説明

中華麺およびパスタ

【課題】
臭気などの副作用を抑制しながら、時間経過に伴う品質の劣化も少ないニンニクを配合した中華麺およびパスタを提供すること。
【解決手段】
生地中にニンニクおよびハチミツを配合したことを特徴とする中華麺およびパスタによって、ニンニクがハチミツで取り囲まれた状態になり、胃などの消化器系に対する刺激が緩和され、過剰にニンニクを摂取した場合でも体調の悪化を予防でき、しかも食後の呼気の臭いも抑制される。またニンニクを取り囲んだハチミツは、体内で徐々に消化されるため、ニンニクの有効成分は時間を掛けて身体に吸収され、その効果は従来より長く持続する。なおハチミツの分量は、乾燥ニンニクの半分程度の重量が最適であり、またハチミツの代用として整腸効果などが期待できるオリゴ糖を使用しても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラーメンの主要な構成要素である中華麺、および欧州を起源とするパスタに関する。
【背景技術】
【0002】
ラーメンは、その手軽さや味覚の奥深さなどから国内において最も人気のある食品の一つになっており、ラーメンを主体とする飲食店は全国に存在している。このような背景から他店との差別化を目的とした商品開発も盛んであり、スープや具材などに様々な試行錯誤が繰り広げられている。また健康に対する意識の高まりから、体に良いとされている飲食物を意識的に選択したり、塩分を控えるといったことが日常的に行われている。このような背景からラーメンにおいても、健康増進などを目的として、薬味としてニンニクを添加することが多く、コショウと並んで摺りおろしたニンニクがテーブルに置かれている店舗も多い。
【0003】
薬味としてニンニクをラーメンに添加することは一般的だが、国内有数のニンニクの生産地である青森県三戸郡田子町では、製麺段階で粉末状のニンニクを混練した中華麺を町の特産品としており、町の公式ホームページなどを通じて情報発信を行っている。このように中華麺の生地中にニンニクを混練することで、自宅などでラーメンを調理する場合、ニンニクの確保や、摺りおろす作業が不要で利便性に優れており、また中華麺自体が特有の味覚を有しており、健康志向と相まって人気商品になっている。
【0004】
欧州を起源とするパスタは、スパゲッティなどの麺類やマカロニのほか、板状のラザニアなどの総称であり、国内ではタラコスパゲッティなど独自の進化を続けている。これらは、うどんやそばといった和風の麺類とは異なり、比較的濃い味付けでも何ら問題がなく、しかも添えるソースの種類が豊富であり、ニンニクとの組み合わせも違和感が少ない。そこでスパゲッティを始めとするパスタにも、健康志向を背景としてニンニクとの融合が模索されている。なおニンニクを配合した麺については、下記特許文献などが提案されている。
【特許文献1】特開2000−312565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ニンニクは健康食品として有名であり、疲労回復や強精作用などの効果が古くから提唱されているが、吐息に特有の臭いを帯びることや、胃を始めとする消化器系に刺激を与え、食べ過ぎによって却って体調が悪化するといった問題点が知られている。特にニンニクを混練した中華麺は、消費者がその分量を調整できないため、人によっては過剰摂取になり、体調が悪化する恐れがある。これを回避するためにニンニクの配合量を少なくすると、臭いなどを通じてニンニク特有の効果を想起させることが難しくなり、消費者に対する訴求力が弱くなるという問題がある。
【0006】
そのほか中華麺単体は、製麺工場で小麦粉などの原料にカンスイなどを加えて混練するといった工程で生産され、これを飲食店や一般の消費者が購入して、食する直前に加熱調理が行われる。したがって中華麺の完成から食されるまでには、流通などのため数日程度の時間を要し、この間の品質劣化を抑制する必要がある。これについては、麺を一旦乾燥させるなどの方法があるものの、味覚の点では生の状態が最も良く、また各種の保存料を用いることもできるが、健康に対する意識の高まりから安易な使用は難しい。なおパスタについても生の状態で流通する物は、同様の品質劣化という問題が発生する。
【0007】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、臭気などの副作用を抑制しながら、時間経過に伴う品質の劣化も少ないニンニクを配合した中華麺およびパスタの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決する請求項1記載の発明は、生地中にニンニクおよびハチミツを配合したことを特徴とする中華麺である。ここで中華麺とは、小麦粉を主体としてデンプンや食塩などを混ぜ合わせた粉末に、カンスイなどの水分を付加して混練した餅状の生地を作り、これを引き伸ばして細長く切断した麺単体を指しており、カンスイの化学作用で全体に黄色味を帯びているのが普通である。なお、うどんやそばといった異種の麺は当然ながら本発明の対象外だが、加熱されたスープを用いる一般のラーメンの他、いわゆる冷やし中華には適用可能である。
【0009】
ニンニクおよびハチミツの配合は、生地が完成する前の段階で実施する必要があり、麺になった段階では、ニンニクおよびハチミツが全体に均一に拡散していることが必須の条件である。なお本発明で使用するニンニクは品種などに制限がなく、粉末状の乾燥したものを用いるのが一般的であるが、摺りおろした生のものも使用可能である。
【0010】
ニンニクとともに中華麺に配合するハチミツについては、様々なものが流通しており、植物の蜜を主成分としていれば産地や種類は限定されない。なおハチミツは粘度が高く生地中への拡散が難しいことから、加熱してカンスイに溶解させるなどの対策が必要になる。このような方法により、ニンニクの周囲を粘度の高いハチミツが取り囲んだ状態になり、ニンニク特有の刺激性や臭気が緩和される。またハチミツによって水分を閉じ込めることも可能で、中華麺の乾燥を抑制できる。
【0011】
請求項2記載の発明は、前記ハチミツは、乾燥したニンニクの重量に対して40〜60パーセントの割合で配合することを特徴とする請求項1記載の中華麺である。つまりこの発明に基づいて中華麺に乾燥ニンニクを100グラム配合する場合には、40〜60グラムのハチミツを使用することになる。ハチミツの配合量をこのように規定することで、ハチミツによる味覚の変化を抑制しながらニンニク特有の刺激性や臭気の緩和が可能になる。なお生のニンニクを乾燥させると重量が四分の一程度になることが知られており、乾燥したニンニクの代わりに生のニンニクを用いる場合、ハチミツの配合割合は、10〜15パーセントになる。そのほか中華麺に対するニンニクの配合割合については、需要動向に応じて自在に変更されるもので、特定の範囲に限定することはできない。
【0012】
請求項3記載の発明は、生地中にニンニクおよびオリゴ糖を配合したことを特徴とする中華麺である。この発明は基本的に請求項1記載の発明と同様だが、ハチミツの代用としてオリゴ糖を使用した点が特徴である。なおオリゴ糖については、単糖類が2個から10個程度結びついたものと学術的に規定されており、本発明ではラフィノースのように大豆やビートなどから分離され、ビフィズス菌を増やすといった効果が提唱されている甘味料を指している。そのほかオリゴ糖は、液状のものと砂糖に似た粉末状のものが存在しているが、本発明はいずれも問題なく使用でき、生地に混練する工程は、ハチミツの場合と同様である。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明を中華麺からパスタに置き換えたもので、パスタも主成分は小麦粉であり、ニンニクおよびハチミツの混練は同様に行われる。なお本発明におけるパスタとは、小麦粉を成形したスパゲティやマカロニなどの単体を指しており、ソース類は当然ながら対象外である。そして請求項5記載の発明についても、請求項2記載の発明を中華麺からパスタに置き換えたもので、ニンニクおよびハチミツの配合割合は中華麺と同様である。最後の請求項6記載の発明も、請求項3記載の発明を中華麺からパスタに置き換えたものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明のように、生地中にニンニクおよびハチミツを配合した中華麺は、ニンニクがハチミツに取り囲まれた状態になり、胃などの消化器系に対する刺激が緩和され、過剰にニンニクを摂取した場合でも体調の悪化を予防でき、しかも食後の呼気の臭いも抑制される。またニンニクを取り囲んだハチミツは、体内で徐々に消化されるため、ニンニクの有効成分は時間を掛けて身体に吸収され、その効果がより長く持続する。この因果関係は生化学的に立証された訳ではないが、本発明を実際に試食した被験者は、消化器系を始めとする身体の不調を訴えることなく、ニンニクの効果が実感でき呼気の臭いも軽減されたと述べている。さらにハチミツの保湿効果により、時間の経過による中華麺の乾燥を抑制でき、品質の劣化が少なく、製麺時と変わらない品質を消費者に提供できる。そのほか甘味とは全く無縁というイメージのあるラーメンにおいて、中華麺にハチミツを配合するといった方法は、容易に発想できるものではないため、この点を消費者に訴えることで、興味本位での購入が促進されるという副次的な効果も期待できる。これらが相まって、従来にない健康志向の中華麺を提供できる。
【0015】
請求項2記載の発明のように、ニンニクとハチミツの配合割合を規定することで、ハチミツの味覚を認識させないでニンニクによる刺激性を効果的に緩和可能になり、自然な味覚でしかも身体に対しても優しい中華麺の提供が可能になる。
【0016】
請求項3記載の発明のように、ハチミツの代用としてオリゴ糖を使用した場合でも、ハチミツを用いる場合と同様な効果が期待でき、しかも整腸作用も期待できる優れた中華麺の提供が可能になる。
【0017】
請求項4,5,6記載の発明により、パスタにおいても中華麺と同様にニンニクの効果を活かしながら呼気の臭いなどの問題を解消できる。特にスパゲッティに添えるミートソースは濃厚な味覚であり、ニンニクとの相性がよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
生の状態の中華麺は、一人分が100〜120グラム程度であり、ここに配合されるニンニクは、生のもの二粒程度が最適である。この分量は成人男子が消化器系の不調を訴えることなく食することができ、味覚や効果を十分に認識できる理想的な値である。ただし生のニンニクではなく、粉末状の乾燥ニンニクを用いる場合が多く、生のニンニク二粒は、乾燥ニンニク4グラムに相当する。またハチミツについては、一般に市販されているハチミツをそのまま使用するが、その配合についてはラーメンの味覚やニンニク特有の風味を損なうことなく、しかも消化器系への刺激を緩和できるよう、乾燥ニンニクの半分程度の重量が理想的である。したがって一人分当たり4グラムの乾燥ニンニクを使用する場合、一人分当たり2グラムのハチミツを使用する。なお一人分あたりのニンニクの使用量は、必ずしも先の4グラムに限定されず需要動向に基づき変更する場合もあるが、ハチミツの使用量については、ニンニクの重量の半分程度という関係を維持することが好ましい。
【0019】
製麺工場では、数十人分以上の中華麺を一度に生産するため、乾燥ニンニクおよびハチミツの配合量は、前記の数値に人数分を乗じた分量が一度に使用される。乾燥ニンニクは粉末状であり、小麦粉やデンプンなどの粉末を混ぜ合わせる際、同時に添加される。またハチミツはカンスイ中に溶解させる。そして粉末にカンスイを付加する以降は、ニンニクとハチミツが均一に拡散するよう十分な混練が必要になるが、工程自体は従来と全く同じであり、最終的に一人分単位で区切られた中華麺が完成する。この中華麺は飲食店向けの場合、大型のトレイに麺を並べるだけの簡素な形態で出荷されるが、小売店向けの場合、二,三食分の麺とスープの素を一つの袋に詰めて生ラーメンとして出荷される。
【0020】
中華麺の製造後は、ハチミツによる保湿性により麺からの水分の蒸発が抑制されるため、長時間にわたり製造直後と同様な柔らかい状態が維持される。調理に際しては、従来と同様に沸騰した湯の中で二分程度麺をゆでた後、スープと混ぜ合わせて好みの具材を載せると完成である。この時、スープからわき上がる湯気と合わせて、ハチミツによって緩和された微かなニンニクの臭気が漂うため、不快感を与えることなく疲労回復や強精作用を想起させ、食欲も促進される。また食後においても、ハチミツの緩衝作用により消化器系に対する刺激が緩和され、体調が悪化することもなく、呼気の臭いも周囲に不快感を与えない程度になる。
【0021】
中華麺ではなくパスタを生産する場合においても、生地を作るまでの工程は中華麺とほぼ同様に適用でき、その後は従来から行われている公知の工程を経て、マカロニやラザニアなどのパスタが完成する。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地中にニンニクおよびハチミツを配合したことを特徴とする中華麺。
【請求項2】
前記ハチミツは、乾燥したニンニクの重量に対して40パーセントから60パーセントの割合で配合することを特徴とする請求項1記載の中華麺。
【請求項3】
生地中にニンニクおよびオリゴ糖を配合したことを特徴とする中華麺。
【請求項4】
生地中にニンニクおよびハチミツを配合したことを特徴とするパスタ。
【請求項5】
前記ハチミツは、乾燥したニンニクの重量に対して40パーセントから60パーセントの割合で配合することを特徴とする請求項4記載のパスタ。
【請求項6】
生地中にニンニクおよびオリゴ糖を配合したことを特徴とするパスタ。