説明

中継装置

【課題】本発明は、占有帯域が異なる複数のチャネルを周波数軸上における所望の配置で中継する中継装置に関し、歪み補償と多様なチャネル配置への対応とに併せて、そのチャネル配置の自在な変更および設定を可能とすることを目的とする。
【解決手段】複数nのチャネルのユニークな占有帯域B1〜Bnの何れもが分割されることなく前記複数nのチャネルが区分されて含まれる複数p(<n)の帯域毎にダウンコンバートを行い、かつ前記複数pの帯域を揃えるダウンコンバート手段と、前記帯域が揃えられた複数pの帯域に、前記ダウンコンバートと反対のアップコンバートが施された場合に前記複数nのチャネルの周波数軸上における配置が所望の配置となる再配置を一括して施すチャネル再配置手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、占有帯域が異なる複数のチャネルを周波数軸上における所望の配置で中継する中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地上波ディジタル放送等の放送系では、建造物の影、トンネルや地下道の内部等のように放送波の受信が困難な不感地帯は、放送波を受信して再放送するギャップフィラーが設置されることによって解消される。
【0003】
しかし、このようなギャップフィラーには、局所的な不感地帯を小さな送信電力で解消するために、低廉化および小型化が厳しく要求され、かつ狭小な場所に設置される。
また、ギャップフィラーに到来して再放送の対象となる放送波は、その放送波の送信端との間における伝搬路が必ずしも見通し距離内には形成されず、しかも、そのギャップフィラーの回りにも受信周波数と送信周波数とが同じであるSFN(Single-Freqency
Network)中継局が多く存在し得るため、マルチパスや回り込みに起因する波形歪みを伴なう。
【0004】
従来、このような波形歪みに起因するサービスエリアの劣化の回避は、例えば、1台で複数のチャネルの中継を行い、かつ後述する特許文献1ないし特許文献3に開示された発明が適用されたギャップフィラーによって実現されていた。
【0005】
なお、本発明に関連性がある先行技術としては、以下に列記する特許文献1ないし特許文献5がある。
(1) 「所定の周波数チャンネルのサブキャリア信号を多重化して含む信号の伝送路特性を測定する伝送路特性測定器において、信号帯域外の周波数帯域、および信号帯域外の周波数帯域と信号帯域の境界周波数帯のスペクトルの信号強度レベルを信号帯域のスペクトルの信号強度レベルと同レベルに引き上げる」ことによって、「任意の複数のチャンネルのスペクトルに基づいて、高い分解能の伝送路特性を測定する」点に特徴がある伝送路特性測定器…特許文献1
【0006】
(2) 「複数のチャンネルに対して周波数分割多重がなされた無線信号を受信する受信部と、前記受信部において受信した無線信号からFIRフィルタにて回り込み信号の逆位相信号を生成しながら、生成した回り込み信号の逆位相信号をフィードバックすることによって、新たに受信した無線信号から回り込み信号を削除するキャンセラ部と、前記キャンセラ部において回り込み信号が削除された無線信号を送信する送信部と、前記キャンセラ部において回り込み信号が削除された無線信号をもとに、前記キャンセラ部でのFIRフィルタに設定すべきタップ係数を導出する制御部とを備え、前記制御部は、無線信号から導出した受信スペクトルの逆数に、当該受信スペクトルに対応すべき送信スペクトルを乗算することによって、逆特性スペクトルを導出するスペクトル補正・逆数化部と、無線信号から導出した受信スペクトルでの各チャンネルに対する信号レベルをもとに、各チャンネルに対する重み係数を導出する重み係数導出部と、前記重み係数導出部において導出した重み係数をもとに、前記スペクトル補正・逆数化部において導出した逆特性スペクトルにおけるチャンネル間の信号レベルが近くなるように、逆特性スペクトルを補正するレベル補正部と、前記レベル補正部において補正した逆特性スペクトルをもとにタップ係数を導出するキャンセル用係数導出部とを備える」ことによって、「チャンネル間の信号レベルが異なっていても、回り込み成分のキャンセルを実行する」点に特徴がある中継装置…特許文献2
【0007】
(3) 「複数のチャンネルが周波数多重された信号を受信用アンテナにて受信し、受信した信号を増幅した後に送信用アンテナから送信する中継装置に接続する制御装置であって、前記中継装置から、送信前の信号を受けつける受付部と、前記受付部において受けつけた信号に対して、複数のチャンネルのそれぞれを単位に発振状態の発生を調査する解析部と、前記解析部において発振状態の発生が検出されたチャンネルに対する利得の変更を前記中継装置に指示する指示部と、を備える」ことによって、「回り込みによる発振状態の影響を低減する」点に特徴がある制御装置およびそれを利用した中継装置…特許文献3
【0008】
(4) 「地上の地球局から地球の静止軌道に位置する衛星にCDMチャネルを含む放送波を送信し、この衛星は受信した放送波を地上のサービスエリアに対して送信すると共に、前記衛星からの放送波を地上局で受信し、受信周波数と同一周波数でそのエリアに対してギャップフィラー波として再送信するように構成された衛星ディジタル音声放送システムにおいて、前記衛星からの放送波に含まれるCDMチャネル数に対して、前記地上局から再送信される放送波に含まれるCDMチャネル数を少なく設定する」ことにより、「放送波に含まれるCDMチャネル数をできる限り多くして衛星ディジタル音声放送のサービス性を向上する」点に特徴がある衛星ディジタル音声放送システム…特許文献4
【0009】
(5) 「衛星送信器からの放送電波を地上のモバイル端末が受信するモバイル放送のギャップフィラーシステムであって、前記モバイル放送の放送センターが送信するギャップフィラー用TDM信号を番組信号として受信し、前記受信したTDM信号をCATV放送の番組信号に準じる伝送規格のキャリヤ信号に変換して出力する中継出力部と、従続接続される少なくとも1台のノード装置と前記ノード装置に接続されるケーブルとを備え、前記中継出力部から入力される前記キャリヤ信号を伝送して出力するCATV伝送系と、前記CATV伝送系から入力される前記キャリヤ信号を、前記放送電波と同じCDM変調された電波に変換して、前記モバイル端末へ送信する電波送信部とを備え、前記ノード装置は、前記中継出力部から前記キャリヤ信号が入力される第1の入力端子と、外部、又は前段のノード装置からCATV放送の番組信号の多重信号が入力される前記第2の入力端子と、前記第2の入力端子へ入力される前記多重信号を出力し、更に前記第1の入力端子へ前記キャリヤ信号が入力された場合、前記第2の入力端子へ入力された前記多重信号の所定のチャネルへ前記第1の入力端子から入力されたキャリヤ信号が挿入された第2の多重信号を出力する第1の出力端子と、前記第2の入力端子へ前記キャリヤ信号が挿入された前記第2の多重信号が入力される場合、前記挿入されたキャリヤ信号を取り出して前記電波送信部へ出力する第2の出力端子とを具備する」ことにより、「ケーブル減衰の影響を避け、且つケーブル敷設工事の障害を避ける」点に特徴があるギャップフィラーシステム…特許文献5
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−017236号公報
【特許文献2】特開2009−100067号公報
【特許文献3】特開2009−100068号公報
【特許文献4】特開2002−190760号公報
【特許文献5】特開2006−080985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上述した従来例では、特許文献1ないし特許文献3に基づくマルチパスや回り込みの補償は、その補償の対象となる複数のチャネルが周波数軸上で隙間なく隣接していなければ達成されず、これらのチャネル毎のレベルに大きな格差があるほど著しく精度が低下することが問題となっていた。また、送受同一チャネルになることが前提のため、MFN(Multi Frequency Network)中継には適用できなかった。
【0012】
本発明は、歪み補償と多様なチャネル配置への対応とに併せて、そのチャネル配置の自在な変更および設定を可能とする中継装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明では、ダウンコンバート手段は、複数nのチャネルのユニークな占有帯域B1〜Bnの何れもが分割されることなく前記複数nのチャネルが区分されて含まれる複数p(<n)の帯域毎にダウンコンバートを行い、かつ前記複数pの帯域を揃える。チャネル再配置手段は、前記帯域が揃えられた複数pの帯域に、前記ダウンコンバートと反対のアップコンバートが施された場合に前記複数nのチャネルの周波数軸上における配置が所望の配置となる再配置を一括して施す。
【0014】
すなわち、複数nのチャネルは、何れのチャネルも分割されることなく、複数pの帯域に区分されて帯域が揃えられた後、チャネル配置が一括して所望の配置に変換される。
【0015】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の中継装置において、前記チャネル再配置手段は、前記再配置の過程で、前記複数nのチャネルと前記再配置の結果として得られた複数nのチャネルとの間における回り込みに起因する歪みの補償と、マルチパスに起因する歪みの補償と、レベル等化との全てまたは一部を一括して施す。
【0016】
すなわち、複数nのチャネルの中継において上記回り込みやマルチパスに起因して生じる歪みと、レベルの格差との何れも、専用のハードウェアに代わるディジタル信号により、実現される。
【0017】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の中継装置において、前記占有帯域B1〜Bnの帯域幅は共通の帯域幅Bであり、前記複数pの帯域の帯域幅は前記帯域幅Bの偶数倍の帯域幅である。前記ダウンコンバートに供される局発信号の周波数は、前記帯域が揃えられた複数pの帯域の周波数軸上における上端、下端、中心の何れ1つの周波数である。
【0018】
すなわち、ダウンコンバートに供される局発信号の周波数と、そのダウンコンバートの過程で行われる帯域濾波処理の帯域と、チャネル再配置手段が上記再配置のために行う処理の帯域との何れも、共通化あるいは標準化される。
【0019】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の中継装置において、デシメーション手段は、前記再配置を実現する処理の対象にデシメーションを施す。
【0020】
すなわち、帯域が揃えられた複数pの帯域の再配置を実現する処理は、演算対象の情報量が減少することにより、処理量の拡大が図られることなく効率的に実現される。
【0021】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の中継装置において、インターポレーション手段は、前記再配置を実現する処理の結果にインターポレーションを施す。
【0022】
すなわち、本発明に係る中継装置によってチャネル毎の再配置が行われる複数nのチャネルの信号と、その再配置が施されて与えられる信号との間におけるビットレートの格差が軽減され、あるいは圧縮される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、複数pの帯域の不揃いとA/D変換の速度の上限との制約によって妨げられることなく、複数nのチャネルの再配置および中継がハードウェアおよびソフトウェアの構成の標準化により確度高く安定に実現される。
【0024】
また、本発明では、コストの増加と性能の低下との何れもが生じることなく、回り込み、マルチパスおよびレベルの格差の多様な形態に対する柔軟な適応に併せて、総合的な信頼性の向上が図られる。
【0025】
さらに、本発明では、ハードウェアおよびソフトウェアの構成の簡略化とモジュール化とが図られ、価格性能比および総合的な信頼性の向上が図られる。
【0026】
また、本発明では、コストが大幅に増加することなく、所望の精度および応答性の確保が容易に達成される。
【0027】
さらに、本発明に係る中継装置は、互いに反対の処理を行うハードウェアやソフトウェアの対として簡便に構成される。
【0028】
したがって、本発明が適用された伝送系や放送系では、多様なチャネル配置その他の電波行政の要求や制約に対して安価にかつ柔軟に適応しつつ、所望のチャネルの再配置および中継が安価に実現される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態を示す図である。
【図2】信号処理部が各サブバンド対応部に対応して行う処理に等価なハードウェアの構成を示す図である。
【図3】本実施形態における信号処理部の動作フローチャートである。
【図4】本実施形態の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す図である。
【0031】
図において、アンテナ11Rの給電端はバンドパスフィルタ12RおよびLNA13Rを介して周波数変換器14R-1〜14R-4の入力に並列に接続される。これらの周波数変換器14R-1〜14R-4の局発入力には、それぞれ周波数がfRL1〜fRL4である局発信号が入力される。さらに、これらの周波数変換器14R-1〜14R-4の出力は、それぞれバンドパスフィルタ15R-1〜15R-4を介して周波数変換器16R-1〜16R-4の入力に接続される。これらの周波数変換器16R-1〜16R-4の出力は、それぞれA/D変換器17-1〜17-4を介して信号処理部20の第一ないし第四の入力ポートに接続される。信号処理部20の第一ないし第四の出力ポートは、それぞれD/A変換器18-1〜18-4を介して周波数変換器16T-1〜16T-4の入力に接続される。これらの周波数変換器16T-1〜16T-4と上記周波数変換器16R-1〜16R-4との局発入力には、周波数が既定のfL0である局発信号が入力される。さらに、周波数変換器16T-1〜16T-4の出力は、それぞれバンドパスフィルタ15T-1〜15T-4を介して周波数変換器14T-1〜14T-4の入力に接続される。これらの周波数変換器14T-1〜14T-4の局発入力には、それぞれ周波数がfTL1〜fTL4である局発信号が入力される。周波数変換器14T-1〜14T-4の出力は共に電力増幅器(PA)13Tの入力に接続され、その電力増幅器13Tの出力はバンドパスフィルタ12Tを介してアンテナ11Tの給電端に接続される。
【0032】
本発明の特徴は、本実施形態では、図1に一点鎖線枠で示すように、上記構成要素の内、符号に付加された添え番号がそれぞれ「1」〜「4」である要素の集合である4つのサブバンド対応部100-1〜100-4が並行して作動し、かつ信号処理部20がこれらのサブバンド対応部100-1〜100-4にかかわる同様の処理(以下、「ディジタル信号処理」という。)を実時間で行う点にある。
【0033】
なお、以下では、サブバンド対応部100-1〜100-4に共通の事項については、該当する構成要素の符号の添え文字として、「1」〜「4」の何れにも該当し得ることを意味する添え文字「c」を用いて記述する。
【0034】
図2は、信号処理部が各サブバンド対応部について行う処理に等価なハードウェアの構成を示す図である。
図3は、本実施形態における信号処理部の動作フローチャートである。
図4は、本実施形態の動作を説明する図である。
以下、図1〜図4を参照して本実施形態の動作を説明する。
【0035】
バンドパスフィルタ12RおよびLNA13Rは、アンテナ11Rに到来した無線信号の内、本実施形態に係るギャップフィラーによって再送信されるべき放送波(図4(1))が分布し得る帯域Bにその無線信号の帯域を制限することによって、有効な放送波を抽出する。
【0036】
周波数変換器14R-c、バンドパスフィルタ15R-cおよび周波数変換器16R-cは、既述の局発信号の周波数fRLC、fL0に基づいて上記放送波が分布し得る帯域Bが周波数軸上で4等分されたサブバンドc(c=1〜4)の成分を抽出する(図4(2))。
【0037】
ここに、上記局発信号の周波数fRLC、fL0とバンドパスフィルタ15R-cの濾波特性とは、サブバンドcの周波数軸上の両端が上記放送波の如何なるチャネルの占有帯域内にも該当しないように予め設定される。
【0038】
A/D変換器17-cは、このようにして抽出されたサブバンドcの成分をA/D変換することにより、そのサブバンドcの成分の振幅の列を時系列の順に示すディジタル信号を生成する。
【0039】
信号処理部20は、以下に列記する手順によるディジタル信号処理を上記ディジタル信号に施す。
【0040】
(1) 該当するディジタル信号を一括して直交復調する(図2(1))ことにより、上記サブバンドcに配置されている既知の放送チャネル(以下では、「CHc1」、「CHc2」、「CHc3」、「CHc4」で示される4つのチャネルであると仮定する。)の復調信号を生成する(図3ステップS1)。
【0041】
(2) このような復調信号に帯域濾波処理を施す(図2(2))ことにより、上記4つの放送チャネルCHc1〜CHc4の個々の占有帯域bC1〜bC4の成分を抽出する(図3ステップS2)。
【0042】
(3) これらの占有帯域bC1〜bC4の成分をそれぞれダウンコンバートし(図2(3))、かつデシメーション(図2(4))に併せて所定の帯域濾波処理(図2(5))を施すことによって、レートが所定の値に制限されたベースバンド信号sC1〜sC4に変換する(図3ステップS3),図4(3))。
【0043】
(4) マルチパスおよび回り込みに起因して上記ベースバンド信号sC1〜sC4にそれぞれ含まれる歪みを補償することにより、補償済みベースバンド信号sC1′〜sC4′を生成する(図2(6),図3ステップS4)。なお、このような歪みの補償は、例えば、特許3851490号公報、特許3713211号公報、特許3713214号公報、特許4579518号公報の何れかに開示された発明の適用によって実現できる。
【0044】
(5) サブバンドc(c=1〜4)毎に、これらのサブバンドc(c=1〜4)においてそれぞれ同様にして生成された補償済みベースバンド信号s11′〜s14′、s21′〜s24′、s31′〜s34′、s41′〜s44′(既述のsC1′〜sC4′を含む。)の内、該当するサブバンドを介して再送信されるべき4つずつのベースバンド信号SC1′〜SC4′を選択する(図2(6),図3ステップS5)。
【0045】
(6) このような4つの補償済みベースバンド信号SC1′〜SC4′に、それぞれインターポレーション(図2(7))と低域濾波処理(図2(8))とを施すことによって、上記デシメーションの前におけるレートと同じレートの補償済みベースバンド信号SC1〜SC4を生成する(図3ステップS6,図4(4))。
【0046】
(7) 該当するサブバンド内の周波数軸上における上記補償済みベースバンド信号SC1〜SC4の配置に適合した周波数fC1〜fC4の局発信号に基づいて、これらの補償済みベースバンド信号SC1〜SC4をアップコンバートして合成し(図2(9),(10))、さらに、直交変調する(図2(11)) ことによってディジタル信号(以下、「再送信用サブバンド信号」という。)を生成する(図3ステップS7)。
【0047】
D/A変換器18-cは、このようにして生成された再送信用サブバンド信号をD/A変換することにより、アナログの再送信用サブバンド信号(以下、「アナログサブバンド信号」という。)を生成する(図4(5))。
【0048】
周波数変換器16T-c、バンドパスフィルタ15T-cおよび周波数変換器14T-cは、既述のA/D変換器17-cの前段で周波数変換器14R-c、バンドパスフィルタ15R-cおよび周波数変換器16R-cによって行われる処理と反対の処理を上記アナログサブバンド信号に施すことにより、そのアナログサブバンド信号を再送信が行われるべき周波数帯の再送信波に変換する(図4(6))。
【0049】
したがって、周波数変換器14T-1〜14T-4の出力には、サブバンドc(c=1〜4)を介して再送信が行われるべき4つの異なる周波数帯に、これらのサブバンドのアナログサブバンド信号が配置されてなるアナログ再送信信号が得られる。
【0050】
電力増幅器13Tは、そのアナログ送信信号を増幅することにより送信電力を所望の値に設定し、このようなアナログ送信信号の占有帯域を制限するバンドパスフィルタ12Tとアンテナ11Tとを介して送信する。
【0051】
すなわち、本実施形態によれば、アンテナ11Rに到来し、かつ再送信の対象となる放送波のチャネルが周波数軸上に隣接して配置されていない場合であっても、これらのチャネルは、何れもベースバンド領域で既述の歪み補償と、サブバンド内および異なるサブバンド間における再配置とが施された後に、所望の周波数で柔軟かつ確実に再送信される。
【0052】
また、このような歪み補償および再配置は、何れも、信号処理部20によってリアルタイムのディジタル信号処理として行われるため、放送波の多様なチャネル配置および再送信にかかわる要求や仕様に対して柔軟に適応して安価に実現される。
【0053】
さらに、本実施形態では、何れのサブバンドおよびチャネルについても、上記ディジタル信号処理が実時間で並行して施されるため、チャネル間における伝搬遅延時間の格差が生じず、既述の歪み補償の精度も高く安定に維持される。
【0054】
なお、本実施形態では、再送信の対象となるチャネルのベースバンドへの移行、そのベースバンドにおける歪み補償、これらのチャネルの周波数軸上における再配置、これらの処理により得られた各チャネルの信号の所望の帯域への移行の何れもが、既述の4つのサブバンドに区分されて並行して行われている。
【0055】
しかし、このようなサブバンドの数は、例えば、A/D変換器17-CやD/A変換器18-Cが追従可能なクロック周波数の最大値や信号処理部20の最大の処理量によって妨げられない小さな値に設定されてもよい。なお、本実施形態に係るギャップフィラーは、例えば、国内の地上波ディジタル放送に適用され、かつ上記サブバンドの数が「4」に設定された場合には、全国のチャネル配置の99.2パーセントに適応可能である。
【0056】
また、本発明は、上記地上波ディジタル放送に適用された場合には、各チャネルの占有帯域幅が6MHzであるので、A/D変換器17-CやD/A変換器18-Cのクロック周波数がその占有帯域幅の16倍である96MHzに設定されることにより、NCO(Numerical Controlled Oscillator)が備えられることなく構成可能である。
【0057】
さらに、本発明は、A/D変換器17-CとD/A変換器18-Cとが共通のクロック信号に同期して作動する場合には、再送信の対象としてアンテナ11Rに到来する全てのチャネルと、これらのチャネルが再送信される個々の周波数との何れも、既述の局発信号の周波数fRL1〜fRL4、fL0、fTL1〜fTL4の組み合わせにより自在に設定可能であるため、SFN中継だけではなく、MFN中継にも柔軟に適用可能となる。
【0058】
また、本実施形態では、信号処理部20は既述のディジタル信号処理を全てのチャネルについてもベースバンド領域で行うため、このようなディジタル信号処理の過程では、これらのチャネルの何れについても、個別に、既述のマルチパスや回り込みに起因する歪みの補償に併せてレベル等化が図られてもよい。
【0059】
さらに、本実施形態では、全てのチャネルのベースバンド領域への移行は、信号処理部20が行うディジタル信号処理の過程で図られている。
【0060】
しかし、このようなベースバンド領域への移行は、例えば、周波数変換器14R-C、バンドパスフィルタ15R-Cおよび周波数変換器16R-Cによって行われる周波数変換の下で行われてもよい。
【0061】
また、本実施形態では、A/D変換器17-Cに入力されるサブバンドcの成分は、そのA/D変換器17-Cの前段において周波数変換器14R-C,16R-Cによって行われる2回の周波数変換の下で生成されている。
【0062】
しかし、このような2回の周波数変換は、例えば、これらの周波数変換を一括して行う周波数変換のための局発信号がD/A変換器18-Cの後段で(周波数変換器16T-C、14T-Cによって)行われる周波数変換の過程でスプリアスとして残存することが許容され、あるいはそのスプリアスを別途抑圧することが可能である場合には、一本化されてもよい。
【0063】
さらに、本実施形態では、既述のマルチパスや回り込みに起因する歪みの補償とレベル等化との全てまたは一部を実現する処理は、特に必要がない場合には、行われなくてもよい。
【0064】
また、このような処理が互いに直交する2つの信号のベクトルを示す信号空間上で行われる必要がない場合には、既述の直交復調(図2(1))および直交変調(図2(11)) は行われなくてもよい。
【0065】
さらに、本発明は、既述の地上波ディジタル放送のギャップフィラーに限定されず、周波数軸上でユニークな帯域が割り付けられた複数のチャネルに既述の処理を施すことができるならば、周波数帯、周波数配置、チャネル配置、変復調方式および多元接続方式の如何にかかわらず、放送系、伝送系、通信系等の多様な系に適用可能である。
【0066】
また、本発明は、地上波ディジタル放送に適用された場合であっても、例えば、ワンセグメント放送に供されている複数の異なるセグメントの再放送(周波数軸上における再配置だけではなく、既述の歪み補償やレベル等化が含まれてもよい。)にも同様に適用可能である。
【0067】
さらに、本実施形態では、サブバンド対応部100-1〜100-4によってそれぞれ生成されたアナログ再送信信号は、電力増幅器13T、バンドパスフィルタ12Tおよびアンテナ11Tを介して再送信されている。
【0068】
しかし、本発明は、このような構成に限定されず、例えば、D/A変換器18-C、周波数変換器16T-C、バンドパスフィルタ15T-C、周波数変換器14T-C、電力増幅器13T、バンドパスフィルタ12Tおよびアンテナ11Tの全てまたは一部が除外されて構成されてもよい。
【0069】
このような場合には、上記除外された要素の何れも、既述のディジタル信号処理の下で生成された再送信用サブバンド信号に所定の処理を施す装置やサイトに備えられてもよい。
また、本実施形態では、以下に列記する諸元の何れも、予め既知の値や形態に設定されている。
【0070】
(1) 局発信号の周波数fRLC、fL0、fTLC
(2) バンドパスフィルタ12R、15R-C、15T-C、12Tの通過域およびこれらの通過域の帯域幅
(3) A/D変換器17-CおよびD/A変換器18-Cが稼働すべき契機およびクロック周波数
【0071】
(4) アンテナ11R、11Tによって形成されるべき指向性(アンテナ11R、11Tによって行われ得るビームフォーミングやナルステアリング等の形態)
(5) 信号処理部20によって行われるべきディジタル信号処理の演算対象(内容および形式を含む。)、演算手順、演算結果(内容および形式を含む。)の態様
【0072】
(6) このようなディジタル信号処理にかかわる以下のパラメータ
(6-1) 直交復調(図2(1))および直交変調(図2(11)) に適用されるサブキャリア信号の周波数
(6-2) 帯域濾波処理(図2(2)、(5))の形態(通過域およびその帯域幅を含む。)
【0073】
(6-3) ダウンコンバート(図2(3))およびアップコンバート(図2(9))に適用される局発信号の周波数
(6-4) デシメーション(図2(4))およびインターポレーション(図2(7))の形態
(6-5) 低域濾波処理(図2(8))の形態(通過域およびその帯域幅を含む。)
(6-6) 歪み補償とレベル等化との双方もしくは何れか一方(図2(6))の形態
【0074】
しかし、本発明はこのような構成に限定されず、上記諸元の全てまたは一部を主導的に設定し、各部の連係を統括する制御部(図示されない。)が別途備えられてもよい。
【0075】
さらに、上記デシメーションとインターポレーションとの双方もしくは何れか一方は、既述のディジタル信号処理の精度や応答性が低下せず、あるいは低下しても許容される程度に抑えられるならば、行われなくてもよい。
【0076】
また、本発明では、再送信の対象となる何れのチャネルについても、周波数軸上に隣接して配置され、かつ占有帯域幅が同じあるチャネルに限定されず、周波数および占有帯域幅は、既知あるならば、多様に異なってもよい。
【0077】
さらに、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。
【0078】
以下、本願に開示された発明の内、「特許請求の範囲」に記載しなかった発明の構成、作用および効果を「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段」の欄の記載に準じた様式により列記する。
【0079】
[請求項6] 請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の中継装置において、
前記ダウンコンバート手段は、
前記帯域が揃えられた複数pの帯域をベースバンドに揃える
ことを特徴とする中継装置。
【0080】
このような構成の中継装置では、請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の中継装置において、前記ダウンコンバート手段は、前記帯域が揃えられた複数pの帯域をベースバンドに揃える。
【0081】
すなわち、チャネル再配置手段は、既述の再配置をベースバンド領域の処理として簡便に実現することができる。
したがって、所要する処理量の削減に併せて、応答性の向上が容易に達成される。
【0082】
[請求項7] 請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の中継装置において、
前記再配置が施された複数pの帯域を周波数軸上のユニークな帯域にそれぞれ変換するアップコンバート手段を備えた
ことを特徴とする中継装置。
【0083】
このような構成の中継装置では、請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の中継装置において、アップコンバート手段は、前記再配置が施された複数pの帯域を周波数軸上のユニークな帯域にそれぞれ変換する。
【0084】
すなわち、再配置が施された複数pの帯域は、何れも所望の周波数帯に重複することなく配置されて出力される。
したがって、本発明は、中継先の装置に整合した周波数分割多重方式の伝送路を介して複数nのチャネルの中継を実現することができる。
【符号の説明】
【0085】
11R,11T アンテナ
12R,12T,15R,15T バンドパスフィルタ
13R LNA
13T 電力増幅器(PA)
14R,14T,16R,16T 周波数変換器
17 A/D変換器
18 D/A変換器
20 信号処理部
100 サブバンド対応部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数nのチャネルのユニークな占有帯域B1〜Bnの何れもが分割されることなく前記複数nのチャネルが区分されて含まれる複数p(<n)の帯域毎にダウンコンバートを行い、かつ前記複数pの帯域を揃えるダウンコンバート手段と、
前記帯域が揃えられた複数pの帯域に、前記ダウンコンバートと反対のアップコンバートが施された場合に前記複数nのチャネルの周波数軸上における配置が所望の配置となる再配置を一括して施すチャネル再配置手段と
を備えたことを特徴とする中継装置。
【請求項2】
請求項1に記載の中継装置において、
前記チャネル再配置手段は、
前記再配置の過程で、前記複数nのチャネルと前記再配置の結果として得られた複数nのチャネルとの間における回り込みに起因する歪みの補償と、マルチパスに起因する歪みの補償と、レベル等化との全てまたは一部を一括して施す
ことを特徴とする中継装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の中継装置において、
前記占有帯域B1〜Bnの帯域幅は共通の帯域幅Bであり、
前記複数pの帯域の帯域幅は前記帯域幅Bの偶数倍の帯域幅であり、
前記ダウンコンバートに供される局発信号の周波数は、
前記帯域が揃えられた複数pの帯域の周波数軸上における上端、下端、中心の何れ1つの周波数である
ことを特徴とする中継装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の中継装置において、
前記再配置を実現する処理の対象にデシメーションを施すデシメーション手段を備えた
ことを特徴とする中継装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の中継装置において、
前記再配置を実現する処理の結果にインターポレーションを施すインターポレーション手段を備えた
ことを特徴とする中継装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−175542(P2012−175542A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37299(P2011−37299)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】