説明

乗物用座席のパーソナルランプ

【課題】乗客の手元のみならず、乗客が前方座席の背面下部に収納した物品も照らせるようにする。
【解決手段】パーソナルランプ9は、乗物の前方座席Fの背面に取り付けられる光源20と、該光源20を覆うカバー30とを含み構成されている。そして、該カバー30には、光源20からの光を後方座席Rに向けて通して該後方座席Rの乗客Hの手元を照らすためのレンズ51の他にも、光源20からの光の一部を前方座席Fの背面に沿って下方に配光して該背面の下部に収納された物品Pを照らすための下方配光構造が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機や夜行バス等の乗物の各座席に対応して装着されるパーソナルランプに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機や夜行バス等の乗物では、図11に示す従来例(特許文献1)のように、各座席毎に、夜間の消灯時に他の乗客に光が漏れないように部分的に照明するパーソナルランプ90を設けている場合が多い。そして、このようなパーソナルランプ90は通常、前方座席Fの背面上部から後方座席Rの下部に向けて光を照射して後方座席Rの乗客Hの手元を照らすようになっている。
【特許文献1】実開平6−18077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなパーソナルランプ90では、乗客Hの手元を照らすことはできても、乗客Hが前方座席Fの背面下部に収納したペットボトルP等の物品を照らすことはできない。そのため、該ペットボトルP等の物品を探し難い。
【0004】
そこで、乗客の手元のみならず、乗客が前方座席の背面下部に収納した物品も照らせるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の乗物用座席のパーソナルランプは、乗物の座席の背面に取り付けられる光源と、該光源を覆うカバーとを含み、該カバーには、前記光源からの光を前記座席の後方座席に向けて通して該後方座席の乗客の手元を照らすためのレンズが形成された乗物用座席のパーソナルランプにおいて、前記カバーには、前記光源からの光の一部を前記座席の背面に沿って下方に配光して該背面の下部に収納された物品を照らすための下方配光構造が設けられたことを特徴とする。
【0006】
前記下方配光構造は、特に限定されないが、次の[1]〜[3]の態様を例示する。
[1]前記下方配光構造は、前記カバーの内側に設けられて前記光源からの光の一部を該カバーの下端部にまで通す光通路と、前記カバーの下端部に設けられて前記光通路からの光を下方に出す光出口とから構成された態様。
[2]前記下方配光構造は、前記カバーの内側に設けられて前記光源からの光の一部を該カバーの下端部にまで通す光通路と、前記レンズを前記カバーの下端部にまで延長して設けられて前記光通路からの光を下方に向けて出すレンズ延長部とから構成された態様。
[3]前記下方配光構造は、前記レンズの一部に設けられた前記光源からの光の一部を下方に屈折させる下方屈折部である態様。
【0007】
前記[1]の場合、前記光出口は、特に限定されないが、前記光通路にゴミを挿入する等のいたずらをされないように、次の[i][ii]の態様であることが好ましい。
[i]前記光出口は、前記カバーの下端部に左右方向に並設された複数の前後方向に延びるスリットである態様。
[ii]前記光出口は、前記カバーの下端部に形成された左右方向に延びる長孔に取り付けられた透明体である態様。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、下方配光機構を設けることによって、乗客が前方座席の背面下部に収納した物品を照すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1のパーソナルランプ及びそれを取り付けた前方座席を示す正面図である。
【図2】実施例1のパーソナルランプ及びそれを取り付けた前方座席並びに後方座席及びその座席に座った乗客を示す側面図である。
【図3】実施例1のパーソナルランプを示す正面図(a)及び底面図(b)である。
【図4】実施例1のパーソナルランプを示す正面断面図(a)及び底面断面図(b)である。
【図5】実施例1のパーソナルランプを示す側面図(a)及び側面断面図である。
【図6】実施例1のパーソナルランプのカバーを前方座席の背面から外した状態を示す正面図である。
【図7】実施例1のパーソナルランプの下部を示す部分拡大正面断面図(a)及びその光のイメージを示す平面図(b)である。
【図8】実施例2のパーソナルランプを示す正面図(a)及び底面図(b)である。
【図9】実施例3のパーソナルランプを示す正面図(a)及び底面図(b)である。
【図10】実施例4のパーソナルランプを示す部分拡大側面図(a)及び部分拡大側面断面図(b)である。
【図11】従来例のパーソナルランプ及びそれを取り付けた前方座席並びに後方座席及びその座席に座った乗客を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
図1〜図7に示す実施例1のパーソナルランプ9は、次に示すスイッチ10と、LEDランプ20,20と、カバー30とを含み構成されている。なお、図において、二点差線の矢印は、光を示しており、二点差線のハッチングは、光っている部分を示している。
【0011】
スイッチ10は、LEDランプ20,20のON/OFFを切り換えるためのスイッチであって、各座席(前方座席F)の背面に取り付けられている。このスイッチ10は、シーソスイッチ11と、スイッチボックス12とを含み構成されている。
【0012】
LEDランプ20,20は、パーソナルランプ9の光源となる部材であって、各座席(前方座席F)の背面に取り付けられている。このLEDランプの広がる配光角度は、おおよそ115度である。
【0013】
カバー30は、LEDランプ20,20等を保護するための凹状の部材であって、該カバー30に突設された第一嵌合突起31,31・・及び第二嵌合突起32,32が、前方座席Fの背面上部に設けられた第一嵌合凹部36,36・・及び第二嵌合凹部37,37に、それぞれ嵌合することによって、該前方座席Fの背面上部に取り付けられる。このカバー30は、次に示すスイッチ等収納部40と、ランプ収納部50と、光通路60とを含み構成されている。
【0014】
スイッチ等収納部40は、内側にスイッチ10等を収納するための部位である。このスイッチ等収納部40の一部には、シーソスイッチ11を露出させるためのスイッチ窓41が形成されている。
【0015】
ランプ収納部50は、内側にLEDランプ20,20を収納するための部位である。ランプ収納部50には、左右方向に延びるレンズ孔が設けられ、該レンズ孔にLEDランプ20,20からの光を後方座席Rの方向に向けて通すためのレンズ51が取り付けられている。そして、このレンズ51を通過した光によって後方座席Rの乗客Hの手元が照らされる。
【0016】
光通路60は、ランプ収納部50内の光の一部をカバー30の下端部にまで通すための通路であって、上端はランプ収納部50の内側に連通している。そして、この光通路60とランプ収納部50との間は、レンズ51の下端部からカバー30の内側に突出したレンズ突出部51tにより仕切られている。よって、ランプ収納部50内から光通路60に入る光はこのレンズ突出部51tを通過する。また、カバー30の下端部には、光通路60からの光を下方に通すための前後方向に延びる複数のスリット61,61・・が左右方向に並設されている。このスリット61,61・・は、図7に示すように、カバー30の内側の方が外側よりも広がった構造となっており、それにより、LEDランプ20,20からの光が遮られ難くなっている。これらの光通路60とスリット61,61・・とで、LEDランプ20,20からの光の一部を前方座席Fの背面に沿って下方に配光する下方配光構造を構成している。
【0017】
本実施例1によれば、光通路60とスリット61,61・・とからなる下方配光構造があるため、図1,図2に示すように、乗客Hが前方座席Fの背面下部に収納したペットボトルP等の物品を照すことができる。また、光通路60の光出口はスリット61,61・・であるため、光通路60にゴミを挿入する等のいたずらをされる心配もない。
【実施例2】
【0018】
図8に示す実施例2は、次の[1][2]の点で実施例1と相違し、その他の点においては、実施例1と同様である。
[1]カバー30の下端部にスリット61,61・・がなく、代わりに左右方向に延びる長孔があり、該長孔に透明体62が取り付けられている点。
[2]レンズ51にレンズ突出部51tが突設されていない点。
【0019】
本実施例2によっても、光通路60と透明体62とからなる下方配光構造があるため、乗客Hが前方座席Fの背面下部に収納したペットボトルP等の物品を照すことができる。また、光通路60の光出口は透明体62であるため、光通路60にゴミを挿入する等のいたずらをされる心配もない。
【実施例3】
【0020】
図9に示す実施例3は、次の[1][2]の点で実施例1と相違し、その他の点においては、実施例1と同様である。
[1]スリット61,61・・がなく、代わりに、レンズ51に、カバー30の下端部にまで延長して延びるレンズ延長部51eが設けられ、また、それに伴い該レンズ51を取り付けるレンズ孔も下方に延長されている点。
[2]レンズ51にレンズ突出部51tが突設されていない点。
【0021】
本実施例3によっても、光通路60とレンズ延長部51eとからなる下方配光機構があるため、乗客Hが前方座席Fの背面下部に収納したペットボトルP等の物品を照すことができる。
【実施例4】
【0022】
図10に示す実施例4は、次の[1]〜[3]の点で実施例1と相違し、その他の点においては、実施例1と同様である。
[1]レンズ51の一部に、LEDランプ20,20からの光の一部を下方に屈折させる下方屈折部51fが設けられ、該下方屈折部55が下方配光機構を構成している点。
[2]光通路60及びスリット61,61・・がない点。
[3]レンズ51にレンズ突出部51tが突設されていない点。
【0023】
本実施例3によっても、下方屈折部51fからなる下方配光構造があるため、乗客Hが前方座席Fの背面下部に収納したペットボトルP等の物品を照すことができる。
【0024】
なお、本発明は上記実施例1〜4に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の構成や形状を任意に変更して実施することもできる。
【符号の説明】
【0025】
9 パーソナルランプ
20 LEDランプ(光源)
30 カバー
51 レンズ
51e レンズ延長部
51f 下方屈折部
60 光通路
61 スリット(光出口)
62 透明体(光出口)
F 前方座席(座席)
R 後方座席
H 乗客
P ペットボトル(物品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物の座席(F)の背面に取り付けられる光源(20)と、該光源(20)を覆うカバー(30)とを含み、該カバー(30)には、前記光源(20)からの光を前記座席(F)の後方座席(R)に向けて通して該後方座席(R)の乗客(H)の手元を照らすためのレンズ(51)が形成された乗物用座席のパーソナルランプにおいて、
前記カバー(30)には、前記光源(20)からの光の一部を前記座席(F)の背面に沿って下方に配光して該背面の下部に収納された物品(P)を照らすための下方配光構造が設けられたことを特徴とする乗物用座席のパーソナルランプ。
【請求項2】
前記下方配光構造は、前記カバー(30)の内側に設けられて前記光源(20)からの光の一部を該カバー(30)の下端部にまで通す光通路(60)と、前記カバー(30)の下端部に設けられて前記光通路(60)からの光を下方に出す光出口(61,62)とから構成された請求項1記載の乗物用座席のパーソナルランプ。
【請求項3】
前記光出口(61,62)は、前記カバーの下端部に左右方向に並設された複数の前後方向に延びるスリット(61)である請求項2記載の乗物用座席用のパーソナルランプ。
【請求項4】
前記光出口(61,62)は、前記カバー(30)の下端部に形成された左右方向に延びる長孔に取り付けられた透明体(62)である請求項2記載の乗物用座席のパーソナルランプ。
【請求項5】
前記下方配光構造は、前記カバー(30)の内側に設けられて前記光源(20)からの光の一部を該カバー(30)の下端部にまで通す光通路(60)と、前記レンズ(51)を前記カバー(30)の下端部にまで延長して設けられて前記光通路(60)からの光を下方に向けて出すレンズ延長部(51e)とから構成された請求項1記載の乗物用座席のパーソナルランプ。
【請求項6】
前記下方配光構造は、前記レンズ(51)の一部に設けられた前記光源(20)からの光の一部を下方に屈折させる下方屈折部(51f)である請求項1記載の乗物用座席のパーソナルランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−224127(P2012−224127A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91451(P2011−91451)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(309034490)天龍工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】