乗用型芝生面清掃機、及び芝生面に散在するコアの回収方法
【課題】
コアの回収作業時に接地ローラを芝生面に転圧させて、コアの回収作業と同時に、通気孔の周囲の土の盛り上がり、及び芝生面全体の不陸をなくす。
【解決手段】
運転者OPが乗用して操作される機体1と、当該機体1に第1油圧シリンダS1 を介して昇降可能に装着されて、芝生面GSに残存しているコア類を掬い上げて吸引回収するための回転ブラシユニットUと、当該回転ブラシユニットUの背面に配置されて、前記作業位置で前記回転ブラシユニットUにより吸引回収されたコア類を収容させる集塵バケットBとを備えた乗用型芝生面清掃機であって、前記機体1に対して回転ブラシユニットUが下降されて、前記接地ローラRが芝生面GSに接地して回転している状態において、当該接地ローラRに転圧力を作用させるために、前記回転ブラシユニットUの全体を下方に向けて加圧させる回転ブラシユニット加圧手段(第1油圧シリンダS1 )を備えた構成とする。
コアの回収作業時に接地ローラを芝生面に転圧させて、コアの回収作業と同時に、通気孔の周囲の土の盛り上がり、及び芝生面全体の不陸をなくす。
【解決手段】
運転者OPが乗用して操作される機体1と、当該機体1に第1油圧シリンダS1 を介して昇降可能に装着されて、芝生面GSに残存しているコア類を掬い上げて吸引回収するための回転ブラシユニットUと、当該回転ブラシユニットUの背面に配置されて、前記作業位置で前記回転ブラシユニットUにより吸引回収されたコア類を収容させる集塵バケットBとを備えた乗用型芝生面清掃機であって、前記機体1に対して回転ブラシユニットUが下降されて、前記接地ローラRが芝生面GSに接地して回転している状態において、当該接地ローラRに転圧力を作用させるために、前記回転ブラシユニットUの全体を下方に向けて加圧させる回転ブラシユニット加圧手段(第1油圧シリンダS1 )を備えた構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧シリンダを介して機体に対して回転ブラシユニットが昇降可能に装着されて、芝生面に散在している小土塊状のコア、刈芝等のコア類を吸引回収するための乗用型芝生面清掃機、及び芝生面に散在するコアの回収方法に関するものである。
なお、本明細書では、「転圧」の用語が多用されるが、この「転圧」とは、接地ローラが牽引されて転動する場合に、回転ブラシユニットの重量を遥かに超えて、芝生面を平らにできる程度の大きな力を当該接地ローラに対して及ぼしながら転動することを意味し、芝生面を含んで一般的に回転体により土面に力を加えて平らにすることを意味する「鎮圧」と同義である。
また、本明細書では、「転圧力」と「加圧力」の用語が使用されるが、「転圧力」とは、回転している接地ローラが芝生面に及ぼす力をいい、「加圧力」とは、回転ブラシユニットの自重及び油圧シリンダの油圧力により、上方から接地ローラを押し付ける力をいい、いずれも力の作用対象が異なるのみであって、大きさ及び方向は同一である。
【背景技術】
【0002】
ゴルフ場の芝地においては、エアーレーション機に備え付けの円筒状のタインを芝地(芝生面)に突き刺した後に、抜き去ることにより、当該芝地に前後及び左右の双方にほぼ60mm毎の間隔をおいて多数の通気孔を穿孔して、芝地表層部の通気性等を向上させて、芝生の生育を良好にしている。なお、通気孔は、内径が6〜12mmで、深さが70〜150mmである。ここで、前記タインにより芝地に無数の通気孔を形成すると、タインから抜け出た小土塊状のコア(土芯)は、前記通気孔の周辺に連続的に落下してそのまま放置状態で散在される。また、芝地に上記間隔でタインを突き刺した後に、抜き去ると、当該タインの抜き去り時において、通気孔の周囲が大きく盛り上げられる〔図15(a)参照〕と共に、タインの突き刺し及び抜き去りにより芝地の表層部が恰も掘られたようになって、芝地の表面が軟弱化されると共に、凹凸の発生により、芝地の表面である芝生面が不陸状態となる。更に、エアーレーション機は、乗用型であって、大きな重量を有しているので、その前後の各車輪の踏圧が原因となって発生する不陸も存在する。
【0003】
このため、エアーレーション機のタインにより、芝地に無数の通気孔を穿孔した後には、例えば、特許文献1に開示の乗用型芝生面清掃機を用いて、芝生面に放置状態で散在しているコアを吸引回収している。
【0004】
上記乗用型芝生面清掃機は、運転者が乗用して操作される機体と、当該機体に油圧シリンダを介して昇降可能に装着されると共に、作業時において下降して芝生面に接地する接地ローラが設けられて、当該芝生面に残存しているコア類を掬い上げて吸引回収するための回転ブラシユニットと、当該回転ブラシユニットの背面に、接続状態と上昇によるコア排出状態とを選択可能なように配置されて、前記回転ブラシユニットにより吸引回収されたコア類を収容させる集塵バケットとを備えている。芝地に散在しているコアを回収する場合には、機体に対して回転ブラシユニットを下降させて、その下端の接地ローラを芝地に接地させた状態で機体を走行させると、回転ブラシユニットのケーシング内に、相上下して配置されている回転ブラシ及び送風羽根の高速回転により生ずる吸引気流が芝生面に及んで、当該芝生面に散在している前記コアは吸引されて、前記回転ブラシユニットの背面側に接続して配置される集塵バケット内に送り込まれて回収される。
【0005】
上記した乗用型芝生面清掃機では、回転ブラシユニットの重量が接地ローラに作用した状態で、当該接地ローラが芝生面を転動するのであるが、当該接地ローラに回転ブラシユニットの重量が作用するのみでは、通気孔の周囲の土の盛り上がり、及び不陸をなくして、平らにすることはできない。このため、コア回収後に、機体の後部に重量の大きな転圧ローラを牽引する構成の転圧機を芝地に走行させて、コアが回収された芝生面に対して前記転圧ローラをかけて、前記不陸を正して、芝生面全体を平らに均している。
【0006】
このように、タインにより芝地に無数の通気孔を穿孔することにより発生したコアの回収と、通気孔の周囲の土の盛り上がり、及び芝生面の不陸をなくす作業とは、それぞれ別々の作業機(乗用型芝生面清掃機と転圧機)で行わざるを得ないために、別々の作業機を必要とすると共と、全体としての総作業時間も長くなる。更に、芝生面に対して重量の大きな乗用型芝生面清掃機と転圧機とを別々に走行させるために、芝地及び芝生の双方の負荷も大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−209902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記構成の乗用型芝生面清掃機において、回転ブラシユニットの接地ローラに加圧力を作用させてコアを回収することにより、コアの回収作業時に芝生面を転圧させて、コアの回収作業と同時に、通気孔の周囲の土の盛り上がり、及び芝生面全体に生じている不陸をなくして、芝生面全体を平らに均せるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、運転者が乗用して操作される機体と、当該機体に油圧シリンダを介して昇降可能に装着されると共に、作業時において下降して芝生面に接地する接地ローラが設けられて、当該芝生面に残存しているコア類を掬い上げて吸引回収するための回転ブラシユニットと、当該回転ブラシユニットの背面の作業位置と、当該作業位置に対して斜後上方のコア類排出位置とを選択可能なように配置されて、前記作業位置で前記回転ブラシユニットにより吸引回収されたコア類を収容させる集塵バケットとを備えた乗用型芝生面清掃機であって、前記機体に対して回転ブラシユニットが下降されて、前記接地ローラが芝生面に接地して回転している状態において、当該接地ローラに転圧力を作用させるために、前記回転ブラシユニットの全体を下方に向けて加圧させる回転ブラシユニット加圧手段を備えていることを特徴としている。
【0010】
請求項1の発明によれば、機体に対して回転ブラシユニットが下降されて、接地ローラが芝生面に接地して回転している状態において、回転ブラシユニット加圧手段により前記回転ブラシユニットの全体が下方に向けて加圧されると、前記接地ローラは、芝生面に単に接地しているのみならず、回転ブラシユニットの自重を遥かに上廻る大きな力により、芝生面を転圧する。従って、前作業である通気孔の穿孔時にエアーレーション機の各車輪の踏圧、及び本作業であるコア回収時に芝生面清掃機の各車輪の踏圧により生じた芝生面の不陸、及び通気孔の周囲の土の盛り上がりは、前記接地ローラの転圧力により平らに均されて、コアの回収と同時に、芝生面が転圧されて平らに均される。即ち、コア回収後に専用の転圧機により、通気孔の周囲の土の盛り上がり、及び芝生面の不陸を平らにすることなく、乗用型芝生面清掃機により芝生面に散在しているコアを回収する際に、同時に、芝生面全体を平らにすることができて、通気孔の周囲をきれいにして、芝生面全体を平らにできる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記回転ブラシユニット加圧手段は、前記接地ローラに転圧力を加えられた状態と、当該転圧力が加えられない状態との切り替えが可能であることを特徴としている。
【0012】
請求項2の発明によれば、通気孔が穿孔されている芝生面の状態に応じて、接地ローラに転圧力を作用させるか否かを選択できるので、コアの回収と同時に芝生面の転圧を行うか否かを自在に選択できる。例えば、ゴルフ場のグリーンの周囲のアプローチに散在している刈芝等の回収のみを行う場合には、芝生面を転圧する必要はないので、回転ブラシユニット加圧手段をOFFにしておく。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記回転ブラシユニットを昇降させる油圧シリンダは、前記回転ブラシユニット加圧手段を兼用していて、接地ローラが芝生面に接地した状態で、前記油圧シリンダの油圧力により当該接地ローラの転圧力を発生させる構成であることを特徴としている。
【0014】
請求項3の発明によれば、接地ローラが接地した状態においても、回転ブラシユニットを下方に加圧可能な方向制御弁の使用によって、回転ブラシユニットを昇降させる油圧シリンダによって、回転ブラシユニットに下方への加圧力、即ち、接地ローラの転圧力を作用させられて、回転ブラシユニットを昇降させる油圧シリンダを、前記回転ブラシユニット加圧手段に兼用させられる。よって、回転ブラシユニットを下方に加圧させるための専用の加圧手段が不要にできると共に、芝生面清掃機の機体全体の重量の増加もない。
【0015】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記接地ローラは、回転ブラシユニットのケーシングの両側面の下端部に回動可能に支持された一対の支持ブラケットの自由端部に被牽引状態で回転可能に支持されて、前記回転ブラシユニットのケーシングに対する接地ローラの上下方向の配置位置を調整するための接地ローラ高さ調整手段は、前記ケーシングの左右両端に一対配置されて、前記ケーシングの上端部の両側部に、機体に搭乗した運転者により操作可能なハンドルにより回転可能となって上下方向に配置された雄ねじロッドと、下端部が前記支持ブラケットの自由端部に連結されると共に、上端部が前記雄ねじロッドに螺合される連結ロッドとから成り、前記雄ねじロッドの上端の段差部は、前記ケーシングに一体に固定された反力支持部に当接される構成であることを特徴としている。
【0016】
請求項4の発明によれば、運転者が機体に搭乗したまま斜右後方又は斜左後方を向いた姿勢でハンドルを操作することにより、ケーシングに対する接地ローラの上下方向の配置位置を調整できるため、当該調整が容易になる。また、接地ローラが芝生面に及ぼす転圧力の反力は、前記接地ローラ高さ調整手段と、支持ブラケットの連結支点部とに分散して作用するが、前記接地ローラ高さ調整手段を構成する連結ロッドの下端部は、支持ブラケットにおける接地ローラが取付けられている自由端部に連結されているため、接地ローラが芝生面に及ぼす転圧力の反力の大部分は、前記接地ローラ高さ調整手段に作用して、支持ブラケットの連結支点部に作用する割合が少なくなる。この結果、支持ブラケットの連結支点部の支持剛性は余り大きくできないという設計上の制約があるが、上記構成によって、当該制約の下で、接地ローラが芝生面に及ぼす大きな転圧力の反力を効果的に支持できる。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の乗用型芝生面清掃機を使用して、タインによる通気孔の穿孔により芝生面に散在するコアを回収する方法であって、前記回転ブラシユニット加圧手段の作動により、芝生面に対して接地ローラを加圧しながら、前記回転ブラシユニットにより芝生面のコアを吸引回収することにより、前記接地ローラにより芝生面を転圧して、前記通気孔の周囲の土の盛り上がりと、芝生面の不陸とをなくして平らに均すことを特徴としている。
【0018】
請求項5の発明によれば、既存の乗用型芝生面清掃機に対して回転ブラシユニット加圧手段を設けるのみで、芝生面に散在しているコアの回収時に、通気孔の周囲の土の盛り上がりと、芝生面の不陸とをなくして、芝生面全体を平らに均すことができて、従来では不可欠とされていた専用の転圧機を用いた芝生面の転圧作業が不要となって、コアの回収、及び芝生面の整地に係る芝生面の管理を効率的に行える。特に、請求項3に記載の乗用型芝生面清掃機を用いる場合には、既存の芝生面清掃機に対して、回転ブラシユニットを昇降させる油圧シリンダの油圧回路の変更のみで、接地ローラに加圧力を選択的に作用させられるので、実施コストを低下させられる独自の利点がある。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、既存の乗用型芝生面清掃機に対して回転ブラシユニット加圧手段を設けるのみで、芝生面に散在しているコアの回収時に、通気孔の周囲の土の盛り上がりと、芝生面の不陸とをなくして、芝生面全体を平らに均すことができて、従来では不可欠とされていた専用の転圧機を用いた芝生面の転圧作業が不要となって、コアの回収、及び芝生面の整地に係る芝生面の管理を効率的に行える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る乗用型芝生面清掃機により芝生面に散在しているコアCを回収している状態の斜視図である。
【図2】本発明に係る乗用型芝生面清掃機の右側面図である。
【図3】本発明に係る乗用型芝生面清掃機の平面図である。
【図4】回転ブラシユニットUを主体に示した乗用型芝生面清掃機の背面図である。
【図5】回転ブラシユニットUが上昇された状態の乗用型芝生面清掃機の右側面図である。
【図6】回転ブラシユニットUの斜視図である。
【図7】集塵バケットBに収容されるコアCの排出時における乗用型芝生面清掃機の右側面図である。
【図8】回転ブラシユニットUのケーシング12に対する接地ローラRの高さを調整する接地ローラ高さ調整手段Aの一部を破断した側面図である。
【図9】回転ブラシユニットUと集塵バケットBの部分の縦断面図である。
【図10】回転ブラシユニットUの駆動機構を示す図である。
【図11】第1油圧シリンダS1 のロッド15が突出して、回転ブラシユニットUが上昇している状態の油圧回路図である。
【図12】第1油圧シリンダS1 のロッド15が最大に突出して、回転ブラシユニットUが上昇端で停止している状態の油圧回路図である。
【図13】第1油圧シリンダS1 のロッド15が最大に引っ込んで、接地ローラRにより芝生面を転圧している状態の回路図である。
【図14】第1油圧シリンダS1 のロッド15が最大に引っ込んで、接地ローラRに加圧力が作用していない状態の油圧回路図である。
【図15】(a),(b)は、芝生面GSの散在しているコアCを回収する前後の通気孔Hの部分の拡大断面図である。
【図16】乗用型芝生面清掃機の移動時(非作業時)、接地ローラRに転圧力を加えない場合、及び加えた場合の各作業時における各車輪2,3a,3b及び接地ローラRに加わる支持荷重の測定結果を模式的に表示したものである。
【図17】同様の内容を示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、最良の実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明する。最初に、乗用型芝生面清掃機(以下、単に「芝生面清掃機」という)の全体構成について説明し、その後に、本発明の特徴的な部分である回転ブラシユニットUの部分について、更に詳細に説明する。図1は、本発明に係る芝生面清掃機により芝生面に散在しているコアCを回収している状態の斜視図であり、図2及び図3は、それぞれ芝生面清掃機の右側面図及び平面図であり、図4は、回転ブラシユニットUを主体に示した芝生面清掃機の背面図であり、図5は、回転ブラシユニットUが上昇された状態の芝生面清掃機の右側面図であり、図6は、回転ブラシユニットUの斜視図である。図1〜図4において、機体1は、一つの前輪2と、左右一対の後輪3a,3bとを備えた三輪構造のものであって、運転席4の側方には、油圧ポンプP(図11〜図14参照)と、当該ポンプPを駆動するエンジン5が搭載されている。機体1は、当該機体1に設けられた一対の後輪3a,3bがそれぞれ油圧モータM1 により駆動回転されて、自走する構成である。
【0022】
機体1における運転席4の後方には、第1リンク機構L1 及び第1油圧シリンダS1 により回転ブラシユニットUが昇降可能に装着され、当該回転ブラシユニットUの背面には、集塵バケットBが第2リンク機構L2 及び左右一対の第2油圧シリンダS2 により昇降可能となって機体1に装着されている。機体1の運転席4の後方であって、しかも機体1の幅方向の両端部には、一対の第1支柱6が僅かに後傾姿勢となって立設されて、一対の第1支柱6は、高さ方向の中央部よりも僅かに上方の部分において連結バー7が連結されていると共に、各第1支柱6は、背面側に連結された支持アーム8によって、起立剛性が高められて起立姿勢を維持可能な構造になっている。また、機体1における前記各第1支柱6よりも前方の部分には、それぞれ第2及び第3の各支柱9,11が垂直に設けられている。第2及び第3の各支柱9,11は、それぞれ機体1の上方及び下方に向けて取付けられていて、更に第2及び第3の各支柱9,11は、機体1の幅方向に沿って同一位置に取付けられているが、機体1の前後方向に沿っては僅かにずれて配置されている。
【0023】
また、図5及び図6に示されるように、回転ブラシユニットUのケーシング12の両側板部32と、前記第2支柱9の上端部、及び前記第3支柱11の下端部とは、平行リンク機構を形成するように、等長の上下の各リンク13,14で連結されている。機体1における回転ブラシユニットUの前方であって、しかも幅方向の中央部には、当該回転ブラシユニットUの全体を昇降させる第1油圧シリンダS1 が配置されている。即ち、第1油圧シリンダS1 の基端部は、機体1を構成する横架材28の中央の低い部分に対して回動可能に連結されていると共に、そのロッド15の先端部は、前記回転ブラシユニットUのケーシング12の幅方向の中央部の前上端部に設けられた連結ブラケット16に連結されている。よって、第1油圧シリンダS1 のロッド15の出入りによって、回転ブラシユニットUは、機体1に対する配置姿勢を維持したままで、ほぼ上下方向に昇降される。なお、平行リンク機構である第1リンク機構L1 により回転ブラシユニットUが昇降される際に、当該回転ブラシユニットUは、僅かに前後方向に微動されるが、当該微動を最小にするために、当該回転ブラシユニットUの下降端である作業位置と、上昇端である非作業位置との中間において、第1リンク機構L1 を構成する上下の各リンク13,14の両端の連結部を結ぶ線分が水平となるように設計されている。
【0024】
また、後述のように、芝生面のコアCは、回転ブラシユニットUを構成する送風羽根37の回転により生ずる吸引気流によりケーシング12内に吸引回収されて、そのまま当該ケーシング12内を上昇させられた後に、当該回転ブラシユニットUの背面側に配置されている集塵バケットB内に回収される。集塵バケットBは、作業状態において、背面側の排出口17が蓋体24により閉塞されていて、集塵バケットBの両側面における前記排出口17に近接した下端部と、前記各第1支柱6の上端部とが上下に配置された左右二対のリンク18,19により連結されている。上下の各リンク18,19における集塵バケットBの側面との連結部の前後方向の位置はほぼ同一であって、上下方向の位置が異なっている。上リンク18は、下リンク19よりも僅かに長くなっていて、しかも上下の各リンク18,19の第1支柱6との各連結部の間隔は、各リンク18,19の集塵バケットBの側面との各連結部の間隔よりも広くなっている。各下リンク19における第1支柱6との連結部に近い部分と、機体1における第1支柱6の基端部に近い部分とが第2油圧シリンダS2 により連結されている。このため、図7に示されるように、集塵バケットBが回転ブラシユニットUの背面側に配置された作業位置において、第2油圧シリンダS2 のロッド21を突出させると、集塵バケットBは、僅かに時計方向に回動させられながら、前記作業位置に対して斜後上方のコア排出位置まで上昇させられて、排出口17が斜後下方を向いたコア排出位置に配置される。
【0025】
また、図2及び図7に示されるように、集塵バケットBの背面の排出口17(図7及び図9参照)には、当該排出口17を閉塞する蓋体24が配置され、前記集塵バケットBの両側面と前記蓋体24の両側面とは、第3リンク機構L3 を構成していて、上下に配置された二対のリンク22,23で連結されている。即ち、集塵バケットBの両側面の上端部であって、前後方向の中央よりも僅かに後方の部分と、当該部分に対して斜前下方の部分には、それぞれ各リンク22,23の一端部が連結されていると共に、当該各リンク22,23の他端部は、前記蓋体24の両側面の上端部及び上下方向の中央部にそれぞれ連結されている。上リンク22は、下リンク23よりも長くなっていて、集塵バケットBの背面の幅方向の中央部に設けられたブラケット25と、前記蓋体24の上端部とが第3油圧シリンダS3 で連結されている。このため、集塵バケットBがコア排出位置まで上昇させられた状態において、第3油圧シリンダS3 のロッド26を引っ込めると、蓋体24は、集塵バケットBの排出口17に対して離間しながら反時計方向に回動することにより、集塵バケットBに収容されているコアCが排出口17から排出可能となる。なお、図2、図3、図5及び図7において、OPは、機体1の運転席4に座っている当該機体1を操作する運転者を示し、27は、機体1に設けられたハンドルを示す。
【0026】
次に、図2〜図6、図8及び図9を参照して、回転ブラシユニットUの内部構造について説明する。図8は、回転ブラシユニットUのケーシング12に対する接地ローラRの高さを調整する接地ローラ高さ調整手段Aの一部を破断した側面図であり、図9は、回転ブラシユニットUと集塵バケットBの部分の縦断面図である。回転ブラシユニットUのケーシング12は、前板部30と天板部31と各側板部32とは一体に連結されているが、背面板部33は、当該ケーシング12内の洗浄を容易にするために着脱可能な構造になっていて、下面が開口されて吸引口34となっていると共に、背面における上端部が開口されて、背面側に配置される集塵バケットBとの連通口35となっている。ケーシング12内には、回転ブラシ36と送風羽根37とが僅かに斜後上方に向けて相上下して配置され、回転ブラシ36の下端部は、前記吸引口34から突出している。回転ブラシ36は、ブラシ軸38にブラシ取付板39を介して多数のブラシ41が周方向に等間隔をおき、しかも軸方向に沿って連続して取付けられた構成である。送風羽根37は、羽根軸42に周方向に等間隔をおいて複数枚(実施例では3枚)の羽根板43が取付けられた構成である。また、図6に示されるように、ケーシング12の方形状の連通口35の左右の各縦辺部及び上方の横辺部には、それぞれ集塵バケットBとの接続部から気流が漏れるのを防止する気流漏れ防止板45,46が背面側に突出して設けられている。また、連通口35の下方の横辺部は、気流が斜下方に向けて流れ易いように、当該斜下方に向けて折り曲げられた気流漏れ防止板47が設けられている。
【0027】
また、ケーシング12の両側板部32の下端部であって、前板部30に近い部分には、それぞれ接地ローラRを支持する支持ブラケット50が支点ピン51を介して回動可能に支持されていて、各支持ブラケット50の自由端部に接地ローラRが回転可能に支持されている。そして、ケーシング12の両側板部32の下端部であって、前板部30に近い部分は、当該両側板部32に対して分離可能な背面板部33と異なって、両側板部32と前板部30とが一体に連結されていて、剛性が高くなっているので、前記部分に支点ピン51を支持させると、高い支持剛性を確保できて好ましい。また、ケーシング12に対する接地ローラRの高さを調整するための接地ローラ高さ調整手段Aは、当該接地ローラRの両端部にそれぞれ配置されていて、下端部が前記支持ブラケット50の自由端部に連結ブラケット52を介して一体に連結された連結ロッド53と、当該ケーシング12に一体に設けられた反力支持部54と、前記連結ロッド53の上端の雌ねじ部53aに、雄ねじ部55aが螺合される雄ねじロッド55とから成る。雄ねじロッド55の上端に近い部分の段差部55bは、スラスト軸受56を介して前記反力支持部54の下面に当接していて、雄ねじロッド55における反力支持部54から上方に突出した部分には、調整ハンドル57が取付けられている。左右一対の調整ハンドル57の位置は、機体1の運転席4に座っている運転者OPを基準にすると、当該運転者OPが運転席4の位置において姿勢を変更して操作可能なように、斜右後方及び斜左後方に配置されている。また、雄ねじロッド55の全体及び連結ロッド53の上端部は、保護筒58で覆われていて、連結ロッド53の上端部には、目盛り59が施されているため、当該目盛り59における保護筒58の下端の部分を読み取ることにより、ケーシング12に対する接地ローラRの高さを読み取ることができる。また、支持ブラケット50の自由端部に近い部分には、上方に突出した突出部61が設けられて、当該突出部61には、支持ブラケット50の支点を中心とする円弧孔62が形成され、ケーシング12の側板部32に設けられた規制ピン63が前記円弧孔62に挿入されている。接地ローラRの高さ調整のために、支点ピン51を中心にして上方又は下方に支持ブラケット50が回動する際に、前記規制ピン63が円弧孔62の上下の形成端に当接することにより、ケーシング12に対する接地ローラRの上方及び下方の配置位置を規制している。
【0028】
そして、芝生面に散在している回収対象物に応じて、ケーシング12に対する接地ローラRの高さを調整したい場合には、機体1に運転席4に座っている運転者OPが斜右後方又は斜左後方を向いた姿勢で、各接地ローラ高さ調整手段Aの調整ハンドル57をそれぞれ所定方向に回転させることにより、連結ロッド53と雄ねじロッド55との各長さの和が変化して、ケーシング12に対する接地ローラRの高さが調整される。この調整は、工具を使用せず、しかも運転者OPが機体1に搭乗したままの姿勢で行えるので、当該調整が容易である。また、後述のように、接地ローラRにより芝生面を転圧させる際に、転圧力の反力は、前記反力支持部54と支点ピン51とに分散して作用するが、反力支持部54と接地ローラRとの間の水平方向の長さは、接地ローラRと支点ピン51との間の水平方向の長さに比較して、遥かに短いので、前記反力の大部分は、反力支持部54に作用して、支点ピン51に作用する割合は著しく少なくできる。この設計により、支点ピン51の部分の支持剛性を高めるには限界があることに対応可能となる。なお、接地ローラRの上昇端、及び下降端を規制するために、支持ブラケット50の円弧孔62に挿入された規制ピン63をボルト構造にして、当該ボルト構造の規制ピン63とナット(図示せず)との螺合により、当該規制ピン63の部分においても、接地ローラRが芝生面に及ぼす転圧力の反力の一部を作用させられるので、支点ピン51に作用する反力を一層小さくできる利点がある。
【0029】
次に、図9及び図10を参照して、回転ブラシ36及び送風羽根37の駆動機構について簡単に説明する。羽根軸42の一端部には、プーリー65が取付けられ、その他端部には、油圧モータM2 が直結されていて、当該プーリー65と、ブラシ軸38の一端部に取付けられたプーリー66とにベルト67が掛装されて、前記油圧モータM2 の駆動力により、回転ブラシ36及び送風羽根37は、同方向に回転する。なお、図10において、68は、プーリー65,66及びベルト67で構成されるベルト伝動機構を覆うカバーを示す。
【0030】
本発明は、機体1に対して昇降可能に装着された回転ブラシユニットUに下方への加圧力を作用させて、芝生面に散在しているコアCの回収時に、通気孔H’の周囲の土の盛り上がりと、主として前作業のエアーレーション機の車輪の踏圧により発生した不陸とを同時になくして、芝生面に平らに均せられることに特徴が存在し、本実施例において、当該特徴を実現しているのは、回転ブラシユニットUを昇降させる第1油圧シリンダS1 の油圧回路であり、当該油圧回路には、方向制御弁V1 と、接地ローラRに作用する加圧力をON・OFFさせる切換弁V2 とが使用される。機体1の運転席4の左側方には、図2及び図3に示されるように、前記方向制御弁V1 ,切換弁V2 に加えて、集塵バケットBを昇降させる第2油圧シリンダS2 及び集塵バケットBの蓋体24を開閉させる第3油圧シリンダS3 を制御する各方向制御弁V3 ,V4 と、ブラシ軸38及び羽根軸42を駆動する油圧モータM2 の方向制御弁V5 が搭載され、各弁V1 〜V5 は、それぞれ手動操作のためのレバーK1 〜K5 を備えている。
【0031】
次に、図11〜図14を参照して、回転ブラシユニットUを昇降させる第1油圧シリンダS1 の油圧回路について説明する。図11は、第1油圧シリンダS1 のロッド15が突出して、回転ブラシユニットUが上昇している状態を示し、図12は、第1油圧シリンダS1 のロッド15が最大に突出して、回転ブラシユニットUが上昇端で停止している状態を示し、図13は、第1油圧シリンダS1 のロッド15が最大に引っ込んで、接地ローラRにより芝生面を転圧している状態を示し、図14は、第1油圧シリンダS1 のロッド15が最大に引っ込んで、接地ローラRに加圧力が作用していない状態を示す。油圧ポンプPから吐出された圧油は、分流弁71により、方向制御弁V1 に達する管路72と切換弁V2 を通して第1油圧シリンダS1 の上室S1aに通じる管路73とに分流される。方向制御弁V1 を通って第1油圧シリンダS1 の下室S1bに通じる圧油の圧力は、圧力制御弁74により制御されると共に、分流弁71で分岐されて、第1油圧シリンダS1 の上室S1aに通じる圧油の圧力は、圧力制御弁75により制御される。なお、図中、76は、方向制御弁V1 に流入する圧油の圧力を表示する圧力計を示す。
【0032】
そして、図11で示される状態では、切換弁V2 は、「ON」の状態(第1油圧シリンダS1 の上室S1aが圧力を保持し得る状態)が選択されており、油圧ポンプPから吐出される圧油は、分流弁71、管路72及び方向制御弁V1 を通って、第1油圧シリンダS1 の下室S1bに流入すると共に、分流弁71、管路72及び切換弁V2 を通って、第1油圧シリンダS1 の上室S1aに通じる。圧力制御弁74の制御圧力(P1 )は、圧力制御弁75の制御圧力(P2 )よりも大きく設定してあるので、第1油圧シリンダS1 の下室S1bに圧力P1 の圧油が流入すると共に、第1油圧シリンダS1 の上室S1aは、圧力P2 を保持しつつ、余剰の圧油はタンクTに流れる。これにより、第1油圧シリンダS1 のロッド15は、最大に突出して、回転ブラシユニットUが上昇端に達した状態で、方向制御弁V1 を中立位置に配置させると、図12に示されるように、第1油圧シリンダS1 の下室S1bに通じる管路77は、方向制御弁V1 により遮断されると共に、第1油圧シリンダS1 の上室S1aには、圧力P2 の圧油が作用し続けて、回転ブラシユニットUは、上昇端位置である非作業位置で固定された状態で停止する。
【0033】
そして、接地ローラRにより芝生面GSを転圧した状態で、当該芝生面GSに散在するコアCを回収する場合には、図13に示されるように、回転ブラシユニットUの非作業位置において、切換弁V2 を「ON」のままにして、分流弁71で分流された圧油が第1油圧シリンダS1 の下室S1bに流れずに、タンクTに流れる状態に方向制御弁V1 を切り換える。これにより、分流弁71で分流された圧油は、管路73を通して第1油圧シリンダS1 の上室S1aに通じて、圧力制御弁75で設定された圧力(P2 )を保持する。この結果、芝生面GSに接地している接地ローラRは、圧力制御弁75で設定された圧力(P2 )に対応した支持荷重(転圧力)W3 で芝生面GSを加圧することにより、当該芝生面GSが転圧される。圧力制御弁75で設定圧力(P2 )を調整することにより、接地ローラRの転圧力を調整できる。
【0034】
一方、接地ローラRを加圧せずに、本来の接地ローラRとして使用する場合には、回転ブラシユニットUが非作業位置で固定されている状態において、分流弁71で分流された圧油が切換弁V2 の部分で遮断されるように、当該切換弁V2 を「OFF」に切り換えておいて、分流弁71で分流された圧油が第1油圧シリンダS1 の下室S1bに流れずに、タンクTに流れる状態に方向制御弁V1 を切り換える。これにより、回転ブラシユニットUは、第1油圧シリンダS1 の下室S1bの油をタンクTに排出させながら、自重により下降して、接地ローラRは、加圧力が加えられない本来の状態で芝生面GSに接地される。なお、他の第2及び第3の各油圧シリンダS2 ,S3 、油圧モータM1 ,M2 は、図11〜図14に図示される油圧ポンプPにより作動される。
【0035】
なお、図11〜図14に示される油圧回路図では、同一の油圧ポンプPの圧油を分流弁71により分流させて、第1油圧シリンダS1 の上室S1aに対して圧油が作用するようにしてあるが、油圧ポンプPとは別のポンプにより、前記上室S1aに圧油を作用させる構成にすることも可能である。
【0036】
次に、図1、図2、図9及び図15を参照して、回転ブラシユニットUの接地ローラRにより芝生面GSを転圧しながら、当該芝生面GSに散在しているコアCを回収する作業について説明する。なお、図15(a),(b)は、芝生面GSの散在しているコアCを回収する前後の通気孔Hの部分の拡大断面図である。また、図1において、芝生面GSに無数の通気孔Hが穿孔された状態が示されているが、当該通気孔Hのピッチ及び横方向の間隔は、いずれも無視して図示してあり、実際には、通気孔Hのピッチ及び横方向の間隔は、いずれも図示よりも小さい。上記したように、回転ブラシユニットUが上昇端である非作業位置に配置されている状態で、切換弁V2 を「ON」にしたままで、方向制御弁V1 のレバーK1 を操作して、当該回転ブラシユニットUを下降させると、上記した理由により、芝生面GSに接地された接地ローラRには、圧力制御弁75の設定圧力(P2 )に対応した加圧力(W3 )が作用する。なお、加圧力(W3 )は、接地ローラRの支持荷重(W3 )と同一である。回転ブラシユニットUのケーシング12に対する接地ローラRの高さ方向の位置、換言すると、当該接地ローラRが芝生面GSに接地された状態において、当該芝生面GSに対する回転ブラシ36の上下方向の位置は、接地ローラ高さ調整手段Aの調整ハンドル57の回転により調整されている。
【0037】
上記の状態において、機体1に乗り込んだ運転者OPの操作により機体1を前進させると、芝生面GSに散在しているコアCは、送風羽根37の回転により生ずる吸引気流が、ケーシング12の底面の吸引口34の部分に及んでいるため、回転ブラシ36の回転により芝生面GSから掬い上げられたコアCは、ケーシング12の前板部30に沿って斜後上方に掬い上げられて、そのまま気流に乗って当該ケーシング12の連通口35の部分から集塵バケットB内に送り込まれる。集塵バケットB内においては、コアCは、当該集塵バケットBの底部に落下して収容され、集塵バケットB内に対しては、送風羽根37の回転により生じた気流は、当該集塵バケットB内の気流を外部に追い出すように作用して、中空状の蓋体24の上端から下端の開口に向けて気流が流れて、外部に排出される。
【0038】
一方、芝生面GSに対する回転ブラシ36の上下方向の配置位置を定める接地ローラRは、回転ブラシ36の作用幅E(図2参照)とほぼ同一の長さを有していて、当該芝生面GSを加圧力W3 で加圧しながら転動するために、当該芝生面GSを転圧して平らに均す転圧ローラとしての機能を有している。このため、図15に示されるように、通気孔Hの周囲に形成された土の盛り上り部81〔図15(a)参照〕と、直前の通気孔Hの穿孔のために、エアーレーション機の車輪の踏圧、及びコア回収中の芝生面清掃機の前輪2の踏圧により芝生面GSに形成された不陸とが均されて、芝生面GSが平らとなる。即ち、芝生面GSに散在しているコアCの回収と同時に、芝生面GSが平らに均される。よって、後に専用の転圧機により芝生面GSを平らに均す必要がなくなる。なお、図1において、BLは、コアCの回収と芝生面GSの転圧との各作業を終えた部分と、未作業の部分との境界線を示し、図15において、Gは、芝生を示す。
【0039】
上記のように、接地ローラRが加圧力W3 を受けることにより、芝生面GSに対して自重を超える力を及ぼしながら転動することは、機体1の全荷重のうち接地ローラRの支持荷重が増加しており、その結果として、前輪2及び左右一対の後輪3a,3bの計3本の車輪の各支持荷重がいずれも軽減されることを意味する。計3本の車輪の各支持荷重が軽減されることにより、各車輪の踏圧が小さくなって、芝生面清掃機の走行により芝生面GSに生ずる不陸の程度も小さくなる。この現象も、接地ローラRの転圧力により芝生面GSを平らにするのに寄与していると言える。
【0040】
次に、第1油圧シリンダS1 により接地ローラRを転圧させた場合に、機体1の3本の各車輪2,3a,3bの支持荷重が軽減されることを具体的数値を挙げて確認する。図16は、芝生面清掃機の移動時(非作業時)、接地ローラRに転圧力を加えない場合、及び加えた場合の各作業時における各車輪2,3a,3b及び接地ローラRに加わる支持荷重の測定結果を模式的に表示したものであり、図17は、同様の内容を示した表である。試験方法は、芝生面清掃機の各車輪2,3a,3bをそれぞれ重量計に載せて行い、接地ローラRの支持荷重は、芝生面清掃機の全重量から各車輪2,3の支持荷重の和を減じて算出した。なお、上記した支持荷重の測定は、機体1に、体重60kgの運転者が搭乗した状態で行った。また、転圧無しで作業する場合において、接地ローラRの支持荷重とは、回転ブラシユニットUの重量と同等である。
【0041】
図2、図16及び図17に示されるように、運転者の体重(60kg)を含んだ芝生面清掃機の全重量(質量)が814kgの場合において、第1油圧シリンダS1 により接地ローラRに転圧力を加えた場合には、接地ローラRの支持荷重、即ち、接地ローラRの加圧力(転圧力)は、1118Nから2020Nに増加し、その増加量は902Nであった。その結果、左右の各後輪3a,3bの支持荷重は、いずれも約387Nだけ軽減され、前輪2の支持荷重は、約88Nだけ、それぞれ軽減された。各後輪3a,3bの支持荷重の軽減量が、前輪2の支持荷重の軽減量に比較して遥かに大きいのは、接地ローラRが左右一対の後輪3a,3bの直前に配置されている配置上の理由に基づく。左右一対の後輪3a,3bの一方は、コアCが回収されて接地ローラRにより転圧された後の芝生面GSを走行せざるを得ず、この結果、接地ローラRによる転圧後の芝生面GSが当該一方の後輪3a,3bにより踏圧されることを考慮すると、左右一対の後輪3a,3bの支持荷重の軽減量が大きいことの技術的意義は大きい。なお、図2及び図17において、W1 ,W21,W22は、それぞれ前輪2、左後輪3a及び右後輪3bの支持荷重を示す。
【0042】
このように、第1油圧シリンダS1 の油圧力により回転ブラシユニットUを下方に押し付けることにより、接地ローラRに支持荷重、即ち、接地ローラRに対する加圧力が大幅に増大し、当該接地ローラRの大きな転圧力により芝生面GSが平らに均されることが数値的に理解できる。ここで、上記した接地ローラRの加圧力(転圧力)の値は、単なる一例であって、上記したように、第1油圧シリンダS1 の油圧回路に組み込まれた圧力制御弁75の設定圧力(P2 )の調整により、接地ローラRの加圧力(転圧力)を調整できるので、当該設定圧力(P2 )を大きくすることにより、接地ローラRの加圧力(転圧力)を上記値よりも大きくして、前輪2、左後輪3a及び右後輪3bの各支持荷重W1 ,W21,W22を上記値よりも小さくすることは可能である。
【0043】
また、本発明に係る芝生面清掃機による上記作業は、芝生面GSに散在しているコアCを回収しながら、当該芝生面GSの不陸と、通気孔Hの周囲の土の盛り上り部81を均して平らにするものである。しかし、例えば、ゴルフ場のグリーンの回りのアプローチに散在している刈芝を回収したり、或いはグリーンであっても、単に刈芝又はゴミの回収のみを行う場合には、第1油圧シリンダS1 の油圧回路を構成する切換弁V2 のレバーK2 を操作して、当該切換弁V2 を通過して圧油がタンクTに流れるようにすると、回転ブラシユニットUには、大きな転圧力が作用しなくなって、接地ローラRに対しては、回転ブラシユニットUの自重のみが作用して、上記した刈芝等の回収作業を行える。
【0044】
また、上記実施例では、回転ブラシユニットUを昇降させる第1油圧シリンダS1 の油圧回路図の改良によって、当該回転ブラシユニットUを下方に加圧する加圧力を発生させて、接地ローラRの転圧力を大幅に増加させる構成にしてあるために、回転ブラシユニットUを昇降させる第1油圧シリンダS1 は、接地ローラRの転圧力を増加させる機能を兼用している。このため、専用の加圧手段が不要にできると共に、機体全体の重量を増加しないという各利点があるが、回転ブラシユニットUを下方に加圧させるための専用の油圧シリンダを設ける設計も可能である。
【0045】
また、上記実施例では、第1油圧シリンダS1 に「押下げ力」を発生させて、回転ブラシユニットUを上方から加圧して、接地ローラRの転圧力を大きくしているが、回転ブラシユニットUを下方に加圧する手段は、油圧シリンダの油圧力に限定されない。例えば、回転ブラシユニットUの上方に、当該回転ブラシユニットUの全体を下方に付勢する圧縮バネを使用したバネ手段を配置して、当該バネ手段の付勢力を遮断可能な構成にしてもよい。バネ手段の付勢力を遮断可能にする機構としては、例えば当該バネ手段の全体を上方にスライド可能にすることが挙げられる。
【符号の説明】
【0046】
A:接地ローラ高さ調整手段
B:集塵バケット
C:コア
GS:芝生面
OP:運転者
R:接地ローラ
S1 :第1油圧シリンダ(回転ブラシユニット加圧手段)
U:回転ブラシユニット
W1 :前輪の支持荷重
W21:左後輪の支持荷重
W22:右後輪の支持荷重
W3 :接地ローラの支持荷重(接地ローラに対する加圧力又は接地ローラの転圧力)
1:機体
2:前輪
3a:左後輪
3b:右後輪
12:回転ブラシユニットのケーシング
50:支持ブラケット
51:支点ピン
53:連結ロッド
54:反力支持部
55:雄ねじロッド
57:調整ハンドル
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧シリンダを介して機体に対して回転ブラシユニットが昇降可能に装着されて、芝生面に散在している小土塊状のコア、刈芝等のコア類を吸引回収するための乗用型芝生面清掃機、及び芝生面に散在するコアの回収方法に関するものである。
なお、本明細書では、「転圧」の用語が多用されるが、この「転圧」とは、接地ローラが牽引されて転動する場合に、回転ブラシユニットの重量を遥かに超えて、芝生面を平らにできる程度の大きな力を当該接地ローラに対して及ぼしながら転動することを意味し、芝生面を含んで一般的に回転体により土面に力を加えて平らにすることを意味する「鎮圧」と同義である。
また、本明細書では、「転圧力」と「加圧力」の用語が使用されるが、「転圧力」とは、回転している接地ローラが芝生面に及ぼす力をいい、「加圧力」とは、回転ブラシユニットの自重及び油圧シリンダの油圧力により、上方から接地ローラを押し付ける力をいい、いずれも力の作用対象が異なるのみであって、大きさ及び方向は同一である。
【背景技術】
【0002】
ゴルフ場の芝地においては、エアーレーション機に備え付けの円筒状のタインを芝地(芝生面)に突き刺した後に、抜き去ることにより、当該芝地に前後及び左右の双方にほぼ60mm毎の間隔をおいて多数の通気孔を穿孔して、芝地表層部の通気性等を向上させて、芝生の生育を良好にしている。なお、通気孔は、内径が6〜12mmで、深さが70〜150mmである。ここで、前記タインにより芝地に無数の通気孔を形成すると、タインから抜け出た小土塊状のコア(土芯)は、前記通気孔の周辺に連続的に落下してそのまま放置状態で散在される。また、芝地に上記間隔でタインを突き刺した後に、抜き去ると、当該タインの抜き去り時において、通気孔の周囲が大きく盛り上げられる〔図15(a)参照〕と共に、タインの突き刺し及び抜き去りにより芝地の表層部が恰も掘られたようになって、芝地の表面が軟弱化されると共に、凹凸の発生により、芝地の表面である芝生面が不陸状態となる。更に、エアーレーション機は、乗用型であって、大きな重量を有しているので、その前後の各車輪の踏圧が原因となって発生する不陸も存在する。
【0003】
このため、エアーレーション機のタインにより、芝地に無数の通気孔を穿孔した後には、例えば、特許文献1に開示の乗用型芝生面清掃機を用いて、芝生面に放置状態で散在しているコアを吸引回収している。
【0004】
上記乗用型芝生面清掃機は、運転者が乗用して操作される機体と、当該機体に油圧シリンダを介して昇降可能に装着されると共に、作業時において下降して芝生面に接地する接地ローラが設けられて、当該芝生面に残存しているコア類を掬い上げて吸引回収するための回転ブラシユニットと、当該回転ブラシユニットの背面に、接続状態と上昇によるコア排出状態とを選択可能なように配置されて、前記回転ブラシユニットにより吸引回収されたコア類を収容させる集塵バケットとを備えている。芝地に散在しているコアを回収する場合には、機体に対して回転ブラシユニットを下降させて、その下端の接地ローラを芝地に接地させた状態で機体を走行させると、回転ブラシユニットのケーシング内に、相上下して配置されている回転ブラシ及び送風羽根の高速回転により生ずる吸引気流が芝生面に及んで、当該芝生面に散在している前記コアは吸引されて、前記回転ブラシユニットの背面側に接続して配置される集塵バケット内に送り込まれて回収される。
【0005】
上記した乗用型芝生面清掃機では、回転ブラシユニットの重量が接地ローラに作用した状態で、当該接地ローラが芝生面を転動するのであるが、当該接地ローラに回転ブラシユニットの重量が作用するのみでは、通気孔の周囲の土の盛り上がり、及び不陸をなくして、平らにすることはできない。このため、コア回収後に、機体の後部に重量の大きな転圧ローラを牽引する構成の転圧機を芝地に走行させて、コアが回収された芝生面に対して前記転圧ローラをかけて、前記不陸を正して、芝生面全体を平らに均している。
【0006】
このように、タインにより芝地に無数の通気孔を穿孔することにより発生したコアの回収と、通気孔の周囲の土の盛り上がり、及び芝生面の不陸をなくす作業とは、それぞれ別々の作業機(乗用型芝生面清掃機と転圧機)で行わざるを得ないために、別々の作業機を必要とすると共と、全体としての総作業時間も長くなる。更に、芝生面に対して重量の大きな乗用型芝生面清掃機と転圧機とを別々に走行させるために、芝地及び芝生の双方の負荷も大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−209902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記構成の乗用型芝生面清掃機において、回転ブラシユニットの接地ローラに加圧力を作用させてコアを回収することにより、コアの回収作業時に芝生面を転圧させて、コアの回収作業と同時に、通気孔の周囲の土の盛り上がり、及び芝生面全体に生じている不陸をなくして、芝生面全体を平らに均せるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、運転者が乗用して操作される機体と、当該機体に油圧シリンダを介して昇降可能に装着されると共に、作業時において下降して芝生面に接地する接地ローラが設けられて、当該芝生面に残存しているコア類を掬い上げて吸引回収するための回転ブラシユニットと、当該回転ブラシユニットの背面の作業位置と、当該作業位置に対して斜後上方のコア類排出位置とを選択可能なように配置されて、前記作業位置で前記回転ブラシユニットにより吸引回収されたコア類を収容させる集塵バケットとを備えた乗用型芝生面清掃機であって、前記機体に対して回転ブラシユニットが下降されて、前記接地ローラが芝生面に接地して回転している状態において、当該接地ローラに転圧力を作用させるために、前記回転ブラシユニットの全体を下方に向けて加圧させる回転ブラシユニット加圧手段を備えていることを特徴としている。
【0010】
請求項1の発明によれば、機体に対して回転ブラシユニットが下降されて、接地ローラが芝生面に接地して回転している状態において、回転ブラシユニット加圧手段により前記回転ブラシユニットの全体が下方に向けて加圧されると、前記接地ローラは、芝生面に単に接地しているのみならず、回転ブラシユニットの自重を遥かに上廻る大きな力により、芝生面を転圧する。従って、前作業である通気孔の穿孔時にエアーレーション機の各車輪の踏圧、及び本作業であるコア回収時に芝生面清掃機の各車輪の踏圧により生じた芝生面の不陸、及び通気孔の周囲の土の盛り上がりは、前記接地ローラの転圧力により平らに均されて、コアの回収と同時に、芝生面が転圧されて平らに均される。即ち、コア回収後に専用の転圧機により、通気孔の周囲の土の盛り上がり、及び芝生面の不陸を平らにすることなく、乗用型芝生面清掃機により芝生面に散在しているコアを回収する際に、同時に、芝生面全体を平らにすることができて、通気孔の周囲をきれいにして、芝生面全体を平らにできる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記回転ブラシユニット加圧手段は、前記接地ローラに転圧力を加えられた状態と、当該転圧力が加えられない状態との切り替えが可能であることを特徴としている。
【0012】
請求項2の発明によれば、通気孔が穿孔されている芝生面の状態に応じて、接地ローラに転圧力を作用させるか否かを選択できるので、コアの回収と同時に芝生面の転圧を行うか否かを自在に選択できる。例えば、ゴルフ場のグリーンの周囲のアプローチに散在している刈芝等の回収のみを行う場合には、芝生面を転圧する必要はないので、回転ブラシユニット加圧手段をOFFにしておく。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記回転ブラシユニットを昇降させる油圧シリンダは、前記回転ブラシユニット加圧手段を兼用していて、接地ローラが芝生面に接地した状態で、前記油圧シリンダの油圧力により当該接地ローラの転圧力を発生させる構成であることを特徴としている。
【0014】
請求項3の発明によれば、接地ローラが接地した状態においても、回転ブラシユニットを下方に加圧可能な方向制御弁の使用によって、回転ブラシユニットを昇降させる油圧シリンダによって、回転ブラシユニットに下方への加圧力、即ち、接地ローラの転圧力を作用させられて、回転ブラシユニットを昇降させる油圧シリンダを、前記回転ブラシユニット加圧手段に兼用させられる。よって、回転ブラシユニットを下方に加圧させるための専用の加圧手段が不要にできると共に、芝生面清掃機の機体全体の重量の増加もない。
【0015】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記接地ローラは、回転ブラシユニットのケーシングの両側面の下端部に回動可能に支持された一対の支持ブラケットの自由端部に被牽引状態で回転可能に支持されて、前記回転ブラシユニットのケーシングに対する接地ローラの上下方向の配置位置を調整するための接地ローラ高さ調整手段は、前記ケーシングの左右両端に一対配置されて、前記ケーシングの上端部の両側部に、機体に搭乗した運転者により操作可能なハンドルにより回転可能となって上下方向に配置された雄ねじロッドと、下端部が前記支持ブラケットの自由端部に連結されると共に、上端部が前記雄ねじロッドに螺合される連結ロッドとから成り、前記雄ねじロッドの上端の段差部は、前記ケーシングに一体に固定された反力支持部に当接される構成であることを特徴としている。
【0016】
請求項4の発明によれば、運転者が機体に搭乗したまま斜右後方又は斜左後方を向いた姿勢でハンドルを操作することにより、ケーシングに対する接地ローラの上下方向の配置位置を調整できるため、当該調整が容易になる。また、接地ローラが芝生面に及ぼす転圧力の反力は、前記接地ローラ高さ調整手段と、支持ブラケットの連結支点部とに分散して作用するが、前記接地ローラ高さ調整手段を構成する連結ロッドの下端部は、支持ブラケットにおける接地ローラが取付けられている自由端部に連結されているため、接地ローラが芝生面に及ぼす転圧力の反力の大部分は、前記接地ローラ高さ調整手段に作用して、支持ブラケットの連結支点部に作用する割合が少なくなる。この結果、支持ブラケットの連結支点部の支持剛性は余り大きくできないという設計上の制約があるが、上記構成によって、当該制約の下で、接地ローラが芝生面に及ぼす大きな転圧力の反力を効果的に支持できる。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の乗用型芝生面清掃機を使用して、タインによる通気孔の穿孔により芝生面に散在するコアを回収する方法であって、前記回転ブラシユニット加圧手段の作動により、芝生面に対して接地ローラを加圧しながら、前記回転ブラシユニットにより芝生面のコアを吸引回収することにより、前記接地ローラにより芝生面を転圧して、前記通気孔の周囲の土の盛り上がりと、芝生面の不陸とをなくして平らに均すことを特徴としている。
【0018】
請求項5の発明によれば、既存の乗用型芝生面清掃機に対して回転ブラシユニット加圧手段を設けるのみで、芝生面に散在しているコアの回収時に、通気孔の周囲の土の盛り上がりと、芝生面の不陸とをなくして、芝生面全体を平らに均すことができて、従来では不可欠とされていた専用の転圧機を用いた芝生面の転圧作業が不要となって、コアの回収、及び芝生面の整地に係る芝生面の管理を効率的に行える。特に、請求項3に記載の乗用型芝生面清掃機を用いる場合には、既存の芝生面清掃機に対して、回転ブラシユニットを昇降させる油圧シリンダの油圧回路の変更のみで、接地ローラに加圧力を選択的に作用させられるので、実施コストを低下させられる独自の利点がある。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、既存の乗用型芝生面清掃機に対して回転ブラシユニット加圧手段を設けるのみで、芝生面に散在しているコアの回収時に、通気孔の周囲の土の盛り上がりと、芝生面の不陸とをなくして、芝生面全体を平らに均すことができて、従来では不可欠とされていた専用の転圧機を用いた芝生面の転圧作業が不要となって、コアの回収、及び芝生面の整地に係る芝生面の管理を効率的に行える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る乗用型芝生面清掃機により芝生面に散在しているコアCを回収している状態の斜視図である。
【図2】本発明に係る乗用型芝生面清掃機の右側面図である。
【図3】本発明に係る乗用型芝生面清掃機の平面図である。
【図4】回転ブラシユニットUを主体に示した乗用型芝生面清掃機の背面図である。
【図5】回転ブラシユニットUが上昇された状態の乗用型芝生面清掃機の右側面図である。
【図6】回転ブラシユニットUの斜視図である。
【図7】集塵バケットBに収容されるコアCの排出時における乗用型芝生面清掃機の右側面図である。
【図8】回転ブラシユニットUのケーシング12に対する接地ローラRの高さを調整する接地ローラ高さ調整手段Aの一部を破断した側面図である。
【図9】回転ブラシユニットUと集塵バケットBの部分の縦断面図である。
【図10】回転ブラシユニットUの駆動機構を示す図である。
【図11】第1油圧シリンダS1 のロッド15が突出して、回転ブラシユニットUが上昇している状態の油圧回路図である。
【図12】第1油圧シリンダS1 のロッド15が最大に突出して、回転ブラシユニットUが上昇端で停止している状態の油圧回路図である。
【図13】第1油圧シリンダS1 のロッド15が最大に引っ込んで、接地ローラRにより芝生面を転圧している状態の回路図である。
【図14】第1油圧シリンダS1 のロッド15が最大に引っ込んで、接地ローラRに加圧力が作用していない状態の油圧回路図である。
【図15】(a),(b)は、芝生面GSの散在しているコアCを回収する前後の通気孔Hの部分の拡大断面図である。
【図16】乗用型芝生面清掃機の移動時(非作業時)、接地ローラRに転圧力を加えない場合、及び加えた場合の各作業時における各車輪2,3a,3b及び接地ローラRに加わる支持荷重の測定結果を模式的に表示したものである。
【図17】同様の内容を示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、最良の実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明する。最初に、乗用型芝生面清掃機(以下、単に「芝生面清掃機」という)の全体構成について説明し、その後に、本発明の特徴的な部分である回転ブラシユニットUの部分について、更に詳細に説明する。図1は、本発明に係る芝生面清掃機により芝生面に散在しているコアCを回収している状態の斜視図であり、図2及び図3は、それぞれ芝生面清掃機の右側面図及び平面図であり、図4は、回転ブラシユニットUを主体に示した芝生面清掃機の背面図であり、図5は、回転ブラシユニットUが上昇された状態の芝生面清掃機の右側面図であり、図6は、回転ブラシユニットUの斜視図である。図1〜図4において、機体1は、一つの前輪2と、左右一対の後輪3a,3bとを備えた三輪構造のものであって、運転席4の側方には、油圧ポンプP(図11〜図14参照)と、当該ポンプPを駆動するエンジン5が搭載されている。機体1は、当該機体1に設けられた一対の後輪3a,3bがそれぞれ油圧モータM1 により駆動回転されて、自走する構成である。
【0022】
機体1における運転席4の後方には、第1リンク機構L1 及び第1油圧シリンダS1 により回転ブラシユニットUが昇降可能に装着され、当該回転ブラシユニットUの背面には、集塵バケットBが第2リンク機構L2 及び左右一対の第2油圧シリンダS2 により昇降可能となって機体1に装着されている。機体1の運転席4の後方であって、しかも機体1の幅方向の両端部には、一対の第1支柱6が僅かに後傾姿勢となって立設されて、一対の第1支柱6は、高さ方向の中央部よりも僅かに上方の部分において連結バー7が連結されていると共に、各第1支柱6は、背面側に連結された支持アーム8によって、起立剛性が高められて起立姿勢を維持可能な構造になっている。また、機体1における前記各第1支柱6よりも前方の部分には、それぞれ第2及び第3の各支柱9,11が垂直に設けられている。第2及び第3の各支柱9,11は、それぞれ機体1の上方及び下方に向けて取付けられていて、更に第2及び第3の各支柱9,11は、機体1の幅方向に沿って同一位置に取付けられているが、機体1の前後方向に沿っては僅かにずれて配置されている。
【0023】
また、図5及び図6に示されるように、回転ブラシユニットUのケーシング12の両側板部32と、前記第2支柱9の上端部、及び前記第3支柱11の下端部とは、平行リンク機構を形成するように、等長の上下の各リンク13,14で連結されている。機体1における回転ブラシユニットUの前方であって、しかも幅方向の中央部には、当該回転ブラシユニットUの全体を昇降させる第1油圧シリンダS1 が配置されている。即ち、第1油圧シリンダS1 の基端部は、機体1を構成する横架材28の中央の低い部分に対して回動可能に連結されていると共に、そのロッド15の先端部は、前記回転ブラシユニットUのケーシング12の幅方向の中央部の前上端部に設けられた連結ブラケット16に連結されている。よって、第1油圧シリンダS1 のロッド15の出入りによって、回転ブラシユニットUは、機体1に対する配置姿勢を維持したままで、ほぼ上下方向に昇降される。なお、平行リンク機構である第1リンク機構L1 により回転ブラシユニットUが昇降される際に、当該回転ブラシユニットUは、僅かに前後方向に微動されるが、当該微動を最小にするために、当該回転ブラシユニットUの下降端である作業位置と、上昇端である非作業位置との中間において、第1リンク機構L1 を構成する上下の各リンク13,14の両端の連結部を結ぶ線分が水平となるように設計されている。
【0024】
また、後述のように、芝生面のコアCは、回転ブラシユニットUを構成する送風羽根37の回転により生ずる吸引気流によりケーシング12内に吸引回収されて、そのまま当該ケーシング12内を上昇させられた後に、当該回転ブラシユニットUの背面側に配置されている集塵バケットB内に回収される。集塵バケットBは、作業状態において、背面側の排出口17が蓋体24により閉塞されていて、集塵バケットBの両側面における前記排出口17に近接した下端部と、前記各第1支柱6の上端部とが上下に配置された左右二対のリンク18,19により連結されている。上下の各リンク18,19における集塵バケットBの側面との連結部の前後方向の位置はほぼ同一であって、上下方向の位置が異なっている。上リンク18は、下リンク19よりも僅かに長くなっていて、しかも上下の各リンク18,19の第1支柱6との各連結部の間隔は、各リンク18,19の集塵バケットBの側面との各連結部の間隔よりも広くなっている。各下リンク19における第1支柱6との連結部に近い部分と、機体1における第1支柱6の基端部に近い部分とが第2油圧シリンダS2 により連結されている。このため、図7に示されるように、集塵バケットBが回転ブラシユニットUの背面側に配置された作業位置において、第2油圧シリンダS2 のロッド21を突出させると、集塵バケットBは、僅かに時計方向に回動させられながら、前記作業位置に対して斜後上方のコア排出位置まで上昇させられて、排出口17が斜後下方を向いたコア排出位置に配置される。
【0025】
また、図2及び図7に示されるように、集塵バケットBの背面の排出口17(図7及び図9参照)には、当該排出口17を閉塞する蓋体24が配置され、前記集塵バケットBの両側面と前記蓋体24の両側面とは、第3リンク機構L3 を構成していて、上下に配置された二対のリンク22,23で連結されている。即ち、集塵バケットBの両側面の上端部であって、前後方向の中央よりも僅かに後方の部分と、当該部分に対して斜前下方の部分には、それぞれ各リンク22,23の一端部が連結されていると共に、当該各リンク22,23の他端部は、前記蓋体24の両側面の上端部及び上下方向の中央部にそれぞれ連結されている。上リンク22は、下リンク23よりも長くなっていて、集塵バケットBの背面の幅方向の中央部に設けられたブラケット25と、前記蓋体24の上端部とが第3油圧シリンダS3 で連結されている。このため、集塵バケットBがコア排出位置まで上昇させられた状態において、第3油圧シリンダS3 のロッド26を引っ込めると、蓋体24は、集塵バケットBの排出口17に対して離間しながら反時計方向に回動することにより、集塵バケットBに収容されているコアCが排出口17から排出可能となる。なお、図2、図3、図5及び図7において、OPは、機体1の運転席4に座っている当該機体1を操作する運転者を示し、27は、機体1に設けられたハンドルを示す。
【0026】
次に、図2〜図6、図8及び図9を参照して、回転ブラシユニットUの内部構造について説明する。図8は、回転ブラシユニットUのケーシング12に対する接地ローラRの高さを調整する接地ローラ高さ調整手段Aの一部を破断した側面図であり、図9は、回転ブラシユニットUと集塵バケットBの部分の縦断面図である。回転ブラシユニットUのケーシング12は、前板部30と天板部31と各側板部32とは一体に連結されているが、背面板部33は、当該ケーシング12内の洗浄を容易にするために着脱可能な構造になっていて、下面が開口されて吸引口34となっていると共に、背面における上端部が開口されて、背面側に配置される集塵バケットBとの連通口35となっている。ケーシング12内には、回転ブラシ36と送風羽根37とが僅かに斜後上方に向けて相上下して配置され、回転ブラシ36の下端部は、前記吸引口34から突出している。回転ブラシ36は、ブラシ軸38にブラシ取付板39を介して多数のブラシ41が周方向に等間隔をおき、しかも軸方向に沿って連続して取付けられた構成である。送風羽根37は、羽根軸42に周方向に等間隔をおいて複数枚(実施例では3枚)の羽根板43が取付けられた構成である。また、図6に示されるように、ケーシング12の方形状の連通口35の左右の各縦辺部及び上方の横辺部には、それぞれ集塵バケットBとの接続部から気流が漏れるのを防止する気流漏れ防止板45,46が背面側に突出して設けられている。また、連通口35の下方の横辺部は、気流が斜下方に向けて流れ易いように、当該斜下方に向けて折り曲げられた気流漏れ防止板47が設けられている。
【0027】
また、ケーシング12の両側板部32の下端部であって、前板部30に近い部分には、それぞれ接地ローラRを支持する支持ブラケット50が支点ピン51を介して回動可能に支持されていて、各支持ブラケット50の自由端部に接地ローラRが回転可能に支持されている。そして、ケーシング12の両側板部32の下端部であって、前板部30に近い部分は、当該両側板部32に対して分離可能な背面板部33と異なって、両側板部32と前板部30とが一体に連結されていて、剛性が高くなっているので、前記部分に支点ピン51を支持させると、高い支持剛性を確保できて好ましい。また、ケーシング12に対する接地ローラRの高さを調整するための接地ローラ高さ調整手段Aは、当該接地ローラRの両端部にそれぞれ配置されていて、下端部が前記支持ブラケット50の自由端部に連結ブラケット52を介して一体に連結された連結ロッド53と、当該ケーシング12に一体に設けられた反力支持部54と、前記連結ロッド53の上端の雌ねじ部53aに、雄ねじ部55aが螺合される雄ねじロッド55とから成る。雄ねじロッド55の上端に近い部分の段差部55bは、スラスト軸受56を介して前記反力支持部54の下面に当接していて、雄ねじロッド55における反力支持部54から上方に突出した部分には、調整ハンドル57が取付けられている。左右一対の調整ハンドル57の位置は、機体1の運転席4に座っている運転者OPを基準にすると、当該運転者OPが運転席4の位置において姿勢を変更して操作可能なように、斜右後方及び斜左後方に配置されている。また、雄ねじロッド55の全体及び連結ロッド53の上端部は、保護筒58で覆われていて、連結ロッド53の上端部には、目盛り59が施されているため、当該目盛り59における保護筒58の下端の部分を読み取ることにより、ケーシング12に対する接地ローラRの高さを読み取ることができる。また、支持ブラケット50の自由端部に近い部分には、上方に突出した突出部61が設けられて、当該突出部61には、支持ブラケット50の支点を中心とする円弧孔62が形成され、ケーシング12の側板部32に設けられた規制ピン63が前記円弧孔62に挿入されている。接地ローラRの高さ調整のために、支点ピン51を中心にして上方又は下方に支持ブラケット50が回動する際に、前記規制ピン63が円弧孔62の上下の形成端に当接することにより、ケーシング12に対する接地ローラRの上方及び下方の配置位置を規制している。
【0028】
そして、芝生面に散在している回収対象物に応じて、ケーシング12に対する接地ローラRの高さを調整したい場合には、機体1に運転席4に座っている運転者OPが斜右後方又は斜左後方を向いた姿勢で、各接地ローラ高さ調整手段Aの調整ハンドル57をそれぞれ所定方向に回転させることにより、連結ロッド53と雄ねじロッド55との各長さの和が変化して、ケーシング12に対する接地ローラRの高さが調整される。この調整は、工具を使用せず、しかも運転者OPが機体1に搭乗したままの姿勢で行えるので、当該調整が容易である。また、後述のように、接地ローラRにより芝生面を転圧させる際に、転圧力の反力は、前記反力支持部54と支点ピン51とに分散して作用するが、反力支持部54と接地ローラRとの間の水平方向の長さは、接地ローラRと支点ピン51との間の水平方向の長さに比較して、遥かに短いので、前記反力の大部分は、反力支持部54に作用して、支点ピン51に作用する割合は著しく少なくできる。この設計により、支点ピン51の部分の支持剛性を高めるには限界があることに対応可能となる。なお、接地ローラRの上昇端、及び下降端を規制するために、支持ブラケット50の円弧孔62に挿入された規制ピン63をボルト構造にして、当該ボルト構造の規制ピン63とナット(図示せず)との螺合により、当該規制ピン63の部分においても、接地ローラRが芝生面に及ぼす転圧力の反力の一部を作用させられるので、支点ピン51に作用する反力を一層小さくできる利点がある。
【0029】
次に、図9及び図10を参照して、回転ブラシ36及び送風羽根37の駆動機構について簡単に説明する。羽根軸42の一端部には、プーリー65が取付けられ、その他端部には、油圧モータM2 が直結されていて、当該プーリー65と、ブラシ軸38の一端部に取付けられたプーリー66とにベルト67が掛装されて、前記油圧モータM2 の駆動力により、回転ブラシ36及び送風羽根37は、同方向に回転する。なお、図10において、68は、プーリー65,66及びベルト67で構成されるベルト伝動機構を覆うカバーを示す。
【0030】
本発明は、機体1に対して昇降可能に装着された回転ブラシユニットUに下方への加圧力を作用させて、芝生面に散在しているコアCの回収時に、通気孔H’の周囲の土の盛り上がりと、主として前作業のエアーレーション機の車輪の踏圧により発生した不陸とを同時になくして、芝生面に平らに均せられることに特徴が存在し、本実施例において、当該特徴を実現しているのは、回転ブラシユニットUを昇降させる第1油圧シリンダS1 の油圧回路であり、当該油圧回路には、方向制御弁V1 と、接地ローラRに作用する加圧力をON・OFFさせる切換弁V2 とが使用される。機体1の運転席4の左側方には、図2及び図3に示されるように、前記方向制御弁V1 ,切換弁V2 に加えて、集塵バケットBを昇降させる第2油圧シリンダS2 及び集塵バケットBの蓋体24を開閉させる第3油圧シリンダS3 を制御する各方向制御弁V3 ,V4 と、ブラシ軸38及び羽根軸42を駆動する油圧モータM2 の方向制御弁V5 が搭載され、各弁V1 〜V5 は、それぞれ手動操作のためのレバーK1 〜K5 を備えている。
【0031】
次に、図11〜図14を参照して、回転ブラシユニットUを昇降させる第1油圧シリンダS1 の油圧回路について説明する。図11は、第1油圧シリンダS1 のロッド15が突出して、回転ブラシユニットUが上昇している状態を示し、図12は、第1油圧シリンダS1 のロッド15が最大に突出して、回転ブラシユニットUが上昇端で停止している状態を示し、図13は、第1油圧シリンダS1 のロッド15が最大に引っ込んで、接地ローラRにより芝生面を転圧している状態を示し、図14は、第1油圧シリンダS1 のロッド15が最大に引っ込んで、接地ローラRに加圧力が作用していない状態を示す。油圧ポンプPから吐出された圧油は、分流弁71により、方向制御弁V1 に達する管路72と切換弁V2 を通して第1油圧シリンダS1 の上室S1aに通じる管路73とに分流される。方向制御弁V1 を通って第1油圧シリンダS1 の下室S1bに通じる圧油の圧力は、圧力制御弁74により制御されると共に、分流弁71で分岐されて、第1油圧シリンダS1 の上室S1aに通じる圧油の圧力は、圧力制御弁75により制御される。なお、図中、76は、方向制御弁V1 に流入する圧油の圧力を表示する圧力計を示す。
【0032】
そして、図11で示される状態では、切換弁V2 は、「ON」の状態(第1油圧シリンダS1 の上室S1aが圧力を保持し得る状態)が選択されており、油圧ポンプPから吐出される圧油は、分流弁71、管路72及び方向制御弁V1 を通って、第1油圧シリンダS1 の下室S1bに流入すると共に、分流弁71、管路72及び切換弁V2 を通って、第1油圧シリンダS1 の上室S1aに通じる。圧力制御弁74の制御圧力(P1 )は、圧力制御弁75の制御圧力(P2 )よりも大きく設定してあるので、第1油圧シリンダS1 の下室S1bに圧力P1 の圧油が流入すると共に、第1油圧シリンダS1 の上室S1aは、圧力P2 を保持しつつ、余剰の圧油はタンクTに流れる。これにより、第1油圧シリンダS1 のロッド15は、最大に突出して、回転ブラシユニットUが上昇端に達した状態で、方向制御弁V1 を中立位置に配置させると、図12に示されるように、第1油圧シリンダS1 の下室S1bに通じる管路77は、方向制御弁V1 により遮断されると共に、第1油圧シリンダS1 の上室S1aには、圧力P2 の圧油が作用し続けて、回転ブラシユニットUは、上昇端位置である非作業位置で固定された状態で停止する。
【0033】
そして、接地ローラRにより芝生面GSを転圧した状態で、当該芝生面GSに散在するコアCを回収する場合には、図13に示されるように、回転ブラシユニットUの非作業位置において、切換弁V2 を「ON」のままにして、分流弁71で分流された圧油が第1油圧シリンダS1 の下室S1bに流れずに、タンクTに流れる状態に方向制御弁V1 を切り換える。これにより、分流弁71で分流された圧油は、管路73を通して第1油圧シリンダS1 の上室S1aに通じて、圧力制御弁75で設定された圧力(P2 )を保持する。この結果、芝生面GSに接地している接地ローラRは、圧力制御弁75で設定された圧力(P2 )に対応した支持荷重(転圧力)W3 で芝生面GSを加圧することにより、当該芝生面GSが転圧される。圧力制御弁75で設定圧力(P2 )を調整することにより、接地ローラRの転圧力を調整できる。
【0034】
一方、接地ローラRを加圧せずに、本来の接地ローラRとして使用する場合には、回転ブラシユニットUが非作業位置で固定されている状態において、分流弁71で分流された圧油が切換弁V2 の部分で遮断されるように、当該切換弁V2 を「OFF」に切り換えておいて、分流弁71で分流された圧油が第1油圧シリンダS1 の下室S1bに流れずに、タンクTに流れる状態に方向制御弁V1 を切り換える。これにより、回転ブラシユニットUは、第1油圧シリンダS1 の下室S1bの油をタンクTに排出させながら、自重により下降して、接地ローラRは、加圧力が加えられない本来の状態で芝生面GSに接地される。なお、他の第2及び第3の各油圧シリンダS2 ,S3 、油圧モータM1 ,M2 は、図11〜図14に図示される油圧ポンプPにより作動される。
【0035】
なお、図11〜図14に示される油圧回路図では、同一の油圧ポンプPの圧油を分流弁71により分流させて、第1油圧シリンダS1 の上室S1aに対して圧油が作用するようにしてあるが、油圧ポンプPとは別のポンプにより、前記上室S1aに圧油を作用させる構成にすることも可能である。
【0036】
次に、図1、図2、図9及び図15を参照して、回転ブラシユニットUの接地ローラRにより芝生面GSを転圧しながら、当該芝生面GSに散在しているコアCを回収する作業について説明する。なお、図15(a),(b)は、芝生面GSの散在しているコアCを回収する前後の通気孔Hの部分の拡大断面図である。また、図1において、芝生面GSに無数の通気孔Hが穿孔された状態が示されているが、当該通気孔Hのピッチ及び横方向の間隔は、いずれも無視して図示してあり、実際には、通気孔Hのピッチ及び横方向の間隔は、いずれも図示よりも小さい。上記したように、回転ブラシユニットUが上昇端である非作業位置に配置されている状態で、切換弁V2 を「ON」にしたままで、方向制御弁V1 のレバーK1 を操作して、当該回転ブラシユニットUを下降させると、上記した理由により、芝生面GSに接地された接地ローラRには、圧力制御弁75の設定圧力(P2 )に対応した加圧力(W3 )が作用する。なお、加圧力(W3 )は、接地ローラRの支持荷重(W3 )と同一である。回転ブラシユニットUのケーシング12に対する接地ローラRの高さ方向の位置、換言すると、当該接地ローラRが芝生面GSに接地された状態において、当該芝生面GSに対する回転ブラシ36の上下方向の位置は、接地ローラ高さ調整手段Aの調整ハンドル57の回転により調整されている。
【0037】
上記の状態において、機体1に乗り込んだ運転者OPの操作により機体1を前進させると、芝生面GSに散在しているコアCは、送風羽根37の回転により生ずる吸引気流が、ケーシング12の底面の吸引口34の部分に及んでいるため、回転ブラシ36の回転により芝生面GSから掬い上げられたコアCは、ケーシング12の前板部30に沿って斜後上方に掬い上げられて、そのまま気流に乗って当該ケーシング12の連通口35の部分から集塵バケットB内に送り込まれる。集塵バケットB内においては、コアCは、当該集塵バケットBの底部に落下して収容され、集塵バケットB内に対しては、送風羽根37の回転により生じた気流は、当該集塵バケットB内の気流を外部に追い出すように作用して、中空状の蓋体24の上端から下端の開口に向けて気流が流れて、外部に排出される。
【0038】
一方、芝生面GSに対する回転ブラシ36の上下方向の配置位置を定める接地ローラRは、回転ブラシ36の作用幅E(図2参照)とほぼ同一の長さを有していて、当該芝生面GSを加圧力W3 で加圧しながら転動するために、当該芝生面GSを転圧して平らに均す転圧ローラとしての機能を有している。このため、図15に示されるように、通気孔Hの周囲に形成された土の盛り上り部81〔図15(a)参照〕と、直前の通気孔Hの穿孔のために、エアーレーション機の車輪の踏圧、及びコア回収中の芝生面清掃機の前輪2の踏圧により芝生面GSに形成された不陸とが均されて、芝生面GSが平らとなる。即ち、芝生面GSに散在しているコアCの回収と同時に、芝生面GSが平らに均される。よって、後に専用の転圧機により芝生面GSを平らに均す必要がなくなる。なお、図1において、BLは、コアCの回収と芝生面GSの転圧との各作業を終えた部分と、未作業の部分との境界線を示し、図15において、Gは、芝生を示す。
【0039】
上記のように、接地ローラRが加圧力W3 を受けることにより、芝生面GSに対して自重を超える力を及ぼしながら転動することは、機体1の全荷重のうち接地ローラRの支持荷重が増加しており、その結果として、前輪2及び左右一対の後輪3a,3bの計3本の車輪の各支持荷重がいずれも軽減されることを意味する。計3本の車輪の各支持荷重が軽減されることにより、各車輪の踏圧が小さくなって、芝生面清掃機の走行により芝生面GSに生ずる不陸の程度も小さくなる。この現象も、接地ローラRの転圧力により芝生面GSを平らにするのに寄与していると言える。
【0040】
次に、第1油圧シリンダS1 により接地ローラRを転圧させた場合に、機体1の3本の各車輪2,3a,3bの支持荷重が軽減されることを具体的数値を挙げて確認する。図16は、芝生面清掃機の移動時(非作業時)、接地ローラRに転圧力を加えない場合、及び加えた場合の各作業時における各車輪2,3a,3b及び接地ローラRに加わる支持荷重の測定結果を模式的に表示したものであり、図17は、同様の内容を示した表である。試験方法は、芝生面清掃機の各車輪2,3a,3bをそれぞれ重量計に載せて行い、接地ローラRの支持荷重は、芝生面清掃機の全重量から各車輪2,3の支持荷重の和を減じて算出した。なお、上記した支持荷重の測定は、機体1に、体重60kgの運転者が搭乗した状態で行った。また、転圧無しで作業する場合において、接地ローラRの支持荷重とは、回転ブラシユニットUの重量と同等である。
【0041】
図2、図16及び図17に示されるように、運転者の体重(60kg)を含んだ芝生面清掃機の全重量(質量)が814kgの場合において、第1油圧シリンダS1 により接地ローラRに転圧力を加えた場合には、接地ローラRの支持荷重、即ち、接地ローラRの加圧力(転圧力)は、1118Nから2020Nに増加し、その増加量は902Nであった。その結果、左右の各後輪3a,3bの支持荷重は、いずれも約387Nだけ軽減され、前輪2の支持荷重は、約88Nだけ、それぞれ軽減された。各後輪3a,3bの支持荷重の軽減量が、前輪2の支持荷重の軽減量に比較して遥かに大きいのは、接地ローラRが左右一対の後輪3a,3bの直前に配置されている配置上の理由に基づく。左右一対の後輪3a,3bの一方は、コアCが回収されて接地ローラRにより転圧された後の芝生面GSを走行せざるを得ず、この結果、接地ローラRによる転圧後の芝生面GSが当該一方の後輪3a,3bにより踏圧されることを考慮すると、左右一対の後輪3a,3bの支持荷重の軽減量が大きいことの技術的意義は大きい。なお、図2及び図17において、W1 ,W21,W22は、それぞれ前輪2、左後輪3a及び右後輪3bの支持荷重を示す。
【0042】
このように、第1油圧シリンダS1 の油圧力により回転ブラシユニットUを下方に押し付けることにより、接地ローラRに支持荷重、即ち、接地ローラRに対する加圧力が大幅に増大し、当該接地ローラRの大きな転圧力により芝生面GSが平らに均されることが数値的に理解できる。ここで、上記した接地ローラRの加圧力(転圧力)の値は、単なる一例であって、上記したように、第1油圧シリンダS1 の油圧回路に組み込まれた圧力制御弁75の設定圧力(P2 )の調整により、接地ローラRの加圧力(転圧力)を調整できるので、当該設定圧力(P2 )を大きくすることにより、接地ローラRの加圧力(転圧力)を上記値よりも大きくして、前輪2、左後輪3a及び右後輪3bの各支持荷重W1 ,W21,W22を上記値よりも小さくすることは可能である。
【0043】
また、本発明に係る芝生面清掃機による上記作業は、芝生面GSに散在しているコアCを回収しながら、当該芝生面GSの不陸と、通気孔Hの周囲の土の盛り上り部81を均して平らにするものである。しかし、例えば、ゴルフ場のグリーンの回りのアプローチに散在している刈芝を回収したり、或いはグリーンであっても、単に刈芝又はゴミの回収のみを行う場合には、第1油圧シリンダS1 の油圧回路を構成する切換弁V2 のレバーK2 を操作して、当該切換弁V2 を通過して圧油がタンクTに流れるようにすると、回転ブラシユニットUには、大きな転圧力が作用しなくなって、接地ローラRに対しては、回転ブラシユニットUの自重のみが作用して、上記した刈芝等の回収作業を行える。
【0044】
また、上記実施例では、回転ブラシユニットUを昇降させる第1油圧シリンダS1 の油圧回路図の改良によって、当該回転ブラシユニットUを下方に加圧する加圧力を発生させて、接地ローラRの転圧力を大幅に増加させる構成にしてあるために、回転ブラシユニットUを昇降させる第1油圧シリンダS1 は、接地ローラRの転圧力を増加させる機能を兼用している。このため、専用の加圧手段が不要にできると共に、機体全体の重量を増加しないという各利点があるが、回転ブラシユニットUを下方に加圧させるための専用の油圧シリンダを設ける設計も可能である。
【0045】
また、上記実施例では、第1油圧シリンダS1 に「押下げ力」を発生させて、回転ブラシユニットUを上方から加圧して、接地ローラRの転圧力を大きくしているが、回転ブラシユニットUを下方に加圧する手段は、油圧シリンダの油圧力に限定されない。例えば、回転ブラシユニットUの上方に、当該回転ブラシユニットUの全体を下方に付勢する圧縮バネを使用したバネ手段を配置して、当該バネ手段の付勢力を遮断可能な構成にしてもよい。バネ手段の付勢力を遮断可能にする機構としては、例えば当該バネ手段の全体を上方にスライド可能にすることが挙げられる。
【符号の説明】
【0046】
A:接地ローラ高さ調整手段
B:集塵バケット
C:コア
GS:芝生面
OP:運転者
R:接地ローラ
S1 :第1油圧シリンダ(回転ブラシユニット加圧手段)
U:回転ブラシユニット
W1 :前輪の支持荷重
W21:左後輪の支持荷重
W22:右後輪の支持荷重
W3 :接地ローラの支持荷重(接地ローラに対する加圧力又は接地ローラの転圧力)
1:機体
2:前輪
3a:左後輪
3b:右後輪
12:回転ブラシユニットのケーシング
50:支持ブラケット
51:支点ピン
53:連結ロッド
54:反力支持部
55:雄ねじロッド
57:調整ハンドル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が乗用して操作される機体と、
当該機体に油圧シリンダを介して昇降可能に装着されると共に、作業時において下降して芝生面に接地する接地ローラが設けられて、当該芝生面に残存しているコア類を掬い上げて吸引回収するための回転ブラシユニットと、
当該回転ブラシユニットの背面の作業位置と、当該作業位置に対して斜後上方のコア類排出位置とを選択可能なように配置されて、前記作業位置で前記回転ブラシユニットにより吸引回収されたコア類を収容させる集塵バケットとを備えた乗用型芝生面清掃機であって、
前記機体に対して回転ブラシユニットが下降されて、前記接地ローラが芝生面に接地して回転している状態において、当該接地ローラに転圧力を作用させるために、前記回転ブラシユニットの全体を下方に向けて加圧させる回転ブラシユニット加圧手段を備えていることを特徴とする乗用型芝生面清掃機。
【請求項2】
前記回転ブラシユニット加圧手段は、前記接地ローラに転圧力を加えられた状態と、当該転圧力が加えられない状態との切り替えが可能であることを特徴とする請求項1に記載の乗用型芝生面清掃機。
【請求項3】
前記回転ブラシユニットを昇降させる油圧シリンダは、前記回転ブラシユニット加圧手段を兼用していて、接地ローラが芝生面に接地した状態で、前記油圧シリンダの油圧力により当該接地ローラの転圧力を発生させる構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗用型芝生面清掃機。
【請求項4】
前記接地ローラは、回転ブラシユニットのケーシングの両側面の下端部に回動可能に支持された一対の支持ブラケットの自由端部に被牽引状態で回転可能に支持されて、
前記回転ブラシユニットのケーシングに対する接地ローラの上下方向の配置位置を調整するための接地ローラ高さ調整手段は、前記ケーシングの左右両端に一対配置されて、前記ケーシングの上端部の両側部に、機体に搭乗した運転者により操作可能なハンドルにより回転可能となって上下方向に配置された雄ねじロッドと、下端部が前記支持ブラケットの自由端部に連結されると共に、上端部が前記雄ねじロッドに螺合される連結ロッドとから成り、
前記雄ねじロッドの上端の段差部は、前記ケーシングに一体に固定された反力支持部に当接される構成であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の乗用型芝生面清掃機。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の乗用型芝生面清掃機を使用して、タインによる通気孔の穿孔により芝生面に散在するコアを回収する方法であって、
前記回転ブラシユニット加圧手段の作動により、芝生面に対して接地ローラを加圧しながら、前記回転ブラシユニットにより芝生面のコアを吸引回収することにより、前記接地ローラにより芝生面を転圧して、前記通気孔の周囲の土の盛り上がりと、芝生面の不陸とをなくして平らに均すことを特徴とする芝生面に散在するコアの回収方法。
【請求項1】
運転者が乗用して操作される機体と、
当該機体に油圧シリンダを介して昇降可能に装着されると共に、作業時において下降して芝生面に接地する接地ローラが設けられて、当該芝生面に残存しているコア類を掬い上げて吸引回収するための回転ブラシユニットと、
当該回転ブラシユニットの背面の作業位置と、当該作業位置に対して斜後上方のコア類排出位置とを選択可能なように配置されて、前記作業位置で前記回転ブラシユニットにより吸引回収されたコア類を収容させる集塵バケットとを備えた乗用型芝生面清掃機であって、
前記機体に対して回転ブラシユニットが下降されて、前記接地ローラが芝生面に接地して回転している状態において、当該接地ローラに転圧力を作用させるために、前記回転ブラシユニットの全体を下方に向けて加圧させる回転ブラシユニット加圧手段を備えていることを特徴とする乗用型芝生面清掃機。
【請求項2】
前記回転ブラシユニット加圧手段は、前記接地ローラに転圧力を加えられた状態と、当該転圧力が加えられない状態との切り替えが可能であることを特徴とする請求項1に記載の乗用型芝生面清掃機。
【請求項3】
前記回転ブラシユニットを昇降させる油圧シリンダは、前記回転ブラシユニット加圧手段を兼用していて、接地ローラが芝生面に接地した状態で、前記油圧シリンダの油圧力により当該接地ローラの転圧力を発生させる構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗用型芝生面清掃機。
【請求項4】
前記接地ローラは、回転ブラシユニットのケーシングの両側面の下端部に回動可能に支持された一対の支持ブラケットの自由端部に被牽引状態で回転可能に支持されて、
前記回転ブラシユニットのケーシングに対する接地ローラの上下方向の配置位置を調整するための接地ローラ高さ調整手段は、前記ケーシングの左右両端に一対配置されて、前記ケーシングの上端部の両側部に、機体に搭乗した運転者により操作可能なハンドルにより回転可能となって上下方向に配置された雄ねじロッドと、下端部が前記支持ブラケットの自由端部に連結されると共に、上端部が前記雄ねじロッドに螺合される連結ロッドとから成り、
前記雄ねじロッドの上端の段差部は、前記ケーシングに一体に固定された反力支持部に当接される構成であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の乗用型芝生面清掃機。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の乗用型芝生面清掃機を使用して、タインによる通気孔の穿孔により芝生面に散在するコアを回収する方法であって、
前記回転ブラシユニット加圧手段の作動により、芝生面に対して接地ローラを加圧しながら、前記回転ブラシユニットにより芝生面のコアを吸引回収することにより、前記接地ローラにより芝生面を転圧して、前記通気孔の周囲の土の盛り上がりと、芝生面の不陸とをなくして平らに均すことを特徴とする芝生面に散在するコアの回収方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−5403(P2012−5403A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143379(P2010−143379)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(591187841)株式会社共栄社 (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(591187841)株式会社共栄社 (13)
【Fターム(参考)】
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