説明

中空糸膜モジュール及びその製造方法

【課題】ポッティング材の硬化収縮に伴う応力を十分に緩和し、モジュールケースからポッティング部が剥離することを抑えられる中空糸膜モジュールを目的とする。
【解決手段】本発明の中空糸膜モジュール10は、複数の中空糸膜22からなる中空糸膜束20と、該中空糸膜束20がポッティング部16にてその両端又は片端の中空糸膜22を開口した状態で接着固定され収納されるモジュールケース12と、ポッティング部16の中空糸膜束20とモジュールケース12との間に、中空糸膜束20の外周面と、その内周面を接して配置された膜束拘束治具30とを有し、膜束拘束治具30の外周には突起部32が設けられ、モジュールケース12には、ポッティング部16と接する内周面の少なくとも一部に溝部14が設けられ、該溝部14には、突起部32が挿入されて、中空糸膜束20が、モジュールケース12の内周面と離間して配置されていることよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中空糸膜モジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液体や気体の濾過、固液分離や物質の濃縮、菌体の除去あるいは濃縮、液体中の溶存ガスの除去(脱気)等の用途で、様々な種類の分離膜が用いられている。これらの分離膜は、単に膜だけで使用される場合のみならず、複数本の中空糸膜を束ねてモジュールケースに接着固定した中空糸膜モジュールとして利用されることも多い。中空糸膜モジュールは、複数本の中空糸膜束をモジュールケース内に装填し、その端部にポッティング材を注入してこれを硬化させポッティング部として固定した後、該ポッティング部の端部を分離膜と共に切断して、端部を開口することで製造される。このようにして、ポッティング材が、個々の中空糸膜の間や、中空糸膜束とモジュールケースとの間に浸透し硬化することで、中空糸膜束はモジュールケース内に固定される。
【0003】
このような中空糸膜モジュールの製造の際、ポッティング材は硬化時に収縮を伴う。この際、中空糸膜束の内部では、複数の中空糸膜があることから、その硬化収縮の応力は分散されるものの、中空糸膜束の最外周に位置する中空糸膜とモジュールケースとの間に形成されるポッティング部においては、モジュールケースの中心部に向かって収縮する働きに対し、ポッティング部はモジュールケースに固定されているために収縮できず、この部位では応力が残留してしまう。この残留応力によって、ポッティング部とモジュールケースとの接合面に剥離が生じやすくなり、モジュールの仕様によってはリークの原因となる。中空糸膜のたるみ・ねじれ・折れ等により、中空糸膜がポッティング部の近傍でモジュールケースに接触して、形成される樹脂這い上がり部では、中空糸膜がモジュールケースに接着される。このような接着部は脆弱なため、ポッティング材の硬化時に該接着部がモジュールケースと剥離したり、中空糸膜の破損によりリークに繋がることがある。
【0004】
そこで、この残留応力を抑制する技術として、特許文献1には、ケース側面と中空糸膜束との間に、治具を用いてポッティング部に溝部を形成し、ポッティング材の収縮に伴う応力を緩和する方法が開示されている。また、特許文献2には、中空糸膜束の外周に、モジュールケース内周面と非接触な状態でリング状の弾性部材を配し、ポッティング部に対する応力を緩和する中空糸膜モジュールが開示されている。また、特許文献3には、モジュールケースに固定された補強用リブと、Oリングを介してモジュールケースに密着固定された支持リングが接着固定部内に埋設され、耐圧強度を上げた中空糸膜モジュールが開示されている。また、特許文献4には、封止材中で内部結合表面上に設けられた連結幾何リングを有するシェルからなる中空糸膜コンダクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−51455号公報
【特許文献2】特開2005−52736号公報
【特許文献3】特開平11−300173号公報
【特許文献4】特開2005−246379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般に、中空糸膜モジュールは円筒状モジュールケースに必要とされる有効膜長を確保する形で中空糸膜が接着固定されるため、特許文献1に示したような治具を用いて、溝部を形成させる中空糸膜モジュールでは、中空糸膜モジュール製造において、該治具を除去する際に有効膜部を傷つける可能性がある。また、モジュールケース内に、両端を接着固定するモジュールに対しては、適応が困難である。
【0007】
特許文献2においては、モジュールケースの内周面に非接触な状態でリング状弾性体が設けられている。このため、中空糸膜モジュールの製造時に、挿入した中空糸膜束がモジュールケースの中心位置からずれた場合、中空糸膜がモジュールケースと接触してしまう。さらに、モジュールケースと中空糸膜束との間にクリアランスがあるために、ポッティング部における中空糸膜の開口端部側で中空糸膜束が広がり、その界面付近で中空糸膜束の屈曲が起こってリークの原因となることがあった。
【0008】
特許文献3においては、モジュールケースの内周面と中空糸膜とが近接した場所では、ポッティング材の這い上がり部が形成され、ポッティング材の硬化時に中空糸膜の破損等が生じるおそれがある。加えて、補強用リブをモジュールケースの接着固定部内に設置するため、モジュールケースの横断面が数区画に分けられる形となり、中空糸膜束を充填する際に、中空糸膜束を所定数に分ける等の煩雑な工程が必要となる。さらに、支持リングがOリングを介してモジュールケースに密着しているため、支持リングの両面にポッティング材を充填し支持リングを固定するには煩雑な工程が必要となる。
【0009】
特許文献4においては、シェルの内部結合表面に設けた連結幾何リングにより、ポッティング部とシェルとの剥離の防止を図っている。しかし、中空繊維ファブリックのポッティング部の近傍では、中空繊維膜が広がってシェルに接触した状態で接着されやすい。このように、ポッティング部近傍には、封止材の這い上がり部が形成され、ポッティング材の硬化時にポッティング部がシェルと剥離するおそれがある。加えて、複数の連結幾何リングを設けた場合には、連結幾何リング間へのポッティング材の充填が不均一となり、ポッティング部に微小な空隙等が形成される一因となる。ポッティング部に微小な空隙が形成された場合、ポッティング材の硬化収縮時にモジュールケースからの剥離のきっかけとなる恐れがある。
また、特許文献1〜4の技術においては、硬化収縮による応力の残存抑制効果が未だ十分ではない。
【0010】
以上のことから、ポッティング材の硬化収縮に起因する、中空糸膜モジュールのリーク発生防止が望まれている。
そこで、本発明は、ポッティング材の硬化収縮に伴う応力を十分に緩和し、中空糸膜モジュールのリークを長期的に防止することができる中空糸膜モジュールを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の中空糸膜モジュールは、複数の中空糸膜からなる中空糸膜束と、該中空糸膜束がポッティング部にてその両端又は片端の中空糸膜を開口した状態で接着固定され収納されるモジュールケースと、前記ポッティング部の前記中空糸膜束と前記モジュールケースとの間に、前記中空糸膜束の外周面と、その内周面を接して配置された膜束拘束治具とを有し、該膜束拘束治具には、外周に複数の突起部が設けられ、前記モジュールケースには、前記ポッティング部と接する内周面の少なくとも一部に溝部が設けられ、該溝部には、前記突起部が挿入され、前記中空糸膜束が、前記モジュールケースの内周面と離間して配置されていることを特徴とする。
前記膜束拘束治具は、外周縁からその直近の内周縁への距離が2〜10mmであり、かつ、前記膜束拘束治具の配置位置は、前記ポッティング部のモジュールケース内部に面した端面から2〜10mmの位置であることが好ましい。前記ポッティング部を形成するポッティング材が前記膜束拘束治具を通流する通路が設けられていることが好ましく、前記通路は、膜束拘束治具に設けられた複数個の貫通孔であることが好ましく、前記通路は、前記膜束拘束治具の外周縁と前記モジュールケースの内周面との間に設けられた距離1mm未満の隙間であることが好ましい。
【0012】
本発明の中空糸膜モジュールの製造方法は、前記膜束拘束治具を前記モジュールケースの内部に固定する工程と、前記中空糸膜束を集束袋に収納した後、前記集束袋の内部を減圧し前記集束袋を密封する工程と、前記の密封した集束袋を前記モジュールケースに挿入する工程と、前記集束袋を前記モジュールケースに挿入した後抜き去ることにより、前記中空糸膜束を前記モジュールケース内に固定する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の中空糸膜モジュールは、ポッティング材の硬化収縮に伴う応力を十分に緩和し、中空糸膜モジュールのリークを長期的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の中空糸膜モジュールの一例を示す縦断面図である。
【図2】図1のII−II’断面図である。
【図3】本発明の中空糸膜モジュールの膜束拘束治具の一例を示す天面図である。
【図4】実施例1の試験用モジュールを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(中空糸膜モジュール)
本発明の実施形態の一例について、図1〜3を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態の一例である中空糸膜モジュールの縦断面図である。図2は、図1のII−II’断面図である。図3は、本発明の中空糸膜モジュールに用いる膜束拘束治具の一例を示す天面図である。
図1、2に示すとおり、中空糸膜モジュール10は、中空糸膜22を束ねる膜束拘束治具30と、複数本の中空糸膜22を束ねた中空糸膜束20と、中空糸膜束20を収納するモジュールケース12とを有している。図3に示すとおり、膜束拘束治具30は、開口部36が形成された環状の枠状であるリング部31と、その外周縁に設けられた複数の突起部32とを有している。リング部31には、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔34が設けられている。
【0016】
中空糸膜束20は、複数の中空糸膜22が円筒状に束ねられて、構成されている。ポッティング材で形成されるポッティング部16により、中空糸膜22の開口端部24の開口状態を保ったまま、中空糸膜22がモジュールケース12と接触することなく、円筒状のモジュールケース12に固定されている。中空糸膜束20を接着固定するポッティング部16の端面17と端面18との間には、膜束拘束治具30が、その内周と中空糸膜束20の外周とを接して配置されている。ポッティング部16と接するモジュールケース12の内周面の少なくとも一部には、膜束拘束治具30の突起部32を挿入する溝部14が設けられている。膜束拘束治具30は、その突起部32が、溝部14に挿入されて、固定されている。
【0017】
膜束拘束治具30の設置位置である、ポッティング部16のモジュールケース12内部に面した端面18から端面17に向かった距離Bは、ポッティング部16の厚さ、中空糸膜束20の外径、ポッティング材の注入条件を考慮して決定することができる。距離Bは、例えば、2〜10mmとすることが好ましく、2〜5mmとすることがより好ましい。ポッティング部16の厚さが均一であるならば、端面18に近い方が好ましい。ただし、2mm未満の位置であると加工精度の問題から、膜束拘束治具30の完全な埋設の確実性が低くなる可能性がある。10mmを超える位置であると、端面18近傍では中空糸膜束20が広がって、モジュールケース12に接する可能性があるためである。
【0018】
図2に示すように、モジュールケース12の内周面と膜束拘束治具30の外周縁とには、距離Eの隙間38が設けられている。隙間38は、膜束拘束治具30の両側にポッティング材を充填するための通路である。距離Eは、ポッティング材の種類、モジュールケース12又は膜束拘束治具30の形状、大きさを勘案して決定することができる。例えば、モジュールケース12の内径が60mmφである場合には、距離Eを1mm未満とすることが好ましく、0.4〜0.8mmとすることがより好ましい。距離Eはできるだけ小さいことが好ましいが、小さすぎるとポッティング材の均一な充填が困難となる。距離Eが大きすぎると、膜束拘束治具30によるポッティング材の硬化収縮応力の緩和効果が低いものとなってしまう。モジュールケース12の内周面と膜束拘束治具30の外周縁とに距離Eの隙間を設けることで、ポッティング材充填時に、均一に樹脂が通過充填され、ポッティング部16の硬化収縮時における応力の緩和をより強固にすることができる。ただし、モジュールケース12の内径が100mmφ以上の大型の中空糸膜モジュールの場合には、モジュールケース12の内径に応じて、適宜、距離Eを1mm以上とすることができる。
なお、本実施形態において、ポッティング部を形成するポッティング材が膜束拘束治具を通流する通路は、貫通孔34と隙間38である。
【0019】
<膜束拘束治具>
膜束拘束治具30の材質は、該治具が処理する対象の溶液に、直接、接しないことから、汎用のプラスチック材料を使用することができ、例えば、ポリオレフィン、ABS、塩化ビニル等が挙げられる。ただし、後述する中空糸膜モジュール10の製造において、膜束拘束治具30は変形を伴ってモジュールケース12に挿入される。このため、膜束拘束治具30を湾曲させた際に、割れ等の損傷が発生しないものがよい。アクリル樹脂等、割れやすい材料は好ましくない。
【0020】
膜束拘束治具の外周縁とは、膜束拘束治具の突起部を除く、本体部分の外周縁を意味する。膜束拘束治具の「外周縁からその直近の内周縁への距離」とは、膜束拘束治具の突起部を除く、本体部分の外周縁とその直近の内周縁との距離(以下、膜束拘束治具の幅という)である。膜束拘束治具30の幅Aは、リング部31の幅Aである。膜束拘束治具30の幅Aは、中空糸膜束20の外周の中空糸膜22とモジュールケース12の内周面とが接することなく、かつ、中空糸膜束20とモジュールケース12の内周面との間にポッティング材の凝固収縮時の応力の緩和ができる十分な空間が設けられる距離である。膜束拘束治具30の幅Aは、モジュールケース12の内径、ポッティング材の量、中空糸膜束20の外径とを勘案して決定することができる。例えば、モジュールケース12の内径が60〜70mmφの場合、膜束拘束治具30の幅Aは、好ましくは2〜10mm、より好ましくは4〜6mmである。2mm以上とすることによって、中空糸膜22がモジュールケース12の内周面に触れないようにできるとともに、リング部31の強度が十分となり、膜束拘束治具30のモジュールケース12への装着性が良好となる傾向にある。また、後述するポッティング材の通路である貫通孔34の大きさを十分に確保できることによって、膜束拘束治具30の両面にポッティング材が十分に浸透し、ポッティング部16内での膜束拘束治具30の固定が十分となる傾向にある。加えて、膜束拘束治具30自体の強度を十分に維持できる傾向にある。10mm以下とすることによって、中空糸膜束20に対する中空糸膜モジュール10のサイズをコンパクトにでき、好ましい。
なお、モジュールケース12の内径が100mmφ以上の大型の中空糸膜モジュールの場合には、幅Aを10mm超とする設計を検討することが好ましい。大型の中空糸膜モジュールにおいては、幅Aを広げることで、膜束拘束治具30の強度を上げるとともに、応力の緩和が図れるためである。
【0021】
膜束拘束治具30の厚みは、材質を勘案して決定することが好ましい。厚すぎると、膜束拘束治具30を湾曲させることができず、モジュールケース12に挿入できない場合があり、薄すぎると、モジュールケース12に挿入する際に破損するおそれがある。例えば、膜束拘束治具30にABS樹脂を用いた場合には、0.5〜1.5mmにおいて、好適に挿入可能である。なお、モジュールケース12の内径が100mmφ以上となる大型の中空糸膜モジュールの場合には、1.5mmを超える厚みを選択することができる。
【0022】
突起部32の数量は、モジュールケース12の内径を勘案して決定することができ、例えば、モジュールケース12の内径が60mmφの場合、3〜5箇所に設けるのが好ましく、5箇所に設けることがより好ましい。モジュールケース12の内径が60mmφの場合、5箇所に突起部32を設けると、挿入した膜束拘束治具30が外れることなく中空糸膜束20を挿入することができ、中空糸膜モジュール10の製造を効率的に行うことができる。なお、モジュールケース12の内径が100mmφ以上となる大型の中空糸膜モジュールの場合には、モジュールケース12の内径の大きさに従い、5箇所超の突起部32を設けることが好ましい。
突起部32の長さCは、長過ぎるとモジュールケース12に設けた溝部14への挿入を効率的にできず、また、短過ぎると中空糸膜束20の挿入時に外れやすくなる。例えば、モジュールケース12の内径が60mmφの場合、突起部32の長さCは、5〜15mmであることが好ましい。
突起部32の幅Dは、モジュールケース12の内径や突起部32の形状を勘案して決定することができる。突起部32の幅Dが長過ぎると、モジュールケース12に設けた溝部14への挿入を効率的にできず、また、短過ぎると中空糸膜束20の挿入時に外れやすくなる。例えば、モジュールケース12の内径が60mmφの場合、突起部32の幅Dは、0.5〜1mmの範囲で決定することが好ましい。
突起部32の形状は特に限定されず、多角形状であっても良いし、半円状のものであってもよい。
【0023】
貫通孔34は、膜束拘束治具30の両側に、ポッティング材を充填するための通路として設けられている。膜束拘束治具30に設ける貫通孔34の数量は、中空糸膜モジュール10の大きさや、膜束拘束治具30の大きさ、膜束拘束治具30の幅A、ポッティング材の種類を勘案して決定することができる。例えば、内径60mmφのモジュールケース12を用いる場合、3〜5箇所に貫通孔34が設けられていることが好ましい。3箇所未満であると、貫通孔34を通じたポッティング材への荷重が分散されず、固定の強度が不十分となるおそれがある。5箇所を超えると、膜束拘束治具30自体の強度が低下するおそれがあるためである。なお、モジュールケース12の内径が100mmφ以上となる大型の中空糸膜モジュールの場合には、5箇所超の貫通孔34を設けることが好ましい。
貫通孔34の大きさは、貫通孔34の数量、中空糸膜モジュール10の大きさや、膜束拘束治具30の大きさ、膜束拘束治具30の幅A、ポッティング材の種類を勘案して決定することができる。例えば、内径60mmφのモジュールケース12を用い、膜束拘束治具30に3〜5箇所の貫通孔34を設ける場合、貫通孔34の大きさは1〜4mmφが好ましく、2〜3mmφがより好ましい。1mmφ未満であると、ポッティング材が通流しにくくなり、4mmφを超えると、膜束拘束治具30自体の強度が低下するおそれがあるためである。なお、モジュールケース12の内径が100mmφ以上となる大型の中空糸膜モジュールの場合、貫通孔34の大きさは、充填するポッティング材の量、ポッティング部16の大きさが増大することに伴い、さらに大きくすることが好ましい。
貫通孔34の形状は特に限定されず、円形であってもよいし、多角形であっても良い。
【0024】
<中空糸膜>
中空糸膜22は処理対象に応じて選定することが好ましく、多孔質中空糸膜、非多孔質中空糸膜、三層複合中空糸膜等を挙げることができる。
例えば、液体の濾過を行う場合にはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスルフォン、ポリアミド、ポリイミド、セルロース、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル等からなる多孔質中空糸膜が挙げられる。
また、例えば、溶液からの溶存気体の脱気、溶液への気体の溶解等を行う場合には、気体を透過するものであればその材質は特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4―メチルペンテン、テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等の疎水性高分子からなる多孔質中空糸膜が挙げられる。
【0025】
ただし、疎水性の多孔質中空糸膜を用いて長時間の処理を行うと、水蒸気が多孔部内に凝縮し、水分の透過を生じる。従って、中空糸膜22としては、気体透過の抵抗がなく十分な機械的強度を有する多孔質膜で、薄い非多孔質膜を両側から挟み込んだ、三層複合中空糸膜が特に好ましい。
【0026】
三層複合中空糸膜の非多孔質膜形成に用いるポリマーとしては、ポリジメチルシロキサン、シリコンとポリカーボネートのコポリマー等のシリコン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4―メチルペンテン等のポリオレフィン系ポリマー、フッ素系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリフェニレンオキサイド、ポリ4−ビニルピリジン、ウレタン系ポリマー、又はこれらのコポリマーあるいはブレンドポリマー等が挙げられる。また、三層複合中空糸膜の多孔質膜形成に用いるポリマーとしては、前記のポリオレフィン系ポリマー、フッ素系ポリマー等が挙げられる。非多孔質膜形成に用いるポリマーと多孔質膜形成に用いるポリマーとの組み合わせに特に制限はなく、同種又は異種のポリマーの任意の組み合わせを選択することができる。
【0027】
<ポッティング部>
ポッティング部16を形成するポッティング材としては、十分な接着強度を有し、各用途で求められる要求性能を満たすものを適宜選定することができる。例えば、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂等を挙げることができる。
【0028】
ポッティング部16の厚さは、中空糸膜束20を固定でき、要求される中空糸膜モジュール10の性能が発現できる厚さであればよく、モジュールケース12の材質、内径、中空糸膜束20の大きさ、ポッティング材の種類を勘案して決定することが好ましい。
【0029】
<モジュールケース>
モジュールケース12の材料についても同様に、各用途の要求性能にあわせて適宜選定し使用することができる。例えば、ポリオレフィン、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンオキサイド、塩化ビニル等が挙げられる。モジュールケース12とポッティング材との接着性が低い場合には、ポッティング部16と接するモジュールケース12の内周面に、プライマー処理を施してもよい。
【0030】
溝部14は、突起部32の挿入位置を指定するために、突起部32に対応する任意の位置のみに設けられていてもよいし、モジュールケース12の内周面を一周するように設けられていてもよい。モジュールケース12の内周面を一周するように溝部14が設けられていることで、ポッティング材を充填した際に、突起部32が挿入されていない溝部14にポッティング材が浸入し、ポッティング部16の強度のさらなる向上が図れる。
溝部14の幅は、膜束拘束治具30の厚みに応じて決定することができる。
また、溝部14の深さは、膜束拘束治具30の突起部32の幅Dに応じて決定することができる。
【0031】
(製造方法)
中空糸膜モジュール10の製造方法の一例について、以下に説明する。中空糸膜モジュール10の製造方法は、例えば、膜束拘束治具30をモジュールケース12の内部に固定する工程と、中空糸膜束20を集束袋に収納した後、該集束袋の内部を減圧し該集束袋を密封する工程と、前記の密封した集束袋をモジュールケース12に挿入する工程と、前記集束袋をモジュールケース12に挿入した後、前記集束袋を抜き去ることで、中空糸膜束20をモジュールケース12内に固定する工程とを有するものが挙げられる。
まず、モジュールケース12の一方の開口部から、膜束拘束治具30を湾曲させながら挿入し、突起部32を溝部14に挿入し、膜束拘束治具30をモジュールケース12内に固定する。次いで、モジュールケース12の他方の開口部から、膜束拘束治具30を湾曲させながら挿入し、突起部32を溝部14に挿入し、膜束拘束治具30をモジュールケース12内に固定する。任意の数量の中空糸膜22を束ねて、中空糸膜束20を作製する。中空糸膜束20を集束袋に収納する。次いで、集束袋の内部を減圧して集束袋を中空糸膜束20に密着させ、中空糸膜束20が密に集合した状態で集束袋を密封する(減圧密封)。そして、密封した集束袋を膜束拘束治具30が固定されたモジュールケース12に挿入し、膜束拘束治具30の開口部36に挿入して収納する。その後、集束袋を開封し、集束袋のみをモジュールケース12から抜き取ることで、モジュールケース12内に中空糸膜束20を固定する。このとき、各中空糸膜22は膜束拘束治具30により拘束された状態となるので、広がって屈曲することが防止される。こうして、中空糸膜束20を収納した集束袋を減圧密封することで、中空糸膜束20を容易に膜束拘束治具30の開口部36に挿入することができる。加えて、挿入の際に中空糸膜束20が膜束拘束治具30と擦れて、中空糸膜22が損傷することを防止できる。
【0032】
次いで、遠心型のポッティング材注入装置により、モジュールケース12の端部側にポッティング材を注入する。この際、貫通孔34、隙間38を通流して、膜束拘束治具30の両面にポッティング材が行き渡る。そして、ポッティング材を硬化させることにより所定厚さのポッティング部16を形成する。
【0033】
次いで、ポッティング材の種類により、必要に応じて、ポッティング部16に最終物性を出すためのキュアリングを実施して固化した後、開口端部24側のポッティング部16の端面を切削し、平坦面を形成して各中空糸膜22の端部を開口させる。こうして、中空糸膜モジュール10を得ることができる。
【0034】
集束袋は、中空糸膜束20を収容し、中空糸膜束20をモジュールケース12に挿入する間、気密性が保たれるような耐真空性を有するものであればよく、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の袋を好適に使用できる。
集束袋の厚さは、中空糸膜束20の寸法や、開口部36の寸法等を勘案して決定することができる。
【0035】
集束袋の減圧密封は、公知の方法を用いることができ、例えば、いわゆる真空包装機を用い、集束袋の内部を減圧した状態で、集束袋の開口部をヒートシールする方法等が挙げられる。
【0036】
ポッティング材の注入量は、所望するポッティング部16の厚さに応じて決定することが好ましい。
ポッティング材の熱処理における温度条件は、ポッティング材の種類や硬化剤の種類、使用量等に応じて決定することが好ましい。
ポッティング材の硬化時間は、ポッティング材の種類や硬化剤の種類、使用量等に応じて決定することが好ましい。
【0037】
本発明によれば、膜束拘束治具により、中空糸膜束をモジュールケースの内周面から確実に離して配置でき、中空糸膜とモジュールケースとの接着を防ぐことができる。このため、ポッティング部とモジュールケースとの接着部分に、脆弱な接着部分が形成されず、ポッティング部とモジュールケースとが剥離することを防止できる。そして、中空糸膜モジュールのリークを防ぐことができる。
【0038】
本発明によれば、ポッティング部が、モジュールケース内に固定されている膜束拘束治具に接着しているため、ポッティング材が凝固収縮する際に、ポッティング部がそのモジュールケースとの接着面から離れる方向に働く残存応力を緩和することができる。このため、ポッティング材の凝固収縮による、該接着面の剥離を防止でき、かつ、前記の残存応力の影響を緩和し、長期にわたって中空糸膜モジュールのリークが防止できる。
さらに、膜束拘束治具に貫通孔を設けることで、膜束拘束治具とポッティング部との固定がより確実となり、ポッティング材の凝固収縮により発生する応力を膜束拘束治具でより確実に支えることができる。この結果、中空糸膜モジュールのリークの防止効果を向上させることができる。また、中空糸膜モジュールの製造を容易にすることができる。
【0039】
本発明の中空糸膜モジュールを製造するに当たっては、治具等の排除を伴わないことから、治具等の排除作業中に、中空糸膜に損傷を与えることがない。さらに、中空糸膜束を収納した集束袋を減圧密封してモジュールケースに挿入することで、容易に膜束拘束治具の開口部に挿入できる。加えて、集束袋を使用することで、挿入時における膜束拘束治具との接触による中空糸膜の損傷を防止できる。このため、中空糸膜の損傷に起因するリークを防止することができる。
【0040】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。上述の中空糸膜モジュールは、複数の中空糸膜を円筒状に束ねたものであるが、中空糸膜モジュールの形状はこれに限られることはなく、角柱状、シート状であってもよい。
【0041】
上述の中空糸膜モジュールでは、膜束拘束治具の幅Aが、中空糸膜束の外周面からモジュールケースの内周面までの距離よりも短い。しかし、膜束拘束治具の幅Aは、中空糸膜束の外周面からモジュールケースの内周面までの距離よりも長くても良いし、中空糸膜束の外周面からモジュールケースの内周面までの距離と略同等であってもよい。ただし、膜束拘束治具の幅Aは、中空糸膜束の外周面からモジュールケースの内周面までの距離よりも短いこと、即ち、ポッティング材が通流する通路である隙間を設けることが好ましい。
【0042】
上述の中空糸膜モジュールでは、ポッティング材が通流する通路として、膜束拘束治具の貫通孔及び膜束拘束治具とモジュールケースとの隙間が設けられている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、前記通路は、ポッティング材が通流し、膜束拘束治具の両側に充填される形態であればよい。
また、前記通路としては、貫通孔及び隙間が設けられている。しかしながら、本発明の中空糸膜モジュールは、貫通孔又は隙間のいずれかが設けられていてもよいし、前記通路が設けられていなくてもよい。
【0043】
上述の中空糸膜モジュールでは、1つのポッティング部に1つの膜束拘束治具が配置されているが、本発明はこれに限定されず、中空糸膜モジュールの大きさ、ポッティング部の厚み等を勘案し、1つのポッティング部に2つ以上の膜束拘束治具が配置されていてもよい。
【0044】
上述の中空糸膜モジュールでは、膜束拘束治具はリング状の形状であるが、膜束拘束治具の形状はこれに限られず、中空糸膜モジュールの形状やポッティング部の形状に応じて、多角形の枠体であってもよい。即ち、膜束拘束治具は、例えば、角柱型又は平型等の中空糸膜束の形状に適用すべく、適宜、形状を選択することができる。
【0045】
上述の中空糸膜モジュールの製造方法では、モジュールケースに膜束拘束治具を固定した後に、減圧密封した集束袋を挿入しているが、減圧密封した集束袋をモジュールケースに挿入した後、膜束拘束治具をモジュールケースに固定してもよい。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
実施例1においては、ポッティング材の硬化収縮の影響が顕著となるように、図4に示す試験用モジュール100を用いた。試験用モジュール100は、モジュールケース112と、モジュールキャップ120と、ポッティング部116と、膜束拘束治具30とを有する。モジュールケース112の下端には、流入口122を有するモジュールキャップ120が嵌合されている。モジュールケース112の上部には、ポッティング材からなるポッティング部116が設けられている。ポッティング部116の端面117と端面118との間には、膜束拘束治具30が配置されている。モジュールケース112の内周面には、溝部114が設けられている。膜束拘束治具30は、溝部114に突起部32が挿入され、リング部31がポッティング部116に埋設され固定されている。
【0048】
上述のように、中空糸膜を設けず、ポッティング部のみを設けた試験用モジュール100を下記(1)〜(8)の仕様にて作製した。作製した試験用モジュール100を用い、後述する繰り返し耐圧試験を行った。
(1)モジュールケース112:内径64mmφ、長さ80mm、材質;ポリカーボネート
(2)モジュールキャップ120:ポリカーボネート
(3)溝部114の幅:1mm
(4)溝部114の深さ:0.9mm
(5)ポッティング材:エポキシ樹脂
(6)ポッティング部116の厚さ:20mm
(7)膜束拘束治具30の位置:ポッティング部116の端面118から2mmの位置
(8)膜束拘束治具30:図3の膜束拘束治具30を下記(a)〜(j)の仕様にて作製したものを用いた。
【0049】
(a)膜束拘束治具の幅(図3の幅A):4.4mm
(b)内径:54mm
(c)外周縁外径:62.8mm
上記(1)のモジュールケースに挿入することにより、図2に示す膜束拘束治具とモジュールケース内周との距離Eは0.6mmとなった。
(d)突起部の数:外周縁の5箇所
(e)突起部の長さC(図3の長さC):10mm
(f)突起部の幅D(図3の幅D):0.9mm
(g)貫通孔の大きさ:2.4mmφ
(h)貫通孔の位置:突起部の根元
(i)貫通孔の数量:5個
(j)厚み:1mm
【0050】
(比較例1)
膜束拘束治具を使用しない他は、実施例1と同様の仕様のモジュールケース、ポッティング材を用いた試験用モジュールを作製した。作製した試験用モジュールを用い、繰返し耐圧試験を行った。
【0051】
(繰り返し耐圧試験)
実施例1及び比較例1の試験用モジュールについて繰り返し耐圧試験を実施した。
本試験は、前記各試験用モジュール内に、流入口から試験用モジュール内部に水を供給すると共に断続的に水圧を加え、ポッティング部とモジュールケースとの接着面の解離により、所定の圧力の保持が困難となるまでの水圧付加回数を測定した。
具体的には、実施例1及び比較例1で得られた試験用モジュールを40℃の恒温槽内に配置した後、この恒温槽内の温水をポンプアップし、0.4MPaで前記温水を試験用モジュールの流入口に方向Fで注水して、5秒間の加圧をする。次いで0MPaまで除圧して5秒間放置する。この加圧と除圧を1サイクルとして繰り返した。前記加圧と除圧とは弁体の切替操作により行い、各試験用モジュールは40℃に維持しまま加圧と除圧とを繰り返した。
【0052】
上記繰り返し耐圧試験の結果、実施例1においては、196900回でモジュールケースの嵌合部が破損したため、繰り返し耐圧試験を終了した。この際、ポッティング部とモジュールケースとの間に剥離は生じていなかった。対して、比較例1においては、41700回でポッティング部とモジュールケースとの間に剥離が発生した。
以上の結果から、膜束拘束治具により、ポッティング材の凝固収縮に伴う残留応力を緩和し、ポッティング材のモジュールケースへの接着が強固となり、繰り返し耐圧試験における耐久性が著しく向上したことが判った。
【0053】
(実施例2)
図1の中空糸膜モジュール10と同様の中空糸膜モジュールを下記(1)〜(9)の仕様にて作製した。なお、中空糸膜モジュールの作製に当たっては、中空糸膜束を集束袋に収納した後、前記集束袋を減圧密封し、減圧密封した集束袋をモジュールケースへ挿入し、挿入後、集束袋のみを抜き取り、中空糸膜束をモジュールケース内に固定する製造方法を用いた。作製した中空糸膜モジュールを用い、後述する繰り返し耐圧試験を行った。
(1)モジュールケース:内径64mmφ、長さ215mm、材質;ポリプロピレン
(2)溝部の幅:1mm
(3)溝部の深さ:0.9mm
(4)中空糸膜種類:内径200μm、外径284μmのポリエチレン多孔質中空糸膜の膜厚中間部に、厚み0.5μmのポリエチレン系ポリマーから成る気体分離非多孔質層を有する気体透過性中空糸膜(MHF200SD、三菱レイヨン・エンジニアリング株式会社製)
(5)中空糸膜本数:22000本
(6)ポッティング材:エポキシ樹脂
(7)ポッティング部の厚さ:20mm
(8)膜束拘束治具の位置:ポッティング部のモジュールケース内部側の端面から2mmの位置(図1の距離B)
(9)膜束拘束治具:実施例1と同様の膜束拘束治具を用いた。上記(1)のモジュールケースに挿入することにより、図2に示す膜束拘束治具とモジュールケース内周との距離Eは0.6mmとなった。
【0054】
(比較例2)
膜束拘束治具を使用しない他は、実施例2と同様の仕様の中空糸膜、モジュールケース、ポッティング材を用いた中空糸膜モジュールを作製した。なお、中空糸膜モジュールの作製に当たっては、中空糸膜束を集束袋に収納した後、前記集束袋を減圧密封し、減圧密封した集束袋をモジュールケースへ挿入し、挿入後、集束袋のみを抜き取り、中空糸膜束をモジュールケース内に固定する製造方法を用いた。作製した中空糸膜モジュールを用い、繰り返し耐圧試験を行った。なお、中空糸膜束の形状は、膜束拘束治具を使用していないため、モジュールケース内壁まで全体に広がった状態で接着固定され、ポッティング部において、中空糸膜束の外周の中空糸膜は、モジュールケースの内周面に接するように固定されていた。
【0055】
(繰り返し耐圧試験)
実施例2及び比較例2の中空糸膜モジュールについて繰り返し耐圧試験を実施した。
本試験は、前記各中空糸膜モジュールについて、そのポッティング部の一方の端面側を閉塞し、原水供給ラインに水を供給すると共に断続的に水圧を加え、ポッティング部とモジュールケースとの接着面の解離、中空糸膜の損傷等の発生により、所定の圧力の保持が困難となるまでの水圧付加回数を測定した。
具体的には、実施例2及び比較例2で得られた中空糸膜モジュールを40℃の恒温槽内に配置した後、この恒温槽内の温水をポンプアップし、0.4MPaで前記温水を中空糸膜モジュールの一次側に注水して、5秒間の加圧をする。次いで0MPaまで除圧して5秒間放置する。この加圧と除圧を1サイクルとして繰り返した。前記加圧と除圧とは弁体の切替操作により行い、各中空糸膜モジュールは40℃に維持しまま加圧と除圧とを繰り返した。
【0056】
上記繰り返し耐圧試験の結果、実施例2においては、180000回で中空糸膜モジュールの外周、ポッティング部中に埋もれるような位置の中空糸膜において、リークが発生していた。対して、比較例2においては、9800回で中空糸膜モジュールの外周部のポッティング材の這い上がり部、中空糸膜とモジュールケースとが接する位置において、中空糸膜が破損していた。
以上の結果から、膜束拘束治具により、中空糸膜をモジュールケースから離間することで、中空糸膜束をモジュールケースに接着固定する際に生じる凝固収縮に伴う残留応力の緩和が可能となり、繰り返し耐圧試験における耐久性が著しく向上したことが判った。
【符号の説明】
【0057】
10 中空糸膜モジュール
12、112 モジュールケース
14、114 溝部
16、116 ポッティング部
17、18、117、118 端面
20 中空糸膜束
22 中空糸膜
24 開口端部
30 膜束拘束治具
31 リング部
32 突起部
34 貫通孔
36 開口部
38 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中空糸膜からなる中空糸膜束と、該中空糸膜束がポッティング部にてその両端又は片端の中空糸膜を開口した状態で接着固定され収納されるモジュールケースと、前記ポッティング部の前記中空糸膜束と前記モジュールケースとの間に、前記中空糸膜束の外周面と、その内周面を接して配置された1以上の膜束拘束治具とを有し、
該膜束拘束治具には、外周に複数の突起部が設けられ、
前記モジュールケースには、前記ポッティング部と接する内周面の少なくとも一部に溝部が設けられ、
該溝部には、前記突起部が挿入され、前記中空糸膜束が、前記モジュールケースの内周面と離間して配置されている、中空糸膜モジュール。
【請求項2】
前記膜束拘束治具は、外周縁からその直近の内周縁への距離が2〜10mmであり、かつ、前記膜束拘束治具の配置位置は、前記ポッティング部のモジュールケース内部に面した端面から2〜10mmの位置である、請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項3】
前記ポッティング部を形成するポッティング材が前記膜束拘束治具を通流する通路が設けられている、請求項1又は2に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項4】
前記通路は、膜束拘束治具に設けられた複数個の貫通孔である、請求項3に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項5】
前記通路は、前記膜束拘束治具の外周縁と前記モジュールケースの内周面との間に設けられた距離1mm未満の隙間である、請求項3に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項6】
前記膜束拘束治具を前記モジュールケースの内部に固定する工程と、前記中空糸膜束を集束袋に収納した後、前記集束袋の内部を減圧し前記集束袋を密封する工程と、前記の密封した集束袋を前記モジュールケースに挿入する工程と、前記集束袋を前記モジュールケースに挿入した後抜き去ることにより、前記中空糸膜束を前記モジュールケース内に固定する工程とを有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の中空糸膜モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−184228(P2010−184228A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121138(P2009−121138)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000176741)三菱レイヨン・エンジニアリング株式会社 (90)
【Fターム(参考)】