説明

乗物形絵本

【課題】
本発明の課題は、幼児期における子供が、プラスチックや金属(車軸等)の部品を間違って飲み込んだりする心配のない、紙製品だけでできていて安全性の高い絵本であって、且つ優れた回転性能を有する車輪を有する乗物形絵本を提供することである。
【解決手段】
紙製の車輪と、該車輪を支持する紙製の軸を設けた絵本であって、該車輪と該軸の接触面の少なくとも一方に、回転促進剤をコーティングすると、フローリングの床の上を転がしたとき、車輪が滑らずに回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幼児期における子供用の乗物形絵本に関し、特に、回転性に優れた乗物形絵本に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、絵本の形態も進化していて、絵本を玩具のように使って遊ぶことができるようにしているものがある。
【0003】
特許文献1には、段ボール紙により造られた、車軸を加えたブロック玩具(図11参照)が記載されている。このブロック玩具61は、板体62、63、64を貫通する孔を2つ設け、この孔の中に棒体を挿通させ、この棒体の両端に円盤状の板体65乃至68を固定し、回転自在にしたもの(段落0029参照)が記載されている。
しかし、段ボール紙を材料としているため、車輪の回転性能は決して良いものではなかった。
【0004】
特許文献2には、絵本の外形が乗物の形状になっていて、この乗物形の絵本を使って遊ぶ際は、自動車や電車の車輪として回転するようになっている車輪付絵本が記載されている。
しかし、この絵本は、車輪支持体10、基片11、挾持片12、左右車輪20等は合成樹脂材によって一体的に形成された(段落0011参照)合成樹脂(プラスチック)部品と、適宜自由に設定できる材料(金属)の車軸(段落0013参照)が、紙製の中央ページにプラスチック製の挾持片12で挟みこまれているだけなので、外れやすいといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−205184号公報
【特許文献2】実公平7−22318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、幼児期における子供が、プラスチックや金属(車軸等)の部品を間違って飲み込んだりする心配のない紙製品だけでできていて、安全性の高い乗物形絵本を提供することである。
本発明の第2の課題は、紙製品でありながら、金属の車軸やプラスチック製の車輪を設けた乗物形の絵本と同等に優れた回転性能を有する車輪を有する乗物形絵本を提供できるようにすることである。
また、本発明の第3の課題は、幼児期における子供の遊び方や遊ぶ頻度によって絵本に設けている車輪を支持する軸にストレスが加わった場合でも、短期間で軸が破損したり、車輪や車軸が外れたりすることがなく、長期に亘りこの軸に支持される車輪が安定して回転できる乗物形絵本を提供できるようにすることである。
更に、本発明の第4の課題は、表表紙から裏表紙までの間のページに車輪がなく、通常の絵本としても読みやすい乗物形絵本を提供できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明に係る乗物形絵本は、紙製の車輪、該車輪を支持する紙製の軸を設けた絵本において、該車輪の内周面又は該軸の周面の少なくとも一方に、回転促進剤をコーティングすることを見出したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
(1)紙製の車輪と、該車輪を支持する紙製の軸を設けた絵本であって、該車輪と該軸の接触面の少なくとも一方に、回転促進剤をコーティングしてなる乗物形絵本。
(2)前記軸が固定され、前記車輪のみが回転する前記(1)に記載の乗物形絵本。
(3)前記車輪と前記軸が、絵本の表表紙と裏表紙の中に独立して設けられていることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の乗物形絵本。
(4)回転促進剤が、潤滑剤である前記(1)〜(3)に記載の乗物形絵本。
(5)車輪の外周面が波状の形状である前記(1)〜(4)に記載の乗物形絵本。
(6)フローリングの床の上を転がしたとき、車輪が滑らずに回転することを特徴とする前記(1)〜(5)に記載の乗物形絵本。
【0009】
車輪を支持する紙製の軸は、絵本の中央頁に軸を差し込んで固定し、車両軸両端部分で車輪が回転できるように設定しても良いが、図6(表表紙の断面図)に示すように、2枚のボード紙11で厚めのボード紙12、車輪2、及び軸4を挟み込むようにして固定することが好ましい。
【0010】
軸4の厚さ(直径)は、直径が5mm以上であることが好ましく、直径8mm以上であることがより好ましく、直径10mm以上であることが最も好ましい。
軸4の厚さ(直径)が5mm未満である場合は、軸4の強度が低下し、遊んでいるうちに軸が抜けて、車輪2が外れやすくなるので、好ましくない。
【0011】
軸4の長さは、絵本の長さを超えないことが望ましい。絵本の長さを超えると、車輪が絵本からはみ出すためである。
なお、表表紙3や裏表紙10の中に軸を設ける場合の軸4の長さは、厚紙12と同じか若干長めにするとよい。
表表紙3や裏表紙10の中に輪4を設ける場合(図6参照)の軸の長さは10mm以下が好ましく、7mm以下がより好ましく、5mm以下が最も好ましい。表表紙や裏表紙が厚くなりすぎると、本として開きづらいからである。
また、表表紙3や裏表紙10の中に輪4を設ける場合(図6参照)の軸の長さは、0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、2mm以上が最も好ましい。0.5mm未満の場合は、車輪2の厚さも0.5mm未満となり、車輪2の強度が弱くなるので好ましくない。
【0012】
車輪2(図3参照)は、子供などが手(指)によって回転させることができるもので、厚さは、0.5mm以上のものが好ましく、1mm以上のものがより好ましく、1.5mm以上が最も好ましい。0.5mm未満の場合は、車輪の強度が弱くなるので好ましくない。
また、車輪2の厚さの上限は、車輪2の厚さ(同じ位置に2枚の車輪を設ける場合は車輪2枚の厚さの合計)が本の厚さを超えないことが望ましい。
表表紙3や裏表紙10の中に車輪を設ける場合(図6参照)の厚さは、前述した軸4の長さよりも若干短めにすることが好ましい。車輪2の厚さと軸4の長さが同じ場合は、車輪がボード紙11と接触して回転しにくくなるためである。また、車輪の厚さが軸の長さより極端に短い場合は、回転する車輪2を支えるボード紙11(図4、6参照)と車輪の間の隙間が大きくなりすぎて車輪が回転し難くなるためである。
【0013】
車輪2の形状は円盤形で構わないが、回転性能を向上させるため、外周面を波状等の凹凸のある形状(図3参照)にしても良い。
また車輪は、絵本が自立できるように配置しても良い。
【0014】
回転促進剤は、車輪2の内周面7或いは、軸4の周面5で車輪と接触する面(車軸と接触する面)のいずれか一方、または両方にコーティングする。
表表紙3や裏表紙10の中に車輪を設ける(図1、2、6参照)場合は、車輪2の内周面、或いは軸4の周面5(周面全体が車輪と接触する)のいずれか一方、または両方にコーティングする。
【0015】
この回転促進剤は、車輪の回転性能を上げることのできるものであれば特に限定されないが、具体的には、ワックス(蝋)、鉱物性潤滑油、シリコーン等の合成油、ヒマシ油等の植物性潤滑油、クジラ油等の動物性潤滑油からなる潤滑油やグリース等を含む潤滑剤が挙げられる。
【0016】
なお、コーティングする際には、必要に応じて、接着剤を添加しても構わない。
【発明の効果】
【0017】
本発明の乗物形絵本によれば、絵本が子供が遊ぶ際の安全性を優先するために、車輪と共に該車輪を支持する軸を絵本の本体と同様の紙を用いて形成したものであっても、回転体を支持する軸の強度を格段に向上できるので、子供の遊び方や遊ぶ頻度により絵本に設けている回転体を軸支する軸にストレスが加わった場合でも、該軸が短期間で破損することなく長期に亘り形状を安定して維持できる。
【0018】
また、本発明の乗物形絵本は、車輪や車輪を支持する軸に回転促進剤を用いているので、車輪を長期に亘り安定して回転させることができるので、絵本を気に入っている子供がこの絵本で十分に遊ぶことができる。
【0019】
そして、本発明の乗物形絵本は、車輪と共に該車輪を支持する絵本の本体と同じ紙で形成しているので、幼児期における子供が、プラスチックや金属(車軸等)の部品を間違って飲み込んだりする心配のない、安全性の高い乗物形絵本を提供することができる。そして、絵本を廃棄する場合は、該絵本をそのまま古紙等の資源ゴミとして出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の乗物形絵本の一例を示す斜視図。
【図2】乗物形絵本の一部拡大斜視図。
【図3】車輪2を示す斜視図。
【図4】閉じた状態の絵本。
【図5】開いた状態の絵本。
【図6】表表紙3の断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る乗物形絵本を、添付図面に示す具体例に基づいて説明する。
【0022】
図1、2は、本発明の回転体を設けた紙材から形成された絵本の一例であって、絵本1の形状を自動車に模し、表表紙3と裏表紙10の中に車輪2(前輪2a/後輪2b)と車軸4を設けている。
なお、図1に示した絵本1は、表表紙3となる部分の一部を切り欠いて示していると共に、両側の後輪2bを取り外している状態の図にしていて、後輪2bを支持する該表表紙3に軸4の全体を視認できるようにしている。
【0023】
図3は、車輪2であって、該車輪の中央に形成した前記軸4に遊嵌される通孔6の内周面7に、回転促進剤をコーティングしたものである。これにより、車輪2の回転面方向の厚みを大にして強度を得ることができない場合に前記通孔6の強度が向上し、車輪2をよりスムーズに回転させることができる。
【0024】
図4は、完成状態における閉じた状態の絵本1を示し、またこの絵本1開いた状態を図5に示していて、表表紙3、ページ部分9、裏表紙10における所定の部位に、該絵本の物語に係わる絵や文などが書かれる(図5では絵や文は省略している)。
【0025】
以下、上述のように構成した本発明に係る乗物形絵本1の作用を説明すると、絵本1を力強く押したり引いたりすることによって車輪2の通孔6の内周面7が強く軸4の周面5に押圧されても、該周面部5がしっかりとこの押圧力を受け止めることができる。
【実施例】
【0026】
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0027】
製造例1(本発明の乗物絵本の製本)
ボード紙を用いて、厚さ2mm、直径50mm、通孔6の直径12mmで、外周面が波状の形状の車輪2を4個(図3参照)と、長さ3mm、厚さ(直径)11.5mmの軸4を4個(図2参照)製造した。
次に、車輪2の内周面7と軸4の周面5に回転促進剤として蝋と、接着剤として糊をコーティングした。
そして、図4に示す車の形状をしたボード紙11に、図4に示す車の形状から車輪2と軸4の部分を切り取った厚さ2.8mmの厚めのボード紙12と、車輪2を2個(前輪と後輪)、軸4を2個設置し、2枚のボード紙11で、車輪2を2個、軸4を2個と、厚めのボード紙12を挟みこんで表表紙3を製造した。
また、同様の製法で裏表紙10を製造し、これにページ部分9と背表紙8を付けて、B6サイズ(車輪の出っ張り部分を除く)の大きさの本発明の乗物形絵本1(図4参照)を製本した。
【0028】
比較例1(比較乗物絵本の製造)
蝋と接着剤を使用しない以外は製造例1と同様に製造して、比較乗物形絵本を製本した。
【0029】
走行試験
本発明の乗物形絵本1と、比較乗物形絵本を用いて、体育館の床(フローリング)の上で、走行テストを行った。
本発明の乗物形絵本1を押すと、床の上で車輪2が綺麗に回転したが、比較乗物形絵本は、床の上で車輪が滑ってしまい、車輪は回転しなかった。
【0030】
耐久性試験
本発明の乗物形絵本1に、10kgの力で押しながら床の上を押すと、車輪2は滑らずに回転し、車軸が壊れることはなかった。
【0031】
実施例における図中の符号8は、絵本1の背表紙、符号9は、絵本1のページ部分、符号10は、絵本1の裏表紙である。また、符号11と12は、表表紙3のボード紙、厚めのボード紙である。
【符号の説明】
【0032】
1 乗物形絵本(絵本)
2 車輪
2a 前輪
2b 後輪
3 表表紙
4 軸
5 周面
6 通孔
7 内周面
8 背表紙
9 ページ部分
10 裏表紙
11 ボード紙
12 厚めのボード紙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製の車輪と、該車輪を支持する紙製の軸を設けた絵本であって、該車輪と該軸の接触面の少なくとも一方に、回転促進剤をコーティングしてなる乗物形絵本。
【請求項2】
前記軸が固定され、前記車輪のみが回転する請求項1に記載の乗物形絵本。
【請求項3】
前記車輪と前記軸が、絵本の表表紙と裏表紙の中に独立して設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の乗物形絵本。
【請求項4】
回転促進剤が、潤滑剤である請求項1〜3に記載の乗物形絵本。
【請求項5】
車輪の外周面が波状の形状である請求項1〜4に記載の乗物形絵本。
【請求項6】
フローリングの床の上を転がしたとき、車輪が滑らずに回転することを特徴とする請求項1〜5に記載の乗物形絵本。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−213418(P2012−213418A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78813(P2011−78813)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(510077912)大昭和 BOOK&TOY 株式会社 (3)
【Fターム(参考)】