説明

中間転写ベルト

【課題】吸水率が小さく、環境によって画像ムラの発生がなく、トナーの飛び散りが発生せず、しかも長期使用に耐える耐久性にも優れた中間転写ベルトを提供する。
【解決手段】ポリイミド樹脂に導電性フィラーを含有する中間転写ベルトにおいて、ポリイミド樹脂を構成する単量体の無水カルボン酸は3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を使用し、ジアミンはp−フェニレンジアミン(PDA)および4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)を使用し、ジアミン成分のPDA/(PDA+ODA)のモル比率が10〜38%であり、導電性フィラーとしてカーボンブラックを10〜25質量%含有することを特徴とする中間転写ベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に近年広く用いられるようになった中間転写ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真方式で像を形成記録する画像形成装置としては、複写機やレーザープリンタ、ビデオプリンタやファクシミリ、それらの複合機等が知られている。この種の装置では装置寿命の向上などを目的として、近年感光ドラム等の像担持体上のトナー像を中間転写ベルトに一旦転写し、それを印刷シート上に転写・定着させる中間転写方式等が広く採用されている。
【0003】
中間転写ベルトに用い得る半導電性ベルトとして、機械特性や耐熱性に優れたポリイミド樹脂に導電性フィラーを分散してなる中間転写ベルトが提案されている。
【0004】
しかしながら、これまでに提案されているポリイミド樹脂からなる半導電性中間転写ベルトは可とう性と剛性のバランスが悪く、中間転写ベルトや転写搬送ベルトとしての耐久性等が十分とは言えなかった。またポリイミド樹脂からなる中間転写ベルトでは、可とう性は十分でも、切り裂き強度の低下が見られ、長期使用においてベルト端部から割れが生じ易いという問題があった(特許文献1参照)。
【0005】
又、従来使用されている、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)と4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)を用いた、BPDA/ODA系ポリイミドは、可とう性が高く、中間転写ベルトとして耐久性に優れているが、剛性が低いため、ベルト自体が伸び易くなり、感光体から中間転写ベルトに転写された画像も伸びることで、正規な位置から画像がずれてしまい画像ずれが発生しやすく、また、中間転写ベルトとして、含水率がやや大きいためか抵抗率の環境依存性が大きくなり、環境変化により画像ムラが発生する。この特性を改良するために、ジアミンはODAに代えてp−フェニレンジアミン(PDA)を用いた剛性の高いBPDA/PDA系ポリイミドを添加するとよいが、BPDA/PDA比率を高くすると、可とう性が不十分で、長期使用でベルト割れが発生する(特許文献2)。
【0006】
即ち、BPDA/ODAでは、剛性が不十分で、画像ずれが生じやすく、カラー画像では色ずれの問題が顕著になる。可とう性と剛性のバランスをとるため、特許文献2ではBPDA/ODA系ポリイミドに加えるBPDA/PDA系ポリイミドの比率を規定している。しかしながら、十分な特性が得られているとは言い難いのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−247988号公報
【特許文献2】特許第4263825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記課題を解決する為に成された。さらに、最近の高画質指向を踏まえ、検討を行ったところ、上記した従来技術を用いると画像上にトナーの飛び散りが発生することも明らかになった。
【0009】
トナーの飛び散りの要因を解析するため、発生場所を確認すると、既に中間転写ベルト上に転写された画像上で飛び散りが確認された。さらに要因解析を進めると、要因の1つに画像形成動作による中間転写ベルトの駆動によって、ベルト自身が振動し、感光体から中間転写ベルトへトナーが静電移動する際、その振動の影響を受け、正しく転写されないことが判明した。
【0010】
即ち、本発明の目的は、環境によって画像ムラの発生がないことに加え、トナーの飛び散りが発生せず、しかも長期使用に耐える耐久性にも優れた中間転写ベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従来使用されている、BPDA/ODA系ポリイミドは、可とう性が高く、中間転写ベルトとして耐久性に優れているが、剛性が低いため中間転写ベルトとして画像ずれが発生しやすい、あるいは、吸水性が高いため、中間転写ベルトとして、抵抗率の環境依存性が大きくなり、環境変化により画像ムラが発生する。
【0012】
しかしながら、本発明者が鋭意検討した結果、限られた領域ではあるが、これらのバランスがとれ、吸水率が小さく環境により画像ムラを発生することがなく、トナーの飛び散りが発生せず、しかも長期使用においてベルト端部から割れが生じることもない、耐久性にも優れた中間転写ベルトが得られる構成があることがわかり本発明に至った。
【0013】
即ち、本発明の目的は、下記構成を採ることにより達成されることがわかった。
【0014】
(1)
ポリイミド樹脂に導電性フィラーを含有する中間転写ベルトにおいて、
ポリイミド樹脂を構成する単量体の無水カルボン酸は3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を使用し、
ジアミンはp−フェニレンジアミン(PDA)および4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)を使用し、
ジアミン成分のPDA/(PDA+ODA)のモル比率が10〜38%であり、
導電性フィラーとしてカーボンブラックを10〜25質量%含有する
ことを特徴とする中間転写ベルト。
【0015】
(2)
前記中間転写ベルトの全体質量から導電性フィラー質量を引いた質量の95質量%以上がBPDA、PDA、ODAの合計質量であることを特徴とする(1)記載の中間転写ベルト。
【0016】
(3)
前記ポリイミド樹脂が重量平均分子量70,000以上200,000以下であることを特徴とする(1)記載の中間転写ベルト。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、環境によって画像ムラの発生がないことに加え、トナーの飛び散りが発生せず、しかも長期使用に耐える耐久性にも優れた中間転写ベルトを提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明につきさらに説明する。
【0019】
本発明においてBPDA/ODA系ポリイミドベルトでは、画像ズレが生じ、BPDA/ODA系ポリイミドにBPDA/PDA系ポリイミドを添加するあるいは、これらの共重合体を用いると改良されることがわかった。しかし、それでも子細に画像を見るとトナーの飛散が生じていることがわかった。
【0020】
この点につき推論すると、振動吸収性を反映する損失正接(tanδ)が関係しているものと考えられる。
【0021】
即ち、弾性、粘性を併せ持つ高分子の力学的特性を分析する方法のひとつに動的粘弾性測定法があり、弾性に相当する貯蔵弾性率(E’)と粘性に相当する損失弾性率(E”)、またE”とE’の比であり、振動吸収性を反映する損失正接(tanδ)が測定できる。
【0022】
BPDA/ODAにBPDA/PDAの比率の異なるベルトについて動的粘弾性を測定すると、BPDA/ODA系ポリイミドにBPDA/PDAを添加すると、BPDA/PDA比率が25%までは、tanδが高くなり、それ以上混合比を高くすると、低下する傾向がみられた。これはBPDA/PDAの割合を高くしていくと、ベルトの性質が可とう性から剛性へと変化して、ベルト自体が固くなるため、材料自身の振動吸収性が失われることが考えられる。
【0023】
tanδが高くなると、振動吸収性が大きくなりベルト駆動時の振動が抑制される。これにより、トナー飛び散りが減少し画質の向上がみられた。tanδが0.025以上で効果があり、その時のBPDA/ODAとBPDA/PDAの比率は10モル%〜38モル%の範囲であった。
【0024】
本発明においてtanδ値の測定は、セイコーインスツル粘弾性スペクトロメータEXSTAR DMS6100にて、周波数50Hz、温度30度で測定した。
【0025】
又、BPDA/PDA比率の少ない領域では剛性が低下するが、剛性を高くするためには、分子量を高くする必要があり、重量平均分子量で、70,000以上が望ましい。その上限は特に限定されないと思われるが、塗布時の粘度等から重量平均分子量200,000以下が好都合である。
【0026】
また、剛性を高くするためには、イミド化反応を十分に行うことが望ましく、特に最適イミド転化温度が異なる2種のポリイミドを使用する場合、300℃で1時間以上の加熱が必要である。
【0027】
〔ポリイミド樹脂〕
本発明におけるポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸残基である全芳香族骨格とジアミン残基であるp−フェニレン骨格とがイミド結合してなるA成分と、テトラカルボン酸残基である全芳香族骨格とジアミン残基であるジフェニルエーテル骨格とがイミド結合してなるB成分とを繰返してなる共重合体、及び/又は前記A成分を繰返し単位とする重合体とB成分を繰返し単位とする重合体とを混合してなるブレンド体である。但し、前述のような理由より、共重合体を使用するのが好ましい。
【0028】
更に、かかる共重合体は、例えばA成分を形成するための全芳香族骨格を有するテトラカルボン酸二無水物等の酸成分、及びp−フェニレン骨格を有するジアミン成分、並びにB成分を形成するための全芳香族骨格を有するテトラカルボン酸二無水物等の酸成分(A成分と同じ場合は不要)、及びジフェニルエーテル骨格を有するジアミン成分を共重合することで得ることができる。また、ブレンド体は、例えばA成分を形成するための全芳香族骨格を有するテトラカルボン酸二無水物等の酸成分、及びp−フェニレン骨格を有するジアミン成分を予め重合してポリアミド酸(重合ワニス)を得ると共に、B成分を形成するための全芳香族骨格を有するテトラカルボン酸二無水物等の酸成分、及びジフェニルエーテル骨格を有するジアミン成分を予め重合してポリアミド酸(重合ワニス)を得た後、両者のポリアミド酸を混合してからイミド転化することで得ることができる。
【0029】
上記の全芳香族骨格を有するテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、又はこれらの芳香環を低級アルキル基等で置換した化合物等が挙げられるが、これらのうち、本発明においては3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いる。
【0030】
又、p−フェニレン骨格を有するジアミン成分としては、p−フェニレンジアミン又はその芳香環を低級アルキル基等で置換した化合物等が挙げられるが、本発明としては、p−フェニレンジアミンを用いる。更に、ジフェニルエーテル骨格を有するジアミン成分としては、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル又はこれらの芳香環を低級アルキル基等で置換した化合物等が挙げられるが、本発明においては4,4′−ジアミノジフェニルエーテルを用いる。
【0031】
〔導電性フィラー〕
本発明における導電性フィラーとしては、導電性もしくは半導電性の微粉末が使用でき、特に制限はないが、ケッチエンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、アルミニウムやニッケル等の金属、酸化錫等の酸化金属化合物、チタン酸カリウム等が例示できるが、本発明においてはカーボンブラックを用いる。特に、平均一次粒子径が、5〜100nmのものが好ましく、特に10〜50nmのものが好ましい。
【0032】
導電性フィラーの配合量はフィラーの種類、粒子径、ポリイミド樹脂(固形分)100質量部に対して、1〜50質量部の範囲が好ましく、2〜30質量部がより好ましい。本発明では、導電性フィラーを選択することと適当な配合量の組み合わせにより、中間転写ベルト等に適した表面抵抗率(10〜1016Ω/□)と体積抵抗率(10〜1016Ω・cm)の範囲に調整されることが好ましい。
【0033】
体積抵抗率等が高すぎるとトナー像の転写時に転写ベルトが著しく帯電することから像担持体と離れる際、剥離放電が起こり転写されたトナー像が飛散する。また、体積抵抗率等が低すぎる場合、転写ベルトと像担持体との間に過大な電流が流れることから、ベルトに転写されたトナー像が像担持体に戻ってしまう。かかる観点より、好ましくは、表面抵抗率が10〜1013Ω/□、体積抵抗率が10〜1012Ω・cmであるのがよい。
【0034】
本発明では、導電性フィラーの配合量に応じて適切なポリイミド樹脂の組成範囲が存在する。本発明の半導電性ベルトは、例えば、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を合成する際に使用する溶媒に導電性フィラーを均一分散させた後、ジアミン成分(p−フェニレンジアミンと4,4′−ジアミノジフェニルエーテル)と酸二無水物成分(3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)を特定量添加し共重合してポリアミド酸溶液を得た後、このポリアミド酸溶液をベルト状に製膜し、加熱乾燥、イミド転化を行って製造することができる。また、その際、ポリアミド酸として、上記の如き混合物を使用することで、ポリイミド樹脂のブレンド体に導電性フィラーを含有してなる半導電性ベルトを製造することができる。
【0035】
このとき、本発明の効果を得るためには、カーボンブラックの含有量は、ベルトの質量の10質量%から25質量%である必要があり、p−フェニレンジアミン成分と4,4′−ジアミノジフェニルエーテル成分のモル比が10/90から38/62である。また、樹脂ベルトの全体質量から導電性フィラーを差し引いた質量の95質量%以上が、p−フェニレンジアミンと4,4′−ジアミノジフェニルエーテル成分とp−フェニレンジアミン成分と4,4′−ジアミノジフェニルエーテル成分との総和である中間転写ベルトであることが必要であることが判明した。
【0036】
〔中間転写ベルト〕
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の中間転写ベルトは、ポリイミド樹脂に導電性フィラーを含有してなるものである。
【0037】
ポリイミド樹脂に導電性フィラーを均一に分散する方法としては特に制限はなく、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液に導電性フィラーをプラネタリーミキサーやビーズミルや三本ロール等で混合・分散する方法や、ポリアミド酸合成時に使用する溶媒中に導電性フィラーをボールミルあるいは超音波等で分散後、この溶媒を用いてポリアミド酸を合成する方法等がある。
【0038】
製膜法については特に制限はなく、金型の内周面、あるいは外周面に導電性フィラーを含有するポリアミド酸を浸漬法、遠心成型法、コーティング法等により塗布した後、溶媒除去、イミド転化し、その後、金型より剥離することにより得ることが出来る。その際、イミド転化の加熱温度は、ポリイミド樹脂の種類にもよるが、例えば300〜450℃で行われ、イミド転化が十分完了するまで行うのが好ましい。また、必要に応じて、金型を離型処理してもよく、また、脱泡工程を行ってもよい。
【0039】
以上のようにして得られる本発明の中間転写ベルトは、引張り弾性率が1800N/mm以上、特に、引張り弾性率が2200N/mm以上、MIT回数で10000回以上であることがより好ましい。
【0040】
本発明の中間転写ベルトの厚さは、その使用目的などに応じて適宜決定しうるが、一般には強度や柔軟性等の機械特性などの点により、厚さ5〜500μmが好ましく、厚さ20〜200μmがより好ましい。
【実施例】
【0041】
次に、本発明の代表的実施態様とその効果を示しさらに説明するが、無論、本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。
【0042】
実施例1
1947.26gのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を70℃に加温し、その中に3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)294.20gと、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)と、p−フェニレンジアミン(PDA)をモル比PDA/ODA=10/90でそれぞれ10.81g、181.80gを溶解し、3時間撹拌した後に冷却してポリアミド酸を取り出す。
【0043】
ここで得られたポリアミド酸とカーボンブラック(Degussa製、Specialblack4)48.68g(ポリイミド固形分100質量部に対し10質量部)を、ビーズミル分散機にて3時間分散し、ポリアミド酸溶液を得た。
【0044】
アルミニウム製の、真円度25μm、直径300mm、長さ500mm、両端に保持部材を有した円柱状の芯金を準備し、芯金の位置を固定し、回転しながらノズルを芯金の回転軸方向に移動する。以下に示す条件で準備した芯金の周面全面にポリアミド酸溶液をノズルを使用して螺旋状に塗布し、塗膜成形後、平坦化処理を行い、さらに硬化処理し、樹脂層を得た。その後、芯金を抜き取り外径300mmの管状物を製造し、目的とする中間転写ベルトを得た。このベルトの厚さは70μmであった。
【0045】
実施例2
実施例1において、ODAとPDAのモル比をODA/PDA=8:2(それぞれ161.60g/21.63gとする以外は、実施例1と同様にして、ポリアミド酸溶液を得た。その後、実施例1と同じ方法で製膜し、厚さ70μmの中間転写ベルトを得た。
【0046】
同様に、実施例3〜12、比較例1〜19の中間転写ベルトを作製した。表1にその構成、添加量等をまとめて記載した。
【0047】
【表1】

【0048】
〔特性の評価〕
上記、実施例1〜12、比較例1〜19の中間転写ベルトの性能評価を下記項目につき行った。
【0049】
(引張り強度、破断伸度)
JISK7127に基づきフィルムの引張破断強度を測定した。試験片は1B型試験片形状にシート状成形品を切り出して、5mm/分の速度で測定した。引張り強度が50MPa以上なら実用上の問題は生じない。
【0050】
(MIT試験)
MIT値は東洋精機製MIT揉疲労試験機MIT−Dを用いて、加重250g、振り角90°、回数175回/分にて計測した。数値は破断したときの振り回数で示し、5サンプルの平均値を求める。MIT値は5000回以上が実用上問題のない範囲である。
【0051】
(粘弾性;tanδ)
tanδ値の測定は、セイコーインスツル粘弾性スペクトロメータEXSTAR DMS6100にて、周波数50Hz、温度30度で測定した。
【0052】
tanδが0.025以上であれば効果がある。
【0053】
(表面抵抗率)
表面抵抗率の測定は、ハイレスタUP MCP−HT450型(三菱化学アナリテック社製)を用い、プローブURタイプ、測定電圧500V、10秒後の値を測定した。表面抵抗率が10〜1013Ω/□の範囲にあることが望ましい。
【0054】
(体積抵抗率)
体積抵抗率の測定は、ハイレスタUP MCP−HT450型(三菱化学アナリテック社製)を用い、プローブUR、測定電圧10V、10秒後の値を測定した。体積抵抗率が10〜1012Ω・cmの範囲にあることが望ましい。
【0055】
(トナー画像飛び散り)
コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製bizhub650に、上記で製造された中間転写ベルトを搭載し、画素率が7%の文字画像(3ポイント、5ポイント)をA4版の上質紙(64g/m)にプリントした。チャートを連続的に10万枚印字した。連続印字後において中間転写ベルトの画像形成側表面についての視覚評価と、最後に印字された画像について、下記に基づき品質評価を行った。
【0056】
○;100000枚目のプリント終了まで、トナー飛び散りが少ない
△;50000枚目のプリント終了まで、トナー飛び散りが少ないが、100000枚目のプリントでトナー飛び散りが多かった(実用上問題あり)
×;10000枚未満のプリントでトナー飛び散りが増加し、実用上問題となるレベル
【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
本発明内の実施例1〜12は、いずれの特性も実用上問題のないレベルであり、特にトナー画像の飛び散りがない。これに対し、本発明外の比較例1〜19は、少なくとも何れかの特性に問題があり、トナー画像の飛び散りに関してはいずれのものも本発明内のものより劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂に導電性フィラーを含有する中間転写ベルトにおいて、
ポリイミド樹脂を構成する単量体の無水カルボン酸は3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を使用し、
ジアミンはp−フェニレンジアミン(PDA)および4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)を使用し、
ジアミン成分のPDA/(PDA+ODA)のモル比率が10〜38%であり、
導電性フィラーとしてカーボンブラックを10〜25質量%含有する
ことを特徴とする中間転写ベルト。
【請求項2】
前記中間転写ベルトの全体質量から導電性フィラー質量を引いた質量の95質量%以上がBPDA、PDA、ODAの合計質量であることを特徴とする請求項1記載の中間転写ベルト。
【請求項3】
前記ポリイミド樹脂が重量平均分子量70,000以上200,000以下であることを特徴とする請求項1記載の中間転写ベルト。

【公開番号】特開2012−247600(P2012−247600A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118811(P2011−118811)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】