説明

中空糸膜モジュールの製造方法

【課題】特別な装置を必要とせず極めて簡便に製造することができ、且つ、各中空糸膜の間及び中空糸束とケースの間にポッティング剤を均一に注入できる中空糸膜モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】中空糸膜モジュールの製造において、中空糸束2が収納された筒状ケース3′の端部に、ポッティング剤4が入った袋5の開口部を取り付ける。次いで、袋5に外側から力を加えて内部の前記ポッティング剤4を筒状ケース内へと移動させ、ポッティング剤を硬化させる。これにより、中空糸膜1間、及び、中空糸束2と筒状ケース3′とが固着した状態で、中空糸束2がポッティング剤4により固着された部分を切断して、各中空糸膜1を開口状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸膜モジュールの管板の形成方法に主たる特徴を有する中空糸膜モジュールの製造方法に関し、特には、特別な装置を必要とせず極めて簡便に製造することができ、且つ、各中空糸膜の間及び中空糸束とケースの間にポッティング剤を均一に注入できる中空糸膜モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空糸膜モジュールは、選択的透過性を有する多数本の中空糸膜を束ねた中空糸束を、少なくとも混合流体導入口、透過流体排出口、非透過流体排出口を備える容器内に、中空糸膜の内部空間と中空糸膜の外部空間とが隔絶するように収納して形成されている。
【0003】
従来、中空糸膜モジュールの製造方法として例えば図5に示すような方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
この方法では、図5(a)に示すように、中空糸膜の束101が収納された筒状のケース102の端部(図示下端部)にポッティング用カップ103が嵌着される。ケース102の端部には、他の部分よりも径がやや小さく形成された接着剤塞止め部102aが形成されており、この塞止め部はカップ103の内周に密着する。
【0004】
次いで、図5(b)に示すように、カップ103の側壁に形成された注入孔108から充填接着剤104が注入される。充填接着剤104は、ケース102の下端開口部を閉塞するように注入され、この接着剤104が硬化することにより、中空糸束101の端部がケース端部に固定される。
【0005】
接着剤の硬化後、図5(c)に示すように、接着剤塞止め部102aの所定部位(A−A切断線)が切断される。このような方法によれば、バリのない中空糸膜モジュールを製造することができる。
【特許文献1】特開平5−84426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のとおり、従来の中空糸膜モジュールの製造方法では、金型(ポッティング用カップ)を装着後に金型の注入孔からポッティング剤(充填接着剤)が注入されていた。しかし、特許文献1記載の方法によっても、バリの発生を防ぐためには、金型及びケースに精密な加工精度が要求される。
【0007】
精度の高い部品は通常のプラスチックの射出成形では容易に得ることができない。金属製にすると精度を高くすることは可能であるが高価になるという問題があった。また、場合によってはO−リングやパッキンなどの補助的部品が必要になり、或いは接着剤塞ぎ止め部などの特別な部品が必要になり、且つ手数を掛けて装着し且つ脱着するなどの作業が必要である。特に、金属製の金型を取り外して再利用する際には、硬化後に金型を取り外すことは容易ではなく、例えば離型剤が必要になる、取り外した金型を丁寧に清掃する必要があるなどの不都合な点が多かった。
【0008】
また、特許文献1記載の方法では、ケース側壁に形成された注入孔からポッティング剤を注入するので、ポッティング剤が偏在しやすい。特に、中空糸膜が密に束ねてあったりポッティング剤の粘度が高かったりする場合には、各中空糸膜の間及び中空糸束とケースとの間に均一に注入するのは困難であり、改良の余地があった。
【0009】
本発明は上記のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、特別な装置を必要とせず極めて簡便に製造することができ、且つ、各中空糸膜の間及び中空糸束とケースの間にポッティング剤を均一に注入できる、中空糸膜モジュールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の中空糸膜モジュールの製造方法は、多数の中空糸膜が集合した中空糸束がポッティング剤により筒状ケース内に固定された中空糸膜モジュールの製造方法において、
前記中空糸束が収納された前記筒状ケースの端部に、ポッティング剤が入った袋の開口部を取り付ける工程と、
前記袋に外側から力を加えて内部の前記ポッティング剤を前記筒状ケースの端部へ移動させる工程と、
前記ポッティング剤を硬化させて、前記中空糸膜間、及び、前記中空糸束と前記筒状ケースとを固着させる工程と、
前記中空糸束が前記ポッティング剤により固着された部分を切断して各中空糸膜を開口状態にする工程と、
を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の中空糸膜モジュールの製造方法によれば、ポッティング剤の入った袋を筒状ケースに取り付け、それを押圧してポッティング剤を筒状ケース側に移動させる、という極めて簡単な工程で中空糸束の固着を行うことができる。また、このような方法によれば、背景技術として図5に示したような、カップの側壁の注入孔からポッティング剤を注入する方法と比較して、ポッティング剤をより均一的に注入することが可能である。
【0012】
本発明の中空糸膜モジュールの製造方法は、また、開口部が伸縮性を有する袋を用いてもよい。また、袋を押圧するための押圧器を用いてもよい。
【0013】
本発明の製造方法で製造可能な中空糸膜モジュールは、種々の流体混合物を、選択的透過性を有する中空糸膜で分離するためのモジュールであって、ガス混合物や液体混合物を分離するためのものであって構わない。したがって、特に限定するものではないが、本発明の中空糸膜モジュールの製造方法は、空気の除湿用などに採用されている、小型のガス分離用の中空糸膜モジュールを製造するのに特に好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によって、特別な装置を必要とせず極めて簡便に製造することができ、且つ、各中空糸膜の間及び中空糸束とケースの間にポッティング剤を均一に注入できる、中空糸膜モジュールの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の一形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の中空糸膜モジュール製造方法の一形態によって製造されるモジュールの一例を示す断面図である。なお、ケースの側壁に設けられる透過流体排出口については、他の実施形態の図面で説明するものとし、図1では省略している。
【0016】
図1に示すように、この中空糸膜モジュール20は、両端が開口した筒状ケース3(例えば樹脂製)と、その内部に収納された中空糸束2とを有している。中空糸束2は、複数の中空糸膜1を束ねたものであり筒状ケース3の長手方向に沿って収納されている。筒状ケース3は一例として円筒状である。筒状ケース3の両端の開口部には、ポッティング剤を硬化させた管板12が配置されており、これにより両開口部が閉塞されている。
各中空糸膜1の両端部は、各管板12を厚み方向に貫通し、端部の開口部(不図示)が外部に露出している。
【0017】
なお、中空糸膜は特に限定されるものではなく、分離対象物や分離条件に適合した材料で形成されたものを好適に用いることができる。例えば、ポリオレフィン、ポリブタジエン、シリコーン樹脂、セルロース系高分子、ポリアミド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィッド、ポリアリレート、ポリカーボネートなどのエラストマー材料やガラス状ポリマー材料でもよく、さらに、ゼオライトなどのセラミックス材料、炭素材料、ポリマーを部分炭素化した材料、カルド型ポリイミドなどの剛直なポリマー材料、及び、前記材料を含む複合材料でもよい。中空糸膜の種類も、多孔質膜、逆浸透膜、ガス分離膜であってもよく、対称膜であっても非対称膜であってもよい。
【0018】
次に、上記中空糸膜モジュール20の製造方法について、図2を参照して説明する。図2は、本実施形態の中空糸膜モジュールの製造方法の一形態を示す断面図である。
なお、以下の説明では、図面の記載に合わせて「上下」・「左右」といった方向を示す語句を用いるが、これらの方向は本発明を何ら限定するものではない。
【0019】
図2(a)に示すように、本実施形態の製造方法においては筒状のケース3′が用意される。この筒状ケース3′は、最終的な筒状ケース3(図1参照)よりもやや長く、外周面の上下両端部分にはフランジ部3aが形成されている。
【0020】
順番は特に限定されるものではないが、本実施形態の製造方法においては、先ず、中空糸束2が筒状ケース3′内に収納される。
この例では、筒状ケース3′は縦置きとされ、中空糸束2の下端がケース3′の下端開口部からやや突出している。
【0021】
次いで、図2(a)に示すように、筒状ケース3′の下端開口部に、硬化前のポッティング剤4が入った袋5の開口部5aを取り付ける。この際、開口部5aは、筒状ケース3′のフランジ部3aのところに掛止される。
ポッティング剤4は、特に限定されるものではなく熱可塑性樹脂であっても構わない(この場合には、硬化ではなく加熱と冷却が必要になる)。また、エポキシ樹脂やウレタン樹脂からなる熱硬化性樹脂であっても構わない。この熱硬化性樹脂組成物では、硬化剤、硬化促進剤、触媒などが好適に配合され、熱をかけて硬化される。なお、好適には、ウレタン樹脂からなる化学反応型樹脂であり、この樹脂組成では、主剤、硬化剤が好適に配合され、特に熱をかけることなく硬化できる。
【0022】
袋5は、例えば紙、プラスチック、又は金属などの薄いフィルム(箔)であってもよいし、ゴムなど伸縮性のある材質で構成されていてもよい。伸縮性のある材質の場合、開口部5aが伸縮自在となるので、その伸縮性を利用して、開口部5aを筒状ケース端部に取り付け易いという利点がある。
【0023】
開口部5aの弾性(伸縮性)の程度は、筒状ケース3′のサイズや袋5のサイズなどによるので、特に限定されるべきものではないが、取付けが容易であって、しかもポッティング剤の注入工程(詳細下記)においてポッティング剤が取付け部からはみ出てバリを発生しない程度の強度を有していることが好ましい。
具体的な一例として、袋5の開口部5aの厚みが、他の部分に比べて厚くなっていることが好ましい。これにより、締付け冶具などを用いなくても十分な密閉性が保たれ、バリの発生も抑制できる。また、袋の開口部5aを折り返して厚みを増加させることで十分な締付け力を得るようにしてもよい。
【0024】
なお、上記から明らかなように、開口部5aの取付け方法は、筒状ケース3′と袋5とが密閉されるのであれば特に限定されるものではなく、例えば開口部5a(伸縮性があっても無くてもよい)を筒状ケース端部に被せてその外側から締付け具(例えば紐やバンド)で締め付けるようにしてもよい。
【0025】
図2の例のように筒状ケース3′の端部にフランジ部3aが形成されている場合、袋の開口部5aが抜けにくいという利点がある。
【0026】
次いで、図2(b)に示すように、袋5の外側から外力を加え、ポッティング剤4を筒状ケース3′内の中空糸束の端部へ移動させる。「外力」は、人手(手で押える方法など)で加えられるものであってもよいし、治具などを用いても構わない。
袋5に外力を加えることで袋5が縮められ、袋の中のポッティング剤4が、筒状ケース3′内へと押し込まれていく。
【0027】
袋5に略均一的に外力を加えることにより、ポッティング剤4の界面4aの高さをほぼ一定とすることができる。これは、最終的に得られる管板12(図1参照)の厚みが均一化することを意味する。
なお、略均一的に外力を加えるには、例えば、図2(b)の矢印で示すように袋5の下部側を左右両側から指でつまむようにしてもよい。
【0028】
その後、図2(c)に示すようにポッティング剤4を所定位置まで押し込んだら、次いで、ポッティング剤の界面4aの位置が上下しないよう袋5をその状態(形状)に維持し、ポッティング剤4を硬化させる。
ポッティング剤4の種類や配合、及び、触媒の有無に応じて、適当な硬化条件が採用される。室温で静置する方法でもよいし、必要に応じて加熱処理を行ってもよい。なお、通常は、中空糸膜の分離性能を低下させない範囲内の温度に保たれる。
【0029】
上記工程によりポッティング剤4が硬化したら、次いで、筒状ケース3′の下端部付近(中空糸束がポッティング剤4で固着されている部分)をA−A切断線に沿って横方向に切断する。これにより、筒状ケース3′、ポッティング剤4、及び、中空糸束2の下端付近が同時に切断され、各中空糸膜1の下端開口部が外部に露出した状態となる。
【0030】
なお、A−A切断線ではなく、筒状ケースのフランジ部3aよりも下のA′−A′切断線(フランジ部3aの下側であって、中空糸膜1の下端よりも上側の領域)で切断することも可能であるが、A−A切断線で切断する場合次のような利点がある。すなわち、A−A線で切断した場合、筒状ケースのフランジ部3aが一緒に切り落とされるので袋5を取り外す工程が必要ない点で有利である。また、筒状ケース3′も併せて加工することになるので好適である。
切断された袋5は使い捨てとし、袋5を含む切断部を廃棄しても構わない。
【0031】
その後、筒状ケース3′の反対側(図示上側)の端部に対しても上記同様の工程を施すことにより、最終的に、図1に示したような中空糸膜モジュール20が作製される。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の製造方法によれば、ポッティング剤4の入った袋5を筒状ケース3′の端部に取り付け、それを押圧してポッティング剤4を筒状ケース3′側に移動させるという極めて簡単な工程で中空糸束2の固着を行うことができる。また、本実施形態のような、袋5を用いてポッティング剤4を移動させる方法によれば、図5に示したような、カップの側壁の孔からポッティング剤を注入する方法と比較して、ポッティング剤をより均一的に注入することが可能であり、ポッティング剤の界面4aの高さを一定にすることができる(これにより、管板12の厚みが均一化する)。
【0033】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の中空糸膜モジュール製造方法に係る態様の他の一例を示す断面図である。
以下に説明する方法では、押圧器25を用いて、袋内のポッティング剤4が筒状ケース3′内に押し込む。なお、ポッティング剤の入った袋を取り付ける工程、ポッティング剤を硬化させる工程、及び、ケース端部を切断する工程、については、前述と同様である。
【0034】
この方法で利用される押圧器25は、図3に示すように、筒状のガイド27及び該ガイド内でスライド可能な可動部材26を有している。
筒状ガイド27は、一例として樹脂製の円筒であり、この例では筒状ケース3′とほぼ同じ直径を有している。なお、これに限らず、筒状ガイド27の直径は、筒状ケース3′よりも大径であってもよいし小径であってもよい。
【0035】
可動部材26は円柱状の部材であり、筒状ケース3′(筒状ガイド27)の長手方向に沿って上下方向に往復移動(スライド移動)する。可動部材26の上面は、ポッティング剤4を押し込むための押圧面26aとなっている。
なお、ここでいう「スライド」とは、可動部材26の外周面と筒状ガイド27の内周面とが摺動しながら可動部材26が移動する形態に限らず、可動部材26の外周面と筒状ガイド27の内周面との間にある程度の隙間が開いている状態で可動部材26が移動する形態も含む。
【0036】
筒状ガイド27の基端側(下端付近)には、中央にネジ孔を有するエンドプレート29が嵌められており、このネジ孔にネジ28が通されている。ネジ28の先端部は可動部材26の背面に連結されており、ネジ28を回すことにより、可動部材26が上下に移動するようになっている。
【0037】
本実施形態の製造方法では、上記実施形態と同じように、まず、ポッティング剤4が入った袋5を筒状ケース3′の下端開口部に取り付ける。次いで、その状態で、袋5を押圧器の筒状ガイド27の内部(上端開口部付近)にセットする。
【0038】
次いで、ネジ28を回して可動部材26を筒状ケース3′側に向けて徐々に移動させる。可動部材26が移動することにより、同部材の押圧面26aで袋5及びそれに入ったポッティング剤4が上方へと押し上げられる。押圧面26aが平面状である場合、ポッティング剤4を均一に押すことができ、ポッティング剤が中空糸束の各中空糸膜の間及び中空糸束とケースの間に均一(得られる管板の厚みが均一)に注入される点で好都合である。
【0039】
可動部材26を所定位置まで移動させた状態で(ポッティング剤の界面4aが所定位置となったところで)、例えば静置により、ポッティング剤を硬化させ、以降、上記実施形態と同様の工程を経て中空糸膜モジュールを完成させる。
【0040】
以上説明したような本実施形態の製造方法によれば、中空糸膜1が密に束ねられ、且つ、ポッティング剤の粘度が高いような場合でも、ポッティング剤の均一な注入が容易にできる。
また、本実施形態のように、ネジ28を利用して可動部材26がスライドされる場合、可動部材26を任意の位置に停止させることが可能である。このような構成によれば、特別な固定治具などを用いなくても可動部材26の位置を所望の位置に固定できるので、ポッティング剤の界面4aの位置を正確に定めることが可能となる。
【0041】
(他の実施形態)
上記実施形態の製造方法で製造される中空糸膜モジュールの利用例について、以下、図4を参照して説明する。
図4に示す装置では、中空糸膜モジュール20の両端にキャップ8、9が取り付けられている。図示左側に示されたキャップ8は、入り口側に配置されたものであり、キャップ中心部に混合流体導入口8aを有している。反対側のキャップ9は、出口側に配置されており、キャップ中心部に非透過流体排出口9aを有している。
【0042】
筒状ケース3の側壁には、透過流体排出口10及びパージ流体導入口11が形成されている。非透過流体排出口9aに接続された配管は途中で分岐しており、その一方が、流量調節バルブ13を介してパージ流体導入口11へと接続されている。このような構成によれば、中空糸膜の内部を通過し下流側開口部から流出した非透過流体の一部が、配管を通じてパージ流体導入口11から再び筒状ケース3内(中空糸膜の外側)に導入される。これにより、中空糸膜を透過してケース3内に溜まっていた透過流体がケース外へとパージされる。
本発明の製造方法で製造可能な中空糸膜モジュール20は、このような除湿モジュールに好適に利用することができる。
【0043】
以上、幾つかの例を挙げて本発明の製造方法について説明したが、本発明の製造方法の主たる特徴部は、筒状ケースの端部に中空糸束の端部を固着させる一連の工程(図2等を参照)にある。したがって、中空糸膜モジュールを製造するためのその他の工程、及び、図3のような装置を製造するためのその他の工程については、従来公知の方法を適宜採用することができる。
【0044】
また、本発明は、図1のような中空糸膜モジュール20の他にも、様々な中空糸膜モジュールの製造に適用することができる。
例えば、筒状ケース内に収納する多数本の中空糸膜からなる中空糸束は、中空糸膜を一定の長さに切断したものを束ねたものでもよいし、カセ取装置によって巻き付けられたものであってもよい。また、中空糸束は、直線状、U字状、スパイラル状などの種々の形態で筒状ケース内に収納することができる。
【0045】
また、筒状ケースやキャップは、所定の強度、気密性及び耐圧性を備えていれば特に限定はなく、金属、プラスチック、繊維強化プラスチック、又はセラミックス等により形成できる。また、必要に応じて、接着剤やボルトナットやパッキン類等が用いられて構成される。
さらに本発明の中空糸膜モジュールは、中空フィードでもシェルフィードでも構わない。
【実施例】
【0046】
以下実施例によって本発明を更に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
図4に示すような、パージガス導入口、透過ガス排出口、及びパージガス排出口を備えた、全長100mm、外径12mm、内径10mmのポリカーボネート製の筒状ケースを用いた。中空糸束は、外径400μm、内径300μmのポリイミド製非対称中空糸膜を300本束ねたものを用いた。中空糸膜の開口端は、ポッティング剤の浸入を防止するためにエポキシ接着剤で封をした。
【0047】
ポッティング剤として、主剤のポリイソシアネート変性体1.8gと硬化剤のポリオール1.2gとを混合して調合したポリウレタン系ポッティング剤を用いた。袋として、内径13.5mm、肉厚0.16mm、全長48mmの合成ゴム製の指サック(株式会社鈴木ラテックス製)を用い、その中に前記ポッティング剤を入れた。
【0048】
中空糸束を収納した筒状ケースの端部に、ポッティング剤が入った袋の開口部を被せて取り付け、筒状ケースと袋とがよく密着されるように容器端から5mmの位置で袋の開口部をロール状に折り返して丸めた。
【0049】
ポッティング剤を移動させる工程としては、袋を手で押しつぶして、内部のポッティング剤を筒状ケースの端部に移動させ、中空糸束の各中空糸膜間及び中空糸束と筒状ケースとの間にポッティング剤を注入させるように移動させた。そして、ポッティング剤厚みが容器端から15mmとなったところで袋を手で押しつぶすことを止め、そのポッティング剤厚みが維持されるように袋をテープで固定し、変形しない状態で静置した。
【0050】
この状態でポッティング剤を常温で硬化させ、中空糸束の各中空糸膜間及び中空糸束と筒状ケースとを固着させた。
筒状ケースの反対側の端部でも、同じ方法で、ポッティング剤によって中空糸束の各中空糸膜間及び中空糸束と筒状ケースとを固着させた。
【0051】
次いで、中空糸束の各中空糸膜間及び中空糸束と筒状ケースとを固着させた筒状ケースの端部を、容器端から7mmの位置で切断切削機により切断し、中空糸束の各中空糸膜を開口させた。反対側の端部も同様に切断した。
【0052】
このようにして、筒状ケース内に中空糸束が収納され両端部にポッティング剤の硬化物からなる管板が形成されたモジュールを得た。このモジュールの両端部に、混合ガス導入口を供えたキャップと非透過ガス排出口を備えたキャップとをそれぞれ気密になるように配置すると共に、非透過ガス排出口に連通した配管から、流量調節バルブを介して、非透過ガスの一部をパージガス導入口へ導入させるように配管を配置して除湿用中空糸膜モジュール(除湿モジュール)を得た。
【0053】
〔実施例2〕
図3に示した押圧器を用いてポッティング剤を移動させる製造方法の例を実施した。
ポッティング剤を移動させる工程では、ポッティング剤が入った袋を、可動部材が備わった筒状ガイドの内部に配置した。可動部材を移動させることにより袋に外側から外力を加えて、ポッティング剤を筒状ケースの端部へ移動させた。可動部材は、ネジによって回転しながら押し込むように構成されているので、ポッティング剤厚みが所定の量となったところでネジをその位置で固定し、袋を押し込むのを止めてポッティング剤の界面を所定位置に維持することができた。以降、実施例1と同様の方法によって実施例1と同様な除湿用中空糸膜モジュールを得た。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の中空糸膜モジュール製造方法の一形態によって製造されるモジュールの一例を示す断面図である。
【図2】本実施形態の中空糸膜モジュールの製造方法の一形態を示す断面図である。
【図3】押圧器を用いてポッティング剤を移動させる例を示す断面図である。
【図4】中空糸膜モジュールの利用例について説明するための断面図である。
【図5】従来の中空糸膜モジュールの製造方法について説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 中空糸膜
2 中空糸束
3 筒状ケース
3′ 筒状ケース
3a フランジ部
4 ポッティング剤
4a ポッティング剤の界面
5 袋
5a 開口部
8、9 キャップ
8a 混合流体導入口
9a 非透過流体排出口
10 透過流体排出口
11 パージ流体導入口
12 管板
13 流量調節バルブ
20 中空糸膜モジュール
25 押圧器
26 可動部材
26a 押圧面
27 筒状ガイド
28 ネジ
29 エンドプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の中空糸膜が集合した中空糸束がポッティング剤により筒状ケース内に固定された中空糸膜モジュールの製造方法において、
前記中空糸束が収納された前記筒状ケースの端部に、ポッティング剤が入った袋の開口部を取り付ける工程と、
前記袋に外側から力を加えて内部の前記ポッティング剤を前記筒状ケースの端部へ移動させる工程と、
前記ポッティング剤を硬化させて、前記中空糸膜間、及び、前記中空糸束と前記筒状ケースとを固着させる工程と、
前記中空糸束が前記ポッティング剤により固着された部分を切断して各中空糸膜を開口状態にする工程と、
を含むことを特徴とする、中空糸膜モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記袋の開口部が伸縮性を有しており、
前記開口部を取り付ける工程では、該開口部を前記筒状ケースの端部に被せて取り付けることを特徴とする、請求項1に記載の中空糸膜モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記ポッティング剤を筒状ケースの端部へ移動させる工程では、筒状ガイド及び該筒状ガイド内でスライド可能な可動部材を有する押圧器を用い、
前記可動部材を前記筒状ケースに向けて移動させることで、袋内の前記ポッティング剤を前記筒状ケース内へと押し込むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の中空糸膜モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記袋がゴム製である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の中空糸膜モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−125642(P2009−125642A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301735(P2007−301735)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】