説明

乗用型茶葉摘採機

【課題】摘採茶葉の収容部の交換に要する時間および労力を低減することができる乗用型茶葉摘採機を提供する。
【解決手段】乗用型茶葉摘採機1の後部に、各下端部がヒンジ結合されてシリンダ装置112で駆動される平行リンクレバー110,111を設けると共に、これらリンクレバー110,111の各上端部にコンテナ10を連結し、コンテナ10が平行リンクレバー110,111の各下端部を支点として上下方向および前後方向の合成方向の円弧上を移動可能にする。コンテナ10が摘採茶葉で満杯になったら、圃場近傍に待機している運搬手段の上部に向けて、平行リンクレバー110,111の各下端部を支点とした平行リンクレバー110,111の折り畳み状態から跳ね上げ状態に伴う上方向と後方向の合成方向の円弧上にコンテナ10を移動させて、運搬手段の上方に位置した状態でコンテナ底部を開放することでコンテナ10に収容した摘採茶葉は、瞬時に、しかもこぼれることなく運搬手段に転載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶樹園において各茶樹畝を跨いでその両側の畝間を走行しつつ茶葉の摘採作業を行う乗用型茶葉摘採機に関し、さらに詳しくは、摘採された茶葉の回収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、作業者の高齢化に伴い、茶園を管理する様々な機械の自動化及び作業負担の軽減が急務とされてきている。これらの要望に答えるべく、例えば乗用型の茶葉摘採機が提案されている。
【0003】
このような乗用型の茶葉摘採機として、特開平8−9751号公報に開示されたものがある。この乗用型茶葉摘採機は、茶畝を跨いでその両側の畝間を自走できるクローラ装置を備えた乗用車体と、大型の送風装置と、茶樹畝の上面全面に臨むバリカン式の摘採装置と、摘採された茶葉を送風装置からの送風により収容袋に収容するためのダクトとを備え、摘採茶葉を送風装置により圧送してダクト内を上昇させ、空気と茶葉とを分離したうえで収容装置に装備されている収容袋内に導入するようになっている。このような構成を備えた乗用型茶葉摘採機は、極端な傾斜地でない限り、茶畝内に乗り入れて摘採作業を行うことができる。
【0004】
【特許文献1】特開平8−9751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この従来の乗用型茶葉摘採機では、摘採された茶葉が収容袋内に満たされると、その収容袋を圃場近くに待機しているトラックなどに運搬する必要がある。しかし、摘採茶葉で満たされた収容袋は重量がかなりあるために運搬の労力が甚大となる。このため、収容袋の運搬作業や収容袋の交換には多大の時間がかかり、摘採作業以外の作業時間が長くなり、効率よく摘採作業を行うことが困難であった。
【0006】
本発明は、こうした従来の問題点に鑑みてなされたものであり、摘採茶葉の収容部の交換に要する時間および労力を低減することができる乗用型茶葉摘採機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、茶樹畝を跨いでその両側の畝間を走行する乗用車体に、茶樹畝上面に臨む摘採装置と、この摘採装置により摘採された茶葉を搬送する送風搬送ダクト等の摘採茶葉搬送装置と、この摘採茶葉搬送装置により搬送された摘採茶葉を茶葉分離体を介して収容するコンテナとを備えた乗用型茶葉摘採機において、
上記コンテナは、上記乗用車体に各下端部がヒンジ結合されて駆動装置で駆動される平行リンクレバーの各上端部に連結され、当該平行リンクレバーの各下端部を支点として上下方向および前後方向の合成方向の円弧上を移動可能に設けられ、摘採茶葉で満たされた際には圃場近傍に待機している運搬手段の上部に向けて、上記平行リンクレバーの各下端部を支点とした上記平行リンクレバーの折り畳み状態から跳ね上げ状態に伴う上方向と後方向の合成方向の円弧上を移動し、上記運搬手段の上方に位置した状態で底部を開放することで当該コンテナに収容した摘採茶葉を運搬手段に転載させることを特徴とする。
【0008】
請求項1記載の発明では、コンテナは、平行リンクレバーの各下端部を支点として上下方向および前後方向の合成方向の円弧上を移動することとなる。これにより、コンテナの初動時において、コンテナの運搬手段に対する乗用車体の前後方向の移動による接近性の向上と、コンテナの運搬手段側に対する安全性の向上という機能を発揮し、茶葉移し替え作業の作業性を向上させることができ、しかも、コンテナの移動時間を短縮できると共に、コンテナが摘採茶葉を収容する姿勢のまま移動して運搬手段の上方に位置するので、コンテナを反転させる構成に比較して茶葉の飛び散りが少なく、摘採茶葉のこぼれを少なくできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コンテナの移動時間が短縮されると共に、コンテナが摘採茶葉を収容する姿勢のまま移動して運搬手段の上方に位置するので、コンテナを反転させる構成に比較して茶葉の飛び散りが少ないので、摘採茶葉の収容部の交換に要する時間および労力を低減する等、優れた効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る乗用型茶葉摘採機の実施の形態について図1,2を参照して説明する。図1は、本実施形態における乗用型茶葉摘採機の側面図、図2は、茶葉移し替え状態にある乗用型茶葉摘採機の側面図である。
【0011】
同図において、乗用型茶葉摘採機1は、走行装置2、乗用車体3、摘採装置4、茶葉分離体6、エンジン7、送風機8、搬送ダクト9、コンテナ10、平行リンクレバー11を備えて構成されている。
【0012】
詳述すると、走行装置2は、ゴムクローラ2A、駆動輪2B、従動輪2C、転輪2D、補強フレーム2Eを備えて構成されている。この走行装置2の上部に設けられている門型フレーム100,101の上部には、これら門型フレーム100,101に橋渡された連結フレーム102が設けられており、この連結フレーム102には、操縦部3Aおよびエンジン7を搭載した乗用車体3が設けられている。乗用車体3上に搭載されているエンジン7には、ベルトを介して左右一対に設けられている送風機8が連なっている。送風機8には伸縮可能なダクト9Aが接続されており、このダクト9Aの下端は、吐出管4Cに接続されている。吐出管4Cは、摘採装置4に設けられたチャンバー4Aの前方に位置して摘採された茶葉を吹き飛ばすためのノズル4Bに連通している。
【0013】
摘採装置4に設けられているチャンバー4Aは、茶樹畝の幅方向で二分された空間を有しており、各空間には摘採された茶葉をコンテナ10に向け搬送するための搬送ダクト9がそれぞれ連結されている。摘採された茶葉は、チャンバー4A内でノズル4Bからの吐出空気により吹き飛ばされ、各空間内から搬送ダクト9を介してコンテナ10に向けて搬送されるが、コンテナ10の導入部に設けられた茶葉分離体6により空気と分離されてコンテナ10内に落下するようになっている。
【0014】
摘採装置4は、茶樹畝の高さに応じて高さ調整ができるようになっている。すなわち、昇降体104により側部が一体的に支持されており、この昇降体104は、連結フレーム102と走行装置2側の補強フレーム2Eとに上下各端部が固定された昇降フレーム105によって昇降自在に支持されている。昇降体104は、図示しない昇降モータによって昇降することができ、これに伴い、摘採装置4に連結されているダクト9Aおよび搬送ダクト9が伸縮するようになっている。
【0015】
一方、摘採装置4は、昇降動作に応じてコンテナ10を昇降させるようになっている。
すなわち、門型フレーム101には、図示しない駆動モータによって昇降可能なコンテナ用昇降体104’が取り付けられており、このコンテナ用昇降体104および昇降体104’には、コンテナ10を格納できる空間の底部をなす底枠106が固定され、昇降体104およびコンテナ用昇降体104’の昇降動作に応じてコンテナ10の格納空間を昇降させるようになっている。
【0016】
上記底枠106の上面には、コンテナ10を格納できる空間の前後各隅に位置する側枠107,107’の下端がそれぞれ固定されており、各側枠107,107’の上面には上枠108(図2参照)が固定されている。
【0017】
一方、上枠108の下方近傍には、図2に示すように、側枠107,107’間に橋渡された補助枠109が設けられており、この補助枠109および上記上枠108には、コンテナ10に上端部が連結された平行リンクレバー110,111の端部がヒンジ結合されている。
【0018】
平行リンクレバー110および111は、図2に示すように、補助枠109および上枠108からコンテナ10に向け延長されている一部が屈曲点とされ、平行リンクレバー110,111は、屈曲点を支点として図1に示すように折り畳まれた状態と、図2に示すように略90°の屈曲角度を以て跳ね上げられた状態とに、シリンダ装置112により切り換えられるようになっている。
【0019】
図1に示す折り畳み状態ではコンテナー10が搬送用ダクト9と茶葉分離体6とが連通して摘採茶葉を導入できるようになっており、また図2に示す跳ね上げ状態では、搬送用ダクト9の末端から茶葉分離体6が離れてコンテナ10が、図示しないトラックの荷台の上方に位置する高さに移動するようになっている。
【0020】
平行リンクレバー110、111のうちで、折り畳まれた状態の時に下方に位置する平行リンクレバー110には、図7に示すようにシリンダ装置112のロッドが連結されており、シリンダ装置112は、シリンダ部が乗用車体側の不動部に取り付けられている。このため、平行リンクレバー110,111が折り畳まれた状態の時にはシリンダ装置112がロッドを収縮させ、この状態においてシリンダ装置112がロッドを伸長させると、下方に位置する平行リンクレバー110が跳ね上げられてコンテナ10’が斜め上方に移動させられ、今ひとつの平行リンクレバー111によりコンテナ10’が摘採茶葉収容位置にある状態と同じ姿勢を維持されるようになっている。
【0021】
コンテナ10には、底部に観音扉10A、10A’が設けられており、この観音扉10A、10A’は、自由端側に一端が連結されているチェーン13A、13A’によって開閉されるようになっている。
【0022】
チェーン13A、13A’は、その他端が複数の転輪を迂回されてシリンダ11のロッドに連結されており、シリンダ11の伸縮動作に連動して牽引および繰り出し動作を行えるようになっている。このため、チェーン13A,13A’が牽引されると観音扉10A、10A’が閉じられ(図2において二点鎖線で示す状態)、繰り出されると観音扉10A、10A’が開放される(図2において実線で示す状態)。
【0023】
本実施形態は以上のような構成であるから、摘採装置4による摘採作業時には、摘採装置4が昇降体104の昇降に応じて茶樹畝の高さに調整されると、コンテナ用昇降体104’も同様に昇降し、摘採装置4の高さ方向の位置にコンテナ10の高さを合わせるようになっている。
【0024】
摘採作業時には、シリンダ装置112(図2参照)がロッドを収縮させているので、コンテナ10が図1に示すように、茶葉分離体6と搬送ダクト9とを連通させる。摘採装置4によって摘採された茶葉は、ダクト9Aを介して送風機8から供給された空気がノズル4Bから吐出されることで搬送ダクト9に送り込まれ、茶葉分離体6によって空気と分離されてコンテナ10内に落下する。
【0025】
コンテナ10内に茶葉が満たされると、コンテナ10内の茶葉がトラックの荷台に移し替えられる。
【0026】
この場合には、シリンダ装置112がロッドを伸長させるので、平行リンクレバー110、111が跳ね上げられ、これに連動してコンテナ10が斜め上方に移動する。
【0027】
シリンダ装置112におけるロッドの伸長量が所定量に達すると、図2に示すようにコンテナ10が図示しないトラックの荷台上方に位置するので、コンテナ10側に装備されているシリンダ11がロッドを伸長させることにより観音扉10A、10A’が開放される。これにより、コンテナ10は、摘採時の位置から移し替えが行われる位置に向けて、摘採時での姿勢を変更することなく移動することができるので、移し替えの際に反転させる必要がなく、反転させた場合のような、茶葉の飛び散りをなくして茶葉がコンテナ10の周辺にこぼれてしまうような事態を回避することができる。しかも、コンテナ10は、上下方向と前後方向との合成方向の円弧上を移動するので、水平および昇降の各方向に移動させる場合に比べて移動時間が短縮することとなる。
【0028】
以上述べたように本乗用型茶葉摘採機1によれば、平行リンクレバー110、111の各下端部を支点としてコンテナ10を上下方向および前後方向の合成方向の円弧上を移動させるようにしたので、コンテナ10の初動時において、コンテナ10の運搬手段に対する乗用車体3の前後方向の移動による接近性の向上と、コンテナ10の運搬手段側に対する安全性の向上という機能を発揮し、茶葉移し替え作業の作業性を向上させることができ、しかも、コンテナ10の移動時間を短縮できると共に、コンテナ10が摘採茶葉を収容する姿勢のまま移動して運搬手段の上方に位置するので、コンテナ10を反転させる構成に比較して茶葉の飛び散りが少なく、摘採茶葉のこぼれを少なくでき、摘採茶葉の回収効率を向上させると共に、茶葉の移し替えに要する時間をより効率よく短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態における乗用型茶葉摘採機の側面図である。
【図2】茶葉移し替え状態にある乗用型茶葉摘採機の側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1…乗用型茶葉摘採機
2…走行装置
3…乗用車体
4…摘採装置
6…茶葉分離体
10…コンテナ
10A,10A’…観音扉
11…シリンダ
13A,13A’…チェーン
104,104’…昇降体
105…昇降ガイド部
110,111…平行リンクレバー
112…シリンダ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶樹畝を跨いでその両側の畝間を走行する乗用車体に、茶樹畝上面に臨む摘採装置と、この摘採装置により摘採された茶葉を搬送する送風搬送ダクト等の摘採茶葉搬送装置と、この摘採茶葉搬送装置により搬送された摘採茶葉を茶葉分離体を介して収容するコンテナとを備えた乗用型茶葉摘採機において、
上記コンテナは、上記乗用車体に各下端部がヒンジ結合されて駆動装置で駆動される平行リンクレバーの各上端部に連結され、当該平行リンクレバーの各下端部を支点として上下方向および前後方向の合成方向の円弧上を移動可能に設けられ、摘採茶葉で満たされた際には圃場近傍に待機している運搬手段の上部に向けて、上記平行リンクレバーの各下端部を支点とした上記平行リンクレバーの折り畳み状態から跳ね上げ状態に伴う上昇方向と後方向の合成方向の円弧上を移動し、上記運搬手段の上方に位置した状態で底部を開放することで当該コンテナに収容した摘採茶葉を運搬手段に転載させることを特徴とする乗用型茶葉摘採機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−6908(P2007−6908A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287877(P2006−287877)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【分割の表示】特願平11−174435の分割
【原出願日】平成11年6月21日(1999.6.21)
【出願人】(000250270)落合刃物工業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】