説明

乗客コンベアの欄干保守装置

【課題】スカートガードの適切な部位に対する潤滑剤の塗布ができ、塗布作業に係る運搬作業が簡単にできる乗客コンベアの欄干保守装置を提供する。
【解決手段】ステップのデマケーションクリート6に設けられ、このデマケーションクリート6を貫通し、スカートガード3に対向する開口端を有するスリット6A,6Bと、これらのスリット6A,6Bに対して挿脱可能に設けられ、潤滑剤を噴射する噴射孔5Bと、潤滑剤が注入される注入孔5Aと、噴射孔5Bと注入孔5Aとを連通させる通路5Cとを有する容器収納ホルダ5と、この容器収納ホルダ5に着脱可能に設けられ、潤滑剤が収納され、容器収納ホルダ5の注入孔5Aに挿入される噴出ノズル4Aを有する潤滑剤収納容器4とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータ等の乗客コンベアの欄干の底部に設けられたスカートガードに潤滑剤を塗布する際に活用される乗客コンベアの欄干保守装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータ等の乗客コンベアにあっては、乗客が安全に利用できるようにするために様々な保守作業が実施されている。その一つとして、乗客が乗るステップの側方に近接して立設される欄干の底部に設けられたスカートガードに、シリコーンオイルなどから成る潤滑剤を定期的に塗布し、スカートガードとステップとの隙間に乗客の靴などが挟まれないようにしている。通常、この潤滑剤の塗布作業に際しては、作業者が運転中の乗客コンベアのステップに乗り、スプレー缶などを用いて潤滑剤を塗布することが行なわれている。ところがこの塗布作業中、スプレー缶は広範囲に潤滑剤を噴射してしまうので、走行しているステップの側方に対向するスカートガードの適切な部位に潤滑剤を塗布することは難しかった。
【0003】
しかしながら、ステップの側方に対向するスカートガードに潤滑剤を塗布しなければ、前述したように乗客の靴等が挟まれる懸念がある。また、ステップの側方に対向するスカートガード以外の部分、例えばステップの踏面等に潤滑剤が塗布されてしまうと、ステップ上の乗客が潤滑剤のために滑って転倒することが懸念される。このようなことから、スカートガードの適切な部位に潤滑剤を塗布することは乗客の安全上、重要な保守作業となっていた。
【0004】
そこで従来、ステップのスカートガードの側端面に位置する踏面部に、潤滑剤を塗布する塗布部を設置し、この塗布部に連結された注入管を介して潤滑剤を注入するように構成し、スカートガードの適切な部位への潤滑剤の塗布を実現させた潤滑剤塗布装置が提案されている(特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−157964号公報
【特許文献2】実開昭61−025374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来の潤滑剤塗布装置のそれぞれは、スカートガードの適切な部位に対する潤滑剤の塗布を実現できるものの、この潤滑剤の塗布作業のための専用の装置一式を塗布作業の現場まで運ばなければならない煩雑な運搬作業が必要であった。このために、潤滑剤の塗布作業を行なう作業者の負担が大きくなる不具合があった。
【0007】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、スカートガードの適切な部位に対する潤滑剤の塗布を実現できるとともに、潤滑剤の塗布作業に係る運搬作業を簡単に行なうことができる乗客コンベアの欄干保守装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明に係る乗客コンベアの欄干保守装置は、ステップに近接して立設された欄干の底部に位置するスカートガードに、潤滑剤を塗布する際に用いられる乗客コンベアの欄干保守装置において、前記ステップのデマケーションクリートに設けられ、このデマケーションクリートを貫通し、前記スカートガードに対向する開口端を有するスリットと、このスリットに対して挿脱可能に設けられ、前記潤滑剤を噴射する噴射孔と、前記潤滑剤が注入される注入孔と、前記噴射孔と前記注入孔とを連通させる通路とを有する容器収納ホルダと、この容器収納ホルダに着脱可能に設けられ、前記潤滑剤が収納され、前記容器収納ホルダの前記注入孔に挿入される噴出ノズルを有する潤滑剤収納容器とを備えたことを特徴としている。
【0009】
このように構成した本発明は、スカートガードに対する潤滑剤の塗布作業に際しては、容器収納ホルダをデマケーションクリートに設けたスリットに挿入し、この容器収納ホルドの噴射孔をスリットの開口端を介してスカートガードの適切な部位に対向するように位置させた状態にし、潤滑剤収納容器の噴出ノズルを容器収納ホルダの注入孔に挿入するようにして、容器収納ホルダに潤滑剤収納容器を装着させればよい。この状態で乗客コンベアを運転し、ステップがスカートガードに沿うように走行すると、潤滑剤収納容器に収納されている潤滑剤が噴出ノズルから容器収納ホルダの注入孔に供給され、さらに容器収納ホルダの通路を経て噴射孔からスカードガードの適切な部位に向かって噴射される。これによって、スカートガードの適切な部位に潤滑剤を塗布することができる。この潤滑剤の塗布作業の終了後は、容器収納ホルダから潤滑剤収納容器を離脱させ、容器収納ホルダをデマケーションクリートのスリットから引き抜くことが行なわれる。
【0010】
本発明は、デマケーションクリートに形成したスリットに挿脱可能に設けられる容器収納ホルダと、潤滑剤が収納される潤滑剤収納容器とを互いに着脱可能に設けたことから、潤滑剤の非塗布時には容器収納ホルダを当該乗客コンベアの塗布作業の現場に近い場所等に予め収納しておき、潤滑剤の塗布作業時には作業者が作業現場へ潤滑剤収納容器のみを持参すればよい。また、潤滑剤の塗布作業の終了後には、容器収納ホルダから潤滑剤収納容器を離脱させ、容器収納ホルダは乗客コンベアの塗布作業の現場に近い場所等に再び収納し、潤滑剤収納容器のみを持ち帰ればよい。したがって、作業者が運搬するのは潤滑剤収納容器のみで済む。このように本発明によれば、スカートガードの適切な部位に対する潤滑剤の塗布を実現させることができるとともに、潤滑剤の塗布作業に係る運搬作業を簡単に行なうことができる。
【0011】
また、本発明に係る乗客コンベアの欄干保守装置は、前記発明において、前記潤滑剤収納容器は、前記噴射ノズルが下端に設けられる口金を有し、前記容器収納ホルダは、前記潤滑剤収納容器の前記口金が挿入される穴を有し、潤滑剤収納容器の前記口金が前記容器収納ホルダの前記穴に挿入された状態で、前記口金を前記穴に対して離脱可能に固定する容器固定手段を備えたことを特徴としている。
【0012】
このように構成した本発明は、スカートガードに対する潤滑剤の塗布作業の間、容器固定手段によって潤滑剤収納容器を容器収納ホルダにしっかりと固定することができる。これにより、ステップの走行に伴って容器収納ホルダ及び潤滑剤収納容器に振動が伝えられても、潤滑剤収納容器を容器収納ホルダからの離脱を生じさせることなく安定して保つことができる。
【0013】
また、本発明に係る乗客コンベアの欄干保守装置は、前記発明において、前記容器固定手段は、前記潤滑剤収納容器の前記口金の外周部分に形成したねじ部と、前記容器収納ホルダの前記穴の内周部分に形成され、前記ねじ部に螺合するねじ部とから成ることを特徴としている。
【0014】
このように構成した本発明は、潤滑剤収納容器の口金に形成したねじ部と、容器収納ホルダの穴のねじ部とを係合させて潤滑剤収納容器を回転させるだけで、容易にこの潤滑剤収納容器を容器収納ホルダに対して着脱させることができる。
【0015】
また、本発明に係る乗客コンベアの欄干保守装置は、前記発明において、前記容器収納ホルダを、前記デマケーションクリート部分に収納可能な形状寸法に設定したことを特徴としている。
【0016】
このように構成した本発明は、潤滑剤の非塗布時には、スカートガードの近傍に位置するデマケーションクリート部分に容器収納ホルダを収納させておき、潤滑剤の塗布時に容器収納ホルダをデマケーションクリート部分から取り出して、デマケーションクリートに設けたスリットに挿入すればよい。すなわち、非塗布時における容器収納ホルダが収納される場所と、塗布時における容量収納ホルダが設置される場所とを接近させることができるので、潤滑剤の塗布時における容器収納ホルダのデマケーションクリートのスリットへの設置を容易に行なうことができる。
【0017】
また、本発明に係る乗客コンベアの欄干保守装置は、前記発明において、前記容器収納ホルダを前記デマケーションクリート部分に離脱可能に固定するホルダ固定手段を備えたことを特徴としている。
【0018】
このように構成した本発明は、潤滑剤の非塗布時におけるステップの走行に際して、ホルダ固定手段によって容器収納ホルダをデマケーション部分に安定して保持させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、ステップのデマケーションクリートに設けられ、このデマケーションクリートを貫通し、スカートガードに対向する開口端を有するスリットと、このスリットに対して挿脱可能に設けられ、潤滑剤を噴射する噴射孔と、潤滑剤が注入される注入孔と、噴射孔と注入孔とを連通させる通路とを有する容器収納ホルダと、この容器収納ホルダに着脱可能に設けられ、潤滑剤が収納され、容器収納ホルダの注入孔に挿入される噴出ノズルを有する潤滑剤収納容器とを備えたことから、潤滑剤の塗布作業時には、容器収納ホルダをデマケーションクリートに設けたスリットに挿入し、この容器収納ホルダに潤滑剤収納容器を装着させることにより、潤滑剤収納容器内の潤滑剤をスカートガードの適切な部位に向かって噴射して、このスカートガードの適切な部位に対する潤滑剤の塗布を実現させることができる。また、潤滑剤の非塗布時には、容器収納ホルダを作業現場に近い場所等に収納させておくことができ、潤滑剤の塗布作業に際しては、潤滑剤収納容器のみを持参すればよく、潤滑剤の塗布作業に係る運搬作業を簡単に行なうことができる。これにより、このスカートガードに対する潤滑油の塗布作業に伴う作業者の負担を、従来に比べて軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る欄干保守装置の一実施形態が配置される乗客コンベアのステップを示す要部正面図である。
【図2】本実施形態に係る欄干保守装置を示す側面図である。
【図3】本実施形態に係る欄干保守装置を示す斜視図である。
【図4】本実施形態に係る欄干保守装置に備えられる容器収納ホルダの潤滑剤の非塗布時の配置形態を示す平面図である。
【図5】本実施形態に係る欄干保守装置に備えられる容器収納ホルダの潤滑剤の塗布時の配置形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る乗客コンベアの欄干保守装置の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0022】
図1は本発明に係る欄干保守装置の一実施形態が配置される乗客コンベアのステップを示す要部正面図、図2は本実施形態に係る欄干保守装置を示す側面図、図3は本実施形態に係る欄干保守装置を示す斜視図である。図4は本実施形態に係る欄干保守装置に備えられる容器収納ホルダの潤滑剤の非塗布時の配置形態を示す平面図、図5は本実施形態に係る欄干保守装置に備えられる容器収納ホルダの潤滑剤の塗布時の配置形態を示す平面図である。
【0023】
本実施形態に係る欄干保守装置が適用される乗客コンベアは、例えばエスカレータであり、図1に示すように、乗客が乗るステップ1を備えている。このステップ1には凹凸部を形成するクリート2が設けられている。ステップ1の側端部の付近には、所定の隙間を介してスカートガード3が設けられている。このスカートガード3は図示しない欄干の底部を形成している。このエスカレータの運転時には、ステップ1はスカートガード3に沿うように走行する。スカートガード3に対向するように位置するステップ1の端部には、クリート2に比べて突出寸法が大きく設定されたデマケーションクリート6が形成されている。なお、図示しない欄干上には、ステップ1の走行と同期して移動する無端状の移動手摺が配置されている。
【0024】
本実施形態に係る欄干保守装置は、スカートガード3に潤滑剤を塗布する際に活用されるものである。この本実施形態は、同図1に示すように、ステップ1のデマケーションクリート6に設けられ、このデマケーションクリート6を貫通し、スカートガード3に対向する開口端を有するスリット6Aと、このスリット6Aと同径、同軸に形成されてスリット6Aに対向して配置され、デマケーションクリート6を貫通するスリット6Bとを備えている。
【0025】
また、図2,3に示すように、本実施形態に係る欄干保守装置は、デマケーションクリート6のスリット6A,6Bに挿脱可能に設けられる容器収納ホルダ5と、この容器収納ホルダ5に着脱可能に設けられ、潤滑剤が収納される潤滑剤収納容器4とを備えている。
【0026】
前述した容器収納ホルダ5は、同図2に示すように、潤滑剤を噴射する噴射孔5Bと、潤滑剤が注入される注入孔5Aと、これらの噴射孔5Bと注入孔5Aとを連通させる通路5Cとを有している。注入孔5Aの付近には上方に開放された穴5Eを形成してあり、この穴5Eの内周部分にはねじ部5Dを形成してある。
【0027】
この容器収納ホルダ5は、図4に示すように、例えばデマケーションクリート6部分の溝部に収納可能な形状寸法に設定してある。また、デマケーションクリート6部分には、図3に示すように、上下方向に延設されて伸縮可能な突起6Cを設けてあり、容器収納ホルダ5には、図4等に示すように、突起6Cを伸長させた際にこの突起6Cが挿入する穴5Fを形成してある。
【0028】
これらの突起6C及び穴5Fは、デマケーションクリート6部分に収納された容器収納ホルダ5を離脱可能に固定するホルダ固定手段を構成している。
【0029】
前述した潤滑剤収納容器4は、容器収納ホルダ5の注入孔5Aに挿入される噴出ノズル4Aが下端に設けられ、容器収納ホルダ5に設けた穴5Eに収納される口金4Bを備えている。この口金4Bの外周部分には、容器収納ホルダ5の穴5eの内周部分に形成したねじ部5dと螺合するねじ部4B1を形成してある。この潤滑剤収納容器4は、図示しない乗降口に配置されたコームプレートよりも剛性の低い材質から成っている。例えば、コームプレートがポリカーボネート樹脂で製作されている場合には、潤滑剤収納容器5は一般グレードのポリプロピレン樹脂等によって製作される。
【0030】
前述した容器収納ホルダ5の穴5Eの内周部分に形成したねじ部5Dと、潤滑剤収納容器4の口金4Bの外周部分に形成したねじ部4B1は、潤滑剤収納容器4の口金4Bが容器収納ホルダ5の穴5Eに挿入された状態で、口金4Bを穴5Eに対して離脱可能に固定する容器固定手段を構成している。
【0031】
このように構成した本実施形態は、スカートガード3に対する潤滑剤の塗布作業に際して、塗布作業現場まで潤滑剤収納容器4を持参した作業者は、停止しているステップ1に乗り、図4に示すようにデマケーションクリート6部分に収納され、図3に示す突起6Cによって固定されている容器収納ホルダ5を、突起6Cを収縮させ容器収納ホルダ5の穴5Fから離脱させることによって、容器収納ホルダ5をデマケーションクリート6の収納部分から取り出す。図5に示すように、この取り出された容器収納ホルダ5をデマケーションクリート6に形成したスリット6A,6Bに挿入し、容器収納ホルダ5の噴射孔5Bをスリット6Aの開口端を介してスカートガード3の適切な部位に対向させるように位置させる。
【0032】
そして作業者は、塗布作業現場まで持参した潤滑剤収納容器4の口金4Bのねじ部4B1を容器収納ホルダ5の穴5Eのねじ部5Dに係合させて、潤滑剤収納容器4を時計回りに回転させながら押し下げる。これにより、潤滑剤収納容器4が下降し、口金4Bに設けた噴出ノズル4Aが容器収納ホルダ5の注入孔5A内に挿入される。なお、この場合、潤滑剤収納容器4の回転に伴って噴出ノズル4A部分に押圧力が加えられると、この噴出ノズル4Aが開口して注入孔5Aへの潤滑剤の供給が可能となる。以上のようにして、容器収納ホルダ5に対して潤滑油収納容器4の装着作業が行なわれる。
【0033】
このようにデマケーションクリート6のスリット6A,6Bに容器収納ホルダ5を挿入し、容器収納ホルダ5に潤滑剤収納容器4を装着した状態で、当該エスカレータを運転することにより、ステップ1がスカートガード3に沿って走行する。この間、潤滑剤収納容器4に収納されている潤滑剤が噴出ノズル4Aから容器収納ホルダ5の注入孔5Aに供給され、さらに通路5Cを経て噴射孔5Bからスカードガード3の適切な部位に向かって噴射される。このようにしてスカートガード3の適切な部位に潤滑剤が塗布される。この潤滑剤の塗布作業の間、ステップ1に乗っている作業者は、容器収納ホルダ5の噴射孔5Bからスカートガード3の適切な部位に向かって噴射されている潤滑剤の状態を、ステップ1を走行させながら観察することができる。
【0034】
潤滑剤の塗布作業の終了後は、潤滑剤収納容器4を前述とは逆の反時計回りに回転させることにより、容器収納ホルダ5から潤滑剤収納容器4が離脱する。また、容器収納ホルダ5がデマケーションクリート6のスリット6A,6Bから抜き取られ、この容器収納ホルダ5は、例えば次回の塗布作業までデマケーションクリート6部分に再び収納される。
【0035】
以上のように構成した本実施形態によれば、デマケーションクリート6に形成したスリット6A,6Bに挿脱可能に設けられる容器収納ホルダ5と、潤滑剤が収納される潤滑剤収納容器4とを互いに着脱可能に設けたことから、潤滑剤の非塗布時には、容器収納ホルダ5を前述したようにデマケーションクリート6部分に収納させておくことができる。このように容器収納ホルダ5をデマケーションクリート6部分に収納させた状態にあっては、デマケーションクリート6の有する機能を確実に維持させることができ、何らの支障を生じることがない。
【0036】
そして、潤滑剤の塗布時には、作業者が作業現場へ潤滑剤収納容器4のみを持参し、作業開始に際して、前述したように潤滑剤収納容器4を容器収納ホルダ5に装着し、ステップ1を走行させてスカートガード3の塗布作業を行えばよい。また、潤滑剤塗布作業の終了後には、前述したように潤滑剤収納容器4を容器収納ホルダ5から外し、この容器収納ホルダ5を再びデマケーションクリート6部分に収納させ、潤滑剤収納容器4のみを持ち帰ればよい。したがって、作業者が運搬するのは、潤滑剤収納容器4だけで済む。すなわち本実施形態によれば、スカートガード3の適切な部位への潤滑剤の塗布を実現できるとともに、潤滑剤の塗布作業に際しての運搬作業を、潤滑剤収納容器4のみを運搬すれば済む簡単な運搬作業とすることができる。これにより、スカートガード3に対する潤滑剤の塗布作業に伴う作業者の負担を軽減させることができる。
【0037】
また、スカートガード3に対する潤滑剤の塗布作業の間、潤滑剤収納容器4の口金4Bに形成したねじ部4B1と、容器収納ホルダ5の穴5Eに形成したねじ部5Dとから成る容器固定手段によって、潤滑剤収納容器4を容器収納ホルダ5にしっかりと固定することができる。これにより、ステップ1の走行に伴って容器収納ホルダ5及び潤滑剤収納容器4に振動が伝えられたとしても、潤滑剤収納容器4を容器収納ホルダ5に対して弛みを生じることなく安定して保つことができ、精度の高い潤滑剤塗布性能を確保することができる。
【0038】
また、前述のように、潤滑剤収納容器4と容器収納ホルダ5とをねじ部4B1とねじ部5Dとの螺合を介して固定させるようにしたことから、潤滑剤収納容器4を回転させるだけで容易に、この潤滑剤収納容器4を容器収納ホルダ5に対して着脱させることができ、スカートガード3に潤滑剤を塗布する作業の能率向上に貢献する。
【0039】
また、前述のように潤滑剤収納容器4を回転させるだけで、この潤滑剤収納容器4の噴出ノズル4Aを容器収納ホルダ5の注入孔5Aに挿入させることができるので、噴出ノズル4Aを注入孔5Aに適合させる位置決め作業を要することがなく、この点でも塗布作業の能率向上に貢献する。
【0040】
また、潤滑剤の非塗布時には、スカートガード3の近傍に位置するデマケーションクリート6部分に容器収納ホルダ5を収納させておき、潤滑剤の塗布時には容器収納ホルダ5をデマケーションクリート6部分から取り出して塗布作業を行なえばよいので、非塗布時における容器収納ホルダ5が収納される場所と、塗布時における容器収納ホルダ5が設置される場所とを接近させることができる。これによって、潤滑剤の塗布時における容器収納ホルダ5のデマケーションクリート6のスリット6A,6Bへの設置を容易に行なうことができる。このことも塗布作業の能率向上に貢献する。
【0041】
また、潤滑剤の非塗布時におけるステップ1の走行に際しては、デマケーションクリート6部分に設けた突起6Cと、容器収納ホルダ5Aに設けた穴5Fとから成るホルダ固定手段によって、容器収納ホルダ5Aをデマケーションクリート6部分に安定して保持させることができる。これにより、デマケーションクリート6部分から容器収納ホルダ5Aが飛び出すことがなく、デマケーションクリート6の有する機能をより確実に維持できる。
【0042】
なお、潤滑剤収納容器5の材質を、乗降口に設けられた図示しないコームプレートの材質よりも剛性が低くなるように選定してあることから、ステップ1上の作業者が潤滑剤収納容器4を容器収納ホルダ5から外し忘れて、ステップ1の走行に伴って潤滑剤収納容器4が図示しないコームプレートに衝突することがあっても、コームプレートの破損を防ぐことができる。
【0043】
なお、前述した実施形態にあっては、容器収納ホルダ5の形状寸法をデマケーションクリート6部分に収納可能に設定し、潤滑剤の非塗布時に容器収納ホルダ5をデマケーションクリート6部分に収納するようにしたが、本発明は、容器収納ホルダ5の形状寸法を前述のように設定することには限定されず、また、潤滑剤の非塗布時に、容器収納ホルダ5をデマケーションクリート6部分に収納することには限られない。すなわち、潤滑剤の非塗布時には、潤滑剤が塗布されるスカートガード3の付近のデマケーションクリート6部分とは異なる所定の場所等に、容器収納ホルダ5を収納させるようにしてもよい。
【0044】
また、潤滑剤収納容器4の口金4Bを容器収納ホルダ5の穴5Eに対して離脱可能に固定する容器固定手段を、口金4Bの外周部分に形成したねじ部4B1と、穴5Eの内周部分に形成したねじ部5Dとによって構成してあるが、本発明は容器固定手段をこのように構成することには限られない。潤滑剤収納容器4に与えられる押し下げ力、及び引き抜き力によって、いわゆるワンタッチで潤滑剤収納容器4が容器収納ホルダ5に嵌着、離脱される構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 ステップ
2 クリート
3 スカートガード
4 潤滑剤収納容器
4A 噴出ノズル
4B 口金
4B1 ねじ部(容器固定手段)
5 容器収納ホルダ
5A 注入孔
5B 噴射孔
5C 通路
5D ねじ部(容器固定手段)
5E 穴
5F 穴(ホルダ固定手段)
6 デマケーションクリート
6A スリット
6B スリット
6C 突起(ホルダ固定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステップに近接して立設された欄干の底部に位置するスカートガードに、潤滑剤を塗布する際に用いられる乗客コンベアの欄干保守装置において、
前記ステップのデマケーションクリートに設けられ、このデマケーションクリートを貫通し、前記スカートガードに対向する開口端を有するスリットと、
このスリットに対して挿脱可能に設けられ、前記潤滑剤を噴射する噴射孔と、前記潤滑剤が注入される注入孔と、前記噴射孔と前記注入孔とを連通させる通路とを有する容器収納ホルダと、
この容器収納ホルダに着脱可能に設けられ、前記潤滑剤が収納され、前記容器収納ホルダの前記注入孔に挿入される噴出ノズルを有する潤滑剤収納容器とを備えたことを特徴とする乗客コンベアの欄干保守装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乗客コンベアの欄干保守装置において、
前記潤滑剤収納容器は、前記噴射ノズルが下端に設けられる口金を有し、
前記容器収納ホルダは、前記潤滑剤収納容器の前記口金が挿入される穴を有し、
潤滑剤収納容器の前記口金が前記容器収納ホルダの前記穴に挿入された状態で、前記口金を前記穴に対して離脱可能に固定する容器固定手段を備えたことを特徴とする乗客コンベアの欄干保守装置。
【請求項3】
請求項2に記載の乗客コンベアの欄干保守装置において、
前記容器固定手段は、前記潤滑剤収納容器の前記口金の外周部分に形成したねじ部と、前記容器収納ホルダの前記穴の内周部分に形成され、前記ねじ部に螺合するねじ部とから成ることを特徴とする乗客コンベアの欄干保守装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の乗客コンベアの欄干保守装置において、
前記容器収納ホルダを、前記デマケーションクリート部分に収納可能な形状寸法に設定したことを特徴とする乗客コンベアの欄干保守装置。
【請求項5】
請求項4に記載の乗客コンベアの欄干保守装置において、
前記容器収納ホルダを前記デマケーションクリート部分に離脱可能に固定するホルダ固定手段を備えたことを特徴とする乗客コンベアの欄干保守装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−131955(P2011−131955A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290715(P2009−290715)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】