その後、中空糸膜の両端部の余分な部分がポッティング剤のある位置で切断され、中空糸膜の両側に開口端が形成される。その後、筒状部の各開口端に一次側のノズル付きの蓋部が取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-279374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記中空糸モジュールの製造プロセスのポッティング剤供給工程においては、例えばキャップに管路を通じて接続されたポッティング剤供給装置から、筒状部の両端部内の狭小な領域にポッティング剤を供給する必要がある。このため、ポッティング剤の供給量は少なく、ポッティング剤供給装置によりポッティング剤の供給量を厳密に安定して制御するのが難しい。また、ポッティング剤は粘性流体であり、供給開始時に、その供給スピードにバラツキが生じるため、少量の供給量では、そのバラツキが大きくなり、ポッティング剤の供給量を制御するのが難しくなる。特に、中空糸モジュールの性能を確認するための試用品は、性能試験時に用いられる高価な試験液の使用量を減らすため、通常使用される市販の中空糸モジュール(通常品)よりもサイズが小さいものが用いられるが、その試用品の中空糸モジュールの製造時には、ポッティング剤の供給量が極めて少量になるため、その供給量を厳密に制御することは非常に難しくなる。
【0007】
そして、ポッティング剤の供給量が設定よりも多すぎると、ポッティング剤が二次側のノズルのノズル開口部まで達し、二次側のノズルを塞いで、二次側のノズルの通液性が低下する恐れがある。また、ポッティング剤の供給量が設定により少なすぎると、中空糸膜の十分な封止が行われず、例えば中空糸膜の一次側と二次側との間に液体の漏れが生じる恐れがある。さらに、ポッティング剤の供給量がばらついてポッティング剤の内側端の位置が不安定になると、ポッティング剤の内側の中空糸膜の有効長(ポッティング剤のない部分の長さ)がばらつき、中空糸膜の膜面積がばらつくため、中空糸モジュールの性能に大きな影響を与えることになる。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、筒状部の両端部におけるポッティング剤の供給位置(内側端の位置)をより安定させることが可能な中空糸モジュールを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明は、中空糸膜が収容される筒状部と、前記筒状部の両側の各開口端を閉鎖する蓋部とを有し、前記筒状部の両端部において前記中空糸膜の両端部がポッティング剤により封止されている中空糸モジュールであって、前記各蓋部には、第1のノズルが形成され、前記筒状部の両端部の前記ポッティング剤より内側には、第2のノズルが形成されて当該第2のノズルのノズル開口部が形成され、前記筒状部のノズル開口部の外側端における内径よりも、前記筒状部の端における内径が大きくなっているものである。
【0010】
本発明によれば、筒状部のノズル開口部の外側端よりも筒状部の端の内径が大きいため、筒状部の端部内の容積が大きくなる。これにより、筒状部の端部に供給されるポッティング剤の供給量を増やすことができ、その供給量のバラツキが小さくなるため、ポッティング剤の供給位置をより安定させることができる。この結果、ポッティング剤によって中空糸膜を確実に封止できる。また、ポッティング剤が第2のノズルに入り込んで硬化することを防止し、第2のノズルの通液性を確保できる。さらに中空糸膜の有効長のばらつきを抑えて中空糸モジュールの性能を安定させることができる。
【0011】
前記筒状部の端を含む最端部には、前記筒状部の端と内径が同じで一定の大同径部が形成されていてもよい。かかる場合、筒状部の端部内の容積がより大きくなり、その分ポッティング剤の供給量を増やすことができる。これにより、ポッティング剤の供給量のバラツキが小さくなり、ポッティング剤の供給位置をより安定させることができる。
【0012】
前記大同径部の内側には、前記ノズル開口部の外側端側に向かって次第に内径が小さくなるテーパ部が形成されていてもよい。かかる場合、例えばポッティング剤の供給時に混入した気泡が、滞留することなくテーパ部に沿って移動するので、ポッティング剤から排出され易くなる。よって、筒状部の端の内径をノズル開口部の外側端の内径よりも大きくした場合であっても、ポッティング剤内に気泡が残留することが抑制され、ポッティング剤の強度や封止性が確保される。
【0013】
前記テーパ部と前記ノズル開口部の外側端との間には、前記ノズル開口部の外側端と内径が同じで一定の小同径部が形成されていてもよい。かかる場合、小同径部にポッティング剤の内側端を位置させることにより、第2のノズルのノズル開口部の外側端からポッティング剤までの筒状部の内径が一定になる。これにより、そのノズル開口部の外側端からポッティング剤までの筒状部内に液体が流入した場合でも当該液体が第2のノズルから排出されやすくなる。また、第2のノズルと筒状部を通じる液体の通液性が向上する。
【0014】
前記筒状部のノズル開口部の外側端と前記大同径部との間には、前記ノズル開口部の外側端と内径が同じで一定の小同径部が形成されていてもよい。かかる場合、小同径部にポッティング剤の内側端を位置させることにより、ノズル開口部の外側端からポッティング剤までの筒状部の内径が一定になる。これにより、そのノズル開口部の外側端からポッティング剤までの筒状部内に液体が流入した場合でも当該液体が第2のノズルから排出されやすくなる。また、第2のノズルと筒状部を通じる液体の通液性が向上する。
【0015】
前記筒状部のノズル開口部の外側端から前記筒状部の端に近づくにつれて内径が次第に大きくなっていてもよい。かかる場合、筒状部の端部の内周面が傾斜するので、ポッティング剤の供給時に混入した気泡が当該傾斜に沿って移動しポッティング剤から排出され易くなる。よって、筒状部の端の内径をノズル開口部の外側端の内径よりも大きくした場合であっても、ポッティング剤内に気泡が残留することが抑制され、ポッティング剤の強度や封止性が確保される。
【0016】
また、中空糸モジュールは、前記筒状部の端から前記筒状部のノズル開口部の外側端側に向けて内径が次第に小さくなるテーパ部が形成され、前記テーパ部と前記ノズル開口部の外側端との間には、前記ノズル開口部の外側端と内径が同じで一定の小同径部が形成されていてもよい。かかる場合、ポッティング剤内に気泡が残留することを抑制しポッティング剤の強度や封止性を確保できる。また、筒状部内に流入した液体が筒状部の端部付近で滞ることなく第2のノズルから排出されやすくなる。また、第2のノズルと筒状部を通じる液体の通液性を向上できる。
【0017】
上記いずれかに記載の中空糸モジュールは、ポッティング部の長さの最大長さが2.0mm〜15mmである試用品であってもよい。試用品の場合は、ポッティング剤の供給量が極めて少なく当該供給量の制御が難しいため、筒状部の端の内径を大きくしてポッティング剤の供給量を増やすメリットは大きい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、筒状部の両端部におけるポッティング剤の供給位置をより安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】中空糸モジュールの概略を示す説明図である。
【図2】筒状部の端部の内周面の形状を示す縦断面図である。
【図3】筒状部の端部に遠心力を用いてポッティング剤を供給している状態を示す説明図である。
【図4】ノズル開口部の外側端と封止部との間の領域を示す中空糸モジュールの端部の説明図である。
【図5】大同径部と小同径部との間にテーパ部を有する筒状部の端部を示す説明図である。
【図6】大同径部とノズル開口部の外側端との間にテーパ部を形成した筒状部の端部を示す説明図である。
【図7】ノズル開口部の外側端から筒状部の端に向けて次第に内径が大きくなる筒状部の端部を示す説明図である。
【図8】テーパ部と小同径部を有する筒状部の端部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる中空糸モジュール1の構成の概略を示す縦断面の説明図である。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
中空糸モジュール1は、例えば図1に示すように中空糸膜Aが長手方向(軸方向)に収容される筒状部10と、筒状部10の両側の開口端を閉鎖する蓋部11を有している。
【0022】
中空糸膜Aは、多数本からなる束状になって筒状部10に収容されている。
【0023】
筒状部10の両端部において中空糸膜Aの両端部は、ポッティング剤Bにより封止されている。ポッティング剤Bは、円柱状に硬化しており、中空糸膜A同士の間と、中空糸膜Aと筒状部10の内周面と間に充填され、中空糸膜Aの両端部を封止している。なお、中空糸膜Aの両端は、ポッティング剤Bの外側端面に開口している。
【0024】
各蓋部11の内側には、中空糸膜Aの端が開口する端部空間Gが形成されている。各蓋部11の中央には、第1のノズル20が形成され、中空糸モジュール1の外部と蓋部11内の端部空間Gが連通している。
【0025】
筒状部10の両端部付近には、それぞれ第2のノズル21が形成されている。第2のノズル21は、ポッティング剤Bよりも内側に形成され、中空糸モジュール1の外部と、筒状部10内の中空糸膜Aの外周空間Cが連通している。
【0026】
かかる構成により、例えば蓋部11の一方の第1のノズル20から流入した第1の液体は、端部空間Gを通過して中空糸膜A内に流入し、中空糸膜Aの中空部を通って反対側の端部空間Gに流出し、他方の第1のノズル20から外部に流出する。また、筒状部10の一方の第2のノズル21から流入した第2の液体は、中空糸膜Aの外周空間Cを通過して他方の第2のノズル21から外部に流出する。第1のノズル20から流入した第1の液体は、各中空糸膜Aの管内を通る際に、特定成分が管の側壁の微細な孔を通過し外周空間Cに流出し、第2の液体と共に第2のノズル21から外部に流出される。こうして第1の液体から特定成分が分離される。また、他の例として、第1のノズル20から流入した液体が中空糸膜Aを通って濾過され、そのろ過液が第2のノズル21から排出されてもよく、その逆で第2のノズル21から流入した液体が、中空糸膜Aを通って濾過され第1のノズル20から排出されてもよい。また、第1のノズル20と第2のノズル21は、それぞれ2つずつあるが、中空糸モジュール1の用途に応じて、それぞれ片方のみを用いてもう片方が封鎖されていてもよい。
【0027】
ここで、筒状部10の内周面30の形状について説明する。内周面30は、例えば中央に細径部40を有し、中央から両方の外側に向けてテーパ部41、小同径部42、垂直部43及び大同径部44をこの順番で有している。
【0028】
細径部40は、内周面30の中央に形成され、内径が一定若しくは若干の射出成型用の抜き勾配があり、最も小さく(抜き勾配がある場合は、中央付近が最も小さく)なっている。小同径部42は、内径が一定で細径部40よりも大きくなっている。第2のノズル21は、小同径部42に開口している。テーパ部41は、細径部40と小同径部42の間に存在し斜めに傾斜している。大同径部44は、筒状部10の端10aを含む最端部に位置し、内径が一定で小同径部42よりも大きくなっている。垂直部43は、小同径部42と大同径部44に対し垂直に形成され、小同径部42と大同径部44の間に存在している。なお、小同径部42、大同径部44についても、若干の射出成型用の抜き勾配があってもよい。
【0029】
したがって、この中空糸モジュール1の筒状部10では、図2に示すように第2のノズル21のノズル開口部21aの外側端Eの内径D1よりも、筒状部10の端10aの内径D2が大きくなっている。また、筒状部10の端10aを含む最端部には、径が一定の大同径部44が形成され、大同径部44とノズル開口部21aの外側端Eとの間には、ノズル開口部21aの外側端Eと同じ内径の小同径部42が形成されている。ポッティング剤Bは、小同径部42におけるノズル開口部21aの外側端Eより外側の位置から、大同径部44の外側の端まで形成されている。なお、内径D1の内径D2に対する比率は、10%〜80%が好ましい。また、大同径部44の長さL1は、例えば小同径部42の大同径部44からノズル開口部21aの外側端Eまでの長さL2よりも長く設定されている。
【0030】
次に中空糸モジュール1の製造プロセスにおけるポッティング剤Bの形成工程について説明する。中空糸モジュール1の製造時には、図3に示すように筒状部10に中空糸膜Aが収容された状態で、筒状部10の両端部に、蓋部11と異なるキャップ60が嵌め込まれる。キャップ60には、管路61を通じてポッティング剤供給装置62が接続される。筒状部10の長手方向に直角で筒状部10の中心を通る中心線Fを中心に、筒状部10が回転され、その状態で、所定量のポッティング剤Bが、キャップ60の流入口から筒状部10内に供給される。筒状部10内に流入したポッティング剤Bは、遠心力で筒状部10の両端部に集められて硬化する。これにより、第2のノズル21のノズル開口部21aの外側端Eよりも外側にポッティング剤Bが形成される。ポッティング剤Bの内側端面は、小同径部42上に位置する。その後、ポッティング剤Bの筒状部10の端10aより外側に出た部分が切断され、その後キャップ60の代わりに蓋部11が取り付けられて、中空糸モジュール1となる。
【0031】
以上の実施の形態によれば、筒状部10の端10aの内径D2が、第2のノズル21のノズル開口部21aの外側端Eの内径D1よりも大きいため、筒状部10の端部内の容積が大きくなる。これにより、筒状部10の端部に供給されるポッティング剤Bの供給量を増やすことができ、その供給量のバラツキが小さくなるため、ポッティング剤Bの供給位置(内側端の位置)をより安定させることができる。この結果、ポッティング剤Bによって中空糸膜Aを確実に封止できる。また、ポッティング剤Bが第2のノズル21に入り込んで硬化することを防止し、第2のノズル21の通液性を確保できる。さらに中空糸膜Aの有効長のばらつきを抑えて中空糸モジュール1の性能を安定させることができる。
【0032】
筒状部10の端10aを含む最端部には、筒状部10の端と内径が同じで一定の大同径部44が形成されているので、筒状部10の端部内の容積がより大きくなり、その分ポッティング剤Bの供給量を増やすことができる。これにより、ポッティング剤Bの供給量のバラツキを小さくすることができ、ポッティング剤Bの供給位置をより安定させることができる。
【0033】
筒状部10のノズル開口部21aの外側端Eと大同径部44との間には、ノズル開口部21aの外側端Eと内径が同じで一定の小同径部42が形成されている。かかる場合、小同径部42にポッティング剤Bの内側端を位置させることにより、ノズル開口部21aの外側端Eからポッティング剤Bまでの筒状部10の内径が一定になる。これにより、例えば図4に示すようにノズル開口部21aの外側端Eからポッティング剤Bまでの筒状部10内(図4の領域R)に液体が流入した場合でも当該液体が第2のノズル21から排出されやすくなる。また、第2のノズル21と筒状部10の外周空間Cを通る液体の通液性が向上する。
【0034】
以上の実施の形態で記載した筒状部10の内周面30において、図5に示すように小同径部42と大同径部44との間にテーパ部70が形成されていてもよい。かかる場合、ポッティング剤Bの供給時に混入した気泡が、滞留することなくテーパ部70に沿って移動するので、ポッティング剤Bから排出され易くなる。よって、筒状部10の端10aの内径をノズル開口部21aの外側端Eの内径よりも大きくした場合であっても、気泡の残留が抑制され、ポッティング剤Bの強度や封止性が確保される。
【0035】
また、図6に示すように大同径部44とノズル開口部21aの外側端Eとの間をテーパ部70としてもよい。かかる場合も、ポッティング剤Bの供給時に混入した気泡をテーパ部70に沿って適切に排出できる。
【0036】
また、筒状部10の端部の内周面30には、図7に示すように筒状部10のノズル開口部21aの外側端Eから筒状部10の端10aに近づくにつれて内径が次第に大きくなる傾斜面80を形成してもよい。かかる場合も、ポッティング剤Bの供給時に混入した気泡が、傾斜面80に沿って移動し適切に排出される。よって、筒状部10の端10aの内径をノズル開口部21aの外側端Eの内径よりも大きくした場合であっても、気泡の混入が抑制され、ポッティング剤Bの強度や封止性が確保される。
【0037】
また、中空糸モジュール1は、図8に示すように筒状部10の端10aから筒状部10のノズル開口部21aの外側端E側に向けて内径が次第に小さくなるテーパ部90が形成され、テーパ部90とノズル開口部21aの外側端Eとの間に、ノズル開口部21aの外側端Eと内径が同じで一定の小同径部42が形成されていてもよい。かかる場合、テーパ部90に沿って気泡が排出されるので、ポッティング剤B内に気泡が残留することを抑制しポッティング剤Bの強度や封止性を確保できる。また、筒状部10内に流入した液体が筒状部10の端部付近で滞ることなく第2のノズル21から排出されやすくなる。また、第2のノズル21と筒状部10を通じる液体の通液性を向上できる。
【0038】
以上に記載した中空糸モジュール1は、試用品の中空糸モジュールであってもよい。中空糸モジュールは、一般に購入されて通常使用される通常品と、例えば購入前に当該通常品の性能の確認等するための試用品がある。高価な試験液の使用量を減らすため、試用品の中空糸モジュールには、通常品の中空糸モジュールより小さい寸法に形成されているものがある。例えばその試用品の中空糸モジュールは、通常品の中空糸モジュールと相似形状であって、1/3以下程度の縮小サイズで形成される。また、中空糸膜Aの数も、通常品が数千本以上であるのに対し、試用品は、1〜500本程度になる。例えば試用品の中空糸モジュールは、内径D1が1mm〜20mm程度、さらに好ましくは1mm〜10mm程度となる。例えば通常品の中空糸モジュールは、ポッティング部(ポッティング剤Bの部分)の最大長さが15mmより大きいのに対し、試用品の中空糸モジュールは、ポッティング部の最大長さが2.0mm〜15mm程度となる。なお、ポッティング部は、遠心成形であるため、回転軸の上方から見て、内端面に曲率を有しており、中心部が最も短く、外側部が最も長くなっている。
【0039】
小型の試用品の中空糸モジュールを製造する場合、ポッティング剤Bの供給量が極めて少なく制御が難しいため、以上の実施の形態のように筒状部10の端10aの内径を大きくしてポッティング剤Bの供給量を増やすメリットは大きい。この結果、試供用の中空糸モジュールにおいて、筒状部10の端部に適正な量のポッティング剤Bが供給され、ポッティング剤Bの封止性、第2のノズル21の通液性を確保できる。さらに中空糸膜Aの有効長のばらつきを抑えて中空糸モジュール1の性能を安定させることができる。よって、通常品の中空糸モジュールの性能確認を正確に行うことができる。
【0040】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0041】
例えば中空糸モジュール1の筒状部10の内周面30の形状は、筒状部10のノズル開口部21aの外側端Eにおける内径D1よりも、筒状部10の端10aにおける内径D2が大きくなっていれば、他の形状であってもよい。また、蓋部11が複数の部材から構成されるなど、筒状部10以外の他の部分も他の形状を有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、中空糸モジュールの筒状部の両端部におけるポッティング剤の供給位置をより安定させる際に有用である。
【符号の説明】
【0043】
1 中空糸モジュール
10 筒状部
10a 筒状部の端
11 蓋部
20 第1のノズル
21 第2のノズル
21a ノズル開口部
42 小同径部
44 大同径部
A 中空糸膜
B ポッティング剤
E ノズル開口部の外側端
D1 ノズル開口部の外側端の内径
D2 筒状部の端の内径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空糸膜が収容される筒状部と、前記筒状部の両側の各開口端を閉鎖する蓋部とを有し、前記筒状部の両端部において前記中空糸膜の両端部がポッティング剤により封止されている中空糸モジュールであって、
前記各蓋部には、第1のノズルが形成され、
前記筒状部の両端部の前記ポッティング剤より内側には、第2のノズルが形成されて当該第2のノズルのノズル開口部が形成され、
前記筒状部のノズル開口部の外側端における内径よりも、前記筒状部の端における内径が大きくなっている、中空糸モジュール。
【請求項2】
前記筒状部の端を含む最端部には、前記筒状部の端と内径が同じで一定の大同径部が形成されている、請求項1に記載の中空糸モジュール。
【請求項3】
前記大同径部の内側には、前記ノズル開口部の外側端側に向かって次第に内径が小さくなるテーパ部が形成されている、請求項2に記載の中空糸モジュール。
【請求項4】
前記テーパ部と前記ノズル開口部の外側端との間には、前記ノズル開口部の外側端と内径が同じで一定の小同径部が形成されている、請求項3に記載の中空糸モジュール。
【請求項5】
前記筒状部のノズル開口部の外側端と前記大同径部との間には、前記ノズル開口部の外側端と内径が同じで一定の小同径部が形成されている、請求項2に記載の中空糸モジュール。
【請求項6】
前記筒状部のノズル開口部の外側端から前記筒状部の端に近づくにつれて内径が次第に大きくなっている、請求項1に記載の中空糸モジュール。
【請求項7】
前記筒状部の端から前記筒状部のノズル開口部の外側端側に向けて内径が次第に小さくなるテーパ部が形成され、
前記テーパ部と前記ノズル開口部の外側端との間には、前記ノズル開口部の外側端と内径が同じで一定の小同径部が形成されている、請求項1に記載の中空糸モジュール。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の中空糸モジュールは、ポッティング部の長さの最大長さが2.0mm〜15mmである試用品である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−35200(P2012−35200A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177847(P2010−177847)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(507365204)旭化成メディカル株式会社 (65)
【Fターム(参考)】