説明

乗客コンベア

【課題】トラスの外側を覆うように設けられた外装板の隙間から潤滑油が漏れ出るのを抑えることができる乗客コンベア。
【解決手段】トラスと、無端状に連結されトラス内を循環移動する踏段と、踏段の両側に立設された欄干の外周に沿って循環移動する手摺ベルト28と、手摺ベルト28を駆動するベルト駆動装置50とを備えた乗客コンベアにおいて、ベルト駆動装置50は、トラスの上梁17から上方に立設するベース18に取り付けられる板状のフレーム52と、軸受58を介してフレーム52に回転可能に支持され手摺ベルト28に動力を付与する駆動ローラ54とを備え、トラスの上梁17には、上方へ突出する衝立64がフレーム52におけるベース18を取り付けた取付面52aよりトラスの幅方向外方W1に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道といった乗客コンベアは、乗客及び自重を支える躯体としてのトラスと、このトラス内で一方の乗降口と他方の乗降口との間を循環移動して乗客を運搬する多数の踏段と、これら複数の踏段の両端部に立設された欄干と、欄干の外周に沿って循環移動する手摺ベルトと、手摺ベルトを駆動するベルト駆動装置とを備え、駆動装置によって多数の踏段を循環移動させて乗客を搬送するとともに、手摺ベルトを踏段と同期させて欄干の外周を循環移動させるようになっている。
【0003】
ベルト駆動装置は、手摺ベルトに接触するようにその移動方向に沿って設けられた駆動ローラと、駆動ローラと手摺ベルトを挟んで対向するように設けられた押圧ローラと、駆動ローラ及び押圧ローラを支持する板状のフレームとを備え、駆動ローラが駆動チェーンを介して駆動源としてのモータからの動力を受けて回転し、この回転する駆動ローラと手摺ベルトとの摩擦力によって手摺ベルトを一方向に走行駆動する。
【0004】
このようなベルト駆動装置は、乗客コンベアの幅方向の設置スペースを低減するために板状のフレームをトラスの上梁から上方に立設するベースに取り付け、トラスの上梁の上方に配置される場合がある(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−231905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、乗客コンベアでは、動力を伝達する駆動チェーンの駆動を円滑にするため駆動チェーンに潤滑油を定期的に供給している。上記のようにベルト駆動装置をトラスの上方に配置する場合、駆動ローラに駆動力を伝達するための駆動チェーンに供給した潤滑油が、板状のフレームを伝ってトラスの外側を覆うように設けられた外装板の隙間から外部へ漏れ出るおそれがある。
【0007】
本発明は、上記の点を考慮してなされたものであり、ベルト駆動装置をトラスの上方に配置した乗客コンベアにおいて、トラスの外側を覆うように設けられた外装板の隙間から潤滑油が漏れ出るのを抑えることができる乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る乗客コンベアは、トラスと、無端状に連結され前記トラス内を循環移動する踏段と、前記踏段の両側に立設された欄干の外周に沿って循環移動する手摺ベルトと、前記手摺ベルトを駆動するベルト駆動装置とを備えた乗客コンベアにおいて、前記ベルト駆動装置は、前記トラスの上梁から上方に立設するベースに取り付けられる板状のフレームと、軸受を介して前記フレームに回転可能に支持され前記手摺ベルトに動力を付与する駆動ローラとを備え、前記トラスの上梁には、上方へ突出する衝立が前記フレームにおける前記ベースを取り付けた取付面より前記トラスの幅方向外方に設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、他の本発明に係る乗客コンベアは、トラスと、無端状に連結され前記トラス内を循環移動する踏段と、前記踏段の両側に立設された欄干の外周に沿って循環移動する手摺ベルトと、前記手摺ベルトを駆動するベルト駆動装置とを備えた乗客コンベアにおいて、前記ベルト駆動装置は、前記トラスの上梁から上方に立設するベースに取り付けられる板状のフレームと、軸受を介して前記フレームに回転可能に支持され前記手摺ベルトに動力を付与する駆動ローラとを備え、前記フレームには、前記フレームにおける前記ベースを取り付けた取付面から前記トラスの幅方向内方へ向けて突出する樋部が前記軸受の下方に設けられ、前記トラスの上梁には、上方へ突出する凸条が前記樋部の先端より前記トラスの幅方向外方に設けられていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る乗客コンベアを示す側面図である。
【図2】図1に示す乗客コンベアに設けられたベルト駆動装置の正面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る乗客コンベアに設けられたベルト駆動装置の正面図である。
【図6】図5のC−C断面図である。
【図7】図6のD−D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る乗客コンベア10は、例えば、建物の上下階に跨って傾斜して設置されたエスカレータであって、多数の踏段12を上下階の乗降板11,13上に設けられた乗降口11a,13aとの間で循環移動させることで、踏段12上に搭乗した乗客を上階と下階とにわたって搬送する。多数の踏段12は、無端状の踏段チェーン14によって連結されており、建物の床下に設置されたトラス16内に配置されている。
【0013】
トラス16の内底部には、互いの端部同士をオーバラップさせた複数のオイルパン21が、トラス16の長手方向(踏段の移動方向)Lに沿ってトラス16の全域に配置されている。また、トラス16の外底部及び側部には、トラス16の外側から覆うように複数の外装板19が取り付けられている。
【0014】
トラス16の内部の上階側には、回転軸に連結されたスプロケット20と、駆動モータ及び減速機を備えた駆動装置22とが配置され、トラス16の内部の下階側には、回転軸に連結されたスプロケット24が配置されている。
【0015】
上階側のスプロケット20と下階側のスプロケット24との間には、踏段チェーン14が巻き掛けられており、スプロケット20,24の回転に伴って、踏段チェーン14がスプロケット20,24の間を循環移動し、踏段12も踏段チェーン14と一体に循環移動する。
【0016】
トラス16の上部両側に配置された上梁17には、踏段12の移動方向に沿って一対の欄干26が立設されており、欄干26の外周部に無端状の手摺ベルト28が取り付けられている。手摺ベルト28は、駆動チェーン30を介して上階側のスプロケット20に接続されたベルト駆動装置50により欄干26の外周部に沿って踏段12と同期して走行される。
【0017】
ベルト駆動装置50は、図2及び図3に示すように、トラス16の上梁17に設けられたベース18に取り付けられる板状のフレーム52と、手摺ベルト28の走行方向に対して平行に、かつ、一直線上に並ぶようにフレーム52に複数(本実施形態では4つ)配設された駆動ローラ54と、駆動ローラ54毎に一対ずつ設けられた複数の押圧ローラ56とを備える。
【0018】
ベース18はトラス16の上梁17における上階側の水平部分から上方に立設されており、フレーム52においてトラス16内側に向いた取付面52aをベース18に重ね合わせ、フレーム52の下端部をトラス16の上梁17の上面から間隔をあけた状態でボルト等によってフレーム52が固定されている。つまり、フレーム52は、トラス16の長手方向Lに沿って配置され、トラス16の幅方向外側からベース18に取り付けられている。
【0019】
駆動ローラ54は手摺ベルト28の内面と接して手摺ベルト28を摩擦駆動するものであって、駆動ローラ54に連結されたシャフト55がフレーム52に配設された軸受58により水平方向の軸回りに回転可能に支持されている。各駆動ローラ54のシャフト55に同軸状に固定されスプロケット60には、駆動チェーン30が巻き掛けられており、上階側のスプロケット20及び駆動チェーン30を介して駆動装置22からの動力が伝達されることで駆動ローラ54が上階側のスプロケット20と同期して回転駆動される。
【0020】
駆動ローラ54毎に設けられた複数の押圧ローラ56は、フレーム52にブラケット61を介してそれぞれ回転自在に、かつ、手摺ベルト28の走行方向に対して直角の方向(本実施形態では上下方向)に移動可能に支持されているとともに、バネ機構62により手摺ベルト28を挟んで対向する駆動ローラ54に圧接する方向に弾性的に付勢されている。
【0021】
そして、駆動ローラ54及び押圧ローラ56により手摺ベルト28の両面を挟み、押圧ローラ56がバネ機構62により手摺ベルト28に向けて付勢され手摺ベルト28と駆動ローラ54との摩擦力を高めた状態で駆動ローラ54を駆動することにより、手摺ベルト28が摩擦駆動により循環移動される。
【0022】
このような構成の乗客コンベア10において、トラス16の上梁17には上方へ突出する衝立64がベルト駆動装置50の下方に設けられている。
【0023】
衝立64は、図3及び図4に示すように、フレーム52の取付面52aよりもトラス16の幅方向外方W1に配置され、トラス16の長手方向Lに沿った長さが、ベルト駆動装置50のフレーム52よりも大きく設けられている。衝立64は、その長手方向両端部にトラス16の幅方向内方W2へ延びる脚部66が設けられており、平面視において略コ字状をなしている。このような衝立64及び脚部66は溶接などによってトラス16の上梁17に固定され、上梁17との隙間をコーキング剤で充填し、該隙間から潤滑油が漏れ出るのを防止している。
【0024】
なお、本実施形態において、衝立64の上端部にトラス16の幅方向外方W1へ屈曲する屈曲部68を設けてもよい。この屈曲部68は、フレーム52の取付面52aに対向する対向面52bの下端部をトラス16の幅方向外方W1から覆うように設けられている。
【0025】
以上のように、本実施形態における乗客コンベア10では、フレーム52の取付面52aよりトラス16の幅方向外方W1にトラス16の上梁17から上方に突出する衝立64が設けられている。そのため、駆動チェーン30に供給した潤滑油が、スプロケット60に連結されたシャフト55及びフレーム52の取付面52aを伝ってトラス16の上梁17の上面に溜まることがあっても、外装板19を取り付けたトラス16の幅方向外側へ流れ出ることがなく、外装板19の隙間から外部へ漏れ出るおそれがない。
【0026】
また、本実施形態において、衝立64の上端部に上記のような屈曲部68を設けた場合、駆動チェーン30に供給した潤滑油が、シャフト55を伝って軸受58からフレーム52の取付面52aから対向面52bへ通り抜け、フレーム52の対向面52bを伝って下方に流れても屈曲部68で受け止められる。そのため、潤滑油が、外装板19を取り付けたトラス16の幅方向外側へ流れ出ることがなく、外装板19の隙間から外部へ漏れ出るおそれがない。
【0027】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について、図5〜図7を参照して説明する。
【0028】
上記した第1の実施形態では、トラス16の上梁17から上方に突出する衝立64をフレーム52の取付面52aよりトラス16の幅方向外方W1に設けたが、本実施形態では、図5〜図7に示すように、ベルト駆動装置50のフレーム52に樋部70を設けるとともに、トラス16の上梁17に凸条72を設けている。
【0029】
詳細には、ベルト駆動装置50のフレーム52には、取付面52aからトラス16の幅方向内方W2へ向けて突出する樋部70が、駆動ローラ54に連結されたシャフト55を軸支する軸受58の下方に設けられている。樋部70は、図5に示すように、手摺ベルト28の走行方向に沿って延び複数の駆動ローラ54の下方に跨って設けられている。樋部70は先端に行くほど(つまり、フレーム52の取付面52aから離れるほど)緩やかに下方に傾斜しており、フレーム52側の端部に上方へ立ち上がる取付部74が設けられている。樋部70は、取付部74とフレーム52の取付面52aとをネジ76などによって締結することでフレーム52に固定されている。取付部74の上端とフレーム52の取付面52aとの隙間には、コーキング剤が充填され、取付部74と取付面52aとの隙間への潤滑油の進入を防止している。
【0030】
また、トラス16の上梁17には、上方へ突出する凸条72が樋部70の先端よりトラス16の幅方向外方W1に設けられている。凸条72は、溶接などによってトラス16の上梁17に固定され、上梁17との隙間がコーキング剤で封止されている。
【0031】
本実施形態における乗客コンベア10では、フレーム52の取付面52aからトラス16の幅方向内方W2へ向けて突出する樋部70を駆動ローラ54を軸支する軸受58の下方に設けるとともに、トラス16の上梁17に上方へ突出する凸条72を樋部70の先端よりトラス16の幅方向外方W1に設けている。そのため、駆動チェーン30に供給した潤滑油は、スプロケット60に連結されたシャフト55及びフレーム52の取付面52aを伝っても、樋部70で受け止められ樋部70の傾斜にしたがってトラス16の幅方向内方W2へ案内され、樋部70の先端から下方へ流れ落ちる。樋部70の先端から流れ落ちた潤滑油は、トラス16の上梁17に設けられた凸条72よりもトラス16の幅方向内方W2に溜まるため、外装板19を取り付けたトラス16の幅方向外側へ流れ出ることがなく、外装板19の隙間から外部へ漏れ出るおそれがない。
【0032】
また、本実施形態の乗客コンベア10では、例えば、既設の乗客コンベアの場合ように、トラス16及びベルト駆動装置50のフレーム52の側方に建屋の壁や外装板が配設されている場合であって、建屋の壁や外装板から離れた位置に凸条72を配設することができるため、凸条72の取付作業がしやすくい。
【0033】
なお、上記した構成及び作用効果以外は第1の実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0034】
10…乗客コンベア
12…踏段
14…踏段チェーン
16…トラス
17…上梁
18…ベース
19…外装板
20…スプロケット
21…オイルパン
22…駆動装置
24…スプロケット
26…欄干
28…手摺ベルト
30…駆動チェーン
50…ベルト駆動装置
52…フレーム
52a…取付面
52b…対向面
54…駆動ローラ
55…シャフト
56…押圧ローラ
58…軸受
60…スプロケット
61…ブラケット
62…バネ機構
64…衝立
68…屈曲部
70…樋部
72…凸条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラスと、無端状に連結され前記トラス内を循環移動する踏段と、前記踏段の両側に立設された欄干の外周に沿って循環移動する手摺ベルトと、前記手摺ベルトを駆動するベルト駆動装置とを備えた乗客コンベアにおいて、
前記ベルト駆動装置は、前記トラスの上梁から上方に立設するベースに取り付けられる板状のフレームと、軸受を介して前記フレームに回転可能に支持され前記手摺ベルトに動力を付与する駆動ローラとを備え、
前記トラスの上梁には、上方へ突出する衝立が前記フレームにおける前記ベースを取り付けた取付面より前記トラスの幅方向外方に設けられていることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記衝立は、前記トラスの長手方向に沿った長さが前記フレームより大きく設けられていることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記衝立はその上端部に前記トラスの幅方向外方へ屈曲する屈曲部を備え、前記フレームにおける前記取付面に対向する対向面の下端部を前記屈曲部が前記トラスの幅方向外方から覆うことを特徴とする請求項1又は2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
トラスと、無端状に連結され前記トラス内を循環移動する踏段と、前記踏段の両側に立設された欄干の外周に沿って循環移動する手摺ベルトと、前記手摺ベルトを駆動するベルト駆動装置とを備えた乗客コンベアにおいて、
前記ベルト駆動装置は、前記トラスの上梁から上方に立設するベースに取り付けられる板状のフレームと、軸受を介して前記フレームに回転可能に支持され前記手摺ベルトに動力を付与する駆動ローラとを備え、
前記フレームには、前記フレームにおける前記ベースを取り付けた取付面から前記トラスの幅方向内方へ向けて突出する樋部が前記軸受の下方に設けられ、
前記トラスの上梁には、上方へ突出する凸条が前記樋部の先端より前記トラスの幅方向外方に設けられていることを特徴とする乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−171726(P2012−171726A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33675(P2011−33675)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】