説明

乗客コンベヤの追従レール清掃装置

【課題】踏段の移動方向についての踏段に対する移動を防止することができる乗客コンベヤの追従レール清掃装置を得る。
【解決手段】追従レール14の転動面14aに接触する第1の接触片18および第2の接触片19と、踏段3の踏段軸10に設けられ、第1の接触片18および第2の接触片19を支持する支持部材17とを備えている。支持部材17は、第1の接触片18を転動面14aに向かって押圧する第1のばね26と、第2の接触片19を転動面14aに向かって押圧する第2のばね29とを有している。第2の接触片19は、第1の接触片18が接触する追従レール14の部分から追従レール14の長手方向に離れた追従レール14の部分に接触し、第1の接触片18および第2の接触片19は、転動面14aに垂直な方向から視たときに第1の接触片18と第2の接触片19との間に踏段軸10が位置するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、追従レールの転動面を清掃する乗客コンベヤの追従レール清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、追従レールの転動面に接触する接触片と、隣り合う踏段を繋ぐ踏段チェーンに設けられ、接触片を支持する支持部材とを備えたエスカレータの追従レール清掃装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−244789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、支持部材は、支持部材が踏段チェーンを幅方向に把持することにより踏段チェーンに取り付けられているので、踏段の移動方向について踏段に対する支持部材の移動が生じる恐れがある。支持部材が踏段に対して踏段の移動方向に移動すると、接触片が、追従レールの転動面を転動する追従ローラに衝突する。その結果、接触片に付着している異物が追従ローラに付着したり、追従レールの転動面と追従ローラとの間に接触片が挟まれたりしてしまうという問題点があった。
【0005】
この発明は、踏段の移動方向についての踏段に対する移動を防止することができる乗客コンベヤの追従レール清掃装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る乗客コンベヤの追従レール清掃装置は、追従レールの転動面に接触する接触部材と、踏段の踏段軸に設けられ、前記接触部材を支持する支持部材とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る乗客コンベヤの追従レール清掃装置によれば、接触部材を支持する支持部材が踏段の踏段軸に設けられているので、踏段の移動方向についての踏段に対する追従レール清掃装置の移動を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエスカレータを示す側面図である。
【図2】図1の踏段を示す斜視図である。
【図3】図1の踏段および踏段駆動装置を示す斜視図である。
【図4】図1の追従レール清掃装置を示す側面図である。
【図5】図4の第1の腕部および第1の接触片を示す側面図である。
【図6】図4の第2の腕部および第2の接触片を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るエスカレータ(乗客コンベヤ)を示す側面図である。図において、上階床と下階床との間には、主枠1が掛け渡されている。主枠1は、上階側水平部1aと、下階側水平部1bと、上階側水平部1aと下階側水平部1bとの間に位置する傾斜部1cとを有している。主枠1の上方には、主枠1の長手方向に延びた欄干2が設けられている。主枠1内には、循環移動する複数の踏段3と、踏段3を循環移動させる踏段駆動装置4と、踏段駆動装置4が駆動する動力を発生させる駆動機5と、追従レール清掃装置(乗客コンベヤの追従レール清掃装置)6とが設けられている。駆動機5は、主枠1の上階側水平部1aに配置されている。
【0010】
図2は図1の踏段3を示す斜視図である。図において、踏段3は、踏板7と、踏板7の後段側端部に設けられたライザ8と、踏板7とライザ8とを連結する一対のブラケット9と、ブラケット9の前段側部分に設けられた踏段軸10と、踏段軸10に設けられた駆動ローラ11と、ブラケット9の後段側部分に設けられた一対の追従ローラ12とを有している。
【0011】
各ブラケット9は、踏段3の幅方向に互いに離れて配置されている。踏段軸10は、踏段軸10の軸方向が踏段3の幅方向となるように配置されている。また、踏段軸10は、各ブラケット9を貫通している。
【0012】
各駆動ローラ11は、踏段軸10の両端部に取り付けられている。また、各駆動ローラ11は、ブラケット9よりも踏段3の幅方向外側に配置されている。各追従ローラ12は、踏段3の幅方向に互いに離れて配置されている。また、各追従ローラ12は、駆動ローラ11よりも踏段3の幅方向内側に配置されている。
【0013】
図3は図1の踏段3および踏段駆動装置4を示す斜視図である。図において、踏段駆動装置4は、各駆動ローラ11を案内する一対の駆動レール13と、各追従ローラ12を案内する一対の追従レール14と、各踏段3を連結する無端形状の一対の踏段チェーン15とを有している。駆動機5(図1)の駆動により発生する駆動力が各踏段チェーン15に伝達されるようになっている。各踏段チェーン15は、駆動力が伝達されることにより互いに同期して循環移動をする。
【0014】
各踏段チェーン15は、駆動レール13よりも踏段3の幅方向内側であって、追従レール14よりも踏段3の幅方向外側に配置されている。
【0015】
図4は図1の追従レール清掃装置6を示す側面図である。図において、追従レール清掃装置6は、追従レール14の転動面14aに接触する接触部材16と、踏段軸10に設けられ接触部材16を支持する支持部材17とを備えている。
【0016】
接触部材16は、追従レール14の転動面14aに接触する第1の接触片18と、第1の接触片18が接触する追従レール14の部分から追従レール14の長手方向に離れた追従レール14の部分に接触する第2の接触片19とを有している。第1の接触片18および第2の接触片19は、追従レール14の転動面14aに垂直な方向から視たときに、第1の接触片18と第2の接触片19との間に踏段軸10が位置するように配置されている。第1の接触片18は、第2の接触片19が接触する追従レール14の部分よりも前段側の追従レール14の部分に接触するようになっている。
【0017】
支持部材17は、踏段軸10を把持するクリップ部20と、第1の接触片18を支持する第1の腕部21と、第2の接触片19を支持する第2の腕部22と、クリップ部20と第1の腕部21と第2の腕部22とを接続する接続部23とを有している。クリップ部20が踏段軸10を把持することにより、支持部材17が踏段軸10に着脱可能に取り付けられる。
【0018】
クリップ部20には、クリップ部20が弾性変形することにより踏段軸10が通過可能となる開口部20aが形成されている。クリップ部20の開口部20aは、第1の接触片18および第2の接触片19のそれぞれが追従レール14の転動面14aに接触するようにクリップ部20が踏段軸10に取り付けられたときに、踏段軸10よりも上段側に位置するようになっている。クリップ部20は、踏段軸10の後段側から踏段軸10に近づくようにして、踏段軸10に取り付けられる。
【0019】
図5は図4の第1の腕部21および第1の接触片18を示す側面図である。図において、第1の腕部21は、収容部24aが形成された第1の腕部本体24と、第1の接触片18が接続された第1の接続板25と、第1の腕部本体24と第1の接続板25との間に設けられた第1のばね(押圧部材)26とを有している。
【0020】
第1の接続板25、第1のばね26および第1の接触片18の第1の接続板25側の部分は、収容部24aに収容されている。第1の接触片18の反第1の接続板25側の部分は、収容部24aの外に露出されている。支持部材17が踏段軸10に取り付けられるときに、第1のばね26が収縮するようにして第1の接触片18を追従レール14の転動面14aに接触させる。これにより、第1のばね26が第1の接触片18を追従レール14の転動面14aに向かって押圧する。
【0021】
第1の接触片18は、ゴム製のへらから構成されている。したがって、第1の接触片18が追従レール14の転動面14aに接触しながら第1の接触片18が追従レール14に対して移動することにより、追従レール14の転動面14aに付着している異物が第1の接触片18により取り除かれる。
【0022】
図6は図4の第2の腕部22および第2の接触片19を示す側面図である。図において、第2の腕部22は、収容部27aが形成された第2の腕部本体27と、第2の接触片19が接続された第2の接続板28と、第2の腕部本体27と第2の接続板28との間に設けられた第2のばね(押圧部材)29とを有している。
【0023】
第2の接続板28、第2のばね29および第2の接触片19の第2の接続板28側の部分は、収容部27aに収容されている。第2の接触片19の反第2の接続板28側の部分は、収容部27aの外に露出されている。支持部材17が踏段軸10に取り付けられるときに、第2のばね29が収縮するようにして第2の接触片19を追従レール14の転動面14aに接触させる。これにより、第2のばね29が第2の接触片19を追従レール14の転動面14aに向かって押圧する。
【0024】
第2の接触片19は、潤滑油が塗布されたフェルトから構成されている。したがって、第2の接触片19が追従レール14の転動面14aに接触しながら第2の接触片19が追従レール14に対して移動することにより、追従レール14の転動面14aには、潤滑油が塗布される。
【0025】
次に、追従レール清掃装置6の使用手順について説明する。まず、複数の踏段3のうちの何れか1つの踏段3の踏板7、ライザ8およびブラケット9を主枠から取り外す。
【0026】
その後、ブラケット9が外された踏段軸10に、後段側からクリップ部20を取り付ける。このとき、第1のばね26が収縮するようにして第1の接触片18を追従レール14の転動面14aに接触させ、かつ、第2のばね29が収縮するようにして第2の接触片19を追従レール14の転動面14aに接触させる。
【0027】
その後、駆動機5を駆動させて、踏段3を循環移動させる。これにより、追従レール14の転動面14aに付着している異物が第1の接触片18により取り除かれ、異物が取り除かれた追従レール14の転動面14aに第2の接触片19により潤滑油が塗布される。
【0028】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係る追従レール清掃装置6によれば、接触部材16を支持する支持部材17が踏段3の踏段軸10に設けられているので、踏段3の移動方向についての踏段3に対する追従レール清掃装置6の移動を防止することができる。これにより、追従レール清掃装置6が追従ローラ12に衝突することが防止される。その結果、接触部材16に付着している異物が追従ローラ12に付着したり、追従レール14の転動面14aと追従ローラ12との間に接触部材16が挟まれたりすることを防止することができる。
【0029】
また、支持部材17は、第1の接触片18を追従レール14の転動面14aに向かって押圧する第1のばね26を有しているので、第1の接触片18が長時間の使用によって変形した場合であっても、第1の接触片18を転動面14aに確実に接触させることができる。また、支持部材17は、第2の接触片19を追従レール14の転動面14aに向かって押圧する第2のばね29を有しているので、第2の接触片19が長時間の使用によって変形した場合であっても、第2の接触片19を転動面14aに確実に接触させることができる。
【0030】
また、接触部材16は、追従レール14の転動面14aに接触する第1の接触片18と、第1の接触片18が接触する追従レール14の部分から追従レール14の長手方向に離れた追従レール14の部分に接触する第2の接触片19とを有し、第1の接触片18および第2の接触片19は、転動面14aに垂直な方向から視たときに、第1の接触片18と第2の接触片19との間に踏段軸10が位置するように配置されているので、追従レール清掃装置6が踏段軸10を中心に回動することを防止することができる。これにより、第1の接触片18および第2の接触片19を転動面14aに確実に接触させることができる。
【0031】
また、第2の接触片19は、第1の接触片18よりも後方に配置されており、転動面14aに塗布するための潤滑油が付着されているので、追従レール14の転動面14aに付着している異物が第1の接触片18により取り除かれた後に、異物が取り除かれた追従レール14の転動面14aに第2の接触片19により潤滑油を塗布することができる。
【0032】
また、第2の接触片19は、フェルトから構成されているので、追従レール14の転動面を傷つけることなく、第2の接触片19を追従レール14の転動面14aに接触させることができる。
【0033】
また、支持部材17は、踏段軸10に着脱可能となっているので、追従レール14の清掃を行うときのみに、追従レール清掃装置6を踏段軸10に取り付けることができる。これにより、追従レール清掃装置6の長寿命化を図ることができる。
【0034】
なお、上記実施の形態1では、乗客コンベヤとして、エスカレータを例に説明したが、動く歩道であってもよい。
【0035】
また、上記実施の形態1では、接触部材16が第1の接触片18および第2の接触片19を有する構成について説明したが、接触部材16が第1の接触片18のみを有する構成であってもよい。
【0036】
また、上記実施の形態1では、第1の接触片18がゴム製のへらから構成される例について説明したが、第1の接触片18がフェルトやブラシなどから構成されてもよい。
【0037】
また、上記実施の形態1では、第2の接触片19がフェルトから構成される例について説明したが、第2の接触片19が、ゴム製のへらやブラシなどから構成されてもよい。
【0038】
また、上記実施の形態1では、第2の接触片19に潤滑油が塗布された構成について説明したが、第1の接触片18に潤滑油が塗布された構成や、第1の接触片18および第2の接触片19の何れにも潤滑油が塗布されていない構成であってもよい。
【0039】
また、上記実施の形態1では、支持部材17が押圧部材を有している構成について説明したが、支持部材17が押圧部材を有していない構成であってもよい。
【0040】
また、上記実施の形態1では、追従レール清掃装置6が踏段軸10に着脱可能である構成について説明したが、追従レール清掃装置6が踏段軸10に固定される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 主枠、1a 上階側水平部、1b 下階側水平部、1c 傾斜部、2 欄干、3 踏段、4 踏段駆動装置、5 駆動機、6 追従レール清掃装置(乗客コンベヤの追従レール清掃装置)、7 踏板、8 ライザ、9 ブラケット、10 踏段軸、11 駆動ローラ、12 追従ローラ、13 駆動レール、14 追従レール、14a 転動面、15 踏段チェーン、16 接触部材、17 支持部材、18 第1の接触片、19 第2の接触片、20 クリップ部、20a 開口部、21 第1の腕部、22 第2の腕部、23 接続部、24 第1の腕部本体、24a 収容部、25 第1の接続板、26 第1のばね(押圧部材)、27 第2の腕部本体、27a 収容部、28 第2の接続板、29 第2のばね(押圧部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
追従レールの転動面に接触する接触部材と、
踏段の踏段軸に設けられ、前記接触部材を支持する支持部材とを備えたことを特徴とする乗客コンベヤの追従レール清掃装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記接触部材を前記転動面に向かって押圧する押圧部材を有していることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベヤの追従レール清掃装置。
【請求項3】
前記接触部材は、前記転動面に接触する第1の接触片と、前記第1の接触片が接触する前記追従レールの部分から前記追従レールの長手方向に離れた前記追従レールの部分に接触する第2の接触片とを有し、
前記第1の接触片および前記第2の接触片は、前記転動面に垂直な方向から視たときに、前記第1の接触片と前記第2の接触片との間に前記踏段軸が位置するように配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗客コンベヤの追従レール清掃装置。
【請求項4】
前記第2の接触片は、前記第1の接触片よりも後方に配置されており、前記転動面に塗布するための潤滑油が付着されていることを特徴とする請求項3に記載の乗客コンベヤの追従レール清掃装置。
【請求項5】
前記接触部材は、フェルトから構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の乗客コンベヤの追従レール清掃装置。
【請求項6】
前記支持部材は、前記踏段軸に着脱可能となっていることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の乗客コンベヤの追従レール清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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