説明

中通し竿

【課題】 釣り糸の材質、釣り上げる魚の種類、或るいは、釣り竿が伸縮式の竿であるか否かによって、釣り糸ガイド体等の姿勢を切り換えて、釣り糸に作用する摺動抵抗を極力低減できる構成を提供する。
【解決手段】 内部空間に釣り糸挿通路を形成する手元側竿体4の外面に、リール8からの釣り糸aを釣り糸挿通路内へ導入する釣り糸導入口7を形成する。リール8と釣り糸導入口7との間に、釣り糸aを釣り糸導入口7に案内する釣り糸ガイド体9を手元側竿体4の外面に立設し、釣り糸ガイド体9を倒伏姿勢、立ち姿勢、中間傾斜姿勢に保持する摩擦板を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部空間に釣り糸挿通路を形成する竿体の外面に、リールからの釣り糸を前記釣り糸挿通路内へ導入する釣り糸導入口を形成してある中通し竿に関する。
【背景技術】
【0002】
釣り糸導入口とリールシートとの間に、リールから繰出された釣り糸を釣り糸導入口に案内する釣り糸ガイド体を竿体の外面に立設していた(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3560394号(段落番号〔0014〕、図1、2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
釣り糸がリールから繰出される際やリールに巻き取られる際には、左右に振られたり上下に波打ったりして、直線上を移動しないことがある。また、リールとしてスピニングリールを使用する場合には、スピニングリールから繰出される釣り糸は螺旋状を呈して繰出されるので、釣り糸導入口の両側端縁や竿の外面に接触することがあり、釣り糸の摺動抵抗を高めていた。
このような状況を踏まえて、釣り糸ガイド体をリールと釣り糸導入口との間に配置することにしている。このことによって、釣り糸ガイド体がない場合に比べて、リールから繰り出される釣り糸が竿体に接触したり、或いは、釣り糸導入口の左右端と接触することを抑制できるものである。
しかし、釣り糸ガイド体は竿体の外面から一定の高さで立設されているので、リールから繰出されている釣り糸はこの釣り糸ガイド体から釣り糸導入口に向かって急激に進行方向を変化させてその釣り糸導入口に導入されることになる。
そのために、釣り糸に作用する摺動抵抗が大きくなり、釣り糸の繰出しが迅速に行えず、かつ、巻き上げ時の抵抗も大きなものであった。
また、リールから繰出される釣り糸に対して釣り糸ガイド体の糸案内孔の姿勢がその釣り糸に直交姿勢にある場合に糸案内孔の開口を大きく使用できて、釣り糸に対する摺動抵抗を小さく抑えられるものであるが、糸案内孔の姿勢は常に一定であるので、開口部の姿勢が釣り糸に対して必ずしも直交する状態に維持されるものではなかった。
【0005】
本発明の目的は、釣り糸の材質、釣り上げる魚の種類、或るいは、釣り竿が伸縮式の竿であるか否かによって、釣り糸ガイド体等の姿勢を切り換えて、釣り糸に作用する摺動抵抗を極力低減できる構成を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、内部空間に釣り糸挿通路を形成する竿体の外面に、リールからの釣り糸を前記釣り糸挿通路内へ導入する釣り糸導入口を形成するとともに、前記リールを取り付けたリールシートと前記釣り糸導入口との間に、前記リールからの釣り糸を前記釣り糸導入口に案内する釣り糸ガイド体を竿体の外面に立設し、前記釣り糸ガイド体を前記釣り糸導入口に近接する倒伏姿勢と前記釣り糸導入口から離間する立ち姿勢、及び、前記倒伏姿勢と前記立ち姿勢との間の中間傾斜姿勢とに切換揺動自在に取り付け、前記釣り糸ガイド体を前記した倒伏姿勢、立ち姿勢、中間傾斜姿勢に保持する機構を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
つまり、釣り糸ガイド体を釣り糸導入口に近接する倒伏姿勢と釣り糸導入口から離間する立ち姿勢とに亘って切換揺動自在に構成するので、倒伏姿勢から立ち姿勢に切り換わる途中の段階では、傾斜する姿勢でしかも立ち姿勢に比べて竿の表面に近接する姿勢になっている。
このように釣り糸ガイド体の姿勢を変化させることによって、この釣り糸ガイド体の基本的使用態様としては、リールと釣り糸導入口とを結ぶ略直線上に釣り糸ガイド体の高さを位置させることができるとともに、釣り糸ガイド体の釣り糸案内孔を釣り糸に対して直交する状態に近い傾斜姿勢に設定できるのである。
リールから繰出される釣り糸の繰出し位置が変動する場合であっても、釣り糸ガイド体の釣り糸案内孔を釣り糸に対して直交する状態に切り換えることができるので、左右や上下に振れる釣り糸に対して釣り糸案内孔の開口を十分広く採ることができ、必要以上に釣り糸の振れを制限することなく、かつ、その振れが大きくなり過ぎることを抑制することができる。
但し、釣り糸が激しく左右や上下に振れる場合にその振れを抑える必要がある場合には、釣り糸案内孔を釣り糸に対して傾斜状態に設定して、見かけ上の釣り糸案内孔の孔径を上下方向で小さなものに限定して、釣り糸の摺動抵抗が増大する一面はあるものの、釣り糸の振れを抑制することができる。
さらに、前記釣り糸ガイド体を前記した倒伏姿勢に設定することによって、竿体外面より突出する部分が少なくなり、竿をケース等に仕舞い処理する場合の占有スペースを小さくできるものである。
【0008】
〔効果〕
したがって、釣り糸ガイド体の釣り糸案内孔が保有する開口面積を十分広くして釣り糸を誘導でき、釣り糸ガイド体の部分での釣り糸に作用する摺動抵抗を低減することができる。
このことによって、リールの機種を変更した場合や、釣り糸の材質を変更した場合にも、釣り糸ガイド体の姿勢変更によって、釣り糸を竿の外面に接触させることを少なくしたり左右の振れを抑制しながら、釣り糸に作用する摺動抵抗を低減した状態で釣り糸を竿体内に誘導できるのである。
また、仕舞い時の占有スペースを小さくできるので、嵩張らず携帯性を向上させることができる。
【0009】
請求項2に係る発明の特徴構成は、内部空間に釣り糸挿通路を形成する第1手元側竿体の外面に、リールからの釣り糸を前記釣り糸挿通路内へ導入する釣り糸導入口を形成し、前記リールを取り付けるリールシートを備えた第2手元側竿体内に前記第1手元側竿体を出退自在に装備するとともに前記第1手元側竿体を第2手元側竿体内に収納した状態と前記第1手元側竿体を第2手元側竿体から引き出した伸長状態とのいずれの状態をも保持可能な伸縮機構を設け、前記第1手元側竿体における竿尻端と前記釣り糸導入口との間の外面に、前記リールからの釣り糸を前記釣り糸導入口に案内する釣り糸ガイド体を立設し、前記釣り糸ガイド体を前記釣り糸導入口に近接する倒伏姿勢と前記釣り糸導入口から離間する立ち姿勢、及び、前記倒伏姿勢と前記立ち姿勢との間の中間傾斜姿勢とに切換揺動自在に取り付け、前記釣り糸ガイド体を前記した倒伏姿勢、立ち姿勢、中間傾斜姿勢に保持する機構を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
請求項2に係る発明が請求項1に係る発明と異なる点は伸縮機構を備えている点である。伸縮機構を備えていることによって、第1手元側竿体を第2手元側竿体から引き出した伸長状態においては、第1手元側竿体に形成している釣り糸導入口及び釣り糸ガイド体に対して、第2手元側竿体に取り付けてあるリールとの間隔が収縮状態にある場合よりも広くなる。そうすると、リールから繰出される釣り糸の釣り糸ガイド体に誘導される入射角が小さくなるところから、釣り糸ガイド体から釣り糸導入口へ入り込むのに釣り糸が急角度に進行方向を変更する必要があり、そこでの摺動抵抗が大となる。
一方、このようにリールと釣り糸導入口との間隔が広がった場合には、釣り糸が第2手元側竿体の外面に接触し易くなるので、釣り糸の接触を回避するだけの高さが釣り糸ガイド体には要求される。
以上のような観点より、リールと釣り糸導入口との間隔が広がった場合には、釣り糸ガイド体の傾斜度を小さくして高さを高くし、釣り糸が第1手元側竿体に近接する状態になることに対応させるとともに、リールと釣り糸導入口との間隔が近づいて来たならば、釣り糸ガイド体の傾斜度を大きくして傾斜姿勢に近づけて釣り糸が第1手元側竿体から離間する状態となるのに対応させるものである。
このように、伸縮機構を利用して伸縮可能に釣り竿を構成するものであっても、釣り糸ガイド体がその姿勢を変更できるので、釣り糸ガイド体の釣り糸に対する持上げ作用及び振れ止め作用を適確に作用させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
〔第1実施形態〕
中通し竿Aの構成について説明する。図1及び図2に示すように、中通し竿Aは、トップガイド1Aを装備した一番竿1、二番竿2、三番竿3、四番竿、及び、第1手元側竿体4、及び、リール8を装着するリールシート6を備えた第2手元側竿体5を組み合わせて、振出竿に構成されている。第2手元側竿体5のリールシート6より先端側には、釣り糸aを竿の釣り糸挿通路内に導入する釣り糸導入口7と釣り糸ガイド体9を設けてある。
【0012】
図1及び図2に示すように、釣り糸aを誘導する釣り糸挿通路を形成する竿は、一番竿1、二番竿2、三番竿3、四番竿であり、釣り糸導入口7から挿入された釣り糸aは、二番竿2、一番竿1の釣り糸挿通路を通ってトップガイド1Aから繰出される。
図示してはいないが、糸挿通用の内部経路を形成した一番竿1や二番竿2においては、各竿の内周面に螺旋状等の突条を設けてあり、釣り糸aの摺動抵抗を低減する構成を採っている。
【0013】
第1手元側竿体4と第2手元側竿体5との伸縮機構について説明する。図1に示すように、第1手元側竿体4における釣り糸ガイド体9を取り付けている部分は肉盛りされた大径膨出部4Aとなっており、その大径膨出部4Aにおける竿尻側端部が傾斜嵌合面4aになっており、傾斜嵌合面4aが第1手元側竿体4を第2手元側竿体5に収縮した状態で第2手元側竿体5の玉口内面に嵌合する構成となっている。
【0014】
図1(イ)に示すように、収縮した状態では、第1手元側竿体4の竿尻端も嵌合保持されることになっており、竿尻端を嵌合保持するものとして、第2手元側竿体5における竿尻端の内部にゴム製の嵌合リング体(図示せず)が装着してあり、嵌合リング体で第1手元側竿体4の竿尻端を内嵌して嵌合保持する構成となっている。つまり、第1手元側竿体4は、竿先側の後ろ向き傾斜嵌合面4aを第2手元側竿体5の玉口内面に、かつ、竿尻端を嵌合リング体に内嵌することによって、収縮状態に保持されている。
図1(ロ)に示すように、第1手元側竿体4を第2手元側竿体5から引き出した伸長状態にあっては、第1手元側竿体4の竿尻端が第2手元側竿体5の玉口内面に嵌合することによって抜け止め保持される。
【0015】
釣り糸ガイド体9の構成について説明する。図2及び図3に示すように、釣り糸ガイド体9は、大径膨出部4Aに取り付けられており、大径膨出部4Aに外嵌固定されている基端筒部9Aと基端筒部9Aから立設されているガイド主体部9Bとからなっている。ガイド主体部9Bには釣り糸案内孔9bを形成してあり、釣り糸案内孔9bの縁部にはセラミック製のガイドリングを嵌め込んである。
【0016】
釣り糸ガイド体9の揺動構造について説明する。図2及び図3に示すように、基端筒部9Aの上端部にはボス部9aが形成してあり、ボス部9aに対してガイド主体部9B下端部に形成された連結部9cがピン9d連結されて、ガイド主体部9Bが基端筒部9Aに対してピン9d軸芯回りで揺動自在に支持されている。ピン9dは第1手元側竿体4の軸線に対して直交する横向き軸芯を有しており、ガイド主体部9Bは、竿先側から竿尻側に沿った方向で揺動自在に支持されることになる。
【0017】
釣り糸ガイド体9を釣り糸導入口7に近接する倒伏姿勢と釣り糸導入口7から離間する立ち姿勢、及び、倒伏姿勢と立ち姿勢との間の中間傾斜姿勢とに切換揺動自在に取り付け、釣り糸ガイド体9を前記した倒伏姿勢、立ち姿勢、中間傾斜姿勢に保持する機構Bを設けてある。
保持する機構Bとしては、図示していないが、基端筒部9Aのボス9aとガイド主体部9Bの連結部9cとの間に摩擦板等の摩擦力を発揮する機構を設けて構成する。摩擦板等の存在によって、ガイド主体部9Bは任意の姿勢で保持され、かつ、その姿勢を任意に切り換えることができるようになる。これによって、釣り人が任意の傾斜姿勢にガイド主体部9Bを切り換え設定できることになる。
【0018】
〔第2実施形態〕
第2実施形態としては、第1実施形態において記載した第1手元側竿体4と第2手元側竿体5とで構成する伸縮機構を有していないものに、第1実施形態で説明した釣り糸ガイド体9を適用した形態を採用する。図示してはいないが、次のような構成を採る。伸縮機構を有していない元竿に対して前記した釣り糸導入口7とリールシート6とを形成するとともに、釣り糸導入口7とリールシート6との間に釣り糸ガイド体9を立設し、この釣り糸ガイド体9を第1実施形態で説明したように、倒伏揺動自在な構成とする。
【0019】
〔別実施形態〕
(1) 釣り糸ガイド体9を倒伏姿勢、立ち姿勢、中間傾斜姿勢に保持する機構Bとしては、次ぎのようなものでもよい。保持する機構Bとしては、図4に示すように、基端筒部9Aのボス9aとガイド主体部9Bの連結部9cとの揺動支点部位に、図示するようなブラケット11を立設する。ブラケット11を4分の1円弧状に形成し、そのブラケット11の円弧面に沿って複数の係合孔11Aを形成する。一方、ガイド主体部9Bに係合孔11Aに対して係合離脱自在なスプリングボール(図示せず)を装着して、係合孔11Aとスプリングボールとで保持する機構Bを構成する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】伸縮式の中通し竿を示し、(イ)は収縮状態に設定した状態を示す全体側面図、(ロ)は、(イ)の状態から第1手元側竿体を伸長状態に切り換えた状態を示す全体側面図
【図2】釣り糸導入口と釣り糸ガイド体との位置関係を示す縦断側面図
【図3】釣り糸ガイド体の縦断正面図
【図4】釣り糸ガイド体に対する保持する機構の別実施構造を示す側面図
【符号の説明】
【0021】
4 第1手元側竿体
5 第2手元側竿体
6 リールシート
7 釣り糸導入口
8 リール
9 釣り糸ガイド体
10 スライド式シャッター
B 保持する機構
a 釣り糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間に釣り糸挿通路を形成する竿体の外面に、リールからの釣り糸を前記釣り糸挿通路内へ導入する釣り糸導入口を形成するとともに、前記リールを取り付けたリールシートと前記釣り糸導入口との間に、前記リールからの釣り糸を前記釣り糸導入口に案内する釣り糸ガイド体を竿体の外面に立設し、前記釣り糸ガイド体を前記釣り糸導入口に近接する倒伏姿勢と前記釣り糸導入口から離間する立ち姿勢、及び、前記倒伏姿勢と前記立ち姿勢との間の中間傾斜姿勢とに切換揺動自在に取り付け、前記釣り糸ガイド体を前記した倒伏姿勢、立ち姿勢、中間傾斜姿勢に保持する機構を設けてある中通し竿。
【請求項2】
内部空間に釣り糸挿通路を形成する第1手元側竿体の外面に、リールからの釣り糸を前記釣り糸挿通路内へ導入する釣り糸導入口を形成し、前記リールを取り付けるリールシートを備えた第2手元側竿体内に前記第1手元側竿体を出退自在に装備するとともに前記第1手元側竿体を第2手元側竿体内に収納した状態と前記第1手元側竿体を第2手元側竿体から引き出した伸長状態とのいずれの状態をも保持可能な伸縮機構を設け、前記第1手元側竿体における竿尻端と前記釣り糸導入口との間の外面に、前記リールからの釣り糸を前記釣り糸導入口に案内する釣り糸ガイド体を竿体の外面に立設し、前記釣り糸ガイド体を前記釣り糸導入口に近接する倒伏姿勢と前記釣り糸導入口から離間する立ち姿勢、及び、前記倒伏姿勢と前記立ち姿勢との間の中間傾斜姿勢とに切換揺動自在に取り付け、前記釣り糸ガイド体を前記した倒伏姿勢、立ち姿勢、中間傾斜姿勢に保持する機構を設けてある中通し竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−246811(P2006−246811A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69336(P2005−69336)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】