説明

中空糸膜モジュール

【課題】 長期間、安定した濾過運転ができる中空糸膜モジュールの提供。
【解決手段】 ケースハウジング20と前記ケースハウジング20の少なくとも一端側の開口端面に接続されたキャップ11と、前記ケースハウジング内に収容された中空糸膜束30とを有する中空糸膜モジュール10であり、前記キャップが、液出入口を有する底面と、底面と一体になった側面からなり、前記液出入口に対向する側が開口されているものであり、前記ケースハウジングの直径(D)と前記キャップ内面の液出入口を除いた部分の立上がり平均高さ(Hav)との比率(Hav×100/D)が35%〜70%の範囲である、中空糸膜モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸膜モジュールに関し、さらに詳しくは中空糸膜束の端面開口部に接続されるキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液出入口を有するケースハウジング内に所要数の中空糸膜束を収容し、ケースハウジングの両側端部にキャップを接続し、液(原水、透過水等)の出入りをケースハウジング及びキャップから行うタイプの中空糸膜モジュールであり、このようなタイプのものは、比較的大型のモジュールに適用されることが多い。
【特許文献1】実開平5−018604号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このようなタイプの中空糸膜モジュールを用いて濾過運転や逆圧洗浄等をするとき、液出口側に汚泥が蓄積されやすく、液出入口付近の位置にある中空糸膜束が、蓄積された汚泥により閉塞することがある。
【0004】
本発明は、液出入口付近の位置にある中空糸膜束の端面開口部が蓄積された汚泥により閉塞することなく、長期間、安定した濾過運転ができる中空糸膜モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、課題の解決手段として、
ケースハウジングと前記ケースハウジングの少なくとも一端側の開口端面に接続されたキャップと、前記ケースハウジング内に収容された中空糸膜束とを有する中空糸膜モジュールであり、
前記キャップが、液出入口を有する底面と、底面と一体になった側面からなり、前記液出入口に対向する側が開口されているものであり、
前記ケースハウジングの直径(D)と前記キャップ内面の液出入口を除いた部分の立上がり平均高さ(Hav)との比率(Hav×100/D)が35%〜70%の範囲である、中空糸膜モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の中空糸膜モジュールは、特定形状のキャップを接続することによって、濾過運転及び逆圧洗浄等で汚泥が蓄積されることがなく、中空糸膜束の端面開口部が閉塞されることがない。
【0007】
よって、本発明の中空糸膜モジュールは、濾過運転及び逆圧洗浄等を繰り返した場合であっても、長期間安定した濾過運転を継続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図1により、本発明の中空糸膜モジュールを説明する。図1は、本発明の中空糸膜モジュール10の縦断面図である。中空糸膜束は一部のみを図示している。なお、本発明の中空糸膜モジュールの構造はキャップを除いて公知のものであり、例えば、特開2004−89800号公報の図1〜図5に示すような構造(但し、キャップを除く)にすることができる。
【0009】
キャップ11は、ケースハウジング20の一端又は両端開口部に接続されるものであり、いずれの側のキャップも同形状にすることができる。
【0010】
キャップ11は、液出入口12を有する底面13と、底面13と一体になった側面14からなり、液出入口12に対向する側が開口されている(開口部15)。この開口部15において、ケースハウジング20の開口部と接続される。
【0011】
キャップ11の底面13とケースハウジング20内に収容された中空糸膜束30の端面開口部は対向しており、底面13は平面又はそれに近似した曲面である。
【0012】
ケースハウジング20の直径(D)は、好ましくは200mm以上であり、より好ましくは250mm以上であり、更に好ましくは300mm以上である。ケースハウジング20は、側面に少なくとも1つの流体出入口21を有している。
【0013】
中空糸膜束30は、直径が1mm前後〜数mm程度の中空糸膜が数百〜数千本束ねられたものであり、中空糸膜の材質は特に制限されず、公知のものを用いることができ、好ましくは洗浄性の高い酢酸セルロース系樹脂を用いることができる。
【0014】
キャップ11は、ケースハウジング20の直径(D)とキャップ11内面の液出入口12を除いた部分の立上がり平均高さ(Hav)との比率(Hav×100/D)が35〜70%であり、好ましくは50〜70%であり、より好ましくは55〜60%である。
【0015】
ここで、液出入口12を除いた部分の立上がり平均高さ(Hav)とは、底面13を計6箇所の升目に分け、図1に示すようにキャップ11における高さH、H等のように計12箇所測定した値の平均値である。
【0016】
次に、中空糸膜モジュール10を濾過運転したときのキャップ11の作用を、図2に示す従来のキャップ50の作用と共に説明する。図1と図2において、同一番号は同一のものであることを意味する。
【0017】
濾過運転中、中空糸膜束30の膜表面には汚泥が蓄積されている。濾過運転を停止し、液出入口から洗浄水を圧入し、逆圧洗浄をしたとき、舞い上がった汚泥がキャップ11内の空間16に流入する。
【0018】
このとき、図2の従来のキャップ50を用いた中空糸膜モジュールでは、空間16内に流入した汚泥が渦を巻いて滞留し、液出入口12から排出されにくい。特にキャップ50の円周部付近における汚泥の滞留が顕著になる。このため、中空糸膜束30の端面開口部が汚泥により閉塞されてしまい、濾過性能が低下される要因になっていた。
【0019】
しかし、図1のキャップ11を用いた中空糸膜モジュール10では、比率(Hav×100/D)が所定範囲に設定されていることにより、空間16内に流入した汚泥が渦を巻いたり、滞留したりすることが抑制され、速やかに液出入口12から排出される。このため、中空糸膜束30の端面開口部が汚泥により閉塞されることが抑制されるので、長期間、安定した濾過運転をすることができる。
【実施例】
【0020】
実施例1
内径0.8mm、外径1.3mm、長さ1230mm、酢酸セルロース系樹脂製の中空糸膜を本数22,320本からなる中空糸膜束を内径300mmのケースハウジング内へ装入した。その後、遠心シール機(東邦機械工業(株)社製,横型遠心成型機)により、ウレタン系接着剤で接着封止した。
【0021】
作製した中空糸膜モジュールに、比率(Hav×100/D)が60%の図1に示すようなキャップを装着し、以下の確認試験を実施した。濾過運転は5m/日で60分間運転後、60秒間逆圧洗浄する工程を1回とし、この工程を繰り返した。そして、中空糸膜モジュールからキャップを外し、中空糸膜の端面開口部の汚泥閉塞本数を数えた結果、1ヶ月間連続運転で中空糸膜の端部開口の汚泥閉塞本数は2本であった。
【0022】
比較例1
内径0.8mm、外径1.3mm、長さ1230mm、酢酸セルロース系樹脂製の中空糸膜を本数22320本からなる中空糸膜束をケースハウジング内へ装入した。その後、遠心シール機(東邦機械工業(株)社製,横型遠心成型機)により、ウレタン系接着剤で接着封止した。
【0023】
作製した中空糸膜モジュールに、(Hav/D)×100が30%の図2に示すようなキャップを装着し、以下の確認試験を実施した。濾過運転は5m/日で60分間運転後、60秒間逆圧洗浄する工程を1回とし、この工程を繰り返した。そして、同様にして中空糸膜の端面開口部の汚泥閉塞本数を数えた結果、1ヶ月間連続運転で中空糸膜の端部開口の汚泥閉塞本数は400本であった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の中空糸膜モジュールの縦断面図。
【図2】従来の中空糸膜モジュールの縦断面図。
【符号の説明】
【0025】
10 中空糸膜モジュール
11 キャップ
20 ケースハウジング
30 中空糸膜束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースハウジングと前記ケースハウジングの少なくとも一端側の開口端面に接続されたキャップと、前記ケースハウジング内に収容された中空糸膜束とを有する中空糸膜モジュールであり、
前記キャップが、液出入口を有する底面と、底面と一体になった側面からなり、前記液出入口に対向する側が開口されているものであり、
前記ケースハウジングの直径(D)と前記キャップ内面の液出入口を除いた部分の立上がり平均高さ(Hav)との比率(Hav×100/D)が35%〜70%の範囲である、中空糸膜モジュール。
【請求項2】
キャップの底面とケースハウジング内に収容された中空糸膜束の端面開口部が対向しており、前記底面が平面又はそれに近似した曲面である、請求項1記載の中空糸膜モジュール。
【請求項3】
ケースハウジングの直径が200mm以上であり、側部に少なくとも1つの流体出入口を有する請求項1又は2記載の中空糸膜モジュール。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−247550(P2006−247550A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69011(P2005−69011)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(594152620)ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社 (104)
【Fターム(参考)】