説明

中間転写記録媒体

【課題】 熱転写シートの色材を、中間転写記録媒体の受容層に転写して、形成された熱転写画像を有する受容層を被転写体へ転写する際、箔切れ性が良好で、転写不良を防止し、かつ熱転写画像の耐久性を付与した印画物が簡単に得られる中間転写記録媒体を提供する。
【解決手段】 基材シート2の一方の面に、少なくとも保護層3、受容層5を順次、積層した中間転写記録媒体1において、該保護層3が電離放射線硬化樹脂からなり、基材シート2と保護層3との間に接着層6を部分的に設け、該部分的に設けられた接着層6から上に位置する領域Bは、基材シート2から剥離せずに、領域Bを除いた領域Aが基材シート2から剥離可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中間転写記録媒体に関し、特に熱転写シートの色材を、中間転写記録媒体の受容層に転写して、形成された熱転写画像を有する受容層を被転写体へ転写する際、箔切れ性が良好で、転写不良を防止し、かつ熱転写画像の耐久性を付与した印画物が簡単に得られる中間転写記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、簡便な印刷方法として熱転写方法が広く使用されるようになってきた。熱転写方法は、基材シートの一方の面に色材層が設けられた熱転写シートと、必要に応じて画像受容層が設けられた熱転写受像シートを重ね合わせ、サーマルヘッド等の加熱手段により熱転写シートの背面を画像状に加熱して、色材層に含まれる色材を選択的に移行させて、熱転写受像シート上に画像を形成する方法である。
【0003】
熱転写方法は、溶融転写方式と昇華転写方式に分けられる。溶融転写方式は顔料等の色材を熱溶融性のワックスや樹脂等のバインダーに分散させた熱溶融インキ層をPETフィルム等の基材シートに担持させた熱転写シートを用い、サーマルヘッド等の加熱手段に画像情報に応じたエネルギーを印加し、紙やプラスチックシート等の熱転写受像シート上に、色材をバインダーと共に転写する画像形成方法である。溶融転写方式による画像は、高濃度で鮮鋭性に優れ、文字等の2値画像の記録に適している。
【0004】
一方、昇華転写方式は主に昇華により熱移行する染料を樹脂バインダー中に溶解或いは分散させた染料層をPETフィルム等の基材シートに担持させた熱転写シートを用い、サーマルヘッド等の加熱手段に画像情報に応じたエネルギーを印加し、紙やプラスチック等の基材シートに必要に応じて染料受容層を設けなる熱転写受像シート上に、染料のみを転写移行させる画像形成方法である。昇華転写方式は、印加されるエネルギー量に応じて染料の移行量を制御できるため、サーマルヘッドのドット毎に画像濃度を制御した階調画像の形成を行なうことができる。また、使用する色材が染料であるため、形成される画像には透明性があり、異なる色の染料を重ねた場合の中間色の再現性が優れている。したがって、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック等の異なる色の熱転写シートを用い、熱転写受像シート上に各色染料を重ねて転写する際にも、中間色の再現性に優れた高画質な写真調フルカラー画像の形成が可能である。
【0005】
マルチメディアに関連した様々なハード及びソフトの発達により、この熱転写方法は、コンピューターグラフィックス、衛星通信による静止画像そしてCD−ROMその他に代表されるデジタル画像及びビデオ等のアナログ画像のフルカラーハードコピーシステムとして、その市場を拡大している。この熱転写方法による熱転写受像シートの具体的な用途は、多岐にわたっている。代表的なものとしては、印刷の校正刷り、画像の出力、CAD/CAMなどの設計およびデザインなどの出力、CTスキャンや内視鏡カメラなどの各種医療用分析機器、測定機器の出力用途そしてインスタント写真の代替として、また身分証明書やIDカード、クレジットカード、その他カード類への顔写真などの出力、さらに遊園地、ゲームセンター、博物館、水族館などのアミューズメント施設における合成写真、記念写真としての用途などをあげることができる。
【0006】
上記の熱転写受像シートの用途の多様化に伴い、任意の対象物に熱転写画像を形成する要求が高まっている。通常は、熱転写画像を形成する対象物として、基材上に受容層を設けた専用の熱転写受像シートを用いているが、基材等に制約があり、特許文献1等に示されるような受容層が基材上に剥離可能に設けられた中間転写記録媒体で、その受容層に染料層を有する熱転写シートを用いて、染料を転写して画像を形成し、その後に中間転写記録媒体を加熱して、受容層を任意の被転写体上に転写する方法が提案されている。
【0007】
以上のように、熱転写方法の利点が多いものであるが、溶融転写型の熱転写シートで画像を形成した場合、耐摩擦性の耐久性に欠ける弱点があり、昇華転写型の熱転写シートで画像形成した場合は、顔写真等の階調性画像を精密に形成することができるが、耐候性、耐摩擦性、耐薬品性等の耐久性に欠ける弱点がある。上記の中間転写記録媒体を用いた方式においても、最終的に得られる画像形成物は、上記で説明した画像の耐久性に欠ける点が残っている。それに対し、特許文献2には、基材上に、剥離層、硬化性保護層、中間接着層、受像兼接着層が設けられた中間転写シート(中間転写記録媒体)が記載され、熱硬化性樹脂や、UV硬化性樹脂の保護層で耐久性をもたせている。しかし、この硬化性保護層では、その保護層の箔切れ性が良くなく、転写部分の端で、転写不良が生じたりしている。
【0008】
【特許文献1】特開昭62−238791号公報
【特許文献2】特開2004−351656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、熱転写シートの色材を、中間転写記録媒体の受容層に転写して、形成された熱転写画像を有する受容層を被転写体へ転写する際、箔切れ性が良好で、転写不良を防止し、かつ熱転写画像の耐久性を付与した印画物が簡単に得られる中間転写記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の中間転写記録媒体は、請求項1として、基材シートの一方の面に、少なくとも保護層、受容層を順次、積層した中間転写記録媒体において、該保護層が電離放射線硬化樹脂からなり、基材シートと保護層との間に接着層を部分的に設け、該部分的に設けられた接着層から上に位置する領域Bは、基材シートから剥離せずに、領域Bを除いた領域Aが基材シートから剥離可能であることを特徴とする。この部分的に設けられた接着層から上に位置する領域Bを除いた領域Aにおける受容層、保護層が箔切れ良く、被転写体へ転写できる。請求項2として、基材シートの一方の面に、少なくとも保護層、受容層を順次、積層した中間転写記録媒体において、該保護層が電離放射線硬化樹脂からなり、該受容層の上に、離型層を部分的に設け、該離型層から下に位置する領域Dは、基材シートから剥離せずに、領域Dを除いた領域Cが基材シートから剥離可能であることを特徴とする。この離型層から下に位置する領域Dを除いた領域Cにおける受容層、保護層が箔切れ良く、被転写体へ転写できる。
【0011】
請求項3として、基材シートの一方の面に、少なくとも保護層、受容層を順次、積層した中間転写記録媒体において、該保護層が電離放射線硬化樹脂からなり、基材シートと保護層との間に接着層を部分的に設け、かつ該受容層の上に、離型層を部分的に設け、前記、部分的に設けた接着層と部分的に設けた離型層の間の領域Eは基材から剥離せずに、領域Eを除く領域Fが基材シートから剥離可能であることを特徴とする。請求項4として、前記請求項1〜3のいずれか一つに記載の中間転写記録媒体において、基材シートと保護層との間に、検知マークを設けたことを特徴とする。この検知マークをプリンターで読み取ることで、受容層に熱転写シートから色材を正確な位置で、転写して、熱転写画像を形成し、また被転写体に対し、正確な位置で、受容層、保護層の積層された層を転写することができる。また、保護層と受容層の間にプライマー層を設けても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明の中間転写記録媒体は、基材シートの一方の面に、少なくとも保護層、受容層を順次、積層した中間転写記録媒体において、該保護層が電離放射線硬化樹脂からなり、1つ目は、基材シートと保護層との間に接着層を部分的に設け、該部分的に設けられた接着層から上に位置する領域Bは、基材シートから剥離せずに、領域Bを除いた領域Aが基材シートから剥離可能となる構成であり、2つ目は、受容層の上に、離型層を部分的に設け、該離型層から下に位置する領域Dは、基材シートから剥離せずに、領域Dを除いた領域Cが基材シートから剥離可能となる構成であり、3つ目は、上記1つ目と2つ目の構成を合わせもった構成である。このような構成をとることにより、熱転写シートの色材を、中間転写記録媒体の受容層に転写して、形成された熱転写画像を有する受容層を被転写体へ転写する際、受容層(保護層を含め)の転写における箔切れ性が良好で、転写不良を防止し、かつ熱転写画像の耐久性の優れた印画物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の中間転写記録媒体1の一つの実施形態で、被転写体へ転写する前と、転写する途中を示す概略断面図である。図1(1)が被転写体へ転写される前の中間転写記録媒体1で、基材シート2の一方の面に、保護層3、プライマー層4、受容層5を順次、積層した構成であり、その保護層3が電離放射線硬化樹脂からなっていて、基材シート2と保護層3との間に接着層6が部分的に設けられている。また、図1(2)が、図1(1)に示した中間転写記録媒体1が被転写体10に転写する途中を示すもので、中間転写記録媒体1の受容層5と被転写体10とを接するように重ねて、中間転写記録媒体1が加熱されると、その部分的に設けられた接着層6から上に位置する領域Bは、基材シート2から剥離せずに、基材シート2側に残存し、領域Bを除いた領域Aが基材シート2から剥離して、被転写体10に転写、接着する。したがって、領域Aは、被転写体10に転写されるべき大きさ、形状の転写部のことである。尚、領域Bは接着層、保護層、プライマー層、受容層の積層体である。
【0014】
図1の場合では、接着層6が基材シート2と保護層3とを接着しているため、接着層6から上に位置する領域Bの保護層3、プライマー層4、受容層5が基材シートから剥離しない。また、図1では、検知マーク7が、基材シート2と保護層3との間に、または基材シート2と接着層6との間に設けられているがプリンタ内で検知できれば特に位置は特定しない。図1(2)には図示していないが、受容層5の表面には、熱転写画像が形成されていて、その画像形成された受容層5をプライマー層4、保護層3が被覆した形態の被転写体10が、印画物となる。
【0015】
図2は、本発明の中間転写記録媒体1の他の実施形態で、被転写体へ転写する前と、転写する途中を示す概略断面図である。図2(1)が被転写体へ転写される前の中間転写記録媒体1で、基材シート2の一方の面に、保護層3、プライマー層4、受容層5を順次、積層した構成であり、その保護層3が電離放射線硬化樹脂からなっていて、受容層5の上に、離型層8を部分的に設けていて、また検知マーク7が、基材シート2と保護層3との間に設けられているがプリンタ内で検知できれば特に位置は特定しない。また、図2(2)が、図2(1)に示した中間転写記録媒体1が被転写体10に転写する途中を示すもので、中間転写記録媒体1の受容層5と被転写体10とを接するように重ねて、中間転写記録媒体1が加熱されると、その部分的に設けられた離型層8から下に位置する領域Dは、被転写体10とは離型するが、基材シート2から剥離せずに、領域Dを除いた部分である領域Cが、基材シート2から剥離して、被転写体10に転写、接着する。したがって、領域Cは、被転写体10に転写されるべき大きさ、形状の転写部のことである。尚、領域Dは保護層、プライマー層、受容層、離型層の積層体である。
【0016】
図2の場合では、離型層8と被転写体10との接着性が低いので、離型層8から下に位置する領域Dの離型層8、受容層5、プライマー層4、保護層3が、被転写体10には転写せず、基材シート2に残存し、領域Dを除いた部分である領域Cの受容層5、プライマー層4、保護層3が、基材シート2から剥離して、被転写体10と接着する。また、図2では、検知マーク7が、基材シート2と保護層3との間で、離型層8から下に位置する領域Dに、形成されている。図2(2)には図示していないが、受容層5の表面には、熱転写画像が形成されていて、その画像形成された受容層5をプライマー層4、保護層3が被覆した形態の被転写体10が、印画物となる。
【0017】
図3は、本発明の中間転写記録媒体1の他の実施形態で、被転写体へ転写する前と、転写する途中を示す概略断面図である。図3(1)が被転写体へ転写される前の中間転写記録媒体1で、基材シート2の一方の面に、保護層3、プライマー層4、受容層5を順次、積層した構成であり、その保護層3が電離放射線硬化樹脂からなっていて、基材シート2と保護層3との間に接着層6が部分的に設けられ、さらに受容層5の上に、離型層8を部分的に設けている。また、図3(2)が、図3(1)に示した中間転写記録媒体1が被転写体10に転写する途中を示すもので、中間転写記録媒体1の受容層5と被転写体10とを接するように重ねて、中間転写記録媒体1が加熱されると、その部分的に設けられた接着層6と部分的に設けられた離型層8の間の領域Eは、基材シート2から剥離せずに、基材シート2側に残存し、領域Eを除いた部分である領域Fが基材シート2から剥離して、被転写体10に転写、接着する。したがって、領域Fは、被転写体10に転写されるべき大きさ、形状の転写部のことである。
【0018】
図3の場合では、接着層6が基材シート2と保護層3とを接着しているため、接着層6から上に位置する領域Eの保護層3、プライマー層4、受容層5、離型層8が基材シートから剥離しない。また、図3では、検知マーク7が、基材シート2と保護層3との間に、または基材シート2と接着層6との間に設けられているがプリンタ内で検知できれば特に位置は特定しない。図3(2)には図示していないが、受容層5の表面には、熱転写画像が形成されていて、その画像形成された受容層5をプライマー層4、保護層3が被覆した形態の被転写体10が、印画物となる。
【0019】
図4は、本発明の中間転写記録媒体1の多面付けで作製される際の配置される例を示した概略平面図であり、流れ方向で4列で、1列当たりで、3単位の中間転写記録媒体1を有し、4×3の12単位の中間転写記録媒体1が示され、各単位の流れ方向の先頭部に検知マーク7が設けられている。図示したPとQから切断した時の断面図が、図1に相当するものである。部分的に設けられた接着層の上に位置する領域Bが、領域A以外の部分である。その領域Aで示された部分のみが、中間転写記録媒体1から、被転写体10に転写、接着する。
【0020】
図5は、本発明の中間転写記録媒体1の多面付けで作製される際の配置される例を示した概略平面図であり、流れ方向で4列で、1列当たりで、3単位の中間転写記録媒体1を有し、4×3の12単位の中間転写記録媒体1が示され、各単位の流れ方向の先頭部に検知マーク7が設けられている。図示したRとSから切断した時の断面図が、図2に相当するものである。部分的に設けられた離型層の下に位置する領域がDであり、その領域Dを除く部分が領域Cである。その領域Cで示された部分のみが、中間転写記録媒体1から、被転写体10に転写、接着する。
【0021】
図6は、本発明の中間転写記録媒体1の多面付けで作製される際の配置される例を示した概略平面図であり、流れ方向で4列で、1列当たりで、3単位の中間転写記録媒体1を有し、4×3の12単位の中間転写記録媒体1が示され、各単位の流れ方向の先頭部に検知マーク7が設けられている。図示したTとUから切断した時の断面図が、図3に相当するものである。部分的に設けられた離型層の下に位置する領域がEであり、その領域Eを除く部分が領域Fである。その領域Fで示された部分のみが、中間転写記録媒体1から、被転写体10に転写、接着する。
【0022】
以下、本発明の中間転写記録媒体を構成する各層について、詳細に説明する。
(基材シート)
本発明で用いる中間転写記録媒体の基材シート2としては、従来公知のある程度の耐熱性と強度を有するものであればいずれのものでも良く、例えば、0.5〜50μm、好ましくは15〜30μm程度の厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルフィドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルホンフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハン、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、アイオノマーフィルム等が挙げられる。
【0023】
(保護層)
本発明の中間転写記録媒体における保護層3は、基材シートの上に、電離放射線硬化樹脂からなる、すなわち電離放射線硬化樹脂を主成分とした構成で形成される。本明細書では、「電離放射線硬化樹脂」とは、電離放射線を照射しない硬化する前の前駆体又は組成物である「電離放射線硬化性樹脂」を、電離放射線を照射して硬化させたものを意味する。この保護層は、中間転写記録媒体の受容層に熱転写画像が形成された後に、中間転写記録媒体が加熱されて、その画像形成された受容層が被転写体に転写された状態の印画物の形態の再表面に位置する。したがって、この保護層は、サーマルヘッドや熱ロール等の加熱により、中間転写記録媒体の基材シートから、剥離して、被転写体へ転写されるものである。
【0024】
この保護層は、熱転写画像に対する各種耐久性を付与させる機能を主に発揮させるもので、電離放射線硬化樹脂からなる。具体的には以下に示す通りである。電離放射線硬化樹脂の硬化前の電離放射線硬化性樹脂としては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基((メタ)アクリロイルとは、アクリロイル又はメタアクリロイルの意味で用い、以下(メタ)は同様の意味とする)等の重合性不飽和結合、又はエポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー、及び/又は単量体を適宜混合した組成物が用いられる。これらのプレポリマー、オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等のアクリレート、シロキサン等の珪素樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ等が挙げられる。
【0025】
単量体の例としては、スチレン、αーメチルスチレン等のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ー2ーエチルヘキシル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及び/又は、分子中に2個以上のチオール基を有するポリオール化合物、例えばトリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコール等がある。以上の化合物を必要に応じ、1種もしくは2種以上混合して用いるが、樹脂組成物に通常の塗工適性を付与するために、前記プレポリマー又はオリゴマーを5質量%以上、前記単量体及び/又はポリチオールを95質量%以下とすることが好ましい。
【0026】
単量体の選定に際して、硬化物の可撓性が要求される場合は、保護層の各種耐久性の点や、塗工適性上支障のない範囲で、単量体の量を少なめにしたり、1官能又は2官能アクリレート単量体を用い比較的低架橋密度の構造とする。また、硬化物の耐熱性、硬度、耐溶剤性等を要求される場合には、塗工適性上支障のない範囲で単量体の量を多めにしたり、3官能以上のアクリレート系単量体を用い高架橋密度の構造とするのが好ましい。1、2官能単量体と3官能以上の単量体を混合し、塗工適性と硬化物の物性とを調整することもできる。
【0027】
以上のような1官能アクリレート系単量体としては、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等が挙げられる。2官能アクリレート系単量体としては、エチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等、3官能以上のアクリレート系単量体としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0028】
また、硬化物の可撓性、表面硬度等の物性を調整するために、前記プレポリマー、オリゴマー、単量体の少なくとも1種に対して、以下のような電離放射線の非硬化性樹脂を1〜50質量%程度混合して用いることができる。電離放射線の非硬化性樹脂としては、ウレタン系、繊維素系、ポリエステル系、アクリル系、ブチラール系、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0029】
本発明の中間転写記録媒体の保護層は、各種耐久性に優れ、適度な可撓性(転写後の印画物の取扱いやすさ、外観等に影響する)を有するため、ウレタン変性アクリル系樹脂の電離放射線硬化性樹脂を用いることが好ましい。さらに、そのウレタン変性アクリル系樹脂100質量部当たりオリゴマーを5〜40質量部含有している電離放射線硬化性樹脂が好適である。そのウレタン変性アクリル系樹脂は、アクリル系樹脂中に存在している水酸基(−OH)と、イソシアネート(−NCO)とが反応して、樹脂中にウレタン結合を有するもので、そのウレタン変性アクリル系樹脂100質量部当たりに、オリゴマーを5〜40質量部の割合で含有させることが好ましく、それにより保護層としての柔軟性と、耐久性を合わせもつ優れた機能をもつことができる。
【0030】
尚、上記の表現では、オリゴマーだけの添加と考えがちであるが、オリゴマーだけではなく、モノマーを添加していても良いことは当然である。オリゴマーの使用量が少ない場合、得られる保護層の強度、耐久性等が十分ではなく、またオリゴマーの量が多すぎると、保護層の表面のタックが高くなり、ブロッキッグが生じやすくなる等、好ましくない。
【0031】
以上のような電離放射線硬化性樹脂を電離放射線照射で硬化させる際、透明な樹脂を使用する必要がある。また、前記電離放射線硬化性樹脂組成物に光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルメウラムモノサルファイド、チオキサントン類、及び/又は光増感剤として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることもできる。また、離型性を考慮して、シリコーン樹脂、ワックス、フッ素樹脂、メラニン樹脂、界面活性剤等を添加剤として入れても良い。
【0032】
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物により、基材シートに形成された保護層を完全に硬化させる方法として、紫外線が主なものであるが、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有する電離放射線で、可視光線、電子線、γ線、X線も使用可能である。電離放射線照射装置としては、通常、紫外線照射装置が使用される。紫外線照射装置としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用される。その装置により、100〜1000KeV、好ましくは100〜300KeVのエネルギーを持つ電子を照射する。照射線量としては、通常、5〜300KGy(キログレイ)程度である。
【0033】
保護層は、上記に記載した電離放射線硬化性樹脂を含む、保護層の組成物を、適当な溶剤により、溶解又は分散させて保護層形成用インキを調製し、これを、上記の基材シートに、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースコーティング法等の形成手段により塗布し、乾燥、硬化させて形成することができる。保護層は基材シート上に、任意の厚みに形成することが可能であるが、乾燥後の厚みで0.1〜50g/m2であり、好ましくは1〜20g/m2程度である。
【0034】
(プライマー層)
本発明の中間転写記録媒体において、受容層と保護層との間に、両者の接着性を確保する等の目的で、プライマー層4を設ける。このプライマー層は、受容層及び保護層とを保持する役割を有するので、保護層3、プライマー層4及び受容層5が、被転写体へ転写される際の加熱時であっても、取扱い上支障のない程度の機械的強度を有することが好ましい。
【0035】
プライマー層を構成する材料としては、例えば、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等の合成樹脂が挙げられる。また、これらの合成樹脂に透明性を損なわない範囲で、白色顔料、充填剤、導電材等を加えもよい。
【0036】
プライマー層の形成手段は、上記の保護層の場合と同様の方法が採用でき、プライマー層の塗工量は、約0.2〜5.0g/m2(固形分)であり、好ましくは0.5〜2.0g/m2(固形分)である。
【0037】
(受容層)
上記のプライマー層の上に形成される受容層5は、加熱により熱転写シートから転写される色材を受容する働きを有するもので、特に昇華性染料の場合には、それを受容し、発色させると同時に、一旦受容した染料を再昇華させないことが望まれる。中間転写記録媒体を使用して、受容層に転写画像を形成し、該画像形成された部分を含む受容層と、プライマー層、保護層が被転写体へ転写されるものであり、本発明の受容層には透明性をもたせて、被転写体に転写された画像を上から鮮明に観察できるようにすることが一般的である。但し、作為的に受容層を濁らせたり、薄く着色させたりして、再転写画像を特徴づけることも可能ではある。
【0038】
受容層は、一般に熱可塑性樹脂を主体として構成される。受容層を形成する材料としては、例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルエステル等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体系樹脂、アイオノマー、セルロースジアセテート等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられ、中でも特に好ましいものはポリエステル系樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体及びそれらの混合物である。
【0039】
画像形成時において、着色転写層を有する熱転写シートと、中間転写記録媒体の受容層との融着若しくは印画感度の低下等を防ぐ目的で、昇華転写記録では、受容層に離型剤を混合することができる。混合して使用する好ましい離型剤としては、シリコーンオイル、リン酸エステル系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられるが、中でもシリコーンオイルが望ましい。そのシリコーンオイルとしては、エポキシ変性、ビニル変性、アルキル変性、アミノ変性、カルボキシル変性、アルコール変性、フッ素変性、アルキルアラルキルポリエーテル変性、エポキシ・ポリエーテル変性、ポリエーテル変性等の変性シリコーンオイルが望ましい。
【0040】
離型剤は1種若しくは2種以上のものが使用される。また、離型剤の添加量は受容層形成用樹脂100質量部に対し、0.5〜30質量部が好ましい。この添加量の範囲を満たさない場合は、昇華型熱転写シートと中間転写記録媒体の受容層との融着若しくは印画感度の低下等の問題が生じる場合がある。このような離型剤を受容層に添加することによって、転写後の受容層の表面に離型剤がブリードアウトして離型層が形成される。また、これらの離型剤は受容層に添加せず、受容層上に別途塗工してもよい。
【0041】
受容層は、上記のプライマー層の上に、上記の如き樹脂に離型剤等の必要な添加剤を加えたものを適当な有機溶剤に溶解したり、或いは有機溶剤や水に分散した分散体をグラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート等の公知の形成手段により、塗布し、乾燥して、形成される。上記受容層の形成に際しては、受容層は任意の塗工量でよいが、一般的には乾燥状態で1〜50g/m2である。また、このような受容層は連続被覆であるのが好ましいが、樹脂エマルジョン若しくは水溶性樹脂や樹脂分散液を使用して、不連続の被覆として形成してもよい。更に、熱転写プリンターの搬送安定化を図るために受容層の上に帯電防止剤を塗工してもよい。
【0042】
(接着層)
また、本発明の中間転写記録媒体の基材シートと保護層との間に接着層6を部分的に設けて、基材シートと保護層との接着性を高め、その部分的に設けられた接着層の上に位置する保護層、プライマー層、受容層からなる領域Bは、基材シートから剥離しない。この接着層は、従来公知の粘着剤や感熱接着剤がいずれも使用できるが、ガラス転移温度(Tg)が50℃〜80℃の熱可塑性樹脂から形成することが好ましく、例えば、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂等の如く熱時接着性の良好な樹脂から、適当なガラス転移温度を有するものを選択することが好ましい。また、接着性や、サーマルヘッド等の加熱手段にて全面ではなく一部がパターン形成される場合には、前記に挙げたような樹脂は分子量の小さい方が好ましい。上記のような接着層を構成する樹脂に必要に応じて、無機または有機フィラー等の添加剤を必要に応じて加えた塗工液を、上記受容層の場合と同様の形成手段で、塗布及び乾燥することによって、乾燥時で好ましくは0.5〜10g/m2程度の厚みに形成する。
【0043】
(離型層)
本発明の中間転写記録媒体は、受容層の上に、離型層8を部分的に設けて、該離型層の部分(図2の領域Dで示される部分)を、基材シートから剥離しないようにする。それに対し、離型層の部分を除く領域Cが基材シートから剥離して、任意の被転写体へ転写、接着する。離型層は、例えば、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、各種低分子量ポリエチレン、木ロウ、ミツロウ、鯨ロウ、イボタロウ、羊毛ロウ、セラックワックス、キャンデリラワックス、ペトロラクタム、一部変性ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等のワックス類や、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、硝化綿等の熱可塑性樹脂を用いて形成することができる。
【0044】
また、離型層はバインダー樹脂と離型性材料とから形成できる。そのバインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂であるポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、エチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、あるいは熱硬化型樹脂である不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノアルキッド樹脂等が使用できる。また、離型性材料としては、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン系樹脂、メラミン樹脂、フッ素系樹脂、タルクやシリカの微粉末、界面活性剤や金属セッケン等の潤滑等が使用できる。離型層は、上記の必要な材料を適当な溶剤により、溶解または分散させて離型層用塗工液を調製し、これをグラビア印刷法、スクリーン印刷法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の手段により塗布、乾燥して形成することができる。その乾燥後の厚さは、通常0.1〜10g/m2である。
【0045】
(検知マーク)
本発明の中間転写記録媒体には、基材シートと保護層との間に、検知マーク7を設けることが好ましい。この検知マークをプリンターで読み取ることで、受容層に熱転写シートから色材を正確な位置で、転写して、熱転写画像を形成し、また被転写体に対し、正確な位置で、受容層、プライマー層、保護層の積層された層を転写することができる。
【0046】
検知マークの形状や色は、検知器によって検知可能であればよく、限定されるものではない。また、検知マークの位置は、接着層の上に位置する領域Bにおける、あるいは離型層から下に位置する領域Dにおける基材シートと保護層との間に、設けることができる検知マークの形状においては、例えば、図4、5のように、四角形や、楕円形でもよく、その他、丸形やバーコード等の形状でもよい。また、ライン状の場合では、中間転写記録媒体の幅全体にわたって、形成してもよい。検知マークの色は、検知器で検知可能であればよく、例えば、光透過型検知器であれば、隠蔽性の高い銀色、黒色などがあげられる。また、光反射型検知器であれば、反射性の高い金属光沢の色調などがあげられる。
【0047】
検知マークの形成方法は、グラビア印刷やオフセット印刷で形成することができる。また、基材シートと保護層との間に形成するものではないが、中間転写記録媒体の表面から裏面に穴を貫通させることによって、検知マークを形成してもよい。
【0048】
(画像形成方法)
本発明の中間転写記録媒体は、以下に説明するような画像形成方法により、最終の印画物を形成する。1)まず、本発明の中間転写記録媒体の受容層に、基材上に色材を含有する熱溶融インキ層、あるいは昇華により熱移行する染料(色材)を含有する染料層を有する熱転写シートから、サーマルヘッド等の加熱手段により、色材を中間転写記録媒体の受容層に転写して、熱転写画像を形成する。
【0049】
2)次に、その熱転写画像の形成された受容層を有する中間転写記録媒体と、被転写体とを用意し、その受容層と被転写体とが接するように重ねて、サーマルヘッド、あるいはヒートロールによる加熱及び加圧を行なって、その熱転写画像を有する受容層を、プライマー層及び保護層と共に、被転写体へ転写して、熱転写画像の耐久性に優れた印画物が得られる。
【0050】
上記の1)の熱転写画像の形成工程と、2)の被転写体への熱転写画像を有する受容層の転写工程を行なうことで、箔切れ性が良好で、転写不良を防止でき、かつ熱転写画像の耐久性を付与した印画物が簡単に得られるものである。図1で示したように、基材シート2と保護層3との間に接着層6を部分的に設けた形態では、部分的に設けられた接着層6の上に位置する領域Bは、基材シート2から剥離せずに、領域Bを除いた領域Aにおける受容層5、プライマー層4、保護層3が箔切れ良く、被転写体10へ転写される。上記の場合、1)の工程で、熱転写画像を受容層の領域Aに形成することは言うまでもないが、領域Aから領域Bに熱転写画像が、またがっていてもかまわない。上記2)の工程では、図1(2)に示すように、被転写体10の転写される側の面積と比べ、領域Aの面積は小さくなるように、中間転写記録媒体の接着層6の塗工するパターンを設定し、かつ被転写体10の大きさを選定して、被転写体へ熱転写画像を有する受容層の転写を行なうことが好ましい。領域Aと被転写体の転写面の大きさが同等である場合、中間転写記録媒体と被転写体との位置合わせが難しい。また、領域Aが被転写体の転写される側の面積より、大きい場合、受容層の転写において、転写不良が生じやすいからである。
【0051】
また、図2で示したように、受容層5の上に、離型層8を部分的に設け、該離型層8の部分は、基材シート2から剥離せずに、離型層8の部分を除く領域Cにおける受容層5、プライマー層4、保護層3が箔切れ良く、被転写体10へ転写される。この場合、1)の工程で、熱転写画像を受容層の領域Aに形成することは言うまでもないが、領域Aから領域Bに熱転写画像が、またがっていてもかまわない。上記2)の工程では、図2(2)に示すように、被転写体10の転写される側の面積と比べ、領域Cの面積は小さくなるように、中間転写記録媒体の離型層8の塗工するパターンを設定し、かつ被転写体10の大きさを選定して、被転写体へ熱転写画像を有する受容層の転写を行なうことが好ましい。領域Cと被転写体の転写面の大きさが同等である場合、中間転写記録媒体と被転写体との位置合わせが難しい。また、領域Cが被転写体の転写される側の面積より、大きい場合、受容層の転写において、転写不良が生じやすいからである。
【実施例】
【0052】
次に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。以下、特に断りのない限り、部又は%は質量基準である。
(実施例1)
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの基材シートの一方の面に、図1、4に示すような配置で、下記の検知マーク用インキをグラビア印刷機により、乾燥時の塗工量が2.0g/m2の検知マークを形成した。その検知マークの形成された面の基材シート上に、図1に示すように、下記の接着層用塗工液をグラビア印刷機により、乾燥時の塗工量が1.0g/m2の接着層を形成した。その接着層の形成された面の基材シート上に、図1に示すように、下記の保護層用塗工液をグラビア印刷機により、乾燥時の塗工量が5.0g/m2の保護層を形成した。
【0053】
<検知マーク用インキ>
カーボンブラック 8.0部
ウレタン樹脂 5.0部
メチルエチルケトン 部
トルエン 100部
【0054】
<接着層用塗工液>
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 20部
(ソルバインCNL、日信化学工業(株)製)
メチルエチルケトン 40部
トルエン 40部
【0055】
<保護層用塗工液>
ウレタン系アクリル樹脂 100部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 20部
光重合開始剤 5部
メチルエチルケトン 100部
トルエン 100部
【0056】
上記の保護層の上に、下記のプライマー層用塗工液をグラビア印刷機により、乾燥時の塗工量が1.5g/m2のプライマー層を形成した。さらに、プライマー層の上に、下記の受容層用塗工液をグラビア印刷機により、乾燥時の塗工量が4.0g/m2の受容層を形成して、実施例1の中間転写記録媒体を作製した。但し、上記の中間転写記録媒体の検知マーク及び各層の塗工後における乾燥は、通常使用される熱風乾燥であるが、保護層の場合は塗工後、熱風乾燥し、次に紫外線照射装置(オゾン使用した、出力120W/cmの高圧水銀灯を使用したもの)で紫外線を照射した。
【0057】
<プライマー層用塗工液>
アクリルポリオール樹脂 60部
(U−245B/イソシアネート架橋剤 10/1、綜研化学(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 20部
【0058】
<受容層用塗工液>
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(ソルバインC、日信化学工業(株)製) 60部
エポキシ変性シリコーン(X−22−3000T、信越化学工業(株)製) 1.2部
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 5部
【0059】
(実施例2)
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの基材シートの一方の面に、図2、5に示すような配置で、実施例1で使用した検知マーク用インキをグラビア印刷機により、乾燥時の塗工量が2.0g/m2の検知マークを形成した。その検知マークの形成された面の基材シート上に、実施例1で使用した保護層用塗工液をグラビア印刷機により、乾燥時の塗工量が5.0g/m2の保護層を形成した。その保護層の上に、実施例1で使用したプライマー層用塗工液をグラビア印刷機により、乾燥時の塗工量が1.5g/m2のプライマー層を形成した。さらに、そのプライマー層の上に、実施例1で使用した受容層用塗工液をグラビア印刷機により、乾燥時の塗工量が4.0g/m2の受容層を形成した。また、その受容層の上に、図2、5に示すような配置で、下記組成の離型層用塗工液をグラビア印刷機により、乾燥時の塗工量が1.0g/m2の離型層を形成して、実施例2の中間転写記録媒体を作製した。
【0060】
<離型層用塗工液>
セルロース・アセテート・プロピオネート樹脂 100部
(CAP482−0.5、イーストマンケミカル 製)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 20部
【0061】
(実施例3)
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの基材シートの一方の面に、図3、6に示すような配置で、実施例1で使用した検知マーク用インキをグラビア印刷機により、乾燥時の塗工量が2.0g/m2の検知マークを形成した。その検知マークの形成された面の基材シート上に、図3に示すように、実施例1で使用した接着層用塗工液をグラビア印刷機により、乾燥時の塗工量が2.0g/m2の接着層を形成した。その接着層の形成された面の基材シート上に、図3に示すように、実施例1で使用した保護層用塗工液をグラビア印刷機により、乾燥時の塗工量が5.0g/m2の保護層を形成した。
【0062】
上記の保護層の上に、実施例1で使用したプライマー層用塗工液をグラビア印刷機により、乾燥時の塗工量が1.5g/m2のプライマー層を形成した。さらに、プライマー層の上に、実施例1で使用した受容層用塗工液をグラビア印刷機により、乾燥時の塗工量が4.0g/m2の受容層を形成した。また、その受容層の上に、図3、6に示すような配置で、実施例2で使用した離型層用塗工液をグラビア印刷機により、乾燥時の塗工量が2.0g/m2の離型層を形成して、実施例3の中間転写記録媒体を作製した。
【0063】
(比較例1)
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの基材シートの一方の面に、図1、4に示すような配置で、実施例1で使用した検知マーク用インキをグラビア印刷機により、乾燥時の塗工量が2.0g/m2の検知マークを形成した。その検知マークの形成された面の基材シート上に、実施例1で使用した保護層用塗工液をグラビア印刷機により、乾燥時の塗工量が5.0g/m2の保護層を形成した。その保護層の上に、実施例1で使用したプライマー層用塗工液をグラビア印刷機により、乾燥時の塗工量が1.5g/m2のプライマー層を形成した。さらに、そのプライマー層の上に、実施例1で使用した受容層用塗工液をグラビア印刷機により、乾燥時の塗工量が4.0g/m2の受容層を形成して、比較例1の中間転写記録媒体を作製した。
【0064】
(比較例2)
比較例1の中間転写記録媒体において、保護層用塗工液を下記組成の塗工液に変更し、その他は、比較例1と同様にして、比較例2の中間転写記録媒体を作製した。
<保護層用塗工液>
ポリメチルメタクリレート樹脂 20部
(BR−87、三菱レイヨン(株)製)
メチルエチルケトン 80部
【0065】
上記の作製した各例の中間転写記録媒体を用いて、箔切れ性の評価を以下の方法にて行なった。まず、被転写体として以下のカード基材を用意した。安定剤等の添加剤を約10%含有するポリ塩化ビニル(重合度800)コンパウンド100部、白色顔料(酸化チタン)10部及び可塑剤(DOP)0.5部からなるカード基材を用意した。
【0066】
(箔切れ性)
上記の実施例及び比較例で作製した中間転写記録媒体をHDP600(FARGO社製)の中間転写カードプリンタとHDP600用熱転写インクリボンを用いて、中間転写記録媒体の受容層に画像形成し、ヒートローラーの表面温度190℃、速度3sec/inchの条件で上記のカードの被転写体の転写される側の全面に、加熱及び加圧して、受容層、プライマー層及び保護層を転写し、その際の中間転写記録媒体の箔切れ性を調べた。
【0067】
箔切れの評価の基準は、以下の通りである。
◎:中間転写記録媒体の箔切れ性が非常に良好で、画像形成された受容層が、プライマー層及び保護層と共に、決められた領域(領域A、C)が、被転写体へ輪郭が、非常にシャープに転写している。
○:中間転写記録媒体の箔切れ性が良好で、画像形成された受容層が、プライマー層及び保護層と共に、決められた領域(領域A、C)が、被転写体へ輪郭がシャープに転写している。
×:中間転写記録媒体の箔切れ性が良くなく、画像形成された受容層が、プライマー層及び保護層と共に、決められた領域(領域A、C)から、はみ出て、カード全面に転写し、転写された端が、シャープでなく、問題である。
【0068】
(耐久性)
さらに、上記の実施例及び比較例の箔切れ性の評価で得られた印画物に対し、下記条件の耐久性の評価を行なった。
耐久性は株式会社東洋精機製作所製のロータリーアブレージョンテスタを用いて、磨耗輪CS−10F、500gfの荷重により評価した。
【0069】
耐久性の評価の基準は熱転写インクリボンにより形成された画像が磨耗輪により消えるところをエンドポイントとして、そのときの回転数をカウントした。
【0070】
上記の箔切れ性及び耐久性の評価結果を表1に示す。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の中間転写記録媒体の一つの実施形態で、被転写体へ転写する前と、転写する途中を示す概略断面図である。
【図2】本発明の中間転写記録媒体の他の実施形態で、被転写体へ転写する前と、転写する途中を示す概略断面図である。
【図3】本発明の中間転写記録媒体の他の実施形態で、被転写体へ転写する前と、転写する途中を示す概略断面図である。
【図4】本発明の中間転写記録媒体の多面付けで作製される際の配置される例を示した概略平面図である。
【図5】本発明の中間転写記録媒体の多面付けで作製される際の配置される例を示した概略平面図である。
【図6】本発明の中間転写記録媒体の多面付けで作製される際の配置される例を示した概略平面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 中間転写記録媒体
2 基材シート
3 保護層
4 プライマー層
5 受容層
6 接着層
7 検知マーク
8 離型層
10 被転写体
A 領域Bを除いた領域
B 接着層の上に位置する領域
C 領域Dを除いた領域
D 離型層の下に位置する領域
E 接着層と離型層の間に位置する領域
F 領域Eを除いた領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの一方の面に、少なくとも保護層、受容層を順次、積層した中間転写記録媒体において、該保護層が電離放射線硬化樹脂からなり、基材シートと保護層との間に接着層を部分的に設け、該部分的に設けられた接着層から上に位置する領域Bは、基材シートから剥離せずに、領域Bを除いた領域Aが基材シートから剥離可能であることを特徴とする中間転写記録媒体。
【請求項2】
基材シートの一方の面に、少なくとも保護層、受容層を順次、積層した中間転写記録媒体において、該保護層が電離放射線硬化樹脂からなり、該受容層の上に、離型層を部分的に設け、該離型層から下に位置する領域Dは、基材シートから剥離せずに、領域Dを除く領域Cが基材シートから剥離可能であることを特徴とする中間転写記録媒体。
【請求項3】
基材シートの一方の面に、少なくとも保護層、受容層を順次、積層した中間転写記録媒体において、該保護層が電離放射線硬化樹脂からなり、基材シートと保護層との間に接着層を部分的に設け、かつ該受容層の上に、離型層を部分的に設け、前記、部分的に設けた接着層と部分的に設けた離型層の間の領域Eは基材から剥離せずに、領域Eを除く領域Fが基材シートから剥離可能であることを特徴とする中間転写記録媒体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の中間転写記録媒体において、基材シートと保護層との間に、検知マークを設けたことを特徴とする中間転写記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−83139(P2009−83139A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252440(P2007−252440)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】