説明

乗用型田植機

【課題】本発明は、予備苗載せ台への苗の積み込みが容易で、作業中の苗切れを少なくできるようにするとともに、予備苗載せ台を大きくする必要性のない場合にも対応できて、効率よく田植え作業を行えるようにした乗用型田植機を提供するものである。
【解決手段】自走機体の左右に配設した予備苗載せ台支柱17,18に、上下複数段の予備苗載せ台20〜22を取付け、左右の各予備苗載せ台支柱17,18の、ステアリングハンドル9の最上端部分9aよりも低い位置に、苗載せ台の苗載置条数の2分の1よりも大なる数の予備苗載せ台20〜22を上下に配設し、最下段の前記予備苗載せ台22を着脱可能にしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走車体の後部に、リンク機構を介して複数の条数の苗を載置する苗載せ台を備えた苗植付け装置を設け、自走機体の左右に配設した各予備苗載せ台支柱に上下複数段の予備苗載せ台を取付けた乗用型田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用型田植機の予備苗収容装置としては、特許文献1や特許文献2に示されているように、苗植付け装置の苗載せ台に載置される植付け条数と同数のマット状の予備苗を自走車体に用意しておくことのできる予備苗載せ台を備えたものが知られている。
又、苗載せ台に載置される植付け条数よりも多い数の予備苗を自走車体に収容できる数の予備苗載せ台を備えたものとしては、特許文献3に示されている技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−86288号公報
【特許文献2】特開2007−215520号公報
【特許文献3】特開平9−98618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗用型田植機を使って田植えを行う場合、走行方向の前後の畦に、補給用のマット苗を並べておいて往復走行をしながら植付作業を行う。作業中、苗載台の苗残量が少なくなったときに、毎回、予備苗載せ台に載置してある予備苗を使い切るのではなく、畦際近くにきたときに、苗載台上の苗残量が少なくなったときは、通常、予備苗載せ台上の予備苗を使用しないで、畦に並べてある補給用のマット苗を苗載台に補給する。そして、畦と畦との間の走行途中で苗載台の苗残量が少なくなったとき(或いは苗切れが生じたとき)に、予備苗載せ台上の予備苗を苗載台に補給し、畦に到達したときに空になった予備苗載せ台に予備苗を補給する。従って、1000平方メートル程度の四角の田の場合は、苗載台に予備苗を補給することは少ない。他方、2000平方メートル或いは3000平方メートル以上の広い田や細長い田の場合は、畦から畦への片道走行の途中で苗載台上の苗が不足することが多くなる。
【0005】
従って、地方によって或いは農家によって、予備苗載せ台上の苗を殆ど利用しない場合と、できるだけ予備苗を多く積載できる予備苗載せ台を望まれる場合とがある。
【0006】
多くの予備苗を積載できるように予備苗載せ台を設ける場合、予備苗載せ台を上方に向けて多段に段数を増やすと、予備苗を補給する位置が高くなり過ぎるので、予備苗の補給を行い難くなる。
【0007】
本発明は、以上の実情に鑑みて、乗用型田植機に、予備苗を必要最小限の苗載台と同数の予備苗を搭載できる予備苗載せ台を備えている場合、苗載台と同数の予備苗を超える数の予備苗を載置できる予備苗載せ台を備えている場合、或いは、状況に応じて、前者、後者の何れの状態にも対応できるようにしながらも予備苗載せ台への予備苗の積み込み、並びに予備苗載せ台から苗載せ台への苗補給が行い易く使い勝手のよい予備苗収容装置を備えた乗用型田植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔第1発明の構成〕
第1発明の構成は、自走車体の後部に、リンク機構を介して複数の条数の苗を載置する苗載せ台を備えた苗植付け装置を設け、自走機体の左右に配設した各予備苗載せ台支柱に上下複数段の予備苗載せ台を取付けた乗用型田植機において、前記左右の各予備苗載せ台支柱の、ステアリングハンドルの最上端部分よりも低い位置に、前記苗載せ台の苗載置条数の2分の1よりも大なる数の予備苗載せ台を上下に配設し、最下段の前記予備苗載せ台を着脱可能に構成してある。
【0009】
〔第1発明の作用〕
第1発明によれば、植付け条数よりも多い予備苗を準備できる予備苗載せ台を備えているので、植付け条数と同数の予備苗を準備できる予備苗載せ台しか備えていないものに比べて、畦からの予備苗の補給回数が少なくなり、広い田や細長い田に対応できるようになって、作業効率がよくなる。
【0010】
通常の大きさの田又は比較的小さな田で田植え作業する場合のように、予備苗載せ台を植付け条数と同数を超えてまで大きくする必要性のない場合には、最下段の予備苗載せ台を取り外す、或いは、最下段の予備苗載せ台を取り付けない仕様にすることによって、軽量化が図れるとともに、車体に近い前方圃場の見通しもよくなり、田植え作業を行いやすくなる利点がある。
【0011】
しかも、予備苗を載置する予備苗載せ台の段数を減らした場合、増やした場合の何れにおいても予備苗載せ台を、ステアリングハンドルの最上端部分よりも下方に配設することで、圃場端(畦)からの予備苗の積み込みが容易となり、しかも予備苗の苗載せ台への補給も運転者が容易に行うことができる。
【0012】
〔第1発明の効果〕
第1発明によれば、予備苗載せ台への予備苗の補給並びに苗載せ台への苗補給が容易で、しかも畦からの予備苗の補給回数が少なくなり、省力化が達成されるとともに、狭い田では最下段の予備苗載せ台を取り外すことによって、軽量化が図れるとともに、車体に近い前方圃場の見通しもよくなり、田植え作業を行いやすくり、何れの田でも作業効率を向上させることができるに至った。
【0013】
〔第2発明の構成〕
第2発明は、第1発明の構成において、前記最下段の予備苗載せ台を自走機体の走行停止用のブレーキペダルの上端縁よりも下方に配置してある。
【0014】
〔第2発明の作用効果〕
第2発明によれば、最下段の予備苗載せ台をブレーキペダルの上端縁よりも下方の低い位置に配置してあるので、最下段の予備苗載せ台を上部の予備苗載せ台と同じ前後位置に配設することができながら、上段の予備苗載せ台も従来の苗載せ台の条数と同数の予備苗載せ台を備えている乗用型田植機において、予備苗載せ台の高さを変えずに利用でき、従来構造に大幅な設計変更を加えることもなく、最下段の予備苗載せ台を追加することができる。
【0015】
〔第3発明の構成〕
第3発明は、第1発明または第2発明の構成において、前記左右の各予備苗載せ台支柱の、前記ステアリングハンドルの最上端部分よりも高い位置に、予備苗載せ台を着脱自在に取り付けられるように構成してある。
【0016】
〔第3発明の作用効果〕
第3発明によれば、最下段の予備苗載せ台を備えた上に、更に予備苗載せ台の数を増やすことができ、田植え作業時に苗切れも少なくなり、又、畦からの予備苗の補給回数も少なくすることができ、田植え作業の作業能率を頗る向上させることができるに至った。
【0017】
〔第4発明の構成〕
第4発明は、第1発明乃至第3発明のいずれか一つの発明の構成において、前記予備苗載せ台に載置する苗箱又は苗すくい板を予備苗載面に対して押圧付勢するホルダを、上下複数の前記予備苗載せ台に対応して複数備えてある。
【0018】
〔第4発明の作用効果〕
例えば、最上段の予備苗載せ台に対応する箇所にのみ空の苗箱又は苗すくい板を多段に積んで押さえるホルダを設けると斜め前方の視界が狭まるが、第4発明によれば、ホルダを、上下複数の予備苗載せ台に対応して複数備えてあるので、苗箱又は苗すくい板を上下に分散して保持することができ、前方の視界を狭めることがない。これにより、運転、特に田植え作業中の旋回をしやすい状況に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。
【図2】乗用型田植機の全体平面図である。
【図3】予備苗収容装置の正面図である。
【図4】最大収容形態での予備苗収容状態における最上段と中上段の予備苗載せ台とホルダを示す一部縦断正面図である。
【図5】最大収容形態での空箱収容状態における最上段と中上段の予備苗載せ台と空箱押さえ状態のホルダを示す一部縦断正面図である。
【図6】ホルダの側面図である。
【図7】主予備苗載せ台支柱と上部副予備苗載せ台支柱との接続構造を示す斜視図である。
【図8】主予備苗載せ台支柱と上部副予備苗載せ台支柱の接続状態での横断面図である。
【図9】下部副予備苗載せ台支柱の取付構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る乗用型田植機の全体側面図である。図2は、本発明の実施の形態に係る乗用型田植機の全体平面図である。これらの図に示すように、本発明の実施の形態に係る乗用型田植機は、左右一対の操向操作および駆動自在な前車輪1,1と左右一対の駆動自在な後車輪2,2とによって自走するよう構成され、かつ、機体前部に設けたエンジン3aを有した原動部3と、機体後部に設けた運転座席4aを有した運転部4とが装備された自走機体を備え、この自走機体の機体フレーム5の後部にリンク機構6を介して連結された苗植付け装置10を備えている。
【0021】
前記運転部4における運転座席4aの前方にはステップ29を備え、原動部3の左右にはステップ29に連なるサイドステップ29aを備え、右側のサイドステップ29aに、開口を形成して、その開口から上方に向けて自走機体の走行停止用のブレーキペダル50が設けられている。このブレーキペダル50は、踏み操作すると、主クラッチ(図示せず)が切り操作され、走行用のブレーキ(図示せず)が制動操作されるように、クラッチとブレーキに連動連結されている。
【0022】
この田植機は、4条の田植え作業を行う。
すなわち、前記苗植付け装置10は、4条の苗載置部15を形成した苗載せ台14を備え、リンク機構6が油圧シリンダ7によって機体フレーム5に対して上下に揺動操作されることにより、植付け機体11の下部に機体横方向に並べて設けた三つの接地フロート12が田面に接地した下降作業状態と、接地フロート12が田面から高く上昇した上昇非作業状態とに昇降する。苗植付け装置10を下降作業状態にして自走機体を走行させると、苗植付け装置10は、エンジン3aの出力が回転軸8を介して伝達されて駆動され、植付け機体11の後部に機体横方向に並べて設けた四つの苗植付け機構13によって苗植付けを行なう。
【0023】
すなわち、各苗植付け機構13は、植付け機体11に駆動揺動自在なリンク機構を介して支持された植付けアーム13aと、この植付けアーム13aの先端部に設けた苗植付け爪13bとを備え、植付けアーム13aが駆動揺動されることにより、苗植付け爪13bが、苗載せ台14の下端側に位置する苗取り出し口と圃場との間を上下に往復移動し、苗取り出し口を通過する際、苗載せ台14に載置されているマット状苗の下端部から一株分のブロック苗を切断して取り出し、このブロック苗を田面に下降搬送して植付けるという苗植え運動を行なう。苗載せ台14は、各苗植付け機構13の苗植え運動に連動させて植付け機体横方向に往復移送され、各苗植付け機構13によるマット状苗からのブロック苗取り出しがマット状苗の横一端側から他端側に向けて順次に行なわれるよう、各苗植付け機構13に対応するマット状苗を苗植付け機構13に対して植付け機体横方向に往復移送する。
【0024】
図1〜図3及び図9に示すように、前記自走機体は、原動部3の左右両横側に予備苗収容装置16を備えている。左右の予備苗収容装置16は、機体フレーム5を構成する前車軸ケース44に立設された主予備苗載せ台支柱17と、この主予備苗載せ台支柱17の、ステアリングハンドル9の最上端部分9aの高さよりも下方の位置において上下2段に並べて支持された中上段(上段)及び中下段(下段)の予備苗載せ台20,21と、機体フレーム5を構成するエンジンフレーム26に着脱自在に接続された下部副予備苗載せ台支柱18と、この下部副予備苗載せ台支柱18に着脱自在に接続された最下段の予備苗載せ台22と、主予備苗載せ台支柱17に対してその上端部に着脱自在に接続された上部副予備苗載せ台支柱19と、この上部副予備苗載せ台支柱19に着脱自在に接続された最上段の予備苗載せ台23とを備えている。即ち、左右各予備苗収容装置16には、主予備苗載せ台支柱17と下部副予備苗載せ台支柱18と上部副予備苗載せ台支柱19とからなる予備苗載せ台支柱と、上下4段の左右合わせて計8個の予備苗載せ台20〜23を備えている。予備苗載せ台支柱17〜19を構成する各支柱本体17a,18a,19aはパイプ材で形成されている。
【0025】
前記主予備苗載せ台支柱17は、前車軸ケース44に連結した連結部材25に固設され、連結部材25から機体外方に張り出され、予備苗載せ台20,21が乗降の邪魔にならない位置まで斜め前方上方に延出され、更に上方に延出されている。
【0026】
前記下部副予備苗載せ台支柱18は、エンジンフレーム26の上面にボルトナット27で取外し自在に固定され、エンジンフレーム26から機体外方に張り出され、略水平に斜め後方外方に延出された後、主予備苗載せ台支柱17の外側に沿うように中下段の予備苗載せ台21の下まで立設され、一対のボルトナット28で主予備苗載せ台支柱17に連結されている。下部副予備苗載せ台支柱18には、運転座席4a前方のステップ29から機体前方に連なる左右のサイドステップ29aの上面高さ近傍位置(最下段の予備苗載せ台22がサイドステップ29aと略同程度の高さ)で最下段の予備苗載せ台22が前後軸心Q回りで収納姿勢と、予備苗載置姿勢とに姿勢変更自在に取り付けられている。これにより、最下段の予備苗載せ台22に載置される予備苗40は、足元高さ近傍に位置することになり、予備苗搭載容量を増大化しながら、予備苗40の取りやすさが犠牲になり難い。又、最下段の予備苗載せ台22は、側面視で主予備苗載せ台支柱17の鉛直線と同位置に位置する下部副予備苗載せ台支柱18に取り付けられているので上部の予備苗載せ台20,21との前後位置が同じになっており、苗の取り扱いが容易である。
【0027】
最下段の予備苗載せ台22は、踏み操作されていない自走機体の走行停止用のブレーキペダル50の上端縁50aよりも下方に配置してある。これにより、最下段の予備苗載せ台22の一つ上の予備苗載せ台21と接近させないで、その下方に予備苗載せ台の配置空間を確保することができて、上部の予備苗載せ台20,21と同じ前後位置に配設する状態で、最下段の予備苗載せ台を追加することができる。
【0028】
これにより、予備苗載せ台20〜22に載置された予備苗は運転座席4に着座したまま取り出すことができ、苗載せ台14の苗補給の時間短縮(省力化)が可能である。最下段の予備苗載せ台22をサイドステップ29aの高さと略同じ低い位置に設けてあるので、最上段の予備苗載せ台23の位置も、予備苗40を載置していない状態での、路上運転に支障のない高さに設定されている。これにより、前方(斜め前方)の視界が遮られず、路上運転をするときに広い視角を確保した状態で運転することができる。最下段の予備苗40はサイドステップ29aよりも上方に位置することになるので、予備苗40に対して、サイドステップ29aの下を通り抜けるエンジン3aの熱気の影響も受け難く、作業中に予備苗40が枯れることが回避できる。予備苗載せ台20〜23の前後位置並びの左右位置は、従来の予備苗載せ台20,21と略同じになるので、予備苗載せ台20〜23を多くしたにも拘らず、納屋のスペースを多くとることがなく、従来と同様に余剰スペースを確保することができる。
【0029】
前記主予備苗載せ台支柱17は、その基端部を前車軸ケース44より前方にオーバーハングした状態で配設するとともに、下部副予備苗載せ台支柱18をエンジンフレーム26より横外方後方に延出して主予備苗載せ台支柱17に連結して機体フレーム5を構成するエンジンフレーム26及び前車軸ケース44と、主予備苗載せ台支柱17及び下部副予備苗載せ台支柱18とを連結してあるので、予備苗載せ台支柱17及び18を二点支持として強固に支持している。これにより、予備苗載せ台支柱17及び18が、エンジンフレーム26及び前車軸ケース44に強固に支持されているだけでなく、エンジンフレーム26及び前車軸ケース44が主予備苗載せ台支柱17及び下部副予備苗載せ台支柱18によって、ループ状に補強された構成となっている。
【0030】
上部副予備苗載せ台支柱19には、主予備苗載せ台支柱17に連結する連結用部材45を備えられている。連結用部材45は、上部予備苗載せ台支柱19の支柱本体19aを構成するパイプの下端に嵌合固定した連結用パイプ材46と、連結用ブラケット47で構成されている。連結用パイプ材46を主予備苗載せ台支柱17の支柱本体17aのパイプ穴17bに嵌合させるとともに、主予備苗載せ台支柱17に付設したブラケット17cと上部予備苗載せ台支柱19に付設した連結用ブラケット47とを、孔17d,47aを一致するように接合させた状態で、一つのボルトナット48で連結することで、最上段の予備苗載せ台23が位置決めされた状態で固定される。
【0031】
左右の予備苗収容装置16,16には、ステアリングハンドル9の最上端部分9aよりも下方の位置に苗載せ台14の苗載置条数(4条)の2分の1(2条分)よりも大なる1.5倍の数(3条分)の予備苗載せ台20,21,22を上下に配設してある。そして、最下段の予備苗載せ台22を着脱可能に構成してある。
【0032】
前記主予備苗載せ台支柱17、上部副予備苗載せ台支柱19及び下部副予備苗載せ台支柱18に取り付けられた上下4段の予備苗載せ台20〜23は、各支柱本体17a,18a,19aから自走機体横外側に突出し、かつ予備苗載置面が自走機体横外側に至るほど高い外上がりに傾斜する状態で支持されている。
【0033】
図3は予備苗収容装置16の最大収容形態での予備苗収容状態を示す正面図、図4は予備苗収容装置16の最大収容形態での予備苗収容状態における最上段と中上段の予備苗載せ台20,23の一部縦断正面図、図5は最大収容形態での空箱収容状態における最上段と中上段の予備苗載せ台と空箱押さえ状態のホルダを示す一部縦断正面図である。上下の予備苗載せ台20〜23において、予備苗載せ台20〜23の前端部と後端部と左右方向自走機体内側とに滑り止め壁24が設けられている。これらの滑り止め壁24間に、一枚のマット状の予備苗40を載置した苗すくい板41と共に苗箱42に入れた状態で、苗箱42が載置されることにより予備苗収容状態になる。
【0034】
図3〜図8に示すように、前記主予備苗載せ台支柱17を、中上段と中下段の予備苗載せ台20,21を支持する支柱本体17aと、この支柱本体17aの上端部に上部副予備苗載せ台支柱19を固定するためのブラケット17cとを備えさせて構成してある。
【0035】
前記左右の予備苗収容装置16において、上部副予備苗載せ台支柱19は、最上段の予備苗載せ台23を支持する支柱本体19aと、この支柱本体19aの上端部に付設したホルダ支持部19bとしてのブラケットと、連結用のパイプ材46及びブラケット47を備えた連結用部材45等で構成されている。ホルダ支持部19bには苗箱42又は苗すくい板41を押えるホルダ30を支持させてある。連結用ブラケット47には、主予備苗載せ台支柱17の上段(中上段)の予備苗載せ台20に載置される苗箱42又は苗すくい板41を押えるホルダ30aを支持させてある。つまり、前記連結用ブラケット47はホルダ支持部を兼用している。
【0036】
図4に示すように、前記上部副予備苗載せ台支柱19の上端部のホルダ支持部19bに取り付けたホルダ30は、ホルダ支持部19bに回転自在に連結された基端軸部31と、この基端軸部31から延出したアーム部32と、このアーム部32の延出端部で成る遊端部33と、基端軸部31の近くに位置した位置決め部34とを備えるように、かつホルダ30の全体が矩形になるようにループ状に折り曲げ成形された丸棒材によって構成してある。
【0037】
前記ホルダ支持部19bは、最上段の予備苗載せ台23の基端部23aよりも高い配置高さに配置してあり、かつ支柱本体19aから予備苗載せ台23が位置する側とは反対側に突出させてあり、ホルダ30の基端軸部31は、最上段の予備苗載せ台23の基端部23aよりも高い配置高さに位置し、かつ支柱本体19aに対して予備苗載せ台20,21が位置する側とは反対側に位置ずれした箇所に位置している。
【0038】
すなわち、前記ホルダ30は、最上段の予備苗載せ台23の基端部23aよりも高い配置高さに位置し、かつ支柱本体19aに対して予備苗載せ台23が位置する側とは反対側に位置ずれした箇所で上部副予備苗載せ台支柱19に回転自在に支持されており、基端軸部31の自走機体前後向き軸心Pまわりに揺動昇降操作されることにより、最上段の予備苗載置台23に収容された苗すくい板41や苗箱42を予備苗載せ台23に押し付け固定した下降作用姿勢と、苗すくい板41や苗箱42の押し付けを解除した上昇解除姿勢とに切り換わる。
【0039】
前記上部副予備苗載せ台支柱19の下端部の連結用ブラケット(ホルダ支持部47)に取り付けたホルダ30aは、ホルダ支持部47に回転自在に連結された基端軸部31aと、この基端軸部31aから延出したアーム部32aと、このアーム部32aの延出端部で成る遊端部33aと、基端軸部31aの近くに位置した位置決め部34aとを備えるように、かつホルダ30aが略ループ状に折り曲げ成形された丸棒材によって構成してある。
【0040】
前記ホルダ支持部47は、上段(中上段)の予備苗載せ台20の基端部20aと上下方向で重複する配置高さに配置してあり、かつ支柱本体19aから予備苗載せ台20が位置する側とは反対側に突出させてあり、ホルダ30aの基端軸部31aは上段(中上段)の予備苗載せ台20の基端部20aの高さと同程度の高さに位置し、かつ支柱本体19aに対して予備苗載せ台20が位置する側とは反対側に位置ずれした箇所に位置している。
【0041】
すなわち、前記ホルダ30aは上段(中上段)の予備苗載せ台20の基端部20aと同程度の高さに配設され、かつ支柱本体19aに対して予備苗載せ台20が位置する側とは反対側に位置ずれした箇所で上部副予備苗載せ台支柱19に回転自在に支持されており、基端軸部31aの自走機体前後向き軸心Paまわりに揺動昇降操作されることにより、上段(中上段)の予備苗載置台20に収容された苗すくい板41や苗箱42を予備苗載せ台20に押し付け固定した下降作用姿勢と、苗すくい板41や苗箱42の押し付けを解除した上昇解除姿勢とに切り換わる。
【0042】
図5は、予備苗収容装置16の空苗箱収容状態での縦断後面図である。この図に示すように、予備苗収容装置16は、空になった二つの苗箱42,42を積み重ねて中上段及び最上段の予備苗載せ台20,23に載置されることにより、空苗箱収容状態になる。この空苗箱収容状態では、空になった二枚の苗すくい板41,41を積み重ね状態にして中上段及び最上段の空の苗箱42に収納する。
このとき、ホルダ30,30aを軸心P,Paまわりに下降揺動操作し、ホルダ30,30aの遊端部33,33aを最上段(及び中上段)の苗すくい板41の上面に当接させると、ホルダ30,30aが下降作用姿勢になる。すると、ホルダ30,30aの基端軸部31,31aの近くに設けたバネ掛け孔35(図6参照)に一端側が係止されたスプリング36,36aがホルダ30,30aを下降付勢し、ホルダ30,30aは、スプリング36,36aによる下降操作力によって遊端部33,33aを苗すくい板41に押圧することにより、遊端部33,33aによって二つの空の苗箱42,42を最上段(及び中上段)の予備苗載せ台23に押し付け固定する。
【0043】
図4は、前記ホルダ30,30aの上昇解除姿勢を示している。この図に示すように、ホルダ30,30aを軸心P,Paまわりに上昇揺動操作し、位置決め部34,34aがホルダ支持部19b,47の側面に当接すると、ホルダ30,30aが上昇解除姿勢になる。すると、ホルダ30,30aの遊端部33,33aが苗箱42や苗すくい板41から上昇離間し、ホルダ30,30aは、遊端部33,33aによる苗箱42や苗すくい板41の押し付けを解除する。このとき、ホルダ30,30aは、スプリング36,36aによって上昇解除姿勢に保持される。
【0044】
図4、図5に示すように、前記スプリング36,36aのホルダ30,30aに連結している側とは反対側の端部が、ホルダ支持部19b,47に設けたバネ掛けピン37,37aに係止されている。スプリング36,36aのホルダ30,30aに連結している端部は、ホルダ30,30aに付いて昇降する。これにより、スプリング36,36aは、下降作用姿勢に切り換えられたホルダ30,30aを下降付勢し、上昇解除姿勢に切り換えられたホルダ30,30aを上昇付勢して上昇解除姿勢に保持する。
【0045】
図5に示すように、前記ホルダ30,30aは、基端軸部31,31aと遊端部33,33aとの間に設けた折れ曲がり形の屈曲部38,38aを備え、下降作用姿勢において屈曲部38,38aの作用によって自走機体前後方向視で自走機体上方向きに凸状となり、ホルダ30,30aの基端側と二段積み状態の上段の苗箱42における側壁42aとの当接を回避して二段積み状態の空の苗箱42,42を予備苗載せ台20,23に押し付ける。
【0046】
左右の最上段の予備苗載せ台23を装着してその左右に予備苗40を載置すると、奥行きの長い大きな圃場で苗植えを行うときなどでは、途中で苗載せ台14の苗切れが生じても十分に対応でき、田植え作業を効率よく行うことができる。他方、最上段の予備苗載せ台23を装着した場合は、運転者の背丈にもよるが、目線が最上段の予備苗40で遮られ、前方左右の見通しが悪くなり、多少の閉塞感を感じることがある。又、片方4段も予備苗40を積むと走行負荷も増加する。そこで、通常は予備苗載せ台20〜23の段数を減らして2段又は下3段で使用し、最上段の予備苗載せ台23は、支柱19から取外しておく方が使い勝手がよい。
【0047】
最上段の予備苗載せ台23を主予備苗載せ台支柱17から取り外すには、ブラケット17cと苗押さえ支持部を構成する連結用ブラケット47とを連結する一本のボルトナット48を取り外すだけで、上部副予備苗載せ台支柱19とともに最上部の予備苗載せ台23を外すことができる。
【0048】
上部副予備苗載せ台支柱19に付設のホルダ支持部19bと主予備苗載せ台支柱17に付設のブラケット17cとは同じ大きさで同じ形状に構成されている。そこで、取り外した上部副予備苗載せ台支柱19のホルダ支持部19bに取り付けてあるホルダ30の基端軸部31に抜け止めを施してある割ピン39を外して基端軸部31を抜き取り、合わせてスプリング36も取り外す。取り外したホルダ30を、主予備苗載せ台支柱17に付設してあるブラケット17cの孔17dに基端軸部31を通して割ピン39で抜け止めを施すとともに、スプリング36の一端をバネ掛けピン17eに止着することで、上部副予備苗載せ台支柱19に取り付けていたホルダ30を主予備苗載せ台支柱17に付け替えることができる。そして、上部副予備苗載せ台支柱19の頂部に被せてあるパイプ穴を塞ぐキャップ49を主予備苗載せ台支柱17の頂部に付け替えて、パイプ穴17bを塞ぐことで、予備苗載せ台20〜22が3段構成の仕様変更が完了する。
【0049】
又、普通の圃場での田植え作業では、苗載せ台14の植付条数と同数の予備苗載せ台20,21があれば田植え作業に支障がないことから、最下段の予備苗載せ台22を取り外すこともできる。最下段の予備苗載せ台22は、エンジンフレーム26との連結部と主予備苗載せ台支柱17との連結部とのボルトナット27,28を外すことで、取り外すことができる。
【0050】
農家の要望に応えて、予備苗載せ台20〜23を、工場出荷の段階で、上部副予備苗載台支柱19と下部副予備苗載せ台支柱18を外した中上段と中下段の上下2段仕様、上部副予備苗載せ台支柱19を外した3段仕様、或いは主予備苗載せ台支柱17に上部副予備苗載台支柱19と下部副予備苗載せ台支柱18を取り付けた4段仕様として出荷し、農家で必要に応じて予備苗載せ台20〜23の段数を変更するようにしておけば、使用する側の農家にとって使い勝手がよい。
【0051】
〔別実施の形態〕
上記実施の形態では、最下段と最上段の予備苗載せ台22,23を着脱するのに、下部及び上部副予備苗載せ台支柱18,19ごと取り外すように構成されているが、下部及び上部副予備苗載せ台支柱18,19を取り付けたままで、最下段又は最上段の予備苗載せ台22,23のみを着脱自在に構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、5条以上の苗載せ台14を備えた乗用型田植機にも適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
6 リンク機構
9 ステアリングハンドル
9a ステアリングハンドルの最上端部分
10 苗植付け装置
14 苗載せ台
17 予備苗載せ台支柱(主予備苗載せ台支柱)
18 予備苗載せ台支柱(下部副予備苗載せ台支柱)
19 予備苗載せ台支柱(上部副予備苗載せ台支柱)
20,21,22,23 予備苗載せ台
30,30a ホルダ
41 苗すくい板
42 苗箱
50 ブレーキペダル
50a ブレーキペダルの上端縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走車体の後部に、リンク機構を介して複数の条数の苗を載置する苗載せ台を備えた苗植付け装置を設け、自走機体の左右に配設した各予備苗載せ台支柱に上下複数段の予備苗載せ台を取付けた乗用型田植機において、
前記左右の各予備苗載せ台支柱の、ステアリングハンドルの最上端部分よりも低い位置に、前記苗載せ台の苗載置条数の2分の1よりも大なる数の予備苗載せ台を上下に配設し、最下段の前記予備苗載せ台を着脱可能に構成してある乗用型田植機。
【請求項2】
前記最下段の予備苗載せ台を自走機体の走行停止用のブレーキペダルの上端縁よりも下方に配置してある請求項1記載の乗用型田植機。
【請求項3】
前記左右の各予備苗載せ台支柱の、前記ステアリングハンドルの最上端部分よりも高い位置に、予備苗載せ台を着脱自在に取り付けられるように構成してある請求項1または2記載の乗用型田植機。
【請求項4】
前記予備苗載せ台に載置する苗箱又は苗すくい板を予備苗載面に対して押圧付勢するホルダを、上下複数の前記予備苗載せ台に対応して複数備えてある請求項1〜3のいずれか一項に記載の乗用型田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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