説明

乗用田植機

【課題】滑り子が円滑に移動可能な横送りネジ軸を備える乗用田植機を提供する。
【解決手段】横送りネジ軸60の外周62に、右方誘導溝61Bおよび左方誘導溝61Aをそれぞれ螺旋状に備え、右方誘導溝61Bの終端と左方誘導溝61Aの始端とが第1方向転換溝61Cによって連通されるとともに、左方誘導溝61Aの終端と右方誘導溝61Bの始端とが第2方向転換溝61Dによって連通されて1つのエンドレス誘導溝が形成され、そこに滑り子が移動可能に嵌合した状態で横送りネジ軸60が回転することによって苗載台を車幅方向に所定の範囲内で連続的に往復運動させることが可能な乗用田植機において、第1方向転換溝61Cの始端と左方誘導溝61Aの始端との間に形成される第1鋭角部AG1の先端部分が平面視にて曲率により面取りされて形成されるとともに、第2方向転換溝61Dの始端と右方誘導溝61Bの始端との間に形成される第2鋭角部AG3の先端部分が平面視にて曲率により面取りされて形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗載台を乗用田植機の車幅方向左右に移動させるための横送りネジ軸と、それに嵌合する滑り子と、滑り子が固設され、横送りネジ軸が回転することで車幅方向に往復移動可能な苗載台とを備える乗用田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の乗用田植機には、駆動源としてのエンジンと、苗載台を車幅方向左右に往復移動させるための横送りネジ軸と、それに嵌合する滑り子と、滑り子が固設され、横送りネジ軸がエンジンの駆動力により回転することで車幅方向に移動可能な苗載台とを備える。横送りネジ軸の外周には、螺旋状の右方誘導溝と螺旋状の左方誘導溝とが交差するように形成され、右方誘導溝の終端と左方誘導溝の始端とが第1方向転換溝によって連通されるとともに、左方誘導溝の終端と右方誘導溝の始端とが第2方向転換溝によって連通されて1つのエンドレス誘導溝となっている。このエンドレス誘導溝に滑り子が移動可能に嵌合した状態で横送りネジ軸が回転することによって苗載台を車幅方向に所定の範囲内で連続的に往復運動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−278421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、右方誘導溝および左方誘導溝は直線的に形成されているのに対して、第1方向転換溝および第2方向転換溝はそれぞれ円弧状に形成される。したがって、右方誘導溝の終端と第1方向転換溝との接続部分、および、左方誘導溝の終端と第2方向転換溝との接続部分では、それぞれ滑り子を誘導するための溝が直線的に連続せず、エンドレス誘導溝内における滑り子の円滑な移動を妨げる要因となるという問題があった。そこで、この発明の目的は、滑り子が円滑に移動可能な横送りネジ軸を備える乗用田植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため請求項1に記載の発明は、駆動源12からの駆動力で回転する横送りネジ軸60と、
該横送りネジ軸60に嵌合する滑り子65と、
該滑り子65が固設され、前記横送りネジ軸60が回転することで車幅方向に往復移動可能な苗載台31とを備え、
前記横送りネジ軸60の外周に、前記苗載台31を右向きにスライドさせる右方誘導溝61B、および、前記苗載台31を左向きにスライドさせる左方誘導溝61Aをそれぞれ螺旋状に備え、
前記右方誘導溝61Bと前記左方誘導溝61Aとが交差するように設けられ、
前記右方誘導溝61Bの終端と前記左方誘導溝61Aの始端とが第1接続部LK1にて第1方向転換溝61Cを介して連通されるとともに、前記左方誘導溝61Aの終端と前記右方誘導溝61Bの始端とが第2接続部LK2にて第2方向転換溝61Dを介して連通されて1つのエンドレス誘導溝が形成され、
該エンドレス誘導溝に前記滑り子65が移動可能に嵌合した状態で前記横送りネジ軸60が回転することによって前記苗載台31を車幅方向に所定の範囲内で連続的に往復運動させることが可能な乗用田植機1において、
前記第1方向転換溝61Cの始端と前記左方誘導溝61Aの始端との間に形成される第1鋭角部AG1の先端部分が平面視にて曲率により面取りされて形成されるとともに、
前記第2方向転換溝61Dの始端と前記右方誘導溝61Bの始端との間に形成される第2鋭角部AG3の先端部分が平面視にて曲率により面取りされて形成されることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の乗用田植機において、前記右方誘導溝61Bと前記左方誘導溝61Aとが交差する交差部IC1,IC2・・・ICNにて、
前記右方誘導溝61Bと前記左方誘導溝61Aとのなす角が鋭角となる鋭角部A11,A21・・・AN1を備え、
前記滑り子65の進行方向に対向する前記鋭角部A11,A21・・・AN1の先端部分が平面視にて曲率により面取りされて形成されることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の乗用田植機において、前記第1鋭角部AG1の先端部分に形成される円弧の半径は、前記鋭角部A11,A21・・・AN1の先端部分に形成される円弧の半径よりも大きく、
かつ、前記第2鋭角部AG3の先端部分に形成される円弧の半径は、前記鋭角部A11,A21・・・AN1の先端部分に形成される円弧の半径よりも大きいことを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、駆動源12からの駆動力で回転する横送りネジ軸60´と、
該横送りネジ軸60´に嵌合する滑り子65と、
該滑り子65が固設され、前記横送りネジ軸60´が回転することで車幅方向に往復移動可能な苗載台31とを備え、
前記横送りネジ軸60´の外周に、前記苗載台31を右向きにスライドさせる右方誘導溝61B´、および、前記苗載台31を左向きにスライドさせる左方誘導溝61A´をそれぞれ螺旋状に備え、
前記右方誘導溝61B´と前記左方誘導溝61A´とが交差するように設けられ、
前記右方誘導溝61B´の終端と前記左方誘導溝61A´の始端とが第1接続部LK1´にて第1方向転換溝61C´を介して連通されるとともに、前記左方誘導溝61A´の終端と前記右方誘導溝61B´の始端とが第2接続部LK2´にて第2方向転換溝61D´を介して連通されて1つのエンドレス誘導溝が形成され、
該エンドレス誘導溝に前記滑り子65が移動可能に嵌合した状態で前記横送りネジ軸60´が回転することによって前記苗載台31を車幅方向に所定の範囲内で連続的に往復運動させることが可能な乗用田植機1において、
前記右方誘導溝61C´と前記左方誘導溝61D´とが交差する交差部IC1´,IC2´・・・ICN´にて、
前記右方誘導溝61B´と前記左方誘導溝61A´とのなす角が鋭角となる鋭角部A11´,A21´・・・AN1´を備え、
前記滑り子65の進行方向に対向する前記鋭角部A11´,A21´・・・AN1´の先端部分が平面視にて曲率により面取りされて形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の乗用田植機において、前記第1方向転換溝61C´の始端と前記左方誘導溝61A´の始端との間に形成される第1鋭角部AG1´の先端部分が平面視にて曲率により面取りされて形成されるとともに、
前記第2方向転換溝61D´の始端と前記右方誘導溝61B´の始端との間に形成される第2鋭角部AG3´の先端部分が平面視にて曲率により面取りされて形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の乗用田植機において、前記第1鋭角部AG1´の先端部分に形成される円弧の半径は、前記鋭角部A11´,A21´・・・AN1´の先端部分に形成される円弧の半径よりも大きく、
かつ、前記第2鋭角部AG3´の先端部分に形成される円弧の半径は、前記鋭角部A11´,A21´・・・AN1´の先端部分に形成される円弧の半径よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、駆動源からの駆動力で回転する横送りネジ軸と、該横送りネジ軸に嵌合する滑り子と、該滑り子が固設され、前記横送りネジ軸が回転することで車幅方向に往復移動可能な苗載台とを備え、前記横送りネジ軸の外周に、前記苗載台を右向きにスライドさせる右方誘導溝、および、前記苗載台を左向きにスライドさせる左方誘導溝をそれぞれ螺旋状に備え、前記右方誘導溝と前記左方誘導溝とが交差するように設けられ、前記右方誘導溝の終端と前記左方誘導溝の始端とが第1接続部にて第1方向転換溝を介して連通されるとともに、前記左方誘導溝の終端と前記右方誘導溝の始端とが第2接続部にて第2方向転換溝を介して連通されて1つのエンドレス誘導溝が形成され、該エンドレス誘導溝に前記滑り子が移動可能に嵌合した状態で前記横送りネジ軸が回転することによって前記苗載台を車幅方向に所定の範囲内で連続的に往復運動させることが可能な乗用田植機において、前記第1方向転換溝の始端と前記左方誘導溝の始端との間に形成される第1鋭角部の先端部分が平面視にて曲率により面取りされて形成されるとともに、前記第2方向転換溝の始端と前記右方誘導溝の始端との間に形成される第2鋭角部の先端部分が平面視にて曲率により面取りされて形成される。
【0012】
これによって、右方誘導溝の終端と第1方向転換溝との接続部分、および、左方誘導溝の終端と第2方向転換溝との接続部分では、それぞれ滑り子を誘導するための溝が直線的に連続せず、滑り子が、第1鋭角部や第2鋭角部の先端部分に接触または衝突する可能性があるが、第1鋭角部と第2鋭角部の先端部分が角落としされているので、衝突によって破損する恐れを回避することができる。よって、エンドレス誘導溝内における滑り子の円滑な移動を行うことができ、苗載台を車幅方向に左右に円滑に移動させることができる。したがって、滑り子が円滑に移動可能な横送りネジ軸を備える乗用田植機を提供することができる。また、横送りネジ軸に前記右方誘導溝と前記左方誘導溝を形成後、焼入れする場合、第1鋭角部や第2鋭角部がもろくなるが、曲率による面取りをすることで、第1鋭角部や第2鋭角部に滑り子が衝突することによる破損を防止することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、前記右方誘導溝と前記左方誘導溝とが交差する交差部にて、前記右方誘導溝と前記左方誘導溝とのなす角が鋭角となる鋭角部を備え、前記滑り子の進行方向に対向する前記鋭角部の先端部分が平面視にて曲率により面取りされて形成される。
【0014】
交差部では、それまで滑り子をガイドしてきた右方誘導溝(または左方誘導溝)の両壁が途切れる。このため、滑り子の動きが不安定となり、交差部を挟んで連続して形成されている右方誘導溝(または左方誘導溝)にスムーズに入り込めずに鋭角部に当接する可能性がある。このような場合であっても、滑り子によって鋭角部の先端部分を破損することがない。よって、エンドレス誘導溝内における滑り子の円滑な移動を行うことができ、苗載台を車幅方向に左右に円滑に移動させることができる。また、横送りネジ軸に前記右方誘導溝と前記左方誘導溝を形成後、焼入れする場合、鋭角部がもろくなるが、曲率による面取りをすることで、鋭角部に滑り子が衝突することによる破損を防止することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、前記第1鋭角部の先端部分に形成される円弧の半径は、前記鋭角部の先端部分に形成される円弧の半径よりも大きく、かつ、前記第2鋭角部の先端部分に形成される円弧の半径は、前記鋭角部の先端部分に形成される円弧の半径よりも大きいので、鋭角部を角落としする量を第1鋭角部や第2鋭角部よりも少なくし、製造に係る作業時間を短縮することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、駆動源からの駆動力で回転する横送りネジ軸と、該横送りネジ軸に嵌合する滑り子と、該滑り子が固設され、前記横送りネジ軸が回転することで車幅方向に往復移動可能な苗載台とを備え、前記横送りネジ軸の外周に、前記苗載台を右向きにスライドさせる右方誘導溝、および、前記苗載台を左向きにスライドさせる左方誘導溝をそれぞれ螺旋状に備え、前記右方誘導溝と前記左方誘導溝とが交差するように設けられ、前記右方誘導溝の終端と前記左方誘導溝の始端とが第1接続部にて第1方向転換溝を介して連通されるとともに、前記左方誘導溝の終端と前記右方誘導溝の始端とが第2接続部にて第2方向転換溝を介して連通されて1つのエンドレス誘導溝が形成され、該エンドレス誘導溝に前記滑り子が移動可能に嵌合した状態で前記横送りネジ軸が回転することによって前記苗載台を車幅方向に所定の範囲内で連続的に往復運動させることが可能な乗用田植機において、前記右方誘導溝と前記左方誘導溝とが交差する交差部にて、前記右方誘導溝と前記左方誘導溝とのなす角が鋭角となる鋭角部を備え、前記滑り子の進行方向に対向する前記鋭角部の先端部分が平面視にて曲率により面取りされて形成される。
【0017】
交差部では、それまで滑り子をガイドしてきた右方誘導溝(または左方誘導溝)の両壁が途切れる。このため、滑り子の動きが不安定となり、交差部を挟んで連続して形成されている右方誘導溝(または左方誘導溝)にスムーズに入り込めずに鋭角部に当接する可能性がある。このような場合であっても、滑り子によって鋭角部の先端部分を破損することがない。よって、エンドレス誘導溝内における滑り子の円滑な移動を行うことができ、苗載台を車幅方向に左右に円滑に移動させることができる。したがって、滑り子が円滑に移動可能な横送りネジ軸を備える乗用田植機を提供することができる。また、横送りネジ軸に前記右方誘導溝と前記左方誘導溝を形成後、焼入れする場合、鋭角部がもろくなるが、曲率による面取りをすることで、鋭角部に滑り子が衝突することによる破損を防止することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、前記第1方向転換溝の始端と前記左方誘導溝の始端との間に形成される第1鋭角部の先端部分が平面視にて曲率により面取りされて形成されるとともに、前記第2方向転換溝の始端と前記右方誘導溝の始端との間に形成される第2鋭角部の先端部分が平面視にて曲率により面取りされて形成される。
【0019】
これによって、右方誘導溝の終端と第1方向転換溝との接続部分、および、左方誘導溝の終端と第2方向転換溝との接続部分では、それぞれ滑り子を誘導するための溝が直線的に連続せず、滑り子が、第1鋭角部や第2鋭角部の先端部分に接触または衝突する可能性があるが、第1鋭角部と第2鋭角部の先端部分が角落としされているので、衝突によって破損する恐れを回避することができる。よって、エンドレス誘導溝内における滑り子の円滑な移動を行うことができ、苗載台を車幅方向に左右に円滑に移動させることができる。また、横送りネジ軸に前記右方誘導溝と前記左方誘導溝を形成後、焼入れする場合、第1鋭角部や第2鋭角部がもろくなるが、曲率による面取りをすることで、第1鋭角部や第2鋭角部に滑り子が衝突することによる破損を防止することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、前記第1鋭角部の先端部分に形成される円弧の半径は、前記鋭角部の先端部分に形成される円弧の半径よりも大きく、かつ、前記第2鋭角部の先端部分に形成される円弧の半径は、前記鋭角部の先端部分に形成される円弧の半径よりも大きいので、鋭角部を角落としする量を第1鋭角部や第2鋭角部よりも少なくし、製造に係る作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の乗用田植機の一例の側面図である。
【図2】その平面図である。
【図3】その要部側面図である。
【図4】その苗載台の要部拡大正面図である。
【図5】その横送りネジ軸付近の図である。
【図6】その横送りネジ軸の、(a)は正面図、(b)は外周面の展開図である。
【図7】(a),(b)はともに図6の横送りネジ軸外周における滑り子の移動を説明するための図である。
【図8】この発明の別の例の横送りネジ軸の、(a)は正面図、(b)は外周面の展開図である。
【図9】(a),(b)はともに図8の横送りネジ軸外周における滑り子の移動を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。図1は田植機(乗用田植機)1の側面図、図2はその平面図、図3は要部側面図である。なお、本文において、「右」とは田植機1の前進方向に向かって右側を、「左」とは田植機1の前進方向に向かって左側を指すものとする。田植機1は、走行部10とその後部に連結された植付部30とで構成される。走行部10は、車両本体である金属製のシャーシ11を備え、シャーシ11の前部には駆動源であるエンジン12を載置する。また、シャーシ11の略中央部には、ミッションケース13を取り付ける。ミッションケース13の前側の左右両側にはそれぞれフロントアクスルケース14を設ける。フロントアクスルケース14には前輪15を備える。
【0023】
エンジン12からの出力軸26はミッションケース13に回転自在に連結する。エンジン12からの駆動力は、ミッションケース13内に伝達され、回転速度、回転方向が適宜変更された後、ミッションケース13から後方に向けて不図示の出力軸を介して後輪(駆動輪)17に伝達される。なお、符号16はリヤアクスルケース、16Aは後輪17の車軸である。
【0024】
ミッションケース13の出側には、PTO伝動シャフト27を延設し、その後端にはPTO軸28を設ける。PTO軸28にはさらに後方に向けて植付部30の植付伝動シャフト29を連結する。これによって、ミッションケース13からの駆動力を植付部30に伝達する。
【0025】
一方、シャーシ11の上方には、これを覆うように車体カバー20を備える。車体カバー20の前部で、かつ、エンジン12を覆うようにドーム状のボンネット18を備える。車体カバー20およびボンネット18は、強化プラスチックなどで形成される。車体カバー20の後部には、運転席21を備える。車体カバー20には、運転者が運転席21に座ったときに足を載置することのできるステップが一体に形成されている。
【0026】
運転席21の前方には、ハンドル22を備える。ハンドル22の下方には、ハンドルコラムとそれを覆うハンドルコラムカバーを備える。ハンドルコラムカバーは、ボンネット18の後方に隣接して設けられる。
【0027】
走行部10の後部には、トップリンク33及びロワーリンク34を含む3点昇降リンク機構によって植付部30を連結する。植付部30は、走行部10の後部に備える(走行部10とロワーリンク34との間に介設された)油圧シリンダSによって昇降自在に取り付けられる。植付部30は、メインフレーム、メインフレームに固設された上部ガイドレール36と下部ガイドレール35、上部ガイドレール36と下部ガイドレール35上にスライド自在に載置された苗載台31、メインフレーム下端に固設された4つの植付伝動ケース37、それぞれの植付伝動ケース37の両側に回転自在に備える回転ケース40、それぞれの回転ケース40の外側に回転自在に備える一対の植付装置32などを備える。
【0028】
上部ガイドレール36と下部ガイドレール35は、走行方向の両側に延出するように取り付けられ、両者は平行に、かつ、前者が後者に対して上方に位置するように設けられる。苗載台31は、これら上部ガイドレール36と下部ガイドレール35にガイドされて、走行方向に対して左右に(車幅方向に)平行移動可能である。
【0029】
苗載台31は、苗を多数載置するためのものであり、強化プラスチック製で、後方に向けて傾斜して設けられる。苗載台31は、苗を8条分に仕切って載置し、植付装置32が下端より順次、苗を取るとともに、後述する縦送りベルトによって上部にある苗が苗載台31の下端に向けて順次移動するように構成されている。
【0030】
植付伝動ケース37は、植付伝動シャフト29より分岐した駆動力を受け取って作動するものであり、植付部30の幅方向に均等間隔に4つ設けられる。植付伝動シャフト29と植付伝動ケース37との間には、不図示の植付クラッチを備え、駆動力を接続・断絶することができる。
【0031】
回転ケース40は、植付伝動ケース37の両側に突出した出力軸にそれぞれ取り付けられる。詳しくは、植付伝動ケース37の出力軸の先端を、回転ケース40内で一列に噛合する複数のギアのうちの中央のものに固設する。このギアの両側に噛合する2つのギアさらに外側に噛合するギアにはそれぞれ、植付装置32の出力軸を固設する。
【0032】
植付装置32には、植付爪を固設するとともに、苗押出手段を出没自在に設ける。苗押出手段は、回転ケース40からの駆動力によって、植付爪に沿って摺動し、植付爪が挟持した苗を水田に向けて押し出して植えつけるためのものである。
【0033】
植付伝動ケース37の下方には、中央及び左右の植付用均平フロート38,39が、植付深さ調節部材を介して支持されている。植付部30を降下させて、このフロート38,39を着地させることにより、苗載台31の上の苗マットから取り出す苗の植付深さを設定するようになっている。
【0034】
図4は、苗載台31を田植機1の前進方向から見た一部拡大図である。苗載台31の下部には、縦送りベルト50が設けられ、載置された苗を下に向けて間欠的に搬送するように構成されている。縦送りベルト50に直交するように(すなわち、苗載台31の幅方向に沿って)横フレーム55を渡し掛ける。横フレーム55は、両端を苗載台31にボルトなど固定されている。横フレーム55には、取付板56を溶接などで固定する。取付板56には、一対の取付部材57を直立して設ける。取付部材57にはそれぞれ貫通孔を形成する。
【0035】
横フレーム55の下方には、横フレーム55に平行に横送りネジ軸60を設ける。横送りネジ軸60には不図示の誘導溝(後述)を形成し、この誘導溝に移動可能に滑り子65を噛合させる。滑り子65には、取付部65Aを備える。取付部65Aには貫通孔が形成されている。取付部65Aを一対の取付部材57,57間に位置させて、それぞれの貫通孔を合わせるようにしてピンPNを挿入する。ピンPNの両端に形成された雄ネジにそれぞれナットNT,NTをネジつけて、滑り子65を横フレーム55に固定する。これによって、横送りネジ軸60が回転すると、誘導溝に噛合した滑り子65が横送りネジ軸60に沿って左側(または右側)に移動する。これと固定されている苗載台31も左側(または右側)にスライドする。
【0036】
図5に示すように、横送りネジ軸60は、植付伝動シャフト29よりギアG1、シャフトSF1、ギアG2,G3、シャフトSF2、ギアG4,G5を介して駆動力を受ける。横送りネジ軸60にはギアG6を固設して備え、このギアG6と縦送り軸70に固設されたギアG7との間にベルトを掛け回して、駆動力を縦送り軸70に伝達するようになっている。縦送り軸70には、縦送りベルト50を作動させるための縦送りカム71,71を備える。なお、ギアG1〜G7、シャフトSF1,SF2、ベルトBLはケースCA内に収容され、防塵対策がなされている。また、縦送り軸70、横送りネジ軸60、シャフトSF1,SF2は、それぞれ両端をボール軸受100によって回転自在に支持されている。横送りネジ軸60の外周には、誘導溝61を備える(詳細は後述)。
【0037】
ケースCAは不図示の手段にて植付部30のメインフレームに固定されている。また、横送りネジ軸60のギアG5,G6とは反対側の端部、および、縦送り軸70のギアG7とは反対側の端部は、それぞれボール軸受100を介して植付部30のメインフレームに固定されている。したがって、苗載台31は田植機1の車幅方向にスライドするが、ケースCA、横送りネジ軸60、縦送り軸70は動かない。
【0038】
苗載台31が横方向に所定位置まで移動すると、苗載台31に取り付けられた従動カムは縦送りカム71と係合し、縦送りベルト50を苗一株分だけ下方向に移動させるように構成されている。
【0039】
横送りネジ軸60は、図6(a),(b)に示すように、その外周62にそれぞれ螺旋状の一対の誘導溝61を形成する。これら一対の誘導溝61は、左方誘導溝61A、右方誘導溝61Bとからなる。左方誘導溝61Aと右方誘導溝61Bとが形成する2つの螺旋状の溝は、丸棒状の横送りネジ軸60の直径を含む平面に対して対称に形成される(なお、図6(a)は、運転席側から見た図である)。
【0040】
そして、左方誘導溝61Aの始端と右方誘導溝61Bの終端とを第1接続部LK1にて第1方向転換溝61Cを介して連通する。これによって、右方誘導溝61Bから第1方向転換溝61Cを通って左方誘導溝61Aへと溝がスムーズに連続する。なお、左方誘導溝61Aの始端、右方誘導溝61Bの終端、および第1方向転換溝61Cの始終端とで形成される部分を第1接続部LK1と称す。一方、右方誘導溝61Bの始端と左方誘導溝61Aの終端とを第2接続部LK2にて第2方向転換溝61Dを介して連通する。これによって、左方誘導溝61Aから第2方向転換溝61Dを通って右方誘導溝61Bへと溝がスムーズに連続する。なお、左方誘導溝61Aの終端、右方誘導溝61Bの始端、および第2方向転換溝61Dの始終端とで形成される部分を第2接続部LK2と称す。
【0041】
螺旋状に形成された左方誘導溝61Aは、外周62に沿って隣り合う溝同士が平行に形成されている。同様に、螺旋状に形成された右方誘導溝61Bも、外周62に沿って隣り合う溝同士が平行に形成されている。したがって、左方誘導溝61Aと右方誘導溝61Bが交差するすべての交差部IC1,IC2,・・・IC(N−1),ICNでは、両者のなす角が同じである(Nは自然数である)。
【0042】
ところで、第1接続部LK1には、2つの鋭角部AG1,AG2が形成される。前者は、左方誘導溝61Aと第1方向転換溝61Cとが形成するものであり、後者は、右方誘導溝61Bと第1方向転換溝61Cとが形成するものである。このうち、鋭角部(第1鋭角部)AG1はその先端の角が落とされて円弧状に加工されている。直線状の右方誘導溝61Bから円弧状の第1方向転換溝61Cに滑り子65が移動する際、および、円弧状の第1方向転換溝61Cから直線状の左方誘導溝61Aに滑り子65が移動する際に、第1接続部LK1を通過する。このとき、鋭角部AG1の先端に当接して鋭角部AG1の先端が欠けたり、滑り子65が破損したりすることを防止するためである。
【0043】
同様に、第2接続部LK2には、2つの鋭角部AG3,AG4が形成される。前者は、右方誘導溝61Bと第2方向転換溝61Dとが形成するものであり、後者は、左方誘導溝61Aと第2方向転換溝61Dとが形成するものである。このうち、鋭角部(第2鋭角部)AG3はその先端の角が落とされて円弧状に加工されている。直線状の左方誘導溝61Aから円弧状の第2方向転換溝61Dに滑り子65が移動する際、および、円弧状の第2方向転換溝61Dから直線状の右方誘導溝61Bに滑り子65が移動する際に、第2接続部LK2を通過する。このとき、鋭角部AG3の先端に当接して鋭角部AG3の先端が欠けたり、滑り子65が破損したりすることを防止するためである。
【0044】
交差部IC1には、一対の向かい合う鋭角部A11,A12が形成されている。同様に、交差部IC2,・・・・,ICNにもそれぞれ一対の向かい合う鋭角部A21,A22,・・・,AN1,AN2が形成されている。
【0045】
次に、横送りネジ軸60を回転させて苗載台31を田植機1の車幅方向に移動させるときの滑り子65の動作について図7(a),(b)を用いて説明する。横送りネジ軸60を回転させると、滑り子65の突起部65Pが右方誘導溝61B内を始端(第2接続部LK2)から終端(第1接続部LK1)に向かって移動する。横送りネジ軸60は、植付部30に、滑り子65は苗載台31に固定されているので、滑り子65とともに苗載台31が上部ガイドレール36と下部ガイドレール35にガイドされながら右方向に移動する。そして、図7(a)に示すように、突起部65Pが第1接続部LK1を通って右方誘導溝61Bから第1方向転換溝61Cに移動する。
【0046】
このとき、第1接続部LK1では、それまで突起部65Pをガイドしてきた右方誘導溝61Bの両壁が途切れる。このため、突起部65Pの動きが不安定となり、第1接続部LK1を挟んで連続して形成されている第1方向転換溝61Cにスムーズに入り込めずに鋭角部AG1に当接する可能性がある。加えて、直線状の右方誘導溝61Bから円弧状の第1方向転換溝61Cに移動するため、第1接続部LK1近傍では、突起部65Pの動きがさらに不安定となり、鋭角部AG1に当接する可能性がいっそう増す。しかし、この発明では、鋭角部AG1の先端部分を平面視にてプロフィール曲率により面取りしているので、突起部65Pが鋭角部AG1に衝突したとしても鋭角部AG1の先端部分が破損することがない。
【0047】
第1接続部LK1を通過した突起部65Pは、第1方向転換溝61C内を移動し、再び、第1接続部LK1に到達する。このとき、第1接続部LK1では、それまで突起部65Pをガイドしてきた第1方向転換溝61Cの両壁が途切れる。このため、突起部65Pの動きが不安定となり、第1接続部LK1を挟んで連続して形成されている左方誘導溝61Aの始端にスムーズに入り込めずに鋭角部AG1に当接する可能性がある。加えて、円弧状の第1方向転換溝61Cから直線状の左方誘導溝61Aに移動するため、第1接続部LK1近傍では、突起部65Pの動きがさらに不安定となり、鋭角部AG1に当接する可能性がいっそう増す。しかし、この発明では、鋭角部AG1の先端部分を平面視にてプロフィール曲率により面取りしているので、突起部65Pが鋭角部AG1に衝突したとしても鋭角部AG1の先端部分が破損することがない。
【0048】
その後、突起部65Pは左方誘導溝61A内を終端(第2接続部LK2)に向かって移動する。横送りネジ軸60は、植付部30に、滑り子65は苗載台31に固定されているので、滑り子65とともに苗載台31が上部ガイドレール36と下部ガイドレール35にガイドされながら左方向に移動する。そして、図7(b)に示すように、交差部ICNを通過した突起部65Pは、つぎに、第2接続部LK2を通って左方誘導溝61Aから第2方向転換溝61Dに移動する。このとき、第2接続部LK2では、それまで突起部65Pをガイドしてきた左方誘導溝61Aの両壁が途切れる。このため、突起部65Pの動きが不安定となり、第2接続部LK2を挟んで連続して形成されている第2方向転換溝61Dにスムーズに入り込めずに鋭角部AG3に当接する可能性がある。加えて、直線状の左方誘導溝61Aから円弧状の第2方向転換溝61Dに移動するため、第2接続部LK2近傍では、突起部65Pの動きがさらに不安定となり、鋭角部AG3に当接する可能性がいっそう増す。しかし、この発明では、鋭角部AG3の先端部分を平面視にてプロフィール曲率により面取りしているので、突起部65Pが鋭角部AG3に衝突したとしても鋭角部AG3の先端部分が破損することがない。
【0049】
第2接続部LK2を通過した突起部65Pは、第2方向転換溝61D内を移動し、再び、第2接続部LK2に到達する。このとき、第2接続部LK2では、それまで突起部65Pをガイドしてきた第2方向転換溝61Dの両壁が途切れる。このため、突起部65Pの動きが不安定となり、第2接続部LK2を挟んで連続して形成されている右方誘導溝61Bの始端にスムーズに入り込めずに鋭角部AG3に当接する可能性がある。加えて、円弧状の第2方向転換溝61Dから直線状の右方誘導溝61Bに移動するため、第2接続部LK2近傍では、突起部65Pの動きがさらに不安定となり、鋭角部AG3に当接する可能性がいっそう増す。しかし、この発明では、鋭角部AG3の先端部分を平面視にてプロフィール曲率により面取りしているので、突起部65Pが鋭角部AG3に衝突したとしても鋭角部AG3の先端部分が破損することがない。
【0050】
突起部65Pは、右方誘導溝61B内を終端(第1接続部LK1)に向かって移動し、再び、図7(a)にて説明したように動く。このように、左方誘導溝61A、第1方向転換溝61C、右方誘導溝61B、第2方向転換溝61Dとが連通して1つのエンドレス誘導溝が形成され、横送りネジ軸60が回転している間、滑り子65の突起部65Pはこのエンドレス誘導溝内を左右方向にエンドレスに移動する。
【0051】
なお、鋭角部A11,A21,A31・・・AN1の先端部分が平面視にて曲率により面取りされていると交差部IC1,IC2・・・・ICNにおいて、滑り子65が当接して鋭角部A11,A21,A31・・・AN1を破損することを防止することができる。
【0052】
また、第1鋭角部AG1の先端部分に形成される円弧の半径が、鋭角部A11,A21・・・AN1の先端部分に形成される円弧の半径よりも大きく、かつ、第2鋭角部AG3の先端部分に形成される円弧の半径が、鋭角部A11,A21・・・AN1の先端部分に形成される円弧の半径よりも大きくしてもよい。
【0053】
図8(a),(b)には、この発明の別の例を示す。この例では、前述の例に対して、横送りネジ軸60´の外周に形成される溝の形状が異なるのみである。その他の構成は前述の例と同様であるので説明を省略する。
【0054】
横送りネジ軸60´は、その外周62´にそれぞれ螺旋状の一対の誘導溝61´を形成する。これら一対の誘導溝61´は、左方誘導溝61A´、右方誘導溝61B´とからなる。左方誘導溝61A´と右方誘導溝61B´とが形成する2つの螺旋状の溝は、丸棒状の横送りネジ軸60´の直径を含む平面に対して対称に形成される(なお、図8(a)は、運転席側から見た図である)。
【0055】
そして、左方誘導溝61A´の始端と右方誘導溝61B´の終端とを第1接続部LK1´にて第1方向転換溝61C´を介して連通する。これによって、右方誘導溝61B´から第1方向転換溝61C´を通って左方誘導溝61A´へと溝がスムーズに連続する。なお、左方誘導溝61A´の始端、右方誘導溝61B´の終端、および第1方向転換溝61C´の始終端とで形成される部分を第1接続部LK1´と称す。一方、右方誘導溝61B´の始端と左方誘導溝61A´の終端とを第2接続部LK2´にて第2方向転換溝61D´を介して連通する。これによって、左方誘導溝61A´から第2方向転換溝61D´を通って右方誘導溝61B´へと溝がスムーズに連続する。なお、左方誘導溝61A´の終端、右方誘導溝61B´の始端、および第2方向転換溝61D´の始終端とで形成される部分を第2接続部LK2´と称す。
【0056】
螺旋状に形成された左方誘導溝61A´は、外周62´に沿って隣り合う溝同士が平行に形成されている。同様に、螺旋状に形成された右方誘導溝61B´も、外周62´に沿って隣り合う溝同士が平行に形成されている。したがって、左方誘導溝61A´と右方誘導溝61B´が交差するすべての交差部IC1´,IC2´,・・・IC(N−1)´,ICNでは、両者のなす角が同じである(Nは自然数である)。
【0057】
ところで、第1接続部LK1´には、2つの鋭角部AG1´,AG2´が形成される。前者は、左方誘導溝61A´と第1方向転換溝61C´とが形成するものであり、後者は、右方誘導溝61B´と第1方向転換溝61C´とが形成するものである。このうち、鋭角部(第1鋭角部)AG1´はその先端の角が落とされて平面視で円弧状に加工されている。直線状の右方誘導溝61B´から円弧状の第1方向転換溝61C´に滑り子65が移動する際、および、円弧状の第1方向転換溝61C´から直線状の左方誘導溝61A´滑り子65が移動する際に、第1接続部LK1´を通過する。このとき、鋭角部AG1´の先端に当接して鋭角部AG1´の先端が欠けたり、滑り子65が破損したりすることを防止するためである。
【0058】
同様に、第2接続部LK2´には、2つの鋭角部AG3´,AG4´が形成される。前者は、右方誘導溝61B´と第2方向転換溝61D´とが形成するものであり、後者は、左方誘導溝61A´と第2方向転換溝61D´とが形成するものである。このうち、鋭角部(第2鋭角部)AG3´はその先端の角が落とされて平面視で円弧状に加工されている。直線状の左方誘導溝61A´から円弧状の第2方向転換溝61D´に滑り子65が移動する際、および、円弧状の第2方向転換溝61D´から直線状の右方誘導溝61B´滑り子65が移動する際に、第2接続部LK2´を通過する。このとき、鋭角部AG3´の先端に当接して鋭角部AG3´の先端が欠けたり、滑り子65が破損したりすることを防止するためである。なお、鋭角部AG1´および鋭角部AG3´の円弧形状は同一とする。
【0059】
また、交差部IC1´には、向かい合わせに一対の鋭角部A11´,A12´が形成される。これらは、左方誘導溝61A´と右方誘導溝61B´とが交差することで形成されるものである。このうち、鋭角部A11´はその先端の角が落とされて平面視で円弧状に加工されている。鋭角部A11´は、交差部IC1´を挟んで直線状の左方誘導溝61A´を滑り子65が移動する際、または、交差部IC1´を挟んで直線状の右方誘導溝61B´を滑り子65が移動する際、いずれの場合にも滑り子65の進行方向に対向するように位置している。鋭角部A11´の先端部分の角落としすることで、滑り子65が鋭角部A11´の先端に当接して鋭角部A11´の先端が欠けたり、滑り子65が破損したりすることを防止するためである。なお、鋭角部A11´の先端部分の円弧の曲率半径は、鋭角部(第1鋭角部)AG1´および鋭角部(第2鋭角部)AG3´の円弧の曲率半径よりも小さく形成するものとする。
【0060】
交差部IC2´から交差部ICN´までも同様に、鋭角部A21´,A31´・・・A(N−1)1´,AN1´の先端の角落としをして平面視で円弧状に加工される。鋭角部A21´,A31´・・・A(N−1)1´,AN1´(Nは自然数)は、交差部IC2´〜ICN´を挟んで直線状の左方誘導溝61A´を滑り子65が移動する際、または、交差部IC2´〜ICN´を挟んで直線状の右方誘導溝61B´を滑り子65が移動する際、いずれの場合にも滑り子65の進行方向に対向するように位置している。鋭角部A21´,A31´・・・A(N−1)1´,AN1´の先端部分の角落としすることで、滑り子65が鋭角部A21´,A31´・・・A(N−1)1´,AN1´の先端に当接して鋭角部A21´,A31´・・・A(N−1)1´,AN1´の先端が欠けたり、滑り子65が破損したりすることを防止するためである。なお、鋭角部A21´,A31´・・・A(N−1)1´,AN1´の先端部分の円弧の曲率半径は、鋭角部AG1´および鋭角部AG3´の円弧の曲率半径よりも小さく形成するものとする。また、鋭角部A21´,A31´・・・A(N−1)1´,AN1´の先端部分の円弧の曲率半径は、鋭角部A11´の円弧の曲率半径と同一であってもよい。
【0061】
次に、横送りネジ軸60´を回転させて苗載台31を田植機1の車幅方向に移動させるときの滑り子65の動作について図9(a),(b)を用いて説明する。横送りネジ軸60´を回転させると、滑り子65の突起部65Pが右方誘導溝61B´内を始端(第2接続部LK2´)から終端(第1接続部LK1´)に向かって移動する。横送りネジ軸60´は、植付部30に、滑り子65は苗載台31に固定されているので、滑り子65とともに苗載台31が上部ガイドレール36と下部ガイドレール35にガイドされながら右方向に移動する。そして、図9(a)に示すように、突起部65Pが右方誘導溝61B´内を終端(第1接続部LK1´)に向かって移動し、交差部IC1´を通過する。交差部IC1´では、左方誘導溝61A´と交差しているため、それまで突起部65Pをガイドしてきた右方誘導溝61B´の両壁が途切れる。このため、突起部65Pの動きが不安定となり、交差部IC1´を挟んで連続して形成されている右方誘導溝61B´にスムーズに入り込めずに鋭角部A11´に当接する可能性がある。しかし、この発明では、鋭角部A11´の先端部分を平面視にてプロフィール曲率により面取りしているので、突起部65Pが鋭角部A11´に衝突したとしても鋭角部A11´の先端部分が破損することがない。なお、突起部65Pの動作は他の交差部IC2´〜ICN´についても同様であり、鋭角部A21´,A31´・・・A(N−1)1´,AN1´の先端部分もそれぞれ平面視にてプロフィール曲率により面取りしているので、突起部65Pが鋭角部A21´,A31´・・・A(N−1)1´,AN1´に衝突したとしても鋭角部A21´,A31´・・・A(N−1)1´,AN1´の先端部分が破損することがない。
【0062】
交差部IC1´を通過した突起部65Pは、つぎに、第1接続部LK1´を挟んで右方誘導溝61B´から第1方向転換溝61C´に移動する。このとき、第1接続部LK1´では、それまで突起部65Pをガイドしてきた右方誘導溝61B´の両壁が途切れる。このため、突起部65Pの動きが不安定となり、第1接続部LK1´を挟んで連続して形成されている第1方向転換溝61C´にスムーズに入り込めずに鋭角部AG1´に当接する可能性がある。加えて、直線状の右方誘導溝61B´から円弧状の第1方向転換溝61C´に移動するため、第1接続部LK1´近傍では、突起部65Pの動きがさらに不安定となり、鋭角部AG1´に当接する可能性がいっそう増す。しかし、この発明では、鋭角部AG1´の先端部分を平面視にてプロフィール曲率により面取りしているので、突起部65Pが鋭角部AG1´に衝突したとしても鋭角部AG1´の先端部分が破損することがない。
【0063】
第1接続部LK1´を通過した突起部65Pは、第1方向転換溝61C´内を移動し、再び、第1接続部LK1´に到達する。このとき、第1接続部LK1´では、それまで突起部65Pをガイドしてきた第1方向転換溝61C´の両壁が途切れる。このため、突起部65Pの動きが不安定となり、第1接続部LK1´を挟んで連続して形成されている左方誘導溝61A´の始端にスムーズに入り込めずに鋭角部AG1´に当接する可能性がある。加えて、円弧状の第1方向転換溝61C´から直線状の左方誘導溝61A´に移動するため、第1接続部LK1´近傍では、突起部65Pの動きがさらに不安定となり、鋭角部AG1´に当接する可能性がいっそう増す。しかし、この発明では、鋭角部AG1´の先端部分を平面視にてプロフィール曲率により面取りしているので、突起部65Pが鋭角部AG1´に衝突したとしても鋭角部AG1´の先端部分が破損することがない。
【0064】
このようにして、突起部65Pは第1方向転換溝61C´にて右方誘導溝61B´から左方誘導溝61A´に乗り移り、突起部65Pは左方誘導溝61A´内を終端(第2接続部LK2´)に向かって移動する。横送りネジ軸60´は、植付部30に、滑り子65は苗載台31に固定されているので、滑り子65とともに苗載台31が上部ガイドレール36と下部ガイドレール35にガイドされながら左方向に移動する。そして、図9(b)に示すように、突起部65Pが左方誘導溝61A´内を終端に向かって移動して交差部ICN´を通過する。交差部ICN´では、右方誘導溝61B´と交差しているため、それまで突起部65Pをガイドしてきた左方誘導溝61A´の両壁が途切れる。このため、突起部65Pの動きが不安定となり、交差部ICN´を挟んで連続して形成されている左方誘導溝61A´にスムーズに入り込めずに鋭角部AN1´に当接する可能性がある。しかし、この発明では、鋭角部AN1´の先端部分を平面視にてプロフィール曲率により面取りしているので、突起部65Pが鋭角部AN1´に衝突したとしても鋭角部AN1´の先端部分が破損することがない。
【0065】
交差部ICN´を通過した突起部65Pは、つぎに、第2接続部LK2´を通って左方誘導溝61A´から第2方向転換溝61D´に移動する。このとき、第2接続部LK2´では、それまで突起部65Pをガイドしてきた左方誘導溝61A´の両壁が途切れる。このため、突起部65Pの動きが不安定となり、第2接続部LK2´を挟んで連続して形成されている第2方向転換溝61D´にスムーズに入り込めずに鋭角部AG3´に当接する可能性がある。加えて、直線状の左方誘導溝61A´から円弧状の第2方向転換溝61D´に移動するため、第2接続部LK2´近傍では、突起部65Pの動きがさらに不安定となり、鋭角部AG3´に当接する可能性がいっそう増す。しかし、この発明では、鋭角部AG3´の先端部分を平面視にてプロフィール曲率により面取りしているので、突起部65Pが鋭角部AG3´に衝突したとしても鋭角部AG3´の先端部分が破損することがない。
【0066】
第2接続部LK2´を通過した突起部65Pは、第2方向転換溝61D´内を移動し、再び、第2接続部LK2´に到達する。このとき、第2接続部LK2´では、それまで突起部65Pをガイドしてきた第2方向転換溝61D´の両壁が途切れる。このため、突起部65Pの動きが不安定となり、第2接続部LK2´を挟んで連続して形成されている右方誘導溝61B´の始端にスムーズに入り込めずに鋭角部AG3´に当接する可能性がある。加えて、円弧状の第2方向転換溝61D´から直線状の右方誘導溝61B´に移動するため、第2接続部LK2´近傍では、突起部65Pの動きがさらに不安定となり、鋭角部AG3´に当接する可能性がいっそう増す。しかし、この発明では、鋭角部AG3´の先端部分を平面視にてプロフィール曲率により面取りしているので、突起部65Pが鋭角部AG3´に衝突したとしても鋭角部AG3´の先端部分が破損することがない。
【0067】
このようにして、突起部65Pは第2方向転換溝61D´にて左方誘導溝61A´から右方誘導溝61B´に乗り移り、右方誘導溝61B´内を終端(第1接続部LK1´)に向かって移動し、再び、図9(a)にて説明したように動く。このように、左方誘導溝61A´、第1方向転換溝61C´、右方誘導溝61B´、第2方向転換溝61D´とが連通して1つのエンドレス誘導溝が形成され、横送りネジ軸60´が回転している間、滑り子65の突起部65Pはこのエンドレス誘導溝内を左右方向にエンドレスに移動する。
【0068】
この例では、鋭角部A11´,A21´・・・・,A(N−1)1´,AN1´の先端部分を平面視にてプロフィール曲率により面取りしたが、この発明はこれに限定されるものではなく、プロフィール曲率により面取りする鋭角部を必要に応じて適宜選定しうるものとする。
【0069】
また、鋭角部A11´,A21´・・・・,A(N−1)1´,AN1´の先端部分を平面視にてプロフィール曲率により面取りし、鋭角部AG1´,AG3´の先端部分を平面視にて曲率により面取りしないように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
この発明は、田植機に限定されず、あらゆる苗を植えるための苗植機に適用しうる。
【符号の説明】
【0071】
1 田植機(乗用田植機)
12 エンジン(駆動源)
31 苗載台
60,60´ 横送りネジ軸
61A,61A´ 左方誘導溝
61B,61B´ 右方誘導溝
61C,61C´ 第1方向転換溝
61D,61D´ 第2方向転換溝
62,62´ 外周
65 滑り子
65P 突起部
AG1,AG1´ 第1鋭角部
AG3,AG3´ 第2鋭角部
A11,A21・・・,A(N−1)1,AN1 鋭角部
A11´,A21´・・・,A(N−1)1´,AN2´ 鋭角部
LK1,LK1´ 第1接続部
LK2,LK2´ 第2接続部
IC1,IC2・・・IC(N−1),ICN 交差部
IC1´,IC2´・・・IC(N−1)´,ICN´ 交差部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源12からの駆動力で回転する横送りネジ軸60と、
該横送りネジ軸60に嵌合する滑り子65と、
該滑り子65が固設され、前記横送りネジ軸60が回転することで車幅方向に往復移動可能な苗載台31とを備え、
前記横送りネジ軸60の外周に、前記苗載台31を右向きにスライドさせる右方誘導溝61B、および、前記苗載台31を左向きにスライドさせる左方誘導溝61Aをそれぞれ螺旋状に備え、
前記右方誘導溝61Bと前記左方誘導溝61Aとが交差するように設けられ、
前記右方誘導溝61Bの終端と前記左方誘導溝61Aの始端とが第1接続部LK1にて第1方向転換溝61Cを介して連通されるとともに、前記左方誘導溝61Aの終端と前記右方誘導溝61Bの始端とが第2接続部LK2にて第2方向転換溝61Dを介して連通されて1つのエンドレス誘導溝が形成され、
該エンドレス誘導溝に前記滑り子65が移動可能に嵌合した状態で前記横送りネジ軸60が回転することによって前記苗載台31を車幅方向に所定の範囲内で連続的に往復運動させることが可能な乗用田植機1において、
前記第1方向転換溝61Cの始端と前記左方誘導溝61Aの始端との間に形成される第1鋭角部AG1の先端部分が平面視にて曲率により面取りされて形成されるとともに、
前記第2方向転換溝61Dの始端と前記右方誘導溝61Bの始端との間に形成される第2鋭角部AG3の先端部分が平面視にて曲率により面取りされて形成されることを特徴とする、乗用田植機。
【請求項2】
前記右方誘導溝61Bと前記左方誘導溝61Aとが交差する交差部IC1,IC2・・・ICNにて、
前記右方誘導溝61Bと前記左方誘導溝61Aとのなす角が鋭角となる鋭角部A11,A21・・・AN1を備え、
前記滑り子65の進行方向に対向する前記鋭角部A11,A21・・・AN1の先端部分が平面視にて曲率により面取りされて形成されることを特徴とする、請求項1に記載の乗用田植機。
【請求項3】
前記第1鋭角部AG1の先端部分に形成される円弧の半径は、前記鋭角部A11,A21・・・AN1の先端部分に形成される円弧の半径よりも大きく、
かつ、前記第2鋭角部AG3の先端部分に形成される円弧の半径は、前記鋭角部A11,A21・・・AN1の先端部分に形成される円弧の半径よりも大きいことを特徴とする、請求項2に記載の乗用田植機。
【請求項4】
駆動源12からの駆動力で回転する横送りネジ軸60´と、
該横送りネジ軸60´に嵌合する滑り子65と、
該滑り子65が固設され、前記横送りネジ軸60´が回転することで車幅方向に往復移動可能な苗載台31とを備え、
前記横送りネジ軸60´の外周に、前記苗載台31を右向きにスライドさせる右方誘導溝61B´、および、前記苗載台31を左向きにスライドさせる左方誘導溝61A´をそれぞれ螺旋状に備え、
前記右方誘導溝61B´と前記左方誘導溝61A´とが交差するように設けられ、
前記右方誘導溝61B´の終端と前記左方誘導溝61A´の始端とが第1接続部LK1´にて第1方向転換溝61C´を介して連通されるとともに、前記左方誘導溝61A´の終端と前記右方誘導溝61B´の始端とが第2接続部LK2´にて第2方向転換溝61D´を介して連通されて1つのエンドレス誘導溝が形成され、
該エンドレス誘導溝に前記滑り子65が移動可能に嵌合した状態で前記横送りネジ軸60´が回転することによって前記苗載台31を車幅方向に所定の範囲内で連続的に往復運動させることが可能な乗用田植機1において、
前記右方誘導溝61C´と前記左方誘導溝61D´とが交差する交差部IC1´,IC2´・・・ICN´にて、
前記右方誘導溝61B´と前記左方誘導溝61A´とのなす角が鋭角となる鋭角部A11´,A21´・・・AN1´を備え、
前記滑り子65の進行方向に対向する前記鋭角部A11´,A21´・・・AN1´の先端部分が平面視にて曲率により面取りされて形成されることを特徴とする、乗用田植機。
【請求項5】
前記第1方向転換溝61C´の始端と前記左方誘導溝61A´の始端との間に形成される第1鋭角部AG1´の先端部分が平面視にて曲率により面取りされて形成されるとともに、
前記第2方向転換溝61D´の始端と前記右方誘導溝61B´の始端との間に形成される第2鋭角部AG3´の先端部分が平面視にて曲率により面取りされて形成されることを特徴とする、請求項4に記載の乗用田植機。
【請求項6】
前記第1鋭角部AG1´の先端部分に形成される円弧の半径は、前記鋭角部A11´,A21´・・・AN1´の先端部分に形成される円弧の半径よりも大きく、
かつ、前記第2鋭角部AG3´の先端部分に形成される円弧の半径は、前記鋭角部A11´,A21´・・・AN1´の先端部分に形成される円弧の半径よりも大きいことを特徴とする、請求項5に記載の乗用田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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