説明

中空繊維モジュール

本発明は、中空繊維マットの堆積を含む中空繊維カートリッジであって、前記堆積は主軸および2つの末端面を有し、各前記マットは前記主軸に対して実質的垂直に配置されており、少なくとも1つの末端キャップが1つの前記末端面に結合されていることを特徴とする中空繊維カートリッジを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空繊維モジュールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空繊維膜がモジュールの主軸に垂直に配置されている中空繊維膜モジュールは公知である。このタイプの中空繊維膜モジュールはフランス特許2,222,134号明細書、欧州特許出願公開350,853号および521,495号公報、並びに、米国特許5,164,081号明細書に開示されており、これらは引用文献として本明細書に組み込まれる。これらそれぞれにおいて、中空繊維マットは注封材料の環に埋め込まれる。これらの埋め込まれたマットはハウジングに挿入されてモジュールを形成する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これら従来のモジュールの問題点は、形成された埋め込まれたマットから分離されなければならない鋳造型の使用を必要とするためコストが高くなることである。鋳型の破壊分離工程は、労働力を要し、時間を消費する。
【0004】
したがって、よりコスト安のモジュールおよびその製造方法が要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の中空繊維カートリッジは、中空繊維マットの堆積を含む。この堆積は主軸と2つの末端面を有する。各マットは軸に実質的に垂直である。末端キャップは各末端面に結合されている。
【0006】
あるいは、中空繊維カートリッジは、周囲部を有する中空繊維膜を含む。マットの堆積は蓄積される。各マットの周囲部は隣接するマットの周囲部とそろえられている。この堆積は主軸および2つの末端面を有する。各マットは主軸に実質的に垂直に配置されている、末端キャップは各末端面に結合されている。注封材料は堆積されたマットの周囲部の壁を規定し、末端キャップをこの堆積に結合する。
【0007】
図1には、主軸Aを有する中空繊維膜が示されている。本明細書で参照する図面において同じ番号は同じ構成要素を表す。
【0008】
モジュール10はハウジング12およびカートリッジ18を有している。カートリッジ18は適切な手段によってハウジング内に保持されている。例えば、図1において、カートリッジ18は保持クリップ38によって保持されている。他の手段としては、図示しないが、接着剤、溶接、回転溶接、ネジ止めなどが挙げられる。これらの手段によって、カートリッジ18はハウジング12に永久に保持されるか、又はハウジングから取り外すことが可能とされる。これらの手段によって、ハウジング12およびカートリッジ18は流体密封状態にかみ合わせられる。
【0009】
ハウジング12は、キャップ型のハウジングであり、好ましくは円周ポート14および軸ポート16を有する。ハウジング12はカートリッジ18を受け入れる大きさとされる。ハウジング12は、プラスチック又は複合材料などの材料からなる。ハウジング12は、好ましくは鋳造部品である。好ましくは、ポート14および16は、システムへの結合機構、例えば、ねじ山(内側/外側)を備えている。
【0010】
カートリッジ18はハウジング12への挿入のために採用される。カートリッジ18は、軸ポート28を有する離れた末端キャップ22、軸ポート26を有する近接した末端キャップ24、キャップ22と24の間に挟まれる中空繊維マットの堆積39および前記マット、およびマットの周囲部を規定する壁32を有し、末端キャップ22および24に結合されており、キャップ22と24の間で連続的または欠けるところはない。好ましくは、ポート26は、システムへの接続のためのメカニズム、例えば、ねじ山(外側/内側)が備えられている。
【0011】
組み立ての際、モジュール10はヘッドスペース34を有する。ヘッドスペース34はカートリッジ18の壁32およびハウジング12内部の横方向の壁によって規定される。ヘッドスペース34は軸ポート14およびマットの中空繊維開口端部と通じている。さらに、末端キャップ22および24は、ハウジング12の内部に対して流体密封されている。図1においては、この密封はOリングの使用によって例示されているが、密封手段はこれに限定されず、他の密封手段を使用することもできる。このような密封手段としては、接着剤、溶接、回転溶接、ねじ山などが挙げられる。
【0012】
操作上、モジュール10は、膜接触器または膜フィルター又は熱交換器として使用することができる。例えば、流体は軸ポート16を経てモジュール10に導入され、軸ポート26を経て排出する(または、この逆である)。流体は、中空繊維の外側表面を移動するので、流体は除去または加えられ(膜接触器)、不要な材料は遮断され(ろ過)またはエネルギー(例えば、加熱または冷却)が加えられるかまたは除去される(熱交換)。モジュールの使用に応じて、中空繊維の特徴は変化する。
【0013】
膜接触器の態様においては、除去された流体は中空繊維の壁を通過して中空に入り、ヘッドスペース34を経て円周ポートを通じて排出される。流体の除去は、真空、部分真空および/または(もし、他のポートがハウジングに付加され、ヘッドスペース34が分割されるとき)一掃ガスの適用によって容易化される。あるいは、流体(2酸化炭素、窒素、酸素など)が流体に導入される。加えられた流体は円周ポート14を通じてヘッドスペー34から中空繊維の中空に入り、中空繊維の壁から排出されて流体に導入される。
【0014】
ろ過の態様においては、汚染された流体はポート26により導入されてポート16を経て放出される(または、この逆である)。中空繊維の壁は汚染物質を遮断する。遮断は、中空繊維の中空側の真空(または部分真空)によって容易化される。
【0015】
熱交換器の態様においては、加熱または冷却は次のように達成される。第一に、第2ポートがハウジング12に加えられ、ヘッドスペース34が分割される。第1の流体がポート26より導入され、ポート16より放出される(または、この逆である)。第2の流体がポート14により分割されたヘッドスペース34に導入され、中空繊維の中空を通じて移動し分割されたヘッドスペースを経て第2のハウジングポートを経て放出される。
【0016】
モジュール10は次のように製造される。
【0017】
図2を参照すると、キャップ形状のカートリッジハウジング40が中空繊維マット42によって充填されており、またキャップ44によって閉じされている。マット42はハウジング40のキャビティを満たすよう方位付けられており、主軸Aに実質的に垂直になるように堆積されている。ハウジング40およびキャップ44はどのような材料であってもよい。材料としては、ポリオレフィン、塩化ポリビニル、ABS、Noryl(登録商標)、PVDF,PFAまたは他のフッ化プラスチック、繊維強化プラスチック、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、金属などが挙げられる。
【0018】
中空繊維は、中空および前記中空を囲む壁を有している。中空繊維は中空でない壁、多孔質の壁または微細孔質の壁である(例えば、対称性の孔、非対称性の孔、スキン付の膜など)。これら中空繊維はどのような材料であってもよい。材料としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルフォン、ポリアリールスルフォン)、セルロースおよびその誘導体、PVDF、ポリフェニルオキサイド(PPO)、PFAA、PTFE、他のフッ化ポリマー、ポリアミド、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド、イオン交換膜(例えば、Nafion(登録商標))などが挙げられる。
【0019】
中空繊維マットは、通常、複数の共に結合した中空繊維を含む平板構造に織られ、編まれまたは他の方法で共に結合される。前記マットの中空繊維は同様の材料および性質有するか、または多様な材料および/または性質を有することができる。これらのマットは大きな編み物から望まれる大きさおよび形に切断される。それぞれのマットは円周端を有する。後の工程で注封材料が中空に流入しないように、切断時において繊維の末端は閉じられる(すなわち、締め付けられる)ことが好ましい。切断は、ダイス切断、超音波切断、ナイフ切断(例えば、加熱)などによって達成することができる。
【0020】
マットがカートリッジハウジング40のキャビティに堆積されるとき、マットの円周端部はそろえられる。
【0021】
キャップ44はカートリッジハウジング40の開口端にかぶせられる。キャップ44はハウジング40に結合される。この結合は、いかなる手段でも、例えば、接着剤、溶接またはねじ接合によって達成されることができる。キャップ44はハウジング40に接触面に沿って結合されることが重要である。ハウジング40およびキャップ44は、次の製造工程の間にマットの堆積を保持する。
【0022】
ハウジング40およびキャップ44は、この構造を主軸Aを中心に回転することができる装置に主軸ポート26から装着される。回転の間、流体注封材料はキャップ44の円錐の開口端に導入される。注封材料は、遠心力によって、ハウジング40の内壁に移動し、これによって壁パフォームを形成する。回転は、注封材料がこれ以上動かないかまたは実質的に動かない点まで、固まるに要する十分な時間を経て止まる(すなわち、壁パフォームの形を保持するかまたは実質的に保持する)。
【0023】
注封材料はどのような材料でもよく、例えば、熱硬化性または熱可塑性樹脂である。これら材料は、次の例示的な条件によって選択される。すなわち、中空繊維、カートリッジハウジング40およびキャップ42に対する結合強度、機械的強度および化学的耐性である。例示の注封材料としては、エポキシおよびポリオレフィンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0024】
次の回転工程は、次にさらに例示されるが、これに限定されるものではない。カートリッジは水平に回転される。回転速度は300〜4000rpm(例えば、注封粘度に依存する)。もし、キュアが周囲の温度で行われるならば、回転は実質的に流動が生じないまで、最長24時間続く。しかし、もしキュアがより高い温度で行われるならば、キュア時間は短縮され、例えば、50℃では回転時間は2時間まで短縮され、65℃では0.5ないし0.75時間に短縮される。最終のキュアに至り、回転装置の時間を短縮するために、実質的にキュアされたカートリッジが加熱装置に取り付けられる。加熱されたロール装置は好ましくは、「ホットドック」クッカーである(すなわち、加熱されたローラー上のカートリッジをゆっくりと回転させる装置)。この装置の温度はできるだけ高くすべきであるが、中空繊維またはカートリッジを損傷するほど高くすべきでない。
【0025】
注封材料がセットされた後、過剰な材料は除去される。図3を参照すると、ポストマシンのカートリッジが図示されている。ハウジング40の一部は、ここでは近接した末端キャップであり、キャップ42の一部は、ここでは離れた末端キャップ22であり、壁32は末端キャップ22および24を結合することに留意されたい。さらに、壁パフォーム46は切断されて壁32を形成し、これによって中空繊維の末端はヘッドスペース34に通じている。壁パフォーム46を切断するときは、中空繊維が閉じないように注意すべきである。旋盤が使用されるとき切断刃はカートリッジの中心ラインに位置するのではなく中心ラインより高いか低いところに位置するのがよい。
【0026】
カートリッジ18が最終形状に機械加工された後、ハウジングパフォーム46に挿入される。図1を参照すると、カートリッジ18はハウジング12内におかれることが示されている。末端キャップ22および24は、ハウジング12の内壁に対して流体密封的にかみ合わされている。この流体密封的かみ合わせはいかなる手段であってもよい。例えば、このかみ合わせは、O−リング、接着剤、溶接、回転溶接、超音波溶接、ねじ山などによって達成される。
【0027】
本発明は、本発明の精神および本質的な帰結から離れない限り、他の形で実施することができ、したがって、本発明の範囲については、明細書ではなく特許請求の範囲を参照すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】組み立てられた中空繊維モジュールを図示する。
【図2】カップ壁を除去する前の中空繊維モジュールを図示する。
【図3】カップ壁を除去した後の中空繊維モジュールを図示する。
【符号の説明】
【0029】
12 ハウジング
14 円周ポート
16 軸ポート
18 カートリッジ
22 末端キャップ
24 末端キャップ
26 ポート
28 軸ポート
32 壁
34 ヘッドスペース
39 堆積
40 ハウジング
42 中空繊維マット
44 キャップ
A 主軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空繊維マットの堆積を含む中空繊維カートリッジであって、前記堆積は主軸および2つの末端面を有し、各前記マットは前記主軸に対して実質的垂直に配置されており、少なくとも1つの末端キャップが1つの前記末端面に結合されていることを特徴とする中空繊維カートリッジ。
【請求項2】
さらに、各末端面に結合されている末端キャップを含む請求項1に記載の中空繊維カートリッジ。
【請求項3】
注封材料の壁が前記中空繊維マットを前記末端キャップに結合する請求項1に記載の中空繊維カートリッジ。
【請求項4】
前記注封材料は熱硬化性材料または熱可塑性材料である請求項1に記載の中空繊維カートリッジ。
【請求項5】
前記マットの前記中空繊維は中空でない壁、多孔質の壁または微細孔質の壁を有する請求項1に記載の中空繊維カートリッジ。
【請求項6】
請求項1に記載のカートリッジを有するハウジングを含む中空繊維モジュール。
【請求項7】
円周末端部を有する中空繊維マット、
前記マットの堆積であって、各前記マットの前記円周末端部は前記隣接するマットの前記端部とそろって配置されており、前記堆積は主軸と2つの末端面を有し、各前記マットは前記主軸に実質的に垂直に配列されている前記マットの堆積、
1つの前記末端面に結合されている少なくとも1つの末端キャップ、および
前記マットの前記円周末端部において壁を規定し、前記末端キャップを前記堆積に結合する注封材料を含む中空繊維カートリッジ。
【請求項8】
各末端面に結合されている末端キャップをさらに含む請求項7に記載の中空繊維カートリッジ。
【請求項9】
中空繊維の前記堆積はさらに調節壁を有する請求項7に記載の中空繊維カートリッジ。
【請求項10】
請求項7に記載のカートリッジを有するハウジングを含む中空繊維モジュール。
【請求項11】
前記カートリッジと前記ハウジングの間のヘッドスペースをさらに含み、前記ヘッドスペースは分割されている請求項10に記載の中空繊維モジュール。
【請求項12】
中空繊維カートリッジの製造方法であって、
主軸を有するカートリッジハウジングを中空繊維マットの堆積で充填する工程であって、前記マットは実質的に前記主軸に垂直であり、各マットは円周末端部を有する工程、
前記ハウジングをキャップで閉じる工程、
前記堆積されたマットの円周端部を注封し、前記ハウジングの内壁表面に沿って壁を形成することによって前記ハウジングの底部を前記キャップに結合する工程、および
前記ハウジングの側壁部を除去し、前記中空繊維の中空を露出する工程を含む中空繊維カートリッジの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の中空繊維カートリッジをハウジングに挿入する工程を含む中空繊維モジュールの製造方法。
【請求項14】
前記中空繊維は中空でない壁、多孔質の壁または微細孔質の壁を有する請求項12に記載の製造方法。
【請求項15】
前記キャップは円錐台の形状を有する請求項12に記載の製造方法。
【請求項16】
前記注封材料は熱可塑性材料または熱硬化性材料である請求項12に記載の製造方法。
【請求項17】
前記注封材料をキュアする工程をさらに含む請求項12に記載の製造方法。
【請求項18】
前記キュアは前記カートリッジを加熱する工程をさらに含む請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記キュアは前記カートリッジをホットドッククッカー上で加熱する工程を含む請求項17に記載の製造方法。
【請求項20】
前記カートリッジは前記ハウジング内に密封されている請求項13に記載の製造方法。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−528274(P2008−528274A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553115(P2007−553115)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/000617
【国際公開番号】WO2006/081059
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(598064680)セルガード エルエルシー (17)
【Fターム(参考)】