説明

乗降用グリップ

【課題】単一の光源によってドア開口部を効率よく照明することができる乗降用グリップを提供することを課題とする。
【解決手段】車体側部のドア開口部3の近傍に設けられる乗降用グリップ10であって、ドア開口部10の近傍に取り付けられる二体の支持部材20,30と、透光部材43が側面に設けられ、両端部が各支持部材20,30に取り付けられた把持部材40と、上側の支持部材20内に設けられた光源と、把持部材40内に設けられ、入光された光を下側の支持部材30内に導くとともに発光する導光体60と、備え、下側の支持部材30に形成された下端開口部33aから光が照射されることで、ドア開口部3の乗降用ステップ3cが照明される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側部のドア開口部の近傍に設けられる乗降用グリップに関する。
【背景技術】
【0002】
車体側部のドア開口部を照明する照明装置としては、ドア開口部の近傍に取り付けられた乗降用グリップを発光させるとともに、ドア開口部の下縁部に設けられた乗降用ステップを発光させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
この照明装置では、車内が暗いときに、乗降用グリップおよび乗降用ステップを発光させることで、乗降用グリップおよび乗降用ステップの視認性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−331621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の照明装置では、乗降用グリップと乗降用ステップとに光源がそれぞれ設けられており、乗降用グリップと乗降用ステップとを別々に発光させている。これに対して、照明装置の光源を少なくして、ドア開口部を効率よく照明することが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、単一の光源によってドア開口部を効率よく照明することができる乗降用グリップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、車体側部のドア開口部の近傍に設けられる乗降用グリップであって、前記ドア開口部の近傍に取り付けられる二体の支持部材と、光を透過させる透光部材が側面に設けられ、両端部が前記各支持部材に取り付けられた把持部材と、前記把持部材内に設けられ、一端から入光された光を他端に導くとともに、一端から入光された光によって発光する導光体と、前記導光体の一端に光を照射する光源と、を備え、前記導光体から他方の前記支持部材内に入光された光が、他方の前記支持部材に形成された開口部から外部に照射されることで、前記ドア開口部の下縁部に設けられた乗降用ステップが照明されることを特徴としている。また、前記光源は、前記支持部材内に設けられていることが望ましい。
【0007】
この構成では、乗降用グリップに設けられた光源によって、乗降用グリップの側面を発光させるとともに、乗降用ステップを照明することができるため、単一の光源によってドア開口部を効率よく照明することができる。
また、乗降用ステップよりも上方に配置される支持部材から照射された光によって、乗降用ステップの上面全体を効率よく照明することができる。
また、単一の光源によってドア開口部を照明することで、部品点数が少なくなるため、製造コストを低減することができる。
【0008】
前記した乗降用グリップにおいて、前記各支持部材を上下に配置し、前記光源から前記導光体の上端に光を照射して、下側の前記支持部材に形成された前記開口部から外部に光を照射させる構成では、乗降用ステップの近くに配置された下側の支持部材から光が照射されるため、乗降用ステップを明るく照明することができる。
【0009】
前記した乗降用グリップにおいて、他方の前記支持部材の前記開口部に、前記導光体から入光された光を前記乗降用ステップに向けて照射させる照射用開口部を設けることで、乗降用ステップを的確に照明することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の乗降用グリップでは、単一の光源によってドア開口部を効率よく照明することができる。また、支持部材から照射された光によって、乗降用ステップの上面全体を効率よく照明することができる。また、部品点数が少なくなるため、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の乗降用グリップが設けられるドア開口部を車外側から見た斜視図である。
【図2】本実施形態の乗降用グリップを車室側から見た斜視図である。
【図3】本実施形態の乗降用グリップを示した図で、(a)は上側の支持部材の側断面図、(b)は下側の支持部材の側断面図である。
【図4】本実施形態の乗降用グリップにおける把持部材の平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態では、図1に示す車両1の車体側部2に形成された後側のドア開口部3の近傍に設けられる乗降用グリップ10を例として説明する。なお、以下の説明において前後方向とは、車両の前後方向に対応している。
【0013】
ドア開口部3は、センターピラー3aとリアピラー3bとの間に形成されており、スライドドア4によって開閉される。ドア開口部3の下縁部には、乗員が乗降するときの踏み板となる乗降用ステップ3cが設けられている。
【0014】
乗降用グリップ10は、図2に示すように、ドア開口部3から乗員が乗降するときに把持する部材であり、センターピラー3aの後側面において、ドア開口部3の高さ方向の中間部に取り付けられている。
乗降用グリップ10は、センターピラー3aの後側面に取り付けられる上下二体の支持部材20,30と、上下両端部が各支持部材20,30に取り付けられた把持部材40と、把持部材40内に設けられた導光体60(図4参照)と、上側の支持部材20内に設けられた光源50(図3(a)参照)と、を備えている。
【0015】
上側の支持部材20は、図3(a)に示すように、側面視で円弧状に湾曲した樹脂製の部材であり、図3(a)の右上に側端部21が形成され、図3(a)の左下に下端部22が形成されている。
上側の支持部材20の側端部21は、ボルト21aによってセンターピラー3aに取り付けられる部位である。また、上側の支持部材20の下端部22は、後記する把持部材40の上端部が取り付けられる部位である。
【0016】
上側の支持部材20の下端部22側の内部には、下端部22の下面に開口している収容空間23が形成されており、収容空間23内には、光源50が収容されている。
【0017】
本実施形態の光源50はLED素子であり、光源50から下方に向けて光が照射されるように配置されている。
光源50への電力の供給は、車室内に設けられた室内灯の点灯・消灯に連動しており、スライドドア4が開いて室内灯が点灯したときに、光源50にも電力が供給されて点灯するように構成されている。
【0018】
下側の支持部材30は、図3(b)に示すように、側面視で円弧状に湾曲した樹脂製の部材であり、図3(b)の左上に上端部32が形成され、図3(b)の右下に側端部31が形成されている。
下側の支持部材30の側端部31は、図示しない取付金具によってセンターピラー3aに取り付けられる部位である。また、下側の支持部材30の上端部32は、後記する把持部材40の下端部が取り付けられる部位である。
【0019】
下側の支持部材30の上端部32側の内部には、上下方向に貫通した導光孔部33が形成されており、導光孔部33の下端開口部33aには屈折部材34が嵌め込まれている。
【0020】
屈折部材34は、導光孔部33内を上方から下方に向けて垂直に通過した光を、図3(b)の左下に向けて斜めに屈折させるレンズである。そして、屈折部材34を通過させた光が、乗降用ステップ3c(図2参照)の上面全体に照射されるように、屈折部材34の屈折率が設定されている。
このように、導光孔部33の下端開口部33aは、導光体60から導光孔部33内に入光された光を乗降用ステップ3cに向けて照射させる照射用開口部となっている。
【0021】
把持部材40は、図2に示すように、上下方向に延ばされた棒状の部材であり、上下両端部が上下の各支持部材20,30に取り付けられることで、センターピラー3aの後側面から離れた位置に配置されている。この把持部材40は、ドア開口部3から乗員が乗降するときに把持する部位である。
【0022】
把持部材40は、図3(a)および(b)に示すように、上下方向に延ばされたグリップ本体41と、グリップ本体41内に挿通されたフレーム42と、グリップ本体41の側面に取り付けられた透光部材43と、を備えている。
【0023】
グリップ本体41は、図4に示すように、センターピラー3aに対して反対側(図4の左側)の側面に溝部41aが形成され、他の部位の外周形状が円弧状に形成された樹脂製の部材である。なお、グリップ本体41の外周形状は、乗員が把持することができる形状であれば、円弧状に限定されるものではない。さらに、乗員がグリップ本体41を把持し易いように、グリップ本体41の側面に波状の凹凸を形成してもよい。
溝部41aは、グリップ本体41の上端部から下端部に亘って形成されている。溝部41aは、凹状の外溝部41bと、外溝部41bの底面に形成された半円状の内溝部41cと、が形成されており、内溝部41cよりも外溝部41bが幅広に形成されている。
【0024】
また、図2に示すように、グリップ本体41において、上端部と上下方向の中間位置との間には、センターピラー3a側に突出した中間支持部41dが形成されている。中間支持部41dの先端部は、センターピラー3aの表面に当接している。
【0025】
フレーム42は、図4に示すように、軸断面がコの字形状に形成された金属製の部材であり、グリップ本体41内に上下方向に挿通されている。なお、フレーム42の形状は限定されるものではなく、平板状の部材や円形断面の部材を用いることもできる。さらに、複数のフレーム42をグリップ本体41内に挿通してもよい。
【0026】
図3(a)に示すように、フレーム42の上端部には、板状の上側取付部42aが形成されている。上側取付部42aは、グリップ本体41の上端部から突出して、上側の支持部材20の下端部22内に挿入されている。そして、フレーム42の上側取付部42aが、ボルト22a,22aによって、上側の支持部材20の下端部22に取り付けられることで、把持部材40の上端部が上側の支持部材20に取り付けられている。
【0027】
図3(b)に示すように、フレーム42の下端部には、板状の下側取付部42bが形成されている。下側取付部42bは、グリップ本体41の下端部から突出して、下側の支持部材30の上端部32内に挿入されている。そして、フレーム42の下側取付部42bが、ボルト32a,32aによって、下側の支持部材30の上端部32に取り付けられることで、把持部材40の下端部が下側の支持部材30に取り付けられている。
【0028】
フレーム42において、上端部と上下方向の中間位置との間には、図4に示すように、グリップ本体41の中間支持部41d内に挿通される突出部42cが形成されている。突出部42cの先端部は、図示しないボルトによって、センターピラー3aに取り付けられている。
【0029】
透光部材43は、図2に示すように、グリップ本体41に沿って、上下方向に延ばされた長方形の板状の部材であり、アクリル樹脂などの樹脂製で透明または半透明に形成されている。透光部材43は、図4に示すように、グリップ本体41の溝部41aの外溝部41bに嵌め込まれている。この透光部材43によって、グリップ本体41の溝部41aに蓋が設けられた状態となり、グリップ本体41内に上下方向の空間が形成されている。
【0030】
導光体60は、図4に示すように、グリップ本体41の溝部41aの内溝部41cに嵌め込まれる円柱状の部材であり、グリップ本体41の上端部から下端部に亘って上下方向に延設されている。このように、導光体60は、グリップ本体41内に形成された上下方向の空間内に配置されている。
導光体60は、一端から内部に入光された光を他端に導くとともに、入光された光の一部が周壁部を透過することで、外面が発光するものである。この導光体60としては、例えば、外面発光型の光ファイバを用いることができる。
【0031】
図3(a)に示すように、グリップ本体41に取り付けられた導光体60の上端部は、上側の支持部材20の下端部22内に挿入されており、導光体60の上端部の直上に光源50が配置されている。
図3(b)に示すように、グリップ本体41に取り付けられた導光体60の下端部は、下側の支持部材30の上端部32内に挿入されており、導光体60の下端部の直下に導光孔部33の上端開口部33bが配置されている。
そして、光源50から導光体60の上端部に入光された光は、導光体60の内部で内周面に反射して、導光体60の下端部に導かれる。また、光源50から導光体60の上端部に入光された光の一部が、導光体60の周壁部を透過することで、導光体60の外面が発光する。
【0032】
以上のように構成された乗降用グリップ10では、図1に示すスライドドア4が開くと、図3(a)に示す上側の支持部材20内に設けられた光源50が点灯され、光源50から導光体60の上端部に光が入光される。
導光体60の上端部に入光された光の一部が、導光体60の周壁部を透過することで、導光体60の外面が発光する。また、導光体60の外面から照射された光が透光部材43を透過することで、把持部材40の側面が発光する。
【0033】
また、図3(b)に示すように、導光体60の下端部から下側の支持部材30の導光孔部33内に照射された光は、導光孔部33内を上方から下方に向けて通過して、導光孔部33の下端開口部33aから外部に照射される。このとき、下端開口部33aに設けられた屈折部材34を通過した光は、屈折部材34を通過したときに、乗降用ステップ3cに向けて屈折する。
【0034】
したがって、本実施形態の乗降用グリップ10によれば、図2に示すように、乗降用グリップ10に設けられた光源50(図3(a)参照)によって、乗降用グリップ10を発光させるとともに、乗降用ステップ3cを照明することができるため、単一の光源によってドア開口部3を効率よく照明することができる。
また、単一の光源50によってドア開口部3を照明することで、部品点数が少なくなるため、製造コストを低減することができる。
【0035】
また、乗降用ステップ3cよりも上方に配置された下側の支持部材30から照射された光によって、乗降用ステップ3cの上面全体を効率よく照明することができる。
【0036】
また、乗降用ステップ3cの近くに配置された下側の支持部材30から光が照射されるため、乗降用ステップ30を明るく照明することができる。
【0037】
また、下側の支持部材30の下端開口部33aに設けられた屈折部材34を光が通過することで、光が乗降用ステップ3cに向けて屈折するため、乗降用ステップ3cを的確に照明することができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、本実施形態では、図2に示すように、下側の支持部材30から乗降用ステップ3cに向けて光を照射しているが、下側の支持部材30内に光源50(図3(a)参照)を設け、この光源50から照射された光を、導光体60(図4参照)によって上側の支持部材20内に導き、上側の支持部材20内に設けられた反射板などで光を屈曲させて、上側の支持部材20から乗降用ステップ3cに向けて光を照射させることもできる。また、上側の支持部材20からドア開口部3の上縁部や車室内の天井にも光を照射することができる。
【0039】
また、本実施形態では、図3(a)に示すように、上側の支持部材20内に光源50が設けられているが、上側の支持部材20と把持部材40との間、または把持部材40内に光源50を設けてもよい。
【0040】
また、本実施形態では、図2に示すように、上下に各支持部材20,30を配置しているが、左右横方向に配置した二体の支持部材20,30をドア開口部3の上縁部に取り付け、ドア開口部3の上縁部に設けられた乗降用グリップ10の一方の支持部材20(30)から乗降用ステップ3cに向けて光を照射させることもできる。
【0041】
また、本実施形態では、図2に示すように、上下の支持部材20,30およびグリップ本体41に設けられた中間支持部41dの三箇所で乗降用グリップ10を支持しているが、乗降用グリップ10の上下方向の長さが短い場合には、上下の支持部材20,30の二箇所で乗降用グリップ10を支持することもできる。
【0042】
また、本実施形態では、図1に示すように、後側のドア開口部3の近傍に乗降用グリップ10が設けられているが、前側のドア開口部の近傍に設けてもよい。
【0043】
また、本実施形態では、図3(b)に示すように、下端開口部33aに嵌め込まれた屈折部材34によって、導光体60からの光を乗降用ステップ3c(図2参照)に向けて屈折させているが、屈折部材34を用いることなく、下端開口部33aの開口方向を乗降用ステップ3cに向けることで、導光体60からの光を乗降用ステップ3に向けて照射させることもできる。さらに、導光体60の下端部を曲げることで、導光体60から乗降用ステップ3cに向けて光を照射させることもできる。
【符号の説明】
【0044】
1 車両
2 車体側部
3 ドア開口部
3a センターピラー
4 スライドドア
10 乗降用グリップ
20 上側の支持部材
21 側端部(上側の支持部材)
22 下端部(上側の支持部材)
23 収容空間
30 下側の支持部材
31 側端部(下側の支持部材)
32 上端部(下側の支持部材)
33 導光孔部
34 屈折部材
40 把持部材
41 グリップ本体
41a 溝部
41b 外溝部
41c 内溝部
42 フレーム
43 透光部材
50 光源
60 導光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部のドア開口部の近傍に設けられる乗降用グリップであって、
前記ドア開口部の近傍に取り付けられる二体の支持部材と、
光を透過させる透光部材が側面に設けられ、両端部が前記各支持部材に取り付けられた把持部材と、
前記把持部材内に設けられ、一端から入光された光を他端に導くとともに、一端から入光された光によって発光する導光体と、
前記導光体の一端に光を照射する光源と、を備え、
前記導光体から他方の前記支持部材内に入光された光が、他方の前記支持部材に形成された開口部から外部に照射されることで、前記ドア開口部の下縁部に設けられた乗降用ステップが照明されることを特徴とする乗降用グリップ。
【請求項2】
前記光源は、前記支持部材内に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の乗降用グリップ。
【請求項3】
前記各支持部材は、上下に配置されており、前記光源から前記導光体の上端に光が照射され、下側の前記支持部材に形成された前記開口部から外部に光が照射されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗降用グリップ。
【請求項4】
他方の前記支持部材の前記開口部には、前記導光体から入光された光を前記乗降用ステップに向けて照射させる照射用開口部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の乗降用グリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−121433(P2011−121433A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279524(P2009−279524)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】