説明

乗物用シート

【課題】部品点数が少なく、かつダクトとパッドの間に空気漏れを軽減し得る構成を備えるシートを提供する。
【解決手段】乗物用シート1であって、通気溝2aが形成されたパッド2と、パッド2に装着されて通気溝2aを覆う蓋部材3と、蓋部材3に形成された蓋穴3cを介して通気溝2aと連通されるダクト4を有する。ダクト4は、蓋穴3cの外周に位置する蓋部材3の蓋穴外周部3bをパッド2に押しつつパッド2に取付けられるフランジ部4dを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両などの乗物に搭載される乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
第一パッドと、第一パッドに形成された通気溝を覆うように第一パッドに装着される第二パッドと、第二パッドに形成された穴を介して通気溝と連通されるダクトとを有するシートが従来知られている(特許文献1参照)。また複数のダクトと、複数のダクトの接続部に設けられるライニングを有するシートも知られている(特許文献2参照)。該ライニングは、ウレタン部材から形成されており、第一のダクトの外周面と第一のダクトの外周側に接続される第二のダクトの内周面との間に設置される。これにより第一と第二のダクトの隙間から空気が漏れることがライニングによって軽減され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−8334号公報
【特許文献2】特開2007−308045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のダクトと第二パッドの間には、空気漏れを軽減するための部材が設けられていない。そこで該部材として、特許文献2に記載のライニングを用いることが考えられる。しかしライニングは、新たな部品であって、シートの部品点数を増加させる原因になる。そのため従来、部品点数が少なく、かつダクトとパッドの間に空気漏れを軽減し得る構成を備えるシートが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備える乗物用シートであることを特徴とする。一つの特徴によると本発明は、通気溝が形成されたパッドと、パッドに装着されて通気溝を覆う蓋部材と、蓋部材に形成された蓋穴を介して通気溝と連通されるダクトを有する。ダクトは、蓋穴の外周に位置する蓋部材の蓋穴外周部をパッドに押しつつパッドに取付けられるフランジ部を有する。
【0006】
したがってダクトとパッドは、蓋穴外周部によって空気漏れが軽減された状態にて接続され得る。また蓋穴外周部は、蓋部材の一部である。そのため空気漏れを軽減し得る構造は蓋部材を利用して構成され得る。かくしてシートは少ない部品点数にて構成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】シートの斜視図である。
【図2】シートバックの分解斜視図である。
【図3】シートクッションとヘッドレストの側面図とシートバックの断面図である。
【図4】図3のIV―IV線断面矢視拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一つの実施の形態を図1〜4にしたがって説明する。図1に示すようにシート1は、車両などの乗物に搭載される乗物用シートであって、シートクッション10とシートバック11とヘッドレスト12を有する。シートバック11は、シートクッション10の後部に取付けられて起立する。ヘッドレスト12は、シートバック11の上部に取付けられる。
【0009】
シートバック11は、図2に示すようにフレーム6とパッド2と空調装置13を有する。フレーム6は、一対のサイド部材6aと、サイド部材6aの上部を連結するアッパ部材6bと、サイド部材6aの下部を連結するアンダ部材6cを有する。サイド部材6aの下部は、図1に示すシートクッション10の後部に角度調整可能に取付けられる。アッパ部材6bにはヘッドレスト12のステー12aが装着される装着部6eが設けられる。
【0010】
パッド2は、図2,3に示すように発砲ウレタン等の弾性材料から形成され、フレーム6に装着される。パッド2の表側には表皮部材7が取付けられ、パッド2の裏側には裏部材8が配設される。裏部材8は、パッド2の裏面2cを覆い、裏面2cと裏部材8との間に形成された空間に空調装置13が配設される。
【0011】
パッド2には、図2,3に示すように通気溝2aと複数の孔2bが形成されている。通気溝2aは、裏面2cにて凹設され、縦溝2a1と複数の横溝2a2を一体に有する。縦溝2a1は、上下方向に延設される。横溝2a2は、左右方向に延設され、縦溝2a1を横断する。横溝2a2の各端部に孔2bが形成される。孔2bは、通気溝2aの底からパッド2の表面まで延出し、パッド2を厚み方向に貫通する。
【0012】
パッド2の裏面2cには、図2,3に示すように通気溝2aを覆う蓋部材3が取付けられる。蓋部材3は、フェルト製で、シート状(薄板)に形成される。蓋部材3は、通気溝2aの大部分を覆い得る本体部3aと、縦溝2a1の一端部を覆い得る蓋穴外周部3bを有する。蓋穴外周部3bは、本体部3aの上端縁の一部から上方に延出する。蓋穴外周部3bの中央には、縦溝2a1の一端部を開口し得る蓋穴3cが形成される。
【0013】
空調装置13は、図2,3に示すようにダクト4と送風装置5を有する。送風装置5は、ハウジング5aと、ハウジング5aに回転可能に取付けられるファン5bと、ファン5bを回転させるモータ5cを有する。ハウジング5aは、フレーム6に装着された取付部材6dに取付けられる。取付部材6dは、その両端部がサイド部材6aに取付けられる。
【0014】
ハウジング5aには、図2,3に示すように裏側または表側を開口する開口部5a1が形成される。ハウジング5aの下部には、ダクト4が接続される接続部5dが設けられる。ダクト4は、ゴムなどの弾性部材から形成されており、筒部4aとフランジ部4dを一体に有する。筒部4aは、筒状であって、入口4bと出口4cを有する。入口4bは、接続部5dに接続され、出口4cは、蓋部材3の蓋穴3cに接続される。
【0015】
図4に示すように筒部4aは、フランジ部4dから突出する端部4cを有する。端部4cは、蓋穴3cに挿通され、これによりダクト4の蓋部材3に対する位置を決定し得る。フランジ部4dは、筒部4aの外周面から外方に延出する。フランジ部4dは、蓋穴外周部3bを超えて延出する延出部分4eを両端部に有する。延出部分4eには取付穴4e3が形成され、取付穴4e3にクリップ9が挿通される。
【0016】
クリップ9は、図4に示すように樹脂製であって、脚部9bと頭部9aを一体に有する。脚部9bは、取付穴4e3に挿通され、かつパッド2に挿通されてパッド2に装着される。頭部9aは、フランジ部4dに当接して、フランジ部4dをパッド2へ押す。これによりフランジ部4dが蓋穴外周部3bに押付けられ、蓋穴外周部3bがパッド2に押付けられる。好ましくは蓋穴外周部3bが弾性的に潰されて、ダクト4とパッド2の間の気密性が蓋穴外周部3bによって向上され得る。
【0017】
フランジ部4dの延出部分4eは、図4に示すようにクリップ9に押されて弾性変形される。これにより延出部分4eが端部領域4e1と傾斜領域4e2とを形成する。端部領域4e1は、パッド2の裏面2cと平行して裏面2cに当接する。傾斜領域4e2は、パッド2の裏面2cに対して傾斜して、蓋穴外周部3bの外周端部3b2に当接する。傾斜領域4e2は、外周端部3b2をパッド2に向けて押し、好ましくは外周端部3b2を弾性的に潰す。
【0018】
ファン5bを回転させると、図2,3を参照するようにファン5bがハウジング5a内に空気を供給する。空気は、接続部5dを経て入口4bからダクト4内に供給され、出口4cから排出される。次に空気は、蓋穴3cを経て通気溝2aと蓋部材3の間に供給されて、孔2bを通ってパッド2から排出される。そして表皮部材7を貫通して表皮部材7の表側に空気が吹出される。
【0019】
以上のようにシート1は、図2に示すようにパッド2と蓋部材3とダクト4を有する。ダクト4は、蓋穴3cの外周に位置する蓋部材3の蓋穴外周部3bをパッド2に押しつつパッド2に取付けられるフランジ部4dを有する。
【0020】
したがってダクト4とパッド2は、蓋穴外周部3bによって空気漏れが軽減された状態にて接続され得る。また蓋穴外周部3bは、蓋部材3の一部である。そのため空気漏れを軽減し得る構造は蓋部材3を利用して構成され得る。かくしてシート1は少ない部品点数にて構成され得る。
【0021】
またフランジ部4dは、図4に示すように蓋穴3c側から蓋穴外周部3bを越えて延出する延出部分4eを有する。延出部分4eは、パッド2に取付けられることで蓋穴外周部3bの外周端部3b2をパッド2に押す構成になっている。したがって延出部分4eが蓋穴外周部3bの外周端部3b2を押すことで、外周端部3b2の近傍に力が集中し得る。これにより外周端部3b2がパッド2に強く押されて、ダクト4とパッド2の間の気密性が向上され得る。
【0022】
また蓋部材3は、フェルトである。したがって蓋部材3は、ゴム製等よりも軽量になり、かつウレタン製(スラブウレタン製)よりも安価に形成され得る。
【0023】
また蓋穴外周部3bは、図4に示すように通気溝2a側に張出す張出部3b1を有する。したがって蓋部材3がパッド2に対して位置がずれた場合でも、蓋穴外周部3bが通気溝2aを覆い続けることができる。例えば蓋部材3をパッド2に取付ける時に生じる蓋部材3の位置のばらつき、またはシート1の使用時における蓋部材3がパッド2に対して移動した場合でも、蓋穴外周部3bが通気溝2aを覆い続け得る。
【0024】
(他の実施の形態)
本発明は、上記実施の形態に限定されず、以下の形態等であっても良い。例えば図3に示す通気溝2aと蓋部材3は、シートバック11に設けられている。しかし通気溝と蓋部材がシートクッションに設けられても良い。図3に示す通気溝2aは、パッド2の裏面2cに形成され、通気溝2aを覆う蓋部材3がパッド2に装着されている。しかし通気溝がパッドの側面または表面等に形成され、該通気溝を覆う蓋部材がパッドに装着されても良い。
【0025】
図4に示すフランジ部4dは、蓋穴外周部3bの外側位置にてクリップ9によってパッド2に取付けられる。しかしフランジ部がフランジ部と蓋穴外周部とを貫通するクリップ等によってパッドに取付けられ、フランジ部によって蓋穴外周部がパッドに押付けられる構成であっても良い。
【0026】
図2に示す蓋部材3は、フェルトから形成されている。しかし通気性が低くかつ所定の柔軟性を備える材料、例えばゴム、スラブウレタンなどから蓋部材が形成されても良い。図2に示すダクト4は、クリップ9によってパッド2に取付けられているが、ねじなどの他の部材によってパッド2に取付けられても良い。
【0027】
図3に示す送風装置5は、シートバック11内に設けられている。しかし送風装置がシートバックの外、例えば車体(乗物本体)に装着され、該送風装置とダクトとがパイプ等によって接続されても良い。
【符号の説明】
【0028】
1…シート
2…パッド
2a…通気溝
2b…孔
2c…裏面
3…蓋部材
3b…蓋穴外周部
3b2…外周端部
3c…蓋穴
4…ダクト
4d…フランジ部
4e…延出部分
5…送風装置
6…フレーム
7…表皮部材
8…裏部材
10…シートクッション
11…シートバック
13…空調装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートであって、
通気溝が形成されたパッドと、前記パッドに装着されて前記通気溝を覆う蓋部材と、前記蓋部材に形成された蓋穴を介して前記通気溝と連通されるダクトを有し、
前記ダクトは、前記蓋穴の外周に位置する前記蓋部材の蓋穴外周部を前記パッドに押しつつ前記パッドに取付けられるフランジ部を有することを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物用シートであって、
前記フランジ部は、前記蓋穴側から前記蓋穴外周部を越えて延出する延出部分を有し、
前記延出部分は、前記パッドに取付けられることで前記蓋穴外周部の外周端部を前記パッドに押す構成になっていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項3】
請求項1または2に記載の乗物用シートであって、
前記蓋部材は、フェルトであることを特徴とする乗物用シート。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−130977(P2011−130977A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294689(P2009−294689)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】