説明

乗用型田植機

【課題】前後に長い苗載置部の格納形態を工夫して、乗降の邪魔にならず、前方視界を妨げる傾向を軽減する。
【解決手段】機体前後方向に並べて複数枚の苗を載置可能な予備苗のせ台4を機体前部に備え、予備苗のせ台4における苗載置用の苗のせ面を備えた苗載置部6を、機体左右方向に沿う回動軸芯p1と、その回動軸芯p1に交差する方向の回動軸芯p2とのそれぞれの回動軸芯p1,p2周りで姿勢変更可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体前後方向に並べて複数枚の苗を載置可能な予備苗のせ台を機体前部に備えた乗用型田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように、機体前後方向に並べて複数枚の苗を載置可能な予備苗のせ台を備えた乗用型田植機としては、下記[1]に記載のものが知られている。
[1]機体の前後方向に沿う長尺の苗載置部を備え、その苗載置部に複数枚の苗を機体前後方向に沿って載置可能に構成してあるとともに、前記苗載置部を支持する支持フレームの上端部で前後方向の軸芯周りで回動可能に構成したもの(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−112248号公報(段落〔0041〕、〔0046〕、図1、図2、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記[1]のように、苗載置部を支持する支持フレームの上端部で前後方向の軸芯周りで回動可能に構成したものでは、苗載置部が前後方向に短い長さのものであれば特に問題はないが、苗の載置枚数を増やすために前後に長く形成された苗載置部では、次のような問題がある。
つまり、苗載置部を前後方向の軸芯周りで回動可能に構成すると、苗載置部の左右方向幅を狭くして機体左右方向での幅を狭くし得る点で有用なものであるが、前後に長い苗載置部の後端部が後方側へ長く延出されていることにより、運転部ステップへの運転者の乗降の邪魔になる傾向がある。
また、前後方向に長い苗載置部が、苗のせ面を上下方向に沿わせた姿勢で運転座席の前方側で前後に長く存在していると、操縦者の前方下方の視界の妨げに成る虞があり、この点でも改善の余地がある。
【0005】
本発明は、前後に長い苗載置部を備えた乗用型田植機において、その長い苗載置部の格納形態を工夫して、乗降の邪魔にならず、前方視界を妨げる傾向を軽減することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために講じた本発明の技術手段は、機体前後方向に並べて複数枚の苗を載置可能な予備苗のせ台を機体前部に備えた乗用型田植機であって、
前記予備苗のせ台における苗載置用の苗のせ面を備えた苗載置部を、機体左右方向に沿う回動軸芯と、その回動軸芯に交差する方向の回動軸芯とのそれぞれの回動軸芯周りで姿勢変更可能に構成してある点に構成上の特徴がある。
【0007】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段1で示した本発明の構成によると、長手方向に長い苗載置台が、機体左右方向に沿う回動軸芯に交差する方向の回動軸芯周りで回動されることで、その苗のせ面が機体左右方向に沿う回動軸芯に交差する方向の面に沿い、苗載置台の左右方向での幅を狭くすることができる。
そして、その左右方向での幅が狭くなった苗載置台を左右方向の回動軸芯周りで回動させることによって、苗載置台の長手方向を上下方向に沿う状態とすることができる。
したがって、長手方向を上下方向に沿わせた苗載置台は、前後方向長さも短くなり、運転部ステップに対する運転者の乗降を邪魔する位置からは外れ、かつ、左右方向での幅とともに前後方向長さが短くなることで前方視界の妨げとなる虞も少なくなる利点がある。
【0008】
〔解決手段2〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項2に記載のように、前記苗載置部は、機体左右方向に沿う回動軸芯に交差する方向の回動軸芯周りでの姿勢変更にともなって、当該苗載置部の苗のせ面が水平に近い姿勢となる苗のせ位置と、前記苗のせ面が上下方向に沿う格納位置と、その格納位置と前記苗のせ位置との中間位置で前記苗のせ面が左右方向に傾斜した苗のせ幅狭位置との各位置に、位置変更可能に構成されていることである。
【0009】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段2にかかる本発明の乗用型田植機では、通常の苗植付け作業中に使用する苗のせ位置と非作業中の格納位置との中間位置で、苗のせ面が左右方向に傾斜した苗のせ幅狭位置に位置変更可能に構成されているので、乗用型田植機がコンクリートの壁や立木などが存在する箇所の近くを作業走行する際に便利に用いることができる。
つまり、作業走行中の乗用型田植機が、そのまま直進すれば苗のせ位置にある苗載置部がコンクリートの壁や立木などに接触する可能性がある場合に、少し苗載置部を傾けて苗のせ幅狭位置に姿勢変更することによって機体左右方向の幅を減少させ、苗載置部がコンクリートの壁や立木などとの接触を回避しながら作業走行を続行させ易くし得る利点がある。
【0010】
〔解決手段3〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項3に記載のように、前記苗載置部は機体に対して上下位置調節可能に構成されていることである。
【0011】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
上記のように、解決手段3にかかる本発明の構成によると、苗載置部の上下方向高さ位置を調節して、苗載置部に対する予備苗の供給や苗載置部からの予備苗の取り出し作業を行いやすくし得る利点がある。
【0012】
〔解決手段4〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項4に記載のように、前記予備苗のせ台は、苗載置部を支持する支持フレームの上下位置変化にともなって前記苗載置部の上下位置を調節可能な高さ調節機構を備えていることである。
【0013】
〔解決手段4にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段4で示した本発明の構成によると、苗載置部を支持する支持フレームの上下位置を変化させることで苗載置部の全体を上下位置調節することができるので、苗のせ面に苗を載置した状態のままでも、作業性良く高さ調節を行える利点がある。
【0014】
〔解決手段5〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項5に記載のように、前記予備苗のせ台は、支持フレームに対する苗載置部の取付高さ位置を変更することで苗載置部の上下位置調節を可能としたことである。
【0015】
〔解決手段5にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段5にかかる本発明の構成によると、支持フレームとして機体に対する相対位置の変化する特別な構造のものを要さずに、簡単な構造で苗載置部の高さ調節を行える利点がある。
【0016】
〔解決手段6〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項6に記載のように、前記予備苗のせ台の苗載置部は、その苗載置部の長手方向の中間部で折り畳み可能に構成されていることである。
【0017】
〔解決手段6にかかる発明の作用及び効果〕
上記のように、解決手段6にかかる本発明の構成によると、苗載置部を長手方向の中間部で折り畳み姿勢とすることで、苗載置部の長手方向の長さが短縮された状態とすることができる。これによって、苗載置部を格納走行位置に姿勢変更したとき、苗載置部が機体上方側へ大きく突出した状態となることを避け易く、上下方向でもコンパクト化を図り得る利点がある。
【0018】
〔解決手段7〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項7に記載のように、前記予備苗のせ台の苗載置部は、複数枚の苗を載置可能な苗のせ面が形成された一体のもので構成されていることである。
【0019】
〔解決手段7にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段7で示した本発明の構成によると、部品点数を少なくして苗載置台の構造を簡素化し、低コスト化を図り得る利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】乗用型田植機の全体を示す側面図である。
【図2】乗用型田植機の全体を示す平面図である。
【図3】乗用型田植機に装備された予備苗のせ台を示す正面図である。
【図4】乗用型田植機に装備された予備苗のせ台の苗のせ位置での使用状態を示す側面図である。
【図5】乗用型田植機に装備された予備苗のせ台の格納位置での使用状態を示す側面図である。
【図6】乗用型田植機に装備された予備苗のせ台の格納走行位置での使用状態を示す側面図である。
【図7】予備苗のせ台の支持フレームによる苗載置部の支持構造部分を示す一部切り欠き正面図である。
【図8】乗用型田植機に装備された予備苗のせ台の苗のせ位置での使用状態を示す側面図である。
【図9】別の実施形態における予備苗のせ台を示す側面図である。
【図10】別の実施形態における予備苗のせ台を示し、(a)は予備苗搭載前の状態を示す側面図であり、(b)は予備苗搭載後の状態を示す側面図である。
【図11】別の実施形態における予備苗のせ台を示し、(a)は苗載置台を高い位置に装着した状態を示す側面図であり、(b)は苗載置台を低い位置に装着した状態を示す側面図である。
【図12】別の実施形態における予備苗のせ台を示す側面図である。
【図13】別の実施形態における予備苗のせ台を示す側面図である。
【図14】別の実施形態における予備苗のせ台を示す正面図である。
【図15】別の実施形態における予備苗のせ台を示す側面図である。
【図16】別の実施形態における乗用型田植機の全体を示す平面図である。
【図17】別の実施形態における乗用型田植機の全体を示す側面図である。
【図18】苗すくい板の保持ケースを示す正面図である。
【図19】苗すくい板の保持ケースの取り付け構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
〔乗用型田植機の全体構成〕
図1及び図2に示すように、乗用型田植機は、左右一対の操向操作自在な前車輪11、及び、左右一対の後車輪12を車体フレーム10の下方に備えた走行機体1の前部に、エンジン13をボンネット14に内装して搭載した原動部15を備え、原動部15の後方側で走行機体1の前後方向中央部に、ステアリングハンドル21及び運転座席22を有した運転部2を備え、走行機体1の後部にリフトシリンダ16を有したリンク機構17を介して苗植付装置3を連結してある。
【0022】
苗植付装置3は4条植型式に構成されており、2個の伝動ケース31、伝動ケース31の後部の右及び左の横側部に回転駆動自在に支持された植付ケース32、植付ケース32の両端に備えられた一対の植付アーム33、接地フロート34、及び苗が載置される苗のせ台30等を備えて構成されている。これにより、苗のせ台30が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、植付ケース32が回転駆動され、苗のせ台30の下部から植付アーム33が交互に苗を取り出して田面に植え付ける。
前記苗植付装置3には、左右往復移動する苗のせ台30の下端側を案内する摺動板35を備えているとともに、前記摺動板35の左右両端部よりも左右方向での外側箇所に、摺動板35が他物と接触して変形されることを防止するための摺動板ガード36が設けられている。
【0023】
運転部2における運転部フロア20の後方側に運転座席22が備えられており、運転座席22の後側に施肥装置37の肥料貯留用ホッパー37a、繰り出し機構37b、及び肥料搬送風を発生するブロア37cが備えられている。前記繰り出し機構37bと接地フロート34に設けた作溝器38とに亘って接続されたホース38aを介して、前記繰り出し機構37bから繰り出された肥料がブロア28の送風によりホース38aを通って作溝器38に搬送され、作溝器38で形成された田面の施肥溝に供給される。
【0024】
図1〜図4に示すように、エンジン13を覆うボンネット14が運転部フロア20の前方に備えられており、ボンネット14の右及び左の横側部に、運転部フロア20につながる右及び左の乗降用ステップ20aが備えられていて、機体前方側からも乗り降り可能に構成されている。
前輪11を操向操作するステアリングハンドル21がボンネット14の上部に備えられており、ステアリングハンドル21の左の横側部に、主変速レバー23が備えられている。ボンネット14の後面における左の横側部に副変速レバー24が備えられている。
【0025】
走行機体1には、静油圧式無段変速装置(図示せず)及びギヤ変速式の副変速装置(図示せず)が備えられており、エンジン13の動力がベルト型式のテンションクラッチ(図示せず)を介して静油圧式無段変速装置に伝達され、静油圧式無段変速装置から副変速装置を介して、前輪11及び後輪12に伝達される。静油圧式無段変速装置は中立位置、前進の高速側及び後進の高速側に無段階に変速自在に構成されており、副変速装置は低速の植付走行位置、高速の路上走行位置、及び畦越え用の超低速位置の3位置切換式に構成されている。
【0026】
図1〜図4に示すように、右側の乗降用ステップ20aにおける運転部フロア20に近い部分に制動操作用の操作ペダル25が備えられており、この操作ペダル25には地上操作用の操作レバー25aが連設されている。また、操作レバー25aの前側の部分にロックレバー26が備えられており、ロックレバー26により操作ペダル25及び操作レバー25aを、下方に踏み込まれた制動作用位置で固定保持することができるように構成されている。
したがって、走行機体1から降りた作業者が機体前方側から、前記ロックレバー26によるロックを解除し、操作レバー25aを操作することによって制動状態と制動解除状態との切換操作、及び制動状態を調節しながら走行機体1をゆっくりと走行させることができるように構成されている。
【0027】
車体フレーム10の前端部にエンジン13が支持されており、そのエンジン13が支持された車体フレーム10の前端部に、機体左右方向の横軸芯x周りで揺動可能に操作アーム18が支持されている。
この操作アーム18は正面視で逆U字状に構成されて、上方に起立した格納位置、及び機体の前部から前方に出た作業位置に亘り揺動自在に構成されている。操作アーム18を作業位置に操作すると、前車輪11及びステアリングハンドル21が直進位置で保持され、操作アーム20を格納位置に操作すると、前車輪11及びステアリングハンドル21の保持が解除されるように構成されている。
【0028】
〔予備苗のせ台の構造〕
走行機体1の前部側で、前記原動部15の横外側方箇所には、乗降用ステップ20aを挟んでボンネット14と対向する箇所に予備苗のせ台4が装備されている。
この予備苗のせ台4は、車体フレーム10の前部側に固定された支持フレーム5と、その支持フレーム5に支持された苗載置部6とを備えて構成されている。
【0029】
前記支持フレーム5は、図1乃至図5に示すように、下端側が車体フレーム10の前端部に固定されて左右方向の外方側へ延出され乗降用ステップ20aの外側で上方側へ立ち上がるように、正面視でL字状に屈曲された金属製の丸パイプフレームで構成され、側面視では前後二箇所で上下方向に延出された支脚部50a,50aと、その前後の支脚部50a,50aの上端部同士を接続するように水平方向で前後向きに設けられた上部フレーム部分50bとを備えて側面視門形に形成されている基台フレーム50と、その基台フレーム50の上部に設けたボス部51を介して枢支連結され、水平方向の左右向き軸芯p1(機体左右方向に沿う回動軸芯に相当する)周りで回動可能に装着された中継枠52とを備えて構成されている。
【0030】
前記中継枠52は、矩形状の周枠部材54と、その周枠部材54の長手方向に沿う長辺部分54a,54a同士を長手方向での中間部で接続するように溶接固定された取付板55を備え、この取付板55に前記基台フレーム50側のボス部51に対して内嵌する枢支軸53を備えている。
前記矩形状の周枠部材54の周辺のうち、周枠部材54の長手方向の一端側で、前記長辺部分54aに対して交差する方向の短辺部分54bの近くには、その短辺部分54bに沿う方向の軸芯p2(機体左右方向に沿う回動軸芯に交差する方向(機体前後方向)の回動軸芯に相当する。以下、交差軸芯と呼称する)周りで、前記苗載置部6が揺動可能に枢支されている。
このように構成された中継枠52は、前記枢支軸53を基台フレーム50側のボス部51に嵌合させることによって、中継枠52が枢支軸53の軸芯である前記左右向き軸芯p1周りで回動可能に枢支された状態で基台フレーム50に取り付けられる。
【0031】
前記基台フレーム50側のボス部51に対する枢支軸53の取り付けは、図3、図4、及び図7に示すように、ボス部51に上下方向と水平前後方向との2方向にピン挿通孔51aが形成してあり、前記枢支軸53側には、中継枠52の長手方向に沿う方向の貫通孔(図示せず)が形成してある。
そして図3、図4、及び図7に示すように、中継枠52の長手方向に沿う方向の枢支軸53の貫通孔(図示せず)が上下方向に沿う状態で、ボス部51の上下方向のピン挿通孔51aから連結ピン56を挿入すると、その連結ピン56によって基台フレーム50に対する中継枠52の前記左右向き軸芯p1周りでの相対回動が止められた状態に固定されて、基台フレーム50に中継枠52が装着される。
【0032】
このとき、中継枠52の周枠部材54の下端側の短辺部分54bに対して前記交差軸芯p2周りで揺動可能に枢着された苗載置部6は、図4に示すように長手方向が前後方向に沿う水平姿勢(苗のせ位置)で固定された状態となる。
【0033】
前記苗載置台6は、図3に示すように、苗のせ面60が上方に向けられて最も水平に近い姿勢で苗を載置して作業走行することが可能であるところの苗のせ位置aと、苗のせ面60が横向きとなるように起立した姿勢の格納位置cとに姿勢切換操作可能に構成されているとともに、前記苗のせ位置aと格納位置cとの中間位置で、苗のせ面が左右方向に傾斜した苗のせ幅狭位置bにも姿勢変更できるように構成されている。
【0034】
この苗のせ幅狭位置bは、前記苗のせ位置aと格納位置cとの中間における所定位置で固定されるように構成してある。つまり、図7に示すように、苗載置部6の機体内方側の端部には、前記交差軸芯p2となる支点軸62を支持する支持ブラケット61が連設してあり、この支持ブラケット61の一部に形成したピン孔61aと、前記周枠部材54の長辺部分に形成された第1係止孔54cとに亘って係止ピン63を係入することによって固定される。
この苗のせ幅狭位置bは、図2に示すように、仮想線で示す苗載置部6の苗のせ幅狭位置bが、苗植付装置3の摺動板ガード36が存在する左右方向位置Lよりも機体内方側に位置するように設定するのが望ましい。
尚、この苗のせ幅狭位置bは、必ずしも固定できるようにすることによって構成しなければならないものではなく、前記苗のせ位置aと格納位置cとの中間位置になるように人為的に苗載置部6を傾斜させた状態に維持している間だけ一時的に現出できるようにしてもよい。
【0035】
苗載置台6の前記格納位置cは、苗のせ面60が中継枠52の周枠部材54に近接した状態を維持するように、支持ブラケット61の一部に形成したピン孔61aと、前記周枠部材54の長辺部分に形成された第2係止孔54dとに亘って係止ピン62を係入することによって固定されるように構成してある(図7(b)参照)。
【0036】
前記苗載置台6が図3及び図7に示すように、中継枠52の長手方向に沿う方向の枢支軸53の貫通孔(図示せず)が上下方向に沿う状態で、ボス部51の上下方向のピン挿通孔51aから連結ピン56を挿入して左右向き軸芯p1周りでの相対回動を固定されている状態から、前記連結ピン56を抜けば、図6に示すように、中継枠52の長手方向が前後方向に向き、苗載置台6の長手方向が上下方向に向く苗載置台6の格納走行位置dとなる(図6参照)。
この格納走行位置dは、中継枠52の長手方向に沿う方向の枢支軸53の貫通孔(図示せず)が前後方向に沿う状態で、前記連結ピン56をボス部51の前後方向のピン挿通孔51aに挿通することによって現出される。
格納走行位置dに固定された苗載置台6は、図6に示すように前後方向幅が苗載置台6の長手方向に交差する方向となるので、苗載置台6が存在することによって、運転座席22に搭座する操縦者の前方下方側の視界を遮る範囲を狭くし易くなる。
【0037】
前記基台フレーム50には、前記苗載置台6が設けられた機体外方側とは反対の機体内方側に、苗すくい板40を格納するための吊り下げ具41を設けてある。
この吊り下げ具41は、前後の支脚部50a,50aにわたって、その上部近くに連結板42を一体に連結してあり、その連結板の前後方向の中間部に、機体内方側へ向けて突出する支持杆43を溶接して固定してあり、さらにその支持杆43の突出端側に、図7(a),(b)に示すように、つる巻バネ44で起立側へ付勢された抜け止め体45を備えることによって構成してある。
このように構成された吊り下げ具41は、図7(a)に仮想線で示すように、抜け止め体45を支持杆43の延長方向に沿わせた姿勢とすることで、苗すくい板40の上端側に形成されている孔部40aを係入させて、図7及び図8に示すように支持杆43に吊り下げ支持させるように構成してある。
【0038】
〔他の実施形態の1〕
予備苗のせ台4としては、上述の実施形態に示したように、中継枠52を基台フレーム50に対して相対回動可能に枢支する左右向き軸芯p1の高さ位置が、機体に対して一定高さに固定された構造のものであるに限らず、例えば図9及び図10に示すように高さ位置変更可能に構成されたものであってもよい。
すなわち、基台フレーム50を、車体フレーム10側に固定されたパイプ状の下部基台フレーム50Aと、その下部基台フレーム50Aに対して上下摺動自在に嵌合する上部基台フレーム50Bとで構成し、上部基台フレーム50Bに中継枠52及び苗載置台6を支持させてある。
そして、下部基台フレーム50Aの上端部と上部基台フレーム50Bの中間部とにそれぞれ鍔部50Cを設け、その鍔部50C,50C同士の間にコイルスプリング50Dを介装してある。つまり、上記の下部基台フレーム50Aと上部基台フレーム50Bとの相対摺動構造と、鍔部50C,50C同士の間に介装されるコイルスプリング50Dとによって、苗載置部6の上下位置を調節可能な高さ調節機構を構成している。
【0039】
このように構成された予備苗のせ台4では、図9及び図10(a)に示すように、苗載置台6上に苗が搭載されていない状態では、コイルスプリング50Dの付勢力で苗載置台6が上方側へ押し上げられた高い位置にあり、図9に仮想線で示す状態、及び図10(b)に示すように苗載置台6上に苗が載置された状態では、コイルスプリング50Dの付勢力に抗して苗載置台6が下方側へ押し下げられた低い位置にある。
つまり、苗載置台6上に苗が存在しないときは、畦などの機体前方側から予備苗の補給が必要であり、このときは比較的高い位置からの苗補給であるから、苗載置部6の苗のせ面60も比較的高く位置させている。そして、予備苗が苗載置部6に供給されると、その予備苗の重量で苗載置部6がコイルスプリング50Dの付勢力に抗して押し下げられるので、運転座席22に搭座する運転者が取り出し易い低い位置の苗のせ面60から苗を取り出すことができるように構成してある。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。
【0040】
〔他の実施形態の2〕
予備苗のせ台4としては、上述の実施形態に示したように、中継枠52を基台フレーム50に対して相対回動可能に枢支する左右向き軸芯p1の高さ位置が、機体に対して一定高さに固定された構造のものであるに限らず、例えば図11に示すように高さ位置変更可能に構成されたものであってもよい。
この構造では、基台フレーム50を、車体フレーム10側に固定されたパイプ状の下部基台フレーム50Aと、その下部基台フレーム50Aに対して上下摺動自在に嵌合する上部基台フレーム50Bとで構成し、上部基台フレーム50Bに中継枠52及び苗載置台6を支持させてある。
そして、下部基台フレーム50Aに対して上下摺動自在に嵌合する上部基台フレーム50Bに位置調節用の複数の係合孔50Eを形成し、この係合孔50Eに係止される係止ピン50Fを下部基台フレーム50Aの上端部に装着することによって構成されている。
この構造では、上記の下部基台フレーム50Aと上部基台フレーム50Bとの相対摺動構造と、上部基台フレーム50Bに形成された位置調節用の複数の係合孔50Eと、この係合孔50Eに係止される係止ピン50Fとによって、苗載置部6の上下位置を調節可能な高さ調節機構を構成している。
このように構成された予備苗のせ台4では、図11(a)に示すように、苗載置台6を高い位置に位置させた状態と、図11(b)に示すように、苗載置台6を低い位置に位置させた状態とに、任意に切換え操作することができる。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。
【0041】
〔他の実施形態の3〕
予備苗のせ台4としては、上述の実施形態に示したように、中継枠52を基台フレーム50に対して相対回動可能に枢支する左右向き軸芯p1の高さ位置、及び前後方向位置が、機体に対して一定位置に固定された構造のものであるに限らず、例えば図12乃至図14に示すように、高さ位置、及び前後方向位置を変更可能に構成したものであってもよい。
すなわち、基台フレーム50を、車体フレーム10側に対して左右方向の横軸芯p3,p4周りで揺動自在に装着した下部基台フレーム50Aと、その下部基台フレーム50Aに対して前後方向で摺動自在に嵌合させた上部基台フレーム50Bとで構成し、上部基台フレーム50Bに中継枠52及び苗載置台6を支持させてある。
【0042】
前記下部基台フレーム50Aと上部基台フレーム50Bとは、下部基台フレーム50Aの上端側に前記横軸芯p3,p4と平行な前後一対の揺動軸芯p5,p6周りで揺動自在に枢支連結されたチャンネル状のレール枠57と、そのレール枠57に対して相対摺動自在に嵌装された摺動レール58とを備えて、前記摺動レール58を上部基台フレーム50Bに固定することによって、下部基台フレーム50Aと上部基台フレーム50Bとを相対摺動自在に構成してある。
また、前記下部基台フレーム50Aは、図示は省略するが、図12に示す起立状態と図13に示す前傾状態との間で揺動作動するように揺動作動範囲を制限してあるとともに、図12に示す起立状態となる側へ適宜付勢バネを用いて弾性的に付勢してある。
【0043】
これによって、下部基台フレーム50Aが前傾姿勢となるように前方側へ揺動することによって、中継枠52を基台フレーム50に対して相対回動可能に枢支する左右向き軸芯p1の高さ位置、及び前後方向位置が前方下方側へ変位する。
そして、下部基台フレーム50A側のレール枠57に対して上部基台フレーム50B側の摺動レール58を図13に示すように前方側へ相対摺動させると、苗載置部6の後端部は、図12に示すように運転座席22の横側方に位置していた状態から、図13に示すようにボンネット14の横側方付近にまで移動し、運転部フロア20の横側方が大きく開放された状態となって、運転部フロア20への乗降が行い易くなる。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成すればよい。
【0044】
〔他の実施形態の4〕
予備苗のせ台4の苗載置部6は、その全体が一体のもので構成されるものであるに限らず、例えば、図12乃至図16に示すように、苗載置部6の長手方向での適所で、苗載置部6の長手方向に直交する回動支点p7周りで折り畳み可能に構成されたものであってもよい。
このように苗載置部6が、その長手方向に直交する回動支点p7周りで折り畳み可能に構成されていると、図14に示すように後半側の苗載置部6Bを前半側の苗載置部6Aに重ねた状態に折り畳み、その状態で格納位置cに存在する苗載置部6を走行格納位置dに操作すると、図15に示すように、後半側の苗載置部6Bが前半側の苗載置部6Aの上方側に起立した状態とはならないので、上方側でも前方視界を広く確保し易い点で有利である。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成すればよい。
【0045】
〔他の実施形態の5〕
苗すくい板40は、前述した実施形態のように予備苗のせ台4の機体内方側に吊り下げ支持する構造のものに限らず、例えば図16及び図17に示すように、運転部フロア20の一部に、苗すくい板格納部46を設け、その苗すくい板格納部46に格納するように構成してもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成すればよい。
【0046】
〔他の実施形態の6〕
苗すくい板40は、前述した実施形態のように予備苗のせ台4の機体内方側に吊り下げ支持する構造のものに限らず、例えば図18及び図19に示すように、苗すくい板保持ケース47を用いて、その苗すくい板保持ケース47を、苗載置部6の機体外方側端部に吊り下げ状態に支持させれば、走行機体1上の空間をより広く活用し易くなる。
また、前記苗すくい板保持ケース47は、図19に示すように、苗すくい板40を収容する箱状収容部47aと、その上端側で他物に対する係止用のフック部47bとを備え、さらに、フック部47bの先端側には、苗載置台6の苗のせ面60に形成されている透孔60aに対して係合することによって外れ難くするための抜け止め部47cが設けられている。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
乗用型田植機としては、4条植え型式のもの限らず、例えば、3条、あるいは5条以上の複数の条数を植付けるものであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
4 予備苗のせ台
5 支持フレーム
6 苗載置部
60 苗のせ面
a 苗のせ位置
b 苗のせ幅狭位置
c 格納位置
p1 回動軸芯
p2 回動軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体前後方向に並べて複数枚の苗を載置可能な予備苗のせ台を機体前部に備えた乗用型田植機であって、
前記予備苗のせ台における苗載置用の苗のせ面を備えた苗載置部を、機体左右方向に沿う回動軸芯と、その回動軸芯に交差する方向の回動軸芯とのそれぞれの回動軸芯周りで姿勢変更可能に構成してあることを特徴とする乗用型田植機。
【請求項2】
前記苗載置部は、機体左右方向に沿う回動軸芯に交差する方向の回動軸芯周りでの姿勢変更にともなって、当該苗載置部の苗のせ面が水平に近い姿勢となる苗のせ位置と、前記苗のせ面が上下方向に沿う格納位置と、その格納位置と前記苗のせ位置との中間位置で前記苗のせ面が左右方向に傾斜した苗のせ幅狭位置との各位置に、位置変更可能に構成されている請求項1記載の乗用型田植機。
【請求項3】
前記苗載置部は機体に対して上下位置調節可能に構成されている請求項1又は2記載の乗用型田植機。
【請求項4】
前記予備苗のせ台は、苗載置部を支持する支持フレームの上下位置変化にともなって前記苗載置部の上下位置を調節可能な高さ調節機構を備えている請求項3記載の乗用型田植機。
【請求項5】
前記予備苗のせ台は、支持フレームに対する苗載置部の取付高さ位置を変更することで苗載置部の上下位置調節を可能とした請求項3記載の乗用型田植機。
【請求項6】
前記予備苗のせ台の苗載置部は、その苗載置部の長手方向の中間部で折り畳み可能に構成されている請求項1〜5の何れか一項記載の乗用型田植機。
【請求項7】
前記予備苗のせ台の苗載置部は、複数枚の苗を載置可能な苗のせ面が形成された一体のもので構成されている請求項1〜5の何れか一項記載の乗用型田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−5749(P2013−5749A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139873(P2011−139873)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】