説明

中通し竿

【課題】 釣り糸を巻上げる際に巻き上げられる釣り糸が持ち上がる水が釣り人へ振り掛かるのを抑制するとともに、釣り糸を繰出す際には釣り糸に作用する繰出し抵抗を抑制することのできる中通し竿の釣り糸導入口を提供する。
【解決手段】 内部空間に釣り糸挿通路を形成する元竿4の外面に、リール5からの釣り糸aを釣り糸挿通路内へ導入する釣り糸導入口7を形成するとともに、釣り糸導入口7の開口面積を変更自在なスライド式シャッター10で構成し、スライド式シャッター10を大きく閉塞する位置と小さく閉塞する位置とにスライド移動自在に構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部空間に釣り糸挿通路を形成する竿体の外面に、リールからの釣り糸を前記釣り糸挿通路内へ導入する釣り糸導入口を形成してある中通し竿に関する。
【背景技術】
【0002】
釣り糸導入口の開口面積は一定のものであった(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−215512号公報(段落番号〔0016〕、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
釣り糸導入口は釣り糸がリールに巻き上げられる際やリールから繰出される際に釣り糸が振れを生ずるので、その振れの振幅によっても釣り糸導入口の縁が釣り糸に無理な抵抗を作用させないように考慮して、開口面積が設定されている。
したがって、十分な開口面積を確保されているところから、釣り糸を巻き上げる際に、巻上げられる釣り糸が持ち上がってくる水分が釣り糸導入口を通して外部に飛び出て、釣り人に降り掛かることがあった。
【0005】
本発明の目的は、釣り糸を巻上げる際に巻き上げられる釣り糸が持ち上がる水が釣り人へ振り掛かるのを抑制するとともに、釣り糸を繰出す際には釣り糸に作用する繰出し抵抗を抑制することのできる中通し竿の釣り糸導入口を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、内部空間に釣り糸挿通路を形成する竿体の外面に、リールからの釣り糸を前記釣り糸挿通路内へ導入する釣り糸導入口を形成するとともに、前記釣り糸導入口の開口面積を変更自在な開口面積変更機構を装備してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
つまり、開口面積変更機構を利用して、釣り糸を巻上げる際には釣り糸導入口の開口面積を小さくするとともに、釣り糸を繰出す際には釣り糸導入口の開口面積を大きく採る。
このように切り換えることによって、釣り糸を巻き上げる際には開口面積を小さくして釣り糸が持ち上がってくる水分が飛び散るのを阻止するとともに、釣り糸を繰出す際には釣り糸が水分を持ち上がってくることはないので開口面積を大きくして釣り糸導入口の縁による釣り糸に対する摺動抵抗を抑えることにしてある。
【0008】
〔効果〕
このように開口面積変更機構を設けることによって、釣り糸巻き上げ時と釣り糸繰出し時に対応した開口面積の切り換えを行うことができ、釣り糸巻き上げ時の水分の降り掛かりを抑制しながら、円滑な釣り糸の繰出しを行う、という相反する課題の解決を図ることができた。
【0009】
請求項2に係る発明の特徴構成は、請求項1に係る発明において、前記開口面積変更機構を、釣り糸導入口を閉塞するスライド式シャッターで構成するとともに、前記スライド式シャッターを大きく閉塞する位置と小さく閉塞する位置とにスライド移動自在に構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
つまり、スライド式シャッターによって開口面積変更機構を構成したので、簡単な構成で操作性も良好であるので、釣り糸の巻き上げ操作と繰出し操作とを迅速に切り換える場合にも、開口面積変更機構への操作も迅速に行えるものである。
【0011】
請求項3に係る発明の特徴構成は、請求項1に係る発明において、前記開口面積変更機構を、釣り糸導入口を閉塞する揺動式シャッターで構成するとともに、前記揺動式シャッターで前記釣り糸導入口の閉塞状態を変更自在に構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0012】
〔作用効果〕
つまり、開口状態を揺動によって切り換えることができるので、シャッター構造を単一部材で構成することができ、切換構造の簡素化を図ることができる。
【0013】
請求項4に係る発明の特徴構成は、請求項1〜3の内のいずれか一つに係る発明において、前記釣り糸導入口を覆う釣り糸導入カバー体を設けるとともに、前記釣り糸導入カバー体のリールに向かう面に、リールからの釣り糸を前記釣り糸導入口に誘導する釣り糸案内孔を形成するとともに、前記釣り糸導入カバー体の前記リールに向かう面の側方に位置する側面部分を開放する状態に形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0014】
〔作用効果〕
釣り糸導入口を覆う釣り糸導入カバー体を設けるとともに、前記釣り糸導入カバー体のリールに向かう面に、リールからの釣り糸を前記釣り糸導入口に誘導する釣り糸案内孔を形成することによって、釣り糸導入口に誘導される釣り糸の方向性を予め定めることができるので、釣り糸導入口での縁部と釣り糸との接触する機会を抑えることができる。
これに加えて、糸導入カバー体は、側面部分が開放状態にあるので、釣り糸を竿体の内部空間に導入する作業を行う場合に元上の竿尻端開口を目視しやすく、さらに、開口面積変更機構への操作位置も目視しやすく、操作性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
中通し竿Aの構成について説明する。図1に示すように、中通し竿Aは、トップガイド1Aを装備した一番竿1、二番竿2、三番竿(元上)3、及び、リール5を装着するリールシート6を備えた元竿4を組み合わせ構成されている。元竿4のリールシート6より先端側には、釣り糸aを竿の釣り糸挿通路内に導入する釣り糸導入口7を形成してあり、その釣り糸導入口7を覆う釣り糸導入カバー体8を設けてある。
【0016】
図1に示すように、釣り糸aを誘導する釣り糸挿通路を形成する竿は、一番竿1、二番竿2、三番竿3であり、釣り糸導入口7から挿入された釣り糸aは、二番竿2、一番竿1の釣り糸挿通路を通ってトップガイド1Aから繰出される。
図示してはいないが、糸挿通用の内部経路を形成した一番竿1や二番竿2においては、各竿の内周面に螺旋状等の突条を設けてあり、釣り糸aの摺動抵抗を低減する構成を採っている。
【0017】
図2及び図3に示すように、釣り糸導入口7は、竿の軸線方向に長い楕円状の開口を有しており、その開口縁に金属フレーム7Aが嵌め込み固定されている。金属フレーム7Aの竿尻側の一端は切除されて開放状態にあり、その開放部位に対向する竿先側の他端の開口縁には硬質のリング状枠7Bが装着固定されている。金属フレーム7Aの材料としては、チタン、ステンレス等が使用され、硬質のリング状枠7Bとしては、アルミナ、サーメット等のセラミックスが使用されている。
【0018】
図1及び図4に示すように、釣り糸導入カバー体8は、釣り糸導入口7を覆う板状のカバー本体8Aと釣り糸案内孔8Bとを備えて構成されている。カバー本体8Aは細幅の板材を円弧状に形成したもので、釣り糸導入口7の竿先側と竿尻側とで元竿4の外周面に取り付け固定されている。カバー本体8Aの両側方は開放状態にあり、外方から釣り糸導入口7及び、元竿4内に収納されている元上3の竿尻端開口を視認することができる構成となっている。カバー本体8Aの材質としては、チタン、ステンレス等の金属材、または、硬質プラスチックが選定できる。
【0019】
カバー本体8Aのリールシート6に向かう傾斜面には、釣り糸案内孔8Bが穿設されており、孔縁には半円状の硬質糸導入リングが装着されている。硬質の糸導入リングの材質としては、アルミナ、サーメット等のセラミックスが使用されている。
【0020】
釣り糸導入口7の開口面積を切換変更する開口面積変更機構Bについて説明する。図2及び図3に示すように、開口面積変更機構Bは、釣り糸導入口7を閉塞するスライド式シャッター10で構成されており、スライド式シャッター10を大きく閉塞する位置と小さく閉塞する位置とに亘って人為操作によってスライド移動自在に構成されている。
スライド式シャッター10は、板状のシャッター本体10Aとシャッター本体10Aに取り付けた半円状の硬質糸導入リング10aとで構成されている。硬質の糸導入リング10aの材質としては、アルミナ、サーメット等のセラミックスが使用される。
【0021】
図2及び図3に示すように、糸導入口7の開口縁に装着された金属フレーム7Aの両側内向き面7aに開口縁に沿った誘導溝7bが形成してある。一方、シャッター本体10Aの両側端縁には係合縁10bが形成されるとともに糸導入リング10aの横幅を両側端縁の係合縁10b同士の横幅より小さく金属フレーム7Aの両側内向き面7a、7a同士の間隔と同幅か小さくしてある。このシャッター本体10Aの両係合縁10b、10bを、金属フレーム7Aの竿尻側切欠き部位より金属フレーム7Aの左右の誘導溝7b、7bに係合させて、シャッター本体10Aに形成した指置き部10cに指をかけてそのシャッター本体10Aを人為的に係合縁10aの形成方向に沿ってスライド移動自在に構成してある。つまり、シャッター本体10をスライド移動自在に構成することによって、糸導入口7の開口度合いを変更することができる。
【0022】
ここでは、図示はしていないが、シャッター本体10Aの係合縁10b部位にスプリングボールを装備し、この係合縁10bに対向する金属フレーム7Aの内向き面7a,7aに前記スプリングボールのスプリングによって付勢されるボールと係合する係合穴を形成して、スライド式シャッター10としての位置決め機構を構成してもよい。スプリングボールと係合穴との取り付け位置を入れ替えてもよい。
【0023】
〔第2実施形態〕
ここでは、主として第1実施形態とは異なる点を説明する。図5(イ)(ロ)に示すように、元竿4のリールシート6より竿先側に釣り糸導入口7を形成し、釣り糸導入口7の開口縁に金属フレーム7Aを嵌合装着するとともに、釣り糸導入口7を閉塞する揺動式シャッター11を設けて、開口面積変更機構Bを構成する。
【0024】
図5(イ)(ロ)に示すように、揺動式シャッター11は、ベルクランク状に形成された揺動アーム11Aの一方の揺動アーム部分11aに、前記した半円状の硬質糸導入リング11dを取り付けて、釣り糸aを円滑に誘導すべく、シャッター部分として構成してある。他方の揺動アーム部分11bには摘まみ部が設けてあり、揺動アーム11Aの揺動を司る構成となっている。
揺動アーム11Aは回動軸11eに取り付けられており、回動軸11eは金属フレーム7Aの両側に位置する内向き面7a,7a同士に亘って架設されている。揺動アーム11Aは、回動軸11eの軸芯回りに揺動自在であり、釣り糸導入口7の開口面積を変更するようになっている。
【0025】
図5(イ)(ロ)に示すように、シャッター部分11aを所定位置に設定して釣り糸導入口7を小さく開口した状態から、そのシャッター部分11aを下方に揺動させて大きく開口した状態に切り換えることができる。したがって、釣り糸aを繰出す際には、釣り糸導入口7を大きく開放して釣り糸導入口7の開口縁と釣り糸aとの接触する機会をできるだけ減らすようにシャッター部分11bを下方位置に設定し、釣り糸aを巻き上げる際には、釣り糸導入口7の開口度をできるだけ小さくして釣り糸aが持ち上がってくる水分が竿外に飛び散ることを阻止するようにシャッター部分11bを開口位置に設定して、釣り糸導入口7の開口度を切り換えることができる。
【0026】
以上のように、揺動式シャッター11を切り換えるのに、シャッター部分11aを所定位置に設定する構成を採っているが、シャッター部分11aを所定位置に維持する構成として、スプリングボール形式のストッパー構造Cを採用する。
【0027】
〔別実施形態〕
(1) 開口面積変更機構Bとしては、釣り糸導入口7の開口を覆う蛇腹式の膜体によって開閉シャッターを形成して、蛇腹部分を伸縮させることによって開口面積を切り換え変更するように構成してもよい。
(2) 釣り糸導入カバー体8の代わりに、リールシート6と釣り糸導入口7との間に、元竿4の外周面から立設する外付けガイドを設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】中通し竿の全体側面図
【図2】糸導入口の開口面積変更機構Bとしてシャッター式のものをしめす斜視図
【図3】図における斜視図
【図4】開口面積変更機構Bの拡大図であり、(イ)は大きく開口を開けた状態を示す縦断側面図、(ロ)は小さく開口を開けた状態を示す縦断側面図
【図5】糸導入口の開口面積変更機構Bの別実施構造に掛かるもので、(イ)は大きく開口を開けた状態を示す縦断側面図、(ロ)は小さく開口を開けた状態を示す縦断側面図
【符号の説明】
【0029】
5 リール
7 釣り糸導入口
8 釣り糸導入カバー体
8B 釣り糸案内孔
10 スライド式シャッター
11 揺動式シャッター
B 開口面積変更機構
a 釣り糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間に釣り糸挿通路を形成する竿体の外面に、リールからの釣り糸を前記釣り糸挿通路内へ導入する釣り糸導入口を形成するとともに、前記釣り糸導入口の開口面積を変更自在な開口面積変更機構を装備してある中通し竿。
【請求項2】
前記開口面積変更機構を、釣り糸導入口を閉塞するスライド式シャッターで構成するとともに、前記スライド式シャッターを大きく閉塞する位置と小さく閉塞する位置とにスライド移動自在に構成してある請求項1記載の中通し竿。
【請求項3】
前記開口面積変更機構を、釣り糸導入口を閉塞する揺動式シャッターで構成するとともに、前記揺動式シャッターで前記釣り糸導入口の閉塞状態を変更自在に構成してある請求項1記載の中通し竿。
【請求項4】
前記釣り糸導入口を覆う釣り糸導入カバー体を設けるとともに、前記釣り糸導入カバー体のリールに向かう面に、リールからの釣り糸を前記釣り糸導入口に誘導する釣り糸案内孔を形成するとともに、前記釣り糸導入カバー体の前記リールに向かう面の側方に位置する側面部分を開放する状態に形成してある請求項1〜3の内のいずれか一つに係る発明に記載の中通し竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−223149(P2006−223149A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39240(P2005−39240)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】