説明

中間転写記録媒体を用いた画像形成方法

【課題】ある程度肉厚の転写層を有する中間転写記録媒体を用いてカード類に転写層を再転写した場合であっても、端部にバリを発生させることなくカードに画像および保護層を形成できる画像形成方法を提供する。
【解決手段】被転写体の矩形長と同じ幅を有する熱転写層を備えた中間転写記録媒体を準備し、前記被転写体の矩形長と前記熱転写層の幅が揃うようにして、前記中間転写記録媒体の熱転写層側と被転写体とを重ね合わせ、前記中間転写記録媒体の基材側から熱エネルギーを付与して、前記熱転写層を前記被転写体へ熱転写し、次いで、前記中間転写記録媒体から前記基材を剥離する際に、中間転写記録媒体の長さ方向における一方の方向から前記基材を途中まで剥離した後、反対の方向から前記基材を剥離して、前記熱転写層と前記基材とを完全に分離させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写記録媒体を用いた画像形成方法に関し、より詳細には、略矩形状の被転写体の4辺の端部にバリを発生させることなく、被転写体に画像および保護層を形成できる画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
身分証明書やIDカード、クレジットカード、その他カード類においては、カード全面に画像を形成する、いわゆる縁なし画像が主流となってきている。これらカード類への画像形成は、カード類と熱転写フィルムとを圧接し、サーマルヘッド等の加熱デバイスによって、熱転写フィルム中の色材をカード類の表面に移行(転写)することにより行われている。また、上記のような熱転写方式により形成された画像の耐摩耗性、耐光性、耐改ざん防止性等の耐久性を向上させるため、画像上に透明な保護層を設けることも行われている。
【0003】
縁なし画像が形成されたカード類において、上記のように画像上に保護層を設けるためには、カードと同じ大きさとなるように保護層を設ける必要がある。カード全面に保護層を設ける方法としては、画像が転写されたカードの表面上に、カードよりも少し大きい保護層を転写し、保護層のカードからはみ出した部分を切断する方法や、一次画像が形成された中間転写記録媒体を用いて、画像と保護層とを同時にカードに転写する方法などが提案されている。この中間転写記録媒体を用いた画像形成においては、保護層を兼ねる転写層に予め一次画像を形成(転写)しておき、中間転写記録媒体をカード表面に圧接して転写層をカード上に再転写し、次いで転写層を中間転写記録媒体から剥離させることにより、カード全面に画像と保護層とを同時に形成することができる(例えば、特許文献1および2等)。
【0004】
ところで、近年、セキュリティー性の向上のため、OA機器や情報端末等もIDカード等によって管理がなされることが多くなっており、IDカード等の使用頻度の増加に伴い、従来の保護層を設けたIDカードであっても、摩耗等によって画像が損耗してしまうことが生じるようになってきた。そのため、さらなる画像耐摩耗性の向上のため、保護層を厚くすることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−144754号公報
【特許文献2】特開2006−181732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
中間転写記録媒体を用いて被転写体の全面に熱転写層(保護層)を熱転写する場合、上記のように熱転写層(保護層)を厚くすると、基材を中間転写記録媒体から剥離する際に、図6に示すように、IDカード等の被転写体10の端部に尾引きと呼ばれるバリ30が発生することがあった。そして、本発明者らは、カードの大きさに応じて所定の大きさの中間転写記録媒体を用い、かつ、この所定の大きさの中間転写記録媒体を用いてカード類に熱転写層(画像および保護層)を熱転写した後に、特定方向から多段階で転写層を剥離することにより、ある程度肉厚の熱転写層を有する中間転写記録媒体を用いてカード類等の被転写体の全面に熱転写層を転写した場合であっても、被転写体の4辺の端部にバリを発生させることなく、被転写体に画像および保護層を形成できる、との知見を得た。本発明は、かかる知見によるものである。
【0007】
したがって、本発明の目的は、ある程度肉厚の熱転写層を有する中間転写記録媒体を用いてカード類等の被転写体の全面に熱転写層を転写した場合であっても、被転写体の4辺の端部にバリを発生させることなく、被転写体に画像および保護層を形成できる画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は下記の本発明による画像形成方法によって解決することができる。すなわち、本発明による画像形成方法は、基材上に、少なくとも1層以上の熱転写層を剥離可能に設けた中間転写記録媒体を用いて、所定長及及び所定幅を有する略矩形状の被転写体に、画像を形成する方法であって、
被転写体の矩形長と同じ幅を有する熱転写層を備えた中間転写記録媒体を準備し、
前記被転写体の矩形長と前記熱転写層の幅が揃うようにして、前記中間転写記録媒体の熱転写層側と被転写体とを重ね合わせ、
前記中間転写記録媒体の基材側から熱エネルギーを付与して、前記熱転写層を前記被転写体へ熱転写し、次いで、
前記中間転写記録媒体から前記基材を剥離する際に、中間転写記録媒体の長さ方向における一方の方向から前記基材を途中まで剥離した後、反対の方向から前記基材を剥離して、前記熱転写層と前記基材とを完全に分離させる、
ことを含んでなることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の態様として、上記熱エネルギーの付与がヒートローラーで行われることが好ましい。
【0010】
また、本発明の態様として、ヒートローラーの回転方向から基材を途中まで剥離した後、その反対方向から基材を剥離して、熱転写層と基材とを完全に分離させることが好ましい。
【0011】
また、本発明の態様として、熱転写層に予め画像が形成されていることが好ましく、熱転写層は保護層および受容層を含むことが好ましい。
【0012】
また、本発明の態様として、熱転写層の厚みが5μm〜100μmであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の態様として、上記被転写体が、JISX6301に準拠したIDカードであることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明においては、上記した画像形成方法により得られた印画物も提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ある程度肉厚の転写層を有する中間転写記録媒体を用いてカード類等の被転写体に転写層を再転写した場合であっても、中間転写記録媒体が被転写体の矩形長と同じ幅を有するため、被転写体の矩形幅方向の両端部にバリが発生することがない。また、本発明においては、熱転写層の再転写後に、中間転写記録媒体から基材を剥離する際、中間転写記録媒体のシート長さ方向における一方の方向から基材を途中まで剥離した後、反対の方向から基材を剥離して、熱転写層と前記基材とを完全に分離させることにより。被転写体の矩形長方向の両端部のバリ発生も抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の画像形成方法に用いられる中間転写記録媒体の層構成を示した断面図。
【図2】本発明の画像形成方法に用いられる中間転写記録媒体の一実施形態を示した概略図。
【図3】本発明による画像形成方法の実施形態を示した概略図。
【図4】中間転写記録媒体への画像形成と、熱転写層の被転写体への熱転写とを連続して行う工程の概略図。
【図5】ガイドローラーに案内された中間転写記録媒体から基材を剥離する工程を拡大した概略図。
【図6】従来の方法により被転写体に画像形成を行った印画物の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本発明による画像形成方法に用いられる中間転写記録媒体について図を参照しながら説明する。図1は、本発明の画像形成方法に用いられる中間転写記録媒体の層構成を示した断面図である。本発明の画像形成方法に用いられる中間転写記録媒体1は、基材2上に、少なくとも1層以上の熱転写層3を剥離可能に設けた層構成を有している。この熱転写層3は、後記するように、被転写体へ熱転写されるものであり、基材2と剥離可能に設けられている。
【0018】
熱転写層3は、基材2側から順に、保護層4および受容層5を備えており、必要に応じて保護層4と受容層5との間にプライマー層6を設けてもよい。受容層5は、熱転写層3が被転写体に転写される前に、予め熱転写層3に画像7を形成しておくためのものである。保護層4は、熱転写層3が被転写体へ熱転写された際に、被転写体の画像7(受容層5)を保護するためのものである。また、必要に応じて設けられるプライマー層6は、保護層4と受容層5との接着性を高めるものである。
【0019】
また、本発明においては、基材2と熱転写層3との間に離型層8を設けてもよい。離型層8は、後記するように、被転写体へ熱転写層3を熱転写した後に、基材2を中間転写記録媒体1から剥離し易くするためのものであり、この離型層8は、基材2とともに中間転写記録媒体1から剥離される。
【0020】
次に、上記した中間転写記録媒体を構成する各層について説明する。
中間転写記録媒体に用いられる基材としては、従来の熱転写シートや中間転写記録媒体に使用されているものと同じ基材を、そのまま用いることができる。また、基材表面に易接着処理を施したものやその他のものも使用することができ、特に制限はされない。好ましい基材の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、アイオノマー等のプラスチックフィルム、および、グラシン紙、コンデンサー紙、パラフィン紙等の紙類、セロファン等が挙げられ、また、これらの2種以上を積層した複合フィルムなどを使用してもよい。基材の厚さは、その強度および耐熱性が適切になるように材料に応じて適宜変更してよいが、通常は、10〜50μm程度である。
【0021】
基材上に設ける保護層としては、耐摩擦性、透明性、硬度等に優れた樹脂を適宜用いることができる。具体的には、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、これらの樹脂のシリコーン変性樹脂、及びこれらの樹脂の混合物が挙げられる。また、アクリル系モノマー等を電離放射線照射により架橋硬化した樹脂等も用いることができる。アクリルモノマーの具体例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラグリシジルエーテルテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、電離放射線で硬化される物質は上記モノマーに限らず、オリゴマーとして使用してもよい。更に、上記物質の重合体又はその誘導体からなるポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系等のアクリル反応性重合体も使用可能である。更に、その他のアクリル系樹脂と混合して用いてもよい。
【0022】
また、これらの樹脂の熱転写時の膜切れ性を考慮して、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、プラスチックピグメント等の透明性の高い微粒子やワックス等を、透明性を害さない程度に含有させてもよいし、画像の耐摩擦性、光沢等を向上させるために、滑剤等を含有させてもよい。
【0023】
上記した樹脂は、主成分としてガラス転移点50〜120℃の熱可塑性樹脂を含有することが好ましく、熱転写層が被転写体に転写された後に、保護層となった時の耐摩耗性、耐光性等の耐久性に優れたものとなる。そのような熱可塑性樹脂として、数平均分子量2000〜30000のポリエステル樹脂、平均重合度150〜500の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、または重量平均分子量20000〜60000のメタクリレート系モノマーの単独重合体または共重合体を使用することが好ましく、それにより被転写体への転写性、定着性が良好となる。
【0024】
上記のポリエステル樹脂は、その酸成分として、例えば、芳香族としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、脂肪族又は脂環族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、テトラハイドロフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸、ヘキサハイドロイソフタル酸、ヘキサハイドロテレフタル酸等が挙げられる。又、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3官能以上のポリカルボン酸を使用することができる。
【0025】
ポリエステル樹脂の中でも、酸成分として、特にテレフタル酸、イソフタル酸、及びトリメリット酸を構成モノマーとして使用したものが、保護層となった時の耐摩耗性、耐光性等の耐久性に優れたものとなり、好ましい。
【0026】
また、ポリエステル樹脂の他の原料であるアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジジメタノール及びトリシクロデカングリコール等が挙げられ、保護層となった時の耐摩耗性、耐光性等の耐久性や、転写性、定着性等から、特にエチレングリコール、ネオペンチルグリコール及びトリシクロデカングリコールから選ばれる少なくとも2種以上を構成モノマーとして使用したものが、ガラス転移点が50〜120℃、数平均分子量が2000〜30000の範囲に調整しやすく、好ましい。
【0027】
保護層形成用の樹脂として好ましい熱可塑性樹脂は、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が挙げられる。この塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は、ガラス転移点が50〜120℃、平均重合度が150〜500の範囲のものを使用することが好ましい。また、このような塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を得るに際しては、酢酸ビニルモノマーを5〜40重量%配合することが好ましい。酢酸ビニルの配合量が多すぎるとブロッキング現象が生じやすく、反対に酢酸ビニルの配合量が少なすぎると基材上にコーティングするときに使用する溶媒に対する溶解性が低くなり、コーティングしにくくなる。
【0028】
また、熱転写層を構成する熱可塑性樹脂として、メタクリレート系モノマーの単独重合体または共重合体であることが望ましい。上記のメタクリレート系モノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、i−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクレリレート、sec−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。
【0029】
また、印画物に耐光性を付与するために、保護層には紫外線吸収剤が添加されていてもよい。例えば、反応性紫外線吸収剤を上記の熱可塑性樹脂に反応ないし結合させて得た樹脂を使用することができる。より具体的には、サリシレート系、フェニルアクリレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、クマリン系、トリアジン系、ニッケルキレート系のような従来公却の非反応性の有機系紫外線吸収剤に、付加重合性二重結合(例えばビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基など)、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基のような反応性基を導入したもの等を挙げることができる。非反応性の有機系紫外線吸収剤としては、サリシレート系、フェニルアクリレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、クマリン系、トリアジン系、ニッケルキレート系が挙げられる。紫外線吸収剤の添加量としては、樹脂に対して概ね1〜30重量%、好ましくは5〜20重量%程度である。
【0030】
保護層は、上記の樹脂に必要な添加剤を加えたものを、適当な有機溶剤に溶解したり、有機溶剤や水に分散した分散体を、例えば、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート等の形成手段により、基材上に塗布及び乾燥することにより形成される。熱転写層は任意の厚みに形成することができるが、好ましくは、乾燥後の厚みで5〜100g/mであり、更に好ましくは10〜50g/mである。このような厚みの保護層を設けた場合、被転写体へ転写される熱転写層として、その厚みが5〜100μm程度となる。
【0031】
後記するように、熱転写層が被転写体へ熱転写された後に続いて基材を剥離する。基材と熱転写層との材質の組合せによっては、熱転写の際の離型性が十分でない場合がある。このような場合、基材上に予め離型層を設けることができる。離型層としては、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ウレタン樹脂、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等を使用することができる。
【0032】
離型層は、上記した樹脂を主成分とする塗布液を、グラビアコート、グラビアリバースコート等の方法で、基材上に塗布、乾燥することにより形成できる。塗膜の厚さは0.01〜2g/m程度である。なお、離型層に使用する材料を選択する際には、熱転写層と適切な離型性を有することは勿論のこと、熱転写層との接着力よりも基材との接着力を高くすることが大切であり、もし基材との接着力が十分でない場合には、離型層ごと熱転写層が転写される等の異常転写の原因となる。
【0033】
中間転写記録媒体を構成する受容層は、上記した保護層上に直接または、プライマー層を介して、形成することができる。受容層は、熱溶融転写記録と昇華転写記録の各記録方式の違いにより、受容層の構成が異なる。また、熱溶融転写記録では受容層を設けずに、保護層(熱転写層)に直接、熱転写シート等から着色転写層を熱転写することもできる。熱溶融転写記録方法や昇華転写記録方法による受容層は、加熱により熱転写シートから転写される色材を受容する働きを有するもので、特に昇華性染料の場合には、それを受容し、発色させると同時に、一旦受容した染料を再昇華させないことが望まれる。本発明による画像形成方法は、後記するように、中間転写記録媒体の受容層に、一担、転写画像を形成しておき、その画像を含めて保護層とともに被転写体へ再転写して画像を形成するものであり、受容層には透明性をもたせて、被転写体に転写された画像を上から鮮明に観察できるようにすることが一般的である。但し、作為的に受容層を濁らせたり、薄く着色させたりして、再転写画像を特徴づけることも可能である。
【0034】
受容層は、一般に熱可塑性樹脂を主体として構成される。受容層を形成する材料としては、例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルエステル等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体系樹脂、アイオノマー、セルロースジアセテート等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられ、中でも特に好ましいものはポリエステル系樹脂及び塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体及びそれらの混合物である。
【0035】
中間転写記録媒体への画像形成時において、受容層と、着色転写層を有する熱転写シートとの融着や印画感度低下等を防ぐ目的で、昇華転写記録方式では、受容層に離型剤を混合することができる。混合して使用する好ましい離型剤としては、シリコーンオイル、リン酸エステル系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられるが、中でもシリコーンオイルが望ましい。そのシリコーンオイルとしては、エポキシ変性、ビニル変性、アルキル変性、アミノ変性、カルボキシル変性、アルコール変性、フッ素変性、アルキルアラルキルポリエーテル変性、エポキシ・ポリエーテル変性、ポリエーテル変性等の変性シリコーンオイルが望ましい。
【0036】
離型剤は1種若しくは2種以上のものが使用される。また、離型剤の添加量は受容層形成用樹脂100重量部に対し、0.5〜30重量部が好ましい。この添加量の範囲を満たさない場合は、昇華型熱転写シートと中間転写記録媒体の受容層との融着や印画感度低下等の問題が生じる場合がある。このような離型剤を受容層に添加することによって、転写後の受容層の表面に離型剤がブリードアウトして離型層が形成される。また、これらの離型剤は受容層に添加せず、受容層上に別途塗工してもよい。
【0037】
受容層は、必要に応じて離型剤等の添加剤を加えたものを適当な有機溶剤に溶解したり、有機溶剤や水に分散した分散体を、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート等の公知の形成手段により、保護層上に塗布し、乾燥して、形成される。受容層の形成に際しては、受容層は任意の厚さでよいが、一般的には乾燥状態で1〜10g/mの厚さである。また、このような受容層は連続被覆であるのが好ましいが、樹脂エマルジョンまたは水溶性樹脂や樹脂分散液を使用して、不連続の被覆として形成してもよい。更に、熱転写プリンターの搬送安定化を図るために受容層の上に帯電防止剤を塗工してもよい。
【0038】
保護層と受容層との間に必要に応じて設けられるプライマー層は、保護層と受容層との間の接着性を向上させるものであり、従来の中間転写記録媒体に用いられるものと同様のものを使用できる。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等を溶剤に溶解ないし分散させた塗工液を用意し、前記受容層の形成手段と同様な方法で形成することができる。プライマー層の厚さは、乾燥状態で0.1〜5g/m程度である。
【0039】
本発明による画像形成方法に用いられる中間転写記録媒体は、必要に応じて、基材の裏面、すなわち受容層の設ける側と反対側の面に、画像形成された部分を被転写体へ再転写する手段としてのサーマルヘッドやヒートロール等の熱によるスティッキングやシワなどの悪影響を防止するため、耐熱滑性層を設けることができる。
【0040】
耐熱滑性層を形成する樹脂としては、従来公知のものであればよく、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタン又はエポキシのプレポリマー、ニトロセルロース樹脂、セルロースナイトレート樹脂、セルロースアセトプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートヒドロジエンフタレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0041】
これらの樹脂からなる耐熱滑性層に添加、あるいは上塗りする滑り性付与剤としては、燐酸エステル、シリコーンオイル、グラファイトパウダー、シリコーン系グラフトポリマー、フッ素系グラフトポリマー、アクリルシリコーングラフトポリマー、アクリルシロキサン、アリールシロキサン等のシリコーン重合体が挙げられるが、好ましくは、ポリオール、例えば、ポリアルコール高分子化合物とポリイソシアネート化合物及び燐酸エステル系化合物からなる層であり、更に充填剤を添加することがより好ましい。
【0042】
耐熱滑性層は、上記に記載した樹脂、滑り性付与剤、更に充填剤を、適当な溶剤により、溶解又は分散させて、耐熱滑性層形成用インキを調製し、これを、上記の基材シートの裏面に、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースコーティング法等の形成手段により塗布し、乾燥して形成することができる。
【0043】
上記した中間転写記録媒体は、フィルム等の長尺状の基材2上に複数の熱転写層3を連続して形成したものであってよい。また、図2に示すように、所定の大きさの複数の熱転写層3が基材2上に一定間隔で設けられているようなものであってもよい。
【0044】
次に、上記した長尺状の中間転写記録媒体を用いて被転写体へ画像を形成する方法について、図を参照しながら説明する。
【0045】
図3は、本発明による画像形成方法の実施形態を示した概略図である。
本発明による画像形成方法においては、上記した中間転写記録媒体を、画像形成しようとする被転写体の形状に応じて所定の大きさに作製する必要がある。例えば、図3に示すように、画像形成しようとする被転写体10がIDカード等の略矩形状のものである場合、その矩形長Lと同じ長さになるように、熱転写層3の幅Wを有する中間転写記録媒体1を準備する。通常、中間転写記録媒体1を構成する基材2及び熱転写層3は同一幅で製造されるため、この場合は、中間転写記録媒体1の幅WもL(=W)となる。このように、被転写体10の矩形長Lと同じ長さの熱転写層3の幅Wを有する中間転写記録媒体1を用いて、被転写体10に熱転写層3を熱転写した場合、被転写体10の矩形の幅方向の両端面から熱転写層3がはみだすことがないため、被転写体10の矩形幅方向の両端面にバリが発生することがない。
【0046】
上記したような所望の大きさを有する中間転写記録媒体1を作製するには、所定幅(L)を有する基材2上に、上記した各層を順次形成してもよく、また、適当な幅を有する中間転写記録媒体1を作製しておいて、所望幅となるように切断してもよい。
【0047】
また、中間転写記録媒体1を作製し所望幅に切断する前に熱転写層3に予め画像7を形成しておいてもよく、また、所定幅とした後に後記するように被転写体10へ熱転写層3を熱転写する前に画像7を形成しておいてもよい。あるいは、中間転写記録媒体1への画像形成と、後記する熱転写層3の被転写体10への熱転写とを連続して行ってもよい。
【0048】
図4は、中間転写記録媒体1への画像形成と、熱転写層3の被転写体10への熱転写とを連続して行う工程の概略を示したものである。所定幅の中間転写記録媒体1は、供給ロール11から送り出され、プラテンローラー12に至り、その後、緩衝ローラー13を通過して、中間転写記録媒体1の供給搬送方向下流側に送られる。図4に示した例では、中間記録転写媒体1は、図2に示すような所定の大きさの熱転写層3を基材2上に一定間隔で設けたものである。一方、中間転写記録媒体1上に画像7を形成するための熱転写フィルム14は、供給ロール15から送り出され、サーマルヘッド16を通過して巻取ロール17に巻き取られる。サーマルヘッド16とプラテンローラー12とは、搬送された熱転写フィルム14と中間転写記録媒体1とを、熱転写フィルム14の色材層(図示せず)と中間転写記録媒体1の熱転写層3(受容層)とが重なるように圧接可能に配設されている。そして、画像データに応じてサーマルヘッド16を発熱させて、熱転写フィルム14中の色材層に含まれる色材を、熱転写層3に移行させることにより、熱転写層3上に画像7が連続して形成される。
【0049】
熱転写層3に画像7が形成された中間転写記録媒体1は、中間転写記録媒体1の供給搬送方向下流側に送られる。中間転写記録媒体1はガイドローラー18に案内されてヒートローラー19に達し、その後、ガイドローラー20に案内されて巻取ロール21に巻き取られる。また、ヒートローラー19に対向する位置に支持ローラー22が配設されている。
【0050】
略矩形状の被転写体10は、供給装置(図示せず)にストックされており、この供給装置から複数の搬送ローラー23により支持ローラー22上に搬送される。支持ローラー22および複数の搬送ローラー23は、搬送されてきた被転写体10が、ガイドローラー18に案内されて搬送されてきた中間転写記録媒体1と平行な状態で、かつ、被転写体10の矩形長と熱転写層3の幅とが揃うように、圧接可能に配設されている。また、ガイドローラー18,20も、中間転写記録媒体1が、被転写体10と平行状態で、かつ被転写体10の矩形長と熱転写層3の幅とが揃うように、圧接可能に配設されている。これは、中間転写記録媒体1の基材2とヒートローラー19との接触を線接触に近づけて、ヒートローラー19からの熱により中間転写記録媒体1の基材2に発生する変形を最小限に抑えるためである。そして、このガイドローラー18は、搬送ローラー23および支持ローラー22の回転に連動して、上下に移動可能なように配設されている。なお、ガイドローラーの代わりにガイドバーを配設してもよく、さらに、ガイドローラーとガイドバーの組み合わせとしてもよい。
【0051】
画像7が形成された熱転写層3が、ヒートローラー19による圧接位置に到達したとき、ヒートローラー19により基材2側から中間転写記録媒体1に熱エネルギーが付与されて、画像7が熱転写層3とともに被転写体10に転写され、被転写体10に画像7が形成される。なお、サーマルヘッド16とガイドローラー18との間に配設された緩衝ローラー13は、中間転写記録媒体1の基材2が熱エネルギーの付与により形状が変形してテンションが変動するのを吸収して、安定したテンション状態とするための部材である。このような緩衝ローラー13は、1個以上配設されていればよく、また、緩衝ローラー13の代わりに緩衝バーを配設してもよい。さらに、緩衝ローラーと緩衝バーの組み合わせとしてもよい。
【0052】
ヒートローラー19は、金属ローラー、表面をゴム等の弾性被膜で被覆したローラー等、特に制限はない。また、図示例では、ヒートローラー19に対向するように支持ローラー22が配設されているが、さらに、ガイドローラー18,20と対向するように支持ローラー22を配設してもよい。
【0053】
被転写体10へ熱転写層3が熱転写されて画像形成された後、ガイドローラー20の働きにより、中間転写記録媒体1から基材2が剥離される。図5は、ガイドローラー18,20に案内された中間転写記録媒体1から基材2を剥離する工程を拡大した概略図である。図5(a)は、ヒートローラー19により、中間転写記録媒体1の熱転写層3が被転写体10に熱転写された直後を示したものである。この状態からヒートローラー19が正転するとガイドローラー20により、被転写体10上の熱転写層3の一端から徐々に基材2が剥離していく(図5(b))。基材2を途中まで剥離した状態で、ヒートローラー19および支持ローラー22を逆回転させる。この時、支持ローラー22が逆回転するのに協動して、ガイドローラー18が上方に移動する。さらにヒートローラー19および支持ローラー22が逆回転すると、被転写体10上の熱転写層3の他端から徐々に基材2が剥離して、熱転写層3と基材2とが完全に分離する。このように、一方の方向から基材2を途中まで剥離した後、反対の方向から基材2を剥離することにより、被転写体10の矩形長方向の両端面にバリを発生させることなく、基材2を中間転写記録媒体1から剥離することができる。
【0054】
上記したように、被転写体の矩形長Lと同じ長さの熱転写層の幅Wを有する中間転写記録媒体を用いて、被転写体に熱転写層を熱転写した場合、被転写体の矩形幅方向の両端部から熱転写層がはみだすことがないため、被転写体の矩形の幅方向の両端面にバリが発生することがなく、また、中間転写記録媒体の一方の方向から基材を途中まで剥離した後、反対の方向から基材を剥離することにより、被転写体の矩形長方向の両端面にバリを発生させることなく、基材を中間転写記録媒体から剥離することができるため、IDカード等の略矩形状の被転写体の全面に、いずれの端部にもバリを発生させることなく、熱転写層を転写することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 中間転写記録媒体
2 基材
3 熱転写層
4 保護層
5 受容層
6 プライマー層
7 画像
8 離型層
10 被転写体
11、15 供給ロール
12 プラテンローラー
13 緩衝ローラー
14 熱転写フィルム
16 サーマルヘッド
17、21 巻取ロール
18、20 ガイドローラー
19 ヒートローラー
22 支持ローラー
23 搬送ローラー
30 尾引き(バリ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、少なくとも1層以上の熱転写層を剥離可能に設けた中間転写記録媒体を用いて、所定長及及び所定幅を有する略矩形状の被転写体に、画像を形成する方法であって、
被転写体の矩形長と同じ幅を有する熱転写層を備えた中間転写記録媒体を準備し、
前記被転写体の矩形長と前記熱転写層の幅とが揃うようにして、前記中間転写記録媒体の熱転写層側と被転写体とを重ね合わせ、
前記中間転写記録媒体の基材側から熱エネルギーを付与して、前記熱転写層を前記被転写体へ熱転写し、次いで、
前記中間転写記録媒体から前記基材を剥離する際に、中間転写記録媒体の長さ方向における一方の方向から前記基材を途中まで剥離した後、反対の方向から前記基材を剥離して、前記熱転写層と前記基材とを完全に分離させる、
ことを含んでなることを特徴とする、画像形成方法。
【請求項2】
前記熱エネルギーの付与が、ヒートローラーにより行われる、請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記ヒートローラーの回転方向から前記基材を途中まで剥離した後、その反対方向から前記基材を剥離して、前記熱転写層と前記基材とを完全に分離させる、請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記熱転写層に、予め画像が形成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記熱転写層が、保護層および受容層を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記受容層に、熱転写画像を形成することをさらに含んでなる、請求項5に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記熱転写層の厚みが5μm〜100μmである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記被転写体が、JISX6301に準拠したIDカードである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の画像形成方法により得られた印画物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−101960(P2011−101960A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257099(P2009−257099)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】